今の状況は最悪の四面楚歌だ。
唐突に申し訳ないが、そうとしかいいようがない状況だ。
心は辺りをちらりと見る。
ノエルのブレードで自分の首筋に添えられ、味方になってくれるだろう雪奈は忍によって眠らされ、また彼女の叔母であるさくらは忍とともに自分を睨みつけている。
（どうしてこうなったんだっけ……）
心は先ほど起こったことをふと記憶を遡る。
そうあれはこの状況になる十分前のことだ。
* * * * *
ノエルによってリビングまで案内された心と雪奈の姿を見て、いや正確には雪奈を見て忍は高級間溢れるソファーから立ち上がり、雪奈のもとに駆け寄った。
「雪奈！ よかったぁ、無事で……」
「ふふっ心配性ね、大丈夫よ。 本郷くんが護ってくれたから」
「うん、うん！ ほんとうによかったぁ……」
涙声交じりで雪奈に抱き着く忍。
そこから嗚咽が聞こえだし、雪奈は彼女の頭をやさしくなで始める――彼女はよほど不安だったのだろう、突然携帯にかかってきた雪奈からの一言が襲われたと聞いたときは不安に駆られてしまった。
だから本当に雪奈が助かったのはよかったと思っている、そして雪奈を助けてくれただろう心にも大変感謝している。
――しかし、だからといって彼を見逃せないこともあるのだ。
泣き止んだ忍はゆっくりと雪奈から離れ、心に視線を向ける。
「月村家の当主、月村忍と申します。 この度は友人を助けていただいた事、深く感謝を申し上げます」
そう言って、彼女は心に深々と頭を垂れた。そして――
「それで、貴方は何者なのかしら？」
頭を上げた忍は笑みを浮かべてはいたが、その目は笑っていなかった。
忍は雪奈のことは確かに感謝している。 だが同時に彼に対して警戒と疑惑も覚えている。
なぜ危険となった雪奈を助けるという行為をしたのだろうか。
普通の人間ならば、突然の行為に戸惑いを覚え、命を危険を感じ、他人見捨ててでも自分は助かるという行為をする。
だが彼は平然と助けた。
なぜ連中は追っ手を出さなかったのか。
態々逃がす理由が解らない、目撃者が存在するならば、忍たちの知っている連中は証拠隠滅といわんばかりに記憶を消させるか、殺害をする筈だ。
どうして連中は心を逃がしたのか、雪奈に関しては恐らく忍に対するキーカードの為だろうが。
なぜ彼はこんなにも無傷に等しいのか。
否、右手には軽い怪我を負っているようだが、ただそれだけ。
自動人形は異様に硬い……それこそ普通の人間ならば確実に骨折する。
これで彼は普通の人間では有り得ないということが証明されている。
そして最後の疑問、否確証を持っていることがある。
それは彼が……裏側の人間だということだ。
それらを通して結びつくという可能性――それは目の前にいる人物は敵かもしれないというもの。
「何者といわれても、俺は至って平凡な男だけど……」
「ふぅん、あくまでもとぼけるんだ……ノエル！」
忍は自身が信頼しているノエルに呼びかけると、ノエルはすぐさま懐から手錠を取り出し、心に掛ける。
「ほえ？」
「な、何をやっているの、ノエル！？ 忍、あなた何を……」
「ゴメンね、雪奈」
二人の突然の行動に雪奈が激怒する寸前、忍は真っ赤な瞳を雪奈の視線と混じり合った。
真っ赤な瞳――それは夜の一族の証である魔眼。
直に魔眼を受けてしまった雪奈は意識を失い、身体はゆっくりと忍によってソファーで横たわらせた。
「もう大丈夫だよ、さくら。 入ってきて」
「えぇ、失礼するわ」
心たちが入ってきた扉が再び開くと、ピンク色の髪をした女性の姿があった。
女性は心を睨んでおり、警戒心を決して緩まず、また心から距離をおきながら忍のもとに近づいた。
「こんにちわ、本郷くん。 歓迎するわ」
どうやら彼女らはあらゆる意味を含んでの『歓迎』をするらしい。
*****
(そうそう。 それで今の状況になったんだよな)
回想を終えた心はため息をつきたかったが、目の前と横にいる女性らの威圧感のせいで、それすら出来ない。
「本郷くん、もう一度、聞くわね？ あなたはいったい何者なの？」
「何者といわれても。 ただ何度も言っているように、俺はただの男です。 いたって普通の」
……さらなる威圧感のせいで、この部屋の温度は二度は下がった。
目の前にいる女性二人の威圧感がさらに重くなり、また視線も徐々に鋭くなっていく。
常人の人間ならば背筋に悪寒が走り、今も冷や汗が止まらない状態になるのだが、心にとってはなんのそのだ。
余談だが、心の発言はこれで五度目であるため、二人の視線が鋭くなっているだけでなく、米神の青筋部分までもがピクピクと動いている。
「そう、それなら仕方ないわ。 ノエル！」
忍が痺れを切らしたのか苛立ちが混じった声で叫ぶと、ノエルは返事をしながら片手でポケットから箱のような形をした機械を取り出した。
ノエルは機械のボタン部分を押すと。
「――ぐっ、あああぁぁぁぁゎああああああぁ！？」
パリッという軽い音が手錠から聞こえたかと思いきや、凄まじい電気が心の身体に流れた。
全身に奔る電流に心の苦痛の悲鳴が響き渡り、心は膝をカーペットについて肩で息をする。
「……話す気になったかしら？」
「っ、うぅ、わ、分かった。 話す、話すから流さないでくださぃ。 でもその前に聞きたいことがあるんだけど、いい、ですか？」
「素直にしゃべってくれるようになったから、そのご褒美としてね」
「あ、ありがとうございます……」
心は苦痛に満ちた声でそして情けなく求めるかのような声で答えることで少しは気分を良くしたのか、将又素直に喋ってくれるようになったことに喜んだのか、二人は微笑みながら答えてくれた。
だが勘違いしてもらっては困る、この電流は心に大したダメージを与えられていないのだ。
過去に800万ボルトを受けたことのある心にとっては、この電流――おそらくは100万ボルト程度だろう。
つまりは大したダメージどころか、心にとってはマッサージ程度でしかないのだ。
だがここで苦痛の声を出しておかなければ、後々さらなる苦痛を味あわせる可能性とより疑り深くされてしまう可能性があるので、今ここで苦痛の声を出しておかなければ不味いと判断したのだ。
「そうねぇ、いったい何が聞きたいのかしら？」
「あ、あの俺たちを襲ってきたロボットみたいな、確か自動人形、のことです。 さ、さっき襲ってきたのって、ノエルさんそっくりだったから」
「えっ！？」
心の放った言葉が信じられないといわんばかりに、忍は思わず驚愕の声をあげた。
「本郷くん！ それは本当なの！？」
「え、えぇ……本当です。 ただ、白い髪をのぞけばですけど」
「オプション、なのかしら。 でも、私が見つけたのはノエル一人の筈……だったら、ううんでも可能性としては」
さくらは口元に添えていた手を離し、辿り付いた答えを発する。
「創った、とでも云うしか」
「そんなことありえないっ！ そんな技術、この世の中探したってどこにも！ 現代の自動人形すらまともに動けないんだから……っ！」
「でもっ、そうとしか考えられないわ！ 」
心は彼女たちの言葉で理解する事が一つできた。
それは自分たち、改造人間とは違い、同じ者を何度も作れることが出来ないという事が、また稼動することですら難しいことに。
しかし、彼女のあり得ないを可能にする組織がある否あったのほうが正しい……そのはずなのに。
（それが否定出来ないのが……あの黒服の男と彼女らの云う自動人形っ）
『ショッカー』
結びつく答えが自分の中ではそれしか浮かび上がらない……。
だが有り得ないのだ！
ショッカーは自分が潰したのだ、潰した筈なのだっ！
だが……そこでしか結びつくことしか出来ないっ。
しかし認めたくない……そんな二つのジレンマに負われた心は決意した。
「っぇえい！ こんな場所で道草食ってる場合じゃないっ！」
この家にいて情報収集はしたかったが、それよりもまず『ショッカー』の存命の確認をするのが先だ！
心は倒れていた身体を立ち上がらせ、自分の両手を縛っていた手錠を一気に引き千切った！
「嘘！？ 対自動人形用として創ったはずなのに、ノエルッ！」
「はい！」
扉に走ろうとした時、ノエルが立ち塞がる。
ノエルは心を気絶させようとするのかブレードは構えず、徒手空拳で彼を沈めようと思っているのだろうが。
彼女は相手を見誤っていた。
「邪魔だっ！」
「ぐっ、あぁ！？」
心のただ勢い任せて腕を振るっただけの正拳突き、しかしたったそれだけの動作で受け止めようとした彼女の掌を突き破り、自身の手首までノエルの掌に入った。
しかし流れ出たのは血ではなく、なんらかの機械が足元にその破片が散らばった。
「こっちは結構な修羅場を潜ってるんだ。 そう簡単には負けないよ」
「うっ、ぐっあ……」
ズルリと手首まで入った拳を掌から引き抜き、心をリビングから出る。
「ま、待ちなさいっ！ 忍、貴方はノエルを！」
忍の返事を待たず、さくらは心を追う為に彼女もリビングから出た。
（あの子、やっぱり普通じゃなかった！）
100万ボルトを喰らったにもかかわらず平然と勢いよく立ちあがらせ、またノエルの手のひらを突き破るほどの力を持つ青年。
最初から警戒したにもかかわらず、あの情けない姿を見て、自分の思い込み違いだと油断したのが間違いだった。
あの手錠だってノエルですら完全に引きちぎることなど出来なかったことを、彼はそれができた。
「わたしとしたことがっ！」
見た目だけで完全に騙された……裏の世界ではそれが危険だというのにも関わらずに。
さくらが玄関から出ると、そこには既に心がバイク――サイクロン号に乗っていた。
心は追ってきたさくらに眼を向けながらもエンジンをかけ、今にでも走らせようとしている。
「忠告しておきます。 あいつ等と関わらないほうがいい、もし会ったとしても――逃げたほうがいい」
「わたしを、夜の一族の力を嘗めているの？」
「夜の一族？」
心の返しにさくらは訝しみ、その言葉に不審に思ったさくら。
裏の人間なのに、自分たち「夜の一族」についてを知らないのだろうか。
「なんの組織かは知らないけど、どの組織でも奴らには適わないよ。 奴らは正真正銘の、心を持ちながらも歪み、人間であって人間じゃない化物――俺みたいな存在だからね」
ヘルメットを被り、心はエンジンを大きくふかしてバイクを走らせた。
「人間であって人間じゃない化物……？」
さくらは心の言った言葉を呟く。
それはいったいどういう意味なのだろうか――「夜の一族」のことではなさそうではないし、将又自分の先輩の職業である退魔師でもなさそう。
では彼の言う、心を持ちながらも歪み、人間であって人間じゃない化物とは一体どういうことなのだろうか……。
「わからないわ……いったいあなたは何者なの？」
彼女は空を高く見上げ、ただ彼に尋ねたかった言葉を呟いた。
「歪んだ心、か」
心は苦笑しながらバイクを走らせて、自分の言葉を思い出す。
改造人間という自分たちはショッカーに特殊能力と異形(いぎょう)な仮面を与えられた。
戦ってきた改造人間の中の大半は脳改造を受けた者だが、もう大半は自身の歪んだ感情――復讐心、戦闘欲求、そんな人間らしい暗い心を持った改造人間もいた、また力に魅入られ自ら望んで改造人間になった人間たちも少なくはなかった。
彼等と自分は違う、そう否定する材料は少ない。
自分はショッカーを潰した理由は勿論「人の自由と平和」があった、だがもう一つは「復讐心」。
「人間であって人間ではないか。 俺にふさわしいかな」
グリップを強く握り締め、更にサイクロン号を飛ばした。
* * * * *
そんなサイクロン号の姿を陰ながら見ていた男は懐から無線機を取出し電源をつけ、ある人物に繋げる。
「ターゲット、第一倉庫に向かっています」
『え？ あぁ、参ったな……まだ準備完了してないってのに』
「そのことなのですが、――――――との首領からの言伝です」
『はぁ？ 何を考えて……いやどうせこうだろう、あのひとは』
「えぇ、お考えの通りです」
『『楽しみが故に』』
そして同時に両名はため息をつく……いったい何を楽しむのだが、あの百領は。 何あの契約で結んでいる集団のリーダーと同じことを言っているのだか。
『まあいいや。 別にあの裏の組織を取り込んだおかげで資金は潤いまくってるし、百領が何をしようが関係ねぇや』
ため息混じりに放った上司の言葉に思わず同情してしまう男。
「……それでは気を付けてお帰りください」
『サンキュ。 それじゃあな』
ブツンと電源が切れたことを確認した後、男もその場からすぐさま立ち去った。
* * * * *
「……」
心は第一倉庫の扉を押し開け、中を覗く。
倉庫の中に残されているのは、人間一人は入れそうで一枚の梵字が書かれている紙が貼られてある硝子ケースとテーブルに残された書類の束だけであった。
倉庫内に入り書類に手をかけると同時に顔を顰める。
「性行為専用自動人形について、って」
しかも書類に書かれている人物像はあのノエルそっくりな自動人形……こんなこと言うべきではないが壊してよかったかもしれない。
胸糞悪くなってきたのでその書類を破り捨てる。
次のページを開き、そこに書かれているのは。
「【イレインオプションを、ショッカーライダーと同じ性能に引き上げに成功。 またそれに加え、二種類の能力加えにも成功】……イレインオプションって、それにショッカーライダーに二種類の能力、だと！？」
心は書類をバンッと力強くテーブルの上に置き、すぐさま辺りを見渡す。
もしもここにあの組織の残党がいるとなれば、あの紋章を堂々と飾っているはずだ！
壁に貼られてあるポスターを思い切り引き剥がし、埃かぶっている壁を手で拭い去る。
しかし何処にもない……。
自分の思い込みだったのだろうかと、何となく天井に眼を向けると。
「！？」
あった。 あってしまった、見つけてしまった！
あの忌々しいエンブレムが！
ダンッと跳躍し、天井に貼られてあったエンブレムを無理矢理引き剥がす。
手に取ったブロンズで作られたエンブレムを見る。
そのブロンズに彫られていたのは、地球を鷲掴みにしている見慣れた鷹と、その鷹に見慣れない龍が巻き付いたものだった。
しかし、この特徴ある鷹は自分は知っている。
そうこれは、この鷹のマークを自分たちはこう言っていた。
「ショッカー……だけど」
この巻き付いている龍は一体何なのだろうか、その疑問が浮かび上がった瞬間。
『ようこそ、仮面ライダー』
「っ！？」
エンブレムの鷹の瞳が光ったと同時に、ボイスチェンジャーによる声が聞こえた。
声を聞いた瞬間、心はすぐさまエンブレムから手を離し距離を取る。
『ふふっ、貴方が来るとは不足の事態だけどこうじゃなくちゃ面白くないわ。 楽しませてもらおうかしら』
「っ出てこい、ショッカー！」
『ショッカー……？ あぁ、古臭い組織名のこと？ ざぁんねん、わたしたちはそんな人間じゃないわ』
「？ どういうことだ！？」
『ふふっ、それは後のお楽しみ♪ あれに勝てたら、教えてあげるわ』
その言葉を最後にエンブレムの瞳の光が失うと、突如ガラスケースから赤い光が放った。
心は驚愕に満ちた表情で赤い光に目をやると、梵字の書かれた紙から赤い光が放たれており、またそれは何かに形作られていく――徐々に徐々にそれは形作られていくそれは。
「……！？」
そう、仮面ライダーそのものだった。
スーツの色も仮面も体格も、すべてが自分が変身する仮面ライダーであるが唯一の違いがみられるのがあった。
それは綺麗さ……心が変身する仮面ライダーと違って、目の前にいる偽・仮面ライダーは新品同様なのではないか云わんばかりの綺麗さを保っていたのだ。
偽仮面ライダーは硝子ケースから抜け出し、心に向かって殴りかかってきた！
「っ！」
なぜあの梵字の紙から自分そっくりなライダーが出たのか、あのエンブレムはなんなのか、声の人物は何者なのか。
様々な謎に心は頭を悩ませていたが、それよりもまず目の前にいる偽仮面ライダーを何とかするのが先だ。
偽仮面ライダーの拳を軽く膝を曲げて避け、心は偽仮面ライダーの腹部を蹴りつける。
後ずさった様子を見た心はベルトを展開させるとベルトの風車が回転する。
偽仮面ライダーとは対照的に傷ついたスーツを着用した心は手に持った仮面とクラッシャーを身に着ける。
「！」
襲い掛かってくる偽仮面ライダーの拳を仮面ライダーは受け止められず、すぐさま弾かれ、偽仮面ライダーの拳がライダーの仮面に叩き付けられた。
「ぐぁ」
「！」
ライダーがたたら踏んだ隙を狙い、偽仮面ライダーの拳のラッシュが襲い掛かってくる。
ライダーは両腕をクロスして、ラッシュの連撃を防ぐが、耐えきれなくなり徐々に後ろに下がっていく。
そして偽仮面ライダーのラッシュの最後となる正拳突きがライダーに放たれ、ついには吹き飛んでいまい、壁に叩きつけられる。
「ぐっ……俺と、同じ力か」
偽仮面ライダーの力……それはライダーと同じ『力』のホッパーと同じ能力。
パンチ主体の重骨ながらもまっすぐな戦闘スタイル、一撃一撃が重く、しかも性能どおりに動いているので受け止めることすら出来ない……。
「だが……」
ライダーは壁から身体を離し、一歩一歩ずつこちらに近寄ってきている偽仮面ライダーを見る。
偽仮面ライダーはダッと地面を蹴り、拳を大きく振りかぶる。
ライダーはすぐさま両腕の隙間を縫うように偽仮面ライダーの脳天に突き刺さるような手刀を振り下ろす技【ライダー脳天チョップ】だ！
「！？」
どうも目の前にいる偽仮面ライダーは綺麗すぎる攻撃しかしない……つまりは単純すぎる攻撃でしか仕掛けてこない。
真っ直ぐで綺麗すぎる攻撃は見極めやすい、それ故に同じ手は二度は喰らうことはない。
ライダー自身もその攻撃パターンを何度も行った所為で、ショッカーの改造人間に敗北することが多かった。
偽仮面ライダーは脳天をやられてしまったためか、足が覚束なくなり、後ろに下がってしまう。
その隙をみすみす逃すほどライダーは愚かではない。
ライダーはすぐさま突進を繰り出し、偽仮面ライダーも吹き飛び地面を擦らせながら滑っていった。
倒れた偽仮面ライダーに止めを差すべく、ライダーは片手で偽仮面ライダーを持ち上げ、もう一本の片手はベルトを掴む。
そして偽仮面ライダーの身体を回転させていく、そのスピードは最初から勢いがあり、徐々に徐々に大回転へと変貌させていく。
そして大回転の影響で、ライダーと偽仮面ライダーの軸に竜巻が発生する！
これぞライダーの必殺技『きりもみシュート』だ！
ライダーの興じた竜巻は第一倉庫の屋根を突き破り、偽仮面ライダーを上空に投げ飛ばされた！
「とぉう！」
ライダーはそれを追うかのように跳躍し、偽仮面ライダーよりも上空高く飛び上がる。
そして動きが封じられている偽仮面ライダーに向け、飛び蹴り――ライダーキックを放った！
「――――」
偽仮面ライダーの腹部にあるベルトの風車にライダーキックが炸裂するとともに、偽仮面ライダーは大きく吹き飛びそして。
ズガァンという小爆発を起こした。
「どういう意味だ……」
ライダーは偶然耳にしていた。
『覚えた』
小爆発を起こす直前、偽仮面ライダーがそう口にしていた事を。
スタッと地面に降り立ったと同時にライダーはひったくるかのように書類を掴みとる。
書類を片手に第一倉庫から飛び出し、サイクロン号へと走り出そうとしたとき。
「そこまでだよ」
声が聞こえたと同時に、銃声が鳴り響くと、ライダーの足元に銃弾が埋め込まれていた。
「それ以上動くと撃つ。 大人しく投降してくれ」
ライダーは視線を向けると、そこには一際目立つ銀髪の女性が自分に銃を向けていた。
* * * * *
「ふふっ、中々のものだったわ」
暗闇に覆われている部屋の中、空中に浮かんでいる一つの映像――偽仮面ライダーとライダーとの対決が丁度終えた場面が切れたと同時に、一人の女性は立ち上がり、壁に貼られていた一枚の梵字の書かれた紙――陰陽符を剥がした。
「流石は仮面ライダーってとこかしら」
やはり自分の部下に命じて、エンブレムと陰陽符を残しておいて成功だった。
中々楽しめたものだし、おかげでライダーの必殺技が少しは分かった……特にあの竜巻を起こす技はすさまじかった。
「とりあえず、あの技に対しては気を付ける程度にはインプットさせなきゃね、劣化品でも利用価値はあるのだし」
ほかにもさまざまな技がありそうだが、まぁ別にいいだろう劣化品だから。
「さぁ……どうやってあの劣化品たちを相手に戦うのか楽しませてもらうわ」
女性は艶っぽさを感じさせる声で、だが表情に暗い笑みを浮かべながら言う。
後書き
遅くなって本当にすいません……。
ちなみに作中にあった陰陽符というのはオリジナルです。
一応とらはにも退魔師がいるし、陰陽符というのも面白いかなと思い、今回取り入れました。
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