第五話
『ボスとの対決・・・・・・勝てるかな・・・?』

人の姿に戻った三人とズドカーンは、黙々と歩き続けている。
そんな中、ベルトランはアキラをジッと見ていた。

先程の戦闘・・・自分とリンリンシャオが戦ったギザモンは、あっさりと倒すことができた。
恐らく、リンリンシャオに喰らわされたダメージが残っていたのだろう。
だが、この目の前に居る少年は、いとも簡単に倒したのだ。もう一体の敵を。

奥歯をかみ締める。何故か苛立つ。この腹の底から湧き上がる感情を、ベルトランは持て余していた。
あの黒い粒子についても、ズドカーンは
「試験に受かって、ガードになったら教えてやる」
と言ったっきり、だんまりだ。

「ねぇ、アキラ君。」
リンリンシャオが、アキラを呼ぶ。
「ん?何?」
「アキラ君って、強いんだね。どうしてあんな風に戦えるの?」
視線だけを向けるアキラに、リンリンシャオが疑問をぶつけた。

「・・・オレの両親、ガードなんだ。だからかな、オレをガードにしたいらしいんだ。
 んで、そのためにオレは色々なことを叩き込まれた。それこそ、武術からソウルチェンジをしての戦闘、
 果ては、応急処置から機械のことまで・・・何でもござれってやつ。」
平然と話すアキラ。が、リンリンシャオは見逃さなかった。
一瞬ではあるが、その表情が怒りと悲しみに満ちていたことに。

「・・・ごめんね。」
軽い気持ちで聞いてしまった自分を恥じる。
「? なんで謝ってるの?」
苦笑しながら聞くアキラ。
「うん・・・そうだね。なんでだろ。」
そういって、リンリンシャオは笑った。


突然、ズドカーンが歩みを止める。
後ろを歩いていた三人もしかり。
「どうしたんですか?」
怪訝な顔で尋ねるアキラ。
「いや・・・もうすぐボスの部屋に着くぞ。」
「どうして分かるんです?」
リンリンシャオが、首をかしげながら聞いた。
周りを見渡しても、なんら変わったところは無い。

「それはな・・・ガードの勘ってやつだ。」
そう言うズドカーンに、三人は呆れる顔をするしかなかった。

・・・が、不思議なことに、そういったものは当たるものである。
再び歩き出した4人は、一際広い部屋へ出た。
そこは、今まで歩いてきた通路や、戦闘を行った部屋と違って
造りがしっかりしている。壁には、明かりが並んでおり、まるで人が住んでいるかのようだった。

その部屋の中央奥に、何かが居る。その何かは、アキラ達に気づくとゆっくり近づいてきた。
人のようにも見えるが、頭と思われる所が不自然にでかい。

かなり近くまで来ると、それが何か、ハッキリと分かった。
体だけみると、人の姿をしていた。肌が浅黒く、体毛は金色だった。腰には刀を携えている。
だが、その頭は、獅子の様な顔に獅子のような鬣。
人の体に、獅子の顔。
まさに獣人と呼ぶにふさわしい風貌。
種族名は『レオモン』。

呆然とレオモンを見る三人。
まさか、ボスビーストがレオモンだとは考えもしなかった。

「バトルフィールド形成。」
ズドカーンが、APアダプタに命令する。
空間が歪み、バトルフィールドが形成された。

「ま、まさか、戦えなんて言いませんよね・・・?」
リンリンシャオが震えた声で、ズドカーンに言った。
「当然。戦うんだ。」
キッパリと言い放つズドカーン。
青ざめるリンリンシャオ。
無理も無い。相手はワンランク上の『成熟期』なのだから。


デジモンは進化することで、その形状や能力が変化する。
アキラ達のデジソウルであるアグモンやテントモン、ピヨモンは『成長期』という部類に入る。
進化すると『成熟期』となり、たくましい体つきになる。もちろん、見た目だけではなく、強さも格段に上がる。
さらに進化すると『完全体』となり、『成熟期』よりパワーアップする。
『完全体』の上に『究極体』というランクがあるのだが、
『究極体』のビーストは確認されていないし、ガード内でも三つのガードチームのリーダー達が、
もしかしたら『究極体』のデジソウルを持っているかもしれない、と噂されるだけ。
まさに伝説の存在と言える。


「やるしかないだろ。」
ベルトランがリンリンシャオに言った。
「最終試験らしくなってきた感じがするしね。」
アキラも続いて言う。

リンリンシャオは、少しうな垂れた後、ゆっくりと顔を上げた。
その瞳は、決意に満ちている。

「うん・・・頑張ろうね。」
リンリンシャオの様子にアキラは安堵すると、レオモンを見据える。
そして、三人はつぶやく。
「・・・ソウルチェンジ」
光が発せられ、収まるとそこには三体のデジモンがいた。
てんとう虫のようなテントモン。
小鳥の印象を受けるピヨモン。
そして、恐竜に似たアグモン。

レオモンは、三人を見定めているかのように見ていた。

「(どうする・・・? 連携、は無理だろうな。)」
アキラは、構えたまま考えていた。先程の戦闘で、連携を無理にしようとすると自爆することは分かった。
一対一は危険だろう。ただでさえ向こうの方がランクは上。
「(なら、遠距離からの一斉射撃か?)」
様子見を踏まえての遠距離攻撃。今は、これが一番安全な方法かもしれない。
アキラは、その事を伝えるため、二人を見る。
だが、そこにベルトランが居なかった。リンリンシャオが唖然という感じで前を見ていた。
ハッとなり、直ぐに前を見た。

「っ! ベルトラン!」
目に飛び込んできたのは、今まさにレオモンに飛び掛からんとするベルトランの姿だった。
「くそっ! リンリンシャオ!援護を頼む!」
アキラもレオモンに向かう。

ベルトランは、その鋭い爪で引き裂こうとする。
だが、レオモンは左腕でベルトランの右腕を弾く。そして、後ろに引いていた、右腕を突き出した。
ズドン!という音が響き、ベルトランの体が後方へ飛ぶ。

「くっ!」
後ろを走っていたアキラ目掛けて飛んでくるベルトランを、受け止める。
勢いを殺せず、一緒に吹き飛んでしまった。
「二人とも!大丈夫!?」
リンリンシャオが、倒れている二人の下へ駆け寄ってきた。

アキラは軽傷のようだが、ベルトランはかなりきつそうだ。
腹部に拳が当たったのか、腹を押さえて唸っている。
とりあえずは、大丈夫そうだ。リンリンシャオは安堵のため息をついた。
「もう!何で一人で行っちゃうの!」
ベルトランをキッと睨みながら怒声を上げるリンリンシャオ。
「ベルトラン・・・勇猛と無謀は違うよ。」
アキラも幾分怒気を含んだ声で言った。
ベルトランは、二人を横目で睨みながら舌打ちする。

「はっ、じゃぁ何か作戦でもあんのかよ? 優等生さんよ?」
皮肉げに言うベルトランに、リンリンシャオが頬を膨らませる。
「そんな言い方・・・!」
リンリンシャオがたしなめようとすると、アキラが言葉でさえぎる。
「オレ達は遠距離攻撃を持ってるから、とりあえずそれをぶつけてみよう。」
今できることはそれしか無かった。
リンリンシャオが頷く。ベルトランは、また舌打ちをし、立ち上がった。

レオモンを見る。ただアキラ達を見ていた。
待っていてくれたのか、それとも様子を見ていたのか。

ベルトランが羽を振るわせる。
「プチサンダー!」
テントモンの必殺技である、羽で静電気を起こし相手にぶつける『プチサンダー』
続いて、リンリンシャオの『マジカルファイアー』
アキラの『ベビーフレイム』

三人から発せられた炎と電撃は、レオモンに一直線に向かっていった。
が、レオモンは避けようともせず、右腕をストレートに突き出す。
すると、右腕から獅子の顔をしたエネルギーが放出された。
レオモンの必殺技『獣王拳』だ。

双方の必殺技が激突する。
轟音と砂塵が巻き起こった。

「そ、相殺・・・された?」
アキラが目を見開き、つぶやいた。
「そんな・・・私達全員の攻撃を・・・?」
リンリンシャオがへたり込む。

砂塵の中から、レオモンがゆっくりと歩いてくる。
「(近距離も駄目、遠距離も駄目。ちっ・・・詰み、か?)」
アキラは諦めかけた。だが、そんな考えを振りほどくかのように頭を振る。
「・・・ベルトラン」
「・・・なんだ?」
アキラの呼びかけに、ベルトランは不機嫌そうに応えた。
「オレに付き合えよ。」
ベルトランがアキラを見る。その顔は、覚悟を決めた顔だった。
「いいだろう。こうなったらヤケだ。」
ベルトランは、鼻で笑いながら言った。

「うぉぉぉ!」
アキラが疾走する。ベルトランもそれに合わせて飛び立った。
「はっ!」
アキラが左腕を突き出した。だが、レオモンは紙一重で避ける。
そのまま連撃に移るも、すべて避けられてしまう。

レオモンが放った蹴りがアキラに直撃する。
「ぐっ!」
腕を交差させるも、かなり重い蹴りだった。

レオモンが、後ろへ跳ぶ。
レオモンが居た位置に、ベルトランのプチサンダーが飛んできた。

アキラがレオモンを追う。先程のダメージのことなど気にしていなかった。
攻撃してはいなされ、反撃を喰らう。
ベルトランも切りかかるが、結果はアキラと同じだった。
それでも、食らいつく。追いかけ、腕を突き出す。

「・・・二人とも・・・。」
呆然としていたリンリンシャオの瞳に光が戻る。

「はぁぁあ!」
「うおぉぉ!」
今度は、同時に。
正面からアキラが右腕で薙ぎる。
ベルトランが後ろから、腕を振り下ろす。

レオモンの口元がつりあがる。
体を横にし、右腕でアキラの攻撃を押さえ、左足でベルトランを蹴る。
「まだだ!」
アキラがレオモンの顔目掛けて火球を吐き出し、ベルトランが吹き飛びながらも電撃を放つ。
だが、レオモンは首だけで火球を避け、左手から小さめの『獣王拳』を出すと、ベルトランの電撃を相殺させた。

今ので決まらなかった。アキラは、自分の体から力が抜けていくのが分かった。
レオモンが、腰の剣を左手で抜き、振りかざす。
見えていても、何も出来なかった。

次の瞬間、レオモンに青い炎が直撃した。
「グゥ・・・。」
不意をつかれたレオモンは、当たった箇所、腹部を押さえながら二、三歩よろめいた。

炎が飛んできた方向を見る。
放った人物は直ぐに分かった。
「・・・リンリンシャオ」
「大丈夫?!アキラ君!」
リンリンシャオが駆け寄る。

ベルトランも近寄ってきた。
「おい、何ぼおっとしてんだよ。もう一回行くぞ。」
「・・・あぁ!」
アキラが立ち上がり、レオモンと対峙する。

そして、いざ攻撃を再開しようとすると、
「待て。」
レオモンが、右手で制止するかのように出し、言った。
これには、驚く。何せビーストが人語を解するなど、聞いたことが無かったからだ。
だが、三人は次の言葉でさらに驚くことになる。

「最終試験、合格だ。」
もう、唖然とするしかない。そんな三人をよそに、ズドカーンがレオモンに近づく。
「お疲れさん。」
レオモンから、光が発せられる。
「ま、まさか・・・」
アキラがつぶやく。

「そう・・・そのまさかだ。私は君達と同じ、ガードだ。」
光がおさまり、レオモンの代わりに一人の青年が居た。
「私は、今回の試験官兼ボスビースト役のブランワイスマンだ。よろしくな、諸君。」
そういって、青年・・・ブランワイスマンは、ニッと笑った。





後書きと言っていいですか?な言い訳。
ども!酒呑 童です。
今回はちょっと長かったりします。
いやぁ、驚きましたねぇ、レオモン、ガードでしたよ。
最初はそんな予定なかったんですけどねぇ・・・。

相変わらずキャラクター達は私の思い道理に動いてくれません。

それはさておき、アキラ達合格しましたね。
なんか妙に熱いキャラ達だなぁってお思いかもしれませんが、
私が、ガオガイガーが好きだ言えば、お分かりになる方が多いと思います。

熱いキャラ、熱いシーン、熱血など等。かなり好きですねぇ。
技名叫んだりするのもいいです。

ではでは、またいつか!


感想

酒呑 童さん作品の方段々とノッてきましたねぇ♪

気分良く作品が進むのは良い事です。

キャラが勝手に動くというのも、実はとてもいい事だと思います。

キャラが勝手に動くというのは、そのキャラがどお動くのか分っているということですから。

本来のシナリオよりも、キャラたちが活き活きできる方に動いているという事です。

作品を作る時は結構重要なのではないかと…

まあ、私もキャラに振り回されてばかりですので、それの良さは知っています。

欠点としては話が長くなるという事でしょうかね?(爆)

まったくようやく自作が一本あがっ ただけというのに、何をえらそうに…

盆休みの間に後二本は作らないと示しがつきませんよ?

先月は殆ど休業でしたしね…

うぅ…がんばります…

でも、ほら…今は感想だし。

アキラ君たちは可愛いですね♪ 三人ともまだ十代前半といった所ですね。

キャラが活き活きしているのを見ると私も嬉しくなってしまいます♪

三ヶ月も〜光と闇に祝福を〜の更新を止めていた駄目男には真似できませんね…

今後に期待しています!

はははは…(汗)


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