第八話
『迫り来る闇・・・お約束な展開・・・?』

「な、何を・・・」
狼狽するリンリンシャオを、少女はじっとみつめた。

「・・・まぁ、良いわ。それで、あの子たちは、あんたの仲間?」
少女が溜め息をつきながら尋ねた。
「え・・・う、うん・・・。」
「ふぅん・・・なんであんたは、ここにいるの?
 一緒に戦ったりしないわけ?」
少女の言葉に、リンリンシャオの表情が曇る。

「・・・あの子の名前、なんていうの?」
少女は、そんなリンリンシャオにかまうことなく、次の質問をした。
「え・・・あの子って・・・?」
再度言うが、バトルフィールド内を見れる人間など居ない。リンリンシャオも然りだ。
「だから、あの、『アグモン』の子よ。・・・あの子、先天性?」
『アグモン』で、『デジソウル』を内包した装飾品をつけてない仲間と言えば、アキラしかいない。
「うん、先天性・・・・・・アキラっていうの・・・。」
リンリンシャオが答える。
少女は、じっとその空間を見ながら、ふぅん、とだけ言った。

「あんたが行かないなら、あたしが行こっと。」
「へ!?」
少女が背伸びをしながら言う。
リンリンシャオは、つい素っ頓狂な声をあげてしまった。
何故そういうことになるのだろうか。

「ど、どうしてそうなるの!?」
あわてながらリンリンシャオが少女に異議を唱える。
「ん〜・・・あのアキラって子、タイプなのよね。」
「・・・はぁ!?」
またもや素っ頓狂な声をあげてしまった。
先ほどから、この少女には驚かされてばかりだ。

「じゃぁ、そういうことで。」
少女は、そう言うと、さっさと部屋へと向かった。
「ちょ、ちょっと待って!!」
リンリンシャオがその後を追う。


「やっぱり力の差は歴然・・・かな。」
何度目かのベビーフレイムを弾かれながら、アキラがつぶやいた。
目の前の肉食恐竜もどきは、余裕の表情だ。
・・・なんてムカつく顔なんだろう・・・。
アキラは、ぶん殴りたい衝動に駆られるが、いかんせん歯が立たない。

接近戦に持ち込んだら、あっという間に倒されてしまう。

急にティラノモンが図体に似合わない素早い動きで、疾走する。
「っ!?」
あまりに突然のことに反応が遅れてしまった。
既にティラノモンはアキラの正面に居る。それどころか、その大きな口でアキラを噛み砕こうとしていた。

その刹那。

「どっかぁ〜ん!!」
と、その場にそぐわない言葉が響き、ティラノモンの横っ面に何か緑色の物体が突撃してきた。
その衝撃に、吹き飛ぶティラノモン。

「アキラ、大丈夫!?」
呆然とそれを見ていたアキラに、リンリンシャオが駆け寄ってきた。
「リン!?どうやってバトルフィールド内に!?それにその子は・・・!」
アキラが困惑の表情を浮かべながら、緑色の物体を指差す。
緑色の物体は、先ほど出会ったデジモンとも人間ともつかないモノだった。

「落ち着いて、あの子は味方だよ。バトルフィールド内には、あの子のAPアダプタを使って侵入したの。」
再びアキラの顔が困惑の色に塗りたくられる。
「バトルフィールド内に・・・侵入・・・?」
それは空間に割り込むことと同義。
そんな技術、聞いたことがない。

「ねぇ!今はそんなことどうでもいいでしょ!!」
花を思わせる格好をした少女が、二人を叱咤する。
「そこの呆けてるてんとう虫!!あんたもさっさと戦う!!」
少女はベルトランに怒声を浴びせた。

「テ、テントウ・・・」
いきなりな罵声に一瞬思考が止まるベルトラン。
だが、すぐに我に返ると憤慨する。
「誰が天道虫だ!!貴様の油虫でも取ってやろうか!?」
「・・・ベルトラン・・・」
少々哀れみを含んだ目で見るアキラとリンリンシャオ。
どうやらかなり心外だったらしい。おおよそ普段のベルトランなら言わないようなことだ。

そんなやり取りをしている内に、ティラノモンが起き上がり、4人に向かって咆哮を上げた。
「よ〜しっ、いっくよー!」
マユミは気合の入った声を出すと、両腕を地面に突き刺した。
何かが地面の中を這っている。それは真っ直ぐティラノモンへと向かっていった。

硬いものを砕く音がなり、ティラノモンの足元から、紫色のツルのようなものが6本ほど地面から飛び出す。
そのツルがティラノモンの腰の辺りまで絡みつく。
「てやぁ!」
マユミが掛け声と共に、両腕を思い切り引っ張る。

せり上がっていた地面を割りながら、紫色のツルが出てきた。そのツルはマユミとティラノモンを繋いでいる。
紫色のツルはマユミの両腕の先から伸びているものだった。
ツルはマユミが引っ張っているため、ピンと張っている。

ティラノモンが腰に絡まっているツルを掴む。
そのままぐいっと自分のほうへ引っ張った。
だが、マユミはその場から全く動かない。いや、少しずつ引きずられているが、それでも成熟期相手に良く踏ん張っている。

アキラ達は驚いた。この少女の見た目から、それほどの力があるとは想像できなからだ。
だが、その驚きは、少女の足下を見て、納得に変わる。
マユミの足から根っこのようなものが生え、地面に突き刺さっていたのだ。

「ちょっとっ・・・!ぼけっとしてないでよぉっ・・・!」
少女の抗議の声に、アキラ達ははっとすると、気を取り直してティラノモンに向かっていった。
腰から下が動かないのであれば、接近戦もたやすい。
上半身だけに注意していればいいのだ。

「はぁぁあ!!」
アキラが疾走し、勢いを殺さずにティラノモンに激突する。
ティラノモンの口から、うめき声が漏れた。だが、それも一瞬ですぐに腕を振り上げ、アキラを叩き落そうとする。
その腕は、後から飛んできた青い炎によって止められることになる。
ピヨモン・・・リンリンシャオの『マジカルファイアー』だ。

ティラノモンの顔が怒りに歪み、口を思い切り開いた。
その奥に赤い光が見える。ティラノモンの必殺技、『ファイアーブレス』の前兆だ。
「マヌケめ!」
ベルトランが罵声を浴びせながら、その口の中に、電撃を放った。

ティラノモンの口の中で、軽い爆発が起きる。その小規模な爆発とは裏腹に、とてつもない衝撃がティラノモンの頭を貫通する。
ぐらり、と後ろに倒れていくティラノモン。

「よっと」
少女、マユミがティラノモンの拘束を解く。
支えが無くなったティラノモンは、大きな音と共に倒れた。

「・・・ふぅ。」
アキラを初めとして、全員がソウルチェンジする。光が収まり、人間に戻ったアキラ達が姿を現した。
空間が歪み、バトルフィールドが解除される。

アキラがマユミの方を向き、口を開いた。
「助けてくれてありがとう。オレはアキラ、こっちが・・・」
「ベルトランだ。」
アキラが礼と自己紹介を済ませる。

「マユミ・・・ちゃん、だったよね」
「呼び捨てで良いよー。あと、聞きたいことも分かってるから。あたしが何者か、あのソウルチェンジは何なのか・・・でしょ?」
慣れたようにマユミは言った。
その言葉にうなずくアキラ達。
「そうねー・・・まず、あたしはシティの人間じゃない。『デバイスドーム』ってとこに住んでるわ。ちょっと偏屈な技術者が集まって一つの街を作ってる の。」

アキラ達は顔を見合わせた。正直な話、信じられない。シティ以外の場所で人間が暮らしているなど、聞いたことが無かったからだ。
だが、このマユミという少女のソウルチェンジもそうだが、何より他のバトルフィールドに侵入できるAPアダプタも、シティ内では見たことが無い。
そういう噂すら聞いたことが無かった。
なら、『デバイスドーム』という存在は、この二つが証拠になる。

「それで、あたしのソウルチェンジだけど・・・」
マユミが三人の怪訝な顔などお構い無しに話を続けようとする。
が、それは中断せざるを得なくなった。

低い唸り声をあげながら、ティラノモンが立ち上がったのだ。どうやら気絶していただけらしい。
その形相は、憤慨やるかたないといった感じ。殺気が空気中を漂い、四人の体にたたきつけられる。
「(・・・止めを刺しておくべきだったな・・・)」
アキラが心の中ではき捨てた。

「・・・続きは後だね」
マユミが言う。アキラ達はうなずくと、声を上げた。
「ソウルチェンジ!」













久方ぶりに後書きとたうつ言い訳
どうも。お久しぶりです。
いえ、ホント久しぶりすぎてすみません。
すみませんついでに、作中に登場するマユミ。ホントはアユミって名前でした。
キャラクターの名前すら間違えてしまう始末。もう、マユミで良いかな、と。
二次創作と呼べなくなってきたけど、良いかな、と。

これからもこの駄文にお付き合いくだされば幸いです。
開き直ったので、読んで下さっている方が居れば、感想など頂きたいなーとか分不相応なことを考えている自分が居ます。

では、次の駄文で。



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