機
動戦士ガンダムSEED Destiny 〜Whereabouts of fate〜
第一話 怒れる瞳(後編)
カガリとデュランダルが会見を行っていた頃、ステラ達3人は町外れの大きなビルボードの前にいた。
それに映る映像をしばらく見上げていたステラだったが、その映像が同じものの繰り返しだと気付くと、その視線を空に向けた。
この空には、太陽がない。
「プラントって毎日が晴れでいいよなぁ。天気予報なんていらねぇじゃん」
「バーカ、プラントだって雨くらい降るさ」
アウルの言葉にステラが黙ってこっくりと頷いていると、スティングが口を挟む。
「え、うそ!? なんでわざわざ雨なんて降らさなきゃなんないんだよ?」
「さあ、色々あんじゃないの? 雨降らさないとさ」
「雨降りなんてサイアクじゃん。服とか濡れるし。な、ステラ?」
「……うん」
アウルに同意を求められ、ステラは頷いた。
そんな2人を見ていたスティングは、こちらに近づいてくる1台の車を見つけた。
彼らの前に停まったバギーの全部座席には、ザフトの軍服を着込んだ軍人が乗っている。
スティングの視線にその軍人達が頷くのを見て、3人はバギーの後部座席に乗り込んだ。
彼らを乗せたバギーはそのまま軍工廠に向かい、入り口のゲートでIDを見せると、守衛は特に不審に思わずに彼らを敷地内に入れた。
MSが歩き回り、多くの見学者が行き交う工廠内をバギーは走り、やがて、ある格納庫の前に停車した。
カードをキースリットに通し、重々しい音と共に重厚な扉が開くと、彼らは中に駆け込んだ。
それと同時に軍人達からスティング達に武器が手渡される。
スティング達は慣れた手つきで弾倉を装填し、ステラはナイフを鞘から抜き放ち、それと同時に何かのスイッチが入った。
―さあ、ここからが本番だ―
スティングの合図と共に彼らは物陰から飛び出した。
中にいた軍人達が気付かない内に銃声がこだまし、スティングの連射を食らった兵士達がなぎ倒された。
それを合図に軍人達が侵入者達に銃を向けたが、それはあまりにも遅すぎた。
アウルが宙で側転することで兵士達の放った銃弾を避け、逆に兵士達はアウルが空中で放った銃弾によってその命を刈り取られて行く。
「アウルっ、上だ!!」
スティングの声に、アウルは振り返りもせず肩越しに両手の銃口を背後に向け、コンテナの上にいた兵士達を撃ち落した。
スティング達が銃弾をばら撒く間に、ステラは両手に持ったナイフで次々に喉笛を切り裂いて行く。
ナイフを振るう度に白いドレスが翻り、血飛沫が紅いまだら模様を描く。
そうして数分もせずに二十数名はいた兵士達は全滅し、格納庫は制圧された。
奇襲であったとは言え、コーディネイター、それも紅服を含んだザフトの兵士達が僅か5人の男女に敗北したのだ。
辺りに動く者がいなくなったのを確認すると、ステラは気のない動作でナイフを放り捨てた。
アウルも周囲を確認しながら、スティングに声を掛ける。
「スティング!」
「よし、行くぞ!」
スティングの号令と共に、3人はそれぞれ三基のクローラーに向かい、その上に横たわる灰色の巨人のコックピットに飛び込んだ。
シートに座ってからコンソールを操作してOSを立ち上げると、手元のモニターに文字が浮かび上がった。
―――Generation
Unrestricted
Network
Drive
Assault
Moduele
『G U N D A M』―――ガンダム、とでも読むのだろうか。
<どうだ?>
通信機からスティングの声が響く。
<OK 、情報通りだ>
「いいよ」
アウルが応じ、ステラも作業を続けながら答えた。
その手が踊るように動き、教えられた通りに起動シークエンスをこなす。
やがてエンジン音がクローラーを震わせ、三機の巨人が立ち上がった。
ロックが外れ、電源ケーブルがはじけ飛んだ頃になってようやく、工廠内にサイレンが響き渡った。
瀕死の状態だった兵士が警報ボタンを押したようだが、遅すぎた。
鉄灰色だった三機の装甲が、揺らめくように色づいた。
スティングの乗る『ZGMF-X24S カオス』はモスグリーンに。
アウルの乗る『ZGMF-X31S アビス』はネイビーブルーに。
そして、ステラの乗る『ZGMF-X88S ガイア』は黒に。
三機のガンダムは警報の鳴り響く格納庫に立ち並び、その姿を堂々と見せ付けた。
アスランとカガリは、デュランダルに連れられて司令部を出た。
突然、工廠内を案内しようと言い出した彼に続き、カガリとアスランはMSが歩き回る工廠を歩いていた。
MSが歩く度に地響きが聞こえ、辺りからはオイルの匂いがするこの場所を見て、アスランは郷愁のようなものを覚えていた。
嘗ては自分が身を置いていた場所だと思うと、ついつい辺りに立ち並ぶMSに目が行ってしまう。
自分がいた頃は主力だった『ジン』や『シグー』の他にも、当時は実戦配備が始まったばかりだった『ゲイツ』も見える。
薄黄色の戦車のような機体は、恐らく『ザウート』の次世代機だろう。
「姫は先の戦争でも自らMSを駆り、前線で戦われた勇敢なお方だ」
デュランダルは時折、行き交うMSや格納庫の中を解説しながら、この行為を言い訳するように言った。
「また、最後まで圧力に屈せず自国の理念を貫き通した、『オーブの獅子』ウズミ様の後継者でもいらっしゃる」
父の名を持ち出され、カガリはやや感傷的な気分になる。
「―――ならば今この情勢下の中、我々がどのような道を取るべきかは、よくお分かりの事と思いますが……」
「我らは自国の理念を守り抜く、それだけだ」
「他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない?」
「……そうだ」
頷くカガリを見て、デュランダルも笑みを浮かべながら同意するように頷いた。
「それは我々とて同じです。そうであれたなら、一番良い」
しかし彼は柔和な笑みを浮かべたまま、こう続けた。
「―――だが、力なくば、それは叶わない」
そう言った時、アスランはたまたま覗き込んだ格納庫に並んだ機体を見て、息を呑んだ。
それを見た随員の1人が、どこか誇らしげに声を掛ける。
「『ZGMF-1000 ザク』―――これは、ザクウォーリアと呼ばれるタイプですな。ニューミレニアムシリーズとしてロールアウトし
た、我が軍の最新鋭機です」
モスグリーンを基調とした機体は、モノアイや鎧武者を思わせる全体のフォルムから、ジンやゲイツの流れを若干だが感じさせる。
アスランがその機体―ザクを見ている間も、デュランダルの話は続いていた。
「―――それは姫とて、……いや、姫の方がよくお分かりでしょう? だからこそ、オーブも軍備を整えていらっしゃる」
力なくば叶わない、それはカガリもよく分かっていた。
事実先の大戦で、オーブは力及ばず、その地を焼かれたのだから。
だがカガリはその言葉に反発するように、突然ぶっきらぼうに言い返す。
「その、『姫』というのは、やめていただけないか?」
「これは失礼しました―――アスハ代表」
虚を衝かれたように目を見開いた後、笑いを噛み殺しながら頭を下げたデュランダルを、カガリは憤然とした表情で睨んだ。
歩を進めながら、デュランダルは中断された話の続きを話す。
「―――しかし、ならば何故? 何を怖がっていらっしゃるのですか、あなたは」
その見透かすような声に、カガリは頭を上げた。
「大西洋連邦の圧力ですか? オーブが我々に条約違反の軍事供与をしている―――と?」
図星を衝かれて顔色を変えたカガリを見て、デュランダルはなおも続ける。
「ですが、そんな事実は無論ない。
確かにかのオーブ防衛線のおり、難民となった同胞を、我らプラントが温かく迎え入れはしましたが……」
工廠内で作業をしている技官の中には、カガリを見て顔を上げる者もいる。
現在話題とされている、元オーブ国民だろう。
「その彼らが、ここで暮らす為に持てる技術を活かそうとするのは、仕方のない事ではありませんか?」
「だが! 強すぎる力は、また争いを呼ぶ!」
プラントに向けて放たれた核の火、そして『ジェネシス』から放たれた死の光。
これらで多くの命が奪われる瞬間を間近で見ていた彼女は、死の道具を次々と生み出そうという行為を黙って見ていられないのだ。
だがデュランダルは動じる気配もなく、ゆるやかにかぶりを振った。
「いいえ、姫。争いがなくならぬから、力が必要なのです」
その言葉にカガリが息を呑んで立ちすくしていると、突如警報が鳴り響いた。
「なんだ……?」
2人が周囲を見回すと、工廠内の兵士達が自体を把握しようと動き始めていた。
アスランもカガリの側によって、周囲を油断なく見渡す。
―――と、一棟の格納庫の巨大な扉を、数条のビームが貫いた。
扉は吹き飛ぶようにして溶け落ち、ビームの向かった格納庫では何かが誘爆する。
「カガリっ!」
アスランがカガリを抱いて物陰に飛びのくと同時に、爆風がさっきまで彼らのいた場所を駆け抜ける。
「い、一体何が……!?」
もがくようにして身を起こしたカガリが、呆然と声を上げる。
デュランダルも随員達に庇われて無事だ。
―――何が起こったんだ……!?
アスランが物陰から顔を出して爆発のあった方を見ると、風に吹き流されて行く爆煙の中から、3つの巨大なシルエットが現れた。
「カオス、アビス……それに、ガイアだとっ!?」
随員の1人が煙の中から現れたMSを見て、驚愕と共にその名を口に出す。
2つの目と2つの角を持った特長的な頭部に、ジンやゲイツに比べるとすらりとした直線的なフォルム。
それぞれに特殊武装を施されてはいるが、その基本的なデザインは見間違えようがない。
「あれは……!」
「ガンダム……!」
嘗て両者共に駆った愛機を思わせるその姿に、アスランが絶句し、カガリが愕然と呟いた。
<まずは格納庫を潰す! ほら、もたもたしてるとMSが出てくるぜ!>
スティングが陽気に叫び、アウルが素っ気なくステラに命じる。
<ステラ、お前は左な>
「わかった」
それに淡々と答えると、ステラはガイアを四足のMA形態とし、素早い動きで工廠内を走り回る。
黒い疾風が格納庫の間を駆け抜け、背部ビーム砲が放たれる度に、格納庫内のジンやシグーが爆発し、格納庫を吹き飛ばす。
アビスは両肩の甲羅のようなシールドから突き出した連装砲で手当たり次第に格納庫を撃ち抜き、やはり火の海に変えている。
そしてカオスは、ビームライフルで式典用ジンを豪華な射的の的を射落とすように、片っ端から撃ち抜いていた。
背面の兵装ポッドが開き、一斉に放たれたAGM114ファイヤーフライ誘導ミサイル数十発が、次々に格納庫に着弾し、炎の花を広げていく。
元々強襲用として設計されたらしいカオスにとって、この仕事はまさにうってつけだった。
だがザフト側も奇襲の衝撃から立ち直り、迎撃の為に次々とMSを発進させる。
空戦用MS『ディン』が翼を広げて飛び立ち、大火力を誇る『ガズウート』が戦車形態から二足歩行に切り替え、砲撃を浴びせてくる。
その中を、ステラは射線を見切って地を蹴り、空中からお返しと言わんばかりにビームを放つ。
それを鈍重なガズウートが避けられる筈もなく、あっけなく機体を貫かれ、大量の弾薬と共に爆発した。
炎が太陽のない空を焦がす中を、鋼鉄の獣を操り駆けながら、ステラの血が徐々に温度を高めていく。
の り も の
―――これは最高の搭乗機だ。私のガイア!
「姫をシェルターへ!」
最初の衝撃から立ち直ると直ぐに、デュランダルは随員にそう指示した。
それに従って兵士が先導すると、アスランは呆然としているカガリの肩を抱いて彼の後に続いた。
「なんとしても抑えるんだ! ミネルバにも応援を頼め!」
流石にデュランダルは冷静さを取り戻し、事態の収拾に掛かっている。
そのよく通る声を背中に受けながら、アスランは瞬きの間に火の海と化した工廠内を見た。
あの三機のMS、かつて自分が駆った愛機、『ZGMF-X09A ジャスティス』の流れを汲むと思われる、あの新型MS。
強すぎる力はまた争いを呼ぶ―――このカガリの危惧は、現実のものとなってしまった。
先導されるまま格納庫の間を走っていた彼らだったが、建物の陰を出た所でアスランは足を止めた。
ほんの十数メートル先で、MS同士が戦闘を繰り広げていたのだ。
カオスがビームサーベルでジンを貫いたのを見て、アスランはカガリを抱いて建物の陰に飛び下がる。
直後、機体は爆発し、炎は反応の遅れた先導の兵士をあっという間に飲み込んだ。
「くそっ! こっちだ!」
案内役を失った以上、出来るだけ戦闘区域から離れるしかない。
そう考えたアスランは、カガリを促して走るが、工廠内を縦横無尽に走り回るガイアや、上空から放たれるディンの砲撃が、狙い済ましているかのように
彼らを邪魔しようとする。
「ちっ! どうすれば……あれは!?」
アスランが見渡した先にあったもの―――それは、路上に横たわっている機体、つい先程見た新型MS、ザクだ。
破壊された格納庫から飛び出したらしいそれを見て、アスランは一筋の光明を見出したような思いになる。
「来い!」
カガリを促してそれに駆け寄ると、幸運にも仰向けに倒れたザクのコックピットは開いていた。
「乗るんだ!」
「え……!?」
戸惑うカガリを抱き上げてコックピットに入ると素早くシートに着き、慣れた動作で起動シークエンスを立ち上げる。
自分がいた頃とは多少レイアウトが違っているが、大体の見当はつく。
「お前……?」
MSに乗るのは先の大戦以来、そしてもう二度と触れたくはないと思っていたアスランの気持ちを知るだけに、カガリはアスランを慮るのだろう。
だが、アスランは短く吐き捨てた。
「こんな所で、君を死なせるわけにいくか!」
むしろこの状況では、この中の方が外よりははるかにマシな避難所だ。
操縦系統は旧型と異なってはいるが、基本的な事は変わらないのだから、動かせないわけじゃない。
モニターに光が入り、外の様子を見ようと機体を起こすと、胸の排気口から熱せられた排気が噴出し、上に積もった瓦礫がばらばらと落下した。
それが気を引いてしまったのか、体を起こしたばかりのザクを目掛けて、ガイアが向かってくる。
「―――しまった!」
ガイアがビームライフルを構えるのを見て、アスランは反射的にレバーを操作し、ペダルを踏み込んだ。
ザクがスラスターの噴射で横に飛びのくと同時に、ビームが背後の壁を灼く。
そのまま着地の足で踏み切り、ガイアへと突っ込んだ。
一方のガイアはそのスピードに虚を衝かれたのか、ショルダータックルをまともに受け、背後に吹き飛ばされた。
「くっ、PS装甲か……」
ガイアに殆どダメージがない事に苛立ちながらも、アスランはこの機体の性能に舌を巻いていた。
PS装甲の有無はともかく、機動性とパワーだけなら先の大戦で自分が駆った『GAT-X303 イージス』といい勝負、あるいはそれ以上
かもしれない。
そんな事を考えている間にも、ガイアは体勢を整え、今度はビームサーベルを抜いて向かってくる。
それを見たアスランは左肩に装着されたシールドからビームトマホークを抜き放ちこれに応戦する。
ガイアの斬撃をシールドで受け止めて素早く反撃するが、向こうもシールドを掲げてそれを受け止める。
「くっ……!」
この機体に乗ったのはカガリを守る為であって、勝つ為ではない。
そう思ってなんとか後退しようとするが、ガイアはまるでムキになったようにひたすら斬りかかってくる。
とてもじゃないが後退する隙なんてない。
……ならば、戦って勝ち取るのみだ!
決意を込めてガイアを睨むアスランの耳に、さっき聞いた言葉がよみがえった。
―争いがなくならぬから、力が必要なのです―
戦闘区域からほど近いドックに、淡いグレイの戦艦が繋留されていた。
前方に突き出した艦首の両側に大きな三角形の翼が広がり、両舷にモビルスーツ用ハッチを備えている。
船体下部を赤に塗り分けられ、従来のザフト艦に比べてやや直線的な印象のするそれは、どちらかと言えばオーブ系船舶に似ている。
この戦艦の名はミネルバ―――明日に進水式を控えた、ザフトの最新鋭艦だ。
<インパルス発進スタンバイ。パイロットはコアスプレンダーへ……>
モビルスーツ管制の声が響く艦内を、紅いパイロットスーツに身を包んだシンは走っていた。
ハンガーに駆け込み、ヘルメットの気密をしながら、青と白を基調とする戦闘機―コアスプレンダーに飛び乗る。
<モジュールはソードを選択。シルエットハンガー二号を解放します。シルエットフライヤー、発進スタンバイ……>
宿舎に戻った途端に召集されたおかげで、まだ状況がよく掴めていない。
シンに知らされたのは、ロールアウト直前だった新型MS三機が、何者かに強奪されたという事だけだ。
―――くそっ、警備の連中、寝てたんじゃないだろうな!?
こうも簡単に強奪を許してしまった味方の誰かを罵りながら、機体を立ち上げた。
発進シークエンスに従い、ハンガーからカタパルトデッキへとリフトで運ばれる。
コアスプレンダーがカタパルトデッキに現れると同時に前方のハッチが開き、その隙間から所々に煙の混ざった薄青い空が覗いた。
<ハッチ解放、射出システムのエンゲージを確認。カタパルト推力正常、進路クリア……コアスプレンダー発進、どうぞ!>
「シン・アスカ。コアスプレンダー、出るぞ!」
掛け声と共に左手のスロットルを全開にし、直後カタパルトによる加速が身体をシートに押し付ける。
一瞬の内に全方位が開け、シンは僅かに目を細めた。
機体を傾けて旋回すると、工廠内から立ち上る黒煙が視界をふさぎ、予想以上の被害に愕然とした。
数十棟の格納庫が倒壊し、一つ、また一つとMSが破壊され、小さな火球が現れては消えていく。
その火球が現れる度に同僚が死んでいくのかと思うと、怒りで頭が沸騰し、砕けそうなほど強く奥歯を噛み締める。
―――人の陣地で好き勝手しやがって……!
ミネルバのカタパルトから新たに三個のユニットを射出するが、そのどれもが戦闘機とは違う形状をしている。
その間にもシンは工廠上空を飛び、目的の機体を捉えた。
黒くほっそりとしたフォルムの機体ーガイアが、一機のザクウォーリアと対峙している。
スペック的にはガイアよりも劣るはずのザクで互角に渡り合っているのを見て、シンはザクのパイロットの技量に感嘆する。
だが、その背後から緑色の機体ーカオスが迫っているのに気付いた。
ザクのパイロットはガイアに気を取られているせいか、カオスの接近には気付いていない。
「危ないっ!」
死角から躍り掛かったカオスに気付いたザクが慌てて防御姿勢を取ろうとしたが、間に合わずに左腕を切り飛ばされた。
体勢を崩したザクにカオスが止めを刺そうとするが、その直前でコアスプレンダーから放たれたミサイルが、カオスの背中に直撃した。
PS装甲のおかげで被害は出ていないが隙は出来たらしく、その間にザクは大きく後退した。
「間一髪、か……」
シンは棒立ちになったカオスの横をすり抜け、再び上空に舞い上がる。
そこで、遅れて射出されたユニットがコアスプレンダーに追いついた。
シンはそれらと相対速度を合わせ、この機体特有のシステムを起動させる。
コアスプレンダーの機首が折れ、翼端と共に機体下部に折りたたまれる。
同一軸上に並んだ各ユニットにビーコンが発せられたのを見て、シンはスロットルを絞った。
後方のユニットにコアスプレンダーが接合し、同時にユニット下部がスライドしてMSの下半身となる。
更に加速した機体は、次に前方のユニットと接合し、折りたたまれていた両腕が展開し、四本の角を持つ特徴的な頭部が現れた。
最後に二本の対艦刀が取り付けられたユニット―シルエットフライヤーが背面に装着され、同時にVPS装甲が展開される。
鉄灰色だった機体は、白と赤を基調とする鮮やかな色に変化し、対艦刀『エクスカリバー』を両手に持ち、ガイアとザクの間に降り立った。
『ZGMF-X56S インパルス』、それが、この機体の名だった。
シンは一振りが十数メートルにも達するエクスカリバーを柄の部分で結合させ、頭上で大きく振りかぶり、切っ先をガイアに向けると同時にビーム刃を形
成させる。
「何でこんな事……」
その瞳に映るのは、炎に包まれた工廠内の無残な光景。
思い出されるのは、炎の中で息絶えた家族の姿。
「また戦争がしたいのか!? あんた達は!!」
C.E.73、再び、戦争が始まった……。
あとがき対談
こんにちは〜、種運命第一話後編をお送りしました。
……(ズ〜
ン……)
おうっ、シン君じゃないか。どうした、そんなに落ち込んで。
……タイト
ルバック、また奴に取られた。
奴……ああ、キラ君withストライクフリーダムね。
俺が主人公
の筈なのに……第3クールに続いて最終クールまでも……!
まぁ落ち着け。このSSじゃ、ちゃんと主人公っぽく書いてあげるから。……多分
ちょっと待
て! 今最後に小さく『多分』って言っただろ!! つうか俺今回出番少ねぇよ!!
何言ってるんだい? 前編で『ラッキースケベ』っていう素敵なイベントを体験したんだか
ら、少しは我慢しやがれコンチクショウ!!
嬉しくねぇ
よ! てか何でキレてんだよ!?
黙れ小童がっ!!
それにタイトルバックだけど、アスランに取られなかっただけでも良しときなさい。
それもそう
か……。
ひ、酷
いっ!(By アスラン)
それじゃあ皆さん、また次回にお会いしましょう〜。
今後もよろしくお願いしま
す。