スーパーロボット大戦
        INNOCENCE



















第三話  ルリのナデシコな「航海日誌」


地球連合と木星蜥蜴との月での戦闘の翌日。

ナデシコブリッジ

「暇だな」

「暇ですね」

トウゴさんの呟きに思わず相槌を打ってしまう私。
昨日の出発の時の騒ぎが嘘みたいに今日は何もありません。
ちなみに今はゲームで対戦中で相手はトウゴさん。
画面は…愛、哀、藍でいっぱい。
私とトウゴさんは時間制限でどれだけ得点を稼げるか勝負中ということです。
一応最新の戦艦ナデシコは普通、緊急事態を除いて全自動な訳ではっきり言って暇なんです。
トウゴさんと対戦中なのは彼も暇でたまたまブリッジに来た時に私がしているのを見て「俺もいいか?」と言いましたので「ハイ」と私が答えたからです。
ちなみにブリッジにいるのは通信士のメグミさんと艦長。
するとゲーム途中、いきなり警告音が鳴りました。

「敵襲、来ます」

ナデシコのセンサーがこちらに迫ってくるレーザーをキャッチしました。
私の報告に艦長の表情が変わります。

「迎撃!」

艦長は真剣に指示を出します。
でも…。

「必要ありません」

「えっ?ルリちゃん?」

艦長が目を丸くしています。
トウゴさんは冷静な表情で私を見ています。
どうやら私の言葉の意味を理解してくれたみたいです。
さすが、と言った所でしょうか。

「ディストーションフィールド順調に作動中。このまま弾けます」

その直後レーザーが下方に当たるがフィールドに弾かれる。

「この攻撃はあくまで牽制だ」

口を開いたのはトウゴさん。
艦長やメグミさんがトウゴさんに視線を向けます。

「とりあえずナデシコの様子を見てるんだろう。この艦の能力を把握するまで、少なくともトカゲが制宙権を確立している火星の周辺までは今みたいな挨拶程度 の攻撃になると思うんだが、艦長はどう思う?」

トウゴさんはそう言っていつの間にか隣に来ていた艦長に言います。

「あなた鋭いわね」

「こう見えて戦闘経験は長いんだ。それぐらいはわかる」

当然と言った感じでトウゴさんは言います。
私よりも少し年上なだけなのにどういう事でしょう?
ともかくそれからも敵の攻撃は同じような物でした。
そのおかげでナデシコにだらけた雰囲気が蔓延したのは言うまでもないです。





それから二週間後…


「ネルガルの光通信を受信。ルリちゃん、デコードお願い」

メグミさんの要請を受けて私はオモイカネに接続して作業を開始します。

「オモイカネ、デコードしてメインスクリーンにデータ表示」

そしてそこには驚きのデータが映し出されていました。




それからまもなくネルガルから光通信を受けたという連絡を聞いたフクベ提督、艦長、プロスさん、そしてテスラ研のパイロットチームのエンさん、トウゴさ ん、ユーリ アさん、リンさんがブリッジに来ています。
当直でいた私、ミナトさん、メグミさんもいます。

「むぅ…ついに始まってしまったか」

「ウソ…」

「そんな…これってどういうことなのぉ!?」

フクベ提督は予期していたような事を言っていますが、メグミさんと艦長は通信文の内容に驚いています。

「見たまんまです。独立を望むプラントに対し、連合軍は農業プラント”ユニウスセブン”に対して核攻撃を実行。”ユニウスセブン”は崩壊し、民間人約24 万人が犠牲に」

私の言葉に続いてエンさんが文を読みます。

「その後プラント最高評議会は即時報復を決定。ザフト軍を展開し月と地球にニュートロンジャマーを投下。地上では深刻なエネルギー問題が発生。さらにザフ トは月に侵攻し、エンデュミオンクレーターのグリィマルディ戦線において、ザフト軍のモビルスーツによって連合宇宙軍第四艦隊が壊滅。まあ、事実プラント と連合の全面戦争って事だな」

エンさんの言葉で場の雰囲気が暗くなります。

「まいったわね」

ミナトさんが呟きます。
ふと私はエンさんが何やら思案顔になっているのに気が付きました。

(こっちは連合の核攻撃の情報を掴んでいた…。ヒイロ達が阻止に入ったはずだが…、止めきれなかったってことか。これでまた一つ戦争が増える…。こんな 事を人はいつまで続ける気なんだ…)

「どうかしましたか?」

私の声にハッとしたエンさんは私に顔を向けます。

「いいや、何でもねぇ」

エンさんはそう言うものの表情はきつくなっていました。

「しかし開戦前に地球圏を出る事ができたのは幸いでした」

プロスさんは少しホッとしたように言います。

「幸いってそれだけですか」

プロスさんの反応に艦長は不満があるみたいです。

「遅れていたら我々もザフト軍の攻撃を受けていたでしょうから」

「でも…」

まだ艦長は不満があったみたいですが、エンさんが話に割って入ります。

「艦長、それは地球の連中にまかせた方がいい。俺達が戻ったところで何もできねぇ。それよりも俺達の役目はますます重要になってくる。地球圏では火星どこ ろじゃねぇだろうしな」

エンさんはいつもの笑顔で少々ふざけた態度ではなく鋭い目をした冷静な顔と態度です。
なんか別人に見えます。

「あ、そっか」

艦長はポンと手を叩いています。

「でも気になります」

今まで黙っていたリンさんが口を開きます。
彼女は私と口調や性格が似ているのでなんか気が合います。
実際結構話をしている間柄です。

「何が?」

艦長は頭の上に?が浮かびそうな顔でリンさんに聞きます。

「これだけの大規模な戦闘が発生したのに、グリィマルディ戦線には木星蜥蜴の関与の報告がありません。いつもなら大抵関わってくるはずなのですが」

「そこは俺も気になっていた。何故今回に限って木星蜥蜴の報告がないのか」

トウゴさんも気になっていたようでリンさんの意見に同意しています。

「うーん、様子見してたとか?」

「俺もそれは考えた。だが、仮にそうだと仮定すると、木星蜥蜴には高度な戦略的判断ができる、という事になる。まあ確かにそれだと今回の木星蜥蜴のナデシ コへの様子 見程度の行動も説明がつく」

艦長の意見にトウゴさんがそれも含めた分析をして言います。

「でも、たまたまかもしれないわよ?」

「ああ、その可能性もある」

「う〜ん、そうだ。ところでニュートロンジャマーって何?」

ミナトさんとトウゴさんのやりとりを聞いていた艦長が突然質問し、エンさんが答えます。

「ザフトの新兵器で核分裂を抑制する兵器だ。副産物として電波障害等の効果もある」

「ふぇ〜、エン君詳しいね」

「つい最近博士にデータで見せてもらった事があるからな。と言っても俺も詳しい原理は知らねぇ。主な使用目的は核兵器の無効化だが、地球に対しての兵糧攻 めという意味もあるんだ。少なくともお互いに核ミサイルをドカドカ撃ちまくる事はねぇな」

「そっかぁ」

艦長はエンさんの説明で納得したみたいです。
そういえばこの前エンさん宛に通信文が来てましたがそれかな?

「あの、それでこの情報、艦のネットワークに流していいんですか?」

「それは構わねぇと思うぜ。一応地球の状勢もある程度みんな知っておいた方がいいからな」

エンさんの返答でメグミさんは「わかりました」と言って作業に入りました。









数日後


相変わらずブリッジは暇です。
火星に付くまでしばらくはかかるので最近はこんな感じです。
すると、誰かブリッジに入ってきました。

「あいかわらずここもがら空きだなぁ〜」

言いながら入ってきたのはエンさんとトウゴさんです。

「どうしたんですか?二人そろって」

オペレーター席の方に降りてきた二人を見て私はどうしてここへ来たのか尋ねます。

「開戦っていう情報が入ってから随分経つだろ?その後何か情報とか来てねぇか?」

「通信途絶中。通信の中継基地だったネルガルの月施設が破壊されている可能性が高いです」

「そっか。ありがとな」

「いえ」

すると今度はトウゴさんが私に話しかけてきます。

「あのさ、俺達これから昼食を食べに行くんだが、良ければ食堂で俺達と一緒に食べないか?」

少し照れくさそうにトウゴさんは言います。
私は答えます。

「はい、ご一緒します」

席を立つと私はメグミさんに声を掛けます。

「では私は食堂に行ってくるので何かあったら呼んでください」

「はーい、いってらっしゃーい♪」

メグミさんがこちらに振り向いて手を振ります。
私は軽く会釈をしてトウゴさん達と一緒にブリッジを出ました。
施設にいた頃からジャンクフード漬けだった私ですが、今では普通の食事をとっています。
それはある出来事がきっかけでした。



地球圏(月)を脱出してから一週間後の事です。
私は夜勤で廊下の自販機コーナーでいつものように夜食をとろうとカードを自販機に入れようとした時、誰かの足音が聞こえました。
今は深夜の三時過ぎ…普段なら夜勤の人以外は起きておらず、この時間帯にここを通るのは私くらいなものです。
しかし足音はどんどんこちらに近づいてくるので私は足音の聞こえる方を見続けました。
すると、こっちに来たのは少し眠そうな顔をしたトウゴさんでした。
私を一瞥すると、隣の自販機でオレンジジュースを買って立ち去ろうとします。

「あの!」

咄嗟に私は彼を呼び止めていました。
トウゴさんが私の声で止まり振り向きます。
私は彼がこのナデシコに乗艦した時からずっと聞きたい事がありました。
そしてそれを聞くのは今しかないと思ったのです。

「少しお話しませんか?」

「…………」

トウゴさんは何も言いませんでしたが、嫌という感じはしませんでした。
自販機コーナーの前のイスに私が座るとトウゴさんも隣に座ります。
しかし、トウゴさんは何も言わずただ買ったジュースを飲んでいます。
私から話さないと始まらないので私は意を決しあることを聞きます。

「……セツナさん、ですよね?」

私の言葉にトウゴさんは少し反応すると私の方に向きました。

「…ああ、そうだ。いつから気付いてた」

クールな声で私に今度は聞いてきます。
私はその答えで彼に聞きたい事が確信に変わりました。

「あなたがナデシコに乗艦してブリッジで自己紹介した時です。名前は違いましたが、姿形や言動も同じなのでもしかしてと思ったんですが…、私を見ても何も 言ってくれなかったのでよく似た別人かと思って今まで聞けませんでした。今の名前は?」

「これが俺の本名だ。セツナというのは任務用の一種のコードネームだ」

「そうですか…」

私はそう言って先ほど座る前に買ったジャンクフードを一口かじりました。
私が聞きたかった事、それは以前私が施設にいた頃、唯一親しくなったセツナという人がトウゴさんなのかということでした。

セツナさんは施設に今から約二年前に入ってきてそれからは淡々と職員と一緒に仕事をこなすクールな人でした。
ただ、年は私よりも三つ年上の少年で施設内で私と同じ唯一の子供でした。
彼はいつもクールな人で言動はほかの人達に対してのと同様ほとんど変わらなかったなのですが、何かと私を気にかけてくれていました。
最初私は彼の行動が理解できませんでしたが、一緒に話したり行動する内に彼とそれなりに仲良くなっていきました。
そして施設であったある事件で私は彼に助けられ、彼に惹かれている自分に気付きました。
それからはセツナさんと私は前よりもうち解け、私は彼と過ごす時間が楽しくなっていきました。
ところがある日、セツナさんは突然姿を消してしまったのです。
それは私がナデシコに乗る半年前の事です。
職員の人に聞きましたが、「転勤した」という言葉だけ。
ネルガルのネットにハッキングして調べても彼に関する事は何も得られませんでした。

そしてそれから私は彼の行方を捜しつつナデシコに乗りました。
ところが月での木星蜥蜴襲撃の後、新しいパイロットの自己紹介で私は驚きました。
パイロット四人の中にセツナさんのそっくりさんがいたのです。
表情には出しませんでしたが、私は内心本当に驚きました。
セツナさんかもしれない、私はそんな期待を抱いていました。
でも彼の自己紹介を聞いた時それが落胆に変わるのが自分でもわかりました。
セツナさんじゃない、と。
そっくりさんのトウゴさんの私への態度もセツナさんとは違って感情があまりないものでした。
でもどこかで希望を捨てきれない私がいたんでしょう。
それから今までずっと”セツナさんと同一人物かどうか”という事をトウゴさんに直接確かめたいと思っていたのです。
そしてそれは報われました。

「どうして知らないふりをしていたんですか?乗艦した時に」

私の質問にトウゴさんは淡々と答えます。

「あの時点でルリとの関係が明るみになるのはまずかったからだ」

トウゴさんはあくまで私を突き放すように言います。

「それは今の所属と関係があるんですか?」

「…ああ」

少し間がありましたが、トウゴさんは肯定します。

「それでは施設に来たのは…」

「テスラ研からの出向という名目で施設の監視をするためだ。ネルガルがどういう事をしようとしているのか探るために」

トウゴさんの言っている内容はかなり極秘にされているものみたいですが、隠す必要がないと思ったのか話してくれます。

「そうだったんですか…。でもどうして半年前急に私の前からいなくなったんですか?」

私は半年間ずっと気になっていた事を彼に聞きます。

「そうする必要があったからだ」

「…………」

私はその答えを聞いて少し悲しくなって俯いてしまいました。
私の様子に気付かないのかトウゴさんは話し続けます。

「任務上誰にも俺の真の所属を悟らせる訳にはいかなかった。だから別れる際に誰にも知られずに去るのが一番だった。書類では転勤という事で通してあるから 職員は疑わない。だから急に去っても怪しまれない。でも一つ俺には誤算があった」

「…え?」

「おまえだよ、ルリ」

顔を上げた私とトウゴさんの目が合います。
しかし私は反らすという事はしませんでした。

「後で知ったんだが、俺の事をずっと捜していたみたいだな。俺の事なんかとっくに忘れたと思ってたんだけどな」

「…忘れる訳ないじゃないですか、忘れられる訳が…ないですよ…バカ」

「そう言われるのも半年ぶりだな。…すまなかった、何も言わなくて」

肩を震わせ、涙目になる私をそう言って私の肩に手を置くトウゴさん。

「…これからは一緒にいてくれるんですか?」

「ああ」

「本当ですか?」

「本当だ」

私はその言葉を聞いて彼の胸に顔を預けます。
今の顔をトウゴさんに見られたくなかったからです。
そして私は静かにトウゴさんの胸で泣いてしまいました。


五分後、ようやく落ち着いた私はトウゴさんから離れます。

「落ち着いたか?」

「はい、大丈夫です」

「さっきの事は他言無用で頼む」

「はい」

そう言って私は半年ぶりに微笑みました。
こんな気持ちになるのは半年ぶりです。
すると、元の位置に戻ったトウゴさんがふと気付いたように私に話しかけます。

「そういえば相変わらずジャンクフードばっかり食べてるんだな」

「ええ、これが一番慣れてますし」

「今度一緒に食堂に行かないか?ホウメイさんのはうまいからさ」

「…どうしたんです、突然?」

突然の言葉の意味が分からず、聞き返す私にトウゴさんは少し表情を曇らせて話し出します。

「いや、別にジャンクフードがダメとかじゃないんだが…、暖かさというのかなんというか…、とにかく一度食べてみないか?普通の食事」

私が元々普通の食事をしないのは施設の食事が味気のない食事だったからです。
トウゴさんが施設に来てからもそれは変わりませんでしたが、彼が何度か作ってくれた料理は食べました。
彼が施設からいなくなって以来またジャンクフードばっかりの生活になっていましたが、彼の料理を思い出した私はこう言います。

「ハイ、ご一緒します」

それから私は食堂で食事を摂るようになりました。
ホウメイさんの料理は美味しく、普通の食事に変えて良かったと思っています。
さすがに夜勤の深夜の時はジャンクフードにしていますが。








そして現在に戻って、私達は食堂に移動中です。
まもなくして食堂に着いた私達は食堂でそれぞれ注文します。

「ホウメイさん、俺炒飯ね!後餃子も!」

「俺はとんこつラーメン」

「私はチキンライスで」

エン、トウゴ、ルリの順に頼む。

「「「「は〜い!」」」」

ホウメイガールズの元気な返事が返ってきます。
ホウメイさんはさっそく準備に取りかかりました。
私達は並びの席を確保し、しばらく雑談をかわします。

「それにしてもトウゴの話してたのがルリちゃんだったとはね〜。もしかしてとは思ってたんだけど」

エンさんは私とトウゴさんを見ながら言います。
最近私とトウゴさんが妙に仲がいいのはナデシコ中に何故か知られていますが、その中でも詳しい理由を知っているのはエンさんと、トウゴさんを除いたユーリ ア さんとリンさんの三人です。
特にエンさんはトウゴさんから以前私の話を聞いていたようで、エンさんがどうして仲良くなったのか訳をトウゴさんに尋ねると思い出したように納得しまし た。
私の話ってどういう事をトウゴさんが言ってたのかは気になります。
でも二人に尋ねても教えてくれませんでした。
その時妙にエンさんがニヤニヤしてましたが。

「でもよく覚えてたなあの話」

少し感心したようにトウゴさんが言います。

「だって一度どんな子かは見てみてぇな〜とは思ってたし、特徴は聞いてたから。でも隅に置けねぇよな〜、こんなかわいい子がトウゴのね〜」

そう言ってエンさんはニヤニヤしながら私とトウゴさんを見ます。
私はなんだか恥ずかしくなって俯きます。
トウゴさんはちょっと表情が引きつってます。
やっぱりトウゴさんも恥ずかしいんでしょうか?
そうしているとホウメイさんが注文した料理を持ってきてくれる。

「はい、エンは炒飯と餃子、トウゴはとんこつラーメン、ルリ坊はチキンライスだね」

「おう、サンキュ〜ホウメイさん」

「ありがとうございます」

エンさんは礼を言い受け取り、トウゴさんは黙って受け取り、私は礼を言ってから受け取ります。

「それじゃあ…」

「「「いただきます」」」

そうして私達は昼食を食べ始めました。





しばらくして食べ終わった私達はテーブルの上で食後の一服をしています。

「そういえばトウゴさんとエンさんはこれからどうするんですか?」

とりあえずこれからも暇な私はお二人にこれからどうするのかを聞きます。

「俺はリョーコ達と訓練だ」

「ん〜、俺は特に用がねぇから部屋で少し休んでおこうかなと。リョーコ達の訓練終わったらアキトの訓練付き合わねぇといけねぇしな」

そう言われて私は最近リョーコさん達とトウゴさん達がシミュレーターで訓練しているのを耳にした事を思い出し、納得します。
と言ってもどうやらトウゴさん達相手にリョーコさん達が対戦を挑むという形になっているみたいです。
リョーコさん達が乗艦した当初トウゴさん達に対戦を挑んでボロ負けしたそうです。
それからはさっき言ったみたいな感じでやってるみたいです。
ただアキトさんは正規訓練は受けていなかったのでいい機会だという事でエンさんとリンさんの指導を受けて訓練をしているみたいです。

「それでアキトの調子は?」

アキトさんの訓練の事が気になったのかトウゴさんがエンさんに聞きます。

「当初の予想より上達は早ぇな。センスはあると思うぜ。まあ、俺の機体は特殊すぎるからリンがほとんど相手をしているけどな。リンの方がそっちに関しては 詳 しいぜ」

「なるほどな、わかった」

トウゴさんはそう言うと立ち上がります。

「俺達はもう行くが、ルリはどうする?」

「私はそろそろブリッジに戻ります」

「そうか、じゃあまた後で」

トウゴさんはそう言うとエンさんと一緒に食堂を出ていきました。
去り際にエンさんがこちらに手を振っていましたが。
私もブリッジに戻りましょうか。




こんな感じでナデシコの日々は過ぎていきます。
艦長が現代の艦長の在り方に疑問を持って瞑想ルームに篭もったり、
パイロットの人達でシミュレーションで誰が一番強いか総当たり戦で決めたり…。
そして火星まで後少しと迫ったある日、事件が起きました。




私は今トウゴさんと一緒に展望室にいます。
そこからは火星の赤い大地と青い海が入り混じった火星が見えます。

「火星…か」

隣に座っていたトウゴさんがポツリと呟きます。

「どうかしたんですか?」

「いや、火星に行くのもなんか久しぶりでちょっと…な」

「火星に行った事があるんですか?」

「まあ、何度かね…」

トウゴさんの顔が”それ以上は言えない”というような顔をしたのでそれ以上は聞きませんでした。
そうして二人でボーっと火星を眺めていると突然ウインドウが開きます。

〈我々はネルガルの悪辣さに断固抗議するぞぉ〜!!〉

頭に鉢巻き巻いた整備班の人達がメガホンを持って叫んでます。
背後に何やら『断固拒否』とか『要求貫徹』と書かれた垂れ幕が見えます。

「何だ…?」

「さあ…」

映像の意味がわからず困惑する私とトウゴさん。
すると、突然プロスさんのウィンドウが開きます。

〈トウゴさん、ルリさん、ブリッジへ来てくれませんか?〉

「どういうことだ、これは一体」

〈反乱…だそうですよ〉

トウゴさんの質問にプロスさんから気まずそうな言葉が返ってきます。

「で、その内容は?」

〈服務規定の改善が目的のようです〉

トウゴさんはプロスさんの言葉で何か思い当たる節があったようで、呆れた顔をしてため息をつきました。

「どうせ契約書ちゃんと読んでなかったからそうなったんだと思うが…」

〈とにかくお二人ともブリッジへ来ていただけませんか?それにお二人はちゃんと契約書を全部お読みですよね?〉

「「ああ(はい)」」

プロスさんの言葉からすると、トウゴさんの読みが当たってそうですね。

〈ではブリッジに急いで来てください。エンさん達も呼んであるので〉

「分かった」

トウゴさんが返事をするとプロスさんのウィンドウが閉じます。

「一体どういう改善要求なんでしょう?」

「それは行ってみればわかるだろう」

「それもそうですね」

そうして私とトウゴさんはブリッジに向かいます。
ブリッジ前に着くとエンさん、リンさん、ユーリアさんが居ました。
ブリッジの中からはウリバタケさんの怒鳴り声が聞こえてきます。

「ずいぶんとうるさいな」

「まあ、楽しそうで何よりなんじゃねぇか?」

トウゴさんが鬱陶しそうに言うと、エンさんは笑顔で答えます。

「所でこれは何の改善要求なんですか?」

「ナデシコの艦内恋愛禁止項目の改善要求だって」

ユーリアさんが呆れたように私の質問に答えます。
確かに聞いていればなんとなくわかるような…。
あれ?でもウリバタケさんは妻子持ちだったような…。

〈こんなんだったら帰って女房の尻に敷かれた方がマシだぁぁぁぁぁ!!〉

問題ないみたいです。
本人的には。

「なんか若いねぇ〜」

エンさん、あなたの方が若いですよ絶対。
これ以上話してても始まらないので私達は中に入りました。
中はさらにヒートアップしていてウリバタケさんの一人芝居にアマノ・ヒカルさんが合いの手を入れています。
中に入った私達はそれを他人言のように眺めています。
事態はどんどん進行していきます。

「お手て繋いでってここはナデシコ保育園かよ!」

「そのエスカレートが困るんですなぁ」

ブリッジにいたプロスさんがウリバタケさんの言葉に待っていましたというように割って入ります。

「出たな、ネルガル!」

ウリバタケさんの叫びをひょうひょうとかわして話すプロスさん。

「男女関係がエスカレートすれば、お金かかりますよね。結婚、出産等々。それこそここはナデシコ保育園ではないのですから」

「うるせー、俺達はそんな事聞いてなかった!」

「契約書には明記してありますが」

「こんな小せえ字で書くな!だいたい今時、契約書なんざ全部読む奴がいるか!」

「あ、俺読んだぞ」

「俺も」

「私も」

「私も読みました」

「私もです」

エンさんが手を挙げて発言したので私達もそれにならい、トウゴさん、ユーリアさん、リンさん、私の順で言います。

「「「「…………」」」」

ブリッジを静寂が包み込みます。
なるほど、プロスさんが私達を呼んだのはこのためだったんですね。

「くぅぅぅぅっ、おまえら誰かとラブラブ出来なくなってもいいというのか!?」

「まあ俺としてはラブラブ出来ねぇのは嫌だけど、その項目俺とトウゴとユーリアとリンは破棄してるし。だよなぁ、プロスさん?」

「はい。テスラ研のメンバーのみなさんは契約時にこの条項を破棄なさってます。従って彼らとその相手に限り艦内恋愛は認めます」

エンさんとプロスさんの言葉にウリバタケさん等、反乱側の人達はバツが悪いみたいです。

「と、とにかく!この条項を改正しろ!さもなくば!」

ビシリと手に持った物を突きつけるウリバタケさん。
…あれってスパナ?

「こちらも見てください!」

同じように手に持った物を突きつけるプロスさん。
それは契約書。

スパナ対契約書

どうやって勝負するのか少し気になります。
というか勝負が着くのでしょうか?
睨み合いに火花が散っている時、不意にナデシコが大きく揺れます。

「きゃ」

突然の衝撃に立っていた皆さんがよろめきます。
私は転びそうになったのですが、転びませんでした。
隣にいたトウゴさんが私を支えていてくれました。

「大丈夫か?」

「は、ハイ」

ほかにも転んでいないのはエンさん、リンさん、ユーリアさんです。

「あいたたた…、ルリちゃん今のは?」

艦長は転んだようでお尻をさすりながら私に報告を求めます。

「敵襲です。でもこの攻撃、今までと違う。迎撃が必要」

「皆さん戦闘配置についてください。言いたい事はまだまだあるとは思いますが、後回しです!」

先ほどまで指を加えて見ていた艦長とは大違い。
次々と各員に指示を出していきます。
その指示でみんなが戦闘配置に着くために動き出します。
こうして火星宙域での戦闘が始まりました。
ここから本格的な戦闘の始まりだったのです。













あとがき

ウ:どうも〜、ウォッカーです。第三話『ルリのナデシコな「航海日誌」』をお送りしました。

ル:今回のゲストはこの方です、どうぞ。

トウゴ(以降ト):トウゴだ、よろしく。

ル:よりにもよってトウゴさんをゲストにしますか、あなたは。

ウ:ん?何か問題あった?

ル:大アリです。今回のお話は私の航海日誌になってますけど、ほとんど私とトウゴさんの話じゃないですか!

ウ:まあ確かにそうなのかもしれないけど、そうでもないよ?ウリバタケさんの反乱とか、ユニウスセブンの事件があったとか。

ル:でもトウゴさんを呼ぶのは間違ってます!

ウ:もしかして恥ずかしいの?トウゴ君との関係がこのあとがきで暴露されるのが。

ル:そ、それは…(///)。

ウ:大丈夫だよ、別にそんな気があって彼を呼んだんじゃないし。それにそんな事したら面白みがなくなるでしょ。それにその話は外伝として書く予定だしね。 とにかく、あとがきが進まないので今回の話にさっさと触れていきましょう!

ト:遅せぇよ、ったく。それで今回の話は『血のバレンタイン』がナデシコの火星行きの途中に起きたという設定なんだな?

ウ:はい、その通り。ナデシコの原作としては時期がずれるのでバレンタインに起きたかどうかはわかんないんですけどね。ストーリー的な都合では合ってるの でこういう設 定にしました。ヒイロ君達が介入しても止められなかったというのも入れました。

ル:なるほど、あなたにしては結構出来てる方だと思いますよ。

ウ:俺の基準ってそんなに低いんだ…(汗)。

ル:このサイトのほかの作家さん達に比べれば当然です。あなたなんてまだまだペーペーの未熟者ですよ。

ウ:そこまで言わなくても…(泣)。

ル:さて、いじけている人は放って置いて…。所でトウゴさん達は契約の時にちゃんと男女交際の項目を削除してたんですね。

ト:ああ。エンの奴が「こんなのいやだー!」とか叫んだから俺達みんな削除したんだ。契約書とかの書類はよく任務で見るから全部早読みする癖をつけてるし な。見落とす事はまずない。

ル:それでよく気が付きますね。

ト:慣れればできる。

ウ:誰でもではないだろうけどね…。

ト:とにかく、まさかそれで問題が起きるとは思ってなかったが。

ウ:おっと、もうそろそろ時間だ。

ル:もうそんな時間ですか。では、みなさん誤字脱字が多く、日常シーンを書くのが苦手で未熟な作者さんではありますが、これからもこの作品をよろしくお願 いします。

ウ:それではみなさん…

ウ・ル・ト:また第四話でお会いしましょう!!
















実はまだ続いていたあとがき

ウ:所でさ、トウゴ君。

ト:何だ?

ウ:ルリちゃんとはどうして仲良くなったの?

ト:俺としては普通に接していたつもりなんだがな…。ただ、少し昔の自分を見ているようで放っておけなかったのかもな…。そうして過ごす内に仲良くなって いっただけだ。

ウ:ほほう、なるほど。

ル:ウォッカーさん(怒)。

ウ:ビクッ!(なんか後ろに殺気が…)。

ル:私とトウゴさんの事は暴露しないんじゃありませんでした?

ウ:は、はい、言ってました。ただ、読者さんが気になるかなぁ〜と思ってトウゴ君本人に聞いていただけで別に他意は…(ガクガク)。(ルリちゃん顔笑って るけど、目が笑ってないよ)

ル:別に他意がなくても一緒です!一度死んで詫びなさい。

ウ:ちょっ…、待って!早まらないドッカァァァァン…またこれです か…(バタリ)。

ル:あなたが言わなければ良かったんです。

ト:ルリ、さっきの話聞いてたんだろ?俺も怒らないのか?(顔が引きつってます)

ル:トウゴさんはいいです。トウゴさんの素直な気持ちが聞けて嬉しかったですから。飾り気のない気持ちがあったから私はあなたに…って私は何を!?(///

ト:ま、まあそれはともかく…、そこに倒れてる作者から伝言があるそうだ。

ル:あ、そうなんですか。でもそこに倒れてる人はもうダメですよ。

ト:そうだな、じゃあ俺が。えー、作者は今年一年諸事情で訳あって小説は書けません。よって第四話の更新は約一年後になります。読者の方々には大変申し訳 ないんですが、そういう事でよろしくお願いします。

ル:という事は私達も一年間お休みですか。

ト:そういう事になるな。

ル:まあ、仕方ありませんね。では…

ル・ト:また来年にお会いましょう!!









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