コードギアス反逆のルルーシュR2
Double Rebellion
TURN-22 それぞれの目指すもの(前編)
「ナ、ナナリー……生きて…いたのか……」
画面に映った生きていたナナリーの姿を見てルルーシュの顔は蒼白だった。
顔に浮かんだ汗。
それに対し、ナナリーは静かに頷いた。
『はい。シュナイゼル兄様のおかげで』
「シュナイゼル……」
それっきりルルーシュの唇は動かなくなってしまう。
先ほどまでの冷静さも余裕もない。
ただナナリーは死んではいなかった、その事実の前にルルーシュは立ち尽くすことしかできないでいる。
そこにこの状況はまずいと思ったのか、スザクが口を開いた。
ランスロット・アルビオンから通信で話す。
「ナナリー。君はシュナイゼルが何をしたのか、分かっているのかい?」
スザクに問いかけられ、ナナリーはやはり淡々と答えた。
『はい。帝都ペンドラゴンにフレイヤ弾頭を撃ち込んだ』
「それが分かっていてなぜ!」
スザクが声を荒げる。
だが、ナナリーは露ほども動じなかった。
むしろ冷たく言い返す。
『スザクさんがそれを言うのですか?』
「っ!?」
冷気すら含んだナナリーの言葉。
彼女がスザクがルルーシュ側に付いていたのはつい最近に知ったばかりだが、それでも言外に、トーキョー租界で同じフレイヤを撃って三千万人を虐殺したお前
などに言われる筋はない、引っ込んでいろ、という意味が込められている。
それを悟って、さしものスザクも絶句した。
ちなみにこの事実をスザクが言ってもナナリーが動揺を示さなかったのは、事前に彼女がシュナイゼルからこの事を聞いており、尚且つ彼女が皇帝になってほし
いという言葉と共にそのフレイヤ弾頭をペンドラゴンに撃つ許可を彼女自身が出していたからである。
『それにギアスの方が正しいというのですか?』
「…………」
スザクは答えられない。
そして、ナナリーはもうスザクを相手にしようとはしなかった。
『お兄様もスザクさんも、ずっと私に嘘を付いていたのですね。本当のことをずっと黙って……でも、私は知りました』
この時ルルーシュの乗る皇帝専用機はアヴァロンに到着した。
だが、ルルーシュはそんな事を気にする事すらできないほど動揺している。
『お兄様がゼロだったのですね』
話すナナリーは膝の上に置いた手を握り締める。
『どうして……それは私のため、ですか?もしそうなら、私は……!』
続く言葉は喉の奥に消えてしまう。
鉛のように重い静寂が通信空間に満ちる。
だが。
「ク……クク……」
不意にルルーシュが笑い始めた。
端正な顔が不敵に笑っている。
……蒼白いまま。
「お前のため?我が妹ながら図々しいことだ」
『え……』
さすがにナナリーが戸惑ったように唇を開けた。
その姿をルルーシュは嘲りの目で見た。
そして、それはナナリーには見えない。
いや、そもそも通信機の画面に「それ」は映っていない。
だが、座った椅子の肘掛けに置いたルルーシュの手。
間断なく続く小刻みな震え。
隣にいたC.C.だけがそんなルルーシュの姿からほんの少し苦しげに顔を背けていた。
「人からお恵みを頂く事が当たり前だと考えているのか?自らは手を汚さず他人の行動だけを責める」
ルルーシュのその言葉にナナリーの顔が引きつった。
互いの会話はもはや傷の抉り合いに等しかった。
「お前は俺が否定した古い貴族そのものだな」
『そ、そんな……』
「誰のためでもない。俺は俺自身のために世界を手に入れる。お前がシュナイゼルと手を組み、我が覇道の前に立ちふさがるというのなら、容赦はしない。叩き
潰すだけだ!」
『お兄さ……』
ナナリーが呼びかけたとき、ルルーシュは強制的に通信を切った。
本心を言えば、それ以上の『演技』の続行はいくらなんでも厳しかったという事であろう。
その一部始終をライは静かな瞳で黙って見つめるだけだった。
「大丈夫か?ナナリー」
通信が強制的に切られた後、心配げに声をかけたのは、周囲から人払いをし、その場に残っていた姉のコーネリアだった。
そこに、コーネリアと同じくナナリーの傍にいたシュナイゼルも同調した。
「辛い思いをさせてしまったね。フレイヤの威力を見せつければ降伏してくれると思ったんだけど」
今ナナリー達のいる空間は、周囲には色とりどりの花が咲き誇っていた。
ここは空中に舞い上がった天空要塞ダモクレスの頂上部。
上級将校以上の者に用意された庭園だ。
空調機が吐き出す風にあおられ、ナナリーの車椅子の横で黄色い可憐な花がかすかに揺れている。
その花に囲まれ、ナナリーは下を向いている。
やがて、すいとナナリーの顔が上がり、それは隣にいたシュナイゼルの方向に向けられた。
「シュナイゼル兄様。ペンドラゴンの人達は本当に大丈夫なのですか?」
シュナイゼルはにこやかに微笑んだ。
「心配いらないよ。あらかじめ避難誘導を済ませたからね」
その言葉を聞いて、コーネリアがはっとしたような表情を浮かべた。
シュナイゼルはさらに続ける。
「もちろん被害が皆無とはいかないけど、最小限に留めたつもりだよ」
ただ言うシュナイゼルはごく平然としている。
コーネリアがそんなシュナイゼルを刺すような眼差しで見ている。
「でも、次は人に…お兄様達に使うのでしょう?」
シュナイゼルが立ち上がりながら言う。
「彼らが世界平和の前に立ちはだかるというのなら」
「……シュナイゼル兄様。私にフレイヤの発射スイッチをいただけませんか?」
「え?」
シュナイゼルがそこでやや意外そうな顔になった。
一方のコーネリアは黙り込んだままだ。
ナナリーは続けた。
「私には戦う事も守る事もできません。だからせめて、罪だけは背負いたいんです」
その言葉に反応を見せたのは言われたシュナイゼルではなかった。
シュナイゼルとは逆側にいたコーネリアが立ち上がり、やはり険しい瞳でシュナイゼルを見据えた。
「兄上……少しよろしいですか」
エリア11、消失したトーキョー租界上空。
そこに大量の航空艦が浮かんでいた。
中心に、ひと際シャープな形をした船がある。
ブリタニア軍皇帝御座艦、アヴァロン試作型。
超合集国との交渉の最中、会場を強襲したライ達が兵士に命じて各国代表達の身柄を収容した船だ。
その艦内、固く扉が閉ざされた一室で怒声が響き渡った。
「くっ!C.C.!なぜナナリーの事がわからなかった!」
その声の主はルルーシュであった。
先ほど、通信でナナリーやシュナイゼルと会話していた時のような演技などかなぐり捨てている。
毛足の長い絨毯の上をいらいらと歩きまわり、ルルーシュはやり場のない怒りと焦燥をC.C.にぶつけていた。
C.C.は眉を顰め、かぶりを振った。
「私は神ではない。ギアスによる繋がりがない人間の事は……」
「ライ、おまえは!」
「…………」
いらだちの矛先を変えられたライだったが、その言葉には応えずただ静かな瞳でルルーシュを見返す。
その態度を見てルルーシュは気が付いた。
「まさか…おまえ知っていたのか?」
「…………」
やはりライは黙ったまま何も言わない。
それは肯定とほぼ同意義だった。
「貴様!!」
ルルーシュはライの胸倉を掴み上げ、座っていた彼を無理やり立たせる。
C.C.は思わず止めようとして立ち上がったが、ライの目線に気づくと渋々止めるのをやめた。
「何故すぐにその事を俺に言わなかった!何故!!」
そこで胸倉を掴まれながらもライはようやく口を開いた。
「……あくまで何の確証もないただの僕の推測だった。そんな情報をあの時の君に伝えられるとでも思っていたのか?」
この時、ライは若干嘘をついた。
確かにあの時点ではライの推測止まりにしかすぎず、ライはそれを他人にはもらさなかった。
しかし、彼はナナリーが生きている事を後で知っていたのだ。
そう、天月の元になった星龍によってもたらされた情報によって。
しかし、その事を言う訳にはいかずライはそう言うだけだった。
そしてその言葉には、言えばルルーシュがどんな行動に走っていたか、それを容易に想像させる意味が含まれていた。
「くっ!ライ…!」
ルルーシュはライの言葉の意味を理解はしたものの、それでも怒りを抑える事ができずさらに彼の胸倉を締め上げる。
だが、そこでライがスザクと目線を交わした。
スザクが動く。
「ルルーシュ……」
ルルーシュが後ろを振り返るとそこにスザクがいた。
そして、今度はスザクが力任せにルルーシュの胸倉を掴む。
それによって、手を離されたライは少々苦しかったのか、若干咳き込んでいる。
そして、スザクはルルーシュに容赦のない叱咤をする。
「戦略目的は変わらない!」
「っ!」
「ナナリーが生きていたからといって、立ち止まる事はできない。何のためのゼロレクイエムだ!」
「う……くっ」
ルルーシュがうめいた瞬間、スザクは逆にルルーシュを突き飛ばした。
ルルーシュはその拍子に尻餅を床についてしまう。
先ほどとは違って、呆然とルルーシュが見上げた先で、すでにスザクが部屋を出ていこうとしていた。
「約束を思い出せ」
騎士が主君に向ける言葉としてはあまりに無礼な一言を残して、スザクは部屋を後にした。
それをC.C.が追う。
部屋だけにはルルーシュとライだけが残った。
「スザク」
艦内通路に出た所で、C.C.がスザクを呼び止めた。
その表情には多少非難の色がある。
少し厳しすぎるのではないか、表情がそう語っていた。
スザクはそれに対して淡々と言葉を返した。
「僕とライは彼の剣だ。彼の敵も弱さも僕達が排除する。だから、C.C.」
「…………」
「君は盾になってくれ」
C.C.は振り返ったスザクの顔をじっと見つめる。
「守るのは君の役目だ」
「勝手な言い分だな」
「ルルーシュは君の共犯者なんだろう?」
「共犯者、か……」
C.C.がその言葉を繰り返した時、再びスザクは背を向け歩き出した。
C.C.はもう追わなかった。
一方、あの後ルルーシュは部屋に繋がっていたもう一つの部屋の壁際に置かれたベッドに座り、俯いていた。
それから5分程してライがその部屋に入る。
「……さっきはすまなかった。別に悪気があって隠していた訳じゃないんだ」
「わかっている……。俺も少し熱くなりすぎたようだ。すまない」
そこでライは今度は違う言葉を言った。
「……よく仮面をかぶり続けたな。ナナリーの前で」
反応にはほんの少し時間がかかった。
「いくつルートを辿っても答えは同じだったからな」
ルルーシュもささやくような声で応じた。
「あのときの結論に間違いはない、と……」
あのとき。
父シャルルと母マリアンヌの考えを否定し、2人を消滅させ、ライ、スザク、C.C.と向かい合ったとき。
ルルーシュが何故今こんな行動を取っているのか。
ライは無論知っている。
ゼロレクイエム。
スザクが口にした言葉の意味も知っている。
だが……。
こちらを見ないルルーシュを見下ろし、ライは彼の隣に座った。
それにルルーシュは初めて目線だけを向けたが、何も言わなかった。
しんとした室内の空気。
やがて、ライはゆるやかな口調で言った。
「やはり、やめる訳にはいかないんだな……」
今度の反応は早かった。
「俺が悪を成さなければならない理由は知っているだろう?」
「……ああ」
「それに、フレイヤとダモクレスによる支配は人を記号化するものだ」
「だが、ダモクレスにはナナリーがいる」
ルルーシュの体がビクリと震える。
「君は今まで……」
「もう特別扱いはできない」
ルルーシュがすいと背筋を伸ばし、かぶりを振った。
「消えていった新たな命のためにも。俺達は止まる訳にはいかないんだ。そうだろう?ライ」
「……ああ、そうだな。……ルルーシュ」
それっきりライとルルーシュは口を閉じたままただ佇んでいた。
だが、この空気は決して嫌なものではなくどこか安心できるものだった。
その状態を5分ぐらい続けていた2人だったが、ライはそこで立ち上がった。
「僕はもう行く。少し休んで気持ちの整理をしっかりつけて置くといい」
「……ああ。ありがとう、ライ」
それにライは笑顔で応えて部屋を立ち去った。
あれから部屋を出たライは、通路で壁に背を預けながら珍しく考え込んでいるC.C.を見つけた。
スザクを追いかけた後、ずっとこんな状態だったようだ。
ライはC.C.に声をかける。
「どうしたんだ?珍しく考え込んでるみたいだが」
その声でC.C.が気づきライに顔を向ける。
「……ライか。ちょうどいい。私に付き合え」
「僕はこれから自室に向かうが、それでもいいなら」
「……わかった」
こうしてライとC.C.はライの部屋に向かい、程なくして着いた。
部屋の扉を開け、2人は中に入る。
ライの部屋はルルーシュのとは違い、相変わらず殺風景で質素な部屋だ。
ライは壁際にあったベッドに腰掛ける。
そして、C.C.は靴を脱いでベッドに上がりこむ。
ライはそれに目線を向けるだけで、特に何も言わない。
C.C.はライと背中合わせになって座り、部屋の天井を見上げる。
しばしお互いに話さず静かな空気が部屋を満たす。
しかし、互いにぬくもりを感じているためか別に悪い気分にはならなかった。
しばらくそうしていると、不意にC.C.が口を開く。
「ライ、本当にあれをやるのか?おまえは」
ライはすぐに反応した。
「……ああ。これは僕だけに課せられた試練だから。本当の僕自身を知り、望みを叶えるために」
「だが、それではおまえが……」
言いかけたC.C.だったが、ライはそれを遮った。
「それ以上は言わないでくれ。これは他ならぬ僕の意思なのだから。例え君でも邪魔する事はできないよ」
「……そうか」
一瞬の間を挟んでC.C.は答え、ライの背に自分の背を預ける。
ライの体温がはっきりと伝わってくる。
「C.C.、君はいつからそんなに甘くなったんだ?」
「……さあ、いつからだろうな」
ライの一言にC.C.はそれだけ答えた。
ライはそれだけ聞くと、こちらも背を預けた。
(この男を失いたくない)
いまのC.C.はなんのためらいもなく、そう思う。
しかし、どうすればいいのか。
それはもうC.C.にも分からなかった。
人をはるかに超える時間を生きてきたこの自分にさえ、まだ分からないことがある。
知らない事がある。
何が正しくて何が正しくないのか。
ただ一つはっきりしているのは、彼は、ライという名の男は周囲の状況に合わせたり、他人の望みを成就させるために協力するという事ではなく、自分の意思で
歩き出そうとしている。
今まで他人の意思を、望みを優先しがちだった男が、自分はどうしたらいいのかではなく、何をしたいのか?それを知るために。
それをライは自身の意思で選択した。
それを知り、果たすまでこの男は止まる事はない。
止まる事を知らない大馬鹿者。
叱りつけてやりたいが、それはできない。
……泣きたくなるが、それもできない。
だから……。
「ライ」
「何だ?」
「おまえは自分の色を覚えているか?」
「どうだろうな」
その言葉にC.C.は少々呆れた。
「何だ、曖昧な奴だな」
「そういう君はどうなんだ?」
「さあな」
ライもこの言葉には苦笑した。
「さあなって……」
「ただ……」
「…?ただ?」
「少なくとも、今の私の色はお前だろうよ、ライ」
それでライがさらに苦笑した。
「……勝手だな」
「そうとも」
泣きたくなる。
だからこそ、C.C.は心からの笑みをその瞬間浮かべてみせた。
「私はC.C.だからな。……だから、ライ」
「え?」
「私がおまえに力をくれてやろう」
その言葉の意味が何なのか検討もつかないライは初めて背後のC.C.に振り返った。
C.C.はそんなライの様子にかまわず続ける。
「そのままちゃんとこっちに向いておけ。それから目も閉じていろ」
「目も?」
「いいから、早くしろ」
「……わかった」
何をするのか全くわからないライだったが、とりあえず彼女にちゃんと顔を向け、目を閉じる。
真っ暗な視界の中で彼女が何をするのかわからないにしろ、その時を待つ。
そして、次の瞬間。
(っ!!)
唇に柔らかいものが触れる。
驚いたライは目を開けた。
その瞬間、ライは目に映った光景にさらに驚いた。
なんと、C.C.が自分にキスをしていたのだ。
「んっ……」
だが、ライはそれを見ると何故か納得したみたいな気分になった。
そして、彼女を抱きしめて再び目を閉じる。
僅かなようで長いような時間が過ぎた後、二人は唇を離した。
目を開け、C.C.の顔を見ると、やや紅潮しているような気がする。
おそらく自分は……。
「ライ、真っ赤だぞおまえ」
やはりそうだったようだ。
照れ臭さを隠すため、ライは顔を背けた。
「全く、モテるくせに初な奴だ」
「う、うるさい(///)」
微笑んでるC.C.に赤くなりならがライはそう言う。
部屋の空気が桃色に変化していてからかわれているのだが、何故か悪い気分にはなれなかった。
そして、C.C.が口を開く。
「力が湧いたか?」
ライはその言葉を聞いて、C.C.に顔を向ける。
その表情は照れ臭さを残しつつも、真剣なものだった。
「……ああ。ありがとう、C.C.」
その言葉を聞いて微笑むC.C.を見ていて、ライは本当に力が湧いてきたような気がした。
そして、自分の気持ちをまた一つ知る事ができた。
いつの間にか自分が彼女を好きになっていたという気持ちを。
そして、素直でなくとも彼女もまた自分が好きなのだという事を。
決戦と試練の時が訪れるまで、もうしばらく……。
一方、ダモクレス内部のある部屋ではシュナイゼルとコーネリアが向かい合っていた。
そして、示された結果にコーネリアは愕然とした。
消失半径100キロメートル。
爆発時の原子分解レベルは臨界値。
死者多数。
これがナナリーが許可を出し、シュナイゼルが撃ったフレイヤのもたらした結果である。
「では、ペンドラゴンの住民は……!」
薄暗いその部屋で青ざめた顔をしてたずねるコーネリアの前で、シュナイゼルは微笑んでいた。
周囲に他の人影はいない。
「消えてもらったよ。その方が幸せじゃないのかな?ルルーシュに忠誠を誓う人生よりは」
「し、しかし、ナナリーには」
「嘘も方便だよ。ナナリーがルルーシュに立ち向かうと決意してもらうためには、余計な情報は入れない方がいいだろう?」
コーネリアがきっと眉に力を込めた。
「兄上は……そうやって人を操るのですか」
「コーネリア、人々の願いは何だい?飢餓や貧困、差別、腐敗、戦争とテロリズム。世界に溢れる問題をなくしたいと願いつつも、人は絶望的なまでに分かり合
えない。なら」
そう。
今まさに戦いをやめようとしない自分たちやルルーシュのように。
「理想としてはわかりますが、民間人を……」
「戦争を否定する民間人だって警察は頼りにするよね?皆わかっているんだよ、犯罪は止められないと。人それぞれの欲望は否定できないと。だったら、心や主
義主張はいらない」
手元にあったコンソールパネルに手を置くシュナイゼル。
途端に室内に光が灯る。
シュナイゼルとコーネリアが向き合った横にある液晶モニター。
浮かんだのは、立体型になった世界地図とその上空を飛行する天空要塞ダモクレスの軌道。
全長3キロにも亘る巨大な要塞。
「システムと力で平和を実現すべきでは?」
「?」
コーネリアがパネルを見つめる。
「このダモクレスは、10日後に合衆国・中華の領空に入り、第二次加速に移行する」
はっとしたコーネリアに対し、シュナイゼルは優しげに告げた。
「その後、地上300キロメートルの衛星軌道上まで到達する予定だ。その位置から戦争をやめない全ての国にフレイヤを撃ち込む」
「待ってください!ルルーシュを討つためではなかったのですか!?これでは世界中が……恐怖で人を従えようというのですか!」
「平和というのは幻想だよ。戦う事が人の歴史。幻想を現実にするためには躾が必要では?」
「人類を教育するおつもりですか!?そのような事神でなければ許されない!」
コーネリアのその言葉に対し、シュナイゼルはあっさりと宣言した。
「では、神になろう」
「なっ!」
「人々が私に平和を望むのなら」
「あなたは……!」
コーネリアがぎりっと奥歯を噛む。
そのとき、不意に2人のものではない声が聞こえてきた。
「すばらしい!」
コーネリアとシュナイゼルが振り返る。
そこには2人、シュナイゼルの副官のカノンと黒の騎士団を抜けたディートハルトだった。
名目上は黒の騎士団から派遣された外交使節という立場だが、そんなものは単なるお題目に過ぎないのだろう。
「やはりあなたに付いてきて正解でした。ゼロのカオスをも凌駕する完璧なる虚無!多様なる変幻!」
両手を広げて感激したように叫び続けるディートハルトの横から、すいとカノンが進み出た。
「シュナイゼル殿下。黒の騎士団と連絡がつきました。フレイヤについては否定的でしたが、ルルーシュを討つためならば手を組むと」
「ありがとう」
シュナイゼルはカノンにそう答えると、コーネリアに向き直った。
「ルルーシュの暴虐を経験した民衆は、よりマシなアイデアにすがるしかないよね」
その言葉に身を強張らせたコーネリアもシュナイゼルに向き直る。
「そのためにルルーシュの行動を見過ごしたというのですか?」
シュナイゼルは否定しなかった。
それどころかどこか冷たい笑みを浮かべる。
「最も被害の少ない方法だよ。たとえ10億20億の命がなくなったとしても、恒久的な平和が……」
「違います!」
コーネリアのマントが自らの手で跳ね上げられる。
腰から引き抜かれたのは剣と一体型になった銃。
それをコーネリアはシュナイゼルに向けようとし、
「強制される平和など、それは……!」
そこでシュナイゼルが指を鳴らした。
瞬間、銃声が響く、
しかし、それはコーネリアが発したものではなく、四方に置かれていた女神を象った石造からであった。
内部から素早く銃身が伸び、一斉に火線を放つ。
コーネリアを貫く灼熱の衝撃。
「っ!」
倒れこむコーネリアを見下しながら、シュナイゼルは冷然と呟いた。
「哀しいね、コーネリア」
そして、ブリタニア、黒の騎士団、ダモクレスに分かれた勢力はまもなく訪れる決戦に向けて、それぞれ準備を開始していた。
ある者は平和のために、ある者は自分の成した事に対するけじめを付けるため、またある者は大切な人を守るため、救うため、またある者は自分の信じるものの
ため、そして、ある者は自身の目指す目的のため……。
それぞれがそれぞれの思惑を胸に決戦に赴こうとしている。
もうまもなくして世界最大の決戦が始まろうとしている。
あとがき
今回のあとがきは後編でまとめてします。
押して頂けると作者の励みになりますm(__)m
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