コードギアス反逆のルルーシュR2
Double Rebellion
エピローグ
あれから半年……。
皆それぞれの道へ進んで行った。
新生日本の首相となった扇は、相変わらずブリタニアとの国交正常化のために奔走しているらしい。
武力ではなく、話し合いで事を進めていくつもりのようだ。
奥さんのヴィレッタとは、上手くいっているようで、第一子である赤ちゃんももうすぐ生まれるようだ。
藤堂は四聖剣の千葉と共に道場を開いて、戦いの第一線から退いた生活を送っている。
そのほかの四聖剣の朝比奈、卜部、仙波は日本の軍の将官となって、日々頑張っているらしい。
各国で軍縮が行われ、戦争の数は減ったものの、未だにテロや紛争などがあちこちで散発的に起こっているので、当分軍はまだ必要であるし、彼らみたいな存在
も必要だという事だ。
神楽耶は超合集国議長として再び就任し、自身の役目を日々まっとうしているようだ。
玉城は以前から開いていた喫茶店を相変わらず営んでいるらしい。
そこで、オペレーターだった双葉綾芽も働いているようだ。
その他に南や杉山などの元黒の騎士団のメンバーもそれぞれの生活を送っている。
合衆国中華の黎星刻は無事に治療を終え、今は天子の補佐に付いているとの事。
若い天子を支えるという彼の理念はまだ生き続けているようだ。
そして、周香凛とホン・グも天子を補佐するという形でそれぞれの役目をまっとうしているようだ。
その天子も忙しいながらも、それなりに充実した毎日を送っているらしい。
たまに神楽耶とお茶会をするという事も耳にしている。
それに対して、ブリタニアで暫定代表となっていたナナリーは、後に出来た臨時政府の信頼できる人達にブリタニアをまかせ、CRCの代表となっていた。
CRCというのは、膨大な旧皇室財産を戦後復興にあてて整理していくための団体だ。
既に最盛期だったブリタニア帝国は時代と共になくなり、体制は変化していっており、おそらく以前のようなブリタニア帝国が復活する事はもうないだろう。
ただ、その頃の栄光もあるためか、国法の改正が進んではいても、皇室をなくすというのには反対が多い。
だから、ブリタニアの人々の行く末はまだ決まっていない。
そして、その皇室の1人であるナナリーは、皇室財産の整理が済んだら、CRC代表からも身を退くつもりらしい。
臨時政府では、ナナリーに外交の交渉に参加できるだけの地位を用意しているという噂があるが、おそらく本人は断るだろう。
一見投げやりに見えるかもしれないが、「自分は古い時代の人間。歴史を逆流させないためにも、表舞台からは早めに消えた方がいい」それがナナリーの持論
なのだ。
身を退いたらルルーシュと一緒に暮らすのかもしれない。
表立って彼女はルルーシュ皇帝を否定しているが、本心はそうではないのだ。
そして、ライが以前止めをささなかったラウンズ達は、ブリタニアを立て直すため、それぞれの任に就いている。
以前のブリタニア体制がなくなった事でナイトオブラウンズというものもなくなったが、ドロテアとノネットは軍部に残り国内や国外の紛争の鎮圧に尽力してい
る。
モニカは、代表であるナナリーの補佐をしているとの事。
彼女らもあれからライの意思に共感し、今は未来のために己の力を使っている。
シュナイゼルはCRCの副代表という事だが、彼もおそらく整理がついたら引退するだろう。
ロイドは軍の研究部に残り、いまだにナイトメアの開発をしているらしい。
と言っても、軍縮が進んでいるので、それほどナイトメアを開発しているのではなく、次世代に向けた技術研究をしているようだ。
ラクシャータも同様に軍の研究部で仕事をしているらしい。
セシルは軍の研究部には残らず、ブリタニア記念博物館の管理というチーフマネージャーの役職に就いている。
真意はわからないが、彼女は彼女なりにその道を選んだという事だろう。
コーネリアやギルフォードは表舞台にほとんど出ておらず、今どうしているのかはわからない。
彼女は早くに皇室から退き、その後は普通の生活を送っている、そんなところかもしれない。
ジェレミアは相変わらずオレンジ畑の栽培に精を出しているようで、それなりの生活を送っているようだ。
アッシュフォード学園の皆もそれぞれの道を歩もうとしている。
ミレイは既にテレビアナウンサーになっており、今もその仕事を楽しくやっている。
シャーリーはルルーシュの事を知ってから、彼を支えるために色々と勉強したらしい。
前に比べてドジはましになったようだが、それでも相変わらずのようだ。
学園卒業後は、普通に就職して、時々ルルーシュの様子を見に行くらしい。
おそらく、それなりに生活の目処が立ったらそのままルルーシュと一緒に過ごすのだろう。
必然的に日陰の生活となってしまうが、それがシャーリーの決断であり、ルルーシュを支えると誓った彼女の考えなのだ。
ルルーシュもいい彼女を持ったと思う。
ニーナは科学者として、ロイドとは違うところで研究などをする日々らしい。
彼女は一度絶望しかけたものの、科学者としての道を突き進むようだ。
リヴァルは相変わらずミレイには振り向いてもらえないようで、普通ののんびりした学生生活を送っているようだ。
卒業後はどこかの企業に就職するらしい。
カレンは学園に既に復帰している。
復帰当初、以前のお嬢様の仮面を捨てた彼女に学園内では波紋が広がったらしいが(主に彼女を狙っている男子が)、活発的な彼女もそれはそれでいいと思う男
子もいたらしく、人気なのは相変わらずのようだ。
卒業後どうするのかは、まだ決めてないらしい。
ジノは世界一高い山や南極点に行ったりと、自由きままな活動をしているらしい。
カレンとはたまに連絡を取っているようで、逐一その画像がメールで送られてくるとカレンが呟いていた。
元から自由人気質なジノだったが、ラウンズの地位から解放されて拍車がかかったのかもしれない。
カレンとの仲が進展したのかは、不明だ。
アーニャは相変わらずジェレミアと一緒にオレンジ畑の栽培を手伝っている。
たまに連絡をしてくれるが、いつも通りのようだ。
ただ、以前と違って暗い感じはなくなった。
これから彼女がどうするのかは僕次第という事だろう。
スザクは、その後もゼロとして平和のために各地で尽力している。
英雄として祭り上げられている彼が、休まる日は当分ないだろう。
ルルーシュは、その後もジェレミアの元で日陰の身で、生活を送っている。
もう表舞台に出られなくなった以上、それは仕方のない事だが、ルルーシュはそれを受け入れているようだ。
生きているだけでも、ありがたい。
それがルルーシュが僕にくれた言葉だった。
ただ、彼もたまにスザクと連絡を取って、政策面でのアドバイスもしているらしい。
彼がゼロを再び演じるのかは、本人しかわからないが、今はその気はなく、アドバイス程度で済ませているようだ。
近い将来、ナナリーやシャーリーと住む事になりそうだが、ルルーシュはそれを表情にあまり出さないまでも喜んでいたように思う。
C.C.は、あの後も世界を回る旅を続けている。
こちらもたまに連絡を取っていて、C.C.らしく自由きままな旅をしているようだ。
彼女との契約は、ルルーシュを生かすという形で果たし、約束も彼女がまだ笑顔でいる事から果たしていると思う。
ただ、新たな約束として、いずれまた一緒に生活する事になるだろうという事はしたが、それはおそらくまだ先の話だろう。
とにかく、彼女との約束は僕か彼女が死ぬ時まで果たされたと言えるかはわからない。
そして、僕はというと………。
今ライは空を飛んでいる。
いや、それは正確ではない。
正確には天月のコクピットに乗って、天月と共に高空を飛んでいる。
ライは天月をかなり高度の上空で飛ばせながら、各計器をチェックする。
「周囲に異常なし……。とりあえず、天月を視認される心配は今の所はなし…か」
そう、未だにライは世界を密かに愛機である天月と共に旅していた。
では、半年前、C.C.とアーニャにライは自分の気持ちを伝えて、一体どうなったのか?
それは半年前にさかのぼる……。
〜回想〜
半年前
C.C.とアーニャのどちらと付き合うのか、決断を迫られていた。
ライは真剣に彼女達の事を考え、自分の心に整理をつけ結論を出すと、口を開いた。
「僕は……僕には君達のどちらかを選ぶ事はできない」
ライの言葉にC.C.とアーニャは驚いた。
聞いていた他の人達も驚いている。
ライはその様子にかまわず、ただ続けた。
「優柔不断かと思われるかもしれないけど、これが僕の正直な気持ちだ。C.C.もアーニャも1人の異性として好きだ。だから、選ぶ事なんてできない」
そう言い切ったライに、一番早く驚いた状態から脱したC.C.が不満気にライに問うた。
「それは……どうしてだ?」
この選択をしたという事はどちらにも不満がないという事は明らかだ。
しかし、何故C.C.が不満そうにしているのか。
それは、ライが言ったとおり優柔不断な決断か、それとも安易なもしくは下心全開な考えでこの決断をしたのではないかと多少なりとも疑っているからだ。
もちろんライが下心全開でこんな決断をする人ではない事は、C.C.自身が一番よくわかっている。
だが、それでも彼のこの決断に至った真意を聞いておく必要があったのだ。
問われたライは、彼女の質問の意図を理解し、話し始める。
「僕がどちらかを選べないのは、C.C.にもアーニャにも、感謝しているからだ」
「感謝?」
アーニャが首を傾げて言う。
ライは頷いた。
「ああ。C.C.には出会った時から、再び眠るまで色々と世話になった。そして、また再び目覚める事になった時から今日ここに至るまでも。その時に交わし
てくれた契約は今日まで僕が生きるための大切な一部となった。それらの事に関して僕はC.C.に感謝しきれない程の恩があると思ってる。確かに憎まれ口や
わがままで、色々と振り回された時もあったけど、何気なく傍にいてくれた君が、いつの間にか僕の支えとなっていたのはまぎれもない僕の真実で、そんな君だ
からこそ僕は好きになれたんだし、こうやってここにいれるんだと思う。……それに、君にした約束はまだ果たせてないと思うから。あの時した約束はで
きるなら最後まで守りたい」
ライの言葉にC.C.はやや赤くなってそっぽを向き、反対にアーニャはムスっとした感じで、ライを睨む。
その様子にライは苦笑しつつも続けた。
「そして、アーニャには世話になったという部分ではあまり特筆すべきものはないかもしれないけど、C.C.とは違う部分があるんだ」
「違う部分?」
またアーニャが首を傾げながら聞いてきたので、ライは頷いた。
「ああ。……ただ、なんて言うのかな。アーニャには人を、自分を好きになるという事を教えられた気がするんだ。もちろん、アーニャにそんなつもりはなかっ
た
のはわかるし、告白してくれた時には驚いたけどね」
僅かに苦笑するライの言葉に、アーニャは赤くなって俯く。
「たぶんアーニャは好きだから好意を向けてくれたんだと思うけど、僕はそれで気づいた事があったんだ。……ああ、こんな僕でも好きになってくれる人がまだ
いたんだって。もちろん好きを広い意味で捉えると、それなりに僕を好いてくれていた人はいたと思う。けど、異性として本気で好きになってくれる人がいた事
に僕は少し救われたと思うんだ。今だから思える事だけどね。だからこそ、僕は君を好きになったし、敵であっても君が好きだという心は変わらなかった。そし
て、僕は最終的に自分も好きに思えるようになった。そのきっかけをくれたのは君なんだ。それに……アーニャには立場で色々と苦労をさせてしまったからね。
罪滅ぼしって訳じゃないが、その分アーニャを支えられればいいと思うんだ。ただ、C.C.と違って契約なんてしてないから、これは単なる僕の自己満足に
すぎないかもしれないが」
「つまり……おまえは私にもアーニャにも計り知れない恩があって、それをくれた私達を支えたい。……という事か?」
「ああ」
C.C.が簡潔にまとめてそう言うと、ライは頷いた。
その様子を見たC.C.はやや呆れた。
「……全く、時々予想を上回る事をおまえはしてくれたが、最後の最後でとんでもない事をしてくれたな。予想のはるか斜め上をいったぞ」
「はは……確かに。これじゃあまるで2人を妻にすると言ってるようなものだし、なんかこれだけだと僕もやはりブリタニア皇族の人間なんだなと妙に納得でき
てしまうよ。先代の皇帝か、って突っ込まれそうだな」
C.C.の言葉にライはやや汗を垂らしながら言った。
最後の言葉にC.C.はやや眉を顰めたが、それも一瞬で、次の瞬間には微笑んだ。
「だが、まあおまえらしいといえばおまえらしい答えだな」
「うん」
C.C.の言葉にアーニャも頷いた。
2人ともライの性格をよく理解している。
そんな2人の様子にライは苦笑するしかなかった。
「だが、おまえがそう言った以上、ちゃんと平等に2人愛してくれるんだろうな?」
C.C.の大胆発言にアーニャは若干顔を赤くする。
他の皆は今度はC.C.の言葉に驚いている。
というか、外野の人達は先ほどから驚いてばかりなのではないだろうか。
「ああ。それは当然だ。もちろんそれができなかった場合の報復に対する覚悟もある」
真剣に答えたライにC.C.は微笑んだ。
「なら、おまえの言ったその言葉しっかりと実践してもらう事にするぞ。アーニャも、それでいいな?」
「……うん(///)」
アーニャもC.C.の言葉に顔を赤くして同意を示した。
対するC.C.の態度はどこか余裕がある。
この辺りは2人の生きてきた時間の長さと経験の違いだろう。
比べる事自体ありえないのだが。
そして、2人がライの答えに同意をはっきりと示した事で、驚いて固まっていた外野から歓声があがった。
「わー」とか「キャー」とかの声が一気にその場を満たす。
特に学園の皆から辺りからその声がよく聞こえる。
そして、そのまま走ってきた外野である黒の騎士団の人や学園の皆にライはもみくちゃにされた。
「このやろう!こんな美人と美少女の2人も付き合えるなんて羨ましいぜ!」
「しかも2人と結婚前提だと!?いつの間にライは女誑しになったんだ?」
この辺は玉城やジノの発言だ。
というか、ジノは楽しんでいるようにしか思えない。
その様子をルルーシュ、スザク、ナナリー、カレンや黒の騎士団の中でも冷静な人達は見守っていた。
なんとも微笑ましい光景だ。
つい最近までこんな光景を目にするとは、到底思えなかった。
だからこそ、それが嬉しく思える。
そして、散々もみくちゃにされたライはC.C.とアーニャに思い出したように言った。
「ああ、そうだ。C.C.、アーニャ、付き合う事は変わらないんだけど、一緒に過ごす事はしばらく待ってほしい」
「……どういう事だ?」
訝しげになるC.C.とアーニャにライは説明する。
「ルルーシュと以前した約束で、世界を見て回るというのが、僕の行ったリベリオンから今までの行動だった訳なんだが、それをもう少し続けたい」
「どうして?」
今度はアーニャが聞いてくる。
ライはそれに答える。
「自分の世界と自分の責任のためかな。果たして色づいた世界が僕に何を見せてくれるのか。それをこの目で確かめ、僕自身の見聞を広め、そしてこの世
界の行く末を見守っていきたい。もう自分の狭い世界だけで生きる事は許されないし、僕自身もそうする気はないから。それが世界を変革しようとした自分達の
責任であるし、それを果たすまではこの旅を続けていこうと思ってるから。それにこのままでは、君達にふさわしい男になったとは言えないしな。……いい
か?」
少々不安げに問いかけたライ。
それを見ていたC.C.は少し考えると、口を開いた。
「我がままな奴だ。……だが、そういう事ならいいだろう。旅を続けるといい。ただし、たまには連絡をよこす事とちゃんとその旅に区切りがついたら必ず帰っ
て来い。いいな?」
「ああ、わかった」
こうして、ライは再び旅を続ける事となった。
そして、また歓声が再び湧き、ライがまたもみくちゃにされたのは、また別の話である。
そんな経緯からライは今でも旅を続けている。
もちろん、顔を隠すなど、人目に触れないように行動しなければならなかったが。
だが、ライはそれを苦と思ってはおらず、どこかの地に降り立って、一通り見聞してから、また違う場所に行くという事を繰り返していた。
場所の決定に法則性はなく、気ままに思ったところに降り立っているから、そこは気ままなのんびり旅と言えた。
そして、今日もまたそれをしようとしている訳である。
しばらく天月を飛ばしていたライだったが、適当に出していた拡大した映像で眼下にある村を見つけた。
「……この辺りなら森林も多いし、隠すにはちょうどいいか。とりあえず、天月を近くの湖に下ろそう」
そう呟いたライは、天月を目的の湖のそばに下ろして行った。
しかし、ライはそれを偶然見ていた人間に気づいていなかった。
1人の少女が街から自身の住む村へと帰る道を歩いている。
髪は透き通るような白に近い水色、肌も基本的に色白に近い。
容姿は間違いなく美少女であろう。
その手には鞄があり、その中にはたくさんの食材が入っている。
少女は道をいつものように歩いていたが、今日は違う事がある事に気づいた。
大きな光がちょうど村から少し歩いた所にある湖に降りていっているのだ。
「何だろう……?」
気になった少女は湖に向かって駆け出した。
しばらくして湖のほとりに辿り着いた少女が見たのは、輝くように青いナイトメアだった。
この湖には神様の世界に繋がっていると聞くが、まるで目の前にいるナイトメアが神様のように思える。
少女がナイトメアについて疎かった事もその発想に起因しているのかもしれない。
「……きれい」
思わず呟いた少女。
しかし、すぐに背後から声をかけられた。
「動くな」
同時に首に突きつけられたのは刃のついた剣に似た武器。
少女はこの時、向けられた武器が刀というものだとは知らなかった。
背中をつたう冷や汗。
しかし、少女はなんとか気情にも声を発する。
「……どうして、ですか?」
それに恐らく男性と思われる、自分に武器を向けた人物が答える。
「この機体を見られたから…だ。だが、この機体がここにあるのを黙っていてくれるならこの手の武器は引こう。……どうする?」
相手の問いに少女は目の前にある刃に恐怖しながらも少し考えると、答えを出した。
「……わかりました。黙っていれば良いんですね?」
「ああ」
「なら、この事は誰にも言いません」
少女がそう言うと同時に首に突きつけられていた武器は引かれた。
安心した少女がその拍子に後ろを振り返る。
そこにいたのは、フードを被った自分と同じくらいの年の青年だった。
髪はフードのおかげでよく見えないが、顔はかなり端正である。
その青年は武器を鞘にしまう。
「突然すまない。事情が事情でね。この機体をあまり知られる訳にはいかなかったんだ」
「あ……いえ。そういう事情なら…仕方ないと思います。ただ、いきなり刃物を突きつけられたのは怖かったですけど」
「それは本当にすまなかった」
そう言って、青年は頭を下げた。
何故かさっきまでと立場が逆転している気がしないでもない少女であった。
「あの……お名前は?」
いつまでも相手の名前がわからないのでは、どう呼んでいいかも、信用できるかもわからないので、尋ねると青年はやや間をおいて答えてくれた。
「……ライ…だ」
「ファミリーネームは…ないんですか?」
「……ああ。ちょっと事情があってね。ライだけが名前なんだ」
苦笑したライに少女は慌てて謝った。
「ご、ごめんなさい!なにか聞いてはいけない事まで聞いてしまって……」
「いや、いいよ。僕自身は気にしていないから」
言って、ライが今度は少女に尋ねる。
「そういえば、君の名前は?」
少女がその言葉で思い出したような様子になると、口を開く。
「私はニース・L・ヒールと言います。よろしくお願いしますね、ライさん」
「はぁ……」
何故か先ほどまで武器を突きつけて最初は警戒していたのに、いつの間にか親しげに自己紹介してくれる少女ニースにライは要領の悪い返事をしてしまう。
だが、これが彼女なりの自己紹介なのだろう。
ライは思考を切り替えると、ニースにあるお願いをした。
「ところで、できれば近くの村に案内してもらえるかな?ちょっとお腹が減っていてね」
「それなら私の家が村でレストランをしていますので、一緒に行きましょう」
「すまない。ありがとう」
そして、ライはニースに案内され、予定通り村まで行く事になった。
それからしばらくして村に案内されたライは、ニースの母が経営するというレストラン『Cherry』に招かれていた。
まあ、レストランとは言っても、田舎にあり、建物も木造りなので、食堂と言った方が雰囲気的には近い。
その中でライはニースの母から料理をごちそうになっていた。
ちなみにフードはかぶったままなので、ちょっと食べ方がおかしいというより、怪しいままになっている。
「ニースが危うく湖に落ちそうになっている所を助けてくれてありがとうね。たいしたお礼もできないけど、たくさん召し上がって」
「ありがとうございます」
そう言うと、ライは再び食事を採り始める。
ちなみに何故こんな話になっているかというと、ライの機体の事を隠すという事でニースに話を合わせてもらったのだ。
いきなり武器を突きつけたのが最初なのに、助けたという話になっているところがなんともおかしな話である。
ニース本人も事情を察してくれたのか、それ程気にしてくれていないようで、今はニースの母のマルガリータの手伝いをしていた。
しばらく食事を採っていたライだったが、ちらりと周りに視線を向けた。
どうも先ほどから他の客に視線を向けられている。
それは探られるような視線だった。
その様子を見たのか、マルガリータが口を開く。
「あまり気にしないでね。田舎なものだからよそ者が気になってしまって……」
その話をライは黙って聞く。
「……それに、最近この村の近くでテロが頻発していて、それで村の人もちょっと神経質になっているのよ」
テロという言葉にライはひっかかりを感じたが、ここは深く詮索しない事にした。
「なんというか、その……トラブルが増えて……わかるでしょ?」
「…………」
ライはそれに答えず、静かなままだ。
すると、手伝いの食器を洗い終えたニースがライに近寄ってきた。
「そういえば、ライさんの名前ってかつてのナイトオブゼロと一緒なんですね」
「……たまたま名前が一緒なだけだよ。こっちとしては、いい迷惑だが」
笑顔で言うニースにライは何のつもりかと思ったが、表情には出さずに彼女の様子を窺う。
すると、今度はマルガリータが口にする。
「あら、そういえばそうね。まあ、彼には色々な説が飛び回っているけど、あなたは彼とは違って優しい良い人みたいね」
笑顔で言うマルガリータにライは心の中で苦笑せざるを得なかった。
何せその本人が本当はここにいるのだから。
おそらく、彼女はナイトオブゼロの時の自分に対して、一応人としての部分は残っているが、相当ひどい人と映っているのだろう。
だいたい世間の評価もそのくらいなので、驚く事ではないのだが。
そして、ライはまた食事を採り始めた。
こうして、ライはニース一家に世話になったのだが、帰ろうとすると、彼女らに引き止められてしまい、結果的にしばらく彼女達の家に滞在する事となった。
代わりに、レストランの手伝いや畑仕事をしている。
その際にライの白銀色の髪も公のものとなってしまったが、彼女達は特に詮索する事もなかった。
どうも向こう、特にマルガリータさんはライを気に入ってしまったようであるが、ライとしても、泊めてもらって食事をしてくれている分恩があるので、しばら
くその好意に甘え、その間にそれ相応の恩を返そうと思ったのだ。
天月のメンテナンスも時々買出しついでに行っている。
もちろん、ニースには秘密にしてもらったままだ。
こうして、過ごしている内にあれから5日ほど経っていた。
ライがいつも通り畑仕事をしていると、ニースがレストランから出てきた。
「ニース、今から買出しか?」
「はい。ちょっと隣街まで」
「そうか。気をつけて」
「ええ。行ってきます」
言うと、彼女は買い物鞄を持って出て行った。
この時、ライは彼女がとんでもない事態に遭遇するとは予想もつかなかった。
そして、夕方ごろ、ニースは買出しを終え、森の中の帰り道を歩いていると、茂みの方から小さな声が聞こえてきた。
(……?誰かしら?)
声が小さくてよく聞こえなかったので、ニースは近づいてみると、そこには1人の男がいた。
誰かと通信機で連絡を取っているようである。
「はい。明日の13時に村を襲撃する予定ですね?了解しました。……いえ、村の様子はこれと言って特に。……わかりました。それは分かり次第また連絡しま
す」
そこで、彼女はこの男の正体に気づいた。
(……まさか、この人、最近近くでテロを起こしている集団の1人!?)
急いで村の皆にこの事を伝えようと足を踏み出したニースだったが、それがいけなかった。
踏み出した足で落ちていた小枝を踏んでしまう。
パキッ
その音で男に気づかれた。
その男は通信機を持ったまま言う。
「はい……プランE実行します」
言われた瞬間、男はニースに襲いかかり、逃げようとした彼女は次の瞬間意識を失った。
その頃、ライはたまたま天月のメンテナンスで近くを通りかかっていた。
「……そろそろこの村ともおさらばだな。明後日にはマルガリータさんとニースに言って、ここを出よう」
メンテナンスの時の情報を纏めながら、ライはそう呟いた。
と、その時、不意に視界の隅を横切るものがあった。
咄嗟に横の森の中を見ると、そこにはニースを担いで走っている男と男に担がれて気を失っているニースがいた。
(ニース!)
ライはすぐさまその男の後をつけると、その男はナイトメアである茶色のサザーランドに乗った。
ニースはそのナイトメアのコクピットに乗せられている。
(まずい!)
もう男も既にナイトメアに乗ろうとしているところだった。
このままでは単に男を止めるのは間に合わない。
そう思ったライは、持っていた発信機をナイトメアに投げつけ、取り付けた。
その発信機は本来ライの居場所を定期的に天月の整備を担当してくれているロイドに送るもので、ライはいくつか所持していた一つを今使った。
そして、そのナイトメアはそのままフロートを展開させて飛び立って行った。
すぐさまレストランへ帰ったライは、事の次第をマルガリータに伝えた。
すると、彼女は予想通り困惑すると同時に驚いた。
「ニースが攫われたですって!?」
「ええ。たまたま連れ去られている所を僕が見まして。……すいません。発信機を取り付けるので精一杯でした」
「……いえ、あなたのせいではないわ。でも、なんとかしないと……!」
やはり娘が心配なようで慌て始めるマルガリータ。
「落ち着いてください、マルガリータさん。それに相手はおそらくこの近くで騒ぎを起こしていたテロリスト。慎重にいかないと」
「でも、その間にもニースが!」
必死な様子のマルガリータ。
それを見たライは少し考えると、こう切り出した。
「……わかりました。なら、僕が彼女を連れ戻してきます」
すると、必死にどうするか考えていたマルガリータはその目を見開いてライを見た。
しかし、すぐに反対する。
「ダメよ!相手はテロリストなのよ!あなたの身が危険だわ!」
そう言うマルガリータにライは微笑んだ。
「大丈夫ですよ。僕、工作とかは結構得意ですから」
そう言うと、ライはレストランの出入り口へ向かう。
そして、ドアに手をかけると、振り返ってまた微笑んだ。
「必ず明朝までには戻ってきますから。ニースさんと共に」
そう言うと、ライはレストランを出て駆け出して行った。
「ライ君……」
それをマルガリータはただ見つめる事しかできなかった。
ライはあの後、一旦天月から愛刀である蒼焔を持って行き、今はテロリストのアジトに潜入していた。
内部には簡単に潜入でき、連中とニースの居場所も特定できたまでは良かったが、ここで問題が発生した。
連中は既にナイトメアに乗っており、その中の一機にニースも乗っているのだ。
おそらく、人質を利用して村の有り金を奪うだけ奪った後、蹂躙するつもりなのだろう。
そうなれば、ニースの命も危ない。
連中のアジトである地下格納庫の崖の上から様子を窺っていたライだったが、ここである決断に出た。
(連中が全員ナイトメアに乗り込んだ瞬間にニースの乗っているナイトメアに気づかれないように飛び乗るしかない。……危険な賭けだが、今は考えている暇は
ない!)
そう決断したライは、テロリスト達がナイトメアに乗り込んだ後、ニースの捕らわれた機体に飛び乗った。
それからしばらくして、テロリスト連中は飛行を続けていたが、一旦その一群が村の近くの森に降り立った。
おそらく、偵察を出すつもりなのだろう。
初めから思っていた事だが、今回のテロリストは用意が充分な上に、えらく慎重だ。
だが、今回はその慎重さが幸いした。
何せ、下手をすれば、村の真っ只中でライ自らが立てた作戦を実行しなければならなかったからだ。
ライの行動に気づかないテロリスト連中のリーダーは仲間に指示を出す。
「よし、お前たちが様子を見て来い」
そして、その頃にはライは行動の第一段階を終えていた。
「その必要はない」
「なっ!」
リーダーが振り返った瞬間、そこにいたのは仲間のナイトメアから乗っているはずの仲間がロープで巻かれ、放り出されており、代わりにそのナイトメアに乗っ
ているのが、違う人物の声であったからだ。
「貴様、何者だ!」
ライはそれにこう答えた。
「ただの通りすがりだ!」
言うと、ライは助けて隣に居たニースに注意をしておく。
「しっかり掴まってて。後、喋らないように」
「あ、はい……」
瞬間、ライは恐ろしい速度でサザーランドを動かし始めた。
「ちっ!逃がすな!撃て!」
他のテロリスト仕様のサザーランドが一斉にアサルトライフルを撃ってくる。
しかし、ライのサザーランドはその弾丸の雨を周囲の木々と己の起動で持って、全てかわした。
そのままテロリスト連中のナイトメアと距離を離す。
逃がすかとテロリスト連中のナイトメアも追ってくる。
(数は6機……。技量はそれほどでもないが……いささか分が悪いか)
数はもちろん向こうが上なのに加えて、今は視界の悪い夜。
森という木の遮蔽物が多い場所でなんとかなっているが、状況的には不利。
しかも、ニースが乗っているので、大きい無茶はあまりできない。
それに、サザーランドに合わせて今は操縦しているが、いささかサザーランドの反応が悪い。
いくら装備が充実していも、テロリストが使用しているのだから、整備が十分されておらず、機体の調子が万全でないのもある意味当然なのだ。
かつて黒の騎士団に所属していたライはその事をよく理解している。
(確実にニースも無事で勝利を得るには……やはり当初の予定通りにした方が無難だな)
このままでも勝てなくはないが、ニースに怪我をさせてしまう可能性がある。
ちゃんと無事に助け、かつ確実に勝つにはレストランを飛び出した当初から考えていた作戦を実行するより他はないようだ。
結論を出したライは、すぐに行動に移し、ある場所へ向け、後退を続ける。
敵が索敵をしながらも、こちらへと撃ってくるが、ライはそのことごとくを回避する。
「あの……あなたは一体……」
「舌噛むよ!」
ニースが言い切る前にライはそう怒鳴り気味に言って、操縦桿とペダルを凄まじい速さで操作する。
それに応えて、サザーランドが動く。
ニースもその動きに喋っていては舌を本当に噛むと思ったのか、口をつぐんだ。
そして、回避行動をしばらく続けている内に目的地へと達した。
「今からケイオス爆雷を使って、敵を牽制するからその間に機体を下りて移動するよ」
「あ、はい!」
だが、その時にはライは既に行動に入っていた。こちらに接近してくるテロリスト仕様のサザーランドに向けてケイオス爆雷を投げる。
こんな物まで装備しているなんて、本当に充実したテロリストだ。
投げられたケイオス爆雷は、展開し、前方に弾丸の嵐を一気に撒き散らす。
寸前でそれを察したテロリスト達はかろうじてその弾丸を回避し、まぬがれた。
そして、テロリスト達がケイオス爆雷の弾丸の嵐が収まるのを確認し、ライが乗っていたサザーランドを見たが、そこには誰も乗っていなかった。
その証拠にコクピットが開いたままである。
「くそっ!手間をかけさせやがって!逃げた奴を探せ!」
ライの行動をそう読んだリーダーは仲間に指示を出したが、次の瞬間、別方向から光る何かが発射された。
その光にテロリスト連中のサザーランド一機が斬られ、爆発する。
「な、今度は何だ!?」
リーダーはそう叫んで、光の飛んできた方向にカメラを向けると、そこにはライの天月がいた。
わずかに空中に飛んでおり、スターエナジーウィングを閃かせている。
「な、あれはまさか!?」
「あ、天月!?」
テロリスト達が天月の姿を見て驚愕する。
そう、ライはあの牽制の間に近くにあった天月に急いで乗り込んだのだ。
距離は縮めるだけ縮めて、後はニースを抱っこして超神速で走っただけだ。
もちろん、お姫様だっこで、超神速の急停止だけは避けた。
いきなり超神速で急停止すると、ライはともかくニースの体が影響を受ける。
にしても、やはりあれだけ世界を騒がせただけあって、天月はかなり有名になったらしい。
ここに来た当初はこんな風に使うつもりはなかったのだが。
だが、こうなってしまった以上こうするしかなかった。
そして、ライは天月を操作し、右手に持った刀『蒼焔』を構え、一気にテロリストのサザーランドへ飛翔する。
テロリスト達は驚きのあまり対処が遅れる。
すれ違いざまに天月がサザーランドの一機をコクピットごとたたっ斬る。
「くそっ!」
地面を滑って止まった天月にサザーランド一機が肉薄する。
天月は振り下ろされたスタントンファを受け流して、刀を袈裟懸けに振り下ろし、サザーランドを両断する。
残り4機。
すかさず残りのサザーランド二機に飛燕爪牙を発射する。
同時に発射された二つのハーケンは見事に2機のサザーランドを貫き、沈黙させた。
「な、なんでこんなとこに天月がいるんだ!?」
怯えたように叫ぶテロリストのサザーランドに天月が神速で飛び込んだ。
右薙ぎに刀を一閃し、すれ違うとサザーランドの胴体が真っ二つに斬れた。
その拍子にサザーランドが爆発する。
「ちっ!てめええぇぇぇ!!」
残ったリーダー機がアサルトライフルを乱射する。
しかし、天月はその弾丸を全て左手の輻射波動で完全に防いだ。
「くっ、くっそおおおぉぉぉ!!俺達はこの腐った世界に対し!」
ライはそれ以上聞く気はなかった。
神速でサザーランドに瞬く間に接近し、左手の輻射波動の爪でサザーランドの頭部を鷲掴みにすると、そのまま輻射波動を叩き込んだ。
サザーランドが一気に膨張していき、天月が手を離して離脱すると同時に、サザーランドは爆散した。
「御託はCの世界で言ってるんだな」
それで、戦闘は瞬く間に終了した。
ライはコクピットで息を吐くと、隣にいたニースに声をかける。
「大丈夫だった?ニース」
「あ、はい……。……あの、やっぱり、ライさんは……」
ニースの戸惑った問いに、ライは苦笑すると、今度は微笑んで答えた。
「ああ……。僕は元ナイトオブゼロのライ、だよ」
こうして、ライのニース奪還戦は幕を閉じた。
生き残ったテロリスト達はこの地域の軍に知らせ、程なくして彼らが来ると、彼らにその身柄を引き渡した。
そして、ニースも無事マルガリータさんの元に届けた。
ニースもやはり怖い思いをしたようで、マルガリータさんに思いっきり泣きついていた。
マルガリータさんもすごく心配していたようで、そんな彼女をただ抱きしめているだけだった。
こうして、夜中のニース奪還と対テロリスト戦は無事に終わり、それから3日が過ぎていった。
「お世話になりました」
そう言って、ライは家の前でニースとマルガリータに礼をした。
ライは今日ここを出るつもりなのである。
「いいのよ。私もニースを助けてくれて本当に感謝しているし。それに、テロリストがいなくなったおかげで、村もまた活気を取り戻して、私のレストランの利
益も上がったから。あなたには感謝してもしきれない程だわ」
「そうですよ。ライさんには、本当にお世話になりました。私からもお礼を言わせてください」
2人の言葉にライは笑った。
「そう言ってくれると、嬉しいです。と言っても、僕は僕自身のためにやった事ですが」
「それでもいいのよ。あ、それと、これを持っていって」
それは籠につめたマルガリータ作のお弁当だった。
「今日の分しかないけど、持っていって。ニースも頑張って作ったから」
「お、お母さん!(///)」
多少赤くなりつつも、ニースが母のマルガリータを咎める。
対するマルガリータは笑顔のままだ。
ライはその様子を微笑ましく見つつ、弁当をありがたく受け取る。
「ありがとうございます。……では、そろそろ僕は行きますね」
「ええ、気をつけてね」
「また機会があれば、ここに来てくださいね」
「ああ、その時にはまた寄らせてもらうよ。それじゃあ、ニースもマルガリータさんもお元気で」
そう言って、ライは身を翻すと、歩いて天月のある湖に向かって去って行った。
その後ろ姿をニースとマルガリータが見送る。
「これで、良かったんだよね?」
ニースの呟きにマルガリータが答える。
「ええ。彼の正体はやっぱりナイトオブゼロだった。けど、彼はニースとこの村を救ってくれたんだもの。確かに世間では、彼は悪逆皇帝ルルーシュの騎士で、
その象徴であり、ひどい騎士だったのかもしれない。でも、彼は本当は優しくて、強い騎士だった。たとえ、誰がそれを否定しようとも私達の中での彼の真実は
変わらないわ。だから、今はこれでいいの」
ニースとマルガリータはあの事件の後、ライ自身にライがナイトオブゼロだと明かされた。
薄々日々の生活でそうではないのかと思っていた2人だったが、改めて聞くと、それには驚いた。
だが、これまでの行動と実力から妙に納得もできた。
そして、軍が来た時も誰が鎮圧したのかと聞かれたが、たまたま通りすがりのナイトメア乗りが助けてくれたとだけ言った。
もちろんそれに追求はされたが、ニースもあの時の事はよく覚えていないとごまかす事で、ライの事は一切話さなかった。
それが恩人であるライに対しての彼女達の配慮であり、彼女達のライへの評価だった。
そう話す内にライの後ろ姿が見えなくなる。
「うん……そうだよね。ライさんは本当は優しい人だって、あの時わかったから」
だから、正体を明かされてもニースとマルガリータはライをさらにこの3日間ここに泊めた。
そして、彼女達はそれからライの事について問う事は一切なかった。
それはライが何故あのような行動に走ったのかと思うより、彼を信じるようになったからだ。
たとえ彼がどんな事をしようとも、彼の本当の優しさはちゃんと自分達が覚えているから。
そして、湖のある方角から光が天に向けて昇っていく。
ライの天月だ。
「きっと、彼は今も世界の行く末を見守ってるのよ。自分達が起こした変革の先に何があるのか。その責任と未来のために」
「そうだね……お母さん」
そして、その光も見えなくなった。
「さて、今日もお仕事頑張りましょう!」
「はい!」
そう言って、ニースとマルガリータもレストランに戻って行った。
こうして、ライの訪れたとある地での出来事はこれで幕を閉じた。
ライは、親友と共に世界を変革させた。
それは自身の罪を償うためであり、親友のためであり、世界の未来のためであり、また己自身の未来のためであった。
この世界がこれから先どうなっていくかは、この世界に生きる人達次第であり、それはまだわからない。
だが、ライ達が信じた未来に行き着くまで、ライは歩みを止めない。
この優しい世界に、真に幸せという名の明日が訪れるまで、ライは戦い続ける。
今日も世界のどこかでライと天月が飛翔している……。
完
あとがき
皆さん、お久しぶりです。
ついにこのあとがきも最後となってしまいました。
改めて振り返ると長いようで、意外にも早かった約2年間でした。
15万を超える人気を誇ったのも、一重に応援してくださった読者様方のおかげです!
そういえば最終話の投稿日の他に6月初頭に凄いWEB拍手入ってましたね。
東北の方でネットがいくつか復活したという情報がありましたから、その影響なのでしょうか。
もし、東北の方にも見て楽しんで頂いてたのなら、嬉しいです。
さて、今回で本当の最終回となってしまった訳ですが。
この話は文字通り本編の正式なエピローグとして書いております。
結果として、ライがC.C.とアーニャのまさかの両方とくっつく事は半ば確定したのですが……。
あいにくと、ライは自分達がした変革を見届けるために同棲は先送りとなってしまいました。
あ〜んな事やこ〜んな展開を期待していた読者様には少し残念かもしれませんね。
別にエロい意味ではありませんが(笑)
そして、今回書いているのはそんなライの旅の一部です。
世間には悪逆皇帝ルルーシュの騎士として、悪名高く評判の悪い、そんなライがある1つの村を訪れた事によって起こるエピソードを書いています。
そこで描かれるライの日常や行動を通して、ニース、マルガリータはライへの認識を改める。
そんなストーリーとなっています。
世間一般には、ひどい印象の残るライですが、ライが旅をする中でそんな認識がごく一部でも変わっていく。
些細な事ですが、そうしてライの本当の姿が細々と伝えられていく。
そんな話です。
まあ、若干オリキャラであるニースにフラグが立ったような気がしないでもないですが……。
ライ……君は認識を変えると同時にどれだけフラグを立てるつもりなんだ……。
もうリア充爆発しろとか言われそうですよね(苦笑)
とにかく、そんなライの旅の一部を描く事で、ライが今でも“色”のついた世界を見続ける、そんな形のENDと話にしました。
LOSTCOLORSのテーマを受け継いだまさにライらしいエンディングにできたと私は思っています。
他の要素としては、一応もしもで続編を作る場合も想定したENDになっています。
まあ、今のところそれは未定ですし、書く気もほとんどなかったりするのですが。
何せ、今回で完全燃焼してしまいましたので……。
ですが、これで満足頂けたら私としては、もう言う事はございません。
今回これを見ていただいた方は、もし興味があればif編のエピローグも見てくださいね。
基本前半の書き方はこの本編とほとんど変わらないですが、後半はそれぞれサブタイトルに沿ったストーリーとなっています。
そちらはそちらでここでは登場しなかった要素もありますので、ある意味必見かもしれません。
今回で「コードギアス反逆のルルーシュR2 DoubleRebellion」は完全に完結です。
私としては、ギアスで書きたい事の全てを出し切ってしまったので、以後ギアスを書く事はもうほとんどないかもしれません。
ですが、もし気が向けば書く事もあるかもしれません。
その時はまた是非見てくださいね。
もちろん、他の作品も見てください。
その方がやはり私としては嬉しいですので。
では、約2年という長い間見て頂いて本当にありがとうございました!
また他の作品でお会いしましょう!
今回で本当に終わりですが、末永くこの作品を愛してくださると嬉しいです。
また、気が向けば是非最初からぶっ通しで見てくださいね!
では、今後は他の作品などでお会いしましょう!
本当に長い間たくさんの応援と感想を頂きありがとうございました!!!
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