コードギアス反逆のルルーシュR2
              Double  Rebellion














IF END C.C.


あれから半年……。
皆それぞれの道へ進んで行った。

新生日本の首相となった扇は、相変わらずブリタニアとの国交正常化のために奔走しているらしい。
武力ではなく、話し合いで事を進めていくつもりのようだ。
奥さんのヴィレッタとは、上手くいっているようで、第一子である赤ちゃんももうすぐ生まれるようだ。
藤堂は四聖剣の千葉と共に道場を開いて、戦いの第一線から退いた生活を送っている。
そのほかの四聖剣の朝比奈、卜部、仙波は日本の軍の将官となって、日々頑張っているらしい。
各国で軍縮が行われ、戦争の数は減ったものの、未だにテロや紛争などがあちこちで散発的に起こっているので、当分軍はまだ必要であるし、彼らみたいな存在 も必要だという事だ。
神楽耶は超合集国議長として、自身の役目を日々まっとうしているようだ。
玉城は以前から開いた喫茶店を相変わらず営んでいるらしい。
そこで、オペレーターだった双葉綾芽も働いているようだ。
その他に南や杉山などの元黒の騎士団のメンバーもそれぞれの生活を送っている。

合衆国中華の黎星刻は無事に治療を終え、今は天子の補佐に付いているとの事。
若い天子を支えるという彼の理念はまだ生き続けているようだ。
そして、周香凛とホン・グも天子を補佐するという形でそれぞれの役目をまっとうしているようだ。
その天子も忙しいながらも、それなりに充実した毎日を送っているらしい。
たまに神楽耶とお茶会をするという事も耳にしている。

それに対して、ブリタニアでは、暫定代表となっていたナナリーは、後に出来た臨時政府の信頼できる人達にブリタニアをまかせ、CRCの代表となっていた。
CRCというのは、膨大な旧皇室財産を戦後復興にあてて整理していくための団体だ。
既に最盛期だったブリタニア帝国は時代と共になくなり、体制は変化していっており、おそらく以前のようなブリタニア帝国が復活する事はもうないだろう。
ただ、その頃の栄光もあるためか、国法の改正が進んではいても、皇室をなくすというのには反対が多い。
だから、ブリタニアの人々の行く末はまだ決まっていない。
そして、その皇室の1人であるナナリーは、皇室財産の整理が済んだら、CRC代表からも身を退くつもりらしい。
臨時政府では、ナナリーに外交の交渉に参加できるだけの地位を用意しているという噂があるが、おそらく本人は断るだろう。
一見、投げやりに見えるかもしれないが、「自分は古い時代の人間。歴史を逆流させないためにも、表舞台からは早めに消えた方がいい」それがナナリーの持論 なのだ。
身を退いたらルルーシュと一緒に暮らすのかもしれない。
表立って彼女はルルーシュ皇帝を否定しているが、本心はそうではないのだ。
そして、ライが以前止めをささなかったラウンズ達は、ブリタニアを立て直すため、それぞれの任に就いている。
以前のブリタニア体制がなくなった事でナイトオブラウンズというものもなくなったが、ドロテアとノネットは軍部に残り国内や国外の紛争の鎮圧に尽力してい る。
モニカは、代表であるナナリーの補佐をしているとの事。
彼女らもあれからライの意思に共感し、今は未来のために己の力を使っている。
シュナイゼルはCRCの副代表という事だが、彼もおそらく整理がついたら引退するだろう。
ロイドは軍の研究部に残り、いまだにナイトメアの開発をしているらしい。
と言っても、軍縮が進んでいるので、それほどナイトメアを開発しているのではなく、次世代に向けた技術研究をしているようだ。
ラクシャータも同様に軍の研究部で仕事をしているらしい。
セシルは軍の研究部には残らず、ブリタニア記念博物館の管理というチーフマネージャーの役職に就いている。
真意はわからないが、彼女は彼女なりにその道を選んだという事だろう。
コーネリアやギルフォードは表舞台にほとんど出ておらず、今どうしているのかはわからない。
彼女は早くに皇室から退き、その後は普通の生活を送っている、そんなところかもしれない。
ジェレミアは相変わらずオレンジ畑の栽培に精を出しているようで、それなりの生活を送っているようだ。

アッシュフォード学園の皆もそれぞれの道を歩もうとしている。
ミレイは既にテレビアナウンサーになっており、今もその仕事を楽しくやっている。
シャーリーはルルーシュの事を知ってから、彼を支えるために色々と勉強したらしい。
前に比べてドジはましになったようだが、それでも相変わらずのようだ。
学園卒業後は、普通に就職して、時々ルルーシュの様子を見に行くらしい。
おそらく、それなりに生活の目処が立ったらそのままルルーシュと一緒に過ごすのだろう。
必然的に日陰の生活となってしまうが、それがシャーリーの決断であり、ルルーシュを支えると誓った彼女の考えなのだ。
ルルーシュもいい彼女を持ったと思う。
ニーナは科学者として、ロイドとは違うところで研究などをする日々らしい。
彼女は一度絶望しかけたものの、科学者としての道を突き進むようだ。
リヴァルは相変わらずミレイには振り向いてもらえないようで、普通ののんびりした学生生活を送っているようだ。
卒業後はどこかの企業に就職するらしい。
カレンは学園に既に復帰している。
復帰当初、以前のお嬢様の仮面を捨てた彼女に学園内では波紋が広がったらしいが(主に彼女を狙っている男子が)、活発的な彼女もそれはそれでいいと思う男 子もいたらしく、人気なのは相変わらずのようだ。
卒業後どうするのかは、まだ決めてないらしい。
ジノは世界一高い山や南極点に行ったりと、自由きままな活動をしているらしい。
カレンとはたまに連絡を取っているようで、逐一その画像がメールで送られてくるとカレンが呟いていた。
元から自由人気質なジノだったが、ラウンズの地位から解放されて拍車がかかったのかもしれない。
カレンとの仲が進展したのかは、不明だ。
アーニャは相変わらずジェレミアと一緒にオレンジ畑の栽培を手伝っている。
ただ、以前と違って暗い感じはなくなった。
どうやらアーニャの影はなくなったようで、彼女は自分の思うように今を生きている。

スザクは、その後もゼロとして平和のために各地で尽力している。
英雄として祭り上げられている彼が、休まる日は当分ないだろう。
ルルーシュは、その後もジェレミアの元で日陰の身で、生活を送っている。
もう表舞台に出られなくなった以上、それは仕方のない事だが、ルルーシュはそれを受け入れているようだ。
生きているだけでも、ありがたい。
それがルルーシュが僕にくれた言葉だった。
ただ、彼もたまにスザクと連絡を取って、政策面でのアドバイスもしているらしい。
彼がゼロを再び演じるのかは、本人しかわからないが、今はその気はなく、アドバイス程度で済ませているようだ。
近い将来、ナナリーやシャーリーと住む事になりそうだが、ルルーシュはそれを表情にあまり出さないまでも喜んでいたように思う。


そして、僕はというと………。


























とある大陸の荒野を一機のナイトメアが走っている。
機体の色は蒼で、その頭部からは水色の髪が生え、走る速度に合わせてなびいている。
そして、その機体の外観はまさに黒の騎士団で以前使われていた月下そのものであった。
だが、それだけではなく、そのナイトメアの右手に1人の少女が乗っていた。
帽子が風に飛ばされないように手で抑えながら、前方の遥か彼方をどこか楽しそうに見つめている。
その少女の名はC.C.という。
すると、そのC.C.が不意に自分を乗せている月下に向いて口を開いた。

「ライ、この先に街があるのか?」

少し大きめの声でC.C.が尋ねると、機体のスピーカーを通じて返事が返ってきた。

『ああ、それは確かだ。間違いない』

答えた月下の操縦者、ライは自身の機体を操作しながらそう答える。
そう、この機体を操っているのはライであり、この機体はかつてラクシャータに頼んで保管しておいてもらった月下先行試作型改である。
あの後、ライがラクシャータと連絡を秘密裏に連絡を取り、さらなる改良を施した上で、こうしてまた乗っている。
改良した点は、飛翔滑走翼を取り付けた事、プラズマフィラーを搭載できるようにした事と搭載した事、対レーダー及び不可視の新型ステルス装置の光学迷彩を 搭載した事の3つだ。
あえて名を付けるなら、月下先行試作型改弐式と言ったところだろうか。
ただ、飛翔滑走翼はあくまでも取り付けただけであって、ライはこれをほとんど使っていない。
せいぜい大陸間の海を渡る時くらいだ。
それで、何故ライがかつて相棒であった月下と共に、C.C.と荒野を走っているのか。
それは半年前に遡る……。


























〜回想〜

半年前

C.C.とアーニャのどちらと付き合うのか、決断を迫られていた。
ライは真剣に彼女達の事を考え、自分の心に整理をつけ結論を出すと、口を開いた。

「僕は……C.C.、君と付き合いたい。……いや、付き合って欲しい」

ライの言葉にC.C.は当然だと言わんばかりの表情となり、対するアーニャはどこか不満そうな表情を見せた。
もちろん、あかの他人であればわからないわずかな変化ではあったが、ライにはそれが十分わかった。
ただ、そのアーニャはそんな表情をしながらも、不満を言ってくる様子は見せなかった。
アーニャには悪いと思い、少し罪悪感を持ったが、これがどちらかを選ぶ事だと自分に言い聞かせ、ライは自分の正直な気持ちを言葉に乗せた。

「確かにアーニャも好きだよ。それは嘘じゃない。けど、C.C.には今まで支えてもらった恩があるから。目覚めた時から…ずっと今日まで。そんな彼女を僕 は好きになって、彼女も僕を好きだと言ってくれた。もちろん、C.C.は素直じゃないから言葉で言ってくれた訳じゃないけどね。それにC.C.とはあの時 に約束を交わしたから……僕はそれをちゃんと果たしたいんだ」

ライが2人の内、C.C.を選んだのは、いつも陰で彼女が自分を支えていてくれたから。
それが例え言葉じゃなくても、素直でなくとも、確かに肝心な所で彼女は自分の傍にいてくれた気がする。
自分の正体を知り眠ると決めた時も、再び目覚める時も、それだけでなく、今まで起きてきた数々の出来事の時にも。
そのさりげない不器用な優しさが、いつの間にか自分の支えとなっており、またいつしかそんな彼女をライは好きになっていた。
彼女が最も色づいて見えたのは、きっとそのせいなのかもしれない。
それに以前黄昏の間で交わした約束……。
あれはひとまず果たした事になるのだろうが、本当に果たしたかどうかは彼女が本当に最後の最後で笑っていられるかどうかで決まる。
だから、ライはC.C.という恩人に恩を返すという形ではなくて、好きになった人の笑顔を最後まで守りたい。
ライにとっては、それが彼女を選んだ理由でもあり、これからに向けた行動理念でもあった。

「だから……C.C.…僕と付き合ってくれ。最後まで」

少々恥ずかしいのか、めったに見せない不器用な笑顔で、ライはC.C.に向き、そう告げた。
その言葉にC.C.は少々頬を赤らめながらも、優しい顔で応えた。

「ああ……」

C.C.が応えた直後、外野から歓声が上がった。
わーとかキャーとかの声が一気にその場を満たす。
特に学園の皆から辺りからその声がよく聞こえる。
そして、そのまま走ってきた外野である黒の騎士団の人や学園の皆にライはもみくちゃにされた。
だが、もみくちゃにされるライの顔はどこか優しく、嬉しそうな感じを含んでいた。

こうして、ライはC.C.と付き合う事となった。
それからライはC.C.と共に世界の旅を再びする事にした。
2人でこれからを歩んでいく世界を見続ける。
そう決めたのだ。
その際、今まで使用していた天月は人目を引くというより悪印象が高いので、以前ラクシャータに保管してもらった月下先行試作型改を改良してもらう事で、そ れを足として使用する事にしたのだ。
かつての相棒とまた一緒に自分達の足で世界を旅し、見続ける。
それが、ライがこの旅をするにあたって掲げたものだった。
だから、飛翔滑走翼は付けられても、使用する事は極力せず、地を走る事でどこかのどかでのんびりとした旅をC.C.と共に始めた。

























それから半年……この旅を変わらずずっと続けているため、今ライとC.C.は月下改弐式に乗って荒野を走っているという事だった。
いつの日かまた天月が必要となる時が来るかもしれないが、その時まではこの月下に乗り続けるつもりだ。
来ないなら、それこそ最後まで、C.C.と一緒に。
そうライは考えていた。
過去の出来事に思いを馳せつつ、月下改弐式を操作していたライに、C.C.がまた声をかけてきた。

「ライ、あれがおまえの言っていた街じゃないのか?」

言われてライは前方を見ると、遠巻きにだが街が見えてきていた。
一応モニターでズームをかけて再度確認するが、間違いない。
どうやら過去の出来事に思いを馳せていた間に随分と走っていたようだ。
辺りを見回して月下を隠すに適当な場所を探す。
そして、その場所を見つけると、ライはスピーカーごしにC.C.と話す。

「そのようだ。とりあえず、ここから南西の方角2kmあたりのところに岩場がある。そこに機体を隠してから行こう」

すると、C.C.が明らかに不満そうな表情をする。

「…私はそんなに歩くのは嫌だぞ」

いつもの彼女のわがままにライはため息をついて、とりあえず説得する。

「それは我慢してくれ。この機体は天月とは違った意味で目立ちすぎる。それに、あくまでこの機体は兵器だ。そんな物騒な物を街の近くに泊める訳にもいかな いだろ?」

「………」

しかし、尚も不満そうなC.C.。
仕方ないと思ったライは、ちょっとしたいたずら心と共に言葉を紡いだ。

「それに本来は僕達の足で歩いて旅をするのが普通だったんだ。……それでも嫌っていうのなら、抱いていこうか?」

「……お、おまえがどうしても、というなら…わ、私は構わないぞ(///)」

頬を赤く染めながら、そう言うC.C.。
素直でない言葉だが、表情や態度に隠しきれてないところがC.C.らしい。
そんな彼女を微笑ましく見ながら、ライは目的の岩場へと月下を向けた。

























月下の光学迷彩を起動させ、岩場に隠すと、ライとC.C.は街に向かった。
ちなみにC.C.を抱っこして行くという真似はしていない。
C.C.はどうだったかは知らないが、ライにとってはジョークだった。
それに、彼女をからかえるネタがあるだけでも正直ありがたいというのがライの本音だろう。
いつもはライがC.C.に振り回されているのだから。
それからしばらくして、ライとC.C.は街に着いた。

「これは……」

「ほぉ……」

2人が見たのは、荒野の中にある街とは思えない程、発展した街だった。
ところかしこにビルが立ち並び、見回してみると商店街などもある。
この街がどうやって発展したのかはわからないが、この街にはそれだけの活力があった。
だが、それだけではない。

「随分と賑やかだな。祭りでもあるのか?」

「それはわからないな。何せ、僕達は旅人だから」

C.C.の呟きにライはそう答えた。
そう、2人の言うとおり周りには人がせわしなく行き交い、商店街の上の方などには、飾りがされている途中なのである。

「とりあえず、近くの人に聞いてみよう」

ライは言うと、近くで何やら運んでいる少年に声をかけた。

「あの、ちょっといいかな?」

「あ、はい」

ライの声に応じて少年が顔をライの方に向ける。
活発そうな元気のいい少年だった。
ライは続ける。

「随分と騒がしいけど、何かあるの?」

「え?兄ちゃんそんな格好してるのに何があるのか知らないの?」

そんな格好。
実はライは、顔が広く知られているため、バレたりすると非常にまずい。
そのため、ナイトメアから出る時は口元にマスクをし、髪型を変えているのだ。
ちょうど某忍者漫画の片目先生がしているマスクを思い出してもらえればいいだろうか。
それで、先ほどそんな格好と言われたのだ。
その証拠にそんな格好と言われたライを見て、後ろでC.C.が密かに笑っている。
ライはそれを無視して、少年に答えた。

「実は僕達旅人なんだ。だから、ここに来たのはついさっきなんだよ」

少年はライの言葉で事情を察してくれたようだ。
笑顔で先ほどの質問に答えてくれる。

「明日はお祭り。今夜は前夜祭だよ。でっかい花火とかうまい食べ物も出るから兄ちゃん達も楽しんでってね」

そう言うと、少年は荷物を持って去って行った。
すると、C.C.が呟く。

「ライ、私は今度こそ特大ピザを食べたいぞ」

「…ある訳ないだろ。あれは、アッシュフォード学園限定だ。……とりあえず、ホテルに行こう。今日の宿は取っておかないといけない」

ライは呆れながらC.C.を連れてとりあえずホテルを探す事にした。
























そして、ライとC.C.はホテルを取った後、荷物を預けて街の散策をしていた。
どこも賑やかで祭りを思わせる雰囲気が周りを満たしている。

「そういえば、これはどういう祭りなんだ?」

「何でも毎年この日に行われる祭りなんだって。僕も詳しい事は知らない」

「ライ……」

C.C.が二言目を発そうとした時、その雰囲気に何かを察したライはその続きを言った。

「皆まで言うな。ピザを食べたいんだろ?」

「……まあ、そうだ」

思いっきり図星なのか、目線を逸らしながら答えるC.C.。
いつもならその申し出を断るライだが、ずっと旅を続けているC.C.はピザを食べる機会はほとんどない。
今回はいいか、と思い口を開く。

「そうだな……。折角の祭りだし、たまにはいいか。ただし、ほどほどにね」

「そうか!ありがとう、ライ!」

と目をキラキラさせてお礼を言ってくるC.C.。
いつもの彼女らしからぬ行動よりその勢いに思わずたじろいでしまうライだった。
と、その時。


ドゴッ!!!


大きな音が遠方から聞こえた。

「ライ、これは……」

「おそらく爆発音だ。……行ってみよう」

言うと、ライとC.C.は駆け出した。
程なくして、ライとC.C.が現場に着くと、ビルの上階が燃えているところだった。
しかも、未だに断続的に爆発している。
ライは現状を把握するために、近くの人に声をかけた。

「これは一体どうしたんですか?」

「実は今日の明日の祭りで使うパレード用の火薬に火がついたんだ。しかも、残った火薬にも次々と引火してるんだよ。このままじゃ、ここも危ないぜ」

事情を知ったライは、とりあえずここを離れた方が良さそうだと判断し、それを行動に移そうかと思った時だった。

「待ってください!」

ひと際大きな声が聞こえた。
その声は女性の声で、かなり慌てている様子だった。

「まだ息子が、エリオが中にいるんです!」

「!」

その言葉に体が動いたライだったが、その肩に手を置いて止める者がいた。
C.C.だった。

「C.C.……」

「よせ、ライ。おまえは私と違って、世間に顔が知れ渡っている。バレれば、ただでは済まないかもしれないぞ」

「………」

C.C.の言うとおりだ。
自分は顔が知れ渡っている。
それも悪い意味でだ。
もし、正体が誰かにバレるような事があれば、間違いなく騒がれるだろう。

(だが……僕は……)

C.C.に振り返ったライは、真剣な表情で告げた。

「確かにC.C.の言う事は正しい。僕のしようとしている事が間違っているって事もわかってる。……だが、子供1人救えないで、これからの世界を見ていく なんてないだろ?…未来を紡ぐのが僕達の使命だったはずだ」

その言葉を聞いたC.C.は笑みを浮かべると、ライの肩に置いていた手を放した。

「そうだったな。…なら、行ってこい」

「ああ、行ってくる」

笑顔で応えたライは、そのまま走って一気にいまだに爆発の続くビルへと入って行った。
周りの制止の声を振り切って。
C.C.はそんなライの無事を祈るしかなかった。





















燃え盛るビル内に入ったライは、その激しさを肌で体感していた。
視界にももうもうと燃え盛る炎が映っている。

(……っ!想像以上だな)

予想していたより、炎の勢いが激しい。
しかし、ライのやる事は変わらない。
ライはコートのポケットにしまっていた神剣フェニックスを取り出す。

「神剣発動」

すると、ライの声に応えるように刀身のない神剣の唾から刀身が出現する。
刀身は眩いくらいの黄金色だった。
ライは、完全な剣と成った神剣を握る。

(自分から半径5mの炎を範囲外まで遠ざけ、以後任意で解除するまでそれを維持……)

ライがそう念じると、ライの5m範囲の炎がまるでライを避けるかのように遠ざかる。
この神剣フェニックスは名前どおり、コードを断つ力の他に炎を操る力がある。
本来、神剣から発せられる炎は通常の炎とは異なるものなのだが、通常の炎を操る力もそれに付随するようにあるのだ。

「後は……エリオという少年を探すだけだ!」

言って、ライは神剣を持って走り出した。

























ライが燃え盛るビルの中に突入して数分……。
ビルからやや離れた消防隊、事態を見ていた人達は固唾を飲んでライが少年を連れて出てくるのを待っていた。
そして、その時。

「おい、誰か出てくるぞ!」

消防隊の人が叫んだ。
その声に、ビルの正面に視線が集中する。
じょじょに炎の中から影が現れ、その人物が姿を現した。
それは、エリオという少年を抱いて脱出したライだった。
その姿を見ていた観衆から声が挙がった。

『無事だー!!』

ワァァァァァと観衆が喜ぶ中、ライは少年を被害の及ばない場所に行くと、下ろした。

「よし、これでもう大丈夫だ」

すると、少年の母親が駆け寄ってきた。
そして、そのまま涙ながらに少年を抱きしめる。
親子の感動の場面を微笑ましく見ていたライだったが、不意に背後から近寄ってくる人に気づいた。
振り向くと、そこにいたのはC.C.だった。

「C.C.……」

「おかえり」

「ああ、ただいま」

C.C.はそれだけ言ったので、ライは笑顔でそう返した。
すると、感動の再会は終わったのか、少年が母親との抱擁をやめて、ライに向き直っていた。

「兄ちゃん、ありがとう」

「ああ、これからは気をつけるんだ。いいな?」

「うん!」

少年の元気のいい返事を聞いたライは、そのまま病院に運ばれる少年を見送っていた。
軽傷とはいえ怪我をしていたので、その治療だろう。
煙を少なからず吸っていたので、その検査も兼ねるのかもしれない。
一方、周りの観衆の中に、ライを見据える一人の男がいた。
まるでライを探るかのような視線を向けている。
そして、ライはその視線に気づいた。

(…!誰かに見られている……?)

そう思い、辺りを見回したライだったが、周りには人が多く、視線を向けている者が誰だかはわからなかった。
だが、その視線はすぐに消えた。
その時、ライの様子が変なのに気づいたC.C.が呼びかける。

「どうかしたのか?ライ」

「いや、何でもない……。とにかく、僕達もホテルに戻ろう」

そう言って、ライはなるべく観衆の目を避けて、C.C.と共にホテルに戻った。


























その日の夕方……。
ライは街の郊外に来ていた。
あの後、ホテルですすが付いた服を洗濯し、予備の服に着替えた後休んでいた。
C.C.も何故か同じベッドで休んでいたが、彼女は今街を見て回っている。
おそらくピザを食べている事は確実だろう。
そして、ライも今はこうしているという訳だ。
ちなみに何故街の郊外にいるのか、それは……。

「おい、いつまでも付けてないで出てきたらどうだ?」

ライが不意にそう声を発すると、建物の陰から人が出てきた。
男だが、ただの一般人ではなさそうだ。
その事を彼の出す雰囲気が証明している。

「さすがだな、気づいていたか」

ライはその男に振り返ると、こちらも話し出す。

「最初からな。あの火事の後、ずっと付けてただろ。あんなに視線を向けられれば嫌でも気づくさ」

言うと、ライは表情をさらに鋭いものにして、相手を問いただした。

「それで、僕に何の用だ」

その問いに相手が答える。

「あなたの実力とその度胸と覚悟、見せて頂いた。正直、どれも素晴らしいものだ。…だからこそ、俺達の組織に来てほしい」

「…組織?」

ライが肝心な部分を再度言うと、男は両手を掲げながら仰々しく告げた。

「そう!我々『ホワイト・ナイツ』に!今宵より我らはこの世界に対して疑問を投げかける。本当にこれが平和だと言えるのか!こんな互いに譲り合う、ぬるま 湯に浸かるような日々!これでは、世界は腐っていく一方だ!だからこそ、我々は今日ここから世界に対して宣戦布告をする!あなたには是非そのリーダーに なってほしい」

ライの眉がピクリと動いた。
男は続ける。

「あなた程の人がいれば、黒の騎士団のゼロを倒す事すら容易い!そうすれば、世界は再びひっくり返る!今こそ、我々が世界の中心に立つのだ!」

男の演説のような話を聞いたライは静かに呟いた。

「なるほど……。だから“白の騎士団”、ホワイト・ナイツか」

「さあ、我々と共に是非来てください」

そう言って、男が手を差し出す。
だが、ライはその手を取らずにこう告げた。

「そうだな。なら、先におまえ達の組織について教えてもらおうか」

その瞬間、ライの瞳が赤く染まった。
その瞳はギアスの瞳。
ライが声を発する瞬間から、既に発動していた。

「何を……」

そう言いかけた男だったが、最後まで言う事はできなかった。
彼の耳にギアスの力を宿す声が入り込んだからだ。
そして、その力が彼の脳神経を支配する。
何人も逆らえない絶対遵守の力。
今、ライはその力を久しぶりに発動した。
























そして、夜。
前夜祭が行われようとしている中、ホテルの部屋に帰ったC.C.が見たのは、何やら真剣な表情で支度をしているライだった。

「ライ、おまえ…何をしている?」

その声でC.C.が戻ったのに気づいたライは、振り返った。

「……帰ったのか、C.C.」

それだけ言うと、質問に答えずライはコートを着る。
ポケットには神刀と神剣が入っている。
だが、C.C.は質問に答えない事を良しとしなかった。

「質問に答えろ。何をしている?」

有無を言わせないC.C.の口調にライは黙り通すのは不可能だと悟り、質問に答える。

「ちょっと野暮用を済ませるためだ。……それじゃあ、行ってくる。すぐ戻るから」

答えたと言っても、はぐらかし気味の回答だった。
準備を終えたライはC.C.とすれ違い部屋を出ていこうとする。
だが、C.C.の発した一言でその足は止められる事になる。

「ライ、おまえ、ギアスを使ったな?」

「!」

その言葉に驚いて足を止めたライは彼女に振り向く。
その様子を見たC.C.は何でもないように言う。

「何を驚いている。私はギアスを持つ者を感じ取れるんだぞ。おまえがギアスを使った事くらいわかる」

「………」

「……何があった?」

言葉を発さないライに、C.C.は静かに問いかけた。
ライは、C.C.の真剣な表情を見て、しっかりと答える事にした。

「今日、世界の抱える闇の一部に出会った」

「…………」

C.C.は黙って耳を傾ける。

「そいつらはホワイト・ナイツと名乗って、世界をまた争いの日々にしようとしていた」

「…………」

「……わかっていた事だ。僕やルルーシュ、スザクが作った世界に納得のいかない者が出てくるのは。そして、そうした人達は必ず武力的な手段に出る。だが、 今を生きる民間人には何の罪もない。彼らは今を必死に生きているだけだ。……だから、僕達が計画を実行した上で生じた歪みは僕達の手で正さなければならな い」

「だから、行くのか?」

「ああ。ギアスで、敵のアジトも構成もはっきりした。危ない芽は早く潰しておく必要がある」

「そうか……」

やや俯いて視線を逸らしたC.C.にライは近づく。

「それに、折角の祭りだ。今ここにある楽しい時期を僕は見ていたい」

「…………」

「だから、明日の祭りは2人で見よう」

そう言って、ライはC.C.に近づき顔を上げると、不意に彼女にキスをした。

「んっ!」

突然の不意打ちキスに驚いたC.C.だったが、すぐに落ち着き、目を閉じた。
そして、キスを済ませると、ライは笑顔で言った。

「じゃあ、行ってくる」

「ああ、待ってるぞ」

やや顔を赤くしながらC.C.はそう答え、部屋を出て行くライを見送った。


























ライはホテルを出た後、そのまま岩場に待機させていた月下に飛び乗った。
すぐにシステムを立ち上げ、操縦桿を握る。
機体の立ち上げ作業を行いながらも、ライは先のC.C.に対しての行動に苦笑していた。

(彼女を振り切るためとはいえ、少しキザだったかもしれないな……)

しかし、悪い気分ではない。
むしろ、力が湧いてくる感じがする。
そんな事を思いながら、ライは月下を起動させた。

「よし、システムオールグリーン。各部問題なし。行くぞ、月下」

目指すは、ホワイト・ナイツのアジト。

























そして、ホワイト・ナイツのアジトでは、メンバー全員が一同に会していた。

「おい、あいつからの連絡はまだ来ないのか?」

「ああ、夕方にターゲットと接触するという連絡から一向に返事がない」

「くそっ……。決行はもうすぐだってのに。何やってやがる……!」

そう言って、舌打ちしたのは、今のこの組織のリーダー。
他のメンバーも彼ほどではないにしろいらだたしそうな顔をしている。
すると、その時。

ドカアァァァァン!!!

アジト付近で爆発が起こった。

「何だ!?」

「敵襲か!?」

「いや、この場所はまだ誰にも知られていないはず!」

突然の爆音に慌てるメンバー。
しかし、リーダーは違った。

「落ち着け!おまえら!」

『!!』

その怒鳴り声でメンバー全員が押し黙る。
リーダーは続いて指示を出した。

「とりあえず、今持っているナイトメア6機に今すぐ乗れ。どこの奴か知らないが、俺達に攻撃すると、どういう報いを受けるか思い知らせてやる」

『了解!!』

そう言うと、メンバーは次々とナイトメアに乗り始めた。
そして、リーダーも自分に用意されているナイトメアに乗る。

(どこのどいつか知らないが、俺達の力思い知らせてやるぜ)

意気揚々とホワイト・ナイツのリーダーはナイトメアを駆って、アジトの外へと出た。


















一方、爆発を起こした張本人のライは、アジトの出入り口がある渓谷の上に立っていた。
ホワイト・ナイツのアジトは街からそれなりに離れた渓谷にあると聞いたので、まず出入り口で簡単な爆発を起こし、自分は渓谷の上で待ち伏せするという作戦 を取った。
相手の出方を見るのと同時に、その規模を再確認するという意味もある。
ギアスによって、構成やナイトメアの保持数はメンバーだった男から聞いているが、やはり確認しておく事は大事だと考えたのだ。
もちろん、その男の末路は言わなくてもわかるだろう。
そして、アジトから出てきたのはナイトメアで種類はサザーランド、パンツァーフンメル、ガン・ルゥなど様々だったが、全部で7機。
情報どおりだ。

(えらそうに謳い文句を言っていたが、単なるテロリストか。小物だな……)

しかし、どんな小さな火種も見逃す理由にはならない。
ライは月下を動かし、右手のハンドガンで、眼下のサザーランドとグラスゴーを撃ち抜いた。
不意打ちを喰らった二機は、避ける事すらできずに爆散する。
それで、敵は月下が崖の上にいると気づいた。

『てめえ、何者だ!』

リーダーらしき機体からスピーカーを通じて怒鳴り声が発せられた。
外は暗いので、機体が今一判別できてないのだろう。
ライは淡々と答える。

「愚か者を狩る断罪者だ」

そして、ライは月下を眼下のナイトメアに踊り出させた。
崖の傾斜は緩いため、ナイトメアでも走行ができる。
ただし、加速し続けるので、下手をすれば、地面に激突も十分にありうる。

『撃てぇ!!』

しかし、月下に攻撃が降り注ぐ中、ライは月下を巧みに操り、加速し続けながらも、器用に攻撃を避け続ける。

『く、くそ!なんで当たらねぇんだ!』

敵の1人が月下の動きを見て動揺する。
その隙を見逃さず、ライは一気に月下をそのナイトメア、パンツァーフンメルに向けた。
月下が飛び、着地した瞬間には既にパンツァー・フンメルの目の前だ。

「遅い」

右手に持っていた刀を横薙ぎに一閃。
パンツァーフンメルが胴体から割れ、爆散する。
残り4機。
その時、至近で月下を認識した敵の1人が今更のように呟いた。

『ま、まさか……黒の騎士団のあの蒼の月下!?』

「気づいたようだな。だが、遅い」

背後で驚いていたガン・ルゥに突撃し、返す刀で左切り上げに一閃。
ガン・ルゥが切り飛ばされて、爆発する。

『くそがぁ!』

『これならどうだ!』

今度は2機がかりでグラスゴーが挟撃してくる。
だが、月下にはその程度の挟撃は脅威にすらならない。
同時に繰り出してきたスラッシュ・ハーケンを屈んでかわし、右側のグラスゴーに突撃。

「月牙」

胴体に狙いを定めて、コクピットごと突きで穿つ。
月牙の持つ突きの威力にグラスゴーの胴体が吹き飛んだ。

『もらったぁ!』

そこへ背後からアサルト・ライフルを向けてくるグラスゴー。
しかし、ライは慌てずに機体を操作し、滑らせる。
撃たれた弾丸の嵐を、ランドスピナーによって月下を横滑りさせる事で、かわしていく。
さらに、余裕ができたところで、紙一重の回避の連続で接近。
一気にグラスゴーに肉薄する。

『こ、こいつ、化け物か!?』

あまりに非常識な機動に敵が恐怖したが、もう遅い。
ライは、接近した勢いで、グラスゴーを袈裟切りに切り落とした。
残るはリーダーらしき機体一機。
月下がその機体に視線を向けると、敵のリーダー機サザーランドはその威圧感に怖気付いたように一歩後退する。

『て、てめえ……何故…俺達を襲う……』

「簡単な事だ。おまえ達が今の世を乱す者だからだ。それ以外の理由はない」

そして、月下は刀を構える。

『くそっ!なんでわからねぇ!今のこの世の中なんかただの偽善「それ以上喋るな」』

敵のリーダーが言いかけた言葉をライは遮った。
もう聞く必要すらない。
聞いたところで、怒りが湧くだけだ。

「おまえらのような奴には言葉すら必要ない」

その瞬間、月下が飛び出した。

『うわあぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!』

敵が襲い掛かってきた月下に恐怖して、アサルトライフルを乱射する。
しかし、照準がズレまくっている。
そんな弾丸が月下に当たるはずがない。
そして、弾丸の嵐を回避した月下は左手の甲壱腕型で、サザーランドの胸部を掴んだ。

「おまえらに慈悲は不要だ」

呟くと同時に、ライは操縦桿のボタンを押し込んだ。
途端に、左手の甲壱腕型から輻射波動が放出され、サザーランドを一気に内側から膨張させていく。

『ぎ、ぎゃあぁぁぁぁぁぁ……』

敵のリーダーが悲鳴を上げながら、サザーランドが爆散した。
その爆炎の中から蒼い月下が出てくる。
そこに立ち髪をなびかせる月下改の姿は、かつて黒の騎士団の双璧と呼ばれた機体にふさわしい姿であった。
こうして、テロ組織『ホワイト・ナイツ』は壊滅。
ライによって、組織メンバー全てが殺され、アジトにあった関連する物は全て破壊された。
そして、この事件は密かにライ単独で行われたため、決して世間には出る事も知られる事もなく、終わったのである。




























そして、次の日。
ライとC.C.はホテルにあるベランダから眼下の祭りのパレードを見下ろしていた。
眼下にいる人達は楽しそうに踊ったり、人と話し、店などに入って食事を楽しんでいる。
ライはそれを笑顔で眺めていると、C.C.が話しかけてきた。
その手には頼んだのであろうピザとそれが乗っている皿があった。

「楽しそうだな。そんなに見ていて楽しいか?」

「そう見えるか?」

「ああ」

「C.C.こそ行かなくて良かったのか?めったにない祭りだ。楽しめる機会はそうないと思うけど」

ライの言葉に、C.C.は皿をベランダの手すりの上に器用に乗せてから、淡々と答える。

「私は、こうしてピザを食べている方が性に合ってる。それに、あまり人ごみは好かない」

「そうか……」

それだけ言うと、ライはまた外の様子を眺める。
C.C.はそんなライの隣に来ると、ピザを頬張りながら、同じように外を眺めた。
そして、しばらくした後、ライがふと口を開いた。

「C.C.……世界はこれからどうなっていくんだろうな……」

空を見上げながら、呟いたライにC.C.は苦笑気味に応える。

「それを見ていくんじゃないのか?」

その言葉にライも苦笑した。

「そうだな。……僕は昔、世界に色すら感じていなかった。そんな僕が今は世界の行く末を見ていくために、世界を旅している。ちょっと皮肉めいたものを感じ てしまってね」

「なんだ、らしくないぞ」

ライの独白に、C.C.が言う。
だが、ライは続けた。

「でも、皮肉めいたものはあっても、僕はそれを嫌だとはやはり思えないんだ。そこに込められた大切な思いがあるのを知っているから。だから、僕は今もこう して戦っていられる」

「…………」

そして、そこでライは初めてC.C.を見た。

「C.C.、僕もいつか戦わなくてすむ未来が来るんだろうか……」

「……それは、おまえ次第だ」

「そうだな……」

C.C.の言葉にライは言って納得する。
確かにその未来を実現できるかは自分次第だ。
と、そこでライはずっと言おうと思っていた事を口にする事にした。

「そういえば、前にC.C.に世界の色に気づかされた時があったよね」

「……ああ、そんな事もあったな」

それは今から3年ぐらい前だろうか。
記憶を失くしていたライの記憶探しを手伝うと言って、ピザ1つと引き換えにC.C.がしてくれた事。
それは、本当は記憶探しではなく、ライの瞳に映されているものに、色というものが存在しているのか。
それを気づかせるためのものだった。
そして、その時ライは思った事がある。

「その時、一番色づいて見えたのは何だと思う?」

「さぁな、私は知らない。おまえ自身の事だからな」

答える気がないのか、C.C.はある意味最も当然な事を口にする。
だが、ライは気にせず告げた。

「それは、君だよ、C.C.」

その言葉にC.C.が初めてこちらを見た。
その表情には驚きがある。

「今思えば、それは結局僕の思い過ごしじゃなかったという事だ」

そう言って、驚く彼女にライはキスをした。
軽く触れるキス。
しかし、いきなりダブルサプライズをされた彼女はガラにもなく真っ赤だ。

「な、何を言っている……(///)」

「いや、本気だよ。さっきの言葉は」

すると、俯いてしまうC.C.。
少しやりすぎたか?と思うライだったが、それは見当違いだった事に気づく。
すぐに俯いた顔を上げた彼女の顔が真剣なものだったからだ。

「ライ、1つ約束してほしい」

「何だ?」

「これからはあまり、無茶をしないでくれ。おまえには死んでほしくない」

「C.C.……」

初めて自分の本心を吐露したC.C.にライは驚いた。
だが、その様子に気づかないC.C.は続ける。

「私と違って、おまえは不死ではない。それは、わかっている。だから、せめてできるだけ長くおまえには生きていてほしいんだ。でなければ、私は……」

消え入りそうな声で言うC.C.にライは彼女を不安にさせまいと両肩に手を置いた。

「わかった。約束する。君の笑顔を守るのなら、それも必要な事だからな。これからは君と死ぬ最後の時まで生きていく事を誓うよ」

「本当か……?」

「ああ」

「…………」

ライは笑顔で返事をしたが、C.C.には珍しく弱々しい態度だ。
ライはそれを見て、1つの案が思い浮かんだ。

「じゃあさ、1つ契約しないか?C.C.」

「契約…だと?」

「ああ。僕が果てるその日まで、C.C.と共に居る。C.C.の笑顔を守るために。その代わり、C.C.は僕の支えになってほしい」

「つまり、それが契約か?」

「そうだ。僕がC.C.に与えるのは、笑顔と居場所。C.C.が僕に与えるのは、居場所と力。君が支えてくれるだけで、僕の力になるから。対等な条件だ ろ?」

「フッ……そうだな」

C.C.の笑顔にライも笑った。
そして、互いに向き合う。

「ここにライとC.C.が契約する。僕が与えるのは、笑顔と居場所」

「私が与えるのは、居場所と力」

そして、最後に互いに同時で宣言する。

「「死が互いを別つその瞬間まで、互いがこの契約を契る事をここに誓います」」

そして、しばらくすると、ライは言った。

「これで、僕とC.C.はずっと一緒だ。もう二度と離れる事はないから」

「……私もだ、ライ」

そして、2人はキスをした。
それは、互いの愛を確かめ合う深いキスだった。
いつの間にか、祭りを見ていたはずの2人は、ここで一生消える事のない誓いを立てた。
それが、互いに違う存在でありながらも、2人の絆の、愛の証である事は間違いなかった。
今日もそんな2人を祝福するかのように空は晴れ渡り、眼下では人々が楽しそうに過ごしている。




















『ギアスという名の王の力は人を孤独にする……。でも、それは違うのかもしれない。ギアスはその人の願い。だから、その願いが誰かに託されれば、その人は 孤独ではない。ギアスの力は人の願いを体現した1つの形であるが、実は少し違うのではないか。僕はそう思う』

後にライがこんな事を友人に話している。
これを言ったライは、C.C.と共に旅を続けている。
二人共、存在が存在なだけに、籍も入れてないし、結婚式も挙げていない。
だが、彼らにはその愛を象徴する1つの契約がある。
それは、物には変えられない、彼らだけの絆の、愛の証。
そして、2人はその世界を今も共に見続けている。
自分達の目指した未来が、より良い明日が未来にあると信じて。
そして、今日も世界はより良い明日へと向かって努力している……。

























                     完






















あとがき


ifエピローグC.C.編でした。
C.C.好きの方で、楽しんで頂けたのなら嬉しいです。
こちらも実は本編のエピローグより長い……(汗)
本編よりもifの方が思い入れ強いんじゃないか?と思ってしまうほどです。

企画第2弾C.C.編どうだったでしょうか?
C.C.らしくない部分が多かったように思えますが、そこは愛の力(?)で変わったと思ってもらえれば納得がいくかと。
ストーリーとしてはもちろんライがC.C.を選んだ後の後日談というものとなっています。
世界を旅しながら、時に戦い、時には地方の祭りに遭遇してそこはそこで楽しむ、そして旅を出る。
そんな中の一幕となっています。
追加要素としては、神剣の力の一端と前に倉庫行きになった月下を新しくして出してみました。
本当は月下は出す予定なかったのですが、折角なのでリニューアルして出してみようと思って出した次第です。
後で設定を載せておきますが、気に入っていただけたのならチェックしてみてください。
神剣はもちろん、出したのに力の一端も出ないのはさすがに寂しかったので。
C.C.とHappy EndなこのIF編、満足して頂けたのなら私としてはとても嬉しいです。

この話を最初に見てくれたという方は他の話も是非見てくださいね。
まあ、他の話も最初の部分はほぼ一緒だったりするんですけど。
さらに戦闘が必ずあるっていうのは、私の傾向が表れてる証拠かもしれませんね。
しかも、ワンパターンに見えなくもないこのバリエーションのなさ(汗)
まあ、そこは別々で1つのエンディングという事で納得してください。
気に入ったエンディングこそ読んでくださったあなたのエンディングなのですから。
これもIF編に関するあとがきですので、今後の事など気になる方は本編のエピローグのあとがきを読んでください。
という事でこれはこれで1つの完結作品として、IF C.C.編はお終いです。
また何らかの次回作でお会いしましょう!
今まで読んでくださってありがとうございました!!

















IF C.C.編のみ登場機体設定


月下先行試作型改弐式
武装:制動刃衝角刀
    ハンドガン
    スラッシュハーケン
    甲壱型腕
備考:保管されていたライ専用機であった月下先行試作型改を、性能面を重点的に強化・改造した機体。だから、武装に追加・変更はない。飛行を可能にする飛 翔 滑走翼、半永久的な行動を可能にするプラズマフィラー、対レーダー・センサー及び新型のステルス装置を搭載した事によって活動可能範囲が以前に比べて段違 いに広くなった。もちろん、それに合わせて内部の動力系や装甲系も強化されている。これにより、頻繁に補給を受けずとも活動でき、行動可能範囲も広いた め、ライはこの機体を旅の共として活用している。兵器としての性能で言えば、機動性は第9世代には遠く及ばないものの、出力だけに関しては第7世代や第8 世代を大きく上回るものとなった。開発時期的にはおかしいとも言えるが、第9世代のプロト機とも言える存在となっている。出力がピーキーなのは変わらず、 扱えるのはライただ1人。



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