魔法少女リリカルなのはA's
               Accel of the Rebellion




















第1話 既にあったきっかけ



晴れた穏やかな日々。
小学生ライフに戻った6月の初頭、ランはある人と和やかに談笑していた。

「へぇ〜、ラン君は世界の色んなとこ行った事があるんやね?」

「そうなんだよな。アメリカだったり、イギリスだったり、中国だったり……ああ、南極なんて所も行った事もあるぜ」

「ほんま!?どんなとこやった?」

「まあ…はっきり言って寒い所だな。まあ、はやては当然知ってるだろうけど……。辺り一面氷で寒かったぜ。水とか一発で凍るしな。いるといえば…ペンギン とかはいたな」

「いいなぁ……。私もいっぺん見てみたいわ」

俺は北川乱。
分けあって2回目の小学3年生をやっている。
今話している相手は八神はやて。
俺の外見年齢と同じ年の少女で、車椅子に乗っている。
足が不自由なので乗っているとの事。
そして、今いるのもはやての家。
何故俺が彼女の家で彼女と楽しく話をしているのか。
それは、あの事件が終わってから少しの事。
俺が図書館に行った時の事が始まりだった。

























5月の終わり頃。
俺は海鳴図書館に来ていた。
図書館というのは実にいい。
たくさんの本が一つの場所に集まっているし、何より費用がかからない。
勉強にも、もちろん読書にももってこいの場所だ。
この海鳴市に来てからというもの、たまにこうして利用している。
主に借りたり読んだりするのは、専門書。
他には料理本なども読んだりしている。
あらゆる情報を持っているエイダがあっても、読書はある意味かかせないのだ。
読んでいる事で文章能力を落とさずに済む。
俺は、図書館の受付の人に借りていた本を返すと、館内を歩いてとりあえず借りる別の本を探す事にした。

「ん?」

その時、俺は本棚の上部にある本を取ろうとしている少女を見つけた。
しかし、車椅子に座っており、足が悪いのか立てずにいる。
そのおかげで取ろうとしている本が取れないでいるようだった。
可愛い少女助けるのは男の子の務め。
まあ、中身は大人だけどな。
俺は少女に近寄り、目的であろう本を推測して取り、とりあえず差し出しながら確認する。

「はい、これでいいか?」

「あ、ありがとうございます」

どうやらこの本で合っていたようだ。
言葉の発音的には関西弁を喋るようだ。
俺は笑顔で気にしないように言う。

「いいって、気にすんな。それより、他に取ってほしい本とかあるか?」

「あ、はい。それじゃあ……」

俺は少女に言われ、指示された本を次々と取っていく。
そして、本を全て取り終えた後、少女と一緒に読む事となり、席に移動した。
そして、互いに自分の事を話す。

「へぇ、じゃあ俺達同い年って事になるのか」

「そうなんよ。時々ここで見かけてたんよ。同い年くらいの子やって」

「あちゃ〜、それはミスったな。俺とした事がこんな可愛い子に気づかないなんて」

「そ、そんな……可愛いなんて……(///)」

笑って言ったら、少女は照れてしまった。
別に冗談ではないのだが。

「そういえば、自己紹介まだだったな。俺、北川乱。ランって呼んでくれ」

「私は八神はやて言います」

「はやて……」

「ひらがなではやて……変な名前やろ?」

頬を赤らめつつ、言うはやての言葉を俺は笑い飛ばした。

「んな事ねぇよ。いい名前じゃんか。似合ってると思うよ」

「ありがとう」

そう言って俺とはやては笑い合った。
そこで、はやてが話題を変えてくる。

「そういえば、ラン君って変わった本読むんやね」

まあ、当然だろう。
何せ機械工学や医学の専門書だから。
図書館にあるのかって?
あるんだから気にしない気にしない。

「まあなぁ。頭鈍らせる訳にもいかないし、復習がてらに勉強しようと思ってさ」

「そうなんや。勉強熱心なんやね〜」

「他に取り柄がないだけさ」

はい、嘘です。
本来は体を動かす方が性に合ってます。
この手の知識が必要な事が多々あるので、忘れないようにしているだけです。

「そんな事……あ、て事はまたここに来るん?」

「そりゃあ当然だよ。時々利用してるくらいだし」

これは本当の事。
利用できる内に利用しておくのは大事だ。

「そうなん?うちもな、こんな足やから学校お休み中でな。平日でもよう来るんよ。また会えるかな?」

うわ、なんちゅう可愛い……。
上目遣いでその言葉て……やべえ。
…ランの理性は1000のダメージを受けた。
効果は抜群だ!
危うく理性が飛びそうになるのを抑えながら、答える。

「ああ。毎日はさすがに無理だけど、会いたい時にはいつでも会えるよ。最近暇だから。何なら携帯の番号教えとこうか?」

「ほんま!?嬉しいわ〜」

「じゃあ、早速……」

そう言って俺はメモ紙を取り出すと、自分の私生活用の電話番号を書いてはやてに渡した。

「はい、これ。会いたくなったら電話してよ。その時はいつでも行くからさ」

「うん、ありがとな〜」

笑顔で喜ぶはやて。
いや、女の子はやっぱり笑顔が一番だね。
すると、たまたま時計を見たはやてが少し慌てた。

「あ、もうこんな時間。そろそろ帰らな」

確かに今は夕方で、そろそろ帰らないと暗くなる頃だ。

「ほんとだ。俺、送ってこうか?その量を1人ではさすがにつらいだろ」

「ええの?」

「おう。それに女の子を1人で帰らせる訳にもいかないしさ。俺、こう見えても結構強いんだぜ?」

笑顔で言う俺に、はやてはくすくすと笑った。

「じゃあ、お願いしよかな?」

ちょっと無警戒な態度かもしれないが、まあいいか。
勧める俺も俺だし。

「じゃあ、行こうか」

「うん」

こうして俺達は本を借りて図書館を出た。
それからはやての家まではやてを送り届けて帰ろうとしたのだが、はやては俺を引き止めた。
お礼をしたいって事だったので、断る理由もない俺は彼女の家に上がり、夕食をご馳走になった。
はやての料理の腕はかなり上手く、夕食もかなりうまかった。
これが契機となり、最近はよくはやてと会ってこうして遊んだり、お茶したりしている。























そして、現在こうやって俺とはやては楽しく話し合っているという訳だ。
足が不自由で両親もいない彼女は、外に出た事があまりないらしく、俺が話す世界の事について興味津々だった。
前の世界で戦争で各世界を行き来していた訳だが、そこは言わずに観光的な感じで彼女に話している。
それをはやてにとっては新鮮なのか楽しそうに聞き入っていた。
そして、話が一段落すると、俺はある話を切り出した。

「そういえば……はやて、明後日誕生日だろ?」

「うん…そうやよ。…って何で知っとるん!?」

ノリで頷いたくせに、驚いて聞いてくるはやてに俺はしれっと答える。

「親しい女の子の情報は知っておくものさ。特にめでたい事はな。これ、紳士のたしなみ」

「そうなん?」

「そうなの」

疑問系で聞き返したはやてに俺は頷いた。
まあ、ここは俺の単なる趣向だ。
ちなみに使ったのはエイダ。
プライバシーの侵害?
そこまではしてねえよ。

「で、誰か祝ってくれる奴とかいるのか?」

独り身のはやてにこの事を聞くのは気が引けたが、話を進めるために俺はあえて聞いた。
案の定、表情をやや暗くしてはやては答える。

「ううん……通ってる病院の石田先生くらいしか……」

俯くはやてに俺は、少し違う話を切り出した。

「なるほどね……。でさ、少し話が変わるんだけど、前にはやてん家に住まないか?って誘ってくれたよな?」

「あ、うん……」

俺がはやての家で初めて夕食をご馳走になった時だ。
はやてと同じ両親がいなくて俺が一人暮らしだと知ったはやては、一緒に住まないかと俺に誘いをかけてきたのだ。
俺はとりあえずマンションの事もあるし、一旦返事は保留としていたのだ。

「で、前は返事を保留にしてたけど、決めた」

一泊置くと、俺は自分の決断を言った。

「はやての誘い、受けるよ。明日からお世話になります」

「…………」

「ちょっと早いが、誕生日プレゼント、になるのかな」

驚いて言葉を失くすはやてに俺はそう呟いた。
俺が彼女の申し出を受けた理由は二つ。
一つは彼女が独りだという事。
独りは辛い。
なら、俺なんかで彼女の支えになるのなら、断る理由はない。
二つ目は俺も1人暮らしであり、マンションの事についてはいつでも出ていく事ができるから。
ただ、今は色々と部屋に秘密機器があるので、定期的にマンションに戻ろうとも考えている。

「ホンマに…ええの?」

信じられないのかそう聞いてくるはやて。

「いいぞ。どうせ俺も1人暮らしだし。ただ、今すぐマンションを引き払う事はできないから、一週間に一度マンションの掃除はしに行かないとダメだけどな。 まあ、その時ははやても一緒に来るといい。ま、良ければだけど」

「そんな事ない!……ありがと、ラン君」

そう言ったはやてだったが、その直後涙を流し始めた。

「あれ…なんでやろ…?嬉しいはずやのに涙が止まらへん……」

「それが嬉し涙ってやつだと思うぜ」

そう言って俺は椅子から立ち上がると、はやての前に行き、彼女の両肩に手をかけた。

「これから俺達は家族だ。改めてよろしくな、はやて」

「う…う……うわあぁぁぁぁぁぁん!!」

そう言って、いきなり俺に抱きついて泣き始めるはやて。
よっぽど寂しかったのだろう。
俺はそんなはやてをただ優しく抱きしめ返すだけにしておいた。



























そして、次の日。
俺は素早く引越し業者の人に頼んで必要な物を運んでもらうように頼んだ。
と言っても、主に衣服が中心で、それほど多くはない。
だから、トラックもかなり小型だ。
一応俺の後見人は士郎さんとなっているが、まだマンションは引き払っていないし、まだ伝える必要もないだろう。
それになのはがこの事を知った後の事が何故か怖い……(汗)
そして、俺ははやての家で素早く簡単な引越しの作業を済ませた。

「ラン君、お疲れ様」

そう言ってはやてがお茶を出してきてくれたので、俺は受け取る。
ちなみに業者の人はもう帰った。

「ありがとな。で、部屋は2階の空いてる部屋でよかったんだよな?」

「うん、構へんよ。正直余ってたくらいやから……」

「そっか。じゃあ、ありがたく使わせてもらうな」

「うん!」

笑顔で答えた俺にはやても笑顔で承諾してくれた。
こうして俺達は部屋の整理や掃除を済ませた後、二人でゲームをして遊び、夕食を食べた。
これからはやての料理が味わえるとなると、少し嬉しい気分になる。
そして、食べ終わって食器の後片付けをしたところで、はやてがお茶の入った湯飲みを持ちながら話しかけてきた。

「せや、ラン君……」

「?」

「今日一緒に寝てくれへん?」

ブッ!?
俺はあやうく飲んでいたお茶を吹きかけた。
なんつー大胆発言をするんですか、この子は!

「ゴホッ、ゴホッ……いきなり何言い出すんだ…?」

俺中身は24歳ですよ。
十分大人ですよ。
こんな美少女と寝たら理性持ちませんよ?
決してロリコンな訳ではないが。

「明日がうちの誕生日っていうのは知っとるよね?」

「お、おう……」

「だから、一度くらい家族と一緒に寝たいな〜って……」

それに俺は少し納得した。
はやては両親を早くに亡くしており、それからはずっと1人だった。
そして、血は繋がっていないとはいえ、初めてできた家族、そのぬくもり。
それが一度でいいから欲しかったのだろう。

「……誕生日プレゼントって言ったしな。わかった。いいよ」

俺の答えではやての顔がパァッと明るくなった。
まあ、はやてのためになるならいいか。
ファイト、俺の理性。
その後、俺ははやてと一緒に風呂に入り、上がった後、彼女を抱いて二階へ運ぶ。
はやてと一緒に風呂に入るのは気恥ずかしかったが、彼女の足が不自由な分それは仕方ないとも言えた。
さらに、同い年の俺にはやてが運べるのかという問題もはやて自身に指摘されたが、元々スペックは超人と言ってもいいので、軽々と彼女を持ち上げ、二階まで 運んだ。
っていうか、はやて軽いしね。
とりあえずはやてを部屋まで運んだ後、一旦自分も着替えてまたはやての部屋に行く。
扉をノックすると、はやての声が聞こえた。

「入ってええよー」

本人の了承を頂いたので、部屋に入る。
それから2人でしばらく本を読んだ後、同じベッドで眠りについた。
案の定、俺はすぐ眠るなんてできなかったが、はやてはすぐに眠りに着いた。

「……………」

そして、11時59分。
もうすぐ運命の始まりを告げる鐘が鳴ろうとしていた。



























俺は不意に目が覚めた。
それと同時に感じる違和感。
何か嫌な予感がする。
隣のはやては相変わらずだ。
俺はそう思って背後を振り向くと、本棚にあった1つの本が光っていた。
鎖で封がされた妙な本。
そして、0時ジャスト。
事態は起きた。

「………!」

本の輝きが増し、床に見覚えのある円が引かれる。
これは、魔法陣だ。
その光によって眠っていたはやても起きる。

「な、なんや!?」

咄嗟にはやての前に出てかばう。
はやてはその後ろで怯えたように隠れる。

(何が起こっている!?)

目の前の光り輝く本はまるで生きているように皺を出し、封がされた鎖をその力で千切ろうとしている。
俺は鋭い目でその様子を観察し続ける。
万が一、はやてに危害が及ぶ場合にはすぐに動けるようにして。
そして、しばらくすると、鎖が千切れた。
その拍子に本が開き、パラパラとページがめくれていく。

『封印を解除しました』

日本語とは違う言語でそう本が音声を発した。
ドイツ語…か?
いや、わからねぇ(汗)
すると、本が閉じ、俺達の前に降りる。

『起動』

またも音声が発せられた。
すると、今度ははやての胸から光る物が出て、本に吸い込まれていく。
瞬間、魔法陣が大きくなり、そこから四人の人間が現れた。

「……闇の書の起動を確認しました」

ピンクのポニーテールの女性が口を開いた。
はやてをかばった状態のまま俺は呟く。

「……闇の書?」

「我ら、闇の書の収集を行い、主を守る守護騎士にございます」

「夜天の主に集いし雲……」

「ヴォルケンリッター。何なりと命令を」

と言うが、彼女達は目を瞑っている。
こちらを見ていない。

(主……?はやての事か?)

元々あの本ははやての部屋にあったものだ。
俺に身に覚えがない以上、はやてがその対象となる。

「ところで、貴様は何者だ?」

ポニーテールの女性は先ほどとは違った殺気のこもった声を出した。
どうやらこちらに気が付いたらしい。

「……ただの子供だが」

「それ程の殺気を出す者がただの子供のはずがないだろう」

警戒する事でつい殺気も出してしまったか?
そう思いつつ、俺は答えない。

「…………」

「答えろ!」

「……人に名を聞く時は自分からと言われなかったか?」

「……私はヴォルケンリッター烈火の将、シグナムだ」

相手が名乗った以上、自分も名乗らないと失礼だろう。

「……北川乱だ」

拳を構えながら、そう答える。

「あのよー、シグナム」

と、そこで別の少女が声をかけてきた。

「何だ」

「2人で盛り上がってるところ悪いんだけど……」

少女が釘を刺すように言うと、はやてを指差した。

「気絶してるぜ?そいつ」

シグナムが覗き、俺は背後を振り返る。
すると、

「「あ」」

「ほえ〜」

はやてが目を回していた。



























次の日。
はやてが病院へ行く日であったため、俺達は病院へ来ていた。

「あの、ラン君?」

声をかけてきたのは石田先生。
つい最近はやての病院行きに付いて行った時に知り合ったばかりだが、意外と話せる人である。

「何ですか?」

「あの人達誰…?この季節に…あんな格好は……」

「……知りません」

(まあ、怪しさ抜群だもんなぁ……)

守護騎士とやらの四人の格好はあからさまに怪しい。
はっきり言って黒のインナーを着ているだけなのだ。
春先で暑くなり始める季節だとはいえさすがに怪しい。
ついでに知らないと答えたのは、まじで彼らの事情を知らないからである。

「あの、石田せんせ?」

その時、はやてが会話に入ってきた。

「何?はやてちゃん」

「実はこの人達、うちの遠い親戚なんです。私の誕生日にサプライズで来てくれたみたいで……」

(……それで通るのか?)

「あら……そうなの?」

通りそうだ。
何ともまあその理論で通るのが、甚だおかしく疑問であった。
その後、なんとかはやてがその場をまとめ、何事もなく帰宅する事になった。























そして、俺達は金髪のシャマルと名乗る女性から彼女らの存在と魔法について説明を受けた。
まあ、魔法についてはそれなりに知っていたので、驚きは特になかった。

「……というわけです」

「魔法……」

一方、その事を知る訳もないはやては驚いている。
すると、シグナムというポニーテールの女性が俺を見た。

「結局聞きそびれたが、おまえは何者なんだ?」

「北川乱だけど?」

「それはもう聞いた。私はおまえがただの子供だとは思っていない。あの時の殺気は大抵の者なら射竦める程のものがあった。それに、先ほどの話を聞いてその 態度。おまえ、魔法を知っていたな?」

「……わかった。お前たちの事ばかり聞いてフェアじゃないしな。俺の事も話そう」

そして、ランは自分の事を話し始めた。
自分は子供だが、裏世界に関わっており、独自の力を使う戦士だということ。
魔法については、関わる機会が一度あったので、知っているという事などを話した。
それを聞いたはやては呟く。

「へぇ〜、ラン君魔法知ってたんやね〜。それに戦士だから、あんなに力持ちやったんか〜」

「……なるほどな。もし、強いのなら今度手合わせ願いたいものだ」

とりあえず納得はしてもらえたようだ。
俺ははやてを見る。

「それで、はやてどうすんの?」

「せやねー…とりあえず闇の書の主として……」

そこで四人は先ほどの蒐集というものの命令を受けると思っているらしく、真剣な表情だ。
しかし……。

「皆の衣食住、私がしっかり管理せなあかんという事やね」

「「「「は?」」」」

予想外の言葉に4人から拍子の抜けた声が出た。
俺はその後でつい爆笑してしまった。
ここからが俺の戦いを告げる始まりの日だったのかもしれない。


























あとがきについて

あとがきは3話でまとめてします。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m

目次 次話>>

作家さんの感想は感想掲示板にどうぞ♪

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.