『サモンナイト２』二次小説
メルギトスシンドローム
第０話 「源罪〜カスラ〜」
『馬鹿な………？
私ノ言葉デ意ノままニ操られていた、愚かなにんげんが……
感情ニよってたやすく翻弄される、弱い心ノにんげんガ………ッ
こノ私ヲ……… 倒すトいうノか………
機械魔めるぎとすヲ 倒しテノケルトいウノカアァァァァァッ！
ナゼダアァァァッ！』
「レイムさん……最初のときは強かったんだけどね〜……
何度倒したかもわからなくなった今となっては、もはや達成感も何も………」
どうもこんにちは。
自分でもあきれるくらいＰＳゲーム『サモンナイト２』をやりこんで、
たった今何度目かのマグナ×アメルＥＮＤを迎えようとしているあたしの名前は堀江 奈菜（ホリエ ナナ）。
どこにでもいる普通の（だと思う）女子高生。両親が死んで施設をたらいまわしにされてこの家に落ち着きました。
男の子より同年代の女の子と一緒にいるほうが好きな彼氏いない暦１６年の１６歳です。
『たしかに……
私は、解ってなかったようですねえ……
ですが…… そんな私にも、意地というものがあります
ウオオオオオォォォォォォォォォォォッ！！！！』
「この後の展開、ネスティだと無理があるよね〜。
やっぱりここはアメルが適役だよ、うん。待たされるマグナには悪いけど……」
などと勝手なことをほざきつつ、暗唱できるほど何回も聞いてきた台詞を律儀に聞いていく。
……ここまで来るとあたしにできることは傍観者として決められたストーリーを追っていくことだけ。
しかしどうしたことか、このときのあたしは妙に冷めた気持ちで画面を見つめていた。
マグナがネスティが、終焉の予感に緊迫する中、あたしはいまいち乗り気になれないでいた。
このときは、そんなこともあるかとかいいかげん飽きたのかなとか思って気にもしなかったのだが……
『くくくく………っ
その昔、楽園だったリィンバウムが……
争いの絶えない世界に変わったのは、こいつのせいですよ……
さあ、広がるがいい！
私の身体に蓄積された 黒き源罪（カスラ）よッ！
我が命と引き替えに この世界に、さらなる争いの種をまき散らすのだアァァァッ！！』
「この源罪（カスラ）が３で遺跡と結託して悪さしてたのよね。
メルギトスってつくづく機械とか遺跡とかと縁があるのね……」
そう。世間ではすでに『サモンナイト３』や『サモンナイトエクステーゼ』なんてのが出回っており、
あたしもわざわざＰＳ２を買ってプレイしたのだが、今でも思い出したように２を引っ張り出してきてプレイしてしまう。
と、そんなことを考えている間に物語は最高潮。のはずが、なんだか妙なことになってきた。
『待っ…ザザ…ださい！
いく………ティ…ズザザザ…融機人（ベイガー）でも……あの邪念…ジジ〜……浴びるのは………ぎます！
メルギ……止める…ズズジジ…、貴方が死………まうかもしれな…ザザ〜…ですよ！？』
「……あれ？おかしいな………故障？テレビが？ゲームが？」
いいところなのに台詞のところどころで『ザー…』とか『ジー…』とかいう音が入ってよく聞こえない。
それでも場面を進めていけば直るかもと思ってボタンを押すが、変な音が入るどころか画面まで途切れ途切れに砂嵐になって不調を訴えだす。
「……まいったな……。叩いて直る……わけないよね……」
『じゃあ、……はどう…ジ〜…んだよ！？
…ザザ〜ザザ…トスを止……後も……ネスが…ズジ〜…てるっ……証は……か…ザ〜…
……に、そうだ……束でき…ズザザ〜…！？』
「…こりゃ駄目ね。仕方ない、いいとこだけど電源消すか……それともこのままエンディングまでいくか？どうせ代わり映えしないんだし……」
ラストバトルの直前にはセーブしてあるんだし、いつもならクライマックスを見逃すようなことはしないはずなんだけど、
なぜかこのときのあたしはすごくさめた気持ちでボタンを押して話を進めていった。
さっさとエンディングにして終わらせてしまおうと思ったのだ。
『……ザザ……ザザ……ジ〜ジジ……』
機械の不調はますますひどくなり、もはや画面はずっと砂嵐の状態で音もほとんど聞こえない。
ときどき思い出したようにアメルやメルギトスの声が飛び込んでくる程度だ。
そんな状況なのにあたしは黙々とボタンを押していた。
しかも連打するのではなく、大体会話が途切れるころかな〜って時まで待って話を進めていくのだ。
そのときのあたしはまるで何かに取り付かれたようだった。
よく覚えていないが、砂嵐の向こうにクライマックスを迎えているアメルやメルギトスの姿が見えていたような気さえする。
そんなことをまったく不思議にも思わなかったあたしは、そのときふいにメルギトスの台詞を聞いた。
聞こえるはずはない。画面はずっと砂嵐で、音楽もキャラの台詞もほとんど聞き分けられないのに、
しかしなぜかあたしはメルギトスのその台詞をとてもクリアに聞いた。
今でもそのときの台詞は覚えている。彼は、機械魔メルギトスは今はの際にこう言ったのだ。
『全ての生きとし生ける者に、呪いあれ』
「全ての生きとし生ける者に、呪いあれ」
無意識にあたしはその言葉を復唱していた。そのとたん、風が吹き付けた。
黒く強い風が、砂嵐の続くＴＶ画面から吹いてきて部屋中を蹂躙する。
息もできなさそうなその激しい風の中で、しかしあたしは少し目を細めた程度で微動だにしなかった。
部屋の中にある本や紙なども吹き飛ばされることはなく、家具などがきしんだ様子もなかった。
しかしあたしの髪は風に弄られて激しく暴れ、あたしの肌は刺すような痛みを与えてくる風の存在を感じていた。
「全ての生きとし生ける者に、呪いあれ」
なぜかあたしはもう一度その言葉を口にしていた。そしてそこであたしの意識はブラックアウトした。
第０話 「源罪〜カスラ〜」 おわり
第１話 「目覚めは悪夢の始まり」 につづく
感想
浮気者さん初投稿です！
サモンナイト２の世界に少女が行くのか、少女の世界にメルギトスが来るのか、それとも
彼女がメルギトスになるのか！
非常に気になる出だしですね♪
でも、４本一気に下さいましたので感想はラストに入れさせていただきます。
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