プロローグ2 −緋色の決意−
それは青く晴れた昼のこと。
突然見知らぬ人が尋ねてきたのがはじまり。
水色にウエーブのかかった髪がきれいな女性と
真ん中分けに、まん丸眼鏡にちょび髭の男性、
あとは女性が抱えている猫。
女性はネメシアといい、男性は、プロスペクターと名乗った。
そう、この人たちはどこか僕の知っている人間の匂いがした。
立ち方、歩き方、話の仕方、手のしぐさ、全てがどことなくそう感じられた。
いや、それを感じ取った時点で僕も彼らと同じ側の人間かもしれない。
そして集中すると僅かに聞こえる明らかに生き物ではない超高周波。
おそらくあの猫の物であることが僕には分かった。
彼らは一緒に来てほしいという。人でありながら人ならぬ僕を必要だという。
だけど、僕は断った。僕が僕にしてくれたこの家があるから。
今は父さんも母さんも戦争で死んでしまっていないけど、
姉さんと二人でやっとこさ暮らす日々だけど、
僕はあの日から決別したのだから。
だけど、そんな日々は終わりを告げる。それは僕が僕だったからなのか
それとも、ただの不運の偶然だったからなのか。
彼らを追い返してから4日後。
その夜は来た。平穏な日々の終わりと僕が生まれた理由が存在する日々が。
その終わりの夜は静かに始まった。嵐の前の静けさと昔の人はいい言葉を残してくれたものだ。
僕の部屋には月明かりに照らされて伸びた猫の影がきれいに映りこんでいた。
声からして彼で良いだろう、そんな彼はこう僕に人の言葉で言う。
平穏な日々を願い過ごすのは人として当然であると。
だけど、それを得るには得るための戦いが必要なのだと。
僕が研究室から開放されても、平和な日々をすごしても
その過去は消えることはない、そして君は持っている力の分だけ
君ができる方法で戦わなければならないのだと彼は言う。
そしてまたそれは平穏の日々を願えば願うほどその分だけ大きく
それを僕が望もうが望むまいが時は待ってくれないと。
窓越しに猫が皮肉にも僕らがつかう言葉でいった。
まるで、僕に人を教えてくれた父さんや母さんのように。
そして猫は、さぁ、来るぞ。人の道を踏み外した狂信の外道達が。
こんな風に準備できようができまいが全ての人に等しく決断の時は唐突にやってくる。
そう僕に伝えると音もなく窓から離れ姿を消した。
それを合図に僕はやっと、最悪に嫌な気配を感じた。
これはヤバイ気配だというのが分かった。
一瞬で部屋をでると、窓が割れる。
ちらりと頭に傘をかぶった男が映るもそのまま階段を目差す。
しかしその間も似たような男が現れ刃物を振りかざす。
それは速く鍛錬を重ねた技であったが僕には関係なかった。
体が、DNAが、そしてその心までも戦うために造られたのだから。
何も考える必要もなく僕は刃物をかわしその男は、
まるで肩を逆方向につけているかのようになりながら宙を舞っていた。
これが僕の力、忘れたくても忘れられない体に染み付いた記憶。
普通なら恐怖に怯えるはずなのに、僕の心はアクセルを踏み込んだように
ボルテージが上がっていく。そのままダッシュで階段をおり庭にまででる。
すると、同じ格好の男達が並んでいる。先頭の男がリーダーなのだろう。
奴らは僕に一緒に来いという。こなければ実力行使だとも言った。
それを断り睨みをきかすと彼らは襲ってくるが、僕は一瞬で彼らを吹き飛ばす。
先頭の男は笑った。さすがはDNA細工。地球人が好むわけだ。と笑った。
そして、舌なめずりをし金色の瞳の次は緋色の瞳かとぼやく。
そして今一度笑うとこの男が言う、姉はどうしたのかね?と
僕はハッと気が付くも、男が言葉で僕を牽制する。
しかし、その牽制もつかの間であった。
姉さんは玄関から猫を抱えて普通に出てきた。
傘の男達は不思議がったが、そのまま姉さんを捕まえようと数人で飛びつく
僕はその男達の行動を阻止する。だけど何人か取り逃がしてしまう。
しかし取り逃がした男達は何か姉さんの手前で吹飛ばされた。
男達も僕達も驚きが隠せなかった。
よく見ると姉さんの周りから半球体バリヤみたいなものが見えた。
男達は、ディストーションフィールドとかなんとか
よく分からない単語をいい、そんな馬鹿なと驚いていた。
そして、マシンガンの咆哮がし傘の男達はバラバラに散る。
その咆哮の方角には短髪長身の男が一人。
ドウスル、ホクシン!、マダツヅキヲヤルノカ?
となんだか微妙に変な発音で喋っていた。
ホクシンと呼ばれた男が舌打ちをすると僕の家は爆発をおこす。
ハッときがつくと傘の男達は闇夜に消えていた。
その後のことはよく覚えていない。
ただただ闇の中で僕の眼と同じ色の炎が僕の家を焼いていた。
家を失った僕達はネルガルの人達のとこに泊まった。
爆発などの事件もネルガルの人たちがうまく調整したようだ。
そして僕は決めることになる。
自らの望んだ理想を得るために、僕が僕であり僕にしかできない戦いに望むことを。
そして、これ以上大切なものを失わないように。
「僕の名前は サラシナ・ショウマ
最強の兵士を作るためにDNA操作され生み出された兵器。
だけど、僕は、僕が僕であり、人であるために戦います。」
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