「・・・本当に、いいのね?・・・後悔しない?」

「ええ、後悔なんてしません、むしろ、いままでこれをしなかった事が後悔です」


「・・・ふぅ、わかったわホシノルリ、じゃあ始めるわよ」

「お願いします、これもアキトさんのためです、イネスさん」












俺が『テンカワアキト』を捨て『プリンス・オブ・ダークネス』として、

火星の後継者を完全に殲滅してから2ヶ月が経った。



全てを終えた俺は世間から完全に姿を消し、密かにネルガルに戻った。



もはや、ユリカにもルリちゃんにも会う事はない。


罪を背負い、いずれやってくる死を出来るだけ長く苦しみ、最後の時を待つ。

それが俺に課された罰なのだと、受け入れ、諦めて。




―――そんな俺の考えは、ある日完全に否定されることとなる。

事の始まりは、突然俺を呼び出した、イネスの言葉からだった。














機動戦艦ナデシコ

人気投票記念作品

〜素敵なプレゼント〜

















「イネス、いったい何の用なんだ?」


その日、俺はネルガルの地下に作られた部屋で白衣の女性と対面していた。

辺りを見回すと、怪しげなドでかい試験管やら手術台などがあり

はたから見れば怪しげな実験をするための実験室そのもののようだが

なんと目の前にいる白衣の女性、イネス・フレサンジュの私室でもあるらしい(汗)



「・・・手術よ」

「手術?いまさら何を・・・散々やった挙句、いまの状態が限界だったんじゃないのか?」


イネスは俺と目を合わせないまま、淡々と口を開く

いつもだったら2時間は続くはずの『説明』すらないとは・・・。


「成功すれば、貴方の身体を蝕むナノマシンを制御できるかもしれないわ、更に・・・五感を取り戻す事もできるわ」


「なっ!!本当なのか!!?」


「えぇ・・・五感のほうは確実よ、ちゃんと常人並の感覚に戻れるでしょうね」


「・・・何か、副作用があるとかはないのか?」


おかしい、そんな事が出来るならばとっくのとうにやっているはずだ。

それにイネスの態度・・・何か隠してるに違いない。


「副作用?・・・ああ、貴方にはそんな物はないわ、とにかくそこに横になってちょうだい」

「イネス、ちゃんと説明しろ」


『説明』、この言葉を聞けばイネスは黙ってはいられないはず・・・。


「心配しなくてもいいわ、ほら、横になって」

「おい!イネ・・・なっ!?」


腕に軽い違和感、見ると注射器が刺さっている、中身はすでに注入済み。


「くっ・・・イネス・・・覚えて・・・」


言い切る前に俺の意識は落ちた。






「安心して、全てアキト君のためになるわ・・・そう、アキト君のため・・・お兄ちゃん・・・」





















意識が段々と浮かび上がっていく・・・


「・・・うっ・・・」

「お目覚め?アキト君」


ここは・・・イネスの・・・俺はどうしてこんなとこに・・・


「とりあえず手術は成功よ・・・アキト君、私が見える?」


見える?何のことだ・・・それに・・・手術・・・


「く・・・俺は・・・つっ!?」


身体に重い痛みを感じた。

―――痛み?


「どうやら痛覚は戻ってるみたいね、アキト君、気分はどう?」

「痛覚・・・そうか・・・俺は手術で・・・」


やや呆とした頭でイネスに振り向く、そこには心配気な表情のイネスが―――


「なっ・・・見え・・・る、バイザーがないのに・・・?」


「とりあえずは成功のようね、まぁしばらくの間ここで休んで

『感覚がある感覚』を取り戻しなさい、いま食事を持ってくるわ」


部屋の外に出て行くイネスを呆然と見送る。


痛覚がある、目も見える、空調から流れる風の流れすら、感じ取ることができた。



俺は・・・本当に治ったのか・・・?




それから、飯が運ばれてきて、俺は久しぶりに食事を心から楽しんだ。

気がつけば涙を流していた、それでも食べ続け『味』を心から楽しんだ。









それからの数日は、まるで自分が生き返ったとすら思えた。

自然を見て、風を感じ、料理も作ってみた。

さすがに長い間作っていなかったため、味は落ちていたが

そのことにすら俺は涙を流した。





そして、2月26日、その日は俺の誕生日だった。

イネスが言うまで忘れていたが、その日はラピスが面会に来た。




そして、俺は始めて自分の目でラピスを見た。




「アキト、会イタカッタ」


声を、聞いた―――



「アキト・・・ドウカシタノ?」


固まったように何も喋らない俺に、表情を変えないまま、ラピスは尋ねた


その表情は、マシンチャイルドという名の通りに、まるで本当に機械で出来ているかのように見えた。



―――俺はこの子を、利用し続けてきたのか。




気づけば、涙が溢れるように頬を流れていた。


いままでずっとそばに居たのに、俺はこの子を見ていなかった。

ラピスは『彼女』よりもっと純粋に、白く儚く見えた。



「ラピス・・・これからは、ラピスも家族になろうな・・・」


俺はラピスを抱きしめる、いままでは、隣に居た・・・いや、『在った』だけだったから。

ラピスを『彼女』と同じように、その呪縛から解き放ってあげようと。

ナデシコはなくとも、自分が彼女に全てを与えてあげようと、決意して――。


「家族・・・?ウン、ルリもソウ言ッテタ」




―――ル・・・リ?




「ルリって・・・ルリちゃんが・・・居るの、か?」


「?ウン、ルリも家族にナロウッテ言ッタ、ユーチャリスに居ル」



(ユーチャリスに・・・ルリちゃんが・・・)




あの日、墓地で再開したルリの姿を思い浮かべる。

バイザー越しに見た彼女、ルリは・・・とても綺麗になっていた。

闇に落ちた自分にはもう届かない世界に、彼女は生きているのだと、そう思った。

だから、あの時渡したレシピには、『テンカワアキト』の全てを込めた。

それで最後、これで完全に自分とルリの接点は消えるのだと・・・。



だけど彼女は追ってきた、もう俺には『テンカワアキト』は残ってはいないというのに。




(・・・いまの俺に、ルリちゃんに会う資格があるのか・・・?)







「・・・アキト君、彼女はユーチャリスのブリッジにいるわ、会いに行きなさい」


いままで黙っていたイネスが、真剣な目で俺にそう告げた。


「・・・けど、俺は・・・」




いいから! 会いに・・・行ってやりなさ い・・・っ」



そう叫んだイネスの目はどこまでも真摯な眼差しだった。


「っ・・・」


それに押されるように俺は部屋を駆け出した。







走る、走る、ユーチャリスの秘匿ドッグへの道を駆ける。


ユーチャリス内を駆け、まっすぐブリッジを目指して。




――辿り着く、彼女の待つその場所へ、そして―――








「足、すごく速いんですね、アキトさん」


微笑みを浮かべて、彼女はそこに居た―――。





「やっと会えました、いまはアキトさんの顔を見れないのが残念ですけど、すごく嬉しいです」



「・・・ルリちゃん・・・」



バイザー越しではなく、自らの目で見る彼女は、記憶のどれよりも、ずっと綺麗だった。


けれど、座ったままの彼女、その瞳は虚ろで、

何も映していないかのようで。


あの日見た、手の届かないような輝きが、失われてしまったかのように感じた。





「ふふ・・アキトさん、誕生日おめでとうございます、プレゼントは気にいってもらえましたか?」


「プレゼント・・・!!?まさか・・・ルリちゃんの仕業なのか?」


「はい、気にいってもらえましたか?」


ニコニコと微笑みを絶やさず、ルリは語る



「いったい・・・何を・・・」


「リンクですよ」


「リンク・・・?」



「そう、完全な生体リンク、アキトさんの身体が感じた感覚を、まず私が感じて、

その私というフィルターを通してアキトさんに伝えているんです。


その代わり私自身の感覚は感じることは出来なくなってしまいましたけど、

2つの感覚を常に受けていたら脳が処理しきれませんから仕方ないですよね」



「なっ!!?」



とんでもない事実を、彼女はさらりと口にした。


「何故・・・」


そんな馬鹿な真似をしたんだ―――


「何故、そんな馬鹿な真似をしたのか・・・ですか?」


心を読まれたかのように、ルリは俺が言おうとしていた台詞を言った。


「驚くことはないじゃないですか、リンクを繋げているんですから思考は大体伝わりますよ」


ルリはまるで無邪気な子供のように笑っている。


俺は、まるで頭の中が真っ白になったかのように、愕然と目の前の彼女を見つめた。

真っ白な頭に思い浮かぶのは、ただひとつの事実。

俺が、ルリちゃんの未来を奪ってしまったという、事実



「・・・そんなに悲しまないでください、アキトさん・・・」



悲しい・・・?そうか、俺は悲しんで、いるのか・・・


「アキトさん・・・こっちに来て、くれませんか?」


その言葉に惹かれるように、俺はルリちゃんの前まで進む。


「アキトさん、会いたかったです・・・ずっと・・・」


酷く、ゆっくりとした動作で、ルリちゃんは抱きついてきた、


拒むことは許されない、そんな権利は俺にはない。

彼女をここまで追い詰めたのは俺なのだから。


「アキトさん、悲しまないでください・・・感じてください、私の心も・・・」


抱きつく腕の力は弱弱しく、ただ触れているだけのようにも思えた、

それでも心は近く、溶け合うかのように流れ込んでくるのを感じた。




―――流れ込んでくる感情は、喜び

少しの濁りもなく、ただ、ただ純粋な喜びが、其処にあった。



「ルリ・・・ちゃん・・・」



―――こんなにも―――


こんなにも彼女は、俺を求めていてくれたのか―――





口から、自然と言葉が零れる。

喋らなくとも、想いは伝わるのに、それでも言葉にしたかった。



「・・・ごめん」


「・・・謝らないで、ください・・・」


「うん・・・ありがとう・・・ルリちゃん・・・」



それきり、黙ったまま抱き合っていた。

数十秒だったかもしれないし、数十分のようにも思えた時間は、ルリの言葉で終わりを告げた。



「アキトさんのために作った料理があるんですよ、食堂に用意してあるので

暖めてラピスと3人で一緒に食べましょうか」



「・・・ルリちゃん、料理できるようになったの?っていうか味覚無しに作れたの?(汗)」



「軍に入る前にホウメイさんが教えてくれたんですよ、

それと作ったのはアキトさんが寝ている時間に一時的にリンクを切って作りましたから」


「はぁ・・・それにしても、明日からはまたアキトさんの料理が食べられるんですね・・・幸せです・・・♪」




そう言ってにっこり微笑むルリちゃん。




彼女からもらったプレゼント。

それは実のところ俺を完全に束縛するための、首輪のようだった。




(・・・ま、それもいいかな・・・)



そう思う、だっていまの彼女の微笑みは、

あの夏の日の輝きに、負けないほどに強く、輝いて見えたから――。













その日、かつて闇の王子と呼ばれ、全ての者に死を振りまいた青年は歴史の全てから姿を消した。


そして、電子の妖精と呼ばれ、16歳にして

軍最強と名高い戦艦の艦長を務めた少女もまた、同時に姿を消した。




その後の行方は誰にも語られることはなかった。






















が、ネルガル会長、その右腕となったプロスペクター氏には

存在しないはずの彼らの、数少ないの知人であるネルガル会長夫妻から


「あいつらの惚気話を聞くのはもううんざりだ!!」


という苦情が毎日のように届いたという(笑)















懺悔室



誕生日おめでと〜アキト君


おめでとうございます♪ア キトさん




うーむ・・・


・・・・・・どうかしたん ですか?(聞くのが嫌そーな感じで)


いや・・・これって人気投票で1位を取ったアキトの外伝だよな・・・


そうです、さすがアキトさ ん、王者の貫禄というやつですね♪♪♪


うーむ・・・なんかルリの外伝っぽいような・・・勝者(?)がルリだし・・・


うーん・・・まぁいいじゃ ないですか、1位を取ったアキトさんと

3位を取ったルリさん (ちょっと違うけど)の黄金共演という事で♪


むー・・・まぁ、一応アキト視点だし、2位のシャナは神威さんが書いたし・・・これでいい、のかな・・・?


いいんですよ、貴方はアキ ト×ルリ作家なんですから

馬車馬のようにアキト×ル リをひたすら書き続ける、それが貴方の存在意義なんですよ


くっ・・・人気投票にも出れなかったくせに、態度でかいな・・・(ぼそ)


なっ・・・!?それは貴方 が私の名前をいつまでも考えないからでしょうが!!


まぁ『天の声』じゃねぇ・・・出れたとしても0票だろうけどさ(笑)


な・・・な・・・


ははは、いくら怒っても無駄無駄、名前も設定すら出てないキミじゃ攻撃すらできまいよ


ピシッ


はっ!殺気!!?


ブンッ


が、がはっ・・・空中から金ダライが・・・ボソン砲かい・・・がくっ


ふんっ・・・ボソンの力、 甘く見ない事です










後書き

本編の進行につれて名前は決めようと思います(汗)

設定とかは一応あるんですけどね(笑)

というか彼女が長編のほうの本編に出る事すら今回初公開(爆)


あと、こんなこというのもなんですけど

今回はなんとなく不完全燃焼と言った感じでした。

展開が急すぎるというか、他にも書きたかった事があったのですが

書くと変になったので入れられませんでした。

そもそも当初の予定では超シリアスちっくだったのに・・・何故?

文章力のなさに涙。



感想

雪夜さんの作品は全体的に物語にでてくるキャラを大事にした書き方が出来ていると思います。

唐突に何を言うのだとお思いかも知れませんが、人によって得意分野というのがあるとすれば、雪夜さんのそれは感情表現ではないかと。

もとろん私の勝手な想像ですので、お気を悪くなされたのなら謝ります。

今回もメリハリの効いた物語を堪能させて頂きました♪

やっぱり、アキト×ルリは、どうにもルリが頑張らないと成立しないというのが良く分かりますね。

良く分かりますね、じゃありませ ん! アキトさんはシャイなだけで最初から私を受け入れてくれていま す!

えらく自信満々だね…ルリちゃ…おっとルリ様(汗)

…まあ、いいでしょう。兎も角、テ ンカワ特製ラーメンのレシピをもらったのはです! これはもうプロ ポーズと一緒です!

…うあ、えらい飛躍だね…でも、実際問題として、ユリカ嬢は囚われていたし、そもそも料理できないしね(汗) 渡す人が他に居なかっただけじゃないのか い?

うぐ!? いいますね…でもあの シーンはユリカさんよりも確実に扱いが大きいですよ!

物語としては山場ですし、ユリカさ んなんて最後に出てきた時以外は敵側じゃないですか!

まあ、そうだけどね…それと、アキトの考えはまた違うんじゃ…

ちっちっちっ! いいですか、アキ トさんはユリカさんに一度も会ってません、これ以上の理由がどこにありますか!

むむぅ…

ふっ ふっふ♪

ところで、これ感想じゃなかったっけ…

 

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