再び手に入れた道、だが俺の罪が消えたわけではない。

いずれは罰に飲まれ朽ち果てる運命かもしれない。

けど、誓った――

俺自身に、そしてルリに――

たとえルリが俺の知っているルリじゃなくとも、誓いは変わることは無い。

俺はルリを守る、あらゆるものからルリを守ってみせる!!





その身の全てを賭して・・・それは騎士の誓いの姿。

でも騎士と呼ぶには血に濡れすぎた記憶を持つ故に、

青年は黒騎士、背徳の運命を背負う、黒い騎士。













機動戦艦ナデシコ

〜永久の誓い、永遠のパートナー〜











第2話

親友と






「さて・・・」


とりあえず現状を把握しなければ行動できないからな。

目の前の公衆端末を操作して簡単な情報を引き出す。

日時は・・・ちょうど俺が火星から跳んだ時期か・・・


「・・・火星は間に合わない・・・か」


ルリを守る事を最優先にするとて、助けられる命があれば助けたい、それがエゴだとしても・・・

サツキミドリ、ガイ、白鳥九十九、そしてユーロピアコロニーの生き残りの人々

それに俺のせいで命を落としてしまった者もいた・・・過去で月に跳んだ時、その前にジャンプに巻き込まれた軍人・・・


「名は・・・確かイツキ・カザマだったか・・・」


彼女も、あの時俺が逃げ出したりしなければ、死なずに済んだかもしれなかった・・・

もう・・・繰り返しはしない、必ず彼らを死なせはしない!!

たとえ彼らを助けたとしても、俺が犯した罪は変わらないだろう、だがいまはそれを悔やむ時ではない。

罰せられることを望み、光から逃げる事はもうしない・・・

全てが終わった後、罪を償えばいい、いま俺に出来る事があるならば、それをしよう。


いまはまだ俺が来てから時の流れはそう変わってはいないはず・・・

イネス・・・いや、アイちゃんは恐らく無事な筈だ。

ナデシコに乗っていればいずれは会える、いまはそう信じよう。

ラピス、俺という重い枷を付けさせてしまった少女、いまはまだネルガルの社長系列の何処かの研究所にいる筈・・・

彼女は・・・幸せにならなければいけないはずだ・・・必ず助け出してみせる!!




「それにしても・・・」


ここはどこなのか・・・いまの時期のルリは確か養父の元で暮らしている筈だが・・・


「・・・っ!?」


ふと周囲に気を向けた瞬間、周囲を囲まれていることを感覚的に捉えた。


(ちっ・・・油断したか・・・)


距離にして四方20mほどの距離に4人、俺を囲むようにしてこちらの様子を覗っているのを感じる。

五感を失った状態で鍛え上げられた感覚は、五感を取り戻した今、相当に明確な情報を俺に訴えていた。

思考の間にも、大した警戒心も持たずにこちらに近づいてくる男達、威圧するような感じが伝わってくるようだ。


「動くな、抵抗すれば容赦はしない」


俺の前に姿を見せるなり、威圧感たっぷりに銃を突きつけてくる黒服の男達。


(4人か・・・いま騒ぎを起こすのは不味いな・・・)


俺は抵抗しない事を主張するように両手を挙げる。


「いや、ちょっと迷子になってな・・・」

「・・・貴様がここに侵入した目的はなんだ?」


俺は軽めに言ったが、あっさりと切り替えされた、この感じと服装から取るに、シークレットサービスか・・・


「1つ質問がある、あんたらはネルガルのSSか?」


ネルガルの者であれば、ルリのスカウトのためにプロスが回した情報収集班だろう

他の企業であったなら、このまま過去通りに進むならば余計な干渉になるかもしれないが

ルリの安全のために、こいつらを放っておくことはできない。


「・・・ネルガルの本部に乗り込んできておいて、他の企業の者がいると思うのか?」


(ここが・・・本部だと・・・?何故いまの時期のネルガル本部にルリが・・・)


ふと感じた違和感、だが考えていてもしょうがない、とりあえず新たに打開策を考える。

ネルガルの―――アカツキの協力が得られれば、これからの事が上手く運べるだろう。



「・・・プロスペクター氏に取り次いでもらいたい、テンカワ夫妻の息子が来た、と言えばわかる筈だ」


その名を出した瞬間、男達の表情に驚きと、怪訝の表情が浮かぶ。

プロスの名は後でこそスカウトとして知れたが、ネルガルの上位に位置する人物

その名はあまり知られていない、それに、SSへの命令権などもプロスにはあった。


そのプロスの名を、見た感じ一般人の俺が出せば驚きもあるだろう。

テンカワの名だけで通るかどうかはわからないが・・・いざとなれば実力行使もあるかもしれない

・・・いまの俺ではシークレットサービス4人相手に勝てるとも思えないが・・・。



リーダー格と思われる男が通信機を使って連絡を取り、その間俺は3人の男に銃を突きつけられたままで・・・


「なぁ・・・腕がしびれてきたんだが・・・」

「黙っていろ」



「確認が取れた、貴様に会うそうだ、着いて来い」


3分後、連絡を取っていた男がそう言い、ようやく男達の包囲と腕の痺れから解放された・・・(汗)











30分後、俺は入念なボディチェックを受けてから

ネルガル本部の応接間にて、先ほどの4人のSSに囲まれたままプロスと対峙していた。

軽い挨拶の後、表情は笑顔を、全く崩さないままにプロスは本題を切り出してきた。


「・・・さて、お話があるとのことでしたが、どのような物でしょうか」


プロスはいまだにニコニコと笑顔を見せてはいるが、その目は笑っているようで笑っていない、ついでに隙も全くなかった。

周りにいるSSが全くの格下に見えるほどだ、相変わらず底が見えない恐ろしさを隠している。


「・・・取引をしたい、そちらにとってかなり有益な情報だ、プロスさん、呼び出しておいて悪いが会長に会わせてもらえないか」


「ほう、有益ですか・・・なるほどなるほど、しかしですねぇ〜会長はあいにく多忙でして・・・

私もそれなりの地位にいる身ですので、私でよければお話を・・・」


侵入者、それもテンカワ夫妻の息子とあればネルガルに復讐を、という可能性もある、

会長に会わせるのは不味いと判断したプロスは自己での商談にもちかけようとしたが。


「火星の技術について」


俺の口から出た単語に、プロスは一瞬止まる、一瞬驚愕の表情を浮かべたが、次に口を開くときには元の笑顔に戻っていた。


「・・・わかりました、会長に取り次いでみますので、テンカワさん、商談はその時に・・・」

「あぁ」


短い返事、それで会話は終わり、プロスは一旦部屋を出て行き、数分後に戻ってきた。


「会長がお会いになるそうです、ではテンカワさん、着いてきていただけますかな」


今度はSS達は着いてこなかった、プロスの承認を得て会長と面談する以上はSS達の及ぶところではないとの判断だろうか。






もう何度も通った、見慣れた通路を通り、プロスの後を着いて会長室の前の扉に立つ。


「会長、テンカワさんをお連れしました」

「・・・ああ、入ってくれたまえ」


見慣れた会長室の中には、アカツキが神妙な表情でイスに座っていた。

エリナはいないようだ、居ないほうが話がスムーズに進むので幸運だが(笑)


「始めましてテンカワ君、僕がネルガル重工会長のアカツキだ、よろしく」

「テンカワ・アキトだ」


でかい事務用の机をはさんで俺はアカツキと対峙する。


「さて、取引って話だったね・・・取引はギブ・アンドテイク、キミからは『火星の技術』について・・・

どの程度の物なんだい?それは」


やけにへらへらと作り笑みを顔に貼り付けたアカツキ、


「火星の技術のひとつ、空間跳躍・・・ボソンジャンプと呼ばれている技術だ、もちろん知ってるんだろう?」


「っ!・・・へぇ、そこまで知ってるとは・・・さすが火星出身で・・・

『テンカワ夫妻の息子』の、テンカワくん?」


「・・・ずいぶん両親の事を強調するな、何を恐れているんだ?アカツキ」



「っ・・・トップシークレットと言ってもいいほどの貴重な情報だね、

なら、こちらからもそれに見合う物を提供するのが筋ってものだけど・・・

見た感じから取ると情報を金で売りに来た・・・って風には見えないね、何が望みだい?」


アカツキは珍しく真面目な顔で、緊張しているようにも見える。

その表情の裏は、先代が殺害したテンカワ夫妻への謝罪か、それともここへ侵入してきた

『テンカワの息子』が、ネルガルに報復しにきた、という懸念からか、それらは読み取る事はできないが・・・

それでも無理をして、緊張感を押さえ込み、『ネルガル会長』らしく振舞って見せていた。

そう、あいつは、アカツキという人物は、悪人なのか善人なのか、微妙なやつだった。

非常な『ネルガル会長』としての面も持ち合わせていたけど、それに成りきれてない。

その仮面の下で、『ネルガル』という重みに必死で耐える、臆病で、いいやつだった。


『闇の王子』になった後にも、俺を友だと言ったアカツキと

目の前にいるアカツキ、俺はまたアカツキに友として、接する日が来るだろうか―――?


「いまから、俺の知っている事を話す、信じられんかもしれんが・・・」

「信じるかどうかは聞いてから判断するよ」

「・・・そうだな、じゃあまず―――」




―――俺はアカツキに全てを話す事にした、

ボソンジャンプの事だけでなく、

ルリへの想い、結末、そしてこれから俺がしたい事、すべき事を。

協力を得るためだけじゃなく、俺を親友と言ってくれたアカツキを、裏切らないためにも。




















「なるほど・・・未来からボソンジャンプで・・・ねぇ・・・」

「ああ」


「うーん・・・」


(・・・やはり駄目だったか・・・?)


当然の話か・・・こんな与太話、通常ならば信じられるわけがない。

ネルガルの協力を得られないとなると相当に困難だが・・・

・・・最悪パイロットとしてナデシコに乗船できればいいが・・・。




「・・・信じてもらえないか?アカツキ」


「・・・いや、少し・・・時間をもらえるかい?」



やはり完全には、信頼を得るのは無理だったか・・・

だが、数々の機密情報、そしてネルガルでは未だほとんど解明されていないボソンジャンプ、

俺が話した知る限りのボソンジャンプの概念。

これらの要素を含め、なんとか保留という判断に留ってくれたか・・・。


・・・いや、信頼はこれから得ていけばいい、少しでも信じてもらう事ができれば、最悪の事態は回避できる。



「わかった、俺は絶対にナデシコを裏切らない、その中で信じられるかどうか、見ててくれ」




「・・・わかったよ、じゃあ、プロス君?」


「はい!では早速契約を致しましょう」



いままで黙って話を聞いていたプロスさんが一瞬で俺の隣まで間合いを詰めてきた。



「えー、早速ですがお給料の話ですが〜と、正規クルー採用として

パイロット特別手当にあれこれそれこれetc...っと、こんな感じで」


いつのまにか手に持った電卓、それを打ち出して見せる。



表情は普段と同じ笑顔、だがどこか普段より活き活きとしているような・・・

商談に楽しみを感じてでもいるのだろうか(汗)


「・・・まぁ値段のほうはそれでいい、それよりプロスさん」

「・・・なんですかな?」


「保険のほう、くれぐれもよろしく頼みます、ほんとに・・・」


前の世界では保険に入ってなかったせいで莫大な借金を背負ってしまったからな・・・(涙)

幸せではあったが・・・決していい生活ではなかった、その教訓だ。




「・・・それはもう、万事お任せを、はい」


そんな必死の熱意が伝わったのかどうか、笑顔のままで判断しづらい・・・(笑)


「ではこちらの契約書にサインを―――」


『ジリリリリン!!...ジリリリリン!!』


アカツキの机の上から電話の音が響き渡る、しかし何故いまどきこんなアナログな電話なのか(笑)


「・・・もしもし、何かあったのかい?」


少しだけトーンの落ちた声、会長室直通の電話はかなり珍しい

よほどの重大な事でもなければ、後で書類として回ってくるだけな筈だが・・・。



「はぁ?そんなくだらない事で・・・え?違う?・・・なんだって?・・・少し落ち着いて話したまえよ」



(アカツキの台詞だけでは会話の内容は掴めないな・・・盗み聴きするようで悪いが・・・)



すっと目を瞑り、神経を集中させる・・・


ザァッ・・・


神経が身体の外に広がっていくような感覚。



やはり感覚は鍛えた状態のままらしい。

まぁあれは肉体の力というよりは精神、心の鍛錬のようなものだからな。

ともかく、これならばなんとか聞き取れるかもしれない。




「どういうことなんだい?・・・ちょっと落ち着いて説明してみたまえよ」


『…ですか……!…マシンチャイルド……って…原因が……!!』







―――マシンチャイルド―――





「―――!!!!!!!!―――」



「アカツキッッ!! ルリはどこだ!!」


「だから・・・わぁ!!?」


机を飛び越えてアカツキの目の前まで詰め寄る、

首の襟を掴んだところで、数瞬遅れて反応したプロスの手によって押さえつけられる。

ものすごい力で押さえつけられる、肩が軋むような音がしたが、気にせずに問い詰める。


「ルリはどこだ!!教えろ!アカツキ!!」



「ぐ・・・苦し・・・っ」


「答えろ!!アカツキ!!!」


アカツキの顔がみるみる真っ青になっていく


「テンカワさん!!これでは喋ることもできません!!落ち着い て、落ち着いて!!」


その声にはっとしてアカツキの顔を見ると、失神寸前だった、あわてて手を離す。

同時にプロスさんの拘束からも力が抜けた、いつでも、今度は完全に拘束できるよう

しっかりと両腕を極められた形で、だが。


「わ・・・悪い・・・アカツキ、それで、ルリは?ルリがどうかしたのか?」

「げほげほ・・・わかんないけど・・・なんか身体が成長したとかなんとかって・・・」


咳き込みながら、答えるアカツキ、顔に死相が浮かんでいるように見えるほど、真っ青だった。


「成長した・・・?どういう事だ?」

「いや、ボクにもよくわからなくてね・・・とりあえず直接見る必要がありそうだね」


「・・・そうだ、な・・・」

「・・・?・・・どうかしたかい?」


わずかな逡巡、彼女に会うべきか否か。

答えは決まっている、どのみち会わずに済む道はない。


彼女は『ルリ』ではなく、『ルリちゃん』だ、それを忘れる事など、許されない。



「いや、なんでもない・・・行こう」



―――ならば、迷う事はない、俺はちゃんとルリちゃんと接する事が出来る―――











そして、ルリちゃんのいる研究室に辿り着いた俺達。




すやすやとベットに眠る少女、実のところ、少女には異常なところなど何もなかった、

だが、少女を知っている者にとっては、あまりに非常識な異常。

俺がルリちゃんに会ったのが3時間程前、その経った3時間で―――



「・・・外見年齢は・・・14歳前後と見られます

「これほどの急激な成長・・・原因はいまのところ不明ですが、

体内のナノマシンによるなんらかの作用と思われます、

今のところそれによる副作用などは確認されておりませんが・・・

この様な事態が起こるのは予想できませんでしたから、どのような処置を取っていいものか・・・」



やや落ち着きを取り戻した研究員の一人による報告、

だがそれを聞いている者、アカツキは目の前の非常識に

呆然として、その報告を理解するのに十秒ほどかかっていた。




「テ・・・テンカワ君?これも、君の知ってる過去なの・・・かい?」


あまりの事態に動揺しまくっているアカツキの声、

隣ではさしものプロスさんも驚愕に目を開いている。


「・・・いや・・・知らない・・・」







そう、知らない・・・目の前のルリちゃんは、俺の知らないルリちゃん。


14歳のルリちゃんを、俺は知らない・・・



それは、俺の居た未来、その時の俺には見ることができなかった、一緒にいることができなかった時間、

俺がルリちゃんの前から居なくなってからの時間を生きたルリちゃんは―――


―――俺自身の、空白の象徴でもあった―――




(あの時間を生きたルリを、この目で見ることができるとは、な・・・)




失った時が、いまここにある。

静かに眠るルリちゃんは、少女時代と電子の妖精の狭間の姿。

俺がやり直したいと願った時間は、まさにいまこの時から。


俺が堕ちる直前の象徴、いまこの時から俺は過去とは違う道を歩んでいく。

静かに眠るルリちゃんを見て、俺はその決意を更に固く、強く心に誓った。









俺は、この時はそんな考えが思考を占めていて、気づけずにいた。

この異変が、どれほど重い意味を持っているのかを―――。









懺悔室


最近めっちゃ多忙です(汗)

朝早く夜遅いので書く暇が(涙)

恒例のコント(笑)は後ほど公開します。

前回ルリちゃん連れてくるって言ったのに・・・

信じてた人ごめんなさい、僕は駄目人間です(爆)



感想

アキトが動いていますね〜。ルリちゃんに対する信念は凄まじい物があります。

ふふふ♪ 当然です♪ だって、雪 夜さんはシルフェニア内でのアキト×ルリ親衛隊長ですから〜♪

うお!? いつの間に、そんな良く分からないものに!? 雪夜さんもお忙しいと言うのに余計な役職を振ってはいけない。管理人として私は止めるぞ!

ちっちっちっ、雪夜さんと、神威さんの100質の答えを知らないわけじゃ無 いでしょう?

あ、ああ確かに…でも、それとこれとは別問題じゃ…

きっと、雪夜さんも喜んで受けてくれますよ♪

クゥ! いつもより音符が多い…

ふふふ、雪夜さんの作品内でも、私は年齢を成長させてアキトさんとつりあう 様にしてくれています♪ 現在14なら、TV一話時点で15、最終話付近では17歳です♪

グッハァ!? なっ、4っつ下ですか!?

そう、4っつ下です♪ お兄ちゃん とか、兄貴とか、兄ちゃまとか、兄クンとか、兄君様とか、お兄様とか、よべちゃう年齢ですね♪ それはもう、アキトさんも思わず条 例を破って♪(喜)

…いや、その…アキトは奥手だと思うし…

そうはいっても、この世界のアキト さんは私以外は目にはいらない様ですし♪ 直ぐに、出来ちゃった婚になりますよ♪ 結婚は16で出来ますから、 火星から帰ってくれば出来る訳です♪

…そういえば、そういうお話も結構多いね…子供は兎も角、結婚は前半でもうしているというの。

そうですよ♪ 雪夜さんがんばって 私とアキトさんを入籍させて下さいね〜♪ 、テンカワ・ルリになれる日を待っていますから♪

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