使い魔の召還儀式から、1日が経った。
私は、強い使い魔が欲しかった。 強い力が欲しかった。
捕らわれた母様を取り戻すための力が。
殺された父様の仇を討つための力が。
その結果として私の目の前にいるのは―――
――――納得できない。 納得できないけど、ただの平民の男の子だ。
――――まあ仕方ない、召還してしまったものは仕方ない、契約してしまったものは仕方ない。
今朝になって使い魔の彼と色々と話をして、とりあえずの方針も決まった。
これから色々と余計な事で忙しくはなりそうだけど、問題ない。
何の問題も無いはずだ、そう、何も。
青の使い魔
第2話
『トリステイン魔法学院』
さて、とりあえずの方針として、使い魔の才人には『故郷に帰ってもらう事になった』のだが。
そのために必要な事が1つ。 『使い魔の解約』である。
使い魔はメイジ1人につき、1匹しか従える事が出来ない。
現在タバサの使い魔である才人が存在する以上、タバサは使い魔を召還する事は出来ないのだ。
つまり『使い魔の解約』は、タバサにとっても絶対条件なのだ。
ちなみに使い魔の解約―――と言っても、方法が無いわけではない。
使い魔との契約が切れる条件、それは確かにある。
その条件は2つ。 『主であるメイジが死ぬ』か『従者である使い魔が死ぬか』である。
前者は当然の事だが却下、後者の選択も採りたくは無い。
つまり、これ以外の方法を探す事になる。
「――――という事。」
「……な、なるほど……えっと、つまり、まず、何をすればいいんだ?」
「まず―――」
ゴーン ゴーン ゴーン
「――――まず、朝ご飯」
ズデン、という音と共にサイトが床に転がっていた。
……何かおかしな事を言っただろうか?
朝を告げる鐘と共に、トリステイン魔法学院に住む生徒達の生活は始まる。
「食堂に行くから、着いてきて」
手早く着替えたタバサは、外の様子を眺めていた才人に声をかける、心なしか急いでいるようにも見える。
「え!? あ、ああ、うん、いま行く……」
振り返った才人の顔は、心なしか赤い。
それというのも、会話が終わった次の瞬間、タバサが「着替える」とだけ言うと、おもむろに寝巻きを脱ぎ始めたからだ。
もう少しで―――というところで、サイトの理性は後ろを向く、という選択をしてくれた。
そこにたまたま窓があり、タバサが着替える約1分とちょっとの間、才人は仕方なく窓の外を眺める事になったのだ。
部屋を出て少し歩くと、人の波があった。
皆タバサと同じ服を着ているので、ここの生徒であり、目的地も同じなのだろう。
タバサと才人はその流れに紛れ、食堂を目指す。
(それにしても……)
タバサは―――少なくとも才人から見た感じでは、何も感じていないようだが
才人は先ほどから多くの視線を感じていた。
視線はまず才人へ、そしてすぐ前を歩くタバサに向かった後、不自然に逸らされる。
(やっぱ服装がまずいのかな……おもいっきり私服だし……)
周囲を歩く生徒達は皆、タバサと同じような服を着ていた、恐らくこの学院の制服なのだろう。
私服でうろつく才人を見て部外者だと思い、その前を歩くタバサを見て、タバサの連れだと納得しているのだろう。
そんな事を考えながら才人は歩く、タバサに対する若干の申し訳無さと、不躾な視線に耐えつつ。
たどりついたそこは、学校の食堂と呼ぶにはあまりに壮大だった。
才人の知る学食などとは同列に並べる事すら憚れる、まるで映画の世界だ。
庶民的な才人などは、はそこに自分がいるというのが、酷く場違いであるかのような印象すら感じてしまう。
やっぱり外国? のお金持ちの学校ってのは食堂も違うんだなぁ、などと思ったのだが、
一緒に来たタバサが悠然と歩き出したので、サイトもそれに続いて席の間に足を踏み出す。
空いている席に目もくれず歩いているので、恐らく指定席のような物があるのだろう。
「おおー……」
テーブルに並んだ料理に、才人は声を漏らした。
ピカピカの皿に、綺麗に飾られた上品な料理の数々。
食堂メニューかと思ったらとんでもない、まるでレストランだ。
貴族とやらは伊達じゃないらしい、とんでもないところに来てしまった。
一方、タバサはそこにある料理を見て、眉をひそめた。
食卓に並んだ料理はスープとサラダ、それとメインの鶏肉の料理が、1人分。
テーブルに並んだ料理、それはもちろんタバサの朝食である。
そこに才人の席は、無い。
という事は才人が食べるべき料理も、もちろん無い。
昨日は色々とあったので、サイトの分の朝食を手配するのを忘れていたのだ。
仮にも才人は使い魔として召喚されたわけであって、その主人はタバサである
いまここに才人の分の食事がないのは、前もって厨房に話を通していなかった主人であるタバサの責任と言える。
使い魔用の食事ならばもしかすればあるかもしれないが……いくらなんでも人間が食べるには忍びない。
仕方ない―――。
考えをまとめると、タバサは食卓からサラダの皿のみを手前に寄せる
幸いにもサラダにはタバサの好物であるハシバミ草が入っている。
ハシバミ草は苦味が非常に強く、好む者はあまりいない食材ではあるが、タバサの好物のひとつである。
それ故タバサの席に置かれたサラダは、隣の席の物に比べると倍近く量がある。
前もって食堂に話をつけ、基本的に余る食材であるハシバミ草を大量に入れてもらったタバサ用の特別メニューなのであった。
「座って」
サラダの皿だけをずらし、それ以外の料理の前に座るように才人に促す。
朝食は楽しみではあったが、失敗は自分のせいだ、それをタバサは受け入れる。
「え? でもこれ……」
「食べて」
有無を言わさぬ物言いで食事を促す。
目の前に出された料理とタバサを交互に見た後
「―――じゃあ俺、こっち貰うよ」
あ。―――と言う間もなく、才人はサラダの皿にフォークを刺し、口に放り込んだ。
「!!」
シャクシャクと新鮮な音を立て、サラダを咀嚼する才人。
(私は雪風 私は雪風 私は雪風)
雪風を異名に持つタバサは好物を食べられたくらいでは取り乱したりはしない。
とりあえず頭の中で、エアハンマーで才人をたこ殴りにしたタバサは、平静を保った。
「そんな遠慮すんなって……モグモグ、タバサはちっこいんだからもっと……いっぱい食ったほうがいいぞ?」
「……(ムッ)」
見た目に反してタバサは人よりもよく食べるほうである―――そんな事は知るよしもない才人は
デリカシーの欠片ほどもない言葉を口にする。
(私は雪風……私は雪風……私は雪風……)
雪風を異名に持つタバサは少しばかり侮辱されたところで取り乱したりはしない。
才人を(想像の中で)血祭りにあげたタバサは心をなんとか鎮め、才人の厚意に従って残りの料理に手をつけ―――
「モグモグ……にしても……これすげぇ苦いな……モグモグ……」
「――――」
(私は雪風! 私は雪風! 私は雪風!)
才人(タバサ内の)はサツガイされた。
あおがき
せっかくだから俺はこっちのサラダを選ぶぜ!
……って空気を読んだ結果がこれだよ!!(笑)
食べ物の恨みは怖いのです。 SATSUGAIせよ! ですよね? クラウザーさん(?)
ちなみにタバサが腹ペコキャラってのはゲーム版での設定なんですが本編だとどうなんでしょうね、情報求む〜
ブランクがかなり長くなったので文章のほうにいまいち自信がもてませんがとりあえず完成〜という事で投下!
閑話的な話なので少々ギャグ多目?でしたん☆
っていうか短いよ!(雪夜はサツガイされた)
ちなみに↓からはいただいたウェブ拍手への返答というか補則というか言い訳というか……
18:30:39
>>「あおがき。」ではなく「後書き」
大分更新に時間が開いてしまったので仕方ないと思うのですがあおがきはプロローグ1話からの仕様です、ご容赦を。
18:34:57
>>「青筋」は「怒り」の表現に使われる。「冷や汗」の方が良いかも。
表現的にわかりづらくてすいません、少しだけわかりやすくなるよう修正しました。
要は『ちびまる○』とかによくあるアレです。(´×`|||)
18:42:22
>>「KOOL」はタバコのブランド名。「COOL」では? 投稿前に誤字チェックくらいはしておくように。「あおがき」? 「後書き」でしょ。
KOOLになれ。は2chとかで使われてた『ひぐらしのなく頃に』のネタです。 あおがきは仕様です。
19:14:39
>>待ってました!!危うく有望な同志になってしまうところでしたよww
やらないか。(執筆的な意味で)
いただいた拍手のうち、弁明の必要そうな物だけ抜粋しました。(ネタ含む)
尚、「がんばれー」「乙!」「期待してます」と応援拍手をくださった方々
読んでくれた方、本当にありがとうございます>< 頑張りますね。
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