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Fate/Heroes of mythology〜神域追想呪界〜 出陣
作者:黄昏之狂信者   2018/07/04(水) 00:13公開   ID:/jW8DXujk8w
■■■きゃ
護■■■
■■■と■■を、■■を、■■護■■だ
護■、■け、■け
■穴■■■■でも
・・・
・・・・・・
誰■■■■だ?
『■■■』って■■?
勇者御記 
       ■■■■記
       ■■済



火焔が奔り、絶対零度の氷雪が吹き荒ぶ。
空を埋め尽くすバ―テックスが凍結しては次々と墜落し、紅蓮の焔に焼き尽くされていく。
その様はさながら天より落ち来る流星雨のようだ。
その中を禍々しい尾針をユラユラと揺らめかし、山の如きバケモノが悠々と樹海を漂う。
そして何度も自身に集る煩い『小蝿』を無造作に尾針で殴りつけ、切り潰し、穿ち抜く。
その都度に怨嗟に満ち溢れた絶叫が響く。
大切な■■を護れなかった絶望の絶叫が、大切な■■を救えなかった悔恨の絶叫が。
何度も、何度も・・・


「■■■■■、■■■■■■、■■■■■■■■。■■■■■■■■■■■■■・・・」
怨嗟の絶叫が響き渡る『地獄』に、何の呪術的耐性も無い人間が一言でも聞けば即死するほどの昏い呪詛を呟き続ける人影があった。
人影は憎悪に満ち溢れた狂笑を浮かべる。
遥かな昔、『ソレ』は■の■■に連なる貴い存在だった。
だが、それはもう過去の話。
■■■■■に裏切られ、■■に裏切られ、己を■■に集った■■は悉く■■され、■■■■を願った■■■は無情にも■■■された。
死して後は■■に■■■として疎まれ忌まれ・・・
今やその■■なる■■に連なる■■であった事は忘れ去られ、残るは『■■■■の■■■』の蔑称のみ。
どうして許せようか。
どうして赦せようか。
湧き上がる憎悪は手に携えた■■■に伝い、総てを■■していく。
かつて己を見捨てた■■の祖に与する等怖気が奔る。
故に我は我の意思でこの国を亡ぼすのだ。
さぁ、神話に謳われる英雄共よ、狂え、狂え、魔に堕ち腐り果てよ。



結論から言うと、カルデアとの通信は全く確立しなかった。
立香の構築したカルデアとの通信術式はノイズばかりを拾い続け、まるで壊れたラジオ同然だった。
「まぁ・・・仕方ない、か」
ある程度予想はしていた事態なので立香はさほど動揺は無い。
こういった事態はグランドオーダー中にもあったのだから。
「マスター、今後どうなさるのですか?」
牛若丸が外壁の警邏から帰って来た。
「うん、あの虫瘤みたいなのに行ってみようと思うんだけど・・・」
「中には山の様なバーテックスがいるのでしたね。この牛若、見事バーテックスの首を刎ね飛ばして見せましょう」
「あ、うん・・・バーテックスに首があったら・・・ね?」
立香は取り敢えず拠点である丸亀城から一番近い『虫瘤』に行く方針を立て、その方法を模索していた。
立香の方針は自分達が『虫瘤』へ赴き、若葉には防衛の為に残ってもらうというウルクでの作戦を応用するというものだった。
「宜しいのですか? 我々だけであの『瘤』に突入するなどして」
「うん、バーテックスとの戦いに慣れた若葉さんが後方を護ってくれている間に私達で『虫瘤』内部のバーテックスを殲滅する方が確実なんじゃないかと思うんだけど・・・」
これから立香達が行く場所は一度交戦状態になってしまえば逃げ場のない牢獄だ。
そこに全員で入ってしまえば壁外のバーテックスが侵攻して来た時、防ぎようがない。
勇者である若葉なら『虫瘤』に出入りは可能な様だが、入ってしまえば外の様子は分かり辛くなるだろうし、外部からの襲撃があった時、戦闘中に離脱するという危険を冒す必要がある上に『虫瘤』から外壁までのタイムロスが致命傷となる可能性がある。
バーテックスに広域に浸透されると撃退が困難になる。
そして何より、今でさえ『樹海化』が解けた後、現実にどれほどのフィードバックが起こるか予測すらつかないだろうに、これ以上の『浸食』を許したらどれほど甚大な被害を生むか分からない。
だから防衛のノウハウを有する若葉に残ってもらい、自分達が『虫瘤』内のバーテックスを全力で殲滅した方が良いと判断したのだ。
「マスターがそれでいいのなら私は従います」
「しかし、我々二名のみの戦力で果たして事足りるのでしょうか? 万が一我々だけでは手に負えない場合は全滅しかねません。やはり若葉様にも来て頂くべきかと」
「巴殿、マスターが良しとする兵法なのです。そこに異を唱える事など無用ではありませんか?」
「仕える主の作戦に不備があればそれを正すのも家臣の務め。貴女の様に命じられた事のみをすれば良いという直情的な者を『猪武者』と言うそうですよ」
「兄上の御下命は常に正しかったのです。私が異論を挟む必要などないでしょう」
「マスターは貴女の兄上ではありません。誰もが同じ能力を有する等思わない事です」
「マスターの作戦はこれまでどれも素晴らしかった。貴女はマスターの御意思を蔑ろにするのですか?」
「誰がその様な事を言いましたか?」
「言ったではありませんか!」
「いいえ、そのような事は申しておりません。マスターの作戦がこれまで通用して来たとして、それが今回も正しいわけではないと言っているのです」
是も非もなく速攻で了承する牛若丸。
敵の戦力が不明な戦いに全滅の危険性を訴える巴御前。
朝からこの二人の意見は対立したままで、いつ殺し合いが始まってもおかしくない程の険悪な空気になっていた。
この四国の現状は常に外界の脅威に曝されている中で敵に浸透され、それを『虫瘤』という防壁で何とか食い止めているというとても不安定なバランスで現状を維持している状態だ。
自分達が動けば確実に事態は変化する。
どうすべきか、立香は今一度じっくり考える事にした。
「はい、二人ともちょっと聞いてくれる?」
立香の一言で二人は言い争いを止め、立香に向き直り主命を待つ。
こういう所は骨の髄まで『侍』なのだと立香は感心する。
「ゴメン、二人が私の事を思ってくれているのは分かるんだけど、ちょっと頭の整理がしたいから外に出て来るよ。二人は言い争うのは止めて、何時出発するってなってもいいように準備する事。いい?」
「・・・承知しました」
「はい、わかりました」
立香は二人にそう言うと丸亀城の本丸を出て遥か彼方にある『神樹様』をよく眺められる開けた広場の様な所に出た。
広大に広がる樹海、その奥に聳える『神樹様』という神聖な絵画の様な光景に染みの様に違和感を覚えさせる四つの『虫瘤』・・・
アレを取り除く必要がある。
それは間違いない筈だ。
でも問題は山積している。
バーテックスは本能や知性はないだろう。
だが、こと『人類を殺す』事に掛けては如何様な戦術も取るのだという。
実際若葉から聞いたところ、若葉をその場に釘付けにするほどの物量で攻める組と広域に浸透する組に分かれて侵攻する、一点突破を狙って速力特化の個体を投入する、接近戦に特化しているという若葉を近づけず倒してしまおうと遠距離特化した個体で攻める等という対応力を有しているとの事だった。
きっと私達が『虫瘤』に入れば壁外のバーテックスはこれを好機と攻めて来るに違いない。
だから後詰がいる。
でもそうすると戦力が足りなくなる恐れがある・・・
「どうすべきなんだろう・・・ねぇ? 神樹様・・・」
どれが最善か分からず、悩んでいた時だった。
立香の頭の中に唐突に強烈なイメージと共に微かな声の様なものが聞こえた気がした。
視界一面を覆い尽くす焼け爛れた大地に咲く腐った花畑とその背後に聳える大木。
花畑の中には四つの燃えた石があり、それに花畑の花々は絡まり、次々と焼き落されながらもなお絡んで苦痛の絶叫を放つ。
そして首の無い藁人形が腐汁を撒き散らしながら大木の前に積み重なって立ち、それらも次々と燃え落ち、やがて大木は燃え始め焼け堕ちると共に『暗黒』と形容すべき人影が高らかに哂い、総てが無明の闇に消え果てる。
闇に総てが消え果てる寸前、焼け落ちた大木から人の手が伸びて来てたった一言を紡ぐ。
『タスケテ』と。
「・・・これが・・・『神託』・・・なの?」
若葉に聞いてはいた。
『巫女』とは神樹様の神託を聞く存在。
グランドオーダー中、神霊とすら縁を結んだマスターである立香であれば神託を受ける可能性はあった。
今の神託の意味はいまいち分からない。
だが、あの焼けた石というのがバーテックスなのだとしたら、アレらは近いうちにあの『虫瘤』から解放されてしまうのだろう。
最後の黒い影が何なのかは分からないが、恐らくはこの特異点を産み出した黒幕なのだろう。
「うん、決めた」
今の『神託』の意味は良く解らない。
でも、『タスケテ』と差し出された手はつまり助けを求める人がいるという事。
これだけは確信出来た。
ならば助けた人が安全な場所を確保する事も必要だ。
だから、ここは当初の考え通り、自分達だけで『虫瘤』に入りバーテックスを殲滅、若葉は後詰として待機してもらう。
そうすれば救出出来た『人』がいればそこに匿う事が出来る。
立香はその方針を固めた。


「やっぱり私は最初の作戦通りで行こうと思う」
外から戻るなり立香は待っていてくれた二人の英霊に方針の決定を告げた。
「拝命、賜りました。存分に御使い潰しを」
「見事大将首、御前に差し出して見せましょう! 山の様な化外であれど、首級を取ってこそ源氏というものです。お任せください!」
「ああ、いや・・・バーテックスの首級なんか持ってこなくていいから・・・」
「マスター、若葉様にはもう伝えたのですか?」
戦を前に子どもの様にはしゃぐ牛若丸を他所に巴御前は粛々と戦前の詰めを行っていく。
ここが正しく現界した年齢の違いなのだろう。
巴御前は義仲に付き従っていた頃をこそ、最盛期として現界しているのでその精神性はほぼ完成した成人女性のものだが、牛若丸は『源義経』としてではなく、あくまで『牛若丸』を名乗っていた元服前をこそ最盛期として現界している為、その精神性は現界した外見に引き摺られている部分が多分にあるらしく、今の様に子どもの様に無邪気にはしゃぐ事は多々見られていた。
「あ、まだだった。御前、牛若、ちょっと待っていてね」
立香は作戦実行前に若葉に作戦内容を伝えに行った。

「よし、わかった。一体たりともバーテックスは入れない。だから、あそこは頼んだ」
若葉は立香の作戦内容を聞くと、快く承諾してくれた。
「じゃあ若葉さん、背中は任せました」
若葉に報告し終え、出発しようとした直後、若葉の持つスマホ型の端末が警報の様な音を発した。
「くそ、もう来たのか」
若葉が忌々しげに壁外を睨む。
「今の警報ってもしかしてバーテックス?」
「そうだ。この端末は勇者に『変身』する為の機能の他に、バーテックスの接近を教えてくれるものでもある。恐らく、奴等は今の均衡が崩れると察知して攻勢をかけて来たのだろう」
「若葉さん、私達はすぐにあちらへ向かいます。若葉さんは壁外のバーテックスを」
「ああ、任せておけ」
若葉は端末を起動させ、勇者へと『変身』する。
端末から黒い花弁が噴き出し若葉を包んでいく。
そして、『乃木若葉』という存在そのものがより高位の存在へと置き換えていく。
それは正しく人の身でありながら『英霊』と呼ぶべき異質な力だった。
「では立香、武運を」
若葉は短く挨拶をすると、一度の跳躍で遥か彼方まで飛び去ってしまった。
「よし、私達も行こうか」
若葉を見送った立香達は一つ目の『虫瘤』攻略を開始した。




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