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野菜の女王様 艶花は夜開く
作者:M4A3E4   2010/09/02(木) 21:53公開   ID:u6fsEziQ0Mk
田口先生ごめんなさい

西に傾いた夕陽が山々を茜色に染めていた。
まだまだ残暑は厳しいが、朝夕の風には秋の気配が感じられる。
御色町立第一小学校は、町を見下ろす山の麓に建っている。
そして学校の裏山には、主(ヌシ)と呼ばれる存在がいた。
それは錬金術によって生み出された、女性の姿をした植物で、名をオシリスという。
オシリスは全身から生やした触手をじゅるじゅるとうねらせ、山頂に続く小道をゆっくりと歩いていた。
優雅なステップに合わせてたわわに実ったメロンのような豊乳と、右手に下げたビニール袋がリズミカルに揺れる。
ビニール袋の中身は、駅前にある南口商店街の人々からの差し入れである。
自らの製作者であるヒッシャムとともに、山小屋で暮らすオシリスは商店街と契約して、連日アーケードの下で踊っている。
年末商戦に合わせ全身に電飾を施したときなどは、踊るクリスマスツリーとして地方紙の一面にも掲載されたほどで、今ではすっかり商店街の名物になっていた。
全てヒッシャムの生活費を稼ぐためである。
タイムサービスで売れ残ったカレイの唐揚や大根の煮物といった差し入れの品も、時として白米と塩だけで糊口を凌ぐヒッシャムには、天からの贈り物に等しい。
優秀な錬金術士ではあるが、専門分野意外の知識に著しく欠けるうえ、絶望的に世渡りが下手糞なヒッシャムだった。
オシリスがいなかったら、とうの昔に餓死しているところである。
(ま、だからこそ放っておけないのじゃがな)
オシリスは小さく肩をすくめた。

木々の間から山小屋が見えてきた頃だった。
首から下げた携帯電話が、軽やかな着信音を奏でた。
オシリスが、胸の谷間に埋まった携帯電話を手にとって、液晶画面に表示された文章を読む。
『鉄道橋下の堤防で待つ』
それだけだった。
携帯を操作し、発信元を表示すると、ヒッシャムの携帯電話から打たれたものだった。
常に鬱陶しいほど饒舌なエジプト人からのメールにしては、いつになく素っ気無い。
いやな予感がした。
携帯電話を元にもどしたオシリスは、地面の下に姿を消した。
地上を走るより地中を泳いだほうが速いのだ。
御色川の河川敷で地面に出て、堤防にあがったオシリスは、周囲を見回した。
堤防の土手道を鉄橋に向って歩いていると、黒塗りのワゴン車がオシリスの横を通った。
オシリスを追い越したワゴン車は、道路に横になって停まった。
中から六人の男が出てきた。
明らかにただの人間ではなかった。
暴力を生業としている人間が持つ暗さが、男たちの面貌にはあった。
さて、とオシリスは考えた。
男たちを叩き伏せることは容易だった。
本気で暴れるオシリスをどうにかするには、自衛隊を呼ぶしかない。
やくざ者の五人や十人程度、フンコロガシほどの役にも立たない。
無視して地中に逃げることも出来たが、先刻のメールも気になる。
ためらっている隙に、男たちがオシリスを取り囲んだ。
『何の用じゃ?』
声帯を持たないオシリスは、携帯電話を使って会話する。
「へへっ、たまんねえ身体してるじゃねえか」
男の一人が口笛を吹いた。
軽薄に嗤いながら、無造作にオシリスの乳房に手を伸ばす。
「今は駄目だ」
別の男が、その手を抑えた。
あきらかに他の男たちとは貫禄が違った。
剥き出しの腕が太かった。
剛毛に覆われている。
オシリスの乳房に触ろうとした男は、不承不承といった様子で、後ろに下がる。
「おたくもその物騒なものを引っ込めてくれ」
そう言われてオシリスは、いまにも光線を発射しようとしていた触手を体内に仕舞った。
「さて、用件に入るが」
リーダーとおよぼしき男が口を開いた。
「ちょいとツラかしてもらいてェ」
他の男たちは無言でオシリスを見ていた。
粘ついた視線だった。
「インド人のおとしまえをつけてもらいてェ」
ヒッシャムのことだろうと、オシリスは思った。
100%混じりけなしのエジプト人であるにもかかわらず、ヒッシャムは十割近い確立でインド人と間違えられる。
「はっきりいうと、ツラとカラダとナニをかしていただきてェ」
(そういうことか−)
例によって後先考えずに資金援助の話に飛びついたヒッシャムに、金を貸したのがそのスジの人間だったというオチであろう。
オシリスは心の中で大きく溜息をついた。
「大事な中年のダンナが五・六人、アンタを同時責めにしてえと待っていなさるんだ」
左右から男が寄ってきて、オシリスの両腕をやんわりと掴んだ。
「今の世の中、せめてポルノくれえ期待を裏切っちゃいけねえぜ」
男は墓石のように真っ白な歯を剥き出して笑った。
陽光を反射してキラリと光る前歯というものを、オシリスは初めて見た。
そうこうしているうちにオシリスを取り囲んだ男たちが体を寄せてくる。
淫靡な曲線を描くオシリスの肢体を、男たちの無遠慮な視線が這い回る。
不愉快極まる状況ではあるが、オシリスは暴れ出しそうになる自分をなんとか抑えた。
オシリスは男たちに命じられるままワゴン車に乗った。
ヒッシャムを見捨てるという選択肢はなかった。
普段は主人を主人とも思わぬ態度をとってはいても、オシリスにとっては掛け替えのない大事な創造主なのである。

オシリスが運ばれたのは、隣町へと通じる国道沿いの、周囲に人家の無い雑木林の中にぽつんと建つ連れ込み宿だった。
玄関で頭髪が薄く眼鏡をかけた、太鼓腹の男が待っていた。
男の名は寺田栄作という。
寺田は相場師だった。
四十なかばであぶらぎった男だ。
そっちのほうは絶倫だと名が通っていたが、結婚はしていない。
これまで金にあかせて色々な女を抱いた。
普通の女漁りにマンネリ感を感じはじめていたころ、偶然TVのニュースにちらりと登場したオシリスの姿に目を奪われた。
緑の肌、神がかった美貌と男を誘う妖艶なプロポーション。
寺田は夢中になった。
目を瞑ると商店街で踊るオシリスの、特大の抹茶プリンのように柔らかく弾む見事なバストが浮かんでくる。
たまらない乳だった。
そのオシリスを犯す、乳も、尻も、なにもかも、全身余すところ無く自分の欲望を刻み付ける。
その妄想にすっかり執り付かれてしまった。
寺田は早速、オシリスを性奴隷に墜とすための策を練り始めた。
まず興信所を使ってオシリスの身辺を探らせ、ヒッシャムの存在を知った。
相手の弱点を把握してからの寺田の動きは速い。
まず世事に疎い錬金術士に接近し、いい儲け話があると持ちかける。
商法も先物取引も門外漢のエジプト人は、気がついたときには莫大な借金を背負わされ、いつのまにか保証人になっていた暴力団関係者に身柄を抑えられていた。
ワゴン車の中でオシリスは、携帯電話に送られてきた映像を見ていた。
どこかの倉庫か地下室の床に、簀巻きにされたヒッシャムが転がされていた。
主人を主人とも思わぬ態度のオシリスだが、心の底ではヒッシャムを尊敬しているし、大切にもしている。
逆らう術はなかった。
連れ込み宿で待っていたのは、寺田一人ではなかった。
寺田は仲間に声をかけていた。
みな寺田とつるんで女を買ったり、ダーティーな手管を使って人妻やニュースキャスターを毒牙に掛けてきた悪党である。
事前にオシリスのビデオ映像を寺田に見せられた男たちは、一も二もなく全員参加を表明した。
この世のものならぬ美貌を持つ人外の美女を抱き、思いのままに弄ぶことができるとあって、興奮に股座をいきりたたせていた。
オシリスが寝室に入ると、全裸待機していた男たちが一斉に感嘆の声をあげた。
触手を引っ込め、身体を覆う装甲を排除したオシリスは、女神と呼ぶに相応しい美しさだった。
ボリュウムたっぷりの胸と尻とは対照的に、鋭く絞り込まれた腰。
それでいてアンバランスな印象は微塵もない。
まさに黄金率を体現したかのようなスーパーボディだった。
男たちは互いに目配せしあい、舌なめずりしながら道を開けた。
畳張りの部屋の真ん中に布団が敷かれていた。
オシリスは男たちに腕を取られ、布団の上に乱暴に投げ出された。
観念したオシリスが目を閉じる前に見たのは、一斉にのしかかってくる男たちの姿だった。

ヒッシャムが監禁されていたのは、連れ込み宿のボイラー室だった。
ノートパソコンの液晶画面の中で、若草色の美しい裸身がのたうっていた。
寺田はAV業界の知人のコネで、ビデオカメラと撮影クルーを呼び寄せていた。
撮影班は、穴という穴を犯され、快感にのたうつオシリスの姿をカメラに収める傍ら、オシリスが男たちに嬲られている姿を、地下室のヒッシャムに実況中継していた。
撮影された映像は、男優の顔をモザイク処理したのち、裏ルートで販売する予定になっていた。
オシリスが男たちの欲望を一身に受け止める凄惨な輪姦のライブ動画の一部始終を、ヒッシャムは見せ付けられていた。
モニターの中では、布団の上で四つん這いの姿勢をとらされたオシリスが、前と後
ろから貫かれていた。
口を犯していた男が腰のピストンを止め大きく身震いすると、オシリスの顔が歪み、唇の端から白濁液が溢れた。
男がオシリスの髪を掴んで揺さぶると、オシリスの顔に諦めの表情が浮かび、喉元が口腔内に溜まったモノを嚥下する動きを見せた。
口唇性行を強いていた男が口を開放して離れると、バックから貫いていた男がオシリスを抱き起こした。
男はオシリスの細くくびれた腰を掴んで体位を変えると、自分が下になって寝そべった。
騎乗位で突き上げられながら胸を揉みしだかれ、喘ぐオシリスの後ろから別の男が挑んできた。
水蜜桃のような尻を抱え、可憐な菊門に剛直を突き入れる。
オシリスの背筋が反り返り、絶叫を放つように大きく口を開く。
その口に、また別の男根が捻じ込まれた。
三穴同時責めを受けるオシリスの身体が、男たちの隙間で人形のように踊った。
正視に堪えない光景だった。
顔を背けようとすると顎を掴まれ、強引に画面を向かされた。
目を閉じようとすると、瞼をこじ開けられた。
「感謝しろよ、こんなたまらねえショーをタダで見せてやるんだからよ」
男たちは嗤った。
目から憤怒の涙を流し、猿轡を咬まされた口から獣じみた唸り声をあげながら、持てる全ての才能と愛情を注いだ作品が獣たちに食い荒らされる様を、ヒッシャムはただ観ていた。

『ふ、あ、ぁああ…ッ!あ、んン……ぅふぅ…はぅあっ!』
寝室には、首輪に括りつけられた携帯電話を通して、容赦なく犯され続けるオシリスの艶かしい喘ぎ声が絶え間なく流れている。
「そうだ、声を出しなよ。いいだろ?」
にっと黄ばんだ歯を見せて笑い、男たちは嬉々としてオシリスを嬲る。
屈辱と嫌悪に歯噛みしながらも、オシリスの身体は淫らな快感に侵され、浅ましい雌犬の反応を露わにしてしまう。
(貴女はエジプトの希望なのですよ)
いつだったか、ヒッシャムが自分に語った言葉が、ふと脳裏に浮かんだ。
砂漠の過酷な環境でも枯れることのない夢の食用植物を目指して開発されたオシリスは、見た目が美しいだけでなく、その果汁と果肉も大変に美味である。
そして今回、性欲処理の用途に用いても非常に美味しく、高性能であることが実証されつつあった。
(貴女の身体は人々を幸せにするためにあるのです)
今の姿になる前、外見は平凡な植物だったころのオシリスに、ヒッシャムは言ったものだった。
(このような形で男どもを悦ばせるのも私の役目というわけか…)
飢えた男たちにジューシィな肢体を性的に貪られ、自らも快楽に溺れる一方で、氷のように醒めた思考でオシリスは自嘲した。
「すげえな、こいつのDVDなら飛ぶように売れるぜ」
撮影機材を操作する男たちも、生唾を飲み込み、目を血走らせて、目の前で繰り広げられるオシリスの輪姦ショーに見入っている。
「こんな安物のカメラじゃもったいないなあ、フルハイビジョンブルーレイでいきたいなあ」
カメラマンが股間にテントを張りながらぼやいた。
いまやオシリスは、同時に六人の相手をさせられていた。
「素敵だ、最高だよ君は」
仰向けに寝かされたオシリスのア■スを、下から貫いている男が耳元で囁いた。
「僕たちの仲間になりなよ、幸せになれるよ」
前の穴を埋めている男が言った。
「ほら、こんなに幸せになってる」
豊満な乳房を両手で掴み、寄せてあげた深い谷間にチ■ポを挟んで、フレキシブルに腰を使う男が笑った。
「どうです、素晴しいでしょう」
顔の上に跨りイラマチオを強いる寺田が語りかける。
「説明すると下をうけもっているのは消費者金融社長の白倉次郎、後ろのはパチンコ業界の大物伊藤誠、胸を使っているのは広域暴力団組長赤星超一郎、右手のは広告会社経営者高浜哲夫、左手のは県会議員小磯亮平、我々が一致協力すれば大抵の物事はどうにでもなる」
寺田は得意気に喋りながら、容赦の無い突き込みでオシリスの喉奥を蹂躙する。
「みんな仲間だ、タイミングも合わせられる」
オシリスの指に男根を握らせ、手淫奉仕をさせている高浜がうっとりしながら言った。
「我々の結束は鉄のように固いのだよ。固いだろう、んん?」
上手いことを言ったつもりなのか、しなやかな指に手コキされる感触を楽しみながら、小磯が下品な声で笑った。
「ではそろそろ…」
「うむ、我慢の限界だ」
「そんじゃ一斉にブッかけてやるか♪」
「合わせろよ!」
「おおう!」
「顔に射精(だ)すぜ、悦びな!」
『あああ―――――っ!あ、あ、ああっ!あぁぁあああぁぁぁあああァァァっっ!』
断末魔の絶叫をあげ、激しく四肢を痙攣させながらオシリスは果てた。

明け方近くになって、獣たちの宴は終わった。
開放されたヒッシャムは、情事の後始末を命じられた。
室内では、全身精液まみれのオシリスが、布団の上で気絶していた。
ヒッシャムは、ぐったりとしたオシリスを抱え、浴室へ運んだ。
体中まんべんなく白濁液を塗りたくられたオシリスを、暖かなシャワーで洗い清めながら、ヒッシャムは何度も詫びた。
借金をかたに脅迫され、最後には屈服してしまった。
静かにオシリスを介抱するヒッシャムの精神は、地獄の業火で焼かれていた。
自分の後先考えない愚行の結果が、目の前にあるオシリスの、汚し尽くされた無残な姿だった。
怒りに身をまかせて寺田たちに襲い掛かりたかった。
同時にそれが意味のない行為だということも分かっていた。
ケンカの弱さでは人後に落ちないヒッシャムである。
警察を頼ることはできなかった。
人格的には善人とはいえ、ヒッシャムは錬金術というアンダーグラウンドの世界で生きる人間である。
司法機関の調査が入って、お咎めなしというわけにはいかなかった。
結局オシリスを生贄に差し出すしかなかったのだ。
目覚めたオシリスは、ヒッシャムに背負われていた。
ヒッシャムは人気のない道路を歩きながら、重い口を開いた。
「大変な目に遭わせてしまったね」
母国語で会話するときのヒッシャムは、シェイクスピアを朗読するローレンス・オリヴィエのように重厚な語り口になる。
「すまなかった」
濃い哀愁を感じさせる声だった。
オシリスは無言だった。
ヒッシャムも言葉が続かなかった。
オシリスを背負ったヒッシャムは、朝靄の中に幻のように消えていった。


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