−後方 攻略部隊 仮根拠地


「ジェガン4機、ジャベリン3機、量産型ガンダムF91にアンクシャ5機、陸戦用百式改が支給か。確かに領収した」
「では、我々はマーカスに戻ります」

前線の根拠地に艦船から運ばれたモビルスーツと弾薬・食料が臨時格納庫に運ばれていく。補給の重要性が再認識出来る一コマである。
ちなみにアンクシャというのはグリプス戦役でエゥーゴを苦しめた連邦正規軍の可変モビルスーツ「アッシマー」の直系後継モビルスーツとして開発され、正式採用された機種。
マーカス方面から部隊が進出する事に伴って配備されたのである。

「ん?凄いな。RX−78じゃないか」
「ああ。例のあれの素体として残っていた複数のG3タイプを倉庫から引っ張ってきたそうだ」
「フルアーマーか。あれって実在してたのか」
「うんにゃ、そうさ」

地球連邦はこの戦いには全力を傾けていた。だが、度重なる戦乱で保有兵器の減少は如何ともしがたかった。
そこで一年戦争からの一時期に研究がなされたが、著しい技術発展のために実戦投入を見送られていた試作兵器群を倉庫から引っ張り出し、近代化回収を施して前線配備させた。
その内の一つが「FSWS計画」と呼ばれし軍事計画の遺産「フルアーマーガンダム」である。一年戦争の末期当時、ジオンや、宇宙艦隊が正面から対応できないガミラスの宇宙艦隊に対抗すべく、
地球連邦軍最強を誇った「RX−78」を素体にした強化を模索する過程で生まれた機体。一年戦争当時の機体としては最高の火力と装甲を誇ったもの、
機動性の低さが解決できず、砲撃支援機としてしか運用されずに退役していった。それを技術が進歩した現在に甦らせるのは当時からは考えられないほどに簡単であった。
素体には規格の問題から、RX−78−3系統および第二期生産型の残存機が流用されたが、それらはZ系用のジェネレータを搭載、装甲は最新型のガンダリウムγ合金、内部には現行機同様にフレーム構造が取り入れられ、ムーバフルフレームが
積み込まれ、単なる改修の域を超えた改造が行われた。増加装甲分の重量増を相殺する大推力スラスターがつけられた事で、機動性も通常時に劣らないようになったという。

ジム系モビルスーツでは満足できないエース用として一個中隊分がハワイ部隊、残りの分がアッツ島部隊に配備されたという。

「いいのか?最高機密だったんだろ」
「もう後継機が多く配備されてるし、Mk−Uさえ今じゃ型遅れになってる時勢だけど、RX−78系は設計が優秀だから改造すりゃ使えるって上の判断だろうよ」

そう。軍が造りしガンダムの祖はRX−78である。その優秀性は正統後継機のMk−Uやνガンダムが証明している。FAガンダムの存在はRX−78が未だに輝きを失っていない証でもあった。







−なのはとルーデルはVF−25で市街地を飛んでいた。近接航空支援を行い、一仕事終えた後はなのはの頼みで智子の援護に向かっていた。ルーデルはなのはが`扶桑海の巴御前`の教え子である事に意外な風な態度を見せ、なのはに自分が大尉時代に智子と出会っていた事を教えた。

「大佐は中尉とあった事があるんですか?」
「もう随分と昔の事だ。私がまだ大尉だった頃に任務で中尉の所属先だったスオムスに派遣された。その時に中尉と会ったんだが、まさか貴官のようなちびっ子を弟子にとるとは……ちょっと驚きだ」

ルーデルは今の自分を不動のエース足らしめた戦術を編み出したスオムスでの戦いの事を話す。その時の智子はまだ中隊長になりたての新米指揮官で、その能力を推し量るためにちょっと『からかった』こと、その時の任務であみ出した戦術が自分を今の地位に押し上げた事を。

その時の話に華が咲き、合間の雑談を楽しむが、そのうちになのはは`撃墜された`事を夢に見て時々うなされていると告白する。落ち込んだ声で告白するなのはからは、どんな敵とぶつかっても撃墜されてこなかった人間にとって、初被撃墜は計り知れないショックだった事が伺える。

「……私は今までに20回近く落とされている」
「えっ……?」
「そっちにも`私`に当たる存在はいるのだろう?その戦記や資料を見たことは?」
「前にお兄ちゃんの部屋にあった本を一回だけ……」
「そっちの私も実際問題、爆撃機乗りだったので30回は撃墜されている。日本(ルーデルにとっては扶桑だが、なのはに合わせた)のエース達も傷だらけになって帰還した事は珍しくない。それにそっちじゃ`私`は片足を失ったらしいが、それでも飛んで戦い続けた。
……たかが一、二回程度の撃墜でクヨクヨするな」

それはルーデルなりの激励だった。何回も落とされている彼女だからこそ言える言葉。この時の言葉がなのはの人生観に大きな影響を与えていく事になる。−「スーツカの悪魔」、「白色電光戦闘穴吹」。撃墜王達の薫陶は大きいのだ。

「さて、この当たりには仮面ライダー達がいると聞くが……」

ルーデルはVF−25をガウォーク形態で着陸させると、この地域に上陸した仮面ライダー達の姿を探す。案の定、仮面ライダー達のバイクの爆音が響き、颯爽とバイクを操って現れる。

「ん、君は……」

先頭を走っているハリケーン号の仮面ライダーV3が愛車を止めてルーデルの元に歩み寄る。

「自分はハンナ・U・ルーデル大佐であります。あなたが仮面ライダーですね?」
「正確に言えば、俺は3号、V3だ。よろしく」

とりあえず握手をすると、次いでX、RXも挨拶を済ませる。そして彼らと行動を共にしていたスバルと美琴もそれに続く。

「……まさか`魔法少女`の類が本当にいるなんて。言葉もないわ」
「にゃはは……高町なのはって言います」
「御坂美琴よ。よろしくね」

挨拶を済ませると、各人は情報を交換し合い、結果、共に行動することに合意した。

「……水爆の捜索は俺達や美琴ちゃんが引き受ける。`改造人間`の俺達や電撃使いの美琴ちゃんならコンピューターのハッキングはお手のものだ。……いいね?」
「OKよ」
「あたしは後方の援護にまわります」

これはRXとV3、美琴が引き受けた。V3とスバルは2人の護衛役だろう。

「お任せする。雑魚の掃除はどうします」
「俺がやろう」
「私もお手伝いします」
「私とガーデルマンは引き続き、航空支援を行います」
「これで決まりだな」


雑魚の掃除にはXとなのはが名乗り出、ルーデル達は引き続き、バルキリーでの支援を行う事になり、面々は水爆の捜索とついでの智子の援護に乗り出し、マシーンに乗るものはそれぞれのエンジンを唸らせ、突撃を敢行した。



−この時の事はよく覚えてる。`仮面ライダー`。私にとってはTVの中のヒーローに過ぎなかった存在が本当にいた事への驚き。そして人間ならざるものになっても、`人間`で在り続ける生き方を選んだ理由。後で知ったけど、あの人がどんな思いで生きてきたのか。それを理解した時は悲しかったの。だけど、大きくなった今なら分る。彼らの信じたもの……。`正義`の意味。その言葉の大きさ。私たちとは桁が違う重さの十字架を背よって、あえてそれに殉じる事。私にはとても真似できないと思った……。


この一文は彼女が17歳になった頃にこの時の回想を書き残した手記の一部である。この年に彼らに似た姿と宿命を持つ`別の存在`が明らかになった事を聞き、『ちょうどいい機会』として回想を手記に残していったのである。その手記は後に戦いの中で保護した女の子で、義理の`娘`となる「ヴィヴィオ」が10歳を迎えた時に『なのはの過去はどんなものだったのか、母をエースオブエースに育て上げた`師`は誰なのか』を知る手がかりとして活用される事になる……。


この年にフェイトが次元世界における仮面ライダーとそれの類の調査の課程で接触したある一人の`仮面ライダー`に似た姿を持つ男は自らをこう称し、天(空)を指し示すポーズをとりながら高いところに立っていた
『天の道を往き、総てを司る男』と。その男は仮面ライダーストロンガーと同じモチーフの姿をしていた……。


「あなたはいったい……?」
「お前の言葉を借りるなら、`仮面ライダー`(現地ではマスクドライダーという単語が存在していたとか)の一人かもしれん。俺の名はカブト、仮面ライダー`カブト`」




-フェイトがこの調査で光速のビジョンを垣間見たのは言うまでもない。










−この戦いには今の所、スーパーロボットは露払い役でグレートマジンガーとダンクーガが参加していた。ダンクーガは修理が完了していたもの、
スーパーロボット故に出撃が政府の命で抑えられていた。これは強大な力を行使することで反政府勢力に行動の口実を与えてしまう事を恐れたためであるが、
それも言ってられなくなった。


その経緯はこのようなものであった。

「将軍、これはどういう事かね?」
「せっかく生還した君を4軍の総司令に再抜擢したのだ。それなりの働きはして貰いたいものだな」
「前にもお話しましたが、今回の苦戦は早期決着を焦るあなた方の強行な命令によるものです。分析結果を待たないで、スケジュールを無理やり一ヶ月も早める必要はなかったはずです」
「それをどうにかするのが君の役目だろう!!」
「やってしまったからしょうが無いだろう!!」

政府高官らは此度の選挙による政権交代でだいぶ新顔に入れ替わった。
そのため用兵側の苦労というモノを理解していないズブの素人(軍人たち談。ある軍高官曰く「奴らは弾さえ用意すれば勝てると思っている)も多く、彼等はひたすらギャアギャアとわめきたてて、レビルを批判する。「こうする間があれば、状況打開のための策の一つも考えろ」とレビルは心のなかで毒づく。そんな批判の嵐に晒されるレビル将軍に助け舟を出したのは、かつての政敵であった「ゴップ」連邦議会議長であった。彼は連邦軍の保守・中立派の重鎮として長年君臨していた男で、官僚形軍人の中では比較的有能であった人物。軍での階級は最終階級としては元帥であった。レビルが軍に復帰できたのは彼のおかげであり、一年戦争から年月を経た現在では、関係は氷解し、
互いに友情を持ちあわせる関係になった。

「まあまあ、そう捲くし立てられたら将軍も何も言えんだろう」
「しかし議長。彼に何か策があるとでも?」
「あるだろう。スーパーロボットという最後の切り札が。今がその時なのだよ、キミ」
「は、はあ!?議長、本気でおっしゃられてるのですか?あれを使えば残党共を決起させてしまう可能性が……」
「今は残党がどうの言っている場合ではないのだ、国防副大臣!国難の時にあらうる手段を講じるのは当然なのだよ。そして、これは私が承諾したことなのだよ」

此度の選挙で初当選したと思われる国防副大臣の`若造`(35歳ほど)の懸念をゴップは言い伏せる。この安全保障会議ではゴップの発言力は絶大なものであった。過去に軍政面で一年戦争の勝利に貢献したという功績が大きく、出身派閥が派閥間抗争に無縁な中立派であったのもここ数代の政権に重宝されている要因であった。歴代政権は彼の政治力に救われてきた面が多々あり、発足したばかりの新大統領の体制下でも議長として留任した。

彼は現在、政府によって何重にも制限がかけられているスーパーロボットの実戦運用を自分が議会や大統領を説得させて許可させるとレビルに告げた。(前大戦の終結後、スーパーロボットの運用には凄まじい制限がかけられ、滅多に実戦運用はできなくなった。しかし現在、宇宙軍がスーパーロボットを運用できているのは、彼が特例として認めさせたからである。)

「しかし議長!!」
「つべこべ言うな。……将軍、そこに書いてある連絡先に電話したまえ。`獣戦機隊`にコンタクトが取れるはずだ」
「……ありがとうございます、議長」

ゴップはその圧倒的な政治的手腕で最終的に会議をまとめさせた。会議結果は『スーパーロボットの投入を許可する』。
渋る大統領もゴップ議長直々の説得により折れ、晴れてスーパーロボットの全面的投入が叶ったのだ。そして日本の何処かでスーパーロボットがその目覚めを待っていた……。その機体は『獣を超え、人を超え、そして今神になる』とも評される代物。その完全リペアが完了していたのだ。その名は「ダンクーガ」。

『やぁぁってやるぜ!!』

ある地で一人の男の叫びが木霊する。それは人類の切り札たるスーパーロボットの一つの復活を示す狼煙でもあった。その名は「ダンクーガ」。





と、いうわけである。ゲッターチームはゲッタードラゴンよりも更に強大なゲッターロボが完成間際であり、完成次第、合流するとの通達がある。真ゲッターロボの。










−その新早乙女研究所ではゲッタードラゴンを含めた研究所のゲッターロボの全てのエネルギーを真ゲッターへ充填する作業が行われていた。

「エネルギー量、40、50……順調です。プロト郡のエネルギーをすべて吸収。次いでゲッタードラゴンの出力をオンにします」
「ウム」

真ゲッターは膨大なエネルギーを必要とする。その総量はゲッター線増幅炉を持つゲッターGですら超越する恐るべきもの。
そのため、ドラゴンを起動ブースターとして改造せざるを得なかったが、その戦闘力は遥かに凌ぐという。
早乙女博士は真ゲッターを一種の怪物に例えているが、それは的を得ていた。ドラゴンの増幅されたゲッターエネルギーが真ゲッターに注ぎ込まれ、
やがてエネルギー数値が真ゲッターの最大ポテンシャルが発揮できる数値に達する。

「よし!リョウ君、真ゲッターを起動させたまえ」
「はいっ!!」

竜馬はコックピットでスイッチを入れる。−すると。

炉心の唸りが手に取るようにわかるほどに伝わり、力が漲るような感覚さえ覚える。

「うおおおおっ……このパワーはなんだ……ドラゴンがまるで赤ん坊だぜ」
「操作法はドラゴンと同じだ。幸運を祈る」
「了解。真ゲッターロボ、発進!!」

真ゲッターは悪魔を思わせる翼で飛翔する。慣性の法則などまるで無いかのような機動で。それは最強を謳われしゲッターロボの産声でもあった。真ゲッターロボ。

それに呼応するかのように、ドラゴンにも異変が起きていた。




「ゲッタードラゴンどうだ?」
「良好ですが、先ほど、妙なデータが取れまして」
「どういう事だね」
「これを」

それはゲッターGの実験室のゲッター線の濃度が先ほどから異常に高まっている事をを表す物だった。
まるでドラゴンに一刻も早い`進化`を促すかのように。そしてその兆候が最初に現れたのは、真ゲッターロボの完成が間近に迫った時だった。




− 一週間ほど前 実験室

ドラゴンはここで真ゲッターロボ開発の課程で追加試作された`より効率的`な新型増幅炉心に動力を換装を受け、その起動実験が行われていた。


「ゲッター線数値、40……ドラゴン、起動させます」

ドラゴンの目に光が灯り、実験は成功したかに思えた。だが、早乙女博士は真ゲッターの事例があるので、数値を今のところの限界値までエネルギーを高めるように言う。

だんだんと数値が高まり、現在のドラゴンの装甲材とフレームが耐えられる限界に近づく。

「何だあれは!?」

それに誰もが驚愕する。ドラゴンの目にだんだんと瞳のようなものが現れていくのだ。

「同じだ……この間の真ゲッターと……まったく……」

博士は真ゲッターと同じように、ドラゴンにも瞳が現れた事に目を見開いて息を呑む。そしてエネルギー注入が止むとそれは消えたが、この時から早乙女博士はマジンカイザーの事例と併せてある一つの仮説を立てた。`ゲッター線は機械さえ進化させられる`。プロトマジンガーをカイザーにまで変貌させたのはゲッター線だと結論づけ、それと同じことがゲッタードラゴンにも起こり得ると。

そしてそれを示すかのように、ドラゴンはまるで心臓が脈を打つように炉心を静かに唸らせていた。一刻も早く進化をしたいかのように……。その行き着く先へ。











−オワフ島に殴りこんだ航空部隊は遮二無二、敵基地目がけて突っ込んだ。対空砲火を物ともしないその統制のとれた機動で市街地を乱舞していき、やがて、敵基地に通じると思われるトンネルを視認する。

「あの入り口に突っ込む!!全機、続け!!」

フォッカーの指示で全機がトンネルに向けて突っ込む。
無論、敵の対空砲火でまたまた数機ほど編隊から落伍するが、気にしてる暇はない。
狭いトンネルを戦闘機やジェットストライカーで突っ走るというのは相当な技量がいる。
一歩間違えば墜落は必至だ。その証拠に最後尾のコスモタイガーUが一機、操縦を誤って壁に激突し、爆発する。
トンネルの明かりを頼りに飛ぶので、こういう事態は起こりえる。フォッカーについてこれるのは相当な技量を持つ者たちのみであることの表れでもあった。


(ここを抜ければ……!)

トンネル潜りなど、ウィッチとして長い戦歴を持つ穴拭智子や迫水ハルカも経験がない。
智子はこの未来世界の滞在生活で、同居人の黒江綾香が釣り(未来世界では釣りは気軽にできなくなっている)以外の趣味として開拓した`TVゲーム`の某有名フライトシューティングのシリーズをやっているところを見たことはある。その時は自分もクリアを手伝ったが、その時の感想は『何だって戦闘機のフライトシューティングにこんな面があるのかしら?』だった。
しかしいざ自分がそれをやるとは思ってもみなかった。

−もう、随分飛んでるように思う。……20分?いやもっと?

実際にはまだ5分も立っていないが、智子にはそう感じられた。僅かな明かりを頼りに飛ぶことは相当な度胸のいる事だ。

経験がない若いウィッチに良く脱落者がでないのが奇跡的に思える。自分とて、前方に見えるフォッカーのVF−19の熱核バーストタービンの排気炎を半分頼りにしている。怖くないといえば嘘になる。だが、今のこのメンバーなら必ず成功すると信じ、智子は自分を奮い立たててトンネルを飛んだ。灯りを頼りに旋回し、上昇・下降を何回か繰り返していき……。

ただ、ひたすらに光がさす方向に突き進むことしか彼女らには出来なかった。













兵団側も航空部隊がトンネルを突っ込んでくるというありえない行動に面喰い、対応が遅れてしまっていた。


「か、閣下!!敵機がトンネルから突っ込んできます!!」
「直に通過してきます!!いかがいたしましょう!?」

若い兵士らが一様に狼狽えるのを彼は一喝し、場を鎮める。それは歴戦の兵であるミシチェンコだからこそ可能なことだ。

「狼狽えるな!!!!」

こういうとテキパキと指示を飛ばす。彼は冷静沈着だ。この冷静沈着さが地球圏攻略の尖兵として選ばれた要因なのだ。

「たしか工作用のアレがいたな」
「は、はい」
「戦線に投入しろ。敵の航空機の攻撃には十分に耐えうる」
「ハッ!」

兵団は工作用だが、兵器に転用が容易な`あの巨体`に火を入れた。
それはコスモタイガーやバルキリーの対艦ミサイルをも物ともしない重装甲とビルを崩壊させる熱光線を持つ恐るべきロボットであった。
ドラえもん達の知識でそれを呼ぶならこの言葉が似合うだろう。`ザンダクロス`。











「……抜けた!!スカルリーダーより全機へ。各個に攻撃開始!!」

フォッカーはトンネルをる抜けると、直ちに無線で全機に攻撃開始を命じ、ミサイルによる爆撃を敢行する。
コスモタイガー、VF−11などの各種バルキリー、ウィッチ達も同様だ。攻撃は順調に進むかと思われたが、不意に青白い光線が走り、
VF−11を数機まとめて粉砕する。全員がその姿に驚愕する。

「くそっ……とんだ隠し玉を用意していたもんだ!」

フォッカーさえ戦慄するそれは兵団で事実上最強のロボと言える`ザンダクロス`タイプ(ドラえもんが便宜的な名をつけたのが全軍に伝わった)であった。工作用と聞いていたが、まさか大々的に投入するとは……。ドラえもん達がかつて搭乗したそれとカラー違いかつ、更に巨大だ。サンダーボルト
がまるで小人に見えるほどだ。

バルキリーやコスモタイガーの攻撃でびくともせず、扶桑出身のウィッチの斬撃でも装甲に傷を入れられないという脅威的な装甲とそのパワーで連邦軍に打撃を与えていく。

「きゃああああっ!!」
「智子中尉!!……くぅぅっ!」

智子も魔力を充填させた扶桑刀で斬りつけるが、多少の傷を入れたところで巨大な腕に振り払われ、吹き飛ばされる。
ハルカがなんとか受け止めるが、こうしている間にも損害は拡大していく。

墜落したVF−11をゴキブリを潰すかのように足で踏み潰し、レーザー砲でコスモタイガーを粉砕する複数のザンダクロスタイプ。メインコンピューターとおぼしき声が響く。

『この宇宙に湧いた害虫共が!!粛清、粛清!!』
『一定数の奴隷は確保した今、貴様らに価値はもう無い!!あとは駆除あるのみ!!』
『汚物は消毒だぁぁぁぁ!!ヒャッハァ――――!!』
『野蛮な貴様らには動物園に行ってもらう!!どうせ利用価値などない輩だからなぁっ〜』

この、ザンダクロスタイプのメインコンピューターの粗暴かつ人間をウジ虫以下にしか捉えていない言動に智子は怒りを爆発させた。


『ざっ……ざけんじゃないわよ!!さっきから黙って聞いてれば野蛮だの、害虫だのと決め付けて!!
そうやって自分達に従わない生物を`野蛮`って決め付けるアンタたちこそ野蛮よ!!』

扶桑刀を敵に向けてそう言い放つ。しかし状況は地球連邦軍に不利だ。敵は憮然と智子を嘲ける。

『フン。タンパク質と水の塊でしか無い貴様らに何が出来る?俺に傷の一個でも入れてみろ』

そう言ってウィッチの一人を捕まえる。目の前で仲間の死を見せるつもりか。そしてにぎり潰さんと力を入れようとした瞬間だった。
何か金属を盛大に断ち切る音が響き、ザンダクロスタイプの一体が断末魔を上げながら真っ二つになって両断される。黒煙が晴れ、その張本人の姿が見える。
34mはあろうかという大きさの翼を持つ巨人の姿だった。

『……あれはまさか!?』

フォッカーもこの援軍に思わず叫ぶ。あの黒い巨体とあの長大な剣は間違いないと。


『心にて悪しき空間を断つ!……名づけて断・空・剣!!』



―その声は復活の狼煙だった。かつて地球を救ったスーパーロボット、その名をダンクーガ。

『人を超え、神をも超える、それが究極のマシーン、ダンクーガ!!行くぜ兵団野郎!!やぁぁぁってやるぜ!!』

―そしてその復活を祝福するかのように空には雷が走る。雷をその身で操るは、紅の翼を持つ鉄の魔神。

『グ、グレートマジンガーか!?」

ザンダクロスタイプらがうろたえる声を出す。その声に答えるようにグレートマジンガーのパイロット`剣鉄也`は勝ち誇るように応える。

『……そう。`偉大な勇者`だ!!』

雷鳴を轟かせ、その漆黒の巨体を見せるグレートマジンガー。


二大スーパーロボットが駆け付けたのだ。その鋼の勇姿は地球人の確固たる意思を示すようにきらめき、頼もしく思えた。

「あれが……スーパーロボット」

智子は初めて目の当たりにした鋼の巨神達の勇姿に息を呑む。未来世界の人々にとって文字通りに最後のの希望であり、
どんな敵にも打ち勝ってきた人間の造りしモノ。スーパーロボットの圧倒的な威容に誰もが希望を託す。
たった2機だが、大地を揺るがす神の力を持つマシーン達の降臨はこれ以上ない援軍であった。




―2199年 8月 

この時期、地球連邦の本星たる`地球`は深刻な人材不足に陥っていた。防衛艦隊の主力の大半を銀河殴りこみ艦隊へ抽出したところに、更に白色彗星帝国の侵略で多くを失ったがために、本星防衛艦隊の艦艇は銀河殴りこみ艦隊遠征直前の9000隻以上から2199年時点では300隻程度まで減っていた。新造艦の建造は無人艦艇の建造がシャロン・アップル事件の影響で禁止された以上は、有人艦で補填する以外に方法はなく、一度は建造が中止された波動エンジン搭載型主力戦艦級を`後期生産型`と称して第37番艦(彗星帝国戦時、36隻が就役済みであったため)以降の計画が再開されていた。此度のハワイ決戦に駆り出された「土佐」、「敷島」はその計画で生み出された第一次建造分の戦艦である。
ギアナ高地ではそれら計画の下で生み出される艦艇の建造が進んでいた。

「アンドロメダ級に変わる次期主力艦ねえ……」

艦艇整備担当者らは軍の高官から提出された整備計画に頭を悩めていた。それらは白色彗星帝国戦当時の艦艇のリファインなどではなく、その発展型などであった。中にはガミラス残党が用いた戦闘空母の影響を受けた空母や宇宙戦艦ヤマトの名を継ぐであろう`二代ヤマト`となるはずの案も含まれていた。

「アンドロメダ級もこれで打ち止めか。なにせネネシスは2号・3号・5号艦の無事だった部品を繋ぎあわせて作ったニコイチの船体に、新型の機器とエンジンに収束型波動砲を載っけただけだし、`しゅんらん`にしても所詮は新造パーツの割合を多くしただけに過ぎないからな」

それは彼が抱いているアンドロメダの`遅れてきた姉妹`「メネシス」及び「しゅんらん」への評価だった。彼はヤマトの技師長「真田志郎」の後輩で、同様にアンドロメダの過度なオートメーション化に疑問を持っていた人間である。実際オートメーション化の盲点はアンドロメダ戦没直前の航海コンピュータの記録(戦後に残骸を調査して回収された)で露呈された。それによれば、被弾時に操艦用電子回路が損傷し、暴走。コントロール不能に陥り、そのまま特攻のような形で散華したとのこと。その盲点は戦後、用兵側の不信が物凄く、建造を送らせてまでヤマト型に順じた改良が施される事になった原因である。





彼が手に持っている計画書の一部は以下の通り。

`次期主力戦闘空母 `仮称BN型` 

予定諸元 全長600m〜キロメートル級以上 波動エンジン搭載 今後開発予定の新型波動砲搭載 艦載機数は少なくとも70機〜90機(一式宇宙艦上戦闘機`コスモタイガーU`もしくはその後継機などを基準に)砲撃能力においてもアンドロメダに劣らぬ能力を……。


`次期各州艦隊旗艦`

アンドロメダの設計を基準に各州独自技術を取り入れての設計に留める。ただし波動砲の有無や収束・拡散の選択は自由とする……。

「大艦巨砲主義の謗りと言われるのも無理は無いな……だが今は数より質で対抗する他は無いか」

2199年当時の連邦軍は過去の戦乱の戦訓から戦艦・空母双方の働きが可能な戦闘空母の整備に力を入れていた。要因はガミラス帝国が戦乱で戦闘空母などの艦種を用いた事で連邦軍が衝撃を受けた事による。艦船の質と乗組員の練度の充実を進めたい連邦軍であるが、現実はそううまく行かない。第一線の任に耐えうる練度を持つ乗組員はそうそう育成出来るものでも無い。それが軍の悩みの種であった。

「それはモビルスーツの機種転換も同じさ」
「お前、いつ来たんだ」
「今さ。アナハイムから新型機を運ぶ任が終わってな」

`彼`の同僚で、モビルスーツ整備・調達担当武官が話しかけてきた。モビルスーツの技術的発展は凄まじく、今では強力な兵装も多数開発されている。今年にルナツー守備隊が遭遇した事件においてもそれが大いに有効に働いたのは云うまでもない。

「俺が乗ってきた艦でルナツー守備隊が鹵獲していた「GAT-01A1ダガー」や「ストライクダガー」の解析作業が終わったが、技術的には一年戦争当時のモビルスーツに中途半端に第二世代のエッセンスをふりかけた感じだった。バッテリー駆動というのだけは凄いんだが、後は一年戦争後期の機体と辛うじて戦えるか程度の性能で……動力伝達機構しか見るべきものがない」

それは誕生間もないコズミック・イラ歴のモビルスーツはまだ方向性が定まっているとは言いがたい事を示していた。あの世界では`モビルスーツのポテンシャル`を存分に発揮できるのはコーディネーターであり、普通の人間ではOSの助けでようやく対等になる程度`という固定観念が蔓延っていたが、ルナツーの部隊は高性能機と高練度パイロットでそれを打ち破った。(これはモビルスーツなどの人型機動兵器の運用経験が長く、運用ノウハウもすっかり確立された地球連邦軍が持つ誕生間もないコズミック・イラ歴の勢力に対するアドバンテージによる)

「それはご苦労さん。しかしそれはガックリしたな」
「何、アナハイムやサナリィの連中は参考になったとか言ってたから何かは掴んだんだろう。そうそう新型のことだが、百式の可変タイプなんだよ」
「じゃ、ついにデルタガンダムになったのか?」
「そうだ。ただしプラス化だがな」

―デルタガンダム。それはグリプス戦役初期に置いて試作されていた初の可変ガンダムの名前である。当時の技術では変形時にフレームにかかる負荷が大きく、歪みが生じてしまう問題を解決できなかったために再設計と開発資産を再利用したのが百式系列であるが、初志を数年越しで実現させたのだろうか。ゼータ系列で培ってきた技術の応用だろうが……ゼータプラスに肖ったのだろうか。

「ただハワイ決戦に駆り出すにはまだ早いらしいから現地部隊にはリ・ガズィのカスタムタイプを送るらしい」
「上は総力戦だな」
「太平洋方面はこれで決着つくからな。何ヶ月かかろうが落とすとレビル将軍は意気込んでおられるが……準備不足も相まって苦戦しているらしい」
「ハワイの敵は名将だからな……」

ハワイ攻略戦の膠着状態に溜息をつく武官ら。
無茶な決行指令を発してギャアギャア騒ぐ政府高官らは連邦軍にとっての内なる敵であった……。
彼らは内なる敵に打ち勝ち、戦いに勝利を収める事が出来るのだろうか。













―地球連邦軍のハワイ攻略戦の苦境は、かの`宇宙戦艦ヤマト`にも伝えられていた。艦長代理の古代進は艦を率いて参陣したかったが、白色彗星帝国との戦いの傷が癒えぬ(あまりにも損害を被ったためと、元々がワンオフ艦のために修理保守に莫大な費用がかかるヤマトの修理工事は進まず、8月現在で60%に留まっている)今の状況では無理だった。

「クソッ!地球が全力を挙げて兵団と戦っているというのに、俺は何もできないのか!!」

憤慨する古代だが、ヤマトはまだ工事中であるし、自身の駆った『零式宇宙艦上戦闘機`コスモゼロ`』も失われている。抽出すべき艦載航空隊も殆どの人員が戦死。数少ない生き残りの山本明は他の艦に転属命令が出されてしまったし、機体も残存機数は予備機の6機だけ。これでは焼き石に水で、作戦参加は認められないだろう。
戦後に配属された坂本茂も今は別任務についている。

「そう落ち込む必要はないぞ、古代」
「真田さん」

ヤマト工作班班長で、`ヤマトの知恵袋`と連邦軍内であだ名される逸材「真田志郎」が古代をなだめる。彼は藤堂総長(史実では彼が地球防衛軍司令長官である)からの`プレゼント`を運んできたのだ。

「参謀本部からヤマトにうれしい物が届けられたぞ」
「何です?」
「まあとにかく格納庫に来てみろ」

真田に促されて古代は今は殆どがらんどう同然の格納庫に足を運ぶ。そこには……。

「こ、これは……」

―真新たらしい機体が置かれていた。生産が始まって間もないコスモタイガーの第二次生産ロット機である。以前のそれと比べると、全長などは同じだが、鋭角さが増してシャープになり、搭載量も増している。エンジンノズルも微妙に形状が変わっている。

「今年から生産され始めたコスモタイガーのマイナーチェンジ型だよ。装甲の強化、エンジンの新型への換装、ハードポイントの増加などの細かな所を改良され、以前の機体の数機分の戦力を発揮できる」

その機体は俗に`新コスモタイガー`と呼ばれるものだった。塗装こそ従来機同様だが、外観がシャープになり、機体性能は以前とは別物に近い。近衛航空隊や過酷な任務に従事する部隊へ優先的に回され始めた代物だが、ヤマトが今後直面するであろう事態に対応するに当たって、彼が自らの権限で配備させたのだ。

「これで作戦に参加されたしとの通達が出された。無論、航空隊としてだ」
「しかし真田さん。機体はともかくも、人員はどうするんです?」
「コスモタイガー隊の生き残りが15人ほど退院して復帰したから、奴らが付いて行ってくれる。飛行中隊としては丁度いい数だ」

真田は激戦を生き延び、宇宙有数の腕を誇ったヤマト航空隊の人員を遊ばせて置くのはもったいないという藤堂の意思もあるが、前回の航海で軍規違反を犯したヤマトを擁護する彼の立場を危うくさせようとする保守派を黙らせるためにも働きを示す必要があると告げる。

「そういう事だそうだ、古代」
「コスモゼロは回して貰えなかったんですか?」
「あれは俺からも頼んだんだが、マルチロールで無いことがネックになってあの型は生産打ち切りになったらしい。専用部品も多いこともマイナスだったようだ。南部重工業公社はベテランからの要望でこのコスモタイガーと共通部品を使った新型コスモゼロの開発を始めたそうだが……」

コスモゼロで古代が乗っていた型は生産打ち切りになってしまったことを残念そうに報告する真田。古代の部下の南部は公社の御曹司なので、こういうことは会長である親に掛けあって交渉してくれるが、流石にコスモゼロを確保するのは出来なかったので、その代りに古代用にチューンナップした新コスモタイガーを送ったそうだ。

「俺専用か……南部には苦労かけたな。」
「さあ出撃だぞ古代」
「真田さんもですか?」
「人員の足しにはなるだろう」

真田は工作班でありながらコスモタイガーを操縦出来る。フェーベ航空決戦で勝利に貢献した彼であるが、実は並の飛行科の奴らより操縦が上手いのだ。彼の万能ぶりはスゴイの一言である。


古代達は整備員にハッチを開けてもらい、エンジンを全開にする。

「艦長代理、腕はなまっちゃいないですよね?」
「バカモン、当たり前だ」

通信越しにからかう飛行科の部下にそう返すと、古代は新たな愛機「新コスモタイガー」で発進する。彼の機体は垂直尾翼が赤く塗られ、エンブレムが描かれている。

『コスモタイガー、発進!!』

古代はいつものカタパルトからでなく、格納庫からの発進(ヤマトは全箇所の修理のためドックに入っていたが、ガンドリークレーンで船体全体を持ち上げての作業に入っていたので発進口を開くことが可能であった)に新鮮味を感じつつ、出撃した。発進後すぐに機体を反転させ、ハワイの方角に進路を向けた。










 ―土佐 艦橋

「……そうか!それはありがたい!!」

ハワイ攻略司令部となっている土佐の艦橋は歓喜に湧きかえった。日本から藤堂参謀本部総長直々の肝いりで`ヤマト`艦載航空隊が参陣してくれるのだ。これほど心強い援軍はスーパーロボット以来だ。
通信兵は小躍りしながら喜ぶ。

「聞きましたか、提督!!」
「ウム。確か古代達は沖田先輩や土方先輩の教え子だったな……先輩方の忘れ形見か」

山南は自身が若かりし頃の士官学校時代の偉大な先輩達の忘れ形見とも言える逸材を自らが扱うことになることに因果のようなものを感じ、目を細める。今や若輩と言われた自分が次期連邦宇宙軍本星防衛艦隊司令の有力候補と言われるようになり、自身の世代が若者を導く番になった。提督の世代交代も進む事を改めて実感した。


(見てますか先輩方)

彼は地球連邦軍を率い、ヤマトに殉じた沖田十三、アンドロメダと共に壮絶な戦死を遂げた土方竜の肖像画に祈る。人類の勝利と自由を。


「敵海上戦力、接近!!」
「スタークジェガン隊とジャベリン隊、コスモタイガーを向かわせろ!!何としてもハワイへの補給物資到着を阻止しろ!!」

敵の補給隊の接近に艦内は慌ただしさを増す。補給物資が到着すれば敵は攻勢に出るやも知れない。それは何としても阻止せねばならない。直掩部隊の一部が分離して攻撃に向かった。



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