旧米軍部隊は旧国連時代末期の対立が仇となり、連邦軍内での発言力は決して大きいものではなかった。かつて最新鋭装備を揃え、世界最強と謳われた軍隊の面影はVFや慣習などに僅かに見られる程度になっていた。それを米国地域出身兵士達は自嘲し、ぼやいていた。

「全く、いつから俺たちは日陰者になっちまったんだ?」
「第二次大戦と冷戦の勝利に驕り、覇者としての地位に慢心していた……イラクの失敗で気づくべきだったんだ。だからあんな馬鹿なことを……」

彼等は出身地域の米国が21世紀頃に相次いだ失政と戦争終結後の政策の失敗、新興国の台頭で急速に衰退し、太平洋戦争から真の意味で復活した日本や新・大英帝国(21世紀中盤以後のイギリス連邦を他国はそう比喩していた)に世界の主導権を奪われる事を危惧し、連邦政府設立に関わりながら世界の主導権をかけて日本に挑んだ。だが、結果は太平洋戦争と正反対に、アメリカは連邦加盟国の支持を受けた日本に完膚無きまでに敗れ去り、米国出身者は連邦の要職から長年遠ざかる結果となった。長年の兵士らの働きでようやくその傾向は薄れてきているが、名誉回復のための苦労を強いることになったその当時の米大統領を恨んだ。

「さて……今日もいっちょやるぞ」

彼等はこの時期には旧式化して久しいはずのVF−11「サンダーボルト」を駆り、今日も哨戒任務を行なう。サンダーボルトもだいぶ老朽化してきたが、VF−25は制式採用間もない上に戦線の主力部隊に配備が優先されているし、現有最高水準機のVF−19は派生型が開発検討中の段階。VF−171は調達が打ち切られたので、回ってくる可能性は低い。それを考えるとまだまだ老朽機のサンダーボルトに頑張ってもらうしか無い。空へ舞い上がり、担当空域の哨戒を行なう。彼等の部隊名は第115早期警戒飛行隊『リバティ ベル』と言った。
イージスパック装備のサンダーボルトとその護衛機は担当空域を飛行する。偵察機のコールサインは「セラフィム」。因みにどこかの世界のガンダムと同じ名であるが、そもそもは最高階級の天使の一つの名であるので、偶然の一致である。

「こちら`セラフィム`。敵領空に入った。これより警戒飛行に入る」
「こちら`スローネ`、了解。そのまま飛行を続けろ」

彼等のコールサインはユダヤ・キリスト教の天使の位階を用いていた。(因みにスローネは基地のコールサインである)流石に地球の一宗教の事までは理解していないだろうとの考えで今回採用された。彼等は大胆にも敵領空へ侵入。基地の陣容を調べるべく、降下する。

「何っ、あれは……」
「どうした?」
「奴らはゴーストを使うつもりのようだ」
「ゴーストだと……まさかその基地にあるとすれば……開戦時に壊滅した第482戦闘航空団のものか?」
「ああ。カメラで確認中だが……機材の識別番号のマーキングなどから間違いない」
「SHIT!!なんてこった!!って……待て、普通は鹵獲機の塗装は変えるものだぞ」
「ああ。だが……見る限り変えていないようだ」
「?」

この戦争の開戦時は衛星軌道上からの急降下奇襲により欧州の空軍には戦わずして人員が壊滅してしまった航空団も多い。その内の一つにゴーストの運用部隊も含まれており、鉄人兵団はその機材を摂取。機密保持のための機構を無力化させ、自身の空軍に編入していた。兵団は機体塗装には無頓着なのか、連邦軍のそれのままにしてある。それが連邦軍の兵士たちの首をかしげさせた。

「レーダー欺瞞もそう長く持たん。これより帰投する」
「了解」

彼等のこの報告は連邦軍を震撼させた。『鹵獲されたゴーストの運用が間もなく行われる見込み』。並の有人機を遥かに凌ぐ性能を持つAIF−7Sがそのリミッターをカットさせられ、「マシン・マキシマム」の思想で一気に襲い掛かられてはVF−19Aなどの高性能機でようやく対抗可能に過ぎない。兵団が改造を加えていた場合はそれでも怪しい。そこで連邦軍の戦線はゴーストを完全に落とせる`機体`を要求し、上層部は新星インダストリーにメサイアを40機追加配備させた。ハワイ沖海戦やバジュラ戦でテストされた「トルネードパック」の正式生産タイプ付きで。元々YF−29の技術実証のために造られ、アーマード以上に高価な装備である故に現在は装着は大隊長・一部のエースパイロットのみが許された。黒江もその一人。駐屯地から拝借したVF−25Fにトルネードパックを装着し、いつでも発進準備を進めた。

「何ですか、そのゴテゴテした装備は」
「箒か。こりゃトルネードパック。VFの追加装備の中でも値段が飛び抜けて高いやつだ」
「え、ええっ!?そんな装備よくもらえましたね」
「これでも私は`魔のクロエ`だぞ、なめんなよ」

ISでの飛行訓練を終えた箒が格納庫に入るなり、VF−25Fの`ゴテゴテ`した装備に目を奪われる。赤椿以上にゴテゴテしている。特に旋回式連装ビーム砲がついているのが印象的で、主翼がカバーに覆われている。オーバーだと思えるくらいの重装備だ。人型に変形できるとは言え、`戦闘機`としては過剰と思えるほどだ。重装備の重量増に対応するためか、エンジンが追加で付いている。合計4発。しかも前方にエンジン推力を偏向できる回転式だ。凄いの一言。

−Gは緩和されるとは言え、大丈夫なのか?

「でもスピードがマッハ20以上で横滑りとかの急激な機動をとって大丈夫なんですか?」

ISは急加速などの急激な機動でもブラックアウトやレッドアウトに合うことは無いが、戦闘機は違う。この前の戦闘で見た「超高速での横滑り」などを行って、よくパイロットがGに耐えられるなと思ったが、それよりさらに高速を出せると言われると余計に心配してしまう。

「それなら大丈夫だ」
「あなたは……?」

格納庫にベレー帽とカメラを持った一人の青年が入ってくる。茶目っ気と不釣り合いなほどの雄々しさが同居したような雰囲気を纏っていて、どことなく不思議な感じを醸し出している。

「俺は一文字隼人。あるときはフリーのカメラマン。そしてまたあるときは`仮面ライダー二号`」

彼は言った。自身のもう一つの姿での名を併せて。「仮面ライダー二号」。一文字は何のためにこの場に現れたのであろうか。

 

「ん?これが新しいガンダムですか?」
「RX−99−3`ネオガンダム`。コスモ・バビロニア戦争の時に試作されていた機体の改良機で、F91以上の高性能らしいけど、きな臭い噂もちなのよコイツは」
「そうそう。シルエットフォーミュラとか言ってな」
「アニメとかだとみんなが努力して…みたいな印象ありますけど、兵器開発ってなんかこう……色々絡んでいるんですね」
「そういうもんさ。昔の戦闘機だって政治屋達の思惑に振り回されたケースは多々ある。軍の思うようにはいかないさ」

基地で格納庫を見学している篠ノ之箒を案内する加東圭子、そして仮面ライダー2号こと、一文字隼人は青と白のツートンカラーで塗られたネオガンダムの事を説明する。この時期にはネオガンダムに纏わる噂は軍内で有名であり、一文字隼人は普段の職業がカメラマンなので、そういう噂にも詳しい。乗りたがるパイロットはそういないとの事。しょうがないのでロンド・ベルの他のガンダムのパイロットがローテーションで乗り込む事が内定したとの事。

「ロンド・ベルってあの?」
「ええ。第二次ネオ・ジオン戦争以来の連邦の切り札。あなたの世界じゃアニメでで有名なあの部隊よ」
「なんか不思議な感じです」

箒も元の世界では子供の頃に織斑一夏に付き合ってロボットアニメを視聴していた事はあり、いちおう人並みに見ている。
姉の束もそういうものに興味があったので、姉妹でなんだかんだ言って、けっこうおもしろがって見ていた。
その時に見ていたアニメの中のものが本当に実現した世界であることがバルキリーやモビルスーツを見ていると実感が湧いてくる。格納庫に佇むネオガンダムはその悲劇的とも言える出自とは裏腹に、箒に2200年という時代を感じさせる材料としての役目を果たしていた。そしてネオガンダムの武器「Gバード」は赤椿に機構的側面で影響を及ぼす事になる。

 

− 月 フォン・ブラウン市 アナハイム・エレクトロニクス社 支社

「よろしいのですか、カレドヴルフ・テクニクスに技術協力など……」
「構わん。彼らも技術が欲しいのだ。そう、かつての我々のように」
「専務……」
「あの計画は影の計画だった……だが、あの計画をやらなければ我がアナハイム・エレクトロニクスは奈落へ転がり落ちるしかなかった。ジャベリンがなければ今頃はサナリィにモビルスーツ市場を独占されていただろうな」

アナハイム・エレクトロニクス社の専務は一年戦争後、連邦の兵器開発の一端を担ってきた同社の一年戦争後最大の屈辱を思い出す。ネオ・ジオン戦争が終わった後のこと。当時はクロスボーンバンガードやザンスカール帝国の台頭で連邦軍は彼らに対抗できる主力モビルスーツを求め、
小型モビルスーツを開発させていた。その内にジオン系の外観を持つ「MSA−0120」を制作したが、軍幹部達の前で開催されたコンペを兼ねた模擬戦で当時、台頭し始めた「軍戦略研究所(サナリィ)」が造り上げた「ガンダムF90」に完膚無きまでの敗北を喫し、
まさかの落選。サナリィはこの勝利を足がかりに軍へモビルスーツを納入し初め、あのコスモ・バビロニア建国戦争では連邦軍最強の名を欲しいままにした「ガンダムF91」や「クラスターガンダム」などの小型高性能機を輩出。
一躍、連邦軍の信頼を勝ち取った。アナハイム・エレクトロニクス社にとって「ぽっと出」のサナリィが自分たち以上のモビルスーツを造るという事実は屈辱以外の何者でも無く、
アナハイムエレクトロニクスは同社製の歴代ガンダムの現役復帰の際のレストアを行う一方で、技術面でサナリィに追いつくためにフォーミュラ計画の影(要するにパクリ)として、「シルエットフォーミュラ計画」を発動させた。
この計画はアナハイム・エレクトロニクス社の政治的事情も絡んだ複雑なもので、当時最新鋭のF90やF91、はたまたブッホ・コンツェルンの技術を非合法的な行動で入手し、フォーミュラ計画のガンダムを超えるガンダムを創ろうとした。戦史に名を刻んだZガンダムやZZガンダム、νガンダムなどの高性能機を多数輩出したアナハイム・エレクトロニクス社のフォン・ブラウン支社の事業部にとって、
これは社命をかけた活動とされ、やがて盗用技術と既存のノウハウを組み合わせた一機の機体が試作された。これがアナハイム・エレクトロニクス社内で厳重に保管されている「シルエットガンダム」である。外観は劣化版F91のような姿であるが、能力はほぼ対等とされる。そしてそれを経て生み出された「RX−99 ネオガンダム」はアナハイム・エレクトロニクス社の涙苦しい努力と政治的駆け引きで生まれたガンダムであり、
ここに至ってF91をも超えるガンダムとなったわけである。
アナハイム・エレクトロニクス社はこのシルエットフォーミュラで得られたビームの可変速技術などのノウハウを時空管理局と取引関係にある次元世界の企業のカレドヴルフ・テクニクスに有償提供。その技術は後に「ストライクカノン」として実を結び、スバルがそれを指摘するに至る。

このシルエットフォーミュラ計画は極秘とされたがため、巷のモビルスーツマニアの間で「何故それまで「RGM―109 ヘビーガン」のようなパッとしない小型モビルスーツしか作れなかったはずのアナハイム・エレクトロニクス社が、
いきなり「RGM−122 ジャベリン」のように、クロスボーンバンガードの誇るベルガシリーズをも超えるほどの戦闘力のモビルスーツを作れたのか」について物議をかもしていたりするとか。

 

 

 

 

 

 

−地球連邦軍 欧州戦線へ到着したロンド・ベル隊とドラえもんたち。
彼等は欧州戦線での初陣を思わぬ形で体験することになる。

ドラえもん達を乗せたラー・カイラムとその護衛艦隊が入港したのは旧・フランスのダンケルク港だが、そこを鉄人兵団の奇襲部隊が来襲。地球連邦軍は防戦もままならぬまま物量に押され、戦線を大きく下げざるを得なかった。D作戦の成功以来、勢いづく兵団は地球連邦陸軍と宇宙軍の防衛部隊を撃破していった。

「いたか!?」
「いや見つからん!」
「探せ!!あの艦さえ鹵獲すればこの周辺の地球連邦軍の戦力はグンと低下する!!」

兵団は一個連隊でダンケルクの港をほぼ抑えつつあった。兵団司令部にほど近いところながらも今まで地球連邦軍が抑えていたのはその強固な防空網のおかげであったが、兵団は予め数度に渡る大空襲でその能力を削いだ上で、今回の奇襲をかけた。空襲で能力を低下させていた地球連邦軍の防空網は兵団の奇襲に対応しきれず、陸戦兵力が少ないダンケルクの失陥はほぼ決定的となった。

ラー・カイラムらは港でメインエンジンのオーバーホールと各種弾薬や食料などの補給物資を積み込んでいる最中の出来事であり、港の要員達は作業用として第二の人生を歩んでいる旧式となったジムUを用いてまで、急いで補給物資の積み込みと出港準備を進めていた。

「補給物資の積み込みとエンジンのオーバーホールはまだか!!」
「あと2時間はかかります!!」
「ええい、まさか`ダンケルクの戦い`を自分達が体験する事になろうとは……」

ブライト・ノアは副官のメランのこの言葉に珍しく焦りを見せた。常に連邦軍を勝利に導いた彼だが、この守勢にはどうしようもない。艦載機の大半は整備中、かろうじて防戦に回せるのはアムロ・レイ専用のZガンダム三号機くらいだ。

『ブライト、俺が何とか時間を稼ぐ。発進まで持ちこたえさせてくれ』
『頼むぞ、アムロ』
『任せろ。アムロ、Zガンダム出る!!』

アムロは時間を稼ぐべく、νガンダムの予備機扱いとなっていた自分専用にカスタマイズと自身のパーソナルカラーリング(今回は青を基調とした白と青のツートンカラーであり、奇しくも後に自身が搭乗するHi−νガンダムと同じカラーリングである)が施されたZガンダムで出撃した。彼は意外にもZ系を好んでおり、Zプラスなどに専用機を用意させるほどの入れ込みようである。それが今回の出撃に繋がった。

 

 

 

 

 

ー欧州戦線へ赴いたドラえもん達は出発までの僅かな滞在時間でダンケルクの街を散策していたもの、鉄人兵団の急襲を受けていた。彼らはラー・カイラムへ帰還するため、逃げていた。

「こういう時は何が何でも逃げるが勝ちだよ!」
「でもそう逃げてもいられないぜ」
「わかってる、ええと……あれはないか、あれは……」

ドラえもんは慌てているためか、ポケットの中身を無作為に出しまくる。こういう非常時に慌てるとドラえもんは目当ての道具を出すのに一苦労する事が多い。その証拠にスプーンやらフォークやら骨付き肉などのまったく関係ないモノを出す有様。これにはのび太も呆れ顔であり、「慌てるとダメな奴」とまでいうのがおなじみの展開である。

「あった!のび太、これを使え!!秘剣`電光丸`〜!!」
「ああ、これはレーダーが付いてて自動的に相手の動きを察知し、電光のように隙を突くという……ん?`名刀`じゃなかったっけこれ」
「同じ会社のバージョン違い製品だよ。これは普通の電光丸より高級品なの」

ドラえもんは秘剣`電光丸`をのび太に投げ渡す。これはのび太が前に使った名刀電光丸のバージョン違い品。高級品であることを示すためか、名刀電光丸は名刀を銘打っており、その名の通りに多少は見栄えがいいもの、雑多なモノに見えたのに対し、秘剣電光丸は高級品であることを示すためか、実戦向けの形状かつ、切れ味もぐんといいと思わせる刃渡りを持っている。のび太は電光丸のレーダーに導かれるように兵団兵を電光の速さで細切れに斬り裂く。これはのび太の力ではなく、電光丸がのび太の体を動かしているためだ。そのためのび太の方が振り回されているようにも見える。

「す、すごい……秘剣というだけはある……」

この時の動きは剣術の達人である穴拭智子や黒江綾香が見たら驚愕する事間違いなしの動き。電光丸の高級品バージョンは意外な威力をここで見せたのだ。ドラえもん達はのび太が電光丸を使う一方で、ジャイアンは両手に空気砲を装着するという荒技を見せ、殿を務める。

「なんとかこれで時間を稼いでてやる!!お前らはさっさと進め!」
「ジャイアン、無茶だ!!戻れ!!」
「そうよたけしさん、一人なんて無茶よ!!」
「バーロー!!そんなこと言ってる場合か!!誰かが殿を務めなきゃどの内囲まれんぞ!!」
「ジャイアン!!」
「君ってやつは……」
「君の友情にはジンとくるぜ……」

ジャイアンは決死の覚悟で殿を務める。両手に空気砲を装着し、エネルギーが続く限り防戦を行なう腹づもりで吶喊していった。

「ジャイアンはどういうつもり!?」
「ジャイアンはぼくたちを逃がすために殿を務めるつもりだ。戦国時代の武将「島津豊久」が関ヶ原の戦いで行なったように。のび太くん、とにかく道を切り開いてくれ。ジャイアンの心意気を無駄にするな!」
「うん!!」

のび太は電光丸で敵を切り裂いて行き、道を切り開く。それは電光丸による力も多分に含まれているもの、縦横無尽に振り回し、(正確には振り回されている)、細切れにして粉砕していく。

「よし、いいぞのび太、そのままいけ!」

 

−ここで、ドラえもんの保護者的な一面しか見ていない人々は驚いていることだろう。ドラえもんは意外なことだが、普段見せる保護者的な側面の他に、実にフランクかつ毒舌な一面を多く持つ。それが戦争に対する考えにもよく現れていたりする。それはハワイ戦の折に鉄人兵団の殲滅を是非としている事をなのはに示した事で証明されている。この事にはのび太が後でフォローを入れている。のび太はこの日までになのはと話す機会を設け、ドラえもんの発言をフォローしてやった。

彼は「あの時はすまない。ドラえもんの奴、ああ見えて結構毒舌で、シビアなんだよ」と告げ、自身が自分自身の実力を以て、テストで生涯唯一の(その後の中高大も含め)100点を取った時の事を話した。

「ぼくがテストで一度だけ100点とった時なんて酷いもんだ。テスト見せた出合い頭に`ああ、とうとうカンニングしたか!!`だよ?あれはさすがにぼくも怒りたくなったよ」
「え、ええぇ〜!?」
「本当。ドラえもんはそういう奴なの。悪気はないんだけど。」

ドラえもんの毒舌な一面は意外に知られていない。口下手なところを併せた威力はのび太をも憤慨させる程。それはなのはに対しても発揮されたのである。

ドラえもんはジャイアンが殿を務めるのに答えるように、ダンケルクの街を逃げ惑う。ジャイアンは後退しながら空気砲を連射し、殿を務める。そしてその時、ダンケルクに向かう一人の男の姿があった。その男の名は本郷猛、またの名を仮面ライダー一号。

『ライダーァァァ……変ッ……身!!』

彼はそもそもは兵団とは別の、デルザー軍団の動向を偵察するために愛車を駆っていたが、ダンケルクを兵団が急襲した事で一人でも多くの人々を兵団から救うために戦いへ参戦した。爆音を轟かせて、図らずしもドラえもん達の前に姿を表す。

「あ、あれは……仮面ライダー……?」

ドラえもんは驚愕した。爆炎をくぐり抜け、目の前に颯爽と現れた一人の男は、以前出会った仮面ライダーストロンガーの仲間だと一目でわかる姿であったからだ。
その男が仮面ライダーの全ての始まりの男「仮面ライダー1号」であることはこの時のドラえもん達は知る由も無かった。

 

 

 

 

 

 

 

地球連邦軍の戦列に加わった仮面ライダー1号。彼はドラえもん達を守る形でダンケルクの街を疾駆する。

「あなたも……ストロンガーさんと同じ仮面ライダーなんですか?」
「私は仮面ライダー1号。君たちのことは後輩から聞いている。何とかラー・カイラムまで送り届ける。ここは任せてくれ」

1号ライダーはドラえもん達を守りながら鉄人兵団を蹴散らす。仮面ライダーの中では一番最初に改造され、途中で再改造されたとはいえ、2号を除く後発の仮面ライダー達に比べ身体スペックは劣っているはずだが、本郷猛という人間としての元々の素養と、歴代仮面ライダー達のリーダーシップを取るだけあって後輩たちをも凌ぐ獅子奮迅の活躍振りを見せる。

「トウ!!」

一号ライダー=本郷猛は最初に仮面ライダー型の改造人間の素体として選ばれ、改造された。一号ライダーが改造された当時はまだナチス・ドイツ残党のサイボーグ技術は確立されてからそんなに間がない頃であり、まだサイボーグへの改造手術に耐えうるように身体的に頑健であり、素養が高い人間が求められた。元々仮面ライダー型はショッカー(ひいてはバダン)が彼等の指導者として君臨する『大首領」の姿を再現させようとして最高技術で造られ、完成の暁にはショッカーの次期最高幹部として君臨させるはずであった改造人間なので、素体には開発責任者であった緑川博士が推薦した(……と言うよりはそうせざるを得なかったが)彼の愛弟子であり、当時『頭脳明晰で、スポーツ万能の文武両道の青年』として有名であり、その将来を嘱望されていた青年科学者「本郷猛」を被験者として改造した。その結果は言うまでもなく、ショッカーと`裏切り者`の仮面ライダー1号と2号の戦いは仮面ライダー側の勝利で終わり、ショッカーは自らの生み出した改造人間に滅ぼされたわけだが、それも計算のうちで、その後も大首領は時々の組織やその関係者達に歴代仮面ライダーを造らせ、ZXの登場を持って、プロジェクトは成功となったのは今や周知の通り。本郷猛はそれらの「始まりの男」とバダン側からも言われるが、その通りであった。一号ライダーは並み居る敵をその技で蹴散らしていく。技の豊富さに関しては異名を持って畏れられるほどの豊富さを誇り、まさに技のデパートであった。

「ライダー月面キィィ――ック!!」

その内の一例がこの技「ライダー月面キック」。体操の技の「ムーンサルト」を空中で行い、そこからキックに繋げる技。スーパー1の「月面キック」とも異なる技だが、威力はそれと比べても遜色は無い。兵団兵士のボディーを容易く貫き、空中で大爆発を起こす。その爆発を背に颯爽と地面に降り立つ仮面ライダー一号はのび太達にはこれ以上ない程にカッコよく見えた。特にのび太は幼少の頃からヒーロー番組が好きだったせいもあって、『ヒーロー番組からそのまま飛び出たような』彼に対して強烈に憧れを抱いた。

「か、カッコイイ……」
「のび太くんたら……こんな時にまで何いってんの」
「まあのび太の気持ちはわからんわけじゃないよ。一号ライダー、本当にカッコイイしね」

非常時にまでヒーローに対する憧れを見せるのび太に呆れ顔のドラえもんだが、スネ夫ものび太に同意する。一号ライダーの一騎当千・獅子奮迅ぶりはそれほどまでに目覚しいものであった。パンチやキック、はたまた投げ技を織りまぜながら一号ライダーはドラえもん達の逃げ道を切り開いていく。その姿はまさに「ヒーロー」そのものであった。

極めつけはこの投げ技。一号ライダーが現役時代に多用した必殺技。その名も。

一号ライダーが兵団兵士をガッシリ掴むと巨大な真空竜巻が一号と敵を中心に巻き起こり、相手がそれに巻き込まれるように吹き飛ばされていく。この技の名は「ライダーきりもみシュート」。

「ライダーァ―――きりもりシュ―――ト!!」

一号が放ったこの技は投げ技であるが、端からみると相手が竜巻に飲まれていくようにしか見えない。事実、ドラえもん達から見てもそのようにしか見えなかった。一号ライダーが巻き起こしたきりもみシュートの真空竜巻は余波だけでも凄まじい破壊力を持って、地面を抉っていき、地形すら変えていく。相手は高空から高速で地面に叩きつけられ、大爆発して四散する。「技の一号」の面目躍如であった。

 

 

 

 

 

 

−箒と黒江はそれぞれライダー二号に続く形でダンケルクへ急ぐが、それを阻止するかのように鉄人兵団の別働隊が立ち塞がる。

「やはり来たか……人間ども」
「貴様らッ……そこをどけぇっ!」

箒は吠えた。戦いへの躊躇いを切りきった、彼女自身の決意を表す叫びである。だが、彼−兵団の上級将校−は軽く鼻息で笑うような態度を見せ、悠然と2人の前に立ち塞がる。

「フッ……やってみろ。この私を倒せるものならな」

マントを纏った上級将校と思われる、形状が一般兵士と異なるロボットが黒江と箒の前に立ち塞がる。黒江達を足止めするために司令部から前線へ呼ばれた将校らしく、兵団司令部直属の上級将校であることを示す特殊なマントを羽織っており、そこから見え隠れする背部バックパックのスラスター形状が前線指揮官のそれよりも更に鋭角かつ高性能である事を思わせるものとなっている。これは黒江も初めて見る型だ。

「気をつけろ、箒。コイツは只者じゃない」
「わかってます……!」

黒江と箒は『彼』のもつ風格に圧倒される。彼は挑発するかのように、モノアイの目を一瞬光らせるアクションを見せ、戦闘を開始する。

 

 

−それはまさに一瞬の出来事だった。鈍い音が響き、箒の脇腹に強烈な蹴りを入れる。それはISのハイパーセンサーで反応速度や思考速度が高められていたはずの箒も、動体視力が箒以上に優れ、ウィッチとしての力を行使する黒江を以てしても、己が目を疑うほどの光景であった。

「ガ……ッ!!??」

箒はハイパーセンサーで強化された自身の反応速度を超えて敵が攻撃をかけた事、ISの防御をも「無視」し、肉体に直接攻撃のダメージを受ける事に驚愕する。ISにはシールド、「絶対防御」などの幾層にも渡る防御があり、普通は安々とダメージが操縦者まで行くことは殆どない「はず」である。だが、兵団の上級将校はそれを無視して箒に直接ダメージを与えた。

 

−凄まじいくらいの衝撃で、頭がクラクラして、気を失いそうになる。当たり所がもう少し悪ければ吐いてしまっていただろう。ISの防御が「効かない」なんて……

「くそっ……よくもっ!」

箒は態勢を何とか立て直すと、反撃しようと武装の「雨月」を引きぬくが……。なんと21世紀頃のカンフー映画でも見ないような光景がそこにはあった。なんと引きぬかれ、振りきられた雨月の刃の上に立っているのだ。その昔、中国かどこかの武術の達人は水上に浮かぶ落ち葉一個の上に『乗れた』というが、それと同じようなモノであった。

「馬鹿な……雨月の……刀の上につま先だけで乗っかるだと……!?貴様一体……!?」
「答えてやろう。私は前に中国戦線にいたことがあってな。そこでこの秘技を身につけたのだよ、フフフ……」
「んなっ!?ブルー●・リーだかジャッ●ー・チェンの映画じゃあるまいし、そんなことがあるはずが……」

「中国4千年の歴史っいってもこんなのあり……!?ロボットがこんな真似をするってのは……!」

VF−19Aに乗る黒江もこの「常識はずれ」な光景に、そういうのが精一杯であった。彼は昔から摩訶不思議な伝説を持つ`中国戦線`帰りである事をそれとなく仄めかし、自身の身につけた中国系と思わせる武術を誇示する。ロボットが中国拳法を身につけるというのも変な話だが、こうして見せつけられると信じるしか無かった。(ただしドラえもんズの王ドラという例があるので、あながち間違いでもないが)彼がなぜ中国拳法の奥義を使えるのか?それは……

 

 

 箒は鉄人兵団の将校と戦闘に入ったもの、中国拳法を使いこなす彼に苦戦を強いられていた。中国拳法の秘技はISの防御をも無視し、直接ダメージがいく。箒はISの防御がアテにならないことに焦りつつも剣を振るう。

「はああっ!」

彼女は勢い良く雨月を振るうが、またしても`蝶のように舞い、蜂のように指す`の要領で軽やかに避けられ、重い一撃を食らわせられてしまう。一口に中国拳法と言っても凄まじい数があり、22世紀まで存続している流派だけでも有に数百を数える。仮面ライダースーパー1=沖一也が習得した赤心少林拳もその流れを汲む武術。鉄人兵団の彼が用いるのは少なくても八極拳と少林系のモノを織りまぜたもの。そのため、接近戦では箒を圧倒するに値する動きを見せている。そして、彼はISのアーマーを攻撃で一部破壊するという芸当を見せた。信じられないが、これは現実であった。

「うあ……ッ!」

攻撃を受けた赤椿の腕部分の一部にヒビが入り、そこから装甲が砕ける。箒は己が目を疑った。`ロボットが拳法でISを破壊する`。これほど奇々怪々な事があろうか。

「何故だ、何故貴様は`気`を使える!!」

中国には気という考えがある。東洋医学などで有名であり、拳法でもよく耳にする言葉であり、概念である。鉄人兵団にも似たような概念は存在し、進化の過程で通常の生命体に近いその概念を顕現させる機構が備えられ、軍人の中には征服先で拳法を身につけた達人も存在する。その内の一人が彼であった。

「`気`か。我々にもそういった概念は存在する。だから地球の古の拳法の奥義も習得できたのだよ。小娘」
「何だと……!?」
「フフフ、私を倒したくば`シャッフル同盟`でも連れてこい。中国では彼らと幾度か相まみえたこともある」

彼はここでシャッフル同盟という単語を発した。シャッフル同盟とは歴史上の数多くの戦いや事件を陰から調停したという、地球人類最強の武闘集団。この時代においてはデビルガンダムを打ち倒した`ドモン・カッシュ`とその仲間たちの事を指す。戦いの様子を見ていた黒江はそのシャッフル同盟という単語にある出来事を思い出した。
「シャッフル……`シャッフル同盟`だって!?」
「知ってるんですか、綾香さん!?」
「噂だけはな。何年か前に`デビルガンダム`とかいう危ないガンダムが事件を起こした時に事件の解決に大きな役割を果たしたとかいう、素手で人間超えてる凄い格闘家達の集まりで、ある意味スーパーロボットに近いガンダムを使うとかなんとか……」

それはガンダムファイトという競技に使われるガンダムの事である。その歴史は一年戦争時からで、ファーストガンダムの活躍に触発されたコロニー群の一つで、モビルスーツの民需転用のテストも兼ね、開催が中断されたオリンピックの代わりに行う大会として、また一年戦争後の地球圏におけるコロニー間の自治圏を与えるテストケース代わりに数年毎に行われる代理戦争的な側面を併せ持つ大会である。出場経験者の中には一回、コロニーを放逐された後に宇宙で修行し、壮年になってから地球圏に舞い戻って改めて優勝した人間もいるとの噂である。

「そうだ、彼らは我々の最大の障害の一つでもある」

そう言うと、彼は構えを見せる。すると。

「ほう。居ても立ってもいられなくなったか、二号ライダー!」
「そうだ。君たちはダンケルクに行け!ここは俺が引き受ける」
「で、でも!」
「何、俺は負けはしないさ。`仮面ライダー`だからな」

仮面ライダー二号である。黒ががった仮面と赤いマフラーをなびかせ、二号ライダーはサイクロン号のシートをトランポリン代わりにし、空高く舞い上がる。スカイライダーやZXと違い、飛行能力は持っていないが元々バッタの能力を持つ改造人間として創りだされただけあって、滞空時間は長い。その間に二号はドラえもんの道具をリバースエンジニアリングする形で復元された「タイムふろしき」を黒江に向けて投げ、黒江もキャッチボールの要領で道具の効果を発動させないように受け取り、それをさらに箒に渡す。

「箒ちゃん、ソイツでISの損傷は直せる!使い方はわかってるね?」
「は、はい。子供の頃に漫画で見てましたから」
「よし……」

二号は箒らをダンケルクへ向かわせるため、単身で`彼`に立ち向かった。それは傍から見れば無謀そのものかも知れない。……だが、それでも不思議と、彼が負けるような気は箒も、黒江も感じなかった。単にこの世界で伝説として語り継がれている「仮面ライダー」という英雄的存在だからという事ではなく、『一文字隼人』という一人の人間を信じる。ただそれだけであった。

 

 

 

 

 

 

-ドラえもん達は仮面ライダー1号に守られながらひたすらダンケルクの町をひた走っていた。一号ライダーは単身ながらも奮戦し、ドラえもんたちを守る。

「ライダー返し!!」

相手を抱え上げて跳び上がり、地面に叩きつける技を見せる一号。これは要するに一本背負いを空中で行うようなものである。高空から一気に叩きつけるので、相手の装甲は衝撃に耐えられず、大爆発が起こるのは必至。地面に大穴が開き、軽くクレーター状になる。

「これ……ちょっとやりすぎじゃ」

しずかは思わずそう漏らす。一号は立ち塞がる者は全て打ち倒す勢いで戦っているが、その修羅を思わせる戦いぶりは頼もしい反面、恐ろしさをも時に感じる。男性陣はヒーロー番組か何かを見ているように張り切っているが、女性であるゆえに一歩引いた視点からモノを考えられる。こうしたしずかの行為が窮地を脱するきっかけになった事も多い。それ故に一号ライダーの強さに憧れる反面、敵を全て倒していいのだろうかという疑問も浮かび上がる。無論、一号ライダー=本郷猛とて全てを無意味に倒して行っているわけではない。兵士は情報を全て伝えられているわけではないので、分隊長、小隊長以上の隊長格を探していた。

「一号さん、何をしてるんですか?」
「隊長格を探している。兵士には詳細な情報が伝えられているとは限らないからね、分隊長や小隊長格なら何かしているはずだ。何か見分けるポイントがあればいいんだが……」
「たしか隊長格や参謀とかはマントを羽織ってました。兵団の姿があの時と変わってないといいけど……」
「そう言えばそうだね。あの時……司令官の金色のやつと一緒にいた奴らは全員マントを」
「ありがとう、これで捕まえればいい奴がわかった」
「ストロンガーさんから聞いてないんですか?」
「直接聞いたわけじゃないからね」

一号は内心でストロンガーのガサツさに頭を抱えた。正義を貫く一本気なところはいいのだが、後輩達の中で有数に荒っぽい性格の持ち主である。その点が今回は不利に働いてしまった。「やれやれ」とため気をつく一号こと本郷猛であった。

 

 

 

−各戦線で急速に近代化が推し進められたストライカーユニット。そして未来世界でそれぞれ直接の関係はないもの、未来的発展系とも言えるIS(インフィニット・ストラトス)の情報がもたらされたのは朗報であった。篠ノ乃箒の赤椿は地球連邦軍にとってはパワードスーツの開発に、連合軍にとってはストライカーユニットの近代化の方向性を定めるのに大いに役に立ったのである。

−さて、箒たちは仮面ライダー2号に後を託し、ラー・カイラムの救援に訪れた。ラー・カイラムは発進準備を急いでいるもの、エンジンの整備や温めや物資の積み込みなどに時間がかかっており、それを援護すべくアムロ・レイが専用のZガンダムで奮戦しているといった状況であった。

「援軍か?……!?なんだあれは」

アムロはモニターに映る箒と赤椿の姿に一瞬、驚く表情を見せた。ISの事は連邦軍のデータベースに登録されたもの、本物を見るのは初めてである。一見すると「ストライカーユニットを纏った魔女よりはマシな、全身に装甲をつけただけ」に見えるので、アムロの驚きも当然であった。

『聞こえるか、アムロ』
「綾香くんか?その子は?」
『詳しくはデータベースを見てくれ。今はアイツの紹介どころじゃなさそうだしな』

VF−19で戦場に駆けつけた黒江は戦闘中である故に箒の紹介は後にし、そのまま防空戦に加えさせた。既に赤椿は連邦軍のIFFに反応するように改良されているので誤射の心配はない。そしてラー・カイラムから発進する2つの機影があった。ハンナ・ウルリカ・ルーデル(ストライカーユニットは専用塗装がなされたFw 190D-9)と高町なのはであった。

「大尉!」
『なのはか!ん!?ルーデル大佐?ラー・カイラムに乗ってたんですか?』
『ああ。ハワイ海戦に参加した後、コイツの面倒を見ていてな。地上の迎撃は任してある。ここの指揮は取らせてもらうぞ。いいな、アムロ大尉』
『了解です』

こうしてルーデルは臨時にアムロ達を配下とし、防空戦の指揮を取ることになったわけだが、なのはの声に箒は内心驚愕の至りであった。一言だけ聞いただけではあるが、幼さを除けば、殆ど実姉の束と同じ声色をしているのだ。
それは実の姉妹である箒でさえ間違えそうになるほどで、箒は「わかってはいるが……」を地で行くかのように、驚きを隠せなかった。

(あの子の声、姉さんに似ている……いや、似てるなんてものじゃない、殆ど同じだ。偶然なのだろうか……?)

驚愕を胸に秘めながらも箒は彼女らと共に戦列に加わった。そしてなのはは箒が見せる剣術に見惚れるのは言うまでもなく、またまたルーデルと黒江の苦労が大きくなるのであった。

 

 

 

 

−同時刻 クライス要塞内部

「ぬうう!RXめ……」

クライシス帝国攻撃兵団幹部の一人「ボスガン」は仮面ライダーBLACKRX=南光太郎に対し味わった屈辱を晴らすことに執念を燃やしていた。彼はハワイ海戦の際に抜け駆けをしたのをジャーク将軍に強く戒められ、死の苦しみを味わった。その雪辱を伺っていた。

「今度こそはRXの息の根を止めてくれる!!」

息巻くボスガン。彼は配下の兵士チャップにRXが進化・変身した「RX・ロボライダー」の装甲をも切り裂く威力の刀剣を造らせていた。全ては南光太郎に味わされた屈辱を晴らすために。そのためには貴族としての誇りも擲つ。そのためこのような手段に出たのだ。

「ボスガン様、怪魔稲妻剣が完成致しました」
「おお、遂にできたか!これでRXを……ロボライダーを倒せる」

ボスガンは怪魔稲妻剣を鞘から引き抜く。その剣は不気味な雷を纏った、禍々しい形状の剣であり、クライシス帝国の刀剣技術が産み出した恐るべき剣であった。その威力はロボライダーをデスガロンなどの過去のロボットや獣人などから取った交戦データで再現を試みた「擬似ロボライダー」(装甲は本物とほぼ同じ)を一刀両断するほどの破壊力を見せた。

「素晴らしい!!怪魔稲妻剣……」

剣に見惚れるボスガンであったが、見落としている点があった。それはたとえロボライダーを打ち破ったとしても、RXには物理攻撃がほぼ通じない最強の切り札「バイオライダー」が残っている事を、バイオライダーも剣をもっており、超絶的な剣技を振るう事を。有頂天になる彼にはその当たり前な所が見えていなかったのだ。ボスガンはジャーク将軍の裁可を取り付けた上で、バダンへの牽制を兼ねて、欧州に向かう。

「ボスガン、欧州に向かうそうだな」
「ガデゾーンか。ふん。この剣でRXと7人ライダーを血祭りにあげるのだ」
「その剣にご満悦のようだが、せいぜい気をつけるんだな」
「それはこの私に対する忠告か?」
「どう取られようとお前さんの勝手だが……霞のジョーしか斬れませんでしたじゃ話にもならんぞ」

ガデゾーンはボスガンのこの先の運命を予見するかのように、意味深な台詞を残し、ボスガンと別れた。ボスガンは彼の忠告に耳を貸す事無く、欧州へ向かった。

一方、南光太郎もクライシス帝国の邪悪な気配をキングストーンの力で感知すると、霞のジョーと共に欧州へ向かった。

空港では穴拭智子が出迎えた。

「光太郎さん、ジョーさん、こっちです!」
「智子ちゃん!」
「オッス!」

光太郎達はそれなりの荷物を持ってやって来た。そのためスーツケースは智子が運んでいた。

「それにしてもなんでまた光太郎さんが?もう7人ライダーが来てるっていうのに」
「実はアニキがクライシス帝国の気配を感じるとかでよ、しょうがないから航空券を予約してここに来たってわけだ」
「例の`クライシス帝国の仕業だ!!`って奴ですか」
「それだよそれ!こうなるとアニキは居ても立ってもいられなくなるからな」
「BLACK時代からのクセでね。こうなると動かずにはいられないんだ」

南光太郎は太陽の力を持つ神秘の石「キングストーン」を埋めこまれており、ゴルゴムの世紀王であった。
その関係で悪の気配には歴代の仮面ライダーの中で一番敏感であり、BLACK時代には何でもかんでも「ゴルゴムの仕業だ!!」」という名言を残している。
それはゴルゴムが滅び、主敵がクライシス帝国やバダンになっても変わりはないのだ。取り敢えず智子が運転する連邦軍制式の装輪装甲車に荷物を積みこんで運転することになった。

 

−南光太郎とボスガン。両者の対決は近い。ボスガンの涙ぐましい努力は実を結ぶのであろうか。

面ライダーBLACK RX=南光太郎はクライシス帝国の気配を察知する形で欧州へ来訪。7人ライダーには事後承諾してもらい、欧州のとある連邦軍基地を訪れていた。
基地を智子と共に歩いていると、1944年から来ているウィッチ達から「科学がこんなに発達したのに、有人戦闘機が主力を未だ占めているのか」という声が聞こえてきた。智子と光太郎は彼女らにこう教えてやった。

『無人で戦争やるようになったら、それは子供の遊びと何ら変わりはない。`ここ`の歴史でも幾度も有人戦闘機の存続が危ぶまれたが、全て実戦の戦訓やパイロット達の努力で消えた』と。それは実際、過去に政治家などによって提唱されたもの、全て否定された。ミサイル万能論にしてもベトナム戦争で否定され、最近の議会の左派が提唱した「無人戦闘機万能論」もイサム・ダイソンの駆る「YF−19」とガルド・ゴア・ボーマンの「YF−21」が無人戦闘機最新鋭かつ、最強の機体であったゴーストを撃墜したことで、無人戦闘機の危うさが露呈し、主戦力とする考えは否定され、根底から崩壊した。その結果、有人戦闘機は登場化から300年近く経っても空の戦いの花形で在り続けているのである。

「自慢じゃないけど、俺も子供の頃はけっこう飛行機とかのプラモ作ってたクチでね。こういうことも一応知ってるのさ」
「へえ。意外ですね。サッカーに詳しいからそっち方面かと」
「大学じゃサッカー部だったんだ。それでサッカーは詳しいのさ」
「ん?と、言うことは……大学は卒業したんですか?」
「ああ。ゴルゴムと戦ってた時も行ってたから半年前には卒業してるよ。今はおじさんの会社でヘリのパイロットやってるよ」
  
南光太郎は改造時19歳。その当時に大学二年生であり、それから二年ほどが経過した今では大学は卒業し、叔父(父方か母方であるかは不明)一家のもとに身を寄せ、叔父が経営している航空会社へ就職している。歴代仮面ライダーたちの中でパイロットを職業としているのは珍しく、(ZX=村雨良がパイロット資格を保有しているが、本業ではない)先輩達からもそれをネタにいじられることが多いとか。

「でも、こうして戦闘機が並んでるのは男としてはロマン感じるよ」

それは飛行機が軍事の花形となってから男子が抱く共通のモノ。光太郎も例外ではなかったようだ。基地に並んでいる戦闘機は主にコスモタイガーUだが、零戦二一型を思わせる銀色の塗装の物と、大戦後期の日本軍機共通塗装の緑色主体の機体が入り混じっている。これは制式塗装が後者へ替わったことで塗り替えが進んでいるせいである。

この時、智子は爽やかでありながら、熱血ぶりも併せ持つ好青年を地で行く南光太郎に仄かではあるが、知らず知らずの内に好意を抱いていた。以前から百合疑惑が持ち上がっており、黒江や加東などの戦友や、1944年に陸軍航空部隊の重鎮となっていた先輩等からからかわれていた。1939年当時に智子が男と勘違いしていた飛行脚技師「糸河衛」(`ここ`ではかの糸川博士に相当)と破局してからは迫水ハルカやジュゼッピーナ・チュインニに迫られ、ハルカとは隊を離れるその日までやられた。その関係は御坂美琴と白井黒子の関係にとてもよく似ており、ハワイ戦のおりには共通の境遇を持つ美琴に同情された。なので智子としては光太郎と話していると、久方ぶりの`まとも`な何かが込み上がってくるのに安堵してもいた。

(よかったぁ〜!あたしにもまだ普通のアレあったんだ〜!!)

……と。`ノーマル`を自称してきた智子としては嬉しいかぎりである。その様子を黒田那佳に観察させている加東圭子は黒田からの報告にほくそ笑んだ。

「フフッ、智子の奴も面白いもんだ」

黒田から手渡された報告書に圭子はほくそ笑んだ。彼女としては面白いネタを掴んだ事に小躍りしたいようだ。

「少佐、笑っちゃいけませんって」
「分かってるわよ、那佳」
「光太郎さんに話しますか?」
「面白いからしばらく黙っておきましょう。で、真面目な話だけど、クライシス帝国の動きはどうなの?」
「クライス要塞からボスガンと怪魔獣人の出撃が偵察機から報告されてます。今回は獣人大隊のようですよ」
「まいどお馴染みの`最強戦士`のバーゲンセールか……いい加減に飽きてきたわ。マリバロン……あの女狐には煮え湯飲まされたから一発やり返したいんだけど……今回はボスガンか」

実は圭子、欧州へ渡る前にクライシス帝国と一戦交えていた。その際にマリバロン率いる怪魔妖族大隊に煮え湯を飲まされるような敗北を味わっており、RXに窮地を救われている。他に智子や黒江、黒田も既にクライシスとは一戦交えているが、彼女らの場合は比較的取っ組み合いやすいロボット大隊や異生獣大隊であった。圭子の場合は相手がクライシス攻撃兵団の紅一点であるマリバロン指揮下の大隊であったのと、その際にマリバロンに直接「光太郎はともかくも、こんな小娘などに〜」と侮られてしまったため、一発マリバロンにぶちかましたいのだ。

「アイツは貴族でプライド高い割にはセコイですからね。光太郎さんにどんな手で来るのか」

黒田はボスガンをこう評した。一騎打ちを望む面がありながら怪魔獣人に助力させるというセコイところも見せるボスガンは黒田としては`ムカつく`そうだ。

「それはアイツ次第ね……」

そこに来客が現れる。それはあまりにも突然の来客であった。

「!?」
「貴様、ボスガン!」
「久しいな小娘共」

そこにはいつの間にかボスガンが現れていた。敵地に現れるとはなんとも大胆不敵である。彼の隣にはカメのような怪魔獣人が控えている。

「これは怪魔獣人大隊最強の戦士`ガイナギンガム`」
「コイツに光太郎さん……RXと戦せようと?」
「私はクライシス皇帝陛下から`ナイト`の位を賜っている。貴様らを倒す程度、怪魔獣人の手は借りぬ。一対一で決着をつけてくれる。無論、RXとて同じだ」

圭子は銃で、黒田は剣で、それぞれボスガンと対峙する2人。ボスガンは単なる戦力の誇示のために現れたのか。それとも?

「RXへ伝えておけ。この私が決闘を申し込むとな」
「待てっ!!」

圭子と黒田が追おうとするが、何処へとボスガンは姿を消す。2人は光太郎が来て次第、このことを伝えるようにし、クライシス帝国への対応を急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

−グレートマジンガーとマジンカイザー。本来ならマジンカイザーの役割は光子力研究所が予てより開発(時間短縮のため、大破したマジンガーZのフレームを流用・改造しての建造)中のゴッドマジンガーが担うはずであったが、カイザーが予想を遥かに超えた超高性能を発揮した為に、結果的に完成に遅延が出ている(本来ならハワイ戦に投入予定であった)ゴッドマジンガーの役割をカイザーが吸収した形となった。グレートマジンガーは実はゴッドマジンガーのプロトタイプであったことが兜剣造博士から甲児たちへの手紙で明らかにされ(ミケーネ戦に備えて造られていたのは変わりないが)、そこに記された事実から、ゴッドマジンガーへの政府の期待が大きかった事が伺える。

「甲児君、どうしてゴッドマジンガーの完成が遅延を?」
「ああ、動力源の反陽子エネルギーの制御が上手くいかないんだよ。エンジンの反陽子炉は試作段階の域を出ないし……パワーも今のままだとグレートマジンガーと大差ないしね」
「本来はどの程度を想定しているんだ?」
「マジンカイザー並かそれ以上を想定していたらしいんだけどよ、予想以上にエネルギー制御が難しいのがね」

ゴッドマジンガーは現在、かつてミケーネの攻撃で大破したマジンガーZのフレームをベースにグレートマジンガーで培われた技術を投入して生み出されるはずの魔神で、完成の暁には`鉄の神`との異名を持つはずのマジンガーであった。完成予想図はマジンカイザーに近く、カイザー同様に胸にマークがあるが、位置が放熱板の上になっている。パイルダーは当初は「マシーンウル」という名の獣型ロボットに変形できるタイプで開発されていたが、所員から「敵方であったドクターヘルの真似事をしてどうする」という声が出たために急遽変更となり、グレートマジンガーの「ブレーンコンドル」をベースにして開発し直した「ゴッドファルコン」という戦闘機型で落ち着いたという。カイザーの出撃前の弓教授曰く「パイルダーこそ完成したが、肝心の本体が完成しないのでは……」という事。この反陽子炉の出力安定の課題は、後にフェイト・T・ハラオウンが異世界の調査でその世界のスーパーロボットとその操縦者と出会い、その動力原理を護衛のために彼女に同行していた兜甲児が解明するまで解決が持ち越される。それはこの年から数年後のことであった。

甲児と鉄也は戦線に合流し、補給などを受けた後に欧州で確認されていた`真紅のゲッタードラゴン`に襲われたウィッチ達の救援に赴いた。それはグレートマジンガーが先陣を切った。

 

 

−欧州 旧イタリア付近

ここに2人のウィッチがいた。シャーロット・E・イェーガーとフランチェスカ・ルッキーニである。彼女らはシナプス率いる艦隊が未来へ帰還する際に501が解散した後にアフリカ戦線行きの辞令が降っていたが、その前に先手を打って休暇をとっておき、未来へ旅行に出かけた(艦隊が帰るのにそのままひっついていった)。後にシャーリーがバルキリーを動かせる様になった要因の一つはここにあった。この時はルッキーニも一緒であり、2人が未来世界で行動するためのお膳立てはジュドー・アーシタとシーブック・アノーがしてくれた。しかし彼女達も運悪く、戦いの連鎖は2人を飲み込んでしまった。ルッキーニが`未来のロマーニャが見たい`といい、2人は旧・イタリア地域に足を運んだのだが、同地域で活動を行なっていたあしゅら男爵の活動を目撃してしまったのである。

『ハハハ!!見るがいい小娘共。これが貴様らに絶望をもたらすモノだ!!』
「どういうことだ、真っ二つ野郎!それにそのマシンをどうやって手に入れた!?」
『フッ、貴様らに教える義理はない。ここで死ぬのだからな』
「それはこっちのセリフだよ!!」

あしゅら男爵は勝ち誇るように真紅のゲットマシン「ドラゴン号」の操縦桿を握る。巴武蔵のクローンを他のゲットマシンに乗せて飛行し、ストライカーユニットであしゅら男爵を追うシャーリーとルッキーニの言葉に答える。そう。竜馬達が見せたのと同じ合体―『ゲッターチェンジ』を以て。

あしゅら男爵は意気軒昂と叫ぶ。このゲットマシンの合体コードを。それはこの世界には一機しか存在し得ないはずの不滅のマシーン。その名も「ゲッターロボG」。

「チェェンジ!!ゲッターァァァ……ドォォラゴォォォンッ!!」

―ゲッターロボG。それは初の当初からの戦闘用ゲッターロボ。ゲッター線増幅炉で初代の10倍の出力を誇り、不滅のマシーンと称された。だが、それは「この世界」での話。別世界では侵略者達の再来を恐れた早乙女博士により「ある目的」のためにザクやジムも真っ青な数で大量生産されていた。量産機のため、一体一体のスペックはワンオフの高性能モデルである竜馬達のゲッタードラゴンにはカタログスペックは及ばない(初代ゲッターよりは圧倒的に性能は良い)が、あしゅら男爵の駆っているこの個体はカスタムが施され、この世界のゲッタードラゴンに近い性能を有していた。

合体が完了し、その姿を見せる`量産型`ゲッタードラゴン。竜馬達のそれと比べると、オリジナル機がヒーロー然とした体形であるのに対し、それはマッシブで骨太な体格を持っていた。顔つきも鋭角さが増しており、悪役ロボと言われても違和感が沸かないほどの面構えであった。カラーリングもオリジナルがわりかしヒーローメカらしく赤を基調としつつ、3色で塗り分けられていたのとは対照的に前身が真紅で彩られていた。

「んな馬鹿な!?ゲッターロボだって!?」
『そうだ。この私が苦労して手に入れたスーパーロボットだ!!そのようなヒノキの棒でゲッターに勝てると思っているのか』
「くぅっ!!このぉっ!!」

ルッキーニが手に持っている12.7ミリ機銃を魔力強化を加えて撃つが、合成鋼Gのボディには通じず、弾丸は尽く掌で弾かれる。あしゅら男爵に言わせればウィッチ達の火器など蚊ほども効かないのだ。
その証拠に弾丸が当たっても掌の装甲は僅かな凹みさえ見受けられない。装甲も桁外れだ。ドラゴンの肩から鋭利な両刃の戦斧が飛び出し、それをドラゴンは勢い良く投げる。

「と……トマホークブーメラン!?そんなの反則だよ〜!?」

正確にはダブルトマホークブーメランである。両刃の刃を持つのと、初代ゲッターのそれと明確に区別をつけるためである。ダブルトマホークはストライカーユニットの魔導エンジンを全開にして逃げるシャーリーとルッキーニを追う。通り道にあるモノを全て高速回転で切り裂きながら飛んでくる。(2人は501での最後の戦いで真ゲッターロボの戦いを見ているので、ゲッターロボの武器は把握していた)

「オイオイオイィ〜!?ビルを切り裂いて飛んでくるなぁ〜!!」

シャーリーは愛機のストライカーユニット「P−51D」の速度を全開にして(時速703qほど)ダブルトマホークから逃げる。ビルの谷間をくぐり抜け、オーバーブーストも使って必死に逃げるが……。

−えっ!?

`プスン`とマーリンエンジンから不吉な音が響き、黒煙を吹き出しながらエンジン回転が急速に落ちていく。

「ど、どうしたんだ!?くそぉ……回れ、回れっ……頼む!!」

だが、シャーリーの願いと裏腹にマスタングのエンジン出力は上がらず、逆に見る見るうちに失速していく。これは激戦で酷使された`P−51D`のマーリンエンジンが度重なる最大出力の連続運転に耐えられず、(あまりのエンジンの回転でマーリンの冷却能力を超えてしまった)焼き付きを起こしたためであった。整備は完璧にしてあったはずの愛機の突然の悲鳴。シャーリーは不測の事態に対応しようと必死になるが……

迫るダブルトマホークブーメラン。魔力シールドでもあれほどの大質量攻撃には耐えられないだろう。シャーリーはできることをして目を閉じて祈る。

「シャーリーぃぃぃぃっ!!」

ルッキーニが必死に向かうが、もう間に合わない。泣きながらシャーリーの名を叫ぶ。しかし。その時だった。ルッキーニの必死の叫びが天に通じたのか、まるでギリシャ神話の最高神にして雷神「ゼウス」の裁きの雷のごとき雷鳴が轟く。天から降り注ぐ雷鳴がダブルトマホークを打ち砕き、シャーリーを救う。そして一面の雷雲だったのが晴れ、その主が姿を現す。まるで雷をその手で操るかのような一体の鉄の「偉大なる勇者」。漆黒のボディと腕に持つ剣は神々しささえ感じさせ、全知全能の神のような印象を受ける。

「何……アレ……神様…?」

ルッキーニはそう漏らす。余りの神々しさにそう感じたのだ。そう思うのも無理ないほどにグレートマジンガーの勇姿は格好の良いものだった。

 

『現れおったか……`剣鉄也`、そして`グレートマジンガー`!!』

ゲッタードラゴンを駆る、あしゅら男爵がその名を名指しで叫ぶ。それは一体の偉大なる魔神の降臨を指し示す。かの宿敵「マジンガーZ」の正当な後継者「`偉大な勇者`グレートマジンガー」。そして……。

 

『ルストトルネード!!』

今後は何者も吹き飛ばす暴風が吹き荒れ、ゲッタードラゴンを数十Mは吹き飛ばす。そして紅の翼をはためかせ、最強の魔神が舞い降りる。

『ふはは……待ちかねた……、待ちかねたぞぉぉぉぉ!!かぶとこうじぃぃっ、そして、そして…そして!!魔神皇帝`マジンカイザー`よぉぉぉぉっ』

あしゅら男爵は宿敵に対しての宣戦布告とばかりに叫ぶ。兜家は主の野望の最大の敵。そして自らを黄泉国へ送った因縁の持ち主。マジンガーZとグレートを超える魔神を駆りし青年に。

『それはこっちのセリフだぜ!!てめえまで生き返ったのか。だけどいくら蘇っても、何度でも俺とカイザーが倒してやるぜ!!俺や鉄也さんとの因縁に関係ない女の子まで巻き込みやがって!!もうゆるさねぇ!!』

甲児は吠える。そして腕には既にカイザーブレードが握られている。完全に殺る気だ。

『見せてやるぜ!!神さえ恐れねえ大馬鹿野郎共には……』
『思い知らせてやる、マジンガーの恐ろしさをな〜〜!!』

二体の魔神に呼応するかのように、地中から現れた量産型ゲッターロボG(ゲッターライガー)の大群が取り囲む。それにも関わらず、二人は闘志を失わない。

『覚えておけ、スーパーロボットというのは……』
『人間の心が合わさって初めて成立するんだよ!!』

二機の魔神は剣を手に大軍に突っ込む。その暴れようはまるで大昔の一騎当千の剣士だか騎士だがを想起させる。大軍に怯むこと無く、自分達のために戦ってくれる2機のスーパーロボットは不時着したシャーリーを介抱するルッキーニにはこれ以上無い無敵の援軍……言わば『鋼の救世主』にも思えた。鉄の巨体の後ろ姿はそう2人に暗示していた。

−乱れ飛ぶ必殺武器。何物も砕く雷を放つ二大マジンガー。

二人は叫ぶ。その合体技の名を。

『ダブルライトニングバスター!!』

トールハンマーブレイカーとサンダーブレイクを合わせた雷は御坂美琴の放つ「雷撃の槍」を思わせるほどの電流を以てゲッターロボGの軍団を薙ぎ倒していく。魔神の名に恥じない攻撃は戦場に舞い降りた`最強の戦士`であることをシャーリーとルッキーニに示していた。

「す、すげえ!真ゲッターもそうけど、こいつらも凄すぎるぜ……」
「うん!いけいけぇ〜!!」

スーパーロボットの力の凄まじさ。それはまさに神。ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケは真ゲッターロボを「あれほどの力を人間が持っていいの……?」と称し、ある種の恐れすら抱いたが、そうでもなければ地球は守れない。そう。スーパーロボットの存在意義は人々にとっての希望であるのだから……。

 

 

 

『ファイヤーブラスター!!』

マジンカイザーの乾坤一擲の最大級必殺技が炸裂し、ゲッタードラゴンを消滅させていく。
その威力はマジンガーZのブレストファイヤーとグレートマジンガーのブレストバーンを併せた攻撃の更に数十倍。
その温度は数十万度にも達し、ロボライダーでも無ければ耐えられない。しかもこれで標準出力なのである。それはマジンカイザーのパワーの証明であった。

『サンダーブレイク!!』

グレートマジンガーお得意のサンダーブレイクによる攻撃である。この場合はグレートマジンガー自身の度重なる改良で攻撃力が以前より増強しており、`オリジナル`より装甲材などの性能が劣るゲッタードラゴンに耐えられる道理はなく、次々に爆発していく。

ダブルマジンガーの攻撃力は正に一騎当千といえるものだが、雲霞のごとく湧いて出てくる真紅のゲッタードラゴンの数は圧倒的である。その気になれば全て倒せるが、今回はシャーリーとルッキーニの救出であり、敵を討つことではない。戦略的撤退を行うべく甲児は目眩ましも兼ねて、
ルストトルネードとギガントミサイルを放ってから腕に両名を載せて戦場を離脱した。

「撤退したか……フン。まあいい。今はコイツらの真の姿を見せる時ではない」

あしゅら男爵は自身のゲッタードラゴンを駆り、配下のゲッター軍団に引くように命令を発する。ゲッター軍団はあしゅら男爵の意のままに動き、ゲットマシンに分離してその場を去っていく。ゲッター軍団の真の姿とは何か?それはまだ明かされるべきではない。

 

 

 

 

『大丈夫だったかい』
「あ、ああ。助けてくれてありがとうな。私はシャーロット・E・イェーガー。それでそっちがフランチェスカ・ルッキーニ」
「シャーリーを助けてくれてありがとう〜!!」
『お安い御用さ。君たちの事はリョウ君から聞いている。俺は剣鉄也』
『そんでもって、俺が兜甲児。これからよろしくな』

甲児と鉄也はそれぞれシャーリーとルッキーニに自己紹介を済ませると、流竜馬達から事情は聞かされていると告げる。しかし彼らも何故ゲッターロボGが大量に用意されたのか、その理由は分からない。

『あれはゲッターロボGというゲッターロボで、君たちの見た真ゲッターロボの前型機に当たる機体なんだが、妙だな』
「妙って?」

ルッキーニの質問に鉄也が答える。

『あれはそもそも戦闘用には造られたが、今はゲッター線の実験に使われていてこの場には無いはずの機体なんだ。それもあんな量産されたわけではなく、ワンオフの試作機みたいなもののはず……』
「うじゅ!?じゃアレは……?」

『おそらく奴らがゲッターロボGの設計図か何かを盗んで独自に造り上げたモノだと思うが……』
『でもよ鉄也さん、新早乙女研究所からそんなものは盗まれていないし、ハッキングも受けていないはずだぜ?』
『そこが引っかかる点なんだ。奴らはどうやってゲッターGを大量に造ったのか……細部の仕様も異なるようだが……』

鉄也はあしゅら男爵が見せたゲッターロボG軍団の姿が自分の知るオリジナルのドラゴンと異なる事に首をかしげている。ヒーローロボット然としたオリジナルと比べるとあの機体群はマッシブなアレンジが加えられている上、カラーリングもトリコロールカラーではなく、一色だった。それに各部形状もオリジナルと異なり、トマホークの形状は無骨さを増している。

『とりあえず俺は帰還したら司令部に報告する。甲児くんは敵に備えてくれ』
『がってん!』

鉄也と甲児はそれぞれ帰還後の行動を決め合うと急いで基地へダブルマジンガーを向かわせる。ルッキーニとシャーリーの事もあるので、マッハ4の高速で向かった。


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