――ある日、フェイトはこの世界でのショッキングな事実を知った。それはこの世界ではクローン人間が大々的に造られて戦争に使用されたと記録されているからだ。

「……ッ!……」

吐き気をもよおすほどのショックであった。フェイト自身がクローン人間であるせいもあるだろうが、ジオンが国家的プロジェクトとしてクローン人間を量産していたという事実の衝撃に目眩さえ覚える。

「その子たちはあたしの妹たちだよ」

「あなたは……」

「あたしはエルピー・プル。ロンド・ベルのパイロットだよ。話せば長くなるけどね。その子たちの話をするよ。あたしがその子たちの“姉”だから」

「え……?」

「正確にいうとオリジナルって言うべきだけね……」


2200年当時、プルは連邦に降ったおかげで姉妹たちの中でほぼ唯一生き残り、14歳を迎えようとしていた。(ただし、消息不明の12番目の妹を除けばだが)プルはこの日、ZプラスA2型の受け取りに来ていたのだが、その帰りにフェイトと会ったのだ。

「そもそもあたしはジオンで生まれて、ジオンの望むニュータイプとして思うままに育てられた。最もその頃にあたしの体細胞で“姉妹”達は造られてたみたいだけどね」

ジオンはニュータイプに対して一種のドグマを抱いていた。そのためにニュータイプ研究所の調査で並外れた数値を叩きだしたプルをベースにクローン人間を作ればニュータイプ部隊を編成できると見込み、有に10体を超える個体が第一次ネオ・ジオン戦争時に造られた(ただしプルツーに関しては血が繋がった姉妹の可能性がある)。

「あたし達はニュータイプの素養を強化させるための措置をされてキュベレイタイプに乗せられた。あたしはジュドーのおかげで呪縛から逃れられたけど……妹達はほとんどが……」

そう。第一次ネオ・ジオン戦争の最終決戦でプルの姉妹達の殆どは戦死した。少なくとも12番目の妹はなんとか逃れられたようだが……。

「で、戦後に連邦に入って今じゃ士官だけど……妹達のためにも生きていくつもりだよ。あの子達は生きたくても生きられなかったからね」



そう。今や何故、グレミー・トトがプルの姉妹たちを作り、戦争の道具として使ったのか、何故、プルがクローンニュータイプの素体に選ばれたのか。アクシズとしてのネオ・ジオンのそう言った秘密を知る者は既に黄泉へ旅立ち、永遠に闇に葬られた。それ故にプルツーも含めた妹達の分まで生きる決意を固めていたのだろう。このような身の上話をしたのは、なんとなくであるが、プルはフェイトの出自に気づいているのだろう。そしてフェイトを見守る何らかの残留思念を。


「なんで私にそんな話を……?」

「……そう感じたからだよ。」

ニュータイプらしい発言でうまくぼかすプル。ニュータイプは感じあい、分かり合うことで互いを理解する。(最もその領域にいけるかは個人差があるが)その能力でフェイトが深層心理で何を渇望しているのかを感じたのだろう。そしてその出自を。

「余計なお節介だけど、あなたが自分の心に正直になれるかでこれからの人生違ってくると思うよ。あなたの友だちみたいにね」

去り際にそう言い残すプル。第一次ネオ・ジオン戦争の時より成長したとは言え、相変わらずロリータな魅力を保つ容姿とは裏腹の大人びた発言。なのはがこれまでと違う選択をした事も示唆して去っていった。

「自分の心に正直になる……か。」

……フェイトがデルザー軍団と戦う数日前の出来事である。ニュータイプはオールドタイプの理解を超えた側面を持つというが、間近でそれを垣間見ると、言葉もない。呆然としばらくその場に立ち尽くしてしまった。



――プルのこの一言は、その後のフェイトの成長に大きな影響を与えることになる。フェイトもプルの姉妹らと同じくクローン人間であり、母親が娘を蘇生させようとして生み出した実験で人工的に生を受けたからだ。最も母親である、プレシア・テスタロッサの愛娘への狂おしいまでの愛情は愛娘と同じ姿であるはずのフェイトには向けられなかった。だが、フェイトは母を愛していた。それがたとえ偽りの親子関係であろうが。そして生きたくても生きられなかった自身のオリジナルである“アリシア”の存在。それ故にプルの境遇に共感を覚えたのだろう……。
















―― 後日 地球連邦軍 ベルファスト基地

フェイトと別れたプルはここに用があって赴いていた。ZプラスA2型を受け取るためだ。彼女のみならず、ある一定以上の戦果を持つエースパイロットはZタイプの可変モビルスーツを好む傾向にあったが、連邦軍が独自に開発し、空挺部隊用に配備している機体のA/FMSΖ-007Uはそれなりの空戦能力と引き換えに防御力が低下しているため、他の部隊では好まれなかった。そのため配備数は旧カラバ及びエゥーゴが開発したZプラス系統が大勢を占めていた。が、プルは不満気であった。

「……ぶす〜〜!!ZZはだめだったんだねー」

「ありゃ高いからね。これで我慢してくれよ〜」

「書類見たけど、だからってA2型?」

軍の機材運搬担当者はぼやく。そもそもプルは一騎当千の戦闘力を持つZZガンダム(強化型相当)を申請していたが、そのまま通らずに変化球でZプラスA2型の新規製造機を当てがられたのにぶーたれる。どこがどーしてZZ系統でもないZプラスになるのかと。

「一応メガキャノンついてるんだぞー」

「ZZの40%以下のパワーしかないじゃんーもっとドバーと撃てるの欲しかったー!」

「いやZZが異常なんだって」





ZZは確かにモビルスーツとしては一騎当千級の戦闘力を持つ。が、それに比例してコストがかかる。そのため複数機の新規製造は敬遠されがちで、ジュドー機以外には、昨年の東南アジア戦線で突撃師団長機として投入された機体が三体あるが、それは例外中の例外だ。

「さすがにダブルゼータを四機造ると財務省がうるさいからね……。今回はこれで我慢してくれ」

「ぶ〜〜!」

連邦軍は戦時予算で平時より兵器製造がしやすい傾向にあるが、量産機でない、純粋なガンダムタイプの製造は予算がかかるために財務官僚から文句が出る傾向がある。最近はスーパーロボット(コン・バトラーVやボルテスV)のレストアで金がかかっているために財務省は2199年度予算でのダブルゼータの4機目の製造は無理とキッパリと断言した。なので、2220年度予算に回されたと説明を受ける。彼女らの周りでは配備されたばかりの真新しいジャベリンやZプラスD型が整備を受けている。このベルファストは一年戦争中から重要拠点扱いであり、質の高い兵器が配備されている。そのためこの時期には旧型になっていたジェガン以前の汎用量産機の姿は格納庫になく、Z系の可変モビルスーツが大半であったし、可変戦闘機もAVF世代の可変戦闘機が多く配備されている。これも軍の前線の要望に答えられるように政府と軍が交渉を繰り返して容認させた成果であった。







――これも曲がりなりにも連邦軍は一時の軍閥支配から本来のシビリアンコントロールで統制される軍隊へ戻りつつある事の表れと言えた。


「鉄人兵団の状況はどーなの?」

「いよいよ奴らも追い詰められてる。移民船経由の情報なんだが、どーやら本国でレジスタンスが活発化して、遠征軍に補充部隊を送れなくなったらしい」

鉄人兵団はもともと軍部の強引なクーデターとそれを支持する者らによって政権が成り立った。その傲慢な支配が地球連邦軍の奮戦に触発されたレジスタンスの手によって足元から崩れ去ろうとしている。ドラえもんらをして物量に優れると言わしめた彼らも内なる敵の前に屈する時が来たというべきだろう。

「レジスタンスかぁ……なんか昔のドイツ軍とかみたいだね」

そう。旧ドイツ軍を悩ませたレジスタンスもそうだが、民衆を侮ると国家の一個や二個は軽く転覆する。フランス革命やロシア革命、ソ連崩壊などの歴史上のいくつもの事例がそれを証明している。メカトピアの民衆もその事例に漏れず、独裁体制を打ち倒すほどのパワーを秘めていたようである。

「それに限らず歴史上の多くの国が民衆の力で倒された。奴らもその例に漏れなかったようだな」





そう。鉄人兵団の本国のメカトピアではレジスタンス運動が熱を帯びている。政権指導者らは弾圧に躍起になっているという情報がのが現地のレジスタンスと近くを通りかかった新マクロス級の移民船から地球本国にもたらされた。そのマクロス級はレジスタンスを物的資源で援助し、鉄人兵団を追い詰めるのに一役買っていた。


「移民船団の一つがレジスタンスを援助している。そのおかげでレジスタンス運動は奴らの警察機関では抑えられないレベルに達した。これはいい傾向だよ。いくら波動砲やスーパーロボットを持っていても正面切って戦える武力は我が国にはないからね。何せ向こうの総兵力はゼントラーディの一個艦隊に比肩するからね」








士官はそう言う。鉄人兵団の物量はゼントラーディ軍の一個基幹艦隊級である。それとまともに渡り合うのはスーパーロボットの多くを失った連邦軍にとっては酷である。強力な機体である、カイザーや真ゲッターロボを得たとは言え、それらの力は未知数である。だから軍と政府は新マクロス級移民船団の一つが提案した、鉄人兵団を内から崩す方策を容認し、レジスタンスを公然と援助するようになったという事情を。

「なんか慌ただしいね」

「航空隊が渡洋爆撃に出かけるんだろう」

見てみると爆撃兵装をフル装備した可変戦闘機やコスモタイガー、ΖプラスC1Bst型(ハミングバード)、ΖプラスBN型がサ○ダーバードを思わせるシークエンスを踏んで、偽装された滑走路から離陸していく。ドーバー海峡を超えて爆撃を敢行するのだろう。

「どこにいくの?」

「昔のドイツはベルリンあたりさ。あそこはもう奪還間近だからね」

この月になると、本国からの増援の望みが絶たれた鉄人兵団は態勢を整え終わった連邦空軍の各地への苛烈な戦略爆撃と歴代のスーパーヒーロー達の一騎当千の活躍で急速ににその兵力を失いつつあった。ドイツ地域の陥落は秒読み段階であり、これを以って、ラグナロク作戦は第二段階へ進められる。


――旧ドイツ ベルリン


「きたぞ!またあの怪鳥だ!総員地下壕へ退避だ!」

「急げ!」

兵団の旧ドイツ駐留師団はもはやハミングバードの迎撃を行える余力を失っていた。この日の3日前に高速戦隊ターボレンジャーと科学戦隊ダイナマンのスーパーロボットも動員した猛攻でその兵力の過半数を撃破されたからだ。加えて兵站基地に対しての連邦空軍の苛烈な爆撃で補給路を叩かれて、もはや疲弊が極限に達していた。






――この日も轟音とともにドイツ上空に現れた超高速の怪鳥こと、ハミングバードは地上爆撃用に改良されたその兵装を一斉掃射。地上に残された兵団基地関連施設を片っ端から薙ぎ払う。

「隊長、奴らは地下に逃げ込んでいる模様です」

「よし!全機、バンカーバスター投下用意!爆撃コースに入り次第、投下開始!」

爆撃隊は悠々と旋回し、速度を落として爆撃コースに入る。地中貫通爆弾を使うためだ。もはや阻止しようとする対空砲火もない。彼らは楽々と地中貫通爆弾を投下し……。





――地下壕

「師団長!!第4,第6ブロックが破壊されました!今回は地中貫通爆弾です!」

「ぬうう……君、白い布はあるか?これ以上、若者らを死なせるわけにはいかん」

「ハッ……?」

「皆、これまでよく戦ってくれた。だが、これ以上戦えば全滅だ。本国への義務は果たした。直ちに地球軍へ投降を呼びかけたまえ。それと白旗を上げよ。彼らはそうして投降するらしいからな」

「了解しました」

彼らは士官を地上に上げ、デカデカと白旗を立て、地下では通信で連邦軍機へ呼びかける。すると。



――地上 

再度爆撃コースに入ろうとした航空隊は掲げられた白旗と通信に気づいた。

「隊長!白旗が上がっています!それと通信が……この周波数は鉄人兵団のものです」

「何!通信回路開け!」

『こちら鉄人兵団ドイツ駐留部隊。地球連邦軍へ降伏を宣言する。繰り返す……』


『こちら地球連邦空軍欧州方面軍第205航空隊。了解した。貴官の申し出は本部へ通達する」

航空隊は攻撃を中止し、爆弾を投棄する。そして直ちに隊長機のハミングバードが着陸し、正式に降伏の手続きと確認を行う。西暦2200年の2月の中旬であった。本部では直ちに降伏の確認作業が行われ、作戦室の地球の世界地図を写す映像機器のドイツの部分が鉄人兵団を示す黒から地球連邦の行政地域を示す青へ変わる。

「これでドイツは“戻った”。だが、ベルギーに雪崩れ込むにはもう一つ足がかりがいるな」

「ルクセンブルクか?」

「そうだ。スイスを奪還次第、ルクセンブルクへの攻撃を敢行したい」

レビル将軍が前線に出てしまっているので、本部では参謀長のジョン・コーウェン中将が取り仕切っていた。同僚らとともに作戦室に篭り、中央で戦略を立てていた。

「ハミングバードの地上用の戦果は良好だ。出来ればあと一個大隊分は製造したい」

「財務省がうんというか?」

「その辺は藤堂軍令部総長やゴップ議長に期待だな」

「無理だと思うぞ」




空軍の爆撃畑出身の将軍が要望を言う。ハミングバードは元々は宇宙軍の超高速攻撃用可変モビルスーツとして造られたが、地上においても良好な戦果を残している。しかし難点は一機あたりにかかるユニットコストが膨大な事だ。地上軍に比べて予算が潤沢な宇宙軍でさえ、この戦争でようやく一個飛行中隊+α分を調達できたにすぎない。なのでこの発言は極めて野心的な要望であった。

「一応話は通しておくが……あまり期待するなよ」

「ああ。嫌と言ったら殴ってでも承認させるさ。財務省の奴らは戦線の実情を理解しとらんからな」

「やれやれ」

空軍がハミングバードの性能に歓喜しているのが感じ取れるが、宇宙軍でさえ数を持ててない超高価なガンダムタイプモビルスーツを空軍がどーやって確保するのか。レンタルでない、自前の部隊を持ちたいのはわかるが……。とコーウェンはため息をついた。後日、空軍の首脳陣がハミングバード追加建造に反対する財務省の役人と議会で取っ組み合いの大喧嘩を起こし、戦時中でありながら空軍の首脳陣全員が数ヶ月の謹慎処分となってしまうという珍事が発生。その間は宇宙軍の提督らが業務を代行したとか。これは後に臨時議会が開かれていたアデレードを取って、アデレードの乱と呼ばれ、連邦軍史上稀に見る珍事として歴史に刻まれる。




ドイツ以外では、南米戦線でも鉄人兵団が極東へ撤退を始め、戦線は開戦時から遥かに縮小した。鉄人兵団遠征軍司令部は“極東決戦”を怒号し、極東へ各戦線で生き残った主力部隊を結集させる。その場所はかつての中華人民共和国の首都であった北京、要塞がある南京。欧州戦線の苦境とは裏腹に極東戦線は日本などの一部地域を除いて兵団の牙城と化していた。この区域に関しては地球連邦軍も打つ手なしであった。ラグナロク作戦を優先させるために帝都である東京に近い地域でありながらも極東は鉄人兵団優勢のままであり、地球連邦軍はこの方面の攻勢を行わなかった。極度の消耗を恐れたからだが、この事は極東の鉄人兵団にとっては僥倖であった……。





――こうして、ラグナロク作戦は順調に進み、連邦軍の反攻ムードが盛り上がる中、次の戦乱の訪れを予期させる、新たな宇宙帝国が胎動を開始していた……。



――二重銀河 暗黒星団帝国 本星

「イスカンダリウムが重要な資源となると?」

「ハッ。グレートエンペラー様」

彼らは地球から40万光年の距離にある恒星間国家、暗黒星団帝国。彼らは白色彗星帝国亡き後にここぞとばかりに自国の領土を他銀河へ広げようとし、大マゼラン雲にその魔の手を伸ばそうとしていた。そして大マゼラン雲、小マゼラン雲に権勢を誇ったガミラス帝国ももはや残党を残すのみとなった。この情勢を“海外進出”を行う絶好の機会と見ていた。

「フム。もはやあの恐るべき白色彗星帝国も、マゼランの雄のガミラスもいない。我々の時代がやってきたのだ。メルダーズよ。貴公は直ちに艦隊を率いて小マゼラン雲へ赴き、ガミラス帝国残党を駆逐し、大マゼラン雲への足がかりを整えよ」

「ハッ…必ずやご期待に答えましょう」

彼らは地球で言うところの西暦2200年1月に艦隊を小マゼラン雲へ派遣する決定をし、イスカンダルへその魔の手を伸ばそうとしていた。だが、それは地球も、ガミラス帝国残党軍も、イスカンダル元女王のスターシャでさえもこの時はまだ知りえぬ動きでしかなかった。



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