注意:この作品は2つの視点により進んでいきます。
   主人公視点をin side。客観視点をout side。としております。
   その辺りを考慮してお読みください。




 out side
 とある都市……ある地区の道を1人の青年が歩いていた。
彼の名は相川 翔太。私立榊原高校に通う17歳、男性である。
背はそれなりに高く中肉といった感じの体付き。顔の方もありふれたという感じであり、黒髪を短く刈り上げていた。
服装は夏場も近いこともあってかジーンズにシャツといったラフな格好。アニメやマンガ、ゲームが好きという他はどこにでもいる普通の青年である。
 今日は休日であり、暇つぶしにコンビニに行って帰ってくる。翔太としてもただそれだけのつもりだった。
彼にしてみればごくありふれた日常。いつものこと。代わり映えしない日々。そのはずだった。
「あれ?」
 まだ日が高いこともあり、普段から人通りがほとんど無い公園の中にある林の中を歩いていた。
少し遠回りになるけど、たまにはとそこを歩いたのだが……そこでそれを見つけてしまう。
ただ、それはひと言では形容しがたい物であった。
 まず、それは球状らしき形状をしている。らしきというのは何か物質で出来てるわけで無く、透明で輪郭も無いのだ。
だが、空間が陽炎のように球状に歪んでいるのは見てわかり、その中では何かが星のように輝いていた。
「なんだこれ?」
 それを見つけた翔太は近付いていた。むろん、警戒はしている。それが危険な物かもしれないという考えはあったのだ。
だから、それから目を離さずに身長に近付く。何が起きてもいいように……そうして少しずつ近付き、手を伸ばせば届く所まで来て――
「へ?」
 彼はこけた。それに警戒するばかりに足下で突き出た木の根に気付かずに足を引っかけてしまったのである。
そのままそれに向かって体は倒れていき――
「おわ――」
 彼は消えた。その空間に吸い込まれるようにして。そして、その場にはその空間だけが残る。
まるでそこにあるのが当然と言わんばかりにそれは存在していたのだった。


 in side

「ぐへっ!?」
 あつつ……いった〜……あれに気を取られてこけたのか……たく、なんつ〜間抜けな。
そういや、あれに突っ込んだ気がしたけど……体、なんとも無いよな?
 とりあえず、自分の体を確認しつつ立ち上がる。手や腕を軽くすりむいただけで、怪我とも言えない物にほっとして……気付いた。
何か様子がおかしい。林の中なのは間違いないんだけど……なんか、どこか違って……あれ? 歩道は?
俺がさっきまで歩いてた、整備されてないひび割れだらけの歩道が無くなってる。て、どういうことさ!?
慌ててここがどこなのかを確かめようと辺りを歩き回ったのが悪かったのかもしれない。
「ぬお!?」
 開けた場所を見つけたのでそこに駆け寄ったのだが、近付いた時に足下の地面が崩れて――
「うわぁぁぁぁぁぁぁ、ぐぼ!?」
 落ちた。どうやら、高台みたいな所だったらしい。幸いと言っていいかわからんが、高さはそれほど無かったようで無事……
でもないよ!? すげぇいてぇよ!! 痛みのせいか、息出来なかったよ!?
でも、いつまでも倒れたままでいるわけにもいかないので、痛みが我慢出来るまでに治まってから立ち上がる。
で、辺りの景色はまったく見覚えが無い物であった。少なくともここは公園じゃないよな?
じゃあ何? ここどこよ? え? 何? アニメやマンガ、ゲームとかで良くある異世界に飛ばされたとかなのか?
あははは、まさかそんなことありえるわけ……
「あははははは……」
 思わず渇いた笑みが漏れてしまう。だってさ、あれに突っ込んだと思ったら知らない場所って……どうしたらいいのさ?
なんかもう一杯一杯で何も考えられない。そんな時、何か近付く音が聞こえてきた。そこへと顔を向けると――
「くそ……は!?」
「おわああぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 いきなり男の人が来たと思ったら銃を向けられて、思わず悲鳴を上げながら両手も上げてしまった。
て、何!? あの人何!? 犯罪者!? なんで銃向けられてるの!? 俺、なんかした!?
「ひ、人!? なんでここにいる!?」
「いや、なんでって……」
 聞かれても困るんだけど。だって、何が何だかわからない内に銃向けられてるし。
でも、なんか言わないと撃たれそうで怖いんだけど……あれ? なんかあの人、焦ってるように見えるような……
やっぱり犯罪者? それで警察とかに追われてるとか? え? そうなの? もしかして、俺人質なの?
「見つけた」
「く! 来やがった!?」
 なんてこと考えてたら別な声が聞こえてきた。まさか、警察かと思って顔を向けて……
「はい?」
 それを見たら、どうしようかと思ってしまった。だってさ、考えてたものと違うのが現われたんだよ。
いや、警官じゃなくても普通はそうはならなかったと思う。でもさ、現われたのが人じゃないんだよ。
かといって動物とも違う。なんて言えばいいのかな……赤ん坊よりちょっと大きいくらいの青い体に鳥っぽい顔。
そうとしか言えない物が宙に浮かびながらこっちにやってきた。この時、俺はあれに見覚えがあったことに気付く。
ただ混乱してたせいか、どこで見たのかを思い出せなかったけど……
「く、くそぉ……こんな所で死ねるか!?」
「おわ!?」
 なんてことを考えてたら、男に腕を引っ張られた。しかも、なんかあれに向かって突き飛ばされたよ!?
いや、なんでよ!?
「のわ!?」
「ブフ」
「な!? ぐわ!?」
 と、またしてもこける。いきなり突き飛ばされたもんだから足がもつれてぶざまなまでに。
でも、その時に何かが俺の上を通り過ぎたかと思うと男の声が聞こえて――
「あだ!?」
「おぐ!?」
 俺が倒れた直後に男の声が聞こえたような気がした。ていうか、こけてばっかりだよな。
痛みをこらえながら立ち上がる。で、辺りを見回してみたら、相変わらずいる何かと倒れてる男。
倒れてる? え? なんで? 俺がこけてる間に何があったのさ? ていうか、あの男の人の頭から血が出てない?
あ、頭の下に角張ってる大きめの石がある。もしかして、あれで頭打ってる? ええと、もしかしなくてもなんかヤバイ?
「死んだか。次はお前だ」
「へ?」
 え? 何? 死んだって誰がさ? あの男? え? 死んでるの? マジで!?
「て、のおぉぉぉぉ!?」
 なんてこと考えてたら、何かが羽根見たいのを飛ばしてきた。
思わず避けたけど……俺の横を通り過ぎた羽根は木に当たって小さいながらも穴をうがってる。
何これ? もしかして、攻撃されたの? あれに当たってたらシャレになってなかった?
もう何が何だかわからない。気が付いたら見知らぬ所に来て、そこで襲われてるなんてアニメやマンガ、ゲームでの話だろ!?
「だあぁぁぁぁぁ!?」
 しかし、あれはまた羽根みたいなのを飛ばしてくる。今度は四つん這いになって逃げだし、思わず倒れた男の人のそばに来てしまう。
ヤバイ! 絶対にヤバイって! ど、どうすりゃ……ん? 何かに触れたと思ったら、それは男が持っていた銃だった。
どうやら、倒れた拍子に落としたらしいけど――
「くそおぉぉぉぉぉぉ!!」
 そんなことなど気にしてる暇も無く銃を拾い上げ――
「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁ!?」
 何かに向かって何発も撃った。もう、無我夢中で。撃つたびに来る衝撃なんて気にしてられない程に。
だから、弾切れはすぐだった。引き金を引いてもカチカチと虚しく響くだけ……でも、何かには十分効いたらしい。悲鳴を上げて体が砕け散った。
銃を向けたままそれを見てたんだけど……
砕け散った後になんか緑色に輝く光が出たかと思うと、それが倒れてる男の右腰に吸い込まれるように消えていった。
なんだろうと思い、倒れてる男に近付く。男は動く様子が無い。揺すってみるけどやはり同じ。胸に手を当ててみるけど……鼓動が感じられない。
マジで死んでるの? いや、心臓止まってるからそうなんだろうけど……見た目は頭から血を流してる以外は寝てるようにしか見えないんだって。
 とりあえず、深く考えないようにして、さっき緑色の光が吸い込まれていった右腰に顔を向けてみた。
そこには銃のような物があった。ような物というのは、銃ではないと見ただけでわかるからだ。
形としては銃なのだが、銃身が平べったくなっている。そして、この銃のような物を見た俺は驚いていた。
実は見覚えがあった。その物自体を見た訳じゃないけど……でも、まさかと思いながらもそれを手に取る。
「確か……」
 おぼろげな記憶を頼りに銃らしき物の撃鉄を引くと銃身が左右に割れて虫の羽根のように開き、
銃身に接続されてるアームによって持ち上げるようにしてグリップの上の方へとくる。
その後、開いた銃身の左側にはキーボードがあり、右側はモニターになっていて、そのモニターに魔方陣のような物が映し出された。
「GUMP(ガンプ)……」
 思わず声が漏れる。悪魔を召喚し、使役するための悪魔召喚プログラムがインストールされた銃型CUMP(コンプ)。
女神転生とかデビルサマナーというゲームで登場する架空の機械でもある。
それがGUMP……それがマジで存在することに驚くしかない。そこで気付いた。
さっきの何かって、確か女神転生やデビルサマナーに登場する悪魔じゃないか?
 あ、一応説明しとくと女神転生やデビルサマナーに登場する悪魔は、聖書とかに登場する神の対極たる悪魔の事じゃない。
一応そういうのも出るけど、基本的に妖精や天使、魔獣なんかをひとくくりにして悪魔と呼んでいる。
俺、誰に説明してんだろ……それはそれとして、その悪魔と交渉し仲魔にすることを可能にする機械。それがCOMPなんだけど……
そこまで考えて気付く。ここって、もしかして女神転生かデビルサマナーの世界だったりするの?
ゲームの世界がマジで存在するの? その世界に来ちゃったの、俺? んなのって、二次創作とかの話じゃん!?
 そんなことに気付いて混乱してます。ていうか、なんでこうなったの!? 俺、何かした!?
いや、あの変なのに近付いたのはわかってるよ! でも、それでこんなことになるって普通わかんないだろ!?
もう、本当にどうすればいいかわからない。これからどうするかも。だって、周りに誰もいないし、男は……やっぱり死んでるんだろうなぁ……
二次創作とかだと、こういう時に誰かが現われてこうしろとか言うんだろうけど……早々、そんなのが出るわけ――
「あなた、何してるの?」
 無いのかなぁ〜と思ってたら声を掛けられた。振り向いてみると、そこには小さな女の子。
いや、本当に小さい。赤ん坊よりも小さい女の子が背中から羽根を生やして浮かんでる。
「ピクシー……?」
「何言ってんのよ? あなた、サマナーなんだからわかるでしょ?」
 思わず出た言葉に女の子ことピクシーは呆れているようだった。ピクシー……女神転生やデビルサマナーではお馴染みの悪魔。
その名の通り妖精でもあるのだが……そのピクシーを見ていた俺は顔が引きつってたと思う。
だって、アニメとかマンガやゲーム、物語でしか存在しない物が実際に存在してたら、あんたらならどう思うよ? 俺はというと混乱してた。
いや、驚きもしたけどね。ともかくこの時思ったのが、ここってマジで女神転生とかデビルサマナーの世界なの? ということだった。
ゲームの世界に来てしまう。そんな現実離れした事態に頭が回らなかったんだよ。
 て、待て。今、すっごく気になること言われなかったか?
「え、えっと……サマナーって、何?」
「あなたのことでしょ? 機械持ってるし。最近、噂になってるのよ。そういう機械を持つサマナーという奴らがいるって」
 なんか、信じられないことを返されたよ!? 俺がサマナー? GUMP持ってるから?
「い、いや待て! 違う! これはこの人の物で、その……なんて言えばいいんだよ……
なんか、変な物を見つけて、何かなと思って近付いたらここに来て……変なのに襲われて、この人は死んじゃって……」
 なんとか説明しようと思うのだけど、混乱してるせいか上手く言葉に出来ない。ああ、なんて言えばいいんだか……
「う〜ん、良くわかんないけど……それでどうするの?」
「どうするって……そりゃ、元いた所に帰りたいけど……」
 聞かれて困りながらも答える。何が何だかわからないけど、とりあえず帰りたい。どうにもここへ来たのは事故みたいなもんだし。
でもなぁ、帰れるかどうかわからない。たぶんだけど、あの変なのに触れからここに来ちゃったんだと思う。
でも、辺りを見回すしても、あの変なのは見あたらない。そうなると帰る方法が他に思い当たらないんだよ。
「しょうがないなぁ〜。じゃあ、町に行ってみれば? そこなら何か知ってる人がいるかもよ?」
「町? 町があるのか?」
「ええ、ここから少し離れてるけどね」
 ピクシーの話に考えてしまう。町か……確かにこのままじゃ手詰まりだし、何していいかもわからないし……
しょうがない、そこに行ってみるか。
「あ、でも大丈夫? 悪魔に襲われると思うけど?」
「え?」
「当然でしょ? 悪魔から見たら、人間は純度の高い生体マグネタイトを持ってるもの。いい餌よ?」
 ピクシーに言われて思わず顔が引きつる。そういや女神転生やデビルサマナーでも、その理由で人間を襲ってたような覚えがあるな。
他にもあった気がするけど……それはそれとして、どうするか困ってしまう。言っとくが、俺は普通の人だ。
アニメやマンガ、ゲームが好きなくらいで、それ以外は本当に普通の人。運動はそれなりといった程度でしかない。
そんな俺が悪魔と戦えるのか? さっきの悪魔……名前は思い出せないけど、その時のことを思い出す。うん、無理だ。
ていうか、あんなの普通に受けたら死ぬだろ! どう考えてもさ!? 悩んだ挙句、俺は男に視線を向けた。
しつこいようだけど、やっぱり死んでるんだろうなぁ……嫌だけどしょうがないよね、これは?
「何してるの?」
「何か使える物を持ってないかと……」
 ピクシーに答えながら、男の服の中をまさぐる。なんか泥棒みたいで嫌だけど、今は気にしないことにした。
で、最初に見つけたのは布袋。中身は金貨が数十枚。
なんか模様みたいなのが彫り込められてる面があり、その裏にはマッカのマークが彫り込まれていた。
これを見て、やっぱり女神転生とかの世界なのねと思ってしまう。
 とりあえず、それをジーンズのポケットに押し込み、他にも無いかとまさぐってみる。
で、他に見つけたのは銃のマガジン2つとナイフ。それを見て、凄く不安になった。だって、町までどれくらい離れてるかわからない。
それにゲームで覚えた知識だから確かとは言えないけど、1つのマガジンに込められる弾丸はそんなに多くないはずだ。
ナイフはあるけど、どれだけ使えるかわからない。ゲームじゃナイフは決まって最弱武器だしな。
 次にGUMPだけど……ここで問題が起きた。使い方がわかんない。
ボタンを押せば色々とモニターに映るんだけど、見たこともない文字で出るので何がなんなのかわからないのだ。
でも、何か使えるかなと思ってもらっておくことにした。そこで思ったんだけど、この世界の言葉ってどうなってんだろ?
俺、普通にピクシーやさっきの悪魔にこの男とも日本語で話してたけど……うん、あまり気にしないことにしよう。
そんな現実逃避をしてたんだが、そこでふとあることに気付いた。
「あのさ……君も悪魔だよね? なんで襲わないの?」
「ん〜、今は別に人間襲うほど困ってないし、気になったしねぇ〜。ついでだから、町まで案内してあげるわ」
「え、ホント?」
 ピクシーの言葉に思わず嬉しくなってしまった。なんか、下手したらやばかったかもしれないような気がしたけど。
それは考えないことにして、案内は本当に助かる。だって、どこに町があるかわからないし。
「ありがとう……ええと――」
「ミュウよ。自分ではそう名乗ってるわ」
「あ、そうなんだ。じゃあ、ミュウ……よろしく頼むわ」
「ええ。まっかせなさい」
 差し出した右手にピクシーことミュウは両手を置いてくれた。
それを嬉しく思う反面、俺って帰れるんだろうかと不安になってたけど。
帰れると……いいなぁ……




 あとがき
お久しぶり……になるのでしょうか? DRTです。
真・女神転生ストレンジジャーニーに触発されてこんなの書いてみました。
ちょっとチートっぽい作品になってしまいそうですが……そこの所はご容赦頂くと助かります(おい)
では、次回をお楽しみに〜



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