始まりの時が来た

ボソンの輝きが導くのは絶望か希望か

この長き旅の終わりは何を意味するのか

それは後の人達が歴史として答えてくれるだろう

俺達は生きる為に最後まで足掻こう



僕たちの独立戦争  第十話
著 EFF


―――アクエリアコロニー 臨時作戦指令所―――


「軍からの連絡はあったか、状況はわかるか」

グレッグ・ノートンは通信士に聞いたが返答は最悪の報告だった。

「連絡はありません。軍もかなり混乱しているようです」

「………そうか、分かり次第教えてくれるか。

 クロノ、向こうの状況をどう思う」

「おそらく慌てているんだろうが結果は分かる。

 かろうじて宇宙に出ているが彼等の装備では勝てないさ」

淡々と話すクロノを見ながらその事実にグレッグも頷き答える。

「……そうだな。

 ディストーションフィールドがあれほど効果があるのは我々しか知らないだろう。、

 彼等に教えていればマシだったかな」

「いや、教えるのは危険だったのさ。あれ程の技術が火星にある事を地球が知れば、

 ネメシスを発動される危険があるからだ。」

「ネメシス?

 それは何だ、私は知らんぞ?」

「………………………………………………………………………………」

黙り込んだクロノにグレッグはこれが地球が火星に隠している事だと気付いて問いかける。

「……それは火星に対する地球の切り札か、クロノ」

「反乱殲滅システム――ネメシス――火星軌道上に隠されている地上核ミサイル攻撃システムステーションだ」

クロノのその言葉の指令所のスタッフは地球の火星に対する行為に言葉を失くしていた。

「だが安心してくれ。

 この戦争に乗じてその設備は俺の仲間達が制圧する予定だ。

 ……木連の攻撃に見せかけてな」

クロノがスタッフにこれからの予定を告げると全員が安堵していた。

「……なるほど、その為に軍に機動兵器を見せなかった訳だな」

「そうだ。極秘にしたのはその為だ。

 この危機に急遽造り出した事にして安心させて、

 木連を利用して火星の安全を確保するのが俺とアクアの立案した作戦だ。

 火星は地球と木連の道具ではない、我々の大地だからな」

クロノの発言にグレッグは頷き、スタッフはクロノが万全の準備をしていた事に驚きを隠せなかった。

「グレッグさん、俺はもう一つの計画の確認の為、此処を離れなければならない。

 任せていいか?」

「もう一つの計画?、まだあるのか」

「ああ、軍が撤退した後でこちらの戦艦を出す予定だ。

 これで火星の軌道上にある敵艦を撃沈する。

 チューリップをこれ以上地上に降ろさないようにしないとな」

スクリーンに映るチューリップを見てグレッグはその危険性に気付き納得した。

「わかった。クロノを信じよう。ここは任せてくれ」

グレッグの声に頷くとクロノはエドの執務室に向かった。

「エド、入るぞ」

扉を開けクロノは部屋に入った

「……クロノ行くのか。ユートピアコロニーへ」

エドワードの声にクロノは苦笑する。

「ああ、始まりの確認をしなければならない。

 これは俺の我が侭だ。すまんな、エド」

「……そうか、もう何も言わないよ。

 気をつけてくれ、クロノ。

 君を失いたくはない、友人としてね」

「当たり前だ。子供達の未来を見るまでは死なんよ、エド」

クロノは笑いながらボソンの光りに包まれて消えた。


「くっこんな事になるとはな。

 全艦に告げる。

 敵艦にレーザーは通じん、ミサイルによる攻撃に変更せよ」

フクベの指示で艦隊は攻撃を変更したが劣勢な事は変わらなかった。

探査機の映像を見て侵略行為だと判断したフクベは艦隊を急行させたが、

敵艦隊の数の多さと武装に驚いていた。

チューリップのような戦艦から吐き出される艦が既に百隻を越えていた。

その艦からの砲撃はこちらの艦を簡単に撃沈するのにこちらの攻撃は殆ど通じなかった。

唯一通用したのはミサイルによる攻撃だった。

敵艦から放出される小型の機動兵器も厄介だった。

かろうじて数で優位に立ってはいたが時間を追う毎に数でも負けるとフクベは判断していた。

「提督!

 敵の第一波が地上に進み始めています!」

オペレーターの声を聞いてフクベは決断した。

「くっ総員退艦せよ!

 艦をぶつけて撃破する!」

フクベの宣言でクルーは退艦して戦艦はチューリップに激突していった。

「大変です、提督!

 チューリップがユートピアコロニーに落下します!」

切り離したブリッジからチューリップを見ていたフクベはその声に最悪の事態を思い浮かべた。

第一次火星会戦の最大の悲劇が始まった。


―――アクエリアコロニー 臨時作戦指令所―――


「なんだと!! 本当か、それは!!」

グレッグの叫びにオペレーターが慌てて答えた。

「はい!! チューリップに軍の船が体当たりをした為に、

 チューリップが軌道を変えユートピアコロニーへ落下しました。

 被害は甚大です!

 そして軍は火星から撤退するみたいです。

 シャトルが次々と上がっています!」

告げられた事実にグレッグは地球の暴挙に怒りながら落ち着いて対応を取る事にした。

「何を考えているんだ。軍は本当に火星の市民を見捨てるのか?

 これでは救助を急がせないと大変な事になるぞ」

「グレッグ、使える艦艇を全て使って至急救助に向かう必要がある。

 ブレードを先行させよう、幸いクロノがブレード用の空母を用意してくれている。

 これなら補給も何とかなるだろう」

「分かりました市長。準備が出来次第出発します」

スクリーンを見ながら、エドワードは考える。

(始まった、ボソンジャンプを巡る悲劇の……いや変える為に此処にクロノが来たんだ。

 無理はするな、クロノ。お前の力はこれから必要なんだ)


―――ユートピアコロニー シェルター内―――


クロノの手によって破壊された無人機の残骸の中で、

「アクア、バッタは片付けた。アイちゃんのお母さんは無事か?」

「ええ、気を失ってるけど無事よ。それよりここを離れましょう、クロノ」

「ああ、ジャンプは俺がする。フィールドを二重にして行こう、アクア」

「そうね、大丈夫だと思うけどそれが確実ね。場所はテニシアン島ね。」

「ああ、ドクターに診てもらおう。それからユーチャリスUへ行き、

 火星軌道上の艦隊を撃破して、ネメシスをシステム掌握で押さえる」

「手伝いますよ、あんな物火星には不要ですわ。それに核はこれから必要ですからね」

「ああ、そうだな。では行くぞ、ジャンプ」

ボソンジャンプした後、そこは静寂だけが残っていた。


―――テニシアン島 医務室―――


「終わったぞ、クロノ。軽い打撲と破片が当たったせいで、血は出ているが大丈夫じゃ」

「そうですか、良かった」

安堵するクロノにアクアは微笑み

「それでは火星軌道上の艦隊の迎撃とネメシス攻略に行きますか、クロノ」

「ああ、ドクター。目を覚まされたら伝えて欲しい、

 『アイちゃんは無事だ、必ず会えるから心配しないでくれ』と」

「分かった、そう伝えれば良いんじゃな。確かに伝えよう」

「お願いする、ドクター。

 では……どうしたセレス、ラピス。くっつくと危ないから離れなさい」

クロノのマントを掴んでいるセレスとラピスにクロノは優しく話すが、

「「やだ、クオーツだけズルイ。一緒に行く、パパ」」

クオーツもアクアに近づいて話す。

「ぼくも、行きたいです。お父さん、お母さん」

「それじゃ3人一緒にいきましょうね♪

 じゃあ、お母さんの手を掴んでね、クオーツ」

アクアがクオーツに笑って答えるとクオーツはその手をとった。

「うん! お母さん」

「おい、アクア。……遊びに行くんじゃないんだが」

「ええ、みんなの練習成果をお父さんに見せましょうね♪」

クロノがアクアに注意するとアクアは遊びに行くような様子で子供達に話しかける。

「「「は―――い!!」」」

「アクア! 何を教えたんだ。……まさかシステム掌握を」

「ええ、この子達の力を否定せずに活かせるように教えました」

クロノの疑問にアクアが答えた。

「アクア……どうしてそんな事をしたんだ」

「不安定な力と安定した力、どちらが危険か判るでしょう。クロノ」

「それはそうだが……でもな」

「この子達が望んだ事なんです。

 私達の仕事を見て手伝いたいと言ってくれたんです」

アクアとクロノを見つめる三人の真剣な瞳を見てクロノは何も言えなくなった。

「……わかったよ、アクア」

「責任は私とクロノで取りましょう。後は守るだけです」

「ああそうだな、じゃあしっかり掴まりなさいセレス、ラピス」

「「は〜い、パパ♪」」

「よし、ではジャンプ」

消えていくクロノ達に苦笑しながらドクターは患者の側の椅子に腰掛けた

「何だかんで言っても、クロノはアクアお嬢ちゃんの尻にしかれておるわ。

 まぁあれなら似合いの夫婦じゃな……ただクオーツがこれ以上クロノに似なければいいんじゃが」

………悩みのタネが尽きない家族であった。


―――火星駐留艦隊 臨時旗艦―――


「なんだと!

 勝手に撤退しているだと!」

艦隊を合流させて陣形を再編していたフクベは艦隊の一部が逃げ出した事に怒りを覚えていた。

「現在、ムネタケ参謀が艦隊の一部を使って防戦をしています」

状況を知ったフクベは即座に行動を開始した。

「よしムネタケと合流して火星の市民の避難を急がせて一人でも多くの民間人の脱出を援護する!」

それを聞いたクルーはすぐに行動を開始したが、それは許されなかった。

『フクベ提督。

 これ以上の損害は不味いぞ。

 火星を放棄して撤退せよ。

 これは命令だ、分かったな』

通信に出た司令の言葉にフクベは叫んだ。

「ふざけるな!

 火星に住む市民はどうするのだ。

 まさか死ねというのか?」

『残念だが今の地球の艦艇の装備では勝てないのは分かるだろう。

 これ以上艦艇を失うわけにはいかんのだ』

まともな理由で説得する司令にムネタケの通信が割り込んできた。

『随分綺麗事を言うのね。

 私達を捨て駒にするんじゃなかったのかしら』

『な、何の事だね。

 そんな気はないが不審な点でもあるかね』

ムネタケの言葉に僅かに動揺した司令にフクベとムネタケはこの戦いが茶番だと知った。

『とにかく命令だ!

 艦隊を率いて帰還せよ、いいな!』

司令はそういい残すと通信を切った。

『どうしますか?』

「撤退せざるを得んな。

 但し時間を稼がないと不味いな。

 火星から上がってきた部下達を回収しないと」

フクベが苛立つようにムネタケに伝えると、

『じゃあアタシが殿をするから提督は部隊を回収して撤退してちょうだい。

 提督は旗艦を失った以上どうする事も出来ませんから』

「分かった、ムネタケ……無理はするなよ」

『犬死にする気はないわよ。

 それより提督、私達は司令達に嵌められたわ。

 多分、地球に戻ったら見世物にされるかも……気をつけましょうね』

ムネタケは最悪の事態をフクベに伝えると通信を切った。

「部隊を回収しながら火星を……撤退する」

クルーも悔しそうにフクベの指示に従って行動していく。

(見世物か、あいつは諦める気はないようだな。

 わしも覚悟を決めておくかな)

フクベは艦隊に指示を出しながらこの後に起きる事を想定していった。

フクベの指揮の下で艦隊は部隊を回収しながらまず月へと向かった。


「仕方ないけど、この艦に乗ってる者は諦めてね。

 囮を兼ねて時間を稼ぐから」

ムネタケはクルーに告げるとクルーも苦笑しながらムネタケに付き合う事にした。

地球には戻るのは難しい……と思いながら。

ムネタケは敵艦隊との距離を取りながら何度も波状攻撃を繰り返して時間を稼いだ。

途中、破損した艦からクルーを離脱させて無人操縦で特攻をかけて無人艦隊を混乱させていた。

「部隊の回収は終わったそうです!」

「じゃあこっちも撤退するわ。

 ミサイルを全部撃ってから全力で後退するわよ」

ムネタケの指示で反撃すると艦隊は後退したがムネタケの艦は敵の砲撃を受けて航行不能に陥った。

「総員退艦よ。

 いいわね、死ぬんじゃないわよ!

 生きて地球に帰るわよ」

ムネタケの声に浮き足立ったクルーは落ち着いて退艦を始めた。

「悪かったわ。

 巻き添えにしたわね」

負傷してクルーに背負われるムネタケは半ば諦めていた。

艦載機に乗り込んで脱出を始めたがそこまで無人戦艦が近づいてきた。

(クロノやアクアちゃん達は無事脱出したかしら?

 生き残って欲しいわね……子供達だけでも)

自分の最期を考えながら火星で出会った家族の無事をムネタケは祈っていたが、突然戦艦が爆発した。

何事かとクルーは見るとそこには黒い機動兵器が存在していた。

その機動兵器は艦隊に突入すると次々と撃沈していった。

「参謀、メッセージです。

 『無理するなよ、大馬鹿野郎』と」

それを聞いたムネタケは笑っていた。

しばらく笑っていたムネタケは全員に告げた。

「あの機動兵器の事は忘れるわよ。

 命の恩人だからね。

 私達を罠に嵌めた司令達、地球の連中には内緒よ」

それを聞いた者達は操縦者が危険を犯して自分達を救ったんだと理解した。

(どうやら火星は生き残る方法があるみたいね。

 次に会うときを楽しみにしてるわよ、大馬鹿野郎とその家族さん)

ムネタケは笑みを浮かべながらフクベと合流した。

こうして地球軍と木連軍の最初の戦いは木連の勝利で終わった。

これより火星は地球の手を離れて独自の行動を取るが地球はその事を知る事は出来なかった。


―――アルカディアコロニー郊外―――


「大将!

 地球連合軍が火星から逃げ出しました。

 やっと俺達の出番がきたぜ」

「よーし、いいか!

 これから火星は独立を始めるぞ。

 俺達の大地は俺達が守るぞ!」

レオンが全員に告げるとパイロットは声を出して機動兵器ブレードストライカーに乗り込んでいった。

「全機発進!

 各部隊は作戦通り市民の救出を始めろ!」

通信機で火星に散開しているマーズ・フォースと独立団体のメンバーに告げると応答が返ってきた。

レオンも部隊を率いてアルカディアに入って行く。

……長い火星の独立戦争の幕開けであった。


アクエリアコロニーでも発進の準備が進んでいた。

「エリス隊長、これからどうなるんですか?」

部下の一人が不安な思いを口にしていた。

「もうすぐ火星全域に放送が始まるわ」

エリスが全員に聞こえる様に話すと同時にエドワードの放送が始まった。

『皆さん、私はアクエリアコロニー市長のエドワード・ヒューズです。

 現在、火星は木星方面から謎の艦隊に攻撃を受けています。

 火星に駐留していた地球軍の艦隊は残念ながら敗れて撤退しています。

 地球は事前にこの件を知りながら兵力の増強もせずに、新鋭艦を地球に戻し老朽艦で火星を守ろうとしました。

 この事で地球は火星を捨石のように扱いましたので、火星は独自の行動を取る事にしました』

エドワードは一息入れると市民に再び語り始めた。

『詳しい事はまだ言えませんが現在はオリンポス、北極冠を除くコロニーは協力体制をとっています。

 これより火星は切り捨てられた地球から独立する事を宣言します。

 現在、各コロニーへ新型の機動兵器を配備して防衛を始めていますので慌てないで下さい。

 また火星宇宙軍の戦艦が軌道上にある木星の艦隊を迎撃しています。

 落ち着いて各市長の指示に従って避難を始めて下さい。

 もう一度宣言します。

 火星は地球から独立を宣言します。

 私達の未来は私達の手で切り拓いて行きます』

エドワードの宣言の後に火星全域の様子が映し出されていた。

新型の機動兵器ブレードストライカーが敵を撃破していく姿を見ながらエリスは全員を見ていた。

また宇宙空間でたった一機の機動兵器が縦横無尽に動いて戦艦を攻撃していた。

それを見たパイロット達はクロノが一人で宇宙で戦う姿に目を奪われかけていた。

「分かったわね!

 私達の未来は私達の手で切り拓くわ。

 火星を見捨てた地球を見返してやるわよ。

 これから私達はユートピアコロニーへ行き、市民の救出を行うわ」

エリスの言葉を聞いたパイロットは敬礼してブレードへと乗り込んでいった。

「隊長、クロノさんはこの為に俺達を鍛えたんですね」

隊員の一人が話すとエリスが答えた。

「そうよ、クロノさんは火星を救う為に来たのよ。

 私達が生き残れるように鍛えたの」

「だったらクロノさんの期待に応えないと不味いっすね!」

「当然だろ!

 コイツもクロノさんが持ち込んで来たんだぜ」

「そういう事よ!

 私達はクロノさんとこのブレードストライカーを信じて戦うだけよ」

「クロノさんがいる宇宙はどうなります?」

「クロノさんが指揮する戦艦が木星の艦隊を迎撃するって言っていたわ。

 クロノさんも私達を援護する為に宇宙で頑張っているのよ。

 火星の市民を一人でも多く救う為にね」

「「「「了解しました!」」」」

部下の質問にエリスが答えると部下達は自分達のするべき事を理解して発進手続きを管制官に求めた。

遂にブレードストライカーが産声を上げて戦いの場へ飛び立とうとしていた。

この機体が火星全域で活躍していく事を思い浮かべて、エリス達は準備を始めていた。


『マスター、遊んでないで帰ってきてください』

ブラック・サレナのコクピットにいるクロノにダッシュは呆れるように話してきた。

「久しぶりだからもう少し良いだろう。

 ここしばらくデスクワークでストレスが溜まっていたんだよ、ダッシュ。

 それに昔のようなハンデも無いから気分が良くてな」

ダッシュと話しながらもクロノは無人戦艦を撃破していった。

その腕は衰える事はなく、昔より上達していた。

『クロノ、いい加減帰ってきましょうね。

 みんなも待っていますから』

にこやかに話す笑顔のアクアに、

『……分かった、すぐ帰るよ』

クロノはあっさりと答えてユーチャリスUに帰艦した。

ブリッジに来たクロノにセレスが、

「パパはママに弱いんだね」

と容赦のない言葉を告げるとクロノは、

「男はね、惚れた女性には弱いんだよ。

 だからパパはママには勝てないんだよ、セレス」

クロノは優しくセレスの頭を撫でて話していた。

「ク、クロノ!

 何を言っているんですか。

 早く作戦を始めますよ」

アクアが顔を真っ赤にして恥ずかしそうに話題を変えようとしていた。

ブリッジのクルーはそんな二人を見て、

(アクアさんも苦労していますね。

 クロノさんはコレさえなければ良いのに)

とクロノの朴念仁ぶりにアクアの苦労をしのんでいた。

「じゃあクオーツはみんなが好きなんだ。

 みんなに負けてるからね」

ラピスが楽しそうに話すとアクアが頭を抱えていた。

(アクアさんも大変ですね。

 クオーツくんってクロノさんそっくりだから)

「ちがうよ〜。

 僕が好きなのはサラちゃんだよ。

 お父さんが女の子には優しくしないとダメだぞって言うから弱いんだよ」

クオーツがラピスに話すとアクアはクロノに微笑んで話す。

「あとで話があります。

 いいですね、クロノ」

「お、俺は間違った事は言ってないぞ」

クロノは反論するがクルーは、

(なるほどクオーツくんの朴念仁はこうして酷くなるんですね。

 私達も気をつけましょうか。

 未来のクオーツがサラちゃんとやらをアクアさんみたいに苦労させないように)

『マスター、それでは宙域にいる艦隊を撃破していきます』

「……そうだな。

 アクア、始めようか」

疲れた様子でクロノは話すとアクアも疲れた声で返事をしていた。

「そうですね」

子供達が不思議そうに二人を見ながら、

ユーチャリスUと六隻の戦艦ははダッシュの操作の下で無人艦隊を撃破していった。

これにより火星は宇宙からの木連の侵攻を抑える事に成功した。

この後、ネメシスを電子掌握して内部に配備された核を奪う事に成功した。

この核を用いて火星は木連への攻撃を封じ込める作戦をする事になる。

……だが木連はその事を知らなかった。


―――木連作戦会議室―――


「完勝とまでは行かないみたいだな」

映し出される映像を見ながら草壁は残念そうに話した。

「そうですな、閣下。

 幸運にも火星と地球の分断には成功しました。

 まず地球を攻撃しますか?」

秋山が草壁に今後の作戦を訊ねると、

「いや、秋山君。

 まず火星を攻略する。

 市民達に安全な大地を与えるのが我々の使命だろう、違うかな?」

「ではこのまま殲滅戦をするのか?

 火星の一般市民を皆殺しにするんだな」

「海藤大佐、その件は既に決定しています。

 今更むし返すのはやめて下さい」

秋山が注意すると海藤もそれ以上は何も言わなかった。

「では閣下。

 まずはこの二つの都市から攻撃しますか?」

画面に映る火星の地図に秋山はノクターンとアクエリアの名称で火星の住民に呼ばれているコロニーを示した。

「いや、北半球を制圧しようと思う。

 この二つを先に落としてから南半球を制圧しようと考えているのだ」

それを聞いた海藤と秋山は目を合わせて会話をしていた。

(海藤さん、やはり閣下は)

(そうみたいだな。最悪の事態も考えんと)

「では準備を始めようと思います。

 火星も備えていたみたいなので、こちらも万全の状態で攻撃しましょう」

秋山は草壁に自分の意見を述べると草壁も火星の戦力を見たのでその意見を採用した。

「うむ、秋山君の意見は正しいな。

 残った艦は次元跳躍門の護衛に回して次の準備を為の威力偵察を北半球に行う」

草壁が指示を出すと士官達は準備を始めようとした。

「我々の正義の第一歩を地球と火星に見せた。

 正義が勝つのだ!」

草壁が叫ぶと士官達も正義を口にしていた。

その光景を海藤と秋山は危険なものだと思っていた。


「やはり草壁は目的と手段を履き違えたみたいだな」

いつもの料理屋の奥で村上は秋山と海藤から聞いた内容からそう判断した。

「自分もそう思います。

 村上さんに教えてもらった事を併せて考えると今回の作戦は失敗ですね。

 戦術的には勝利かもしれませんが、戦略としては大失敗です」

「そうだな、これで木連は泥沼の戦争を勝ち続けなければならなくなった。

 戦争せずに地球に対しての有効な戦略もあったが、草壁は最も最悪な手段を選択したな」

秋山と海藤の意見を聞いた村上は自分の推論を述べた。

「火星に勝つ手段があるのかもな。

 それを使うには火星の住民が邪魔だった……だから殲滅戦を仕掛けたのか?」

「だが火星は生き残った。

 こちらの位置を知ればおそらく報復してくるぞ。

 その事を誰も気付いていない、防衛体制も万全じゃないな」

「海藤さん、どうしますか?」

秋山が市民船が沈む光景を思い、不安な声で聞く。

「何も出来んな。

 今、全員に告げても笑い話になるな」

今日の会議の様子を思い出して海藤は秋山に告げる。

「……確かにそうですね。

 みんなは正義が勝ったなどと叫んで浮かれていましたね」

「火星の行動次第で木連の未来も決まると思うよ」

村上が火星の行動を予測しながら二人に話していた。

「火星がクリムゾンだったかな。

 そこを通じて木連に交渉してきたら火星は木連の事を独自で分析して場所も知っている事になるね。

 その交渉の際に火星が何処を攻撃するかで木連の命運も決まるよ」

「火星が独自で交渉すると言うんですか?」

秋山が信じられないという顔で村上を見たが、

「そうだな、火星は木連の動きを予測していたみたいだな。

 どうやって知ったかは不明だが、地球より準備が出来ていた。

 初戦こそ勝ったがまともに戦えば勝てるか分からんぞ」

「奇襲だったから勝てたんだよ。

 話を聞けばこちらの無人機はあまり役には立っていないね。

 交渉する事で火星は時間を稼ぐだろう、その為に攻撃をすると思うよ」

「では交渉は最初は決裂すると言われるのですか?」

「多分、そうなるよ。

 元々草壁は交渉などする気もないだろう。

 ただ、次に軍を動かす口実が出来るから交渉するんだよ」

村上が穏やかに話す内容は草壁の手の内を全て読みきっているみたいだった。

秋山は不思議な思いで村上を見ていた。

「どうして軍にいないのですか。

 あなたなら閣下を補佐して戦争を回避する事も可能ではないのですか?」

村上は秋山の責める響きを持った声に悲しそうに告げる。

「無理だよ、草壁とは袂を分かったんだよ。

 こうして世捨て人のような状態になるまで監視されていたからね。

 あいつは木連の実権を握る為に何人もの仲間を影で失脚させていったんだよ」

村上の言葉に秋山は自分が知る草壁と村上が告げた草壁が別人のように感じて声が出なかった。

「俺もこの人に会うまでは閣下を信じていたが、

 今では信用できなくなっているよ」

海藤が静かに告げると村上が残念そうに話した。

「あいつの中には正義と悪の二つしかないんだよ。

 世の中そんなにきっちりと分けられない事を知らないんだ」

秋山は木連の舵取りが危険な人物によってされていた事にようやく気付き始めた。

だが気付いても既に戦争が始まっているので、なんとかしなければと焦りだしていた。

「焦るなよ、秋山。

 迂闊な行動は自分の首を絞める事になるぞ」

「ですがっ!」

「まず、するべき事は火星がどう動くか?

 火星が市民船を攻撃すれば、火星は木連を許す気は完全にないだろう。

 その時は木連に殲滅戦を仕掛けても地球は黙認するだろうな。

 地球もいい加減な対応を火星にすれば大変な事になるな」

焦る秋山を諌めるように村上は次の問題を秋山に教えていた。

それを聞いた秋山は考え込んでいた。

村上と海藤はそれを見ながら木連を支える人材になって欲しいと願っていた。









―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
EFFです。

火星の独立を早める事にしました。
火星内部の事ですが。

また木連の内部も変えて行く事にしました。
TV版では草壁以外の戦略家がいないように思えたので、草壁の粛清から逃げ延びた人物として村上を出しました。
秋山も前線指揮官として出ていたみたいなので、彼の成長を考える為に海藤と村上を師として出しています。

では次回でお会いしましょう。




感想を浮気者さんに依頼しました。

感想代理人:浮気者


ど〜もど〜も、こんにちは。
『シルフェニア』の管理人:黒い鳩さんから今回の感想代理を承ったしがない駄作家:浮気者でございます。

この度は人様の作品に感想をつけるという大変な役目を仰せつかってしまったわけですが、誠に遺憾なことに浮気者はEFFさんの改訂前の作品を読んだことが ないんですよねこれが。
だもんで改訂前と改訂後を見比べてココがこうだアレはどうだって意見を言うことはできませんのでご了承ください。
え?だったら今から改訂前を読めば良いだろって?
申し訳ありませんが、私の個人的理由でその案は却下されました。理由は訊かないでください。

さて、そんなわけで今回掲載された改訂後作品10話分を一通り読ませていただきました。
誤字脱字・妙な日本語などについては言及しません。
そんな些細なミスはどんな大作家であろうとやるときにはやってしまうものです。
問題は中身。
読者が求めているのは国語の教科書のような完璧な日本語で綴られた文章ではなく、作家の独創性にあふれたアイデアなのですから。

その点EFFさんの作品『僕たちの独立戦争(改訂版)』は大変独創性にあふれた作品だと思います。
アクア=クリムゾンが(悲劇のじゃない)ヒロインでしかもまともにかわいらしい女の子なナデシコ作品なんてそんじょそこらではお目にかかれません。
ええ、かわいらしいです。乙女です。萌え萌えです。そしてラブラブです。
アキトとアクアがまるで夫婦のような掛け合いをして、しかも子供が3人もいるナデシコ作品なんてそんじょそこ(略)

まだナデシコは影も形も出てきていない状態ですが、たくさんのオリキャラたちが物語に華を添えてくれています。
EFFさん本人も気にしておられるようですが、オリキャラは物語を破綻させたり収拾がつかなくさせたりする可能性を秘めています。
しかし使い所をきちんとわきまえてあげればその作者独自の世界観を作り出すのに一役買ってくれることでしょう。
この作品が今後オリキャラによって破綻するか飛躍するかはEFFさん次第です。がんばってもらいたいところですね。

浮気者も一人のナデシコファンとしてこの作品を大いに楽しませてもらい、また、期待させてもらっています。
斬新な切り口でナデシコ世界の新しい姿を、可能性を示してくれたEFFさんには絶大な拍手を送りたいと思います。
はい、拍手拍手!皆で拍手!ワ〜〜!パチパチパチパチ!
では、EFFさんの次回投稿に乞うご期待ですよ。


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