集さんの注釈入り初校です。これは皆の参考になるはず。

 0−0

 〜

 次に目覚めたとき、私はあまり機嫌が良く無かった。

 というより、寝ている途中で強引に叩き起こされて尚、御機嫌麗しいものの方が一般的ではないか。←逆の意味になってます

 1−1

 1−2

〜 

かくの如しで正規のカリキュラムの履修は到底不可能なので、急遽、午後に開かれた講座は歴史について、今日の「仮)太陽系戦争」に至る、安全保障にまつわる授業が行われた。←「『太陽系戦争(仮称)』における安全保障」に関する授業 ということ?

 簡潔にやや強引、ポジティブに書き付ける。

 1−3

 少しは自分のコトも書こう。

 幼少からのアレ、オリンポスの幻影を、昨日は真昼間に、見た。

 最近、見ていなかったので久々の御無沙汰ぶりだ。←間違いに読まれる可能性大

 もうすっかり馴染みになってしまった、火星、否、太陽系中最大の、オリンポスの、山頂の光景。

 いったい“これ”は何なんだろう?。未だにその意味が判らないよ。

 2−1

 中東のイスラエル、民主イラクとそれを取り巻くアラブ諸国でも短くも熱い戦いが行われ、イスラエルは周辺国を道ずれにこれも滅んだ。←「道づれ」。こういう誤字や変換ミスなどは気付いたら都度、こちらで直します。文末の「。」の抜けとかも。

 アラブ諸国は聖戦を宣言し、敵対国へBC弾頭弾による攻撃を敢行しつつ、世界の街角で聖戦の戦士が決起。←誤りではないが、流れ的にはちゃんと「決起した」が好ましい

 2−2

 しかし、総てが巧くいったワケではなかった。

 まず、バチカン市国が、地球連邦への加盟を拒否した上で、“破門”を宣告した。

 聖戦の惨禍の記憶はまだ生々しく、連邦はキリスト教を含め、いかなる宗教をも国教に据える考えは無かった。

 これは、連邦設立に当たって早々の試金石だったが、大多数はこれを乗り越えた。

 かつての多くのキリスト教信者が、キリスト教を捨て、無宗教か、大乗仏教か、日本の神道に乗り換えてしまったのだ。

 バチカンには衝撃が走ったが、WW3を経て、人々は更に現実的になっていた。

 キリスト教の狭義な世界観は、もはや人々を救い得ない、云わば時代遅れ、錯誤の宗教に堕していたのだった。

狂信的なキリスト教者の目に触れると作者の身が危険な表現なので、「キリスト教とわかるけど、明記していない」という形を推奨します。当時の世界で最も多くの信者を獲得していた宗教、とか、宗教立国として名高い小国、とかそういう。

 やがて、島、人工島がちらほらと進宙を始めた。

 島への入居が進むにつれ、あぶり出しの様にそれは問題化していった。

 所謂、2級市民疑惑である。←読者にとっては急に「いわゆる」として全然知らないネタを振られる形になるので、もったいぶって1行空きとかにせず、すぐに「2級市民疑惑とは〜」と説明を続けてほしい。「いわゆる、って感じで当然のように出てくるからには、ここまでにすでに説明されてたっけ?」と前を読み返す人が出てしまうと思われる。↓この文を、空き行ナシで「すなわち」とか言って続けてもらえれば十分。

 2−3

〜 

 3−1

 私は、運命という言葉があまり好きじゃない。

 それはたぶん、私自身が運命的存在だからだろう。

 幼少期に両親を失い、ワケの判らない幻覚を繰り返し見せられ。

このへんの赤は、ミキ日記なので許容。修正は要りません。

 それが、運命だというなら。

 決着を付けたい。

 そんなことを考えていたその日、私は正に運命そのものに見舞われた。

「ミキ・カズサさんですね。突然なことで失礼致します」

 かっきり午後11:00。

 約束通りに二人はやってきた。

 一人はいかにも学者ですというやせぎすな男。

 もう一方は、学者よりも刑事か何かみたいな眼光鋭く引き締まった男。

 学者の方が、似つかわしい優しい声で切り出した。

「こうして検体に接するのは初めてです。見事だ」

 ホントに実験室のマウスでも前にしたみたいな態度でげんなりする。

「失礼、彼はこのプロジェクトに携わってから、一度キミを見てみたいと御執心だったんでね」

 刑事の方はずいぶんと人がましい。←「人がましい」の使い方が辞書と違っているような。次の文が「そういう私もかなり失礼」ということは、この「人がましい」は失礼、傲慢、上から目線…という意味合いになるはずだが、元来の意味としてはそういうニュアンスはない。(ファンタジー文化圏の中で意味が一般と転じてしまった単語がときどき見られるので、そういうたぐいかも?)

 3−2

 また、火星と地球・月を連絡する定期航路も、「マーズランナー」の名称の元、月1本の規模ではあるが既に就航している。地球のスカイフック(地名とも、特性などの表現ともとれる)の港を発し月でスイングバイ(←語句がわからない読者多数)した後、火星を目指す航路だ。

 火星開発局でももちろん開発の最前線ばかりではない、むしろその99%がバックアップとしてデスクワークをしたり機材のメンテナンス、“機材の”開発、“地上での”実験といった地味な作業でそのまま役割を終えることになる。志願は当然自由だが、これも当然受理されるとは限らず、受理されたとて過酷な選抜が待っているのは既にお分かりの通りだ。←読者はすでにおわかりじゃなく、初めて聞く話なので違和感があります

 そこに、奇妙なウワサが流れた。

 今回のセンバツには、シード権を獲得した者がいる、というウワサだ。

「誰、それ?」

「いや、何でも凄いコネがあるらしい」

「それって不正じゃん」

「在り得ないね、ばかばかしい。連邦規約違反だ」

「しかも、人間じゃないんだってさ」

「人間でないなら何だよ」

「天使、らしい」

「ますますばかばかしい」

 だが、ウワサは執拗だった。

この文はライトノベル的。フィーリングはわかるが正しくはない。うわさは「主体が特定されない言葉」。執拗は「誰かの意志、思い、気持ち」から生じるものなので、特定・不特定にかかわらず「誰か」の介在がある言葉。

こういう、「主体のない言葉」と「主体のある言葉」を噛み合わせてOKなのが昨今の軽めのフィーリングの小説の特徴(ラノベやファンタジーの他、ケータイ小説など)。実際は読みづらい。

「ウワサは執拗に続いた」になると「ほんとは×」から「△」になる。原稿文の「うわさがある(主体なし)」のニュアンスから「うわさをする(不特定の主体が存在)ことが(人々の間で)続いた」にニュアンスが転じるため。(この「人々の間で」が主体というわけ)

くだくだ説明しましたが、ライトノベルと「普通の」?小説の温度差というか、「段差」みたいなものがわかりやすい一文だったので…。「すごい誤りだからチェックした」というわけではないです。

 その年は何ごともなく終わったが、ウワサだけが残った。

 候補生の一人は、シード権を獲得した、天使だ、火星クラスには天使が混じっている……。←読点の打ち方が読みづらい

 3−3

 “入学”したときから気になるコだった。←誰目線? 直正目線なわけですが、読者は混乱します。「彼はじっと彼女を見ていた。(一行空き)」くらいの導入がないと、ここで突然「読者は今、作中の、これから出てくる謎の人物になりましたよ!」と、説明もないまま状況判断しなければならず、神の読解力を求められることになります。せめて「誰かは不明だが、男が登場。ということらしい」くらい伝えてあげてください

 始めに興味を覚えたのは、彼女がまとう、どことなく落ち着いた雰囲気だった。

 巧く言葉に表せないが、まるでベテラン、の様な。

 しかしすぐに、実際の彼女がそうでないことが判った。

 常に教室の最前列に陣取り、しゃかりきになってノートを取るのだ。

 もう誰もが、この“火星クラス”の大部分を占める研修の過程は、云わば根性試しで、余程の事情がない限り、全員、最終過程に進めるということを、最近では不文律として知っていた。本番は、最終過程でデータセル・ナノマシンを投与されてからの厳密な審問から始まることを。

 だから、座学でも必要なのは要点を押さえることで、ごりごりノートを取るのは二の次であり、極端なハナシ、理解さえ出来れば全くノートなど取る必要は無い。今どきメモライザも使わせず、ペンとノートの筆記のみを許可する、などナンセンスもいいところだ。

 それが彼女は、一言一句漏らさずにノートに書き留めようとしているかの様だったのだ。

 とんだベテランがいたものだ。

 直正は、自分のカンが外れたのに伴い、最初に感じた興味も無くしていた。←ここでやっと誰目線だったか判明。読者にはキツい

 しばらくして、彼女との“再会”を果たしたのは、何度目かのランチのときだった。

 食堂の、彼女がいつも隅の方で一人で食べているそこへ、なぜかその日は割り込んでみた。

「ここ、空いてる?」

 どうぞ、と関心なさげな声。

 それで彼女を間近にして初めて、食事でも外さないその大きなサングラスのせいで、美醜すら区別が付いていないのを発見した。

「ちょっと、はなし、いいかな?」

 別に、というまた気の無い返事。

「いつも、教室の最前列にいるね」

 ええ、必死だから。

 それは、初めての直正と彼女との接触だった。

「もしかして、ナノマシン障害?」

 まさかねと軽いカンジでたずねると。

「うん、一種の、ね」

 今日は晴れてるね、ええそうねくらいの感じで返されてしまう。

 ええ、マジかよ?!。

 直正は一足跳びに相手のプロフィールの急所を直撃してしまったのを、今更後悔したがもう手遅れだった。

 ナノマシン障害。いつの世も、何らかの事情で福音から見放されたものは存在する。

 ナノマシンが提供する、データ、スキル、フィジカルなものも含めて。それら、現代技術の粋の救いから見放された哀れな子羊たち。ナノマシン障害は一種、“限りない不幸”の代名詞だった。※ナノマシン障害については、この場所でもっとちゃんと説明がほしい

 言葉を失ってしまった直正に、今度は彼女の方から触れてきた。

「だから、ホラ」

 顔から外してみせたそれはサングラスではなく、データ・グラスだった。

「特別許可貰ってるけど、焼け石に水、かな」

 そういって、彼女はわらった。

 すなおに、かわいい、と思った。

「あーえー、その、付き合わない、オレ達」

「今はパス。1秒でも惜しいから」

 あっさり秒殺されるも。

「研修が終わったあとなら、いいわよ」

 やった!ナイスリカバリオレ様!直正は勢いこんで。

「オレ、小倉直正」

 彼女も屈託なく応えてみせた。

「ミキ・カズサよ。純系日系?」

「親は両方ともね」

「私は、父方がそうだったから」

 他愛もない会話、だが直正の心は昂ぶった。

 先ほど、ちらりと見えた素顔は、飛びっきりで、直正の理想に近いとすら言えるモノだった。

 有体に言って、いわゆる一つのワンアイラヴだったのだ。

 3−4

 3−5

 そして、研修最終日。

 今年は、全員が合格だった。

「ようやく、追いついたわ。今年は例年に比べてアップデートが少なかったから」

 直正はいぶかしんだ。

「それって、まるで去年も受講したみたいだね」

 彼女は謎めいた微笑みを浮かべただけだった。

「ここまで来れば、もう一息」

 また謎めいた台詞をはく。むしろここからが大変だというのに。←ここも「誰目線文」。三人称の文章なので「直正」「彼女」は並列したキャラとして神の視点のもとにある。「Aは○した、Bは○だった、そして感じた。」←「感じた」はAが、Bが?他の誰かが?作者、ちゃんと書けよ。 …と読者が思う構造。

 実は、審問の設問そのものは、結構単純で、例えば次の様な出題。

『火星の地表で貴方は作業車で遠方まで調査に出向きました。しかしその帰途、事故を起こし立ち往生。基地までの移動時間は作業車で約2時間、酸素残量は約3時間。貴方が取るべき最善の手段は?』

 模範解答として考えられるのは、単純に、『基地へ状況を報告、閉鎖系を活性化させた後に別命あるまで待機』等の常識的回答だが、その常識的判断を矢つぎ早に、常に的確に、特に危機の際にも持ち得るか否かを面接官10人の揺さぶりを受けながらその前で試されることとなる。

「ああ、そのくらいなら大丈夫」

 直正は、奇妙な感覚に囚われつつあった。

 もしかしたら、彼女こそが、天使なんじゃないのか、と。

 その確信は、受講番号では最後尾だった彼女が、データセルマウント後の最終審査では一番に呼ばれ、極めて短時間に涼しい顔で出てきてから。直正の疑念は確信に変わった。

 理屈は判らない、だが、彼女こそが、シード権を獲得した、天使なのだ、と。

 調査官達も瞠目していた。

 総ての設問に淀みなく回答したばかりか最後には設問の矛盾点まで衝いてきたのだから。

 流石は純粋天使、と恐れ入っていた。

 そして、最終審査後の、合格者の発表。

 再び、ミキの名前がトップに。

 次いで、下から二番目に直正の名前もあった。

 火星への道は、拓かれたのだった。

 残された者は、そのバックアップに当たることになるが、約100日に及ぶ研修は、参加者全員にチームとしての一体感を醸成するに十分な濃密な時間を与えていた。敗者は勝者を称え、勝者はその付託を受け、旅立つ。そういうことだった。

 その輪から少し離れたところにいる彼女へ、直正は近づいた。

「合格、おめでとう」

「貴方もね」

「うん、有難う」

 二人の周囲には、周辺の狂騒が届かない、ブラインドカーテンがある様な、静謐な空間があった。

「……キミが、天使だったんだな」

「……天使というより、堕天使ね。翼はないわ。飛べない、天使よ」

「そう、か」

 何がそうなのか判らなかったが、直正はなんとなくうなずいた。

 と。

「なーに二人してしんみりしてんだよ」

「お祝いの席なんだからもっとぱーっといこうぜ」

「ほらほら」

 直ぐに二人も喧騒の中に巻き込まれていった。

 ちょっとした打ち上げパーティはすぐに散会となった。

 明日から直ぐに各員のスケジュールは始まる。

 今しかない。

 直正は思い切ってミキを誘ってみた。

「どう、このあと、時間」

「どーしよーかなー」

 ミキは悪戯っぽく笑ってみせ、しばし直正の反応をたのしむ様子だったが。

「うそよ。約束は守るわ」

 結局、うなずいてみせた。

 ここは、行政組織を集中させた、官庁島だった。

 であるので、娯楽や、ロマンチックな施設とは完全に無縁で、初デートのシチュエーションとしてはおよそ最悪といえた。

「とりあえず、展望窓にする?」

 直正はニガ笑いとともに提案した。リラクゼーションスペースであり、ここでは広大な島内での唯一のデート・スポットとしても利用されている。

「定番?」

 ミキの方は内心の苦笑を隠して応じた。

 彼はまだ、自分のことを何も知らないらしい。

 でも、妙な詮索好きよりは、いいかも。

 “そこ”で両親が死んだし私も遭難した、といったら、どんな顔をするか。

 展望窓は、島の構造にもよるが、外壁に一定間隔で設置されている。窓としてもそうだが、同時に植樹がされており、補助的な天然の浄化施設としても機能しており、また森林浴の場としても提供されていた。

 で。

 冷静に考察すれば十分予見しえた事態であったのだが、エンジニア2人で宇宙空間を眺めてみても、殆ど空気は変わらなかった。

 ただ。

 ふたり、ならんでぶらぶらと歩くだけ。

 むしろ、その方がよかった。

「親父がヤクザな商売でね。その反動か公務員さ」

「ヤクザって?」

「探偵、っていうか便利屋っていうか。連合のテロリストともやりあったとか。息子の僕にも正体不明」

「ふーん」

 直正は直正で、意外になにやら複雑な背景を背負っているようで。否。

「日系だと、ほら、いろいろあるから」

「そうよねー」

 その通りだった。

 WW3で故国を焼失した日系人は、一時期、完全に国家の庇護下から外れ、地球連邦に編入されるまでの間、様々な局面で、各人が独自の才覚での行動を必要とされた。

「正直、じつは火星への興味はそれほど強くなくて。同期のみんなには悪いコトしたかもしれないけど。でも」

 直正は、じっとミキの眼を見ながら。

「こうして、会えた」

 ミキも素直に視線を絡めて応じた。

「嫌い、じゃないわよ。たぶん」

 しかし、口では戯れてみる。

「ほかにいるの」

「今はいないわ」

「じゃ、一番だ」

「明快ね」

 実際、悪くなかった。古今東西、若い男女が理由を見つけては互いにひっつき、こうして楽しむワケだわ、と。←若干ミキ目線とわかりづらい。あと、一応地の文になるので「ひっつく」というスラングは避けたい。くっつくはOK。

 直正は言葉を切り、足を止め、ミキに改めて向き直って、告げた。

「ミキ・カズサさん」

「なんでしょうか」

 ミキも調子を合わせ。

「キス、してもいいですか」

 ミキは答える代わりに、軽く眼を閉じてあげた。

 それから、何度か唇を合わせるたびに、少しずつ、確実に、お互いの間で何かが昂ぶっていくのが判った。

 二人の夜を過ごす時間は、まだ、あった。

「その日にキスしてシケ込んでー。ああ、インランだったんだ」

「忙しかったし、これからも忙しいし。いいじゃないタマには」

「タマにはねー」

この会話は何?ミキと直正?それとも架空の読者を設定して、この後に二人に起こったことの暗喩として読者に感想を述べさせてる? 読者には完全に意味不明。私にもわかりません。どうとでも取れすぎて。

「どうにでも取れる」という書き方をする場合には「意味不明」でなく、「どうにでも取れるように、作者があえて意図して書きますよ」という信号を出さないと失敗。ここは失敗しています。

 4−1

 軍からの発議による緊急連絡会議の席上だった。

 中空にスクリーンが表れ、グラフと表が表示される。

 先月の我が軍の損害、そして今月。

 群島勢力の小惑星帯との資源調達路に向けた連邦の通商破壊艦隊。

 艦載機は無人の使い捨てだが母艦は流石に使い捨てではなく、戦闘母艦の様な大型艦は実際に有人のものある。

 艦載機の消耗はともかく、母艦の損害が顕著に増大していることが判る。

 有人艦にはまだ損害は出ていないが、このまま戦力が減少し続けるのであれば、前線が後退し、有人艦もが脅威に晒される恐れが出てくる。

 軍からは艦隊戦力の再編成が提案されるが、議長は別の一面を指摘する。

 あたかも、まるで一夜にして連邦側の兵器体系が旧式化したかにも思える。

 連絡武官はうなずいた。情報の収集も強化しているとのこと。

 議長は珍しく逡巡を示した。

 群島が、“機動兵器”の様な、一種革新的な、コペルニクス的な転回を戦術的に実現していた場合、こちら側での対策は、と。←若干読みづらい文ではあるが、許容範囲

 ふと、軽やかなアラーム。

 連絡武官は端末を操作し、最新情報、最前線での貴重な記録情報が到着したことを告げた。

 先ほどの統計系統の情報が消去され、映像出力が始められた。

 星空、宇宙空間だ。

 そこに、小さな点が表れた。矢印が重なる。

 加速している。約10G。

 もう一つの小さな点。

 同じく矢印、友軍の無人戦闘機。

 二つの点が重なる。

「ミサイル?」

「いえ」

 二つあった点が一つに。こちらの戦闘機のみが破壊された。

 ざわめき。

 点が次いで記録者に迫る。

 アップになったときに一時停止。

「これは……」

 誰もが言葉を失っていた。

 鋭角的な頭部に、ボディ、そしてボリュームたっぷりの四肢。

 それは、“人型”だった。

「何なんだこれは一体」

 誰かが悲鳴の様な声を上げた。

 因みに“機動兵器”は人型とは似ても似つかないフォルムで、何より手足などはない。←実はこの説明は、機動兵器が初出するところに、もうちょっときちんと出してほしい。そのうえでここで再確認で基本フォルムをもう一度語るのがベスト。読者は説明を忘れるので。

 巨大な推進剤タンクに姿勢制御モータ、強力な光学センサ、ただそれだけだ。

 直後、記録者も破壊され、一瞬ホワイトノイズを吐いて映像は終わった。

 4−2

 その実態は、壊走そのものだった。

 議長による撤収が指示されるまでに、連邦宇宙軍内宇宙艦隊はその戦力の実に約4割を損耗していた。

“3割全滅”の軍事一般則に照らせば、全滅以上の全滅であった。唯一、有人戦力に未だ損害を蒙っていないのが明るい材料だが、無人戦力でカバーしていた前線が崩壊し、後方の有人戦力が危機に晒されるのはもはや時間の問題となっていたのだった。もちろん、損耗は織り込み済みで戦力の補填は行われてはいた。要は損害に補充が追いつかなくなっていたのだ。

 これが例えば総力戦体制であったならば、或いは。

 という意見も当然出されたが、議長はあくまで限定戦争を望んだ。

 いうなれば、“原価割れ”を起こすくらいなら砲撃を強化して強引に“時計の針”を進めるまで。

 つまりはそういうことだった。

このあたりは切らずに続けるべき。「あるいは――という意見も」「まで――つまりはそういうことだった」。「――」を使って続けるのが適切である、一種独特のフィーリングでの接続なので、こういう切り方になっているというのは理解できるが、やっぱりこの切り方で「読者が自分でつないでフィーリングを理解しろよ。」というのが通用するのは、ラノベやファンタジー文化圏の「お約束」としてのみ。

 軍は撤収に入りながらも一つの疑念を抱きつつあった。

 勝ち誇ってよいはずの群島勢力が、その動きを全く活性化させないのは何故か。

 もちろん、嵐の前の静けさという可能性はある。

 それにしても、準備行動としてその予兆はあるはずだ。

 完全に動きを秘匿しているのか。

 戦略砲撃が予想以上の効果を発揮しているのか。

 或いは。←これは許容。「或いは――。」というような形で、一般の小説でもよく見る単独文。

 疑念は、突然の群島勢力代表部からの講和の申し出という形で裏付けられた。

 いや突然、と言っても開戦から既に10年と5ヶ月の時間は経ってはいるのだが、予備交渉等の事前準備を経ず突然に、という意味である。

 その自らの申し出を群島側は一度撤回してきたが、クーデターでも起きたのだろう。代表部の人員が刷新され、謝罪と共に再度、和平の申し入れがあり、両者は交渉のテーブルに着いた。

 そして、細則は後ほどという体にして、まずは両者間での停戦についてが合意されたのだった。

 体裁はともかく、実質的には連邦政府の粘り勝ちだった。

 政治的事務レベルの折衝が展開する裏では、双方の軍、情報関係の者たちによる活発な交流が行われていた。

 結果、連邦軍は疑念の解答を得た。

 “例のアレ”が、群島側の戦力ではなく、それどころか、“アレ”のせいで群島側は完全に物流のラインを断たれ、更に激化した戦略砲撃により完全に継戦能力を失い、一部の徹底抗戦を叫ぶ原理主義者を除き、民意も厭戦一色に染まり、もうどうにも身動きが取れなくなっていたということを。

 パズルの最後のピースがはまり、完成したのは大きな謎であった。

 “アレ”は、では一体何なのか、という。

 正体は何で、何を目的としているのか。

このへん、行を空けることでかえって文脈が読みづらくなっています。「完成したのは、アレ≠ヘ何なのか、正体は何で目的は何か、という大きな謎であった」というのをドラマティックに盛り上げるべく切っているわけですが、こんなに離してしまうとこの↑元の文に合成し直せない読者も出てきます。せめて空き行はナシ。できればこんな感じ希望↓ ちなみに修正例に「――」が多いのは、切れ切れにしてあった元のニュアンスをできるだけ残すためにやっているのであって、とくだん趣味というわけではありません

 パズルの最後のピースがはまり、完成したのは大きな謎≠ナあった。

アレ≠ヘ一体何なのか、正体は何で、何を目的としているのか――という。

 誰かが、“良い宇宙人”なのではないかと冗談交じりに言った。

 確かに、“アレ”のせいで、分裂した人類は再び手を握りあえた、が。

 そう単純なことで良いのか。

 儚い希望は、戦争を通じてさえなかった、民間への突然の被害という形で打ち砕かれた。 ↑この文わかりづらい。もうちょっとちゃんと書かないと、どの段階で何が起こったのか伝わりづらい。「初めて起こったこと」はフィーリングで書かず、読者にていねいに説明するべき。

 4−3※4の3、4の4とも全面書き直し希望。ほんとは「多分説明してもわかりづらいだろうから、直した案を書こう」と思ってましたが、一応ダメ出しの説明だけ入れてバックしてみます。

 ともに無事、火星行きのチケットを手にした二人だったが、約束通りの付き合いは出来なかった。↑二人って誰ですか。

「え?言わなくてもそんなの、わかるじゃん。」と言いたいと思いますが、何度も「思わせぶりに初登場らしき存在を出してきて、後から説明する」という手法をさんざんやって読者を混乱に陥れてきて、ここだけ「二人、と書いたらミキと直正に決まってるじゃん」というルールだというのは勝手がすぎます。

「書かないけど、なんかノリでわかるよね」がライトノベル&ファンタジー文化の書き方。

「きちんと書かないと失礼」が一般の小説。もう少し舵をこちらに切ってほしいです。

 理由は、火星行きが決まって更に多忙になったコト。

 地球、火星の間を約2年の航宙となるが、その間、乗客はただのペイロードとして搬送されるのでは無かった。

 航宙のメンテナンス要員として、また火星の最新状況を学ぶ生徒として、そして学んだデータを基に伴にスタッフとしての役割を期待される研究者として、そしてそれらの役割を果たすべく、火星行きまでの時間はその準備として忙殺されることになっているのだった。

 とてもロマンスなどやっているヒマはなく、正に1分1秒が惜しい日々が続き、気が付けば『マーズランナー05』は、地球−月間の軌道から月周回軌道へ遷移しようとしているところだった。

「キャプテン、あれは……」

 船長に向けた航法士の叫びは途中で悲鳴に変わった。

 船内に警報が弾けた。クルーは全員、現在の作業を中断し直ちに気密服を着用する。

 破壊音が何度も船体を貫き、しばらくして途絶えた。完全に空気が抜け切ったらしい。

 船殻がついに裂けた。裂け目の向こうに宇宙空間が覗く。そして。

 破壊者の姿も。

「……人型……??」

 いぶかしげな呟きが、回線上で交錯した。

 裂け目が拡がっていく。船体が完全に断裂する。

 そしてまた。

 それは、光の塊の様に見えた。光の粒子をまとい、曳きながら忽然と出現した。

 そのままそれは、一体の人型に激突しハネ跳ばし、相手を粉々に粉砕した。

 残るもう一体を投げ飛ばし、何かの可視光線、ビームを放ち、これも粉砕した。

「メイデイメイデイ、こちら『マーズランナー05』!!」

 『マーズランナー05』遭難を受信した航宙保安局本部は、現場宙域を統括する第4管区航宙保安局で、オンステージされていた警備艦の内、最も軌道要素が近いものを選び、直ちに現場宙域へ向かう軌道に乗せた。

 その後『マーズランナー05』からの続報は無く、乗員乗客の安否が気遣われる中、現場に到着した警備艦からひとまず乗員乗客の無事を知らせる報告があった、が……。

切り方・繋ぎ方がいまいち↑↓

 どうも要領を得なかった。

 乗客が火星クラスの修了生で、一人を除いて全員が速やかにスーツを着用して無事であったこと。

 乗員も同じく。

細切れにしていることと、「同じく。」とかの中途半端な文章にしてしまっていることで、この二文が「乗員乗客の無事を知らせる報告」の一部であることが伝わりづらい。もちろん、例のあの文化の「お約束」を前提に「なんか、わかるっしょ」というノリで読めば理解できるが、「一般の小説」としては「書けていない」というレッテルを貼られる。なんというか、このへんが典型的な「段差」ですね。

このへんから後の赤にした部分、読者にはまったく意味不明。状況が見えているのは作者一人。私もわかりません。

 しかし、対照的に『マーズランナー05』は大破しており、デブリ以上のものではないこと。

 そして……。遭遇した、正体不明の“物体”。

 一人が行方不明とのことなのだが。

 人型、とは一体何のことであるのか。

 遂に直送されてきた現場の画像を見て、その場に居合わせた本部スタッフは全員が絶句した。

 それは、確かに人型だった。←ここからが↑の意味不明だったところの説明にあたるわけですが、それにしても↑の赤いところの書き方は意味不明すぎです。ファンタジーは果てしなく「なんでもあり」なので、作者が語らなければ無限に空想できる、つまり手掛かりが与えられなければ読者にとっては無限の「無」にしかなりません。「人型、とは一体何のことであるのか」という文章は、読者にとって「ここまでに何度か人型≠チて出てきてたじゃん。何をいまさら?」と思うだけで、作者の意図のとおり「見たこともない人型≠ェ登場したのである」と翻訳できる読者はいません。

「後ろを読めばわかる」という、「煽り」の書き方が、ほんとにファンタジー系の方々はお好きです。

でもたいがい「は? 意味不明」と読者を苛つかせる「失敗」にしか仕上がっていないのが現実です。

「後ろを読めばわかる」→後ろを読まないとわかんないなら、面倒だから読まない。

「煽り」は上手くやらないと読者を減らすだけです。正直、本作を見る限り、大橋様はまだこれは上手くできていません。「思わせぶりに出しておいて、その内容は後を読めばわかる仕掛けだ!」という書き方は伝わらなければ「独りよがりで、読者に失礼」ということにしかならないです。気をつけてほしいです。

 身長、10メートル程、鋭角的な頭部を持ち、マッシヴなボディに均整のとれた四肢。

 まるでアニメにでも出てきそうな、到底我々人間の手による造形とは思えない、一見不合理しかし流麗なフォルムを持つ、人型だった。

 乗員乗客の証言も要領を得なかった。↓この後ろあたりも、細切れ文と空き行だらけでつらい…

 “コレ”とは違うやはり“人型”に、二体の“人型”に襲われたのだという。

 そして、その“襲撃”の直後に、今居る人型が現れたのだと。←今っていつですか。小説で「今」というのはいつのことかわからないので「この報告が届いた今においても、なお」など、どの今であるかを示すべき。

 今、未だに現に現場に居る“人型”が、動かぬ証拠である様にも思えた。

 警備艦は、無線の全チャンネルを使って人型に話し掛けているが、未だ反応らしい反応はなかった。

「取り敢えずどうしましょう」

 警備艦のブリッジで艇長が情けない顔をしてみせた。

 ムリもない。←誰の感想? ここは視点のブレの残り。

 正に前代未聞の事態なのだ。

 遭難現場で行方不明者一人、その代わりに“人型”一体。

この2文も煽っていてわかりづらい。いや前のも併せて3文で煽っていてわかりづらい。作者が「こう書くとかっこいい」と思っているだけで、読者には「単なる意味不明」「作者のかっこつけ」という最もカッコ悪い状態。猛省してほしいです。

「遭難した警備艦のブリッジで、艇長が情けない顔をしてみせた。まさに前代未聞。遭難現場で行方不明者が一人出て、その代わりに未知の人型≠ェ一体いる……。艇長が困惑するしかないのも、無理はない事態だった。」煽るならこういう感じで「まさに」とか体言止めとか「……」とかを使ってほしいです。

 何となく、直感ではその行方不明者と人型には相関関係がありそうだが、そんな憶測というより根拠薄弱な連想をココで持ち出すワケにもいかない。機械的に、行方不明者の捜索に全力を尽くすよう、指示する以外の方策は無かった。

 4−4

 ミキは気付いた。

 目覚めるまで何を見ていたのだったか。

 また、オリンポスの幻像を見ていた様な気もする。

 いや、夢に見ていたことを幻像とは言わないか……。

 そんな場合じゃ無かった。

 私も急いでスーツに着替えなきゃ……アレ?。

 ここは、どこ。

 何かのコクピットに座っている様だった。

 いや、座っているというより、リクライニング、ほとんど寝そべっている状態に近い。

 コクピット内は、光源の判らない淡い照明に照らされ。

 いや、これはコクピット全体が淡く発光しているのか。

 などという詳細な情景描写より。

 そうよ!!。

「ここはどこで、ワタシはどうなったのよ!!」

 彼女の声は反響することなく周りのカベに吸い込まれて消えた。

 が、反応が表れた。←ここは現れたの方の字

「わっきゃっ」

 突然、宇宙空間に放り出された様な錯覚を覚えた。

 それくらい見事な全周スクリーンの映像だった。

「ワタシのことば、判る?」

 と、眼前の中空にスクリーンが開き。

“わたしのことば、わかる”

 表示された。

「本当に判ってる?」

“ほんとうにわかってる”

 ダメダこれは、判ってないようだ。←誰の感想?

「動きは判る?こう、手を振って見せて」

 そういい、実際に右手をコクピット内で小さく左右に動かしながら、違和感を覚えた。

このあたり、文章の動詞の主体が誰なのかまったく不明な文が多いです。

というかこのへんほとんど読者に意味不明。「いつ、どこで、誰が」はまったく説明なしにひたすら「何をした」が語られているだけ。作者一人が理解して、読者は完全に無視されています。「お金を払ってくれたお客を無視して作者が遊んでいる」というのが客観的な状況です。

 手を、振る?。

 脳細胞の何処かに折り畳まれていた情景が不意に再生された。

 緊急防護膜に包まれた、自分を、抱きかかえ、しまいこむ。

 巨人。人型の姿。

「あなた、だった、の」

“そうです”

 え。

「ことば、わかる?」

“すこし”

「わたし、ぶじ、つたえる」

 つたないやりとり。と、いきなり大音量の呼びかけが室内に飛び込んで来た。←ここからやっと、状況がちょっとだけ読者に伝えられる。

『……らっしゃるんですか、でしたら呼び掛けに応答して下さい、ミキ・カズサさん。中に』

“はなせる”

 眼前に表示された言葉を信じ、ミキは声を出す。

「私は無事です、現在“人型”に保護されています!」

 警備艦側では、半分以上無駄と悟りつつも、おざなりに周辺宙域を哨戒する一方、ある種の確信を持って、全波長帯域で“人型”に対しての呼びかけを継続していた。

 呼びかけにコールがあったのはそろそろどうかという約30分後だった。←言葉の選び方がぞんざい。きちんとした言葉を。

 4−5

「ミキ・カズサさん!無事なんですね」

 無事というか何というか。←誰。

この項の冒頭は「三人称の小説」になっていない。最初に「誰目線で語りますよ」という記号になる文が必要。それがないままミキ目線に勝手に転じるのはルール違反。

「無事です!」

 次いで、どこかためらった口調の問いかけ。

「スーツは着用していますか?“そこ”から出られますか」

 参った。

「スーツは着用していません。ここから出られるかは判りません」

“いま、でる、よくない”

 それは、判る。

「了解です。本部と交信します。回線は開いたままにしておいて下さい」

 それは確約できません。

 少しして。

「その“人型”には、航宙能力はあるのでしょうか」

 判りません。

“ある”

「ある、そうです」

 勢い込んで。←誰が。「ミキが勢い込んで答えた」とも「相手がミキの言葉を聞いて勢い込んだ」とも読める。作者だけがわかっていて、読者は「それはどっちの話だよ(怒)」状態。

「その“人型”と意思の疎通が出来ているのですか?」

「限定的ですが、はい」

「その“人型”に、本艦を追随する様、伝えられますか?」

 かなり異常な事態になってきた。

 スペックも何も判らないのにムチャをいう。

 相手も相当、混乱している様だが。←この「相手」という言い方、わかりづらい。人型も意思疎通をしている「相手」。「通信してきている誰かも、相当混乱しているようだ」など、きちんと書いてほしい。

 まあムリもないか。

「ついていく、できる?」

“できる”

「出来るそうです」

 何だかバカらしくなってきた。

「では、並んで追随して下さい」

 そういうと、警備艦は姿勢制御モータを噴射して回頭し、帰還コースに向かってエンジンを始動した。

 “人型”も、苦も無くすっと警備艦の横に並び、警備艦に合わせて移動を開始する。

 コクピット内には、何のGも、衝撃も感じなかった。

 全く、外力が及んでいないかの様に。

 そのまま約10時間ほどの航宙の後、警備艦と随伴する“人型”は、第四管区航宙保安局の母港に着床した。←これ、「着床」でいいですか? 辞書引いて、このままいくかどうかご検討ください。ファンタジーは「オリジナル語」や「未来の標準語」という設定のイレギュラーな用語の意味などがあってもいいので、「床に着く」という意味で「着床」を使うのがダメとは言えません。現代の日本では、辞書上、「着床」は妊娠の用語です。

このように「ファンタジーは何でもアリ」な分、きちんと説明するのが読者への礼儀というわけですね。

 後半の行程から、すっかり熟睡していたミキは、コクピットに響く柔らかいアラームで目覚めた。

 そして、人型はサルベージ用大型エアロックに収納され、ミキの救助作業はその中で行われることになった。

 といっても。

「そと、でる、あんぜん」←これまでとカッコのルールが逆転。この「 」はミキだった。

“はい” ←これまでとカッコのルールが逆転。この“ ”は人型だった。

こういう単純なのはこちらで直します。一応書いてみただけです。

 で、皆の見守る前で、まるで手品の様に、“人型”の胸部からツルリ、と降り立っただけだったのだが。

 見守る全員があっけに取られた。

 当然、ハッチでも開いてそこから出現すると思っていたものが、まるでトコロテンでも押し出す様に、ツルリ、否、にゅるり、と表れたのだから。

 4−6

 それからが一騒動だった。

 “人外”の環境にいたミキに対し、防疫面での徹底した検査が行われたのだが。←許容かどうかボーダーライン上

「やめて止して私は正常ですだからナノマシンダメなんですってば人間じゃないの助けてナノマシンいや〜〜」

「先生」

「うむ、やはり常態ではないようだ」

 人間向けに調整された診断用医療ナノマシンに対しての、体内の防疫活動による諸症状、頭痛、吐き気、排便、/排尿衝動、他各部の痛みでのたうちながら説明した身の上の、諸般の事情がようやく理解され、身元保証人の学者・刑事のコンビとも連絡が付き、ミキはようやく地獄の苦しみから解放された。

 当然というか、未知の病原菌の様なものは発見されなかった、が。←許容かどうかボーダーライン上

 代わりにとでもいうか、人間の手になるものと異なる“物質”が発見された。

 それは、ナノマシンより更に微小で、いわば“粒子マシン”とでも呼ぶ他ない物体だった。

 もちろん機能は判らない。というより単体では機能しようがないモノだった。

この空き行いらない

 それが、無数に発見された。

 人間の(“天使のも”) ←このカッコのニュアンスわかりづらい防疫構造が反応出来ないほどに微小なのだ。

 徹底検査でも行なわなければ、発見不可能であったろう。その発見も偶然に近いものだったのだから。

 とにかく、防疫上の観点からは、ミキ・カズサに問題は無かったことが証明された。

 医師達に、良かれと思われながらナノマシンの投与を受け障害でズタボロになっていたミキは、一晩熟睡し疲労回復に努めると。(「と――。」と、―(ダッシュ)を入れればアリ)

 世界が、変わっていた。

 白い天井、壁、弱照明。

「こんにちは、酷い目にあいましたね。大丈夫ですか?」

 辺りを見回す彼女の視界に飛び込んできた、傍らに立つ営業マンの様な男は言った。

 しかし、連邦宇宙軍の制服を身に着けた営業マンはいないだろう。

「失礼ですが、どちら様でしょうか」

 疑念たっぷりにミキが問いかけると。

「これは失礼しました。私、こういうものです」

 正に営業マンそのものの丁寧な仕草、両手を添えて男は名刺を差し出してきた。

 連邦宇宙軍艦政本部技術研究2課 課長 エルロフ・ヒューマッハ 中佐

「ご丁寧にありがとうございます。あの、それでご用件は」

 男は苦笑した。

「今日は挨拶だけ……と済ませたいのですが、すみません、私どももヒマではありませんので。短刀直入に行きましょう。ミキ・カズサ、貴方は自身が連邦の“機材”であることは、覚えていますね」

 ぎょっとした。確かにダイレクトだ。←本当は一つ前の文章の主語が「男は」なので「ミキはぎょっとした」が正しい≠アとにはなるが、ここはこれでいいのでは。

 余程忙しいに違いないと思わず納得させられそうな程に。

「それは、一応」

 男は、残念ですが、と続けた。

「ミキ・カズサさん。貴方を現刻を以って、再び連邦政府が所有する機材として徴用します。私の課がこれを所属とします。所有権並びに使用権も、以って私の課に帰属するとします」

 ミキは流石にあっけにとられた。

 次いで、不愉快な顔付きで、衝動的にそっぽを向いた。

 堪えられなかった。

 男は、心底から残念そうな態度を崩さなかった。隠れサディスティックな匂いは、ない。ミキのセリフやモノローグならありだが、ここは三人称の文章の延長線上なので、「これではくだけすぎ」ということになる。「隠れサディスティック」は「一般に普通に使われる言葉」でなく「ノリ押しの、身内の文化にのっとった表現」なので、三人称の小説の地の文には向かない。この表現を活かしたいなら、「ミキはその気配を視界の隅で感じていた。隠れサディスティックな気配は、ない。」と、ワンクッション「三人称からミキ視点に移るよ記号」を入れるのがポイント。

 態度そのものの心情である様だった。

 そこで初めて、軍人には珍しいタイプ、だと思った。←ミキが思った

 他に軍人の知り合いが居るワケではなかったが。←ミキのこと

このあたり↑見ても、多分このへんずっと「ミキ視点」で地の文を書いていると思われます。あくまで三人称の中に「誰々視点」が混入する形に。

「人類の危機が、迫っています」

 男は真顔で言った。

 冗談ではない様だった。

 5−1

 戦争を勝利で終わらせたにも関わらず、政府と軍はその緊張を解かなかった。

 政府は、否、人類は、新たな、未知の脅威に晒されているのだった。それを明白に認識しているのは、一部の高官に限られていたものの。

 話せば判る、相手では無かった。

 既に軍は戦端を開いていたのだ。一方的に叩かれるがままではあったが。←「がまま」でなく「ばかり」が正しい。反撃しないのが「されるがまま」。

 戦争が実際に終結して、しかし軍は動員を解除しなかった。

 世間一般には、今回の戦争で発生したデブリの除去、スカイクリーナー作戦を続行する為の動員維持と説明され、それは事実の一部でもあった為に民衆は納得した。※デブリ、デブリとごく普通に出していますが、「ファンタジー系」の人は良く知っている語句でも、一般の人が常識として知っている言葉ではないので注意。たとえば「四つの属性が…」と言われたら、ファンタジー文化にいる人なら特に断りがなければ「火、水、風、土」として読み進められるが、一般の人に「四つの属性」だけで何を指すかを当てろというのは酷。そういう「段差」にも注意。

国語辞典を引いてみれば、「フランス語」と断り書きが入っているうえに、「登山で、〜」など限定的な説明になっている。本作で使っている意味については、辞書では「→スペースデブリ」と別の語句に導いている。つまり、読者が「当然わかる」というノリで使っているのは、「内輪の文化」に頼っていて、一般とは感覚が違ってしまっているということ。

ひと言ちょろっと直せばいいだけなのですが、これも「段差」がわかりやすい例なので説明しました。

 安全確保までとの留保期間として、特に宇宙での基本での渡航は全面禁止となった。

こういう切れ切れな書き方、文脈や文のまとまりを再構築して文意を読み取らないといけないので、とにかく読みづらいです。「煽る」のはほどほどに。読者がかわいそう。

 しかし。

 問題解決はその糸口すら見当も付かなかった。

 重要な手がかりは、前、群島軍部の技術士官より提示がなされていた。←この「前」の文中のニュアンスが不明。

 ベルト、小惑星帯で発見された、“人型”の遺跡、であった。

 当時、群島勢力はこの発見に沸き立った。

 この、所謂“オーパーツ”から可能な限りの技術を得、戦局に反映させん、と、である。←「デブリ」に同。一般の人は「いわゆるオーパーツ」と言われても、オーパーツという言葉を知らない人が多数。

 しかし、熱狂は長くは続かなかった。

 曰く、原始人がコンピュータを手に入れた様なモノ、とは自嘲的に語った。←誰。

 そういう意味では、連邦としても五十歩百歩だった。←「五十歩百歩」の表現、何と何が比較されているのかまるで不明。

 むしろ、今回の“敵”の強大さに、関係者は絶望するばかりだった。←また「敵」とは何かが説明されずに突如出てきました。説明なしにイメージだけ先行させて「後ろを読めばわかる」と言われても…。意味不明のポエムを読まされて「後で解説を読んでください」と言われるのはつらいです。ポエムは飛ばして説明してほしい。「ちゃんと」書いてください。

 現在はまだ、被害は、例の火星定期便の件以外では、ベルト近辺に極限されていた。

 その意図も不明だが、もし“敵”が、地球・月等の内惑星圏に対し本格的侵攻を開始した場合。

 どうなるのか、どうするのか。

 どうにも、ならない。

 否、今、唯一の希望があった。

 それが、それこそが。

このへん完全にポエムですね。で、敵って何ですか? まだまったく説明が出てきませんが…

 多少、強引な手続きではあるが、強制的に連邦とこの事態収拾への協力を約束させた。←この文章まったく意味不明です。

 ミキ・カズサと正体不明の、今はまだ中立的な“人型”だった。←読点が、読む人のことを考えず、「なんかここで口調と区切るとかっこいい」というノリでつけられています。

「ミキ・カズサ」と「正体不明の目下はまだ中立らしき“人型=vの2つなのに、この境目に読点はなく、修飾の途中に読点がある。「ミキ・カズサと正体不明」の○○、という区切り。

 5−2

 医師の許可を受けた上でその場で開始された、各種資料の閲覧を交える数時間連続の濃密なブリーフィングを経てミキは得心した様だった。←一文が長い。区切って整理してほしい

 元々、思考能力は人の数倍はあるのだ。すぐに事態の重大さを理解した様子だった。←ミキが?(説明不足)

「それで、私はどうすればいいのでしょうか」

 頼りなげな口調だった。何が出来るというのか、という問いかけだった。←ミキが?(説明不足)

「それなんだが……あの、その、“人型”との意思疎通は、可能なのですか?」

 やはり、そういうことですか……。

「限定的には、はい」

 ヒューマッハは難しい顔をした。←前に名刺は出ていますが、忘れている読者もいます。ひと言、「連邦宇宙軍の研究者」などほしい。できればミキと出会った場面にイメージがつながって「あ、あの人ね」と思い出せる仕掛けがあるとベター。「ミキを機械として引き取りに来たときと同じ表情だった。」など…。

「まずは、そう、“彼”と円滑なコミュニケーションを取れる様、努力して貰いたいのです」

 ミキも難しい顔で応える。←ここは、表情で「応え」た後に言葉で「答え」ているので、「答える」を誤植で「応える」と表記してしまったようにも見える。「難しい顔で応える(言葉で「答える」でなく)」というちょっと凝った表現をしたいなら、それなりの工夫をしてほしい。「難しい顔で応え、それから答えた。」とか。

「努力は、ええ、してみますけれども……因みに、“彼”は今、どこに」

 男はパッと明るい顔になった。

「まだ、ここの港に係留されたままですよ。御案内しますか」

「ええ、直ぐに。時間が無いのよね?。コミュニケーション確立の後にも、いろいろ依頼があると?」

「はい、その通りです……その通りになります」

 ミキが着替えて病院棟の外に出ると、ヒューマッハの隣に見知らぬ若者と、もう一人、見知った顔があった。

「火星行きは当分中止、みたいだね」

 一人は直正だった。

 もう一人は?。←ここ突然ミキ視点はダメ

「彼が、今後貴方の身辺のお世話に当たります」

 ヒューマッハが言うと、若者は几帳面に頭を垂れ、次いで敬礼して申告した。

「ウォルター・カミングス中尉と申します。以後、身辺のお世話をさせて戴きます。何なりと申しつけ下さい」

 機材なればこそ扱いは丁重に、ですか。

 ミキは内心呟きながら、表面はあくまでにこやかに頷いてみせた。

「え、ちょっと、どういう」

 直正が要領を得ない顔で近寄ろうとすると。

 カミングスはパチンと指を鳴らし、すると屈強な私服の男二人がどこからとなく現れ。

「御案内差し上げて」

 騒ぐ直正を取り押さえ、そのままどこかへ行ってしまった。

「では、参りましょうか、ミス、カズサ」

 ミキは少し硬い笑顔で。

「ミキ、でいいです」

 カミングスは晴れやかに笑って。

「では、ミキさん」

 二人は傍目からは恋人の様に連れ添って、港湾区画へと歩き始める。←ミキ、ヒューマッハ、カミングス、直正の4人がいて、直正が退場。あと3人います。どの「二人」でしょう。もちろん「後ろを読めばわかる」わけですが、項の切り替えもあるのに「後ろを読めばわかる」はナシです。

 5−3

 サルベージ用大型エアロックの中に、“彼”はミキが運び出されたときと変わらず直立不動の姿勢でいた。

<おかえりなさい>

 ミキは思わず辺りを見回した。

「聞こえました?!今の」

「何です?」

 カミングスには聞こえなかったようだ。

 ミキは、“彼”を見上げた。

<おかえりなさい>

 間違い無かった。

「彼が、話掛けてきています」

「なんですって?!」

 カミングスの平静な態度が崩れるのを見て、ミキはちょっとした快感を覚えた。

「その、頭の中に直接、ですか??」

 カミングスを無視して、ミキは彼に向かって右手を小さくふってみせた。

「ただいま」

 彼の、眼、だろうか。頭部でのその辺りの、センサーが淡く明滅した。

<心配してました>

「言葉を覚えたの?」

<はい、あれから一昼夜ありましたから、少しは>

 少しどころではなかった。

 始めのたどたどしさを話したての幼児とすれば、今の語学力はサード・スクールの生徒くらいはあるだろう。←どのくらいを指しているのか、「サードスクール」ではピンと来ない読者多数。ミキはちゃんと、カミングスにわかるように「ハイ・スクール」と言ってあげています。「登場人物の会話以上に、作者が読者に語る際にわかりにくい言葉をつかっている」という典型的な例です。今回の出版でぜひ自覚して、読者に「ちゃんと」伝える書き方を意識してほしいです。

「どうやったの?」

<聞き耳を立てただけです>

「交信とか……?」

<そうです>

 ミキは改めてカミングスに告げた。

「無線の交信等を傍聴して、語学力を鍛錬したそうです。初期の彼をエントリ・スクールの幼児とすると、現在はざっと、ハイ・スクールの生徒並みの会話が可能かと思われます」

「え、ええ?!、ちょ、ちょっと待って下さい」

 すっかりウロが来たカミングスは可愛そうなくらいだった。←「うろがくる」辞書には載っていないかもしれませんが、調べてみてください。大阪方面の言葉です。

「テレビでお笑いタレントが使っている言葉(ギョーカイ語やスラング、ネタとしての言い回し)を一般の言葉と思って使う」「ネットでよく使われているから、正しいかどうかは考えず小説に使う」「ファンタジー文化では常識だからそのまま説明なしに作中に使う」…すべて同じです。

「一定の条件の下にある、同じ文化を共有できる人だけに通じる言葉」と「一般の言葉」を必ず使い分けてください。前者には説明か言い換えが必要です。

一般の国語辞書に載っているかどうか。辞書の記載が作中の認識とずれていないか。そこがチェックポイントです。

 コミュニケータでどこかと必死に連絡を取っている。

<会話は、出来ません>

「え?こうして話してるじゃない??」

<その通りです>

 ミキは混乱する。

「え??つまり???」

<はい、私がこうして会話出来るのは、貴方、ミキ・カズサだけです」

 ミキの混乱はまだ収まっていなかった。←次の赤字参照

「え?そうなの?」

<はい、主人のみに仕える様に、そうなっています>

 むしろ混乱は酷くなるばかりで、カミングスを笑えない←もうカミングスの混乱は作中で通りすぎて、少し前からミキが混乱しています。ここでカミングス混乱の時代に戻る表現は少し読者が戸惑います。

「主人?!ちょっと待って!今、主人って言った?!私が貴方の主人ですって?!」

 彼、は厳かに宣告した。←この「彼」の後ろに読点が打ってあるのが「この人型を彼と言いますよ」という記号にしているわけですが、これはミキ目線ならそれで成功なものの、小説の地の文ではちょっと厳しいですね。「彼――人型は」と一回言い換えて、次からは「彼」でOK。

<そうです。私と会話が出来るのは、私の主人だけなのです>

 ですから、と彼は続けた。

<貴方は私の主人です、ミス、ミキ・カズサ>

 そう言い放つと、ゆっくり巨体を屈ませて臣下のをとる。←ふつうに「礼」ですよね?

 5−4

この冒頭の文章、各文ばらばらでなく、まとまりと流れがあるはず。全部が改行はおかしいです。塊で読まないといけない「つながりの濃い文章同士」はちゃんとつないで、「ここからは次の工程」というところできちっと改行することも読者に読みやすさを提供する上で必要な表現。まとまりと区切りをしっかり作ってほしいです。

 それからの数日間は、ひたすらデータ取りの作業への協力となった。

 まず、宇宙空間での検査だったが、直ぐにスタッフは頭を抱えることになった。

 宇宙での最高速移動試験で、彼の飛翔があっさりと“光速を超えた”からだった。

 つまり、計測機器が役に立たないのだ。

 いやそれ以前に、この試験に立ち会った技官達は興奮と混乱でどうにもならなくなり、一時試験は中止に。※←このへんは言い切りだとおかしい。↓

 結果、高真空での移動速度は光速以上ということにして、試験再開。

 耐久試験と称してガンマ線レーザから核融合プラズマまでありとあらゆる人類が持てる兵器をぶつけてみたが傷一つ付かず、乗り込んでいるパイロットのミキからも、何の衝撃もなしと伝えられると、人々は驚嘆すると同時に深い絶望に捕らわれた。軍人の性癖から最悪想定をしてしまうと、“彼”を眼にした以上、正体不明の“敵”が、“彼”以上の性能を持たない理由はない、ということになるからだった。

そういえば、まだ「敵」の説明が何一つない…と言っても過言ではない状態です。読者に「なんか、これから作中に敵≠ニ呼ぶ存在を出しますから。」程度にしか示せていません。

実際は、警備艦を襲撃した存在が「敵」で、4の6の項の手前、ミキが世間から隔絶されている間にこの「敵」が襲撃してきて人類が危機に陥って世界が変わってしまっていて、「重要な手がかりは、前、群島軍部の技術士官より提示がなされていた。ベルト、小惑星帯で発見された、“人型”の遺跡、であった。」のあたりでその謎の一端が垣間見えて、小惑星帯で「敵」から繰り返しの攻撃を受けていることが示されているはずなのですが、5の1の項がポエムばかりで読者に情報をほとんど与えていない状態です。

「五十歩百歩」のあたりも「こういうものが発見され、それはこうしたものだったが、それは人類にとってどういうもので、持てあましてしまい役に立たない、だから「原始人がコンピュータを手に入れた」のと大差ない(五十歩百歩)なわけですが、そのへんがまったく整理できていない、読者に提示できていない状態。この時点で読者が「敵」を理解できていないのは致命的。特に5の1の項あたりを使って「敵」の存在を整理して見せてあげてください。

 試験は続き、外形寸法にしては破格な彼の実態が徐々に明らかになりつつあった。

赤部分意味不明

 即ち

 移動速度は既出通りに光速以上

 出力は中型のブラックホールの吸引力(推定)

 耐久力も既に見ての通り

 センシング能力も、太陽系全部くらいは見通している様子(推定)但し歯がゆいことに、“敵”もそれに対抗する隠蔽能力を持っている様で、アレフ曰く、私に似た人型は“近辺”に居ない、との回答。↑「但し」の前で改行が必要ですね

 唯一、攻撃力の検査のみが控えられた。←文がわかりづらい。「攻撃力の検査はあえて避けることになった」「攻撃力の検査のみ、行わないこととなった」など…

 何が起こるか、誰にも責任が取れないからだった。

 結果、次に予定されていた大気圏内での検査はあまり意味がないとして見送られた。

 何より、大気圏内で光速を超えられたらどうなるか。

 これも、誰も責任が取れなかった。

 そも、アレフはこれらの検査を

<意味がありません>

 かなり非協力的だった。つなぎ方、これはナシです

 ミキが宥めすかして検査を受けさせたのだった。

<貴方の為になるのであれば>

 検査に限らず、アレフは終始、ミキとの関係以外には無関心だった。

 否、無関心以上に、認識外といえた。

 他の者が話し掛けた内容をミキが通訳しても。

<有難うございます>

<光栄です>

<感謝します>

 文言とは裏腹に、完全に無視の態度、というより、全く認知も認識もしていない様子だった。

 そうした作業に協力して人々の間に立ち交わるうち、“彼ら”と自分との距離が少しずつ離れていくのをミキは感じた。人々が恐れるのも無理は無い、それを理解しながらも。

 そう、厳密に言えば、ミキは人間ではない。

 アレフは、ミキの言葉にしか従わない。

 人類が疑心暗鬼に陥っていくのも、ムリはない構図だった。

 アレフを、人類の為に働かせるにはどうするか。

 とにかく、ミキの機嫌を損なわない様に。

 次第に、人々の態度が硬化していくのにミキは気付いていた。

 表面上はどこまでも慇懃に、しかし。

 人類と、人外の構図に気付かないミキでは無かった。

 毎日多数のスタッフに囲まれながら、どうしようもない虚無感を感じていた。

 5−5

 アレフのデータ採りが一通り終わってしまうと、忙中閑あり、という状態になってしまった。

 そのまま、連邦宇宙軍が宇宙に持つ実験場の居住区画の一室に、半ば軟禁状態で留め置かれたが当初はどうということもなかった。ネットは使えるし、月額約100万の給与は支給されるし、アレフとの会話も出来るし、ネット通販で取り寄せたドレスを意味も無く着飾って一人で苦笑してみたり、と、それなりに充実させた毎日を送っていたのだが流石にヒマになって来た。

 あれからアレフは随分と学習して、少なくともミキと同等かそれ以上の語学力と学力を身につけた様だった。

 全く、どういう仕組みになっているのか。技官がいうにはミキの体内で検出された例の正体不明の微小物体が関与している“らしい”とのことだが、今、1キロ以上は優に離れているアレフと、何の支障もなく会話が出来た。但し、ミキの側は声に出して発音する必要があるので、傍から見ていると完全に統合失調症以外の何ものでもない様子だが。※何者かの変な様子や態度を「まるで○○みたい」と病気を挙げて表現するのはNG。ここの「統合失調症」は必ず外してください。

これはもの書き≠ニして身につけておかなければならない基本中の基本として覚えておいてください。

短期的な症状などは良くても、心の病や遺伝病、発達障害などは要注意。「風邪を引いたようにぼうっとする」「ぞっとして、じんましんが出そうだった」のようなものはセーフ。「うつ病のように暗い」「ここのところ、認知症のように物忘れが激しい」などはダメ。最悪なのは「自閉症のように部屋に閉じこもる」というような、自閉症を「暗い奴」「ひきこもり」と勘違いして使う例。自閉症と「自分の殻に閉じこもる」ことには何の関係もなく、NG表現のうえに世間に誤解を与える。

基本的には「○○病みたい」という表現は避けておくようにするのが賢明です。

「アレフ」

<何でしょう、姫>

 姫。最近彼が好んで使うミキへの尊称だ。

「未だ何も思い出さない?」

<申し訳ありません。一向に>

 彼は深い眠りについていて、体の半分はまだ眠ったままの状態である、らしい。

 ミキと最初に巡りあったときは、だから半ば反射的自動的行動で、先日、2度目に出会ってから、本格的覚醒へのシークエンスに移行、したらしい。←できれば「シークエンス(段階)」などとするか、「段階」に言い換えてほしい語句。

 何でも、遠い昔、深く絶望して、“フテ寝”してしまった、らしい。

 ミキとの出会いで、彼は“心の底から”救われた、そうだ。

 ミキにとってはいい迷惑だ。いや命の恩人ではあるが。

 そうした彼との会話によって得た事実を、ミキは少しずつ外部へも伝えていたが、何とはなし、全部を伝える気にはなれなかった。←「気にはなれなかった」の時点で実は「なんとはなしに」という状態より一歩踏み込んでいるので、この「なんとはなし」はちょっと違和感あり。

 こうしていると、人類との距離感は開く一方だった。

 人類側も、今のミキ、(←この読点は「――」に変えます。「ミキ、すなわちアレジという天下無双の相棒を手に入れた彼女=vというフィーリングになる)アレフという天下無双の相棒を手に入れた彼女の扱いに手をこまねいているのだ。

 理解は出来るが、得心はいかなかった。←ここも「得心」より「納得」くらいが適正。語句の意味の重い・軽い、深い・浅いの度合いにも注意。

 それこそ、アレフに命じて“牢破り”をすることも出来た。

 だが、それも出来なかった。

 そして、完全体であるミキは、鬱病になることすら許されてはいなかった

ここの「うつ病」の使い方も好ましくないので変えてほしい。「うつ病になれたら楽だよね」つまり「うつ病って悩んでるより楽」みたいな感じになるので。病気の当事者に配慮を。

 本格的にヒマになってから、中途半端にどんよりと日々を送り始め、ヒマ潰しにホントに“破獄”してやろうかとミキが思い詰めていた頃だった。面会人が訪れたのは。

 5−6

 面会人は直正だった。

「なーんだ」

 ミキは目に見える様に落胆してみせる。

「なーんだ、はないだろ」

 直正がつられて落胆すると。

「ウソ。冗談よ。会えて嬉しいわ」

「……オレも」

 本当だった。

 本当に気がおけない、ミキにとって直正は一緒にいて安らぐ存在だった。

 アレフと会話していても、似た様な安らぎは無いではなかったが、それはどこまでも、ミキからの一方的な、共に人類の局外にある者同士の一体感でしかなかった。

 その点、直正と共有する時間は、どこまでも寛げる、穏やかな一時だった。

 直正はかなりカチコチのようだったが。麗しい才女の前に出た三枚目そのままだった。

「直正」

 ミキは改まった調子で呼び掛けた。

「何でしょう、姫」

 ミキは笑って。

「では命ずる……私をさらって、逃げなさい」

 直正も改まって。

「御意……じゃなくてさ」

「何?」

 更に真剣な表情で。

「オレと、結婚してくれないか」

「はあぁ??」

 直正は真剣な表情を崩していない。

「ホンキぃ?」

「もちろん、本気だ」

 ミキは、いやミキも、本気で、困った。←なぜ「も」に言い換えるのかわかりません。

「貴方ももう知ってるでしょ?。私はハイブリッド・エンジェル、人間じゃないのよ?」

 自分で言うのも妙なものだ。

「うん、知ってる」

 直正の表情は変わらない。決意も変わらない様子。

「私は政府の備品なのよ?!。例えて言えば、今私たちが腰掛けてるこのベンチと変らないの」

 言ってペンと一つ叩いてみる。←「ミキは」がほしい

「貴方、公園のベンチと結婚出来るの?」

「出来る。喜んで。それにキミはベンチじゃない」

 あー。純粋真っ直ぐクンにも困ったもんだ。

「貴方の意志は、まあいいわ、尊重するとして。役所も受理……」

 不意打ちだった。

 良く動く彼女の口は、もう一方の唇で塞がれた。

「役所はいい!キミの気持ちはどうなんだ?!」

 もちろん、泣くことは出来た。眼球の洗浄にも必要であったし。←この文章から「そのとき、ミキは泣いた」と読み取るのは難しい。「彼女は『泣く』という動作が可能な生き物である。眼球の洗浄のためにも、その機能は必要なのである」という意味にしか読めない。

 6−1

 問答無用。突然の動員だった。

「緊急事態だ!!島が“襲撃”を受けた。直ちに現場に向かって欲しい!!詳細も現場で頼む!!」

「そういうことだから、またね!」

このあたりも、つなぐべき文はつなぎ、改行すべきところは改行するほうが読みやすい

 直正を置いたまま駆け出した。

 室内服のまま彼の中に飛び込む。過去何度か試したがスーツは持ち込めないらしい。

 眼前にスクリーンが開き、現場宙域と島についての情報が送信されているのが判る。

 一つ頷く(様な仕草)と同時に、彼は瞬時で現場に移動していた。←彼って誰ですか。直正もカミングスも彼です。人型の例の「彼」なら、彼≠ネど、そうとわかる表記をしてほしいです。

 ミキの体感時間は例によって計測不能なナノセカンドだった。

 しかし、超空間航法ではない。明白なスターボウの煌きを毎回ミキは認識していた。←「ファタジーだから、こう書けば、何のことか全部わかるっしょ。常識だよね。わかんない人とか、ありえないんで。」と、ファンタジー文化圏以外の人たちを全否定しています。

「ウワサのアレフか?!助かる!!」

「一体何を」

「漂流物の捜索と回収!!人間だ!!君たちの能力なら何人かは救えるはずだ!!」

このやりとり、口調がないのでニュアンスがまったく汲めません。

 結果、島から大気と共に放り出された105人全員の回収救助に成功したのだった。

この一文から、「襲撃によって、島が破損し、その破損した穴から待機とともに宇宙空間へ多数の人間が吸い出されていた状態だった」ということを併せて読みとらないといけないのですが、それを作中にきちんと書いて読者に示してあげるのは作者の役目です。読者が必死で行間から推測しないと理解できないことが多すぎます。

 まずセンシングを行い次いで回収の優先順位を決定、計画、実行。←「センシング」説明が必要な語句。しかも「回収救助に成功したのだった」の後にこの一文が来ると混乱します。

 アレフの能力をもってすれば造作もないことだった。

 現場で立ち会った軍人たちは驚嘆し賛嘆した。

 軍の機材が現場宙域に展開する前に、その準備作業の間に、救助作業は終了したのだ。

 二人とも、激務の間を縫ってのネット出演で、疲労の余りのナチュラル・ボケだった。←このままでもいいですが、小説の地の文としてはくだけすぎ、とも言えます。ここはお任せします

 約200億の観衆が沸き立った。

このポエム状態の文も読みづらい、空き行があるせいで混乱をきたすところがある

 不安ではなかった、クレームでもなかった。

 ここまで、人類の為に尽くしてくれる、くれている二人であれば。

 多少の不平は言うまい、我慢しよう。二人が、そう。

 ハルトマンと、スターセイバーを駆る、エンジェル・ミキが、必ず何とかしてくれる。←数行後ろに「スター・セイバー」の説明が初めて出てくるのに、ここでもう「スターセイバー」の表現。ここは一般の語句「星の守護者」という意味、後ろの『スター・セイバー』がアレフの新しい呼び名という意味で書き分けているのだと思うのですが、その意図がちゃんと伝わる書き方ができていません。

「ハルトマンと、スターセイバー(星の守護者)を駆るエンジェル・ミキが…」とすべき(読点もトル)。

 島民の多くが荷造りを止め、また多くがその手を早めた。

 ハルトマンは精力的に島民の地球への収容計画を推し進める。

 ミキは、国民投票の結果、アレフ改め『スター・セイバー』と共に哨戒の日々。

 が。←「――が。」と、ダッシュを入れたい

 遂に、二人ともが、相次いで倒れた。

 まずハルトマンが、次いでミキが。

 6−2

 疎開民及び難民の状況についての連絡会議の直前だった。

「議長、あと5分です」

 主席秘書官の声に。

「判っている、今行く」

 ハルトマンは立ちあがり、2歩歩き。

 そのまま棒の様に倒れた。

「議長?」

 秘書官は駆け寄り、議長の様子を見、コミュニケータを取り出し。

「私だ、議長が倒れた、手配を」

 必要最小限の言葉だけを伝えるとそのままコミュニケータを放り出した。

 部屋に備え付けの救急医療キットによりまず心臓の再動に成功した時点で救護班と医務官が到着した。

「まだ呼吸が回復していない」

 冷静に、しかし両目から流れ出るものをそのままに彼は事態を申し送った。

 救護班が酸素吸入措置を行う傍ら、医務官は全市民に着用が義務付けられている、緊急救命ナノマシンをアクティブにすべくコントローラからキーインを行った。←「アクティブにする」「キーインを行う」伝わりづらい語句

 反応なし。

 その様子に秘書官は慌てて告げた。

「“ない”んだ。障害者なんだ」←?

 医務官は顔色を変えた。初耳だった。あってはならないことだった。

「保険法違反じゃないですか」←?

「“好材料”だ。議長は嫌ったんだ」

「準備完了です。搬送開始します」

何が起こったのかまったくわかりません。ハルトマンが「倒れた」以外、彼がどうで何だという話なのかまったく読めません。これまた勝手に作者一人わかって得心してる感じ。読者にちゃんと説明を。

<警告します>

初めてのことだった。降り立とうとしたミキをアレフが引き止めたのは。

<貴方の現在の身体状態は控えめに表現して“最悪”です。せめて短期間、私が許可するまでこのまま留まることを推奨します>

「短期間って」

<地球標準ですと約38時間になります>

「どこが短時間よ!ひゃっつ」

 これも、初めての体験だった。

 何かが身体の中に入ってくるような。感知はできないのだが、感覚。←ミキ視点の、ミキの語りとしての小説のノリで書いてある文章。ちゃんと三人称(客観)小説の表現に…

 アレフが何らかの働き掛けをしてきているのは間違いなかった。

<緊急保護作動中です>

 それは、不快では無かった。いやむしろ。

 全身を同時に均等に、この上なく優しく愛撫されている様な、しかも身体の表面からではなく、そう文字通り“全身”を。そんなめくるめく、申し訳ないけれど直正とのトキよりもはるかに、な、恍惚。

 一瞬、総てを忘れて、総てを委ねてしまいたくなるほどの。

「あ、アレフ、でもわたし」

<自覚症状はない、そうですね。貴方は人間達とは違います。耐性も耐久も遥かに高い。しかし当然限界はあります。今が、そうです。内部からの危険信号が全て遮蔽されているほどにです>

 こうしていたい。あまりにも魅惑的な欲望が突き上げてきた。しかし。

「ありがとう。ごめんね。アレフ。でも私は、それでも、そういうふうに創られているのね、たぶん」

 アレフは、止めた。

<私は貴方に従うことしかできません>

 すがるような響きだった。

「私を、降ろして」

<了承しました>

 アレフから降り立ったミキはくたりとその場にくず折れた←こちらで直しますが、「くずおれる」辞書ひいておいてください。

 38時間ではきかなかった。

 島を貫く鈍い衝撃からそれは始まった。

 警戒配置の当直が寝ぼけていたワケでも機器の不調でもなかった。未だ人類のセンシング技術は無力だった。

 島の外壁に外部から加えられる正体不明の連続した打撃により、当該部は深刻な損害を受け既に幾つかの警告が起動していた。

 職員の一人が操作した光学センサが脅威の正体を捉えた。

 モニタに表示されたのは、政府広報の映像と詳細は異なるが、人型の何かだった。数は2体。

 早朝の島内に、戦争中ですら無縁だった、急迫事態の宣言と全島民への避難指示を意味する緊急警報が響き渡った。避難先は各個人宅及び公共施設の地階に準備されているシェルターとなる。ほぼ同時に軍と宙保への救難要請が発せられる。

 遂に島の外壁に破孔が穿たれるが、外壁と内壁の間に充填されている血液の止血機能に似た自動修復機構がまずは被害を食い止める。が、このままではそれこそ失血死するが如く限界に達するのは免れないことは判る。←「判る」のは誰目線?

「だいたいですね、自己管理もできない、当人ができないならスタッフは何をしていたのかというですね」

「自覚が足りてないんじゃないんですか」

「政府も認識が不足している。なぜスターセイバーを量産しないのか」←ここは一般の言葉としての「星の守護者」なんですよね。実質、「アレフ」という名前もこの後まだ使われるので、スターセイバーが一般名だったり個体の名だったり、アレフがアレフだったりスター・セイバーだったりするのは煩雑です。アレフのような存在を一般名として「スターセイバー」と呼び、アレフ個体は「アレフ」のままで整理すると、綺麗にいくのですが…

 各局が一斉に報じる中、ミキ・カズサを管轄している軍の部局、「対外急迫事態対策特別班」の責任者であったエルロフ・ヒューマッハの辞任が伝えられた。人々は、課長の首一つで容易に収まりはしなかったが、それでもミキ本人を直接責める論調は薄れ、軍の監督責任に非難は集中した。

 しかし、ミキの“勤務状況”がリークされると、それも沈静化に向かった。

 被害は被害、責任は責任として、人類が内部でいがみあっている状況ではないことが、改めてはっきりと告げられていたのだった。

 次に目覚めたとき、ミキは報告を聞いて青ざめた。

 民間の被害は万のオーダーに。※常に「一般の人に、この表現は通用するのか」を意識して言葉を選んでください。一般の人は「オーダー」は「注文」と思っています。そう読まれたら、この文章はどういう意味にされてしまうのか? 誤解を受けたら、作者の責任です。読者は悪くありません。

 軍の被害も数百に及んでいた。

 襲撃は級数的に苛烈なものとなっていた。

 襲撃時の時間も、その間隔もだ。

 だが、未だ直接交戦は発生していなかった。

 現場に駆けつけた時点で、常に“敵”は姿を消していた。

 アレフは中空であぐらを、否ザゼンを組み、手を組み、まるで瞑想しているかの如くの体躯だった。←「体躯」はおかしい。

余談ですがファンタジー文化の人、「体躯」大好きです。普通に「体」でいいところを「体躯」、「目」でいいところを「双眸」と大袈裟に書く傾向があります。ご参考まで。

 と、思わずぽんと手を叩くと。

<こういうのはどうです>

 6−3

つなぐところと改行するところ、整理を。

 数日後、技官と学者、研究者。

 人類の頭脳の粋を集めたと言ってよい面子が一堂に会した。

この二文では、人数の規模が不明。後ろに「衆人」とあるからかなり大勢?

作者だけ見えていて、読者には見えていないものがたくさんあります。ご注意を。

 それに、ミキとアレフ、そして連絡武官のカミングス。

 アレフは衆人監視の中、まるで手品師の様なそぶりで中空からある物体を取り出した。

 それは、直径10センチほどの、一見すると毛糸玉の様に見える、黒いボールだった。

 アレフとミキの間で会話があり、ミキはそれを。

「えー彼の言葉をそのまま伝えます。“これ”と同じモノ、同じモノは無理であろうので、なるべく似たモノを造って、持って来てみなさい。以上です」

 すぐに質問。

「これは一体何なのかね」

 これ、を手元で弄びながら。

 回答。

「まずは造りなさい。そうでなければ意味がない」

 質問。

「事態は急迫している。意味が判らないものにリソースを割いている余裕はない」

 事実だった。こうしている間にも被害は発生していた。

 それは既に官民併せて億のオーダーに及び、近日中に二桁の大台に乗ることは確実だった。

 エンジェルであるミキは少しの休息で回復したが、以降アレフは、ミキのコンディションが著しく悪化している際は出動を拒否する様になっていた。搭乗中のライダーのコンディションについては、ベストにアセンブル(読みやすい語句希望)出来るが、それでムリを重ねて結局過労で倒れるのでは意味がないと言うよりタチが悪い、降りた直後に結局過労が原因で主人に倒れられるのは我慢できない、との実に御尤もな主張だった。ミキも最近は少しずつ開き直りつつあり、不眠不休で哨戒(読みやすい語句希望)を行っても先日の様にやがて限界は訪れる。適度に睡眠と休息を取りながら精勤する他、無いのだった。

 ミキ付きの連絡武官、カミングスも最近は同様に達観の境地に入った様だった。

 起床後のミキに黙って就寝中の被害統計を示し、それでも出るため息と共に互いに頷き合う間柄になっていた。

 回答

 え、それをアタシに言わせるかコイツわ。(ミキ視点に移るよ、の記号が前に入ればOK)

「えー、あー、ではそうなさい。人類がこのまま滅亡しても私は困りません」

 どよめき。←誰の?人数規模などが示されていないのでピンと来ないのです。

「少し、時間を戴きたい」

「存分にどうぞ。但し時間は貴重なはずですが。貴方方には特に」

 ボールを撫で回していた一人、若き天才、ワイルダー3世は突然険しい顔付きになった。ボールはたくさんあって、一人ひとりに配られたのでしょうか。数個が回覧されていて、その一つが彼の手元に行ったときに彼が口を開いたのでしょうか。「撫で回していた一人」とあるから、ボールは複数あったことは間違いないでしょうが…

「皆さん、これはもしかしたら大変なものかもしれません。或いは……」

 正に天才らしく、周囲の雑音を気にせず解析の世界に一人没入してしまった様だった。

この2行、彼が何か言ったのか、言わなかったのか、まったく読み取れません。「或いは」の後に重要なことを言ったがあえてこの場面では読者に見せないのか、「或いは」と言ったきり一人の世界に没入して黙ってしまったのか…

 天才の一言で場の空気が変った。

 取り合えず持ち帰り、送球ではなく早急にこのボールの解析に移り、必要であればアレフの言葉通り複製を行うことで満場一致となり第一回会議は早々に解散となった。

 ミキとアレフは当然、会議が散開になり次第、哨戒に出動することに。

 6−4

 それこそナノ・スケールの微細な構造を持つ集積体であったことが判明したのだ。

 ナノ・レベルの凹凸や捻れを持ち、しかもそれは“一筆書き”構造でもあった。

 これの複製だと?!。なぜ突然「複製(を作る)」という話になったのか不明。というより、「を作る」という語句が欠落しているため、「だと?!」と言われても何を言っているのか不明。

 この為にそれぞれの基幹業務を離れ、特に結集した選抜チームは色めきたった。

 正に、人類の技術水準への挑戦といえた。

 くやしいかな今の人類に、サンプルと同等の機材を作るのは、確かに不可能だった。

 これは単純に基礎工業力の問題で、無い袖は触れないのだった。

 それほどまでに事態は切迫していた。

 ミキの一時的な戦線離脱もそうであったが、ハルトマンの不在に人々は大きく動揺した。

 実は、ハルトマンもまた、見捨てられた不幸児、ナノマシン障害者だったのだ。(「ナノマシン障害者」に関しても、もっと前の段階で説明がなされていないので、読者がついていけません。「なんかそういうのがあるらしい」というだけでまったく理解できていないままここまで読んできているはず)

 今も意識不明の重篤状態で横たわるハルトマンに対し、多くの見舞いが寄せられたが、精神的支柱を失った人々は、大きな不安に駆られ、愚行へと及んだ。まだ避難勧告が発令されていなかった内地からも続々と難民が発生し始めたのだ。

 6−5

 第2回目の会議は低調に終わった。

 アレフは人類側が提出したサンプルを手に取ろうとすらせず冷厳に宣告した。

 ミキはうへ、という顔をしてアレフを見上げたが、仕方なし、申し訳なさそうにそのまま通訳した。

「それが貴方方の本気ですか。私はこの失望をどう表現していいのか判らない。今の私に貴方方にして差し上げられることは何もありません」

 だそうです。

 動揺。

 完全に見透かされていた。

 実際、人類はさ程の手間を割いてはいなかった。

 「本気」で立ち向かうならば、ラインを一つ立ち上げた上で出来の良いモノをピックアップするしかなかった。

 今後も大量生産するとの前提で。

「ボール」が何なのか不明なうえ(現時点で読者に秘密という設定はOK。でも、「まだ不明だよ」とわからせる書き方ができていない。特に科学者たちの会議の展開が不明だったのが致命傷)、「複製?!」って複製がどうっていう話?という状態でこの2文を示されても、結局、最初が説明不足なので意味が汲めない。結果、この2文の意味が不明。

 質問

「これが何なのかを教えて欲しい」

 回答

「知ってどうするのです。私の“善意”が信じられませんか。私は出来ることなら、私の主人を不当な危険に晒すことだけでも不同意なのです。まずは私を満足させなさい。総てはそれからです」

 第3回会議 こうして「質問」「回答」などと併せところどころ箇条書きなのは小説ではおかしい。以下同

 アレフはサンプルを手に取ってしげしげと眺めたあとで判決を下した。

「頑張りましょう」

 それだけだった。

 第4回会議

「もう少し頑張りましょう」

 第5回会議

 アレフは感心して見せ

「よく出来ました。でももう少し頑張りましょう」

 そして。

 第6回会議

 アレフは嬉しそうだった。

「大変よく出来ました。正直、貴方方がここまでやるとは思わなかった」

 そういいながらサンプルをそっと手に持ち、口付けする様な仕草を見せた。

 すると……サンプルがまばゆく、発光し始めた。

 アレフはそれを宙空で手放す。

 球体は、何かに支えられるようにそのまま浮遊している。

 人類の発するどよめきと驚嘆。

 ミキもその波に呑まれ掛けたが、彼女には役割があった。

「慣性制御系モーターのコア・ユニットです。ここまで出来た貴方方であれば取り扱いはそう難しくないでしょう。よく私を信じてここまで来ましたね、有難うございます。人類に祝福を」

 アレフの感情を介さない思念に対し彼女が発したその語尾は掠れ、視界は滲んでいた。

 慣性制御。

 運動制御に空気を利用出来る地上や大気圏に対し、動く曲がる止まる総ての制御に自身の推進力を要求される宇宙空間では結果、運動体はその能力を高めるほどに実態は推進剤タンクの化け物に変容してしまう。

 慣性制御の実現はこの倍々ゲームと訣別する技術、科学、否、現在の人類にとっては魔法にも等しい、それはアレフの言葉通りの正に祝福だった。

こういう「基本説明」が必要な箇所が、ここまでにたくさんあったのです。

こういうちゃんとした「ファンタジーの設定・SFの設定に関する読者への説明」をきちんと入れてあげてください。

 割れんばかりの歓声がこだました。

 “戦争”に勝ったかの様な歓喜が人々を取り囲んだ。

 一方、人類カウンターは既に100億を割り込んでいた。

 7−1

 狂った様に回転していた人類カウンターはある時点でピタリと止まり、そして鈍減するようになった。

 人類の、反攻が始まったのだった。

 それからのミキとアレフの日課は、運ばれてくるコア・ユニットにアレフが火を入れながら同時に最近“思い出した”ことをとつとつと語るのを端からミキが同時通訳して聞かせその度に当直の技官や学者が驚嘆するというそういう日課になった。(一文長すぎ。作者がわざとおもしろがってそういう文章にしている「遊び感覚」が感じられますが、読みづらいのでは結局作者の独りよがりに終わります)

 アレフからの技術供与の垂れ流し(おかしい)により人類の科学技術は秒進分歩の発展を遂げつつあった。それは、“敵”に対抗すると共に、生産の分野(←漠然としすぎ。農業、漁業、工業、化学などなどがみんな「生産」。後ろで並列されている「航宙」と釣り合わない)でも、航宙の分野でも、とにかく現在の事態に役立たないことは何もなかった。

 スカイフック(本作における「スカイフック」の意味は?元来「宙づり」の意味しかないので、「宙づりの順番待ち」と言われても…。多分これも、ファンタジー系の一部の集団の中で「スカイフックと言えばこういうもの」という、一歩進んだ技術をしての共有があるということですかね…。「ミノフスキー粒子」と言えばアレでしょ、というのはガンダムがわからないとわからない…それと同じ状態です。勝手に読者を「同じ価値観を共有できている、親しい友人」として扱わないように注意)の順番待ちをしていた難民キャンプを、例えばそのまま地上に降下させることが実現でき、更に増設予定だったスカイフックは建造を中断された。既設のものはそのまま稼動させるにせよ、リソースが惜しまれた。もっと効率がよい手法が既に幾らでも存在した。例えば軌道上から地上に届く真空のエア・カーテンを穿ち、そのまま降下させる、等々。

 そして、反攻。(話題転換が唐突。かつ、これだけの言葉では乱暴です)

 7−2

 その一方、人類は悩ましい事実をも突きつけられていた。

 それでもようやく一息ついた人類は、今回の一連の事態そのものに関してを探求する小委員会の一つから回答を得ていた。それによると、“敵”は必ずしも人類そのものに敵対しているワケではないという驚くべき結論が提出されたのだった。

 調査委員会によると、襲撃の現場での証言により、例えばある民航船の場合、襲撃直後に船から脱出した乗員乗客は全員無事でそのまま全員が救助されたこと。後に再び救助船が襲撃を受け、全員が死亡するが。

 またある例では、閉鎖系施設に退避していた人員が襲撃されるが、脱出した人員は追撃を受けなかったこと。結局全員酸欠で死亡しているが。

 以上を含む各種事例の検討により、“敵”の襲撃は人類の殺害そのものを目的としていないこと、またその目的は、宇宙空間に設営された様々な文明施設(含む船舶)を目標としていることが推察される、以上。

つなぐ部分と改行する部分を整理してほしい

 人類は頭を抱えた。

 今更、どうしろと。

 なるほど、この事実を早期に突き止めていれば、ある程度の被害の軽減は出来たかもしれない。

 しかし、既に間違いなく、人類と“敵”は交戦状態になった。

 終始、“敵”から、交渉の様な、互いの意志疎通の機会は与えられていなかった。

 ただ、それこそ通り魔の様に現れ、襲撃し、去るのみ。

 その移動、出現と退避を観測出来ないことから、“敵”もまた超光速並みの移動能力と、それに付随する様々な能力を持つものと推定されていた。つい先刻まで手も足も出なかった様に。

 だが、そこまでだった。

 正体不明といえばアレフもまたそうではあったが、今、アレフは明確に「人類支持」を表明していた。

 いずれ何らかの理由でそれが取り下げられるとも、とにかく今は味方だった。そんな先のことまで考慮する余裕は今の人類には無かった。

ポエム状態でわからなくはないものの、もうちょっとちゃんと小説文にしてほしい。つなぐ部分と改行する部分を整理してほしい。

 だが、“敵”は。

 その正体は、目的は。

 何もかもが謎であった。

 だが、それでも“敵”は人類の生存を脅かす“敵”であり続けた。

 地球の浄化はまだ道半ばだった。

 このまま宇宙空間から追い払われて、地球でじっと息を潜めて生きてゆく……。

 それも破滅なのだった。

 今の人類には、宇宙を、その生存圏を克ち取る必然があったのだ。

 そして、遂に。↓ちゃんと文章をつなぐべき

 一大反攻作戦が企図され、遂行されるに到った。

 作戦名「スター・クルセイダーズ」。

 太陽系外近傍に位置するとされる、“敵”の策源地目指しての強襲作戦であった。

 人類カウンターは60億を切っていた。

 物流が滞り、末端では餓死者の恐れも出始めていた。←文がおかしい(「人の恐れが出る」という文はおかしい)

 7−3

本作の特徴(かつファンタジー文化の悪表現の一つ)、ポエム状態。きちんと文章にまとめてほしい。というより、イメージ的な漠然とした表現の中に「SF設定の、現世界にはないオリジナルの物体」が多数散りばめられていて、理解が相当難しい…

 外宇宙艦隊。

 一部の人々はその言葉をある種の感慨を以って口にした。

 深宇宙探査。

 戦争が無ければ、この事態が無ければ。火星開発と平行に進められるはずであった。

 外宇宙艦隊。

 それが、文字通りの外征となって実現するとは。

 連邦宇宙軍外宇宙艦隊は、戦闘空母「エンタープライズ」を基幹とし、護衛の防空巡航艦12隻、センシング・電子巡航艦2隻、補給艦2隻により編成された機動部隊であった。

 「エンタープライズ」には、かつて群島を屈服せしめた砲身長約300メートルの戦略砲を改装した大口径ライト・カノンが艦首に装備されていた。かつての群島勢力側も、戦勝の、縁起のよいことと特に反対せず、歓迎した。

 艦隊のクルーは志願制であったが、直ぐに選抜制に変るほどの多数の応募があった。

 ことここに到っても、人類のなけなしの士気だけは軒昂だった。

 もはや、連邦も群島も、連合の遺恨すらなかった。

 人類は、この未曾有の災厄に、その総力を挙げて立ち向かっていた。

 ようやく意識を回復したハルトマンは、初めこの壮挙を“愚行”として撤回を指示しようとしたが、各種のデータを見るにつけ、遂に了承せざるを得なかった。

 決して、勝算のある作戦ではなかった。

 だが、他に道はなかった。

 のるか、そるか。

 この戦いに勝って、明日への道を切り拓く。

 その選択肢しかなかったのだ。

 人類カウンターは30億近辺をのろのろと進んでおり、そろそろ20億代に届くところだった。

 既に地球軌道も完全に安全では無くなっていた。月面表面の市街地も襲撃に晒されていた。

 5基あったスカイフックもその総てが倒壊し、地上に災厄となって降り注いでいた。

 地球全土が常に何らかの災害に見舞われているような惨状だった。

 それに対し、復旧はおろか、今この瞬間にも発生している傷病者への手当すら満足に行えていなかった。

 大規模な地上への収容はもはや途絶しており、小型の往還機による軌道上との連絡線が辛うじて維持されるのみとなり、整備都合上での稼動機の減少によりそれも途切れがちになっていた。

 撤収なった地上でも、空港の周辺に難民キャンプが拡がり、そこで餓死者も発生していた。

 インフラ維持を担う職員も増員、補強も追いつかず、人手を増やしても基幹職への負担軽減には限界があり、オーバーワークは組織全体をじりじりと消耗させ本来病欠している者もがナノマシンの力で強引に職場にかじり付いている様な現状だった。

 そして、総ての島は放棄されるか或いは破壊されていた。

 少数の自棄的、利己的な活動により、治安すらが悪化し始めていた。

 宇宙での戦況とは関係無しに、このまま人類は、その文明は滅びるのではないか。

 暗鬱な空気が、疫病の如く人々を蝕んでいた。

 艦隊の整備は、そうした環境の中で進められたのだった。

 それは人類の総力の、その底をさらう様な作業であった。

 7−4

「正直、人類を代表する首班としては、私は君たちを祝福することは出来ない。私は、今でも納得出来ていない。誰が見ても、これは愚行だ。人類が持つ愚かさそのものだ。だが一方、私は君たちの存在を誇りに思う。ここまで無策にも追い詰められ、それでも君たちはまだ闘志を捨てないという。大いに結構だ。是非、戦って呉れ給え。そして、勝利を掴み取って欲しい。マジェスティック・トェルブと共に。スター・セイバーと共に。最善を尽くして欲しい。君たちこそは、人類最後の希望なのだから。作戦の成功を祈る」

 病床からの、ハルトマンの訓令だった。

「きみのために何もできない。ぼくはつまらない男だ」

 直正はそういい、顔を伏せた。

「いいのよ別に。あなたはあなたのままでいてくれればそれだけで」

 ミキは言い添え、何度めかのキスをした。

「行ってきます。あなたのために。私たちの、人類の未来のために」

「気をつけて。愛してるよ、ミキ」

「私もよ。直正」

 分秒刻みで進行する作戦計画の、僅かな隙に滑り込ませたささやかな交わりだった。

 或いは、という互いに巣食う想いを胸に、それを焼き尽くかに、心身精魂果てる様な激しさでその時間の限り二人は求め合った。

この場面、セリフと「二人はどうだった」だけですが、いいですか? 漫画で言うと、背景がまったく描かれないで胸像の構図でしゃべり合うだけの、少女マンガの「状況わかんねえよ!」という不親切な画面みたいなものです。ただ、本作はそういう「背景ちゃんと描けよ」みたいにしゃべくり合うだけの場面みたいなものは全然ないので、ここはあえてそういう表現にした、というのはアリです。

(よく、「キャラがしゃべるだけで背景に当たる描写がまるっきりない、のっぺらぼうの小説」を見かけます。これはダメ。でも、本作のここのように「ここはあえて2人しか映さない」というカット割りはアリ)

「こちらアルファ・リーダー。全弾射耗、繰り返す全弾射耗した」

「チャーリーはどうか」

「チャーリー・リーダー。保って5分、10分はキツイ」

「こちら整備班、ブラヴォーの発艦あと5分下さい」

「2分で済ませろ」

「こちらアルファ・リーダー。全機帰還した。損失なし。要整備1」

「ブラヴォーだ、出るぞ」

「グッドラック、ブラヴォー」

「了解、ブラヴォーチーム出撃する」

ここもそういう意味では、あえて会話のみにしたカットに当たると思いますが、一行空けて後ろにでも、「宇宙空間ではこのような会話が飛び交った」とか「世界中の各基地、各母艦からはこうして次々と宇宙戦闘機(とかなんとか、名称を)が出撃していった」とか、その程度でいいので説明を…。

後ろに「遠征」が出てきますが、「エンタープライズ」以外の、全世界的な状況は? 前の「ポエム状態」のところに手掛かりはそこそこ書いてありますが、表現がふわふわっとさせてあったので、きちんと理屈を伴って脳内に像を結んでいないまま話だけ先走る感じがあります。「基本説明を済ませて、読者が理解した後」にポエムやイメージ場面の展開をしてほしい…です。

 もちろん、遠征にはミキと『スター・セイバー』も参加していた。

 “エンジェルチーム”が出撃している間はどうということも無かったが、これが一度下がるともう一苦労だった。

 むろん、ミキ以外の戦闘員たちにも休息は必要だった。

 エンタープライズは『スター・セイバー』以外に36機の艦載機を搭載していた。

 艦載機は3機を1部隊とし2隊が常時、艦隊前方で直掩にあった。

 戦闘管制はデータ・リンクにより母艦が直轄する。

 搭乗員は寧ろこの戦闘管制が不全となった際のバックアップだった。

 機に“敵”の撃破は要求されてはいなかった。ひたすらに航進を続ける艦隊から注意を逸らし、振り切る迄の僅かな時間を稼げればそれで良かった。

 それでももし万が一、未帰還機が出そうな状況であれば例え熟睡中でも自分を叩き起こしてくれるようミキは艦隊司令に重ねて要請してあり、事実片手に足りる程は寝ぼけ眼でスクランブルをこなし貴重な戦力維持に貢献していた。

 そして、艦隊が進発してから一月が過ぎた。

 地球近傍の最前戦を過ぎてしまうと、航宙は不気味なほど落ち着いたものとなった。

 少々の接触があっても、たっぷり休養をとったエンジェルチームが出撃すればそれだけでこと足りた。

 艦隊は定常加速を続け、既に光速の10%ほどまでに達していた。

 “敵”の本拠があるとしたら、そろそろのはずだった。

 そして同時に、艦隊の最大進出点でもあった。如何に“生還を期せず”といっても、虚空で無駄死にでは余りにも意味がなさ過ぎる。それはあくまで“敵と刺し違えても”、とのことであり、片道燃料で死んで来いという意味では決してない。

 そして、ミキはアレフの異変に気付いていた。

 言葉になりきらない思念が、ぶつぶつと彼女の頭に飛び込んで来ていた。

「アレフ、大丈夫?出撃よ。大規模な敵の編隊が出現したの」

<そうか……そうだったのか>

「アレフ?」

<姫……もう大丈夫です。大丈夫ですよ>

 最終章 ラッキースター

メールか手紙でお伝えしたと思いますが、ここ、「アレフが言ってるってわかるっしょ」で流してはダメなところなんです。「誰?」という状態。

「最終章」で章扉が立ちます。つまり、一回幕が下りて、また幕が上がって、ひととおりリセットされた状態から「最終幕が開始されます」と仕切り直されているのです。

だから、「そして、語った」からこの章がはじまるのは「誰?」になるわけです。

もちろん、アレフに決まっています。でも、「最終章」のはじめに「前の章からの流れでわかるっしょ」はダメ、ということ。

しかも、ここまで「アレフの言葉」を示す記号だった < > のカッコで、他の者の意思も入ってきます。ここまでは多少わかりづらくても「最後まで読めばわかるだろう」とついてきてくれた読者も、最終章まで読み終えて「よくわからなかった」という結論だと不満になります。

無駄に長くならないように気をつけつつも、読者に最もきちんと説明をしなければならないのは、冒頭とラストです。

<同胞よ、試練の時は過ぎた。もう無明を恐れることはない。不在を嘆くことはない。我々は新たな主人を得たのだ。集え、そして共にこの歓喜を味わおう、同胞よ>

 そして、語った。

 かつて、銀河を統べるほどに発達した種族があったことを。

 アレフも含め、“我々”はその被造物であり、彼らを主人として仕えていたことを。

 しかし、彼らが“我々”を残して、突然居なくなってしまったことを。

<だから!用があるやつなんて誰もいないっていってるだろう?!>

 突然、虚空に嘲笑が響き渡った。

 同時に、攻撃。

 何が起きたのか彼女には知覚出来なかった。←この「彼女」は誰? ミキ? 「後を読めばわかる」ということで説明されていない、敵の人型の何者か? などの解釈が可能。

もちろん、私は編集やってるくらいなので、この「彼女」がミキということはわかるのですが、読者の立場からすると、この章の冒頭から数えれば、ミキが戦場にいたという描写すら出てきていないため、「実は場面がぐっと変わっている」という錯視効果を狙った小説技術を使っている可能性もありうるわけで、「こうだから、こう」とすんなりと読めるとは言い難いです。ここを、読者にわかりやすい「ミキ」と書いていない理由は?

 それは既に標準の人間はもちろん、彼女の身体能力の限界をも越えていた。

 ただ何となく、辺りが一瞬、閃いた、煌めいた、それは視覚による認識では無く感触に近かった。

<またお前か!>誰?

 アレフにも、彼女にも何も危害は及ばなかった。

<仕えるなんてくだらねえ!みろ!あのザマを>誰?

 しかし。その一瞬で艦隊は壊滅、いや絶滅していた。

 周囲には何も無かった、全く何も。

 アレフは激昂に巻き込まれずに平静に応じた。

<我々の本義なのだ。それでこそ我々は平安を得る>

 しかし、彼女は違った。←誰? ミキ? 「後を読めばわかる」ということで説明されていない、敵の人型の何者か?

 かつてない、感情が、激情の奔騰が湧き上がり、支配した。

 制御出来ない。する気も無かった。

 その中で、平常よりなお平静な意識が、まるで二重人格の様に一方を見据えていた。ここで「二重人格のような」と出てくるから、ここまでの「彼女」は、ミキの「一方の意識」のこと? …というわけで、「彼女」が3通りくらいに解釈できるようになってきました。読者がこの「彼女」をどれだと読んでいいのか、自分で判断することは難しい状態です。

 そして、ミキは理解した。

 空間が、裂けていく。

 その裂け目が、ゆっくりとこちらに向かってくる。

 それをアレフは、全く余裕綽々と回避してみせる。

 ゆっくりと。

 ではない。

 これは寸秒、いやプランクスケールでの出来事。

 意識が、アレフと完全に同期している。

 そして彼女は垣間見た。

 絶望的な深淵と、それに投げ掛けられる、光輝。

 はからずも目にしてしまったアレフの、深奥。

 そこにはあの、ミキの胸にも焼き付けられていた。←ここを切ると文意がおかしい。次の文章と合わせて一つの文意になるのに、切るのはおかしい。文法よりフィーリング重視のラノベではアリのようですが、そこそこ文章が書けているラノベでもこれはナシ。

 荒涼とした、オリンポス山頂の景観もが存在していた。

 ミキの中に雪崩れ込んできたアレフの想いは、しかし次の刹那、強引に断ち切られた。

 切り替わり、現況が突き付けられる。

 敵はアレフに向け全力で打ち掛かっているようだったが掠りもしない。

 そして全く、こちらからは手を出そうとしない。

 不意に、太陽系を丸ごと破壊してしまいそうな、言語に絶する力の解放が、途切れた。

<お前、変ったな>誰?

 相手にならないアレフに興が殺がれた様だった。←動作の主体(主語)が示される必要あり

 アレフは向けられたその言葉に、驚いた様に見えた。

<変った……そうかもしれん>

<あーあ、つまんねの>

 そう吐き捨て、光の粒子を巻き散して姿を消した。超光速巡航だった。←動作の主体(主語)が示される必要あり

「勝った……?」

 ミキは不思議そうにその言葉を呟き。

 激情から解放され。

 次には号泣していた。

 勝利?これが?なんと空しい勝利。

 全滅。

 また私一人生き延びて。

<あー、ああ、あああ?!>

 その怪異に、ミキの涙がすっと引いた。

 アレフが。

 あのアレフが。

 嘆き、狼狽えている、の?。

<申し訳ありません私の不手際ですほら泣かないで、泣き止んで下さい我が主よほらこの通り!!>笑う場面ならいいのですが、このグズグズにつながった喋り方、コミカルでちょっと違和感…。嘆き、狼狽したというより「慌てふためいたアレフを読者が笑う、という場面」という感じ。

 喚き叫びながら彼は。

 一度、指を鳴らす、ような仕草を。

「え」

 目を擦る。

「えええええええええええ?!?!」

 何事も無かったのか。

 悪夢でも見ていたのか。

 艦隊は、アレフの背後に展開している。

<交戦直前に存在情報を保存しておきました今再生しました貴方が悲しむ様も苦しむ姿も私はもう金輪際見たくありませんそれは私の哀しみであり最低最悪の罪科なのですですから我が主よ>同じく、コミカルにしか読めない。

 ふふ。

 口元が歪み微笑が零れ。

 堪えきれずミキは爆笑した。人生最上の安堵と共に。

 アレフは再び語った。

語った内容とわかる、< >のカッコがほしいところ…。どこまでがアレフの弁かわかるように。

 主人を失った我々は大きく分けて三つの流派に別れました。

 一つは、原理主義者、銀河広くに新たな主人を求める一派。

 一つは、自律主義者、我を至上とし、自らを主人とすることを決断した一派。

 そして少ないながら、先ほどの様な無頼派。

 私は、主人に仕えることなく主人を失い。

 何かを求めて、彷徨っていました。

 そして、貴方と出会ったのですよ、ミキ・カズサさん。

 貴方が持つ生体鍵は、かつての我等が主たちが持っていたものに、極めて近かったのです。

 本来であれば厳密に設定される生体鍵ですが、私はその処理を受けることなく、この世に送り出されました。

 それでも鍵は鍵です。せめて、同族でなければ合致するものではありませんでした。

 銀河の果てに彷徨いこんだ先で、主に巡り会えるとは……私には表現する言葉がありません。

 ただ、貴方の存在に、感謝します。ミキ・カズサさん。

 この一派を統率する、代表者が、アレフにコンタクトを取って来ていた。

 超空間通信により、交渉は一瞬で済んだ様だった。

 代表者は宣言した。

 認めよう、人類の力を。今この瞬間から我々は貴方方の僕だ。読みづらいので「貴方がたのしもべ」と表記したい

 それは、原理派に依って課せられた試練であった。

 仕えるからには最高の主人を。←ニュアンスのわかりづらい体言止め

 色々な主人に仕えてみて、主従が逆転してしまったり、内乱で自滅したり、という様な経験を重ねるにつれ、彼らもその“審査基準”を引き上げざるを得なかった。

 その試練を跳ね除け、人類は今、栄冠を勝ち得たのだ。

 ここに、人類との盟約を宣言する。

 盟約に従う限りに於いて、我々は人類を無制限に支援する。

 その宇宙開発、各種研究開発、その総てを。

 盟約により、我々と人類は結ばれた。

 人類に常しえの繁栄を。我らがその奉仕を。

 スターセイバー。其の名は、伝説

 そして伝説は神話となった。

せっかくのラストなのに、この2行、説明不足と文の略しすぎでよくわかりません。「カッコいい文」にしかなっていない…。この2行は、「戦争終わったよ」(現在)ですか、「そしてはるかのちの世に語り継がれ、伝説となったのであった」(未来からの俯瞰)ですか?1行目が現在、2行目が未来からの俯瞰?

そして、この「スターセイバー」が、アレフ単体のことなのか、アレフたちの種族のことなのか、それもわかりません。前に書いたように、「スターセイバー(アレフたち種族の一般呼称)」「アレフ(本作でミキとともに戦ったスターセイバーの一人)」というように書き分けるとよくわかります。

それと、こうしたSFファンタジーでは2つの「エンディング」を描かなければなりません。

戦争の終結と、主人公の帰結です。

ガンダムで「ジオン公国と地球連邦の間に講和条約が結ばれた(戦争終結)」「アムロは無事脱出し、仲間たちのもとへ帰り着いた」、この両方が揃ってはじめて「エンディング」です。

本作、ミキがほったらかしのまま終わるんです。

アレフは、種族が人類に仕えることになったことに帰結が含まれてOKです。

ミキは「あー、よかった」と戦場で爆笑し、アレフに感謝されて終わり。エンディングはその後に訪れています。直正とかどうなったんでしょう?

あえてミキのその後は描かない、という意図をもっているなら、せめてアレフの種族の代表者が寄越したコンタクトの内容に、主人公らしいリアクションを見せてください。代表者とアレフで交信をして、意思の疎通ができたとしても、ミキを通さないとそれは人類へは伝わりませんよね。

「わかりました。私が代表して、あなたがたの意思を全人類へ伝えます」

なんてことを高らかに宣言するだけで、ミキのエンディングは来るわけです。

案外、ファンタジーを描かれる方、「主人公の出来事」「世界の出来事」どっちかだけを終わらせて満足する方が多いです。ご参考まで。




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