……火星……

昔の人は火星をどんな星だと思ったのだろう…

きっと、幻想的な例えをした筈。

でも、今は…

戦闘が続いています。

チューリップは落ちなかったけど、

軌道上の艦隊、バッタ、

チューリップと一緒に地上に来たバッタもある。

火星駐留艦隊も頑張ってるけど、ジリ貧かな…

次のチューリップも何時来るかわかんないし。

そんな訳で、

私達結構ピンチです…




機動戦艦ナデシコ
〜光と闇に祝福を〜




第三話 「どこにでもある『奇跡』」(前編)






俺は何時もこうだ…


何をやっても中途半端で…


何も成し遂げる事が出来ない…


パイロットも…


コックも…


家庭も…


結局目的を果たす事は出来なかった…


誰も傷つけたくなかった…


皆が笑う顔が見たかった…


ユリカやルリちゃんに幸せになってほしかった…


全ては泡沫(うたかた)の夢…


俺の願いは届かなかったのか…


……



      バリバリバリバリ・・・・・・・・・



「……ん」


動く事が出来ない。

どうやら毛布に包まれているらしい…

腕には点滴が刺さっていた。

圧迫感に身じろぎをすると、誰かが話しかけてきた。


「あっ、ジョーさん気付きましたか?」


ぼんやりと赤い髪が揺れているのが見える…

紅玉か…


「ああ、何とかな…

 ところで、俺はどれぐらい寝ていた?」

「ほんの30分位です。

 本当に危なかったんですよ…

 もう少し遅かったらジョーさん失血と体力の低下による心停止を引き起こす所だったんですから!」


紅玉が真剣に怒っている…

ナースキャップを握り締めて肩を震わせている。

珍しい物を見た……もう一度見たいとは思わないが…

その横を見ると、ラピスも同じように震えていた。


「すまない。心配をかけた様だな…」


だが、今のラピスは違っていた…

自分からリンクを閉じ、目を潤ませて俺を睨み付けている。

そして、普段なら決して口に出して言わないような事を言った。


「アキトは自分がイラナイノ?」


それは、誰もが思っている事。

でも決して誰も聞かなかった事だった…


「俺は…」


何も言葉が出ない…

俺は自分の不甲斐無さに絶望し、いっそのこと死んでしまいたいと思っていたのかも知れない。

違う……と、そう言い切れない自分が居る事に気づいてしまった…

だが、俺にはまだやる事がある。

生きている限り、まだ出来る事はある筈だ。


「俺はまだやる事がある。こんな所で死ぬつもりは無い」

「ホントウ?」

「ああ」

「約束シテクレル? モウイなくナラナイッテ…」


約束…

重い言葉だ、俺にラピスと約束できる資格が有るのか…


「ダメ?」

「…いや、約束するよラピス…もう皆の前から居なくならないと」


その言葉を聞くと、ラピスは相好を崩し涙をためながら俺に飛びついた…


アキト! アキト! 私怖カッタ! アキトがイなくナルナンテ! モウソンナ思い サセナイデ! 御願いダカラ…


よほど張り詰めていたのだろう、

ラピスは激情のままに言葉を紡ぐと、俺にもたれ掛かったまま眠ってしまった…

それを紅玉がやさしく抱え、隣に寝かしつける。

そしてまた、紅玉の目がこちらを向く…


「私だって心配したんですよ! あまり無茶ばかりしないで下さい!」

「…だが、チューリップを止めるにはあれしか無かった」

「そんな事じゃないんです! 一人で何でも抱え込もうとしないで欲しいって言ってるんです!」

「…気をつけよう、それでシゲルはどうなっている?」


紅玉はまだ何か言いたそうにしていたが、一つため息を吐いて口を開く。


「そこです」


紅玉が指さしたのは、俺から見て紅玉の反対側だった。

そこには俺と同じように点滴を刺し、毛布に包まって眠るシゲルの姿があった。

そうか、シゲルは助かったんだな…

良かった…


「ほんとに何時も人の事ばっかりなんですから…」


紅玉はあきれたような…それでいて嬉しそうな顔を俺に向けていた。

とにかく、状況を把握しなければ…

俺は紅玉に現在の敵の状況を聞く事にした。

紅玉の話によると、現在空中では火星駐留軍の戦闘機がバッタと戦闘を繰り広げているらしい。

しかし、いかんせん機動力に差が有った…

しかもバッタは数百機もいるので、数の上でも駐留軍には分が無い。

駐留軍の壊滅は時間の問題と思える…


「今ヘリは何処に向かっている?」

「崑崙大学病院です」

「…」

「駄目です!」

「何も言っていないが…」

「言わなくても分かります!」

「…分かった、寝ているよ」

「分かればいいんです」


目を閉じ、寝たフリをしながら考える、

マズい…チューリップが落ちなかったとはいえ、まだカトンボの艦隊もバッタ達もいる。

カトンボの方はフクベに頼んでおけば暫くは時間が稼げるだろうが、バッタはユートピアコロニーに降りかかるだろう…

その上、時間がかかればチューリップの第二陣が来てしまう。

何か方法は無いのか!?

クソ、このままじゃ<前回>と同じ事になってしまう!


(…)


何!?


(私を…)


まさか…


(私を使って…)


アメジスト…なのか?

(ええ。私はアメジスト…貴方に名付けてもらった…)

何?

だが、今まで自我らしきものは感じなかったのに…

(それは…)

…?

(それは、アキトの心と離れないでいるため)

どういう事だ?

(私の心はアキトが作ったもの、だから分かる)

何が分かると言うんだ!

(私に心があると気づけば、アキトは私を遠ざけてしまう…)

なっ…

(それは、私を傷つけないため、そして、アキトの心が傷つかないため…)



ならば、何故今その事を明かす?

(それは、アキトに死んで欲しくないから…)



大丈夫だ、俺は死なない。

(嘘…アキトの死は目前に迫っている。なのにアキトは…)

…ふぅ……

本当に皆お人よしだな。

何で俺なんか心配するんだか…

(私はアキトとの繋がりの中でしか存在できない…アキトが死ねば私も消える)

なっ…

そんな、バカな事…

(私の記憶も心もアキトにもらった物、アキトが死ねばそれも消える…)

だが…

(だから、今は体を休めて…やりたい事があるなら私の体を使って)

しかし…

今のお前は…

(大丈夫。最初にリンクした時の様に、ただ心を開放すれば良いだけ…)

……

わかった。アメジスト…お前の体、少しの間借りるぞ。

俺は心を開放し…

ラピスとリンクした時の様に完全な形でアメジストとのリンクを開始する……



………

……

…視界が晴れてきた…

白い天井が見える。

どうやら俺は寝ているらしい…

シーツをどかし、ベッドに座る。

ここは…医務室の様だ。

しかし…スーツを着ているというのに、全感覚がこちらに来るとは…


(当然だよ、今のアキトは殆ど全身麻痺なんだから…)

「そうか…って、ええ!?」

(何?)

「いや…俺が体を動かしている間は眠ってるとか、そんなんじゃないのか?」

(ううん、大丈夫。私が色々サポートするよ)

「はあ…」

(何?)

「いや、何でも」


こりゃ、変な事考えられんな…


「それじゃ、まずは火星駐留軍だな…」


アメジストの服は相変わらずゴスロリだったが、昨日とは違う物だった。

何故なら、着替えの服を入れたリュックを紅玉に持たされているからだ。


(アキト、着替えないの?)


頼むからやめてくれ…



俺はリュックを手に取ると、フクベに連絡を取るため通信施設のある部屋へと急ぐのだった…







『よくやったフクベ少将、始めての戦いで敵のチューリップ型母艦を沈めるとは…

 だが、今の艦隊では戦闘はもう無理だろう、早く地球に帰ってきたまえ。

 火星は放棄してかまわん』

「しかし…」

『分かっているね? これは命令だよ。

 それに無数に現れる艦隊や機動兵器相手にどうするというのだね?』

「クッ…」

『地球にいる人間の数を知っているかね?

 100億だよ、100億。たかだか300万のために艦隊を()く 訳にはいかんのだよ。

 いいかね、フクベ少将』

「…分かりました…」


フクベは拳が震えだすのを止められなかった。

しかし目の前のカトンボ艦隊に、自分達では全く歯が立たないのも事実だった…

このままでは、遠からず全滅してしまうのが一目瞭然だ。

悲壮な覚悟を決めて、艦長室を出ようとしたその時…

新たな通信が入った。

フクベは無視しようかとも思ったが、

ふと、黒ずくめの男との賭けを思い出し通信をつなぐ…

しかしその通信に出たのは、薄紫色の髪を無造作にたらし、金色の目をした十二・三の少女であった。


「君は、確かアメルとか言ったかな? ジョー君と一緒にいた」

『はい。フクベ提督、貴方との賭けの配当を受けとるために通信しました』

「私が賭けをしたのはジョー君だったと思うがね…」

『ジョーは現在別の用件で出られません。私が代理では不服とでも?』


少女はフクベにとって殆ど印象に無かった。しかし、今のこの子は何か違う…

まるで、ジョーの様に隙を感じさせない…

不思議な少女だ。


「分かった。言ってみたまえ…

 だが、私にも出来る事と出来ない事がある」

『簡単な事です。すぐに火星全域に非常脱出警報を発令、

 全ての船を使って火星住民を脱出させてください。

 おそらく、50万人は乗れる筈です』

「しかし、現在の我々では彼らに勝てない。そう分かっていたから賭けをしたのだろう?

 つまり、我々ではシャトルや宇宙船の護衛はできないという事だ」

『発想の転換です。カトンボには確かに光学兵器は効きません、

 しかし、質量兵器ならどうでしょう…』

「それをやった私はこの様だ! 結局片をつけたのはあの戦闘機…

 そうか、あれに乗っていたのはジョー君だな!」


フクベは声を荒げ少女を問い詰める。しかし少女は何処吹く風で…


『はい。その事で彼は今、動く事が出来ません…

 ですが、火星にはマスドライバーがあります』

「まさか、艦隊にマスドライバーで加速した物体をぶつけるつもりか…?」

『はい』

「しかし、照準は…確かにマスドライバーは火星の引力圏の外まで届くだろうが精度までは…

 いや…そうか、我々が照準をするのだな」

『そうです』

「いいだろう、全ての都市に非常脱出警報を発令するよう各都市に要請しよう」

『ありがとう御座います。ジョーも感謝するでしょう』

「ところで…」


フクベが言いよどむ。歴戦の勇士とも思えない様な困った表情をしている…

その様子を少女は不審に思い、聞き返す。


『なにか?』

「今はそんな髪型が流行なのかね?」


その言葉に、少女ははっとして髪を見る。

少女の髪は見事なまでに寝癖でボサボサだった…







「くそ、フクベの爺さん絶対狙ってやがった…」


俺は憤慨しながら髪を後ろ手に結い、

服に付いていたリボンの一つでまとめて結んだ。


(あ、知ってる…これポニーテールよね)

「ああ。悪いけど女の子の髪の毛の結い方なんて知らないから、これで我慢してくれ」

(うん)

「しかし、本当にお前パイロットIFS持ってるのか?」

(大丈夫、少し待って)


俺は右手を見た。すると何も無い筈の右手に、徐々にパイロットIFSが浮き出してきた…


「…どういうことだ?」

(私の体内のナノマシンは、幾つかの<パターン>を持っているの。これもその一つ)

「便利な物だな…」


俺はフクベとの通信の後、マスドライバー施設の主任にフクベに従う様言い含めて、施設を出た。

その後10分程研究員の運転する車に揺られてネルガル火星研究所に戻り、

現在、試作段階のエステバリスのハンガーに向かっている…


「あ、いたいた! 君は確かネルガルSSの方の連れだな?」

「ええ」


研究所の所長が俺に話しかけてくる、これだけ慌てて来るという事は多分輸送船の事だな。


「輸送船の事で聞いておきたい事が有るんだが…」

「聞くのはいいけど、やめる事は出来ないですよ」


所長は冷や汗をかいている、多分中止を願い出てきたのだろう。


「とっ、とにかく教えてくれんか、この輸送船の図面おかしな所が多すぎるんだ!」


まっ、そりゃそうだろ。内容もそうだが図面引いたの俺だし…

一応、セイヤさんが図面を引く所は何度か見たが…正直真似出来たかどうか怪しい。

しかし、今回言ってくるのは恐らく内容の方だろうな…


「まずこの船、相転移エンジンを積んでいるのに推進機関が戦闘機用のバーニア6基とはどういう事だ!?

 こんなんじゃ20分も飛べんよ! しかも全部下向きだし!」

「問題ありません」

「うぅ…じゃあ船体だ! こんな船体では大気圏脱出前に船体が歪んで墜落する!

 それにこんな気密が悪い船、宇宙に出たら全員窒息死だ!」

「大気圏内飛行なら問題ないんですね?」

「まあ大気中なら…」

「では、問題ありません」


あまりに俺が無表情に答えているので不審に思ったようだ。

所長は俺を睨みつけ、畳み掛ける様に言う…


「どう言う事だ! 私もネルガルの火星研究所の所長なんだから、

 機密とは言え多少は知る権利が有る筈! あまり隠し立てするようなら今後は協力しない!」

「残念です。上手くいった暁にはこの図面を…と考えていたのですが…

 それに、後三日もすれば敵の増援が来きます。

 それまでに作れる物としては限界の筈です」


そう言って俺はコスモスの設計図を背中のリュックから取り出す。

それを見て所長の表情が見る見る変わっていく…


「…し、仕方ないですな確かに…

 相転移エンジンは試作の物が一基あるし、

 戦闘機のバーニアも予備が確か有った筈…

 船体の方はもう既に製作中だ。

 例の件で少し手間取っているがそれも二日程で何とかなるだろう…」


そう言って所長は俺の前を去って行った。


(現金だね…)

「まあな…だが、その方が扱いやすい」


アメジストと俺は一言だけ言葉を交わし、試作型エステバリスのハンガーへと急いだ…










シェルターの内部に振動が走る…


  ドォォォン!


薄暗いシェルターの中には数百人が避難している。

100mも地下にある筈のその場所に、何故か振動が伝わってくる…

地上に降りてきたバッタは、その数と機動力を生かしユートピアコロニーの住民を次々と虐殺しているが、

今の振動もその際に、バッタの火器が爆発物に引火するかどうかしたのだろう…


シェルター内の避難者達に不安が広がる。<もし、ここまで来られたら>…と。

金を持っている者や機に聡い者は火星脱出便に乗り込み始めていたが、

一般人の殆どはソレの存在さえ知らず、こうしたシェルターに逃げ込んでいたのだった。

シェルターには必ず駐留軍の兵が十数人護衛として付いてきている。

バッタに対しどの程度役に立つかは疑問だが…


「本部! 本部!」


駐留軍の兵士が基地に向かって無線で通信を行っている。しかし、応答は無い様だ…


「駄目なんじゃない…?」


兵士の近くにいた老人が唐突に呟く。


「は?」

「地上がだよ。」


聞き返す兵士に向かい、老人がウイスキーのビンを開けながら喋り始める…


「地下がこれじゃ、地上は全滅だよ…」


必死に周りを行きかう人々を尻目に、老人はウイスキーをあおっていた…





サチコとラピスを探していたアキトだが…結局見つからないまま時間が過ぎてしまい、

バッタの来襲にあったため、慌ててシェルターに逃げ込んだ。

その時初めて、今朝仕入れたみかんの箱を自転車に取り付けたままであった事に気づき、

箱ごと抱えてシェルターの中に入ったのだった。

それから暫く…

アキトは同じシェルターにいる母娘と知り合い、話をしていた。

子供の方は空腹なようだったので、アキトはなんとかしてあげなくてはと思い、辺りを見回す。

その視界にふと、持ってきたみかん箱が入る。

少し戸惑うが

(どうせ店も今は開店休業状態だし…)

と思い直し、


「はい!」


少女に向かいミカンを手渡す。


「うわぁ、ありがと〜!」

「すみません」


母と娘のあまりに素直な感謝に戸惑い、

アキトは照れ隠しに言葉を濁す…


「いえ、仕入れの途中だったんで」

「ありがとおにいちゃん!」

「うん」


自分と母親の分もみかんを取り出して、一つ母親に渡す。

少女の喜ぶ顔を見てアキトは、自分も何かの役に立っているんだと思う事が出来た。

みかんの皮を剥きかけて、自分の顔がほころんでいる事に気づいた時…少女が


「でーとしよ!」

「え!?」

「うふふふ」

少女の言葉に母親が笑い、アキトが凍り付いた瞬間…


        ブシュッ!!


アキトはみかんの皮を潰して、汁を顔にかけてしまう。


「ぬぉぁっ! 目が! 私の目がッ!!」

「ム、○スカ?!」


全然伏せ字になってない台詞を言いながら、母親はアキトの顔にハンカチを押し当てる。

…ここは地下シェルターだと言うのに、ほんの少しほのぼのした空気が流れ始めた…

しばらく後、アキトから母親が離れるのを待って少女が口を開く。


「おにいちゃん、だいじょ〜ぶ? あたしね! アイって言うの! おにい」


しかし、少女が喋り出したとき…


             ガゴォーン


壁の向こうで爆発音が響いた。

驚いた皆の目ががそこに集中する…


      ヴィ…ン


先程開いた穴から何か赤い光が垣間見える。

その直後、連続する銃器の発射音と共に…


          ド グォーン!!


アキトの背後にある壁が爆発する!


「あぶない!」

「「キャーァー!」」


その爆発にとっさに気づいたアキトは、

母娘を地面に引き倒し爆風から庇う…

爆風はすぐに去った。

…しかし、爆風による煙が晴れた時そこに現れたのは、

機械で出来た巨大な虫だった…


「キャー!」

「助けてくれー!」

「うわー!」

「出口を開けろ!」



口々に叫びながら人々は出口に殺到する。

そこでは、駐留軍の兵士が右往左往しながらも一般人を守るため懸命に指揮を取っていた。


「ただいま手動で扉を開けています! 慌てないで下さい!」


先程の老人が8番ゲートと書かれた扉を手動で開けている…

口では何だかんだ言っていたがその姿は一生懸命だ。


「市民の安全を確保せよ!」


駐留軍兵士がマシンガンによる一斉掃射を敢行するが、バッタには全く効いていない…

その時、シェルター内移動用の車両に乗り込む者があった。


「俺が奴を抑えます、その隙に!」


その言葉を言い終える暇も無くアキトは車両をバッタへと突っ込ませた。


「おにーちゃーん!」


「デヤァァー!!」



掛け声と共に車両は突進し、マシンガンによって動きを止めていたバッタにぶち当たる。

回避が遅れたバッタは足元をすくわれてジープに押し込まれ、そのまま壁にぶつかりもがき始めた…


「まだまだ!」


出力を上げ、更にバッタを押さえ込む。

圧力に耐えかねたバッタのカメラアイが幾つか弾けとんだ…


「おにーちゃんすごいすごーい!」


アイが手を振って喜ぶ横で、少しずつ8番ゲートが開いていく…


「よ〜し、ひらくぞー!」


「「よーお!」」


扉を開きそこに待っていたものは……










俺は試作型エステに乗り込み、バッタどもの駆逐を始めていた。

試作型と言っても殆ど陸戦型と変わらないので、操るのは容易い。

ただ…アメジストのIFSが新式なのに対し、

機体のフィードバックは少々旧式なので、今一動きが鈍い…


「くそ! 一体どの位バッタを吐き出していったんだ! あのチューリップは!」


(アキト、落ち着いて。あせってはだめ…

 すでに4つもシェルターを開放しているんだから…

 体力も落ちてきているし…)


確かにアメジストの体では、何時までも戦闘を続けている訳にはいかない…

実際、息もあがってきている。


「ああ、今日は次のシェルターで終わりにする」

(それって、あのシェルター?)

「そうだ、今までのことを考えると明日まで持つとは思えない…」

(うん、わかった。)


アメジストには俺の記憶の何割かが存在している。

その為、確認をせずとも伝わる事が多い。

異常な事なのだろうが、今はそんな事を言っている暇も無い…

そんな事を考えているうちに、レインボータウン近郊のシェルターの入り口まで来ていた。

入り口には既に十数機のバッタが群れている…


「拙いな、一気にいくぞ!」

(うん)


俺はラピットライフルを乱射しながら、入り口を突破して行った…

中に入り込み周囲を見る。

これは…

予想以上に酷い……

このシェルターの中には、もう何機かのバッタが侵入している様だ。

深部へと向かうエレベータがあった所に有るのは、ただの大穴。

俺は意を決してその穴に飛び込む…


(まさか、もう終わった?)

「いや、まだだ!」


アメジストの問いに俺は強気に答える。

今、ここで諦めるわけには行かない!

そう言い聞かせながら、下へと降りて行く。

しかし、ふとモニターに映る物を見て、俺は驚きの声を上げた。


「なに!?」


エレベータの残骸の中に、市長邸の前で会った黒髪の少女が倒れていたのだ。

今は急いでいるので少女の手当ては出来ないが…

しかし、置いていく事も出来なかった…


「仕方ない…コックピットに収納していくぞ」

(わかった)


その後もバッタを掃討しながら、試作エステを進める。

そして幾つかの隔壁を突破し…


とうとう最下層に足を踏み入れる…


しかし、最下層には予想を上回る程のバッタ達がひしめいていたのだった…




なかがき

どうも、黒い鳩です。

ああ、今回も色々と失敗してしまったー!

と悲鳴を上げていろところであります。

また黒髪の少女の名前を出せなかった!

また、今回も前中後編になりそうだ!

今回はギャグが殆ど入れられない!

こんなんばっかりや…

感想の事もお詫びしておきます、zeroさん返信が遅れて本当に申し訳ありませんでした。

一応返信しておいたのですが見て頂けたでしょうか?

とまあ、色々有りますが

Chocaholicさん、タイコさん、zeroさん感想どうもありがとう御座います。

では…

次回のなかがきで…



押していただけると嬉しいです♪

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