平和なZ/児【しょうじょ】


仮面ライダーネイルが姿を現してから数日が経ち、六課に帰って来たばかりの頃は手に仕事がろくにつかなかった隊長陣だが、流石に数日も経ったこともあってかいつも通りの調子で仕事をこなすようになっていた。
ちなみに仕事が手についてなかった時は、ゼロが暇つぶしの一環として其の際のデスクワーク全てを済ませてしまった。それも普通なら一時間かけて終わらせる仕事量をたった十分で終わらせたのだ。

「なんだ、案外幼稚なことやってんだな」

なんてことまで口走ったせいで、常日頃の”幼稚”なことに苦戦していた他の隊員たちは泣きそうになりながら仕事していたとか。

まあ、こんな与太話はさておき。
訓練場では…。

「はい。今日の朝の訓練と模擬戦も終了。お疲れ様」
「「「「ありがとう、ございます」」」」

訓練を終えてボロボロになっているフォワード陣。

「それで、実は何気に今日の模擬戦が第二段階クリアへの見極めテストだったんだけど…」
「「「「え…?」」」」

なのはから告げられた言葉は四人の脳髄の芯にまで届いた。

「どうでした?」
「合格!!」
「早ッ!」

いきなり間をおかずに合格の報せを聞いてスバルとティアナがツッコミを入れる。

「ま、みっちりやってて問題あるようなら大変だってこった」

ヴィータのきつい意見にエリオとキャロが苦笑いする。

「私も皆良い線言ってると思うし。じゃ、これにて二段階終了!」

それを聞いてフォワード陣は喜ぶ。

「デバイスリミッターも一段解除するから、後でシャーリーのところに行ってきてね」
「明日からはセカンドモードを基本形にして訓練すっからな」
「「「「はいッ!」」」」

返事をしたフォワードだが、

「あの…明日?」
「あぁ。訓練再開は明日からだ」

キャロの言葉にヴィータが答える。

「今日は私達も隊舎で待機する予定だし」
「皆、入隊日からずっと訓練漬けだったしね」
「要するに貴様ら四人と一匹には、今日一日、休日が与えられたと言うわけだ」
「ってゼロさん!いつの間に?」

当たり前のようにいきなり話に参加してきたゼロに一同は同時にツッコム。





*****

朝練が終わり、部屋に戻って街へ出かける準備をするフォワード陣。
そのころ、隊長陣や副隊長陣・その他もろもろは朝食をとっていた。

「あれ?ゼロさん、なんでここにいるんですか?」
「確か『欲望』のエネルギーだけを食べるのなら、私達と一緒にいなくても…」

なのはとフェイトはコーヒーを飲むゼロに向かってそう言った。
ゼロ曰く「腹の足しにはならないが、味うことくらいはできる」とのことだ。

『以上、芸能ニュースでした』

そんな会話をよそに、モニター上に映し出されていたニュース番組では…。

『続いて政治経済。昨日、ミッドチルダ管理局地上中央本部において、来年度の予算会議が行われました。三度目となる再申請に税政問題に基づいて、各世界の注目が集まっています』

ここまでは殆どゼロからすれば聞いたところでどうでもよいと感じるニュースだが、

『当日は秀と防衛隊の代表レジアス・ゲイズ中将による管理局防衛思想における表明も行われました』

ニュースキャスターに口にした名前に皆は画面に注目する。

『魔法と技術と進化と進歩、素晴らしいものではあるが、しかし!それ故に我々を襲う危険や災害も、十年前とは比べ物にならない程危険度を増している!兵器運用化の強化は、進化する世界の平和を守るためである!!』

話の区切りがつくと、シャマルとヴィータリインは食事を再開する。
だが、残りのメンバーは未だに画面を見ていた。

『首都防衛の手も未だ足りん。地上戦略においても我々の要請が通りさえすれば、地上の犯罪発生率は20%、検挙率においては35%の増加を初年度から見込むことができる!』

「このオッサンはまだこんな事言ってんのな」
「レジアス中将は、古くから武闘派だからな」

ヴィータとシグナムはレジアスについてそう語る。

「以前依頼で奴と会ったことはあるが…私からすれば、上っ面だけを気にする小心者の小男だな」
「…違ぇねぇかもな」

ゼロは機動六課に来る一か月前地上本部からの依頼でレジアスと会ったことがあるが、ゼロはレジアスの高圧的な態度と物言いが特に気に入らなかった。
レジアスも魔界能力や仮面ライダーという未知なる力を用いるゼロの気に入っていなかったのか、双方は冗談抜きでドライな関係なのだ。

「…あ、ミゼット提督」
「ミゼット婆ちゃん?」

なのはの言葉に反応したヴィータ。
確かにレジアスの右後ろには三人の老人が座っている。

本局統幕議長のミゼット・クローベル。
武装隊栄誉元帥のラルゴ・キール。
法務顧問相談役のレオーネ・フィルス。

「キール元帥やフィルス相談役もご一緒なんだ」
「伝説の三提督のそろい踏みやね」
「おー、実際会ってみたら結構感じ良かったぞ、あの三人」
「「「「「「「はい…?」」」」」」」

ゼロのぶっ飛んだ発言に七人は間抜けな声を出す。

「あの、ゼロさん」

ここで影の薄いシャマルが声をかける。

「影薄いって何!?」

さて、影薄のツッコミなどはどうでもいいから、本題に入ってもらおう。

「(酷い…!)…え〜と、ゼロさんはどうしてあの三提督とお知合いなんですか?」
「な〜に、半年前依頼があったから、パパッと片付けたらウケが良かった。それだけだ」
「それだけって、ゼロさん。三提督に気に入られるって凄いことなんですよ」

どうでもよさ気に語るゼロに、シャマルは呆れた表情であった。

「にしても、この三人こうして見ると…普通の老人会だ」
「もうダメだよヴィータ。偉大な方たちなんだよ」
「管理局の黎明期から、今の形にまで整えた功労者達さんだもんね」

フェイトが優しく注意し、なのはは三提督の偉大さを説く。

「ま、あたしは好きだぞ。この婆ちゃん達」
「護衛任務を請け負ったことがあってな。ミゼット提督は主はやてやヴィータ達がお気に入りのようだ」

ヴィータの発言に一旦皆の視線がヴィータに集まると、シグナムがその理由を話す。
皆は「成るほど」といった顔で食事を再開する。





*****

それから、フォワード陣が互いの相方(パートナー)同士で街に遊びに出かけると、

「………終わったな」
「こっちも終わりました」
「二人とも、御苦労さん」
「リイン達も大助かりです〜!」

ゼロとリインフォースは部隊長室で書類作りやら報告書の作成やらを手伝っていた。
理由は勿論、ゼロの場合はただの暇つぶし。リインフォースは良心的な理由でだ。

「それにしても、フルチェックが終わって気分爽快です♪」
「それは良かった」

リインの純粋な笑みを見てリインフォースは心が安らいで行くのを感じた。

「そうだ!この際お姉ちゃんも、メンテナンスチェックして貰ってはどうですか?」
「え?私が…?」

魔導書の管制人格ということは、主とユニゾンする融合騎であることも指し示すのだ。

「おー、リイン、それグッドアイディアや。リインフォースの体調管理もできるし…それに」
「「「それに?」」」
「リインフォースのナイスな胸を直に揉めるチャンスやしな♪」

――ズゴーーー!!――

その色んな意味で空気をぶち壊すはやての発言にリインはズッこける。

「いえ、結構です」

リインフォースはクールな表情で答えた。

「な、なんでや?」
「はやて、貴女が”揉み魔”だの”おっぱいマニア”だのと呼ばれているのは知っています」

そう、はやては親しい人物の胸を揉むことがある。
故にそんな不名誉な渾名が付いているのだが。

「ですけど…私の胸を揉むのはゼロだけで十分ですから」
「ブーーーーーー!!」

はやてはコーヒーを思いっきり吹いた。

「リインフォース、あれは貴様が失態を犯したが故にお仕置きだぞ」
「だとしても…あの揉み方は反則…///」

顔をすんごく赤くするリインフォース。

「認めへん!わたしは認めへんで、夜天の王として!」
「そんなことに夜天の王とか言うな」
「ゼロさん、ちょっとわたしの部屋に来てや!!」

凄まじい剣幕で詰め寄るはやて、断るのすら面倒になったゼロは素直にはやての部屋について行った。

三十分後、部隊長室に戻ってきたゼロは何かを満喫してきたかのように清々しい表情。
一方はやては自分の胸に手を当てて顔を極限まで赤くさせ、

「この幸せ者がァーーー!!」

と、いきなりリインフォースの肩を掴んで彼女の身体を揺らす。
なにがあったんだと思う方もいるかもしれない、だがスルーして欲しい。

(あ〜、平和です〜)

そんなちょっとした騒ぎの中、リインはどこぞから持ち出してきた自分専用のマグカップで紅茶を堪能しながら一時の平和を満喫していた。





*****

其のころ、とある事故現場では…。

「陸士108部隊、ギンガ・ナカジマ陸曹です。現場検証の、お手伝いに参りました」

スバルの姉であるギンガが居た。

「横転事故と聞きましたが…」
「えぇ、ただ事故の状況が奇妙でして。運転手も混乱してるんですが、どうも何かに攻撃を受けて、荷物が勝手に爆発したとか言うんですね」

現場警備員の説明を受けるギンガ。

「運んでいた荷物は缶詰やペットボトル…爆発するようなものじゃないですね」
「あ〜それと下の方に妙な遺留品があってですね」

其の遺留品は、破壊されたガジェットの残骸。そして…。

「これは…生体ポッド!?」





*****

そしてこっちでは、

「レリック反応を追跡していた、ドローンI型六機が全て破壊されました」
「ほう、破壊したのは局の魔導師か?それとも、当たりを引いたかな?」

スカリエッティはウーノの報告に対して質問する。

「確定はできませんが、どうやら後者の様です」
「素晴らしい。早速追跡を掛けるとしよう」

ご機嫌なスカリエッティのところに…。

「ねえ、ドクター。それならあたしも出たいんだけど」
「ノーヴェ、君か?」
「ダメよノーヴェ。貴方の武装はまだ調整中なんだし」

ノーヴェと呼ばれた人物の出陣にウーノは難色を示す。

「今回出てきたのが当たりなら、自分の目で見てみたい」
「別に焦らずとも良い、あれは必ずここにやってくることになるわけだからね。まあ、落ち付いて待っていてほしい。良いかい?」

ノーヴェはぶっきらぼうに「わかった」といった。

「ドローンの出撃は、状況を見てからにしましょう。妹たちの中から適任者を選んでおきます」
「あぁ。後、愛すべき友人にも頼んでおくとしよう。…優しいルーテシア、聞こえるかい?」

巨大なモニターにはルーテシアが映し出される。

「レリック絡みだ。少し手伝ってくれるかい?」





*****

「さて、暇つぶしも全部終わってしまったな。どうすうかな?」

スターズ・ライトニング・ロングアーチ。
この三つの部隊のそれを総合すれば殺す気かと言いたくなるような仕事量を”暇つぶし”の一環で、しかも一週間分のデスクワークを僅か一時間で終わらせたゼロ。

『謎』喰い魔人・脳噛ネウロと同じ上級魔人だけあってあらゆる知識を一目見ただけで記憶し、様々なことに活かす頭脳明晰さは彼と同じのようだ。

これによって機動六課の隊員たちは大幅に休憩の時間を取ることができ、ゼロにこの上なく感謝すると同時に憧れの思いを抱いたとか。

だが、そんな(へいわ)な時間は突然にも崩れ去る。
エリオとキャロからレリックとそれを持った一人の少女を発見したと言う報告によって。



次回、仮面ライダーイーヴィル

動き出したS/炎【アギト】

「この『欲望』はもう、私の手中にある」


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