兄妹と遺志の力と映司の決断
今、空には神代の光景を思わせる怪物が、大きな翼を広げて浮かんでいた。

『お帰り・・・僕・・・!』

遂に右腕(アンク)を吸収することに成功し、ご満悦な声を出すロスト。
右肩と左肩から真紅の大翼を現し、赤い羽根を落としながら幻想的な雰囲気を纏う。

『うふふふふ・・・!あははははははははははははは!!』

禍々しい紫色に染め上げられた体色と、身体中に生えた強靭な龍の鱗。
背中から巨大な翼を広げて大笑いするキョトウには、鑢七実としての面影が微塵もなかった。

それを地上から見上げ、一同は絶句する。
だが比奈は、

「アンク・・・・・・映司くん、アンクは!?」
「・・・・・・アンク・・・・・・」

問われても映司が回答を持ち合わせているわけがない。

「七実・・・・・・まさか・・・・・・」
「人格が変わっている・・・・・・」

刃介と竜王も、キョトウの変わりように声をすり減らした。

『これで僕は・・・僕になる・・・!!』
『あははっ・・・!消えちゃえ・・・!』

ロストとキョトウは、赤と紫の波動を地上に向って放つ。
その力は想像以上に強く、四人は思わず身構えたり後退さりしてしまう。

『はははは!はははははは!!』
『ふふふふふ・・・・・・!!』

ロストとキョトウは高笑いをして、盛大に盛り上がっている。
だが、それも突如として途切れた。
ロストの右腕が、奇妙な反応を起こしたのだ。

『っ――メダル・・・足りない・・・?』

そう。吸収できたのはアンク自身であるタカ一枚と、クジャクが一枚。
今現在、ロストのコア枚数は8だ。
それを証明するように、ロストの右側頭部は不完全なままだ。

『あら、あそこに・・・・・・』

するとキョトウは、比奈のことを指差した。
正確には比奈が握り、隠している物を。

ロストはそれに応じて、右腕に紅炎を灯す。

『―――フッ!』

ロストは右腕から、一発の炎弾を放つ。
当然、映司らはそれを避け、どこか安全な場所へ逃げていった。

ロストは大して苛立つ様子はない。
映司らにではなく、

――グァガガガッ、ギギギィッ――

『へー。意外と悪足掻きするんだ』

右腕(アンク)に対してだった。

『急ぎなさい。このままでは、あの人達が逃げてしまうわ』
『焦らなくても、すぐに追いつけるよ』

そうして、キョトウとロストは空を翔ていった。





*****

映司、刃介、竜王、比奈は必死に脚を動かしていた。
そして、人目などロクにつくことのない、地下にある水の処理施設の一端にやってきた。
地面には冷たい水で犇くこの空間には、無機物しかない空虚な雰囲気だけしかない。

「比奈ちゃん。もしかしたらさっき、アンクから何か?」

映司が質問すると、比奈は素直に答えた。
アンクは吸収される間際、比奈に一枚だけだが、コアメダルを託していたのだ。
ロストが完全復活しなかったのはその所為である。

「これ、アンク・・・?」

託されたタカを見せて訊ねる比奈。

「いいや。コレは道具としての(コア)だ」
「魂の(コア)は、ロストの奴が・・・・・・」

それを、竜王と刃介がバッサリと見抜いて教えた。

そんな時、

――バサッ――
――ピチャ――

何か二つの物体が、降り立って薄い水面を踏んだ。

『返してよ。僕のメダル!』

ロストは大げさな動きをしながら、右腕で何かを求めるように手を伸ばす。

『抵抗しても無駄ってことくらい、わかるわよね?』

そこへキョトウが傲慢な語りをしてくる。
もはや映司や刃介に残った選択肢は一つ。

(拙い・・・今オーズになれるメダルは・・・)

メダルホルダーを持っていたアンクは吸収された。
つまり今は映司自身が持ち得るコアで変身するしかない。

(やはり、キョトウに対抗するには・・・・・・)

刃介も、別人格となったキョトウを前にして、戦慄を念をおぼえる

『大人しく渡せば、命を助けてあげてもいい』
『お利巧な選択ぐらい、できるわよね?』

映司と刃介の選択など、最初から決まっている。
二人は瞳を紫に変色させると、身体から紫のコアをだしてキャッチする。
ベルトのバックルに三枚のメダルをいれ、スキャナーで読み取った。

≪RYU・WYVERN・DRAGON≫
≪PTERA・TRICERA・TYRANNO≫
≪RYU・WA・DRAGON KNIGHT≫
≪PU・TO・TYRANNO SAURUS≫

「「オオオォォォォォオオオオオオオオオオ!!!!」」

変身した二人は、すぐさまプテラアイとリュウアイを紫に光らせ、ロストの右腕とキョトウの身体をよーく観察した。

プテラアイには、ロストの右腕が未だに赤い波動を纏っているように見え、リュウアイには、キョトウの紫の波動のうち、胸の内の中央にまだ血錆色が残っていることを見つけた。

(まだ消えてない。少しだけど、アンクの気配はある)
(本来の人格が深層意識に幽閉されている。だがしかし・・・・・・)

キョトウについてはまだ詳しく解らないが、アンクとロストは、

――お前と、もう一人のお前が一つになったら、どうなるんだ?――
――・・・・・・多分、弱いほうが消える――

ロストが現れて間もない頃、そんな会話をかわしていたことを思い出すオーズ。

(今ならまだ・・・・・・!)
(檻を潰せば・・・・・・!)





*****

クスクシエ店内。

「―――映司くんも比奈ちゃんも、鋼さんも真庭さんも慌ててどこ行っちゃったのかしら?なんか騒々しかったけど・・・・・・」

知世子がそう思案していると、二階の部屋から誰かが降りてくる音が聞こえる。
知世子は階段のある方向に目を向けると、

「あらアンクちゃん。どうしたのその格好?」

そこには、アンクと瓜二つの顔立ちをした、白いYシャツを着た黒髪の好青年が。

「あ・・・・・・いえ・・・・・・初めまして」

青年は軽く頭を下げて挨拶した。

「比奈の兄の、泉信吾です」
「えぇぇぇ!?」





*****

――ピチョン、ピチョン、ピチョン――

今は地下は、上から落ちてくる水滴以外には何の音もない静寂の世界。
向かい合う二対の異形。
グリードのロストとキョトウ、プトティラコンボとリュワドラコンボ。

――ピチョン、ピチョン、ピチャッ――

そして、

「「オォォォオオオオオ!!」」

オーズとブライは同時に駆け出した。

『『ハァアッ!!』』

ロストとキョトウは右腕と左腕を振るい、オーズとブライが走る軌道に爆炎を起こしていく。

「「うあ、ぅお・・・・・・」」

二人は面食らったような声を出してしまうが、それでも闘志が消えることは決してない。
なおも向っていき、ロストとキョトウに肉弾戦を挑む。

「ハアッ!タアッ!」
「オラッ!オリャ!」
『フフフ・・・・ハハハ・・・!』
『うふふふふふ・・・・・・!』

しかし、ロストとキョトウの実力は高く、オーズとブライの攻撃は見透かされてしまっているかのように防がれてしまっている。
だがそれでもオーズとブライは拳を止めず、足を止めず、目の前の敵に当たっていく。

(映司くん、あんまり力使ったら、また暴走して―――!)
(刃介、今は焦るな。焦ったが最期、二度と・・・・・・)

比奈と竜王は戦いを見守りつつも、危惧せずにはいられない。

オーズとブライは、ただバカの一つ覚えとでもいうように、ロストとキョトウに立ち向かい、逆に反撃されている。

『好い加減に諦めてよ』
『貴方達の知っているアンクも・・・・・・私もね』

ロストはそう言って右腕から攻撃を繰り出そうとする。
しかしながら、

――ピタッ――

『ッッ―――あれ?なんで・・・・・・!?』
『まだ、馴染んでいない?』

右腕がロストの遺志に反し、動かない。
キョトウもその現象に少しばかり興味を持ったようだ。

するとその隙をつき、ブライが動いた。
ロストもキョトウもすぐに返り討ちにしようと思ったが、ブライのとった行動は、二人にとって270度は違ったものだった。


ブライは、キョトウを精一杯抱き締めたのだ。


『な、なんの・・・つもり・・・?』
「頼む、七実。戻ってくれ・・・戻ってきてくれ・・・!」

懇願するように、ブライはキョトウを抱き続ける。
キョトウは戸惑いながらも、

『言ったはずよ。私の意志は幽閉した。今の私は貴方の刀じゃない』

声音だけは冷静さを保たせている。

「だとしても、俺は・・・・・・俺は・・・・・・!」
『(なんで・・・・・・なんで、この男は・・・・・・!?)』

理解できなかった。
今の段階では、自分とロストほうが優位であるはずだ。
なのに、今自分を抱き締めている男の温もりが、こうも心地好く感じるのかと。

『なにやってんの、キョトウ?早くコイツらつぶ――ドゥガッ!!――ぐおぁあ!!?』

ロストが、自ら身動きを封じているブライに攻撃しようとすると、突如としてキョトウの腕が動き、ロストに光弾を浴びせたのだ。

『か、身体、が・・・・・・手足が・・・・・・言うこと効かないで勝手に』
『そっちも、馴染んでないみたいだね・・・・・・!』

どうやらアンクと七実の遺志が想像以上に強いことを知ると、

『『フンッ!』』

ロストとキョトウは共に波動を撒き散らし、爆煙を起こして姿を眩ました。
濃い煙の中、ブライの「ぐぅッ!」という痛みの声が聞こえる。

そうして煙が晴れると、そこには壁によりかかるブライと、変身の疲労で四肢をつく映司の姿。

「映司くん!」
「刃介ッ!」

比奈と竜王は急いで二人に駆け寄る。

「ごめん――あいつら逃がしちゃった」
「ったく、二人の気配と意思が残ってたってのに」

映司とブライは悔しそうに言った。

「それって、じゃあ、消えてないってことだよね?」
「アンクと鑢を何とかする方法は、まだあるということか」

比奈と竜王は、まだ僅かに残る希望を見出し、ほんの少しだけ表情を緩めた。

「今のところはね」
「だが時間の問題だ。一分一秒を争うぞ」

『タカーッ』
『リュアーッ』

映司はタカカン、ブライはリュウカンを起動させて、ロストとキョトウの捜索にあたらせた。
少しでも希望の確率を上げる為に。





*****

その頃、ロストとキョトウは、とある小さな山岳地帯にいた。
ロストは岩に腰かけて右腕を凝視し、キョトウは草木に背を預けながら胸に手を当てていた。

『―――早く全部手放せばいいのに・・・・・・意識も、何もかも・・・・・・―――悪足掻きは止めなって言ってるんだよ!!』

――ガツッ!ガツッ!ガツッ!ガツッ!ガツッ!――

ロストは憤りのあまり、右腕で地面の岩を殴る。
殴るごとに、地面の岩が砕かれていく反面、チャリンチャリンとセルメダルが右腕から削れていく。

『どうして、あの男の抱擁がこんなにも気持ちイイの・・・・・・?これも貴方の所為なのかしら、ホントの私?』

キョトウは胸に手を当てたままの姿勢で、ただただ自問自答を試みた。
深層意識に幽閉された鑢七実という、もう一人の――本来の人格に向けて。
今のキョトウに、俄かながらも愛情の念を刻み込んでいる、天才過ぎる怪物に。





*****

クスクシエに引き返してきた一同。
ドアを開ければ、そこにはパルテノン紛いの白い柱がやたらとあって、雰囲気だし用か白い幕がやたらと張られている。

「お帰り〜!今日はギリシャフェアよー!」

知世子自身は、頭に草冠をして、身体には白いゆったりとした服をしている。
久々にみる店全体のコスプレだ。

「あ、そんなことより比奈ちゃん。お待ちかねよ、大事なお客様が」
「へッ、お客様・・・?」

知世子は笑顔で頷くとそこを退き、その後ろの様子が比奈に見えるようにした。
白い幕には一つの影がテーブルから立ち上がり、姿を見せた。

「―――え・・・?」
「比奈」

泉信吾は、優しい笑顔を浮かべた。

「お兄、ちゃん・・・・・・」
「刑事さん・・・・・・」

比奈と映司は当然驚く。

「そういえば、アンクが憑いてなくとも自然回復できるんだったな」
「ならば、今こうしてるのも必定か」

逆に刃介と竜王は納得している。

「はははッ、比奈は相変わらず、驚くと子供の頃と同じ顔になるな」

口調も性格も、間違いない。

「やっと戻った。――心配かけたな、ごめん」
「・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・お兄ちゃん!お兄ちゃんッ!」

比奈は短く駆け、信吾に抱きついた。

「うおッ!」

信吾は少し驚くも、その表情は嬉しそうだった。

「比奈、ありがとう」

そう言って、信吾は抱きつき返した。
まさに、感動の再会だ。

「戻ったんだ、刑事さん・・・・・・良かった」

映司は、目の前にある暖かな光景に、心の底からそう思った。





*****

さて、感動の再会はこのへんにして、一同は二階の部屋にあがった。
椅子やベッドに座ると、信吾は唐突にあるものを二つ差し出す。

オーズのコアを収めていた、黒をベースに青いラインのメダルホルダー。
一方で、銀色をベースに金色のラインが刻まれた見知らぬメダルホルダー。

「えッ、これって、どうして?」
「つーか、こっちのホルダー・・・・・・なんなんだ?」

映司と刃介は当然驚く。
オーズのメダルホルダーにあったコアは、ロストやキョトウが持っていったものとばかり思っていたからだ。

「あの時、とっさに隠したんだ、彼が。そして、彼女もこれにメダル入れて、隠した」

あの時、とはロストとデシレに裏をかかれた直後のことだ。
二人は急な奇襲もあって、タンスの下とベッドの下に隠したのだ。

「土壇場で、出来る限りの可能性を残したんだよ――自分が消えないための」

信吾は神妙な顔つきでそういった。

「七実って人も、鋼さんへのプレゼントを、こんな形で活かしたんだ」
「あいつ、このメダルホルダーを贈ろうとしてたんだな・・・・・・」

刃介は三枚ずつある、赤・黄・緑・灰・青の五系統あわせて、十五枚のコアメダルが収まった新品のホルダーを手にとってしんみりとする。
なお、ブライ用のメダルホルダーは、オーズのとは違い、最大30枚までのメダルを収納できる大きさだ。ついでにいうと、オーズのメダルホルダーは最大24枚までだ。

「オーズのは、比奈がプレゼントしたんだよな?」
「・・・・・・・・・・・・」

比奈はオーズのメダルホルダーを手に取り、丁寧に埃を払った。

「泉信吾。アンクに憑依されていた間のことは、わかっているのか?」
「大体は、彼を通して感じることが出来た」

竜王の質問に、信吾は素直に答えた。

「だから、映司くんの御陰で、比奈が無事でいられたこともわかってる。俺を助けようとしてくれたことも。それに、鋼さん達も理由はどうあれ、映司くん達に協力してくれた」

信吾はそこまで言うと椅子から立ち上がり、映司と刃介の目を見て言う。

「本当に感謝してる―――ありがとう」

それは嘘偽りのない言葉だった。
刃介と竜王も立ち上がり、信吾の顔をじっと見る。

「なんていうかよ、どうもしっくりこないな」
「確かに。顔だけならまだしも、声までとは」
「え?」

刃介と竜王の発言に、信吾は疑問をもった。

「お兄ちゃんがアンクなら言わないようなこと言うから」
「すいません。顔が同じだから、ちょっと不思議で」

比奈と映司も立ち上がる。

「ふふふ・・・・・・」

信吾は軽く笑い、次の瞬間には真剣な表情になる。

「映司くん。これからは、俺も戦いに協力させてくれないか?自分たちだけ助かって、それで終わりってわけには行かない」
「あ、いえ、でも・・・・・・」
「お兄ちゃん・・・・・・」

気持ちは解らなくもないが、ついさっきまで危険な綱渡りを、身体だけでとはいえさせられていたのだ。
映司と比奈の表情も曇る。

「頼む・・・!何も出来ない悔しさは、もう充分味わった・・・!」

信吾の思いは堅かった。





*****

そこで、信吾をつれて映司らは河川の近くにやってきた。
古びたドラム缶にありったけの乾いた木材を入れて燃やし、あとは信吾がメダルホルダーを持って、映司が信吾から10mくらい離れれば準備完了。

「じゃあ信吾さん!あくまで試しで練習ってことで!」
「わかった!」

オーズにおいて日常茶飯事だったメダルの投げ渡し。
地味なようでかなり重要なこれができねば、協力もなにもあったものではない。

「あの、でも鋼さんまで付き合わなくても」
「気にするな。観てるだけってのは存外に暇なんでな」

刃介は映司の隣に立っていた。
その10m先には、銀のホルダーを持つ竜王がいる。
信吾が黒のホルダーからタトバの三枚を手に持つのを観て、竜王もリオテの三枚を手にとる。

「まずは・・・・・・これだな」
「よし」

そうして、二人はメダルを勢いよく投げた。
気持ちのいい金属音をさせながら飛んでいく三枚ずつのコアメダル。

――パシッ――

刃介が華麗にそれを受け止める。
そして、

――ピューーン――

「おああッ、ちょ、ちょっ!?」

映司側はというと・・・・・・。

「・・・・・・映司くん!すまん!」

三枚のコアメダルはあらぬ方向に飛んでいってしまい、地面に落ちたソレを映司が拾い集めている。
これが戦闘中ならコアを盗られて死んでいる。
正直な話、コアを拾う映司の姿はカッコ悪かった。

「あ、大丈夫です!一つずつ、ゆっくりでいいですよ!」
「(おいおいおいおい・・・・・・玄人モドキの素人を甘やかすなよ)」

刃介は映司と同じタイミングでカテドラルにメダルを入れているが、映司の甘さには呆れていた。
ここまで致命的なミスを笑って許す甘さに。

とはいいつつも、

「「変身」」

≪RYU・ONI・TENBA≫
≪TAKA・TORA・BATTA≫
≪RI・O・TE!RIOTE!RI・O・TE!≫
≪TA・TO・BA!TATOBA!TA・TO・BA!≫

「オッケーです!」
「ふんっ」

とりあえず変身完了。
信吾はそれを確認すると、本格的な戦術練習に入る。
わざわざ用意したドラム缶をみて、

「あの炎が敵とすると、敵性は水のコンボか。しかし、コンボの多用は、体力を消耗するから・・・・・・」
「まずは一部分だけでも、それと同じ能力を付加し、別の要素で足りないものを補い」

信吾と竜王はそう論理づけ、ホルダーから二枚のコアをとる。

「すごい。お兄ちゃんホントに全部見てたんだ」
「ああ」

信吾は短く返事し、

「映司くん。まずはメダルをこれに!」
「刃介も頼む!」
「はーい!」
「応よ!」

オーズとブライが了承すると、まずは竜王はコアを二枚投げた。
当然、ブライは平然とその二枚を手中に収める。

「やってみろ」
「はい」

信吾は竜王の動きを真似ようと、少し身構え、腕を何度か振って調子を確かめると、

――ブン!――

半ば力任せに投げた。

「おーっと、取れた」

シャチはいいが、

――ポカっ――

「痛ったた・・・・・・」

チーターが頭に当たった。

「カッコ悪い」
「はぁぁ」

ブライは率直な感想を述べ、竜王も溜息する。
信吾自身も、申し訳無さそうに俯いた。

まあ、いつまでウジウジしても始まらない。

≪SHACHI・TORA・CHEETAH≫
≪ZEUGLODON・ONI・SMILODON≫

オーズ・シャトラーター。
ブライ・ゼオニドン。

「よし。まずは高速移動しながら水で牽制!」
「わかりました!」
「はいよ!」

そういわれ、オーズとブライは俊足を活かし、あたり一面を走り回りあがらドラム缶に近寄る。
そして、ドラム缶との距離が一気に縮まったところで、

「「――ハァァァ!!」」

ゼウグロドンヘッドとシャチヘッドから水を噴射して消火する。

「うん、コンボは相手に隙が出来てからか。――よし、色々試してみよう!」

というわけで、

≪LION・UNAGI・BATTA≫
≪HAYABUSA・HOUOU・TACHIUO≫

オーズ・ラウバ。
ブライ・ハヤオウタ。

≪SAI・GORILLA・CHEETHA≫
≪BAKU・HACHI・YATAGARASU≫

オーズ・サゴリーター。
ブライ・バハチラス。

≪TAKA・UNAGI・ZOU≫
≪YAMAEKO・JAGUAR・INOSHISHI≫

オーズ・タカウゾ。
ブライ・ヤジャガイ。

≪LION・GORILLA・TAKO≫
≪KABUTO・MAMMOTH・INAGO≫

オーズ・ラゴリタ。
ブライ・カブマンナ。

≪KUWAGATA・KAMAKIRI・WANI≫
≪YAIBA・MEGALODON・TSUKA≫

オーズ・ガタキリワニ。
ブライ・ヤイメバ。

といった具合に、亜種形態の大盤振る舞いだ。

「そろそろ、コンボいってみようか?」
「了解でーす!」

と、そろそろ漸く、ここでコンボを発動する。
なお、今度ばかりは八回目ということもあってか、やっとのことでまともにメダルの投げ渡しが出来たことを追記する。

≪SHACHI・UNAGI・TAKO≫
≪SHA・SHA・SHUTA!SHA・SHA・SHAUTA!≫
≪BAKU・MAMMOTH・INOSHISHI≫
≪BAMAHI・・・・・・BAMAHI!≫

オーズ・シャウタコンボ。
ブライ・バマーイコンボ。

二人は得物であるウナギウィップと重刀『鉞』を手に持ち、適当に振り回す。
久々になるコンボなので、調子を測る意味も込めて。

「二人共、もういいか?」

と竜王からの一言。
ブライとオーズはハッとなり、すぐさまスキャナーを手に取る。

≪≪SCANNING CHARGE≫≫

「ハァァァ・・・・・・!セイヤァァアアア!!」
「チェェェェェストーーーッ!!」

オクトバニッシュと、バマーイショッキングが決まった。

しかしそれらの様子は、

――ピピピッピピピッ――

一部始終、バッタカンドロイドに見られていた。





*****

「泉刑事の身体は完全に元に戻ったようだねぇ」
「まあ、これが自然の摂理ってものよね」

鴻上ファウンデーション会長室。
バッタカンドロイドからテレビ送られてくる映像を、鴻上とルナイトを始め、数人が目にしていた。

「しかし、あのアンクがまさか取り込まれるなんて・・・・・・」
「それよりも、鑢が変わっちまったというほうが・・・・・・」

後藤と烈火が驚きと悔しさに、歯痒い思いをする。

「オーズとブライにメダルを残してくれたのは幸いだった」
「でなけりゃ、ブライは兎も角、オーズはプトティラとブラカワニだけになってたでしょうね」

鴻上とルナイトは冷静に思案する。

「つまり、もうアンクさん達がいなくても大丈夫ってことですよね?」
「里中・・・どうしてそうビジネスライクなんだ・・・?」
「ビジネスですから」
「いや、鋼の気持ちだけでも考えてくれよ!」

などという小芝居もあったが、

「というか、グリードに取り憑かれた人が元に戻って、妹さんと暮らせるようになった――これってハッピーエンドじゃないですか。何か問題ありますか?」
「だけど、それじゃ鋼の奴だけが!」

烈火はなおも里中に食い下がる。
片や、鴻上とルナイトはというと、

「アンク君と鑢くんの件もそうだが、火野君こっちも深刻なことになりそうだ」
「そうね。刃介と違って、火野くんはまだ人間(・・・・・・・・・)ですもの」
「人の身でありながら紫のコアメダルを体内に宿す。このまま力を使い続ければ・・・・・・」
「待っているのは、終末・・・・・・」






*****

その頃、真木と四季崎は、キョトウとロストのもとに赴いていた。
真木は水筒を片手に、もう片手には蝙蝠傘。
四季崎は編み笠を被り、片手には無銘の刀を握っている。

「まだ完全に取り込めてませんか、もう一人のアンク君を」
『もう一人のアンクなんて居ないよ。僕は僕一人だ』
「しかし最初に存在していたのはそのもう一人の方ですからね――遺志も強い。時間がかかるのも当然でしょう」

真木はそこまでいうと、

「――が、オーズにアンク君がついておらず、向こうの最大戦力がこちらに来た今、コアメダルを奪う最大のチャンスでもあります」

水筒を開けて、真水と一緒に溶けかけの氷まで地面にぶちまける。

――チャリン――

そして氷にセルメダルを投入すると、そこから不気味な光が漏れ出し、一体の青い異形が紫の光から表れる。

『うぅぅあああッ!』

青を基調とした体色に、全身に生えたトゲと、右腕と一体化したトゲ鉄球――アンキロサウルスヤミー。

それを観た四季崎は、キョトウに話しかける。

「どうだった虚刀『鑢』?」
『さぁて、どうかしら?偽の私じゃ、真の私を幽閉するのが限界だもの』

キョトウは自らの胸をさすりながら答える。

「まあ、そうだろうな。シルフィードから盗んだ『マインド・コア』は、あくまで投入対象の精神に干渉し、対象者の負の感情を軸にして別人格を造る特異なコアだ。鑢七実ほどの相手に使うとなると、フォース・コアで不安定になったトコを狙うしかなかったがな」

説明しながら、四季崎は一枚のセルメダルをキョトウに手渡す。

「やってみろよ、ヤミーの生成を」
『うふふ。面白そうな狂宴になりそうだわ』

――チャリン――

キョトウは手渡された何でもない普通のセルを、その辺の岩に投入する。
すると、岩からは紫の波動が現出し、そこから一体の怪物が現れる。

『ガァァァア・・・・・・!』

それの名は、ドラゴンヤミー。

「かかかっ。だったら俺も一肌脱いでやろうじゃねぇか」

四季崎は軽快に笑いながら、セルメダルを一枚取り出す。
そしてソレを手にしていた無銘の刀にチャリンと投入する。

『んぉぉぉ』

無論、それによってさらにもう一体の化物が生まれ出でた。
鉄色と黒色が混ざり合った体、決して折れることも曲がることも錆びることもない、絶対的な存在感―――カンナヤミーだ。





*****

泉兄妹の住むマンションの一室、そのベランダに映司は立っていた。
夕焼けを見やりながら、表情を鬱々としたものにしている。

(やっぱり、タカちゃん達だけじゃキツいか。ちょっとでもアンク達の気配をつかめれば―――)

そう思った瞬間、また瞳が紫になる。

(―――――ッッ)

映司はなんともいえない心境の中にあった。

「まだ見つからないんだ・・・アンク・・・」

そこへ比奈もベランダに出てきた。

「比奈ちゃん・・・・・・折角お兄さんと久しぶりに会えたんだから、少し忘れてお兄さんとね」
「でもっ」

とリビングに戻された比奈だが、その直後に見たのは、自分がつくった色とりどりの料理―――

「あっ、ダメ。折角盛り付けたのに!」
「味見味見。比奈の料理久しぶりだからさ」

を抓み食いする信吾。

「もう、崩れちゃった・・・・・・」
「うん、美味い」
「え、ホントッ!」

どこにでもある、平凡で幸せな日常。
映司の目には、この光景が眩く尊いものに映った。

「映司くん。お兄ちゃんが抓み食いしちゃったけど、どうせだからこのまま夕食にしない?」
「お、いいなそれ。映司くん、どうだい?」
「あ、はい。それじゃ、お言葉に甘えて」

テーブルにすわり、食卓を囲む三人。

(戻ってるんだよな、比奈ちゃんの日常・・・・・・・・・・・・ホントだったら、今までずっと続いてた筈の、お兄さんと一緒に生活)

そう思うと、嬉しく思う反面、苦い思いもあった。
まるで、自分という存在が酷く歪に感じるほどに。

「映司くん?」
「―――え?」

ワンテンポ遅れて反応する映司。

「お腹空いてないの?」
「あ・・・・・・」
「遠慮するな。腹が減ってはなんとやらだよ」

箸を全く動かしていない映司に、泉兄妹が呼びかける。

「お兄ちゃんこう見えて大食いなの」
「また余計なことを・・・・・・まあ、映司くんも沢山食べて」
「はいっ、頂きます」

映司はそうしてやっと箸を動かし、エビフライやシュウマイを口に入れていく。
食べ物を租借して胃袋に放り込む映司。
しかし、その租借している間の表情は、味のない物を食べてるかのようにどこかスカっとしない。

「映司くん・・・美味しくなかった・・・?」

不安になった比奈が訊ねると、

「あ、いや。あんまり美味しいからビックリしちゃって。すっごい美味しいよ!比奈ちゃん料理も上手なんだね」
「ふぅ良かった〜!ちゃんと料理するの久しぶりだから」

すると信吾が、

「なんだ、けっこう料理好きなのに」
「まあね」

その当たり前な会話を目の当たりにして、

(もう、この二人が戦いに関わる必要は無い。俺や、アンクにも・・・・・・)

一つの考えを纏めつつ、箸を動かして腹を満たし続けた。


そうして、食事が終わった日も暮れたころ、


「何かアンクのことがわかったら何時でも連絡して」
「すぐ行くから」
「・・・・・・・・・・・・」

帰り際の玄関で、映司は微笑んだ。

「え?」
「良かったね比奈ちゃん。お兄さん元気に戻ってきて」
「映司くん・・・・・・ありがとう」
「お休みなさい!」

映司はそうして部屋をでて、マンションの敷地から脚を遠ざけていった。





*****

(アンク・・・比奈ちゃん、お前を助けようとしてくれている。けど戻ったら、お前は信吾さんの身体を使うかもしれないのに・・・・・・だから、あの二人にはもう近づかない)

映司はクスクシエに一旦だけ戻り、決断した。

――ありがとうございました
            映司――

置手紙を残し、親しい人達から離れ、映司は孤立奮闘覚悟で出て行ったのだ。





*****

(ただ・・・・・・)

映司はタカ・コアを手にしつつ、

「お前は助けなくちゃな」

それだけは決して曲げようとはしなかった。

「(お前はあの時助けを求めてた)――そんなの初めてだよ」

映司はそうして歩き、槍の雨ならぬ

「パンツの雨でも降るかもね」

とジョークまじりにふざけた。
その時、

『キィィィ!』

タカカンの音声が聞こえてきた。

「―――いた・・・・・・!」





*****

トライブ財閥の会長室。
この夜遅くになって、刃介と竜王はルナイトを訪ねた。

当然、マインド・コアについて知ってるかどうかを。

「ごめんなさい・・・・・・私が余計な物つくって、盗られた所為で・・・・・・」
「謝るな。オメェに責任はないだろ」

頭を下げるルナイトを、刃介はあっさり許した。

「にしても、どうしてあんなメダルを?」
「私は人間の頃、風や重量のほか、感情への干渉が得意だったの。もっとも吸血鬼になった影響で、気流操作と重力操作が特化された反面、精神干渉スキルが減退した」

竜王の質問に、ルナイトはまず前置きをする。

「800年前の王様は、私に”心変わり”を起こさせるメダルを造らせたのよ――まだオーズが無く、グリードが誕生して間もない頃にね。でも実際造ってみたものの、完全体のグリードたちの欲望はそれを跳ね除けてしまった」
「それで王様自身が、神様(オーズ)になって戦うことになったのか」

ルナイトは顔を俯かせた。
やはり現状の危険性を生み出してしまった責任を感じているのだろう。

「んで、七実を取り返す方法は?」
「800年前には、別のコアでグリードを暴走させるなんて発想すらなかった。残念だけど、私の力じゃ無理ね。コアを無効化する『紫の力』しかない」

例えコアメダルであろうと、全ての欲望を虚無にする紫のメダル。
その脅威は刃介もよく知っている。
だが、そこには一つだけ問題がある。

「怖いな、正直言ってよぉ」
「なに?」

刃介は”怖い”という単語を発したことに、竜王の顔つきが疑問を憶えるものとなった。

「下手すりゃ、俺は惚れた女を、殺すかもしれないんだぜ?」

そう。正確にマインド・コアを砕くことができなかった場合・・・・・・万が一に七実本体といえるコアを―――そう思うと、手先が震えた。

それを観た竜王は、そっと刃介の手を握った。

「竜王・・・・・・?」
「刃介。失礼するぞ」
「はっ?ちょ―――!?」


ゆっくり優しく、真庭竜王は鋼刃介との距離を零にして、唇を重ねて、お互いの温もりを共有した。


(あら・・・・・・)

それを観たルナイトは”やるわね”とでも言うように感じたが、流石に言葉にしたりはしない。

竜王は目を閉じた状態で、目の前にいる男に全てを捧げるような美しい雰囲気で、握っていた手を放して刃介に抱きついていた。
刃介は顔を赤らめ、かなり困惑しているが、それも短い間で、すぐさま竜王が何を伝えたいかを悟ると、竜王の身体を抱き締め返し、唇を離した。

若干、二人の間に熱っぽい空気が漂っているが、そんなことは問題ではない。

「ありがとよ、竜王。御陰で目ぇ覚めたぜ」
「お役に立てて何よりだよ、我が戦友よ」

礼と応を交わし、二人は抱き締めあっていた身体を放し合う。

「さっきまでのお前は、欲望でギラついていた瞳を失っていた。そんなお前は、余りにもお前らしく無さ過ぎるからな・・・・・・」
「自分でもそう思う。全く、さっきまで何ビビってたんだ俺は?出来るか出来ないかなんて、この手でやって見せて、可能にしちまえば良いだけなのによ」

その遣り取りを観て、ルナイトは嬉しそうに無言で首肯する。
そんな時、

『リュアァァァ!』

リュウカンドロイドの音声が聞こえてきた。

「ふっ、来たか。行くぞ、刃介!」

――バッ!――

そう言うと竜王は、赤い浴衣を脱ぎ捨て、中に着込んでいた忍び装束姿に早変わりする。

「ああ。四季崎に目に物みせてやっか」

刃介も欲望の光を取り戻し、ギラついた鋭い目つきになる。

「いってらっしゃい、二人共。今度来たら、手料理くらいご馳走するから」
「ありがてぇ話だ。こいつは意地でも勝って来ねぇとな」

そうして、ここにも決意するもの達がいた。
ただ一重に、たった一つをこの手にする為に。





*****

夜明け直前。
映司は独り、橋のような場所を通っていた。

「独りで行く気か?」
「水臭ぇじゃねぇか」

そこへ二人の若者の声。

「ったく、その無鉄砲ぶり好い加減直せよ」
「お前の一番の悪癖だな」

さらにもう一組。

「後藤さん、烈火くん、鋼さん、真庭さん・・・・・・どうして?」
「俺らにもカンドロイドの声が聞こえたんでな」
「それにデータは、財団や財閥に送られてくる」

刃介と後藤が応えた。

「あんた、独りで全部ヤル気か?」
「烈火くんにさえお見通しなんですね。でも俺、アンクを助けに行くんです――グリードの」
「なら尚更、私たちの手がいるな。我々も鑢に手を差し伸べねばならない」

と竜王は言うと、

「それに俺や花菱はアンクではなくお前と鑢を助ける」
「あんたや鑢になんかあったら、金女からの頼み、守れねぇしよ」
「ああ。お前らを死なせたら・・・・・・伊達さんに怒られるしな」

そう言ってもらえて、映司が「ありがとうございます」と言った。
刃介は、みなの表情を見て心構えを確認する。

「行くぜ、野郎ども・・・・・・!」

東から昇って顔を見せてきた朝日を背にして、五人は共に歩いていった。





*****

どことも知れない山岳地帯の平地。
そこに五人は辿り着いた。
周囲には味気ない石や岩、険しい崖、鬱葱と生えた木々。

そんな大自然の中、メダルを宿す三人の目の色が変わる。
その気配にもとづき、一同が一斉に方向転換した。

『・・・・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・・・・・』

そこには、アンキロサウルスヤミー、ドラゴンヤミー、カンナヤミーがいた。

『オーズ!バース!』
『ブライ!クエス!』
『ブレイズチェリオ!』

三体のヤミーは20mほど離れた場所から、

『『『この先に行かせる訳には行かない!』』』

堂々と宣言した。

「つまり、この先にアンク達がいるのは間違いないというわけか」
「ですね」
「ならば話は早い」
「力づくでも、通らせてもらう」
「そんじゃあ行くぜ」

五人は各々のドライバーを装着。
後藤は腕輪、烈火はポケット、竜王は懐からメダルを取り出す。
映司は黒のメダルホルダー、刃介は銀のメダルホルダーから。

そして、

「「「「「変身―――ッ!」」」」」

――チャリン――
――パカッ!――

≪RYU・ONI・TENBA≫
≪TAKA・TORA・BATTA≫
≪BARA・SARRACENIA・RAFFLESIA≫
≪RI・O・TE!RIOTE!RI・O・TE!≫
≪TA・TO・BA!TATOBA!TA・TO・BA!≫
≪BA・SA・RA!BASARA!BA・SA・RA!≫

ブライ、オーズ、バース、クエス、ブレイズチェリオ。
五人のライダーに対するのは三体のヤミー。

オーズはメダジャリバー、バースはバースバスター、ブライはメダマガン、ブレイズチェリオは忍刀『鎖』を構える。
緊張の糸が一気に高まると、


「「「「「オオオォォォォオオオォォォォ!!!!」」」」」


――ヴィンヴィンヴィンヴィンヴィン!!――

まずはバースが後方支援としてヤミーらに射撃。

――ザシュザシュザシュザシュ!!――

ブレイズチェリオも中距離から連結刃で切り刻む。

「フッ!ハア!タア!」
「オラオラオラオラァァァ!!」
「トォ!セイッ、ヤァァ!」

その援護を受けながら、オーズとブライとクエスは各々の武器で敵を切りつける。

――ザンザンザンザンザンザンザンッッ!!――

『うおッ、ごわぁ!』
『うぅおぉ!』
『ん〜〜ッ!』

ヤミー達もこの攻撃に怯んでいる。
このまま波に乗れば勝てる!そう確信したが、

――ガシッ!――

攻撃を素手で受け止められてしまった。

『その程度か?』
『拍子抜けだよ』
『クックック』

――バシッ!――

「ごあああっ!」
「くっ・・・!」
「んな・・・・・・!?」

アンキロヤミーは右手のトゲハンマー、ドラゴンヤミーは翼での羽ばたき、カンナヤミーは頭突き。
それによって三人が吹っ飛ばされると、

『フッハハハハハハハハハ!!』

アンキロヤミーはトゲハンマーからトゲを一斉に射出して小型ミサイルのように爆発させる。
幾ら撃っても再生するので、際限のないトゲミサイルがライダー達を襲う。

『ギャオオオオオオオオオ!!』

ドラゴンヤミーは神話に出てくる悪竜そのものだった。
ゴジラのような叫び声を出すや否や、口から破壊性抜群の光線を息吹のように吐き出す。

『カーッカッカッカッカッカ!!』

カンナヤミーはあちらこちらに、直線型の斬撃波と撫で斬り型の斬撃波を放ちながら高笑いしている。
あたりは土煙に塗れ、状況がよくみることができない。

≪DRILL ARM≫
≪CATERPILLA LEG≫
≪ANTOU・KAMA≫
≪HITOU・HASAMI≫

「「オオオォォォアアアア!!」」

バースはキャタピラレッグによる走破をしながらドリルアームを突き出し、ブレイズチェリオは暗刀『鎌』を腕にして飛刀『鋏』による飛行突撃をおこなう。

一方でオーズとブライ、

「メダルは・・・・・・よし、これだ」
「えーっと、メダルは、どれが・・・・・・?」

ブライは即行でホルダーから取り出すも、オーズはどのメダルを使うべきか判断しかねているようだ。

≪RYU・MAMMOTH・INAGO≫

ブライ・リュウマンナ。
だが、オーズはまだ迷っている。

「おい早くしろ!」
「す、すいませ――ボガァァアアァァン!!――うわああああああ!!」

迷っている間に、アンキロヤミーのトゲミサイルが、バース達諸共オーズらに降りかかったようだ。
吹っ飛ばされたのはオーズだけでなく、メダルホルダーもだ。

「いったた・・・・・・って、メダル!」

オーズは急いでホルダーを回収する。

「やっぱり、アンクがいないと・・・・・・」

オーズは多種多様なコアメダルを三つの部位に使うことでトリッキーな戦いを可能とする。
だが正規コンボと亜種形態を含めて120種類を越えるオーズの形態を深く理解し、メダルを的確に投擲できる作戦参謀がいなければ、思いのほか戦いに支障をきたしてしまう。

「ぐおぁ!」
『隙ありだぁぁ!』

そこへドラゴンヤミーが、クエスに一発お見舞いして、オーズに襲い掛かろうとする。

「火野、退け!」
「うわっ!」

ブライはオーズを無理に退けて重刀『鉞』を一本のグレートアックスモードとし、そのまま力任せにドラゴンヤミーの脳天目掛けて振り下ろした。
しかし、

『無駄な、足掻きだぁぁ!』

ドラゴンヤミーは口から紫の波動を放ち、

「んぉあ・・・・・・!?」

ブライの変身を強制解除させたのだ。

「は、鋼さん!」

オーズは当然心配するも、

『フアァァァ!!』

――バアァァアアァァン!!――

「うおぁぁあああああ!!」

アンキロヤミーのトゲミサイルが炸裂し、オーズに直撃してしまった。

「火野!」
「刃介!」

バースとクエスが声を荒げた。
そこには仰向けで倒れる刃介と、変身が解けてうつ伏せになっている映司。

『ヘッヘッヘ・・・・・・!』

ヤミーたちはトドメを刺そうと二人に歩み寄っていく。
だが、

――ギュルリリリリリリリリリリ!!――

キャタピラレッグの駆動音。

――ビュオォォォオオオォォォン!!――

飛刀『鋏』のエンジン音。

≪OOKAMI・KANI・KITSUNE≫

カミカニツネにメダルチェンジしたクエス。

バースはアンキロヤミーに、ブレイズチェリオはドラゴンヤミーに、クエスはカンナヤミーに突っ込んで行き、映司と刃介との距離を一気に離していく。

「二人共、今のうちだ!」
「アンクと鑢の元へ!」
「ここは任しとけってんだ!」

三人はそういってさらに移動速度をあげていく、

「すいません!」
「感謝する・・・!」

映司と刃介は立ち上がり、よろめきながらも気配のする方へと走っていった。





*****

ふらつきながらも走り、刃介と映司は森の中に入り込んだ。

((気配はある・・・・・・いる、七実(アンク)だ!))

二人は僅かにも残る確かな気配を頼りに、千鳥足にも似た歩調で歩いていく。
だがそうして歩いているうちに、ある二人と出くわした。

黒い蝙蝠傘を差し、右腕には奇妙な人形を乗せた眼鏡の男。
頭に編み笠を被り、背中には呪刀『鎮』を帯び、目元に菱形の刺青をした和装の男。

「真木博士・・・・・・」
「四季崎、テメェ・・・!」

映司はなんともいえない表情だが、刃介の顔には明確な敵意があった。
だがそれに大した反応をすることなく、四季崎は無言のまま。
真木にいたっては、その目を紫に光らせ、映司の身体もそれに反応する。

「おっ、うぅっ、あぁっ・・・・・・!!」
「火野!」

メダルの呼び合う感覚に苦しむ映司。

「火野、我刀。アンクと虚刀に会うのは諦めてくれよ」
「完全に吸収されるのも時間の問題です」
「ざけんなボケナス!!んなことで諦められるか!!」

刃介は怒りの念を剥き出しにして怒鳴った。

「まぁよぉ、オメェの気持ちは解らんでもない。でも今はな―――」
「火野くん。君の中にあるメダルの話をしましょう」

そうしてまた真木は瞳を紫に変色させる。

「おぉっ、あぁぁ!うぅっ・・・・・・!!」

それと同時に、メダルの活性化によって苦しむ映司の瞳もまた、紫色となっていた。

「テメェら・・・・・・!」
「待て待て。今日は話をしに来てやったんだ」
「話、だと・・・?」
「そう。お前らにとって大事なお話だ」

そう言った時の四季崎の顔は編み笠で隠れていたが、声音と口元だけは、確実に笑っていた。
まるで、渾身の作品がもう直ぐ完成する、と意気込んで喜ぶ芸術家のように。
次回、仮面ライダーブライ!

異変と欲望神と愛ゆえに


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