神聖ブリタニア帝国の帝都であるペンドラゴンは連日、一つのニュースで騒がしく
なっていた。そのニュースとは長い間空席であったナイトオブラウンズの第七席、
ナイトオブセブンの就任というものであった。

 ナイトオブセブンに拝命したのがブリタニア人であれば、ここまでの騒ぎにはならな
かったであろう。しかし、ナイトオブセブンに任命されたのは日本人。
 ブリタニア人達がイレブンと蔑称するナンバーズの人間だったからである。

 その日本人の名を枢木スザクと言った。

「枢木スザク。汝、ここに騎士の誓約を立て、我が騎士として戦う事を願うか?」

「イエス、ユア・マジェスティ」

「汝ら、私情を捨て、我、シャルル・ジ・ブリタニアの正義を貫く為の剣となり、
盾となる事を望むか?」

 皇帝シャルルの言葉にスザクは深く頭を垂れ、自身の剣を捧げる。

「イエス、ユア・マジェスティ」

「よかろう。これより汝、枢木スザクをナイトオブセブンとして我が騎士とする」



 叙任式を終えたスザクは一人、佇んでいた。
 彼の眉間には皺が寄っており、今何を考えているかは分からないが、近寄りがたい
空気を出しているという事だけは分かる。
 
 そんな彼に一人の男が近づく。

「よっ、ナイトオブセブン」

 それはジノだった。

 回りの人間が近寄らない中、それでも近づける彼は大物なのかもしれない。

「……貴方は確かナイトオブスリー、ヴァインベルグ卿でしたか」

「固いなあ。ジノでいいさ。俺もスザクって呼ばせてもらうからさ。
これからは同僚なんだ。いいだろう?」

 邪気の無い笑顔でそういったジノはスザクの肩をバシバシと叩く。
 少し力が強かったのか、スザクはよろけそうになるが、それを堪え笑顔を浮かべる。

「それじゃあ、ジノ。僕に何か用かい?」

「そう、それそれ。スザク、お前ってあれだろ? エリア11を騒がせてたゼロを捕縛
した功績でラウンズに入ったんだろう?」

「……そうだよ」
 
 ゼロ。
 その名が出ると、スザクの顔に苦々しい物が浮かぶ。

「ゼロってどんな奴だったんだ? ゼロの処遇は陛下が全て処理したからな。ゼロに
関する情報は一切回ってないんだよ。でも、捕縛した本人なら知ってるだろう?」

「なるほど。そういうことか。ゼロは、ゼロは……酷い奴だったよ」

 スザクはそう言うと口を閉ざす。
 
 これ以上は聞けない、と判断したジノはすぐに話題を変える。

「スザク、これから一緒に飯でも食いに行かねえか?」

「これからかい?」

「ああ。ちなみに拒否権は無いからな。もう店予約してあるから」

 有無を言わさずにスザクの背中を押し、歩き始めるジノ。
 スザクはその無理矢理さについ笑ってしまった。

「ジノ、自分で歩けるから肩を離してくれないか?」







「……それで、お前はどう思った?」

 スザクの叙任式を終えた後、セグラントはビスマルクと共に食事を取っていた。
 食事を始めてから十数分経った辺りでビスマルクはそう尋ねてきた。

「どうって、何がだよ」

「わかっているだろう。枢木スザクの事だ。奴はお前の目にはどう写った?」

「……くそ真面目。そんで結構強いんじゃないか? 体捌きとかかなりの物だったしな」
 
 セグラントの答えにビスマルクは頷く。

「そうだな。だが、私が聞きたいのはそこでは無い。奴は真に陛下に忠誠を誓っているか
どうか、という話だ」

「……そんな事を聞かれてもな。答えはアイツしか知らねえだろう」

 セグラントの言葉にビスマルクは何も言わない。
 ビスマルクもわかっているのだ。
 この様な質問に答えを返せるのは本人以外にありえないという事ぐらいは。
 
 だが、それでも聞かずにはいられなかった。
 枢木スザクという男を見た時に感じたナニカ。

「……そう、だな。今の質問は忘れろ」

「親父? なんからしくねえな。どうしたんだ?」

 セグラントの自身を心配する声にビスマルクは首を振る。

(やれやれ、息子に心配されるようではいかんな)

「なんでも無い。馬鹿息子の今後を考えたら少し頭が痛くなっただけだ」

 誤魔化す様に笑うビスマルクにセグラントは気づいていたが、敢えてそれに乗る。
 この話は続けるべきでは無い、と判断したから。

「ひでえな、親父」

 そういって二人は食事を再開する。

 ビスマルクは食事の手を進めながら考える。

(そうだ、何を弱気になっている。奴が陛下に忠誠を誓っていようといまいと関係は
無い。奴が陛下に仇なす者だと分かった時に斬ればいいだけの事だ)



 

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