『科学と魔法と――』
――― RUN ABOUT(2) ―――



 2日掛けて隣町にたどり着いた零司と村長は運良くあった魔導馬車を借りてベストラへと急ぐ事にした。
ちなみに魔導馬車とは馬の代わりに人が持つには難しいほどの大きな壺のような魔導装置で荷台を引っ張るという物である。
一見すると間抜けそうに思えるがその気になれば馬車よりも速く走れし、常に大気中の魔力を吸って供給するので半永久的に走ることも出来る。
その為、数は多くなく値段もかなりするものの、必要不可欠な乗り物として重宝されていた。
 その魔導馬車を使ってベストラへと急ぐ零司達であったが――
「そういえば聞きいておきたい事があるんだけど……守り神をさらったっていう奴隷商人達ってどんな奴らだったか覚えてます?」
「どんな奴……と聞かれてもな……マントとフードで全身を隠していたから……
ただ、声からして男女の2人組……それと男の方は神類だとは思うが……」
「いかにもな格好だことで……で、何でそう思うんです?」
 ふと、そのことに気付いた零司の問い掛けに村長が答えると問い掛けた本人は首を傾げてしまうが――
「体格が熊よりも大きかったからな……そんなのは普通人間とは思わないだろう?」
「ああ、なるほど」
 村長から返ってきた言葉にあっさりと納得する。確かにそんな体格の者は人間ではありえない。
だが、心のどこかで何かが引っかかる感覚に少しばかり悩んでいたが……
神類が奴隷商人をしているというのはおかしな事でも無いだろう。人間と同じように生活している神類を零司は何度も見たことがある。
そういったことを考えれば、そういうこともありえるとは思える。だが、何かが引っかかる。
それがなんなのかを考えながら、零司は村長と共にベストラへと急ぐのだった。


 その頃、その少女は林の中を彷徨っていた。容姿からして年の頃は10代になったばかりに見える。
その鬱蒼と茂る木々の間を走りながら、どこか焦ったような表情を浮かべている。というのも――
「く……このままでは……」
 少女は追われていた。ある理由からある者達から逃げていたのだが、少女の身では速く走ることが出来ず……
体力も無かったのか息が上がってしまい、茂みに身を潜めて息を整えていた。
「これがなければ……あんな奴らに……」
 忌々しそうに自分の両手にはめられた腕派を見てしまう。
どこか有機的にも見える禍々しい造りの腕輪……これは神類の力を封じる物であった。
そう、この少女は神類なのだが……この腕輪のせいで力を封じられ、連れ去られていたのである。
だが、隙を見て逃げ出してきたのだが力を封じられたせいで力も見た目程度しかなく、徐々に追い詰められていたのだ。
「いたぞ!」
「待ちやがれ!」
「く……」
 見つかったようで少女は茂みから素早く出るのだが、出た先に軽装の鎧を着た柄の悪い2人の男がいた為に思わず足を止めてしまう。
「手間取らせやがって……」
「どうせ売り飛ばすんだ。多少痛め付けても構わないだろ?」
「ん? ああ、それもいいな……」
 忌々しそうな目を向ける男に別の男がニヤリと笑みを浮かべながらそんなことを提案すると、その男も嫌らしい目付きで少女を見た。
その様子に少女も男達が何をしようとしているのかわかってしまう。
どうにかしたいが力を封じられている上に背後には茂みがあって逃げるには困難であった。
このままでは……少女がそう思った時だった。
「あ、あぶな……っ!?」
「「へ?」」
 なにやら走ってくる音が聞こえると共にそんな声も聞こえてきた。
そのことに男達は思わず顔を向け――
「「ごっはあぁぁぁぁぁぁぁ!!??」」」
 それはものの見事に魔導馬車に弾き飛ばされたのだった。で、弾き飛ばした魔導馬車は車輪を軋ませながら急停止していた。
突然のことに少女は呆然としてしまい――
「あ……あちゃぁ……やっちまった……大丈夫かアンタ達!!」
 魔導馬車を動かしていた男こと零司は慌てて運転席から飛び降り倒れている二人に駆け寄る。
道が狭いのもあったが実は魔導馬車の操縦に慣れていないというのもあり……止めるのが遅れて男達を撥ねてしまったのである。
「く、て、てめぇ……」
「ふざけたことしやがって……」
「い、いや……本当に申し訳……うおっ!?」
 いきなりの攻撃に思わず飛び退く零司。
 かなり派手に飛ばされたはずの男達が、近寄ってきた零司に対して腰に差してあった剣を振りぬいたのだ。
戦闘態勢に入った相手を見据えながら、零司はあたりの状況を観察する。
すぐさまそこに事情を知っていそうな少女が居る事を確認し、視線を男達に戻す。
「なぁ、お嬢さん……」
「お、お嬢さん!?」
 その言葉に少女はなぜか驚き、そのことに零司は首を傾げていたが今はそんな些細な事を気にしていられない。
「もしかして、あいつら山賊?」
 男達を指差しながら問い掛ける。零司が男達を山賊と思ったのは服装や様子を見てそう判断しただけだが。
「ち、違い……ますの……」
 零司は少女の歯切れの悪さに疑問を持ち、どんな表情を浮かべているのかを見てみた……
「ん?違うってどう言う………んがっ!?」
 少女の衣装を見て零司は硬直した。
その少女の格好はとてもじゃないが公序良俗の観点から見てまともと言えるような格好ではなかったからだ。
顔立ちはまるで人形のように整っていてルビーのように紅く輝く瞳はつり上がってはいるが、容姿故に可愛さが強く見えた。
髪の方は腰の辺りまで伸びていてポニーテールのような形で結い上げている。
その結い上げている髪が瞳と同じように紅く、ウェーブも掛かっていたこともあってか宝石のように煌めいていた。
年相応と思われる背に膨らみ始めの胸やほっそりした腰つきが見て取れる。ここまでは良い。
なぜ、少女の体型が見て取れるのか? それは着ている服装に問題があった。
上の方は白いノースリーブ……のような形をしている。なぜ、ようなのかと言えば――
胸は両サイドから挟むような形になっており、胸の谷間どころか下乳も大胆に開いていた。
また、その面積も小さいために横乳も見えている。お腹の方にいたっては完全に布がない為に丸見えである。
背中も首と肩もと、胸の部分を止めているヒモ以外は無い為にこちらも大胆にさらけ出していた。
下半身は黒いショーツのような物のみ。しかも、それが年齢の割には危ない角度で……
お尻の方も面積が小さいためにTバックに近い状態になっていた。
その上に薄桃色のケープらしき物と同じ色のお尻の方だけを覆う短いスカートらしき物で包んではいるが……透明なのでまったく隠せていない。
そんな服装のためか妖艶とも言える美しさを少女は持っていた。
「無視するんじゃねぇ!」
 と、零司のあまりにも間の抜けた表情と無防備な様子に馬鹿にされたと思ってキレてしまった男が斬りかかる。
だが、相手が悪かった。野良ではあるが神類すらも相手に出来る零司に考えも無しに斬りかかった所で驚かせることすらなく――
「お前ら……」
 キレた男の剣は、零司がいつの間にか右手に持つ剣のような棒によって受け止められていた。
それを男は押し返そうとするが、どんなに力を入れようとその棒は微動だにしない。
その間に零司は肩を震わせ――
「女の子にこんなけしからん格好させて……」
 何かを呟きながら棒で剣を絡めとり、上空へと弾き飛ばす。
「うおぉぉ!?」
 そこに別の男が背後から斬りかかるが――

「何させる気だぁー!?」
 零司が叫びながらまるで舞うかのように振り返り、剣を振るう零司によって男の剣は半ばから折られてしまう。
「く、くそ!?」
「この野郎!!」
剣を折られた男が怯む中、剣を弾き飛ばされた男が懐から何かを取り出していた。
それは短い金属製の棒であり、その先端にはルビーのような真っ赤な宝石が付いている。
「死ねぇ!?」
 その男が叫ぶと宝石からいくつもの炎の塊が生まれて零司へと向かい飛んでいく。
この世界の魔法の使い方はは大きく分けると2つに分類される。
1つは魔法使いと呼ばれる人間か神類が呪文、もしくは己の力によって行使する方法。
もう1つは今男がやったことや魔導馬車のように道具を介して行使する方法。
前者は素質や教養が必要となるが多彩に強い力を行使することが出来る。
後者は使える種類や力は限定的になってしまうが、普通の人でも使うことが出来る。
その為後者の方は戦う者に戦いの道具として使われることもあるのだが――
その様子を零司は先ほどとは打って変わった様子で静かに見つめ……同時に零司が持つ剣に埋め込まれた玉が淡い光を放ち始めた。
「それは……」
 その剣の様子を見ていた少女の眉間に皺が寄る。気付いたのだ。あの剣がなんなのかを……
一方で零司はそんな少女の様子に気付かずに飛んでくる炎を見据え――
「はぁ!」
「な!?」
 気合いと共に零司が振り回した剣は炎を次々と掻き消していく。その光景に炎を放った男は驚いてしまう。
本来の炎がそうであるように剣などで打ち払ったくらいで簡単に消えたりはしない。
それ故に男は驚いたのだが、少女はそのカラクリを理解し……同時に零司を睨んでしまう。
もし、自分の考えが間違いでなければ零司は――
「あぐ!?」
「なっ、が!?」
 その間に炎を全て打ち消した零司は素早く男達に迫り1人は腹を、もう1人は頬を殴り飛ばしていた。
それによって男達は地面に倒れ……そのまま動かなくなる。
その様子に気絶したかと零司は判断してため息を吐き――
「ふぅ……とんだ寄り道だ……ま、いいか……怪我はないかお嬢ちゃん? もう安心だ」
「え? あ、な……」
  声を掛けながら少女の頭に手をポンと置いた。当の少女はどういうわけかジト目で零司を見上げている。
「え?……な……なんだろうか?」
 何故か敵意を向けられたような感じがして思わず頭に置いた手を離すが……
(あれ? なんか……)
 その時に零司は違和感を感じ、首を傾げていた。何か懐かしい物を感じた気がするのだが――
「く、あつつ……」
 その時になって村長が痛そうに腰に手を当てながら馬車から降りてくる。
実は馬車が急停止した時の勢いで荷台に転げ落ちてしまい、その時の痛みで中々起き上がれずにいたのだ。
「あ、す、すまない!!」
「いや、いいんだ……別に……ユーティリア……様?」
 そのことに気付いた零司が頭を下げるが、村長は手を振りながら気にするなと言おうとして……
そのことに気付いて、思わず凝視してしまう。
「へ?」
 その村長の様子に零司は思わず戸惑い……なぜか、ゼンマイ仕掛けの人形の如く顔を少女へと向けた。
さっきも思ったが、少女の服装とかはこう……目のやり場に困る。
しかし、それは髪型も含めてそれはあの村で聞いていたのと同じであり……名前もユーティリア……
「ええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
 そこで零司は驚いてしまう。なぜなら、彼が聞いていたユーティリアとは少女ではなく、女性だったのだから――
そしてこの格好が素であった事も彼の驚きに拍車をかけていたりするのだが……




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【あとがき】


どうも、匿名希望です。今回のお話はいかがでしたでしょうか?
今回登場したユーティリア……実は私の案が多かったりします。
というのも、こういうオリジナルでは何か要素が無いと見てもらえないなぁと思いまして……
ロキさんは熱血をと考えてましたが、それでは弱いと思ったのでエロの要素を加えてみました。
なので、次回はそんなお話になります。いや、それだけじゃないですよ?
ちゃんと真面目なお話もあります……たぶん……
                       by匿名希望


と言う感じで、進んでいます第一話。
オリジナルというジャンルの意外と高い難易度に四苦八苦中です。
って……
まぁ、エロくて困る人はいないでしょうし、おーるおっけー。おーるおっけー(大事n
まぁ…ユーティの格好は色々難易度高いですね〜
描かにゃいかんのはわた……ゲフンゲフン

ではでは今日はこの辺で
                       byキ之助



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