ドイツにある古城の一部屋、大半を機械に覆われたその部屋に車椅子の老人はいた。

老人の身体は来たるべき死を避けるかのように無数の生命維持装置がつけられ、もはや光を通さぬ両目にはデジタルな光景を映し出すバイザーが取り付けられて いる。


「ゲイツ・・・・お前は碇が裏切る可能性があると言うのか?」


ゲイツと呼ばれた男が顔を上げる。


「はいキール様、まだ可能性の段階ですが確かな情報かと。」


能面の様な薄笑いを顔に貼り付けた男が答える。


「ふむ、・・・今度のネルフの進入作戦はお前に一任する・・・・ネルフ本部の構造と情報、可能ならばチルドレンを奪ってくるのだ。」

「わかりました。・・・・全てはキール様のお望みのままに・・・・」


礼儀正しく一礼をした男は踵を反し出口に向かう。


「ゲイツ・・・・くれぐれも裏切ろうと思うでないぞ・・・・」


男は振り返らずに答える。


「ファントムソサエティの名にかけて。」




バタン




ドアを閉めその場に居た男に話しかける。


「あなたが今回の潜入隊の責任者ですか?」

「はい。」

「そうですか、今回の目的はネルフ本部の電力を物理的に遮断し復旧ルートからその構造を調べることです。・・・可能ならばチルドレンもつれて来てくださ い。それと、今回は新型の装置と新薬を持っていってください。新薬の方は潜入前に服用してください。」


はい、と礼をして男は去っていく。そして誰も居なくなった通路にゲイツ一人がたたずむ。


「ふんっ、俗物供が・・・・せいぜい我が舞台で踊るがいい・・・・・全てのピースが揃う時・・・・・その時こそ我が望みが叶う・・・・その時までせいぜい 殺しあうがいい・・・・」












修羅から人へ〜第二話〜


『出会い』









「ちょっとリツコ、なーんでチルドレンの新しい護衛が技術部からの出向なのよ。」


書類をめくりながら親友の葛城ミサトがぼやく。


「いいじゃない、どこから来ても。たぶん貴方より強いわよ、彼。」

「それってマジ。」

「マジよ、それどころかネルフで一番強いんじゃないかしら。」

「どこの誰なのよ、まさか戦自の兵隊?」

「残念ね、私の身内の子よ。」

「な〜に、リツコの新しい彼氏なの〜」


顔を緩ませたミサトがリツコをつつきながらからかう。リツコはそれに一寸、青筋を立てながら答える。


「ミサト・・・オヤジくさいわよ。彼氏じゃないわ私の弟よ、義理のね。」

「うっそ、リツコって弟なんていたの!?聞いてないわよ!」

「ええ、言ってないもの、ずっと地方に居てね最近こっちに来たのよ。」


さらりと嘘を言いながら説明する。


「で、どうなの、顔は、性格は、スタイルは?」

「あなた・・・・どうゆう頭の構造してるの・・・・・、まぁ性格は落ち着いた感じかしら、顔とスタイルは・・・・・コメントしずらいわ、来た時に見てちょ うだい。」

「なによー教えてくれても良いじゃない、ケチ。」

「もうすぐ来るから待ってなさい、あの子達もこっちに来るんでしょう?」

「ええ、一応ね今までと違って身近で警護するわけだしね、顔合わせ位はね。」







〜本部直通エスカレーター〜



その頃カズヤは本部に向かう長すぎるエスカレーターにボーっとしながら乗っていた。


「このエスカレーター長すぎんか?なんか歩いてる方が楽な気がするな。」


と、一人で愚痴りながら立っていると終点に着いた。


「やっと着いたか、ん?」


なんとも言いがたい視線を感じて周りを見ると青い髪の不思議な感じの少女が歩いてくる。

少女はカズヤの直前で止まりじーっとこちらを凝視している。


「何か用かな?」


カズヤはできるだけフレンドリーに問うが少女は答えることなく見続ける。


「えっと・・・・・」

「・・・・貴方だれ・・・・」


少女は簡潔すぎる質問を言って再び黙る。


「あ、ああ、俺か?俺は赤木カズヤ、今日付けでチルドレンの警護班に配属になった赤木カズヤだ。」

「・・・・そう・・・・」


そう言って再び黙る。どうしたもんかと考えていると少女が再び言葉を発する。


「あなた、私に似てる・・・・でも、少し違う気がする。」


その言葉を聞いてある事に気づく、この少女には微かに悪魔の気配がする、限りなく人間に近い、自分と対極に位置する悪魔だと言う事に。


「君は・・・・人じゃ無いのかい?」

「!!」


少女の肩がビクッと震えただでさえ白い肌が蒼白になっていく。


「あ〜悪い悪い、そーゆうつもりで言ったんじゃ無いんだ。なんていうか・・・その・・・あれだ、俺も人間じゃ無いし気にする事は無いと思うぞ。」

「あなたも・・・人じゃないの?」

「ん、まぁな。今は確実に人間じゃないな、君のほうが遥かに人間に近いんじゃないかい。」

「・・・・あなたは・・・・怖くないの?」

「怖い?・・・何がだい。」

「・・・・・生きる事が・・・・」

「・・・・・君は怖いのかい?生きる事が?・・・・」

「・・・・人は・・・自分と違うモノを蔑み恐れるわ・・・・・一人で生きるのは・・・・・怖いわ・・・」

「そうか・・・・・俺も昔は怖かったのかもしれない・・・・でも、今は違う、怖がっているだけじゃ駄目なんだ・・・・自分から動かないと信じれるものは見 つからないよ。」

「・・・信じれるもの・・・」

「知りたいかい?」


少女はコクンと頷いて期待に満ちた目でこちらを見ている。


「残念だけど今のキミには教えられないな。」

「どうして・・・そういうこと言うの?」


ふふっ、と笑いながらカズヤが答える。


「だって今キミが聞こうとしているのは俺が生きる理由だろ?キミが本当に知りたいのはキミが生きる理由だ、そればっかりは自分で見つけるしかない、わかる かい?」


コクンと頷いて次の言葉を待つ。


「悩んで、考えて、見つけ出すといい、自分だけのものを・・・・キミにも必ずあるはずさ。」

「・・・自分だけのモノ・・・」


カズヤは、そうだよっと頷いて何かに気づき慌てて少女に話しかける。


「ゴメンな長話しちゃって、人を待たせてるんだ、悪いな今の話はまた今度な。」


少女はコクリと頷きカズヤは走ってその場を去る、少女は自分の心に残った言葉を再び呟く。


「・・・自分だけのもの・・・」







〜ブリーフィングルーム〜


「ちょっとミサトッ!なんでこんな朝早くにネルフに来なくちゃいけないのよ!」

「あ〜ごめんね、あなた達に紹介する人が居るのよ。」

「紹介〜?どこのどいつよ。」

「うーん、あなた達チルドレンの警護の人なんだけどね。リツコの弟らしいのよそれが。」

「おとうと〜?リツコに弟なんていたの?」

「私も初耳なのよねー、ま、もうすぐ来るから待っててちょうだい。」


レイは我関せずといった感じで本を読みふけっている。アスカはぶつぶつと文句を言いながらシンジに八つ当たりを始める。自分の被害を減らすためアスカの注 意を他に逸らさせようとするシンジ。


「そ、そういえばどんな人なんですか?その警護の人は?」

「それがリツコもよく教えてくれないのよねー。」


そんなやり取りをしながら待っていると、ブリーフィングルームのドアが開きリツコが入ってくる。


「待たせて悪いわね、紹介するわ私の義弟の赤木カズヤよ。」


リツコの後ろから入ってくる青年を見てミサトとアスカはあからさまに「げっ」っと言った顔をする。

シンジは別の意味で驚き、レイはなんともいえない目で見ている。


「技術部から出向した赤木カズヤだ、これからはチルドレンの警護を担当させてもらう、今後ともよろしく。」


ミサトはリツコに近づき耳打ちする。


「ちょっとリツコ!あれはホントにあんたの弟なの!?」

「失礼ね、事実よ。司令にも許可は貰っているわよ。」

「それってマジ?」

「マジよ。」


ウゲっとした顔をしてすごすごと引き下がっていくミサト。


「カズヤさんて言うんですか、あの時はありがとうございます。」

「ん、きみは・・・・あの時のビールの少年か?」

「はい、碇シンジと言います。でも、おどろいたなぁすごい偶然ですね。」

「そうだな、まだ来たばっかで分からない事も多いと思うがよろしく頼むよ。」

「はい!こちらこそよろしくお願いします。」


シンジとカズヤが親しげに話してるのを見てアスカが絡んでくる。


「ちょっとシンジ!この刺青男と知り合いなの?」

「ア、アスカ!カズヤさんに失礼だよ!」

「えっと・・・・キミは?」

「惣流・アスカ・ラングレーよ!私の警護をできるのを光栄に思いなさい。」


と、いつものポーズで挑発するがカズヤはそれを軽く受け流す。


「ハハッそうだな、まぁよろしくな。」


相手が怒ると思っていたアスカはカズヤの冷静な受け流しに調子を崩す。


「ま、まあいいわ、よろしくね。」

「・・・・・綾波レイ・・・・・」

「キミもチルドレンだったのか、よろしくなレイ。」


レイはコクンと頷くと興味を失ったかのように再び本に視線を戻す。

個々の紹介が終わったところでリツコが声をかける。


「カズヤにはこれからはチルドレンの身近で警護をしてもらいます。ありえないとは思うけど、不審人物が近づいてきたときは遠慮なく叩き伸ばしていいわ。」

「わかった。」

「さて、あなた達は学校に言って頂戴、今日の警護はネルフに帰って来た時から開始します。」


それを聞いてシンジ達はブリーフィングルームを出て行く。シンジ達が出て行くとミサトがカズヤに声をかける。


「チルドレンの直属の上司の葛城ミサトよ、よろしくね。・・・・ところでそれタトゥー?すごいわねぇ。」

「ああ・・・・これか・・・・」


ミサトはその様子を見て触れてはいけない事のような気がしてばつが悪くなったように話し出す。


「あ、いいのよ、無理に言わなくても。」

「ありがとう葛城さん。」

「ミサトで良いわよ、これからよろしくね。」

「よろしく、ミサトさん。」

「自己紹介は終わったかしら、じゃあミサト一応保安部の方にも顔を出してくるわ。行きましょうカズヤ。」


リツコはカズヤを連れて部屋を出て行く、一人残されたミサトはカズヤについて考えを巡らせていた。


「何なのよ、あの子のさっきの目は。どうしてあの年であんな目ができるのよ、あれじゃまるで・・・・」


言葉にはしなかったが、昔、セカンドインパクトの後の生きる事に疲れた人間の目と同じだと思っていた。







〜ネルフ入り口〜


カズヤはネルフの入り口で立ち往生していた。


「うーむ、なぜ開かない・・・・・もしかしてカードの通し方が悪いのか?」


そう言ってさっきから何回もIDカードをスリットに通している。


「もしかして・・・・・偽物?」


くだらない事を口に出してると後ろから声をかけられる。


「ンな分けないじゃない、バーカ。」


振り向くとシンジ、アスカ、レイの三人がこちらを見ている。


「ん、キミ達帰ってきてたのか?」

「はい、今日は本部でテストがあるから早退なんですよ。カズヤさんは何してるんです?」

「それがな、何回カード通してもドアが開かないんだ。」

「はん!アンタはクビヨクビ!初日からクビでかわいそうねー。どきなさいよ。」


と言ってカズヤを押しのけてカードをスリットに通す。しかしドアは開かずムキになったアスカはカードを往復させる。


「も〜〜!壊れてんじゃないのこれ〜!?」

「キミもクビか・・・・可哀想に。」

「そこっうるさい!そうねぇ・・・本部に連絡してみましょう、優等生は携帯、シンジは他の入り口を探してきなさい、私は公衆電話を試すわ。」

「・・・・・俺は?」


何も言われなかったカズヤがアスカに聞いてみると。


「役に立たないんだからその辺に突っ立てなさい!」


しばらくしてシンジが帰ってくる。


「だめだよ、全部のドアが開かない、どうしたんだろいったい。」

「駄目・・・繋がらない。」

「こっちちも駄目、有線も非常回線も切れちゃってる。」

「どうしよう。」


レイが落ち着いたしぐさでかばんの中から紙状の物を取り出して読む。


「なぁシンジくん・・・あれなんだ?」

「さぁ?・・・綾波、なに見てるの?」


それを見たアスカは慌てて自分のカバンをあさりながら怒鳴る。


「あんた達バカァー?緊急時のマニュアルよ!」

「そんなのあったのか?」

「さぁ?」

「あんたたちねぇー!」


マニュアルを読み終わったレイが立ち上がる。


「とにかく本部へ行きましょう。」

「そうね、その前にグループのリーダーを決めましょう。で、当然あたしがリーダー、異議無いわね。じゃあ行きましょう。」


自分で勝手にリーダーを決めたアスカはそのままの勢いで歩き出そうとするが、


「こっちの第七ルートから下には入れるわ。」


とレイが後ろを指して言うと何事も無かったように方向を変えズカズカと歩いていく。

「なんだかなぁ」と言いながらその後をついていくカズヤ達。

少し歩くと頑丈そうなドアに突き当たる。


「でも、ドアは開かないんじゃ、あっ手動ドア。」

「ほら、カズヤあんたの出番よ!」

「わかった。」


と言ってエレベーターのようなドアの真ん中の隙間に指を入れる。


「あんたドアの開け方も知らないのー?脇のレバーを回すのよ!」

「いや、こっちの方が早い。」


アスカの声を聞き流しつつ両手に力を込める。


「よい・・・・・・しょっと。」

ギ・・・ギ・・・・ギ・・ゴガァァァン


金属が壊れる音と共に重そうなドアが勢いよく開く。それを見ていた三人は声を失う、普段表情を滅多に見せないレイも大きく目を見開いている。


「・・・だ、誰にでも一つくらいは取り得があるもんね・・・・」

「・・・・す、すごい。・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「ドアも開いた事だし・・・・先を急ぐか。」

「ま、待ちなさいよっリーダーはあたしだって言ってるでしょうが!」


慌ててその後をアスカたちが追う。








〜戦略自衛隊司令部〜


モニターに映る赤いマークを見ながら軍服の男達が話し合っている。


「おそらく、八番目のヤツだ。」

「ああ、使徒だろう。」

「どうします?」

「一応、警報シフトにしておけ・・・・決まりだからな。」

「どうせまた奴の目的地は第三新東京市だ。」

「そうだな・・・・まぁ俺達がすることはなにもないさ。」


赤いマークが地図の陸地部分と接触しオペレーターの報告が入る。


『使徒、上陸しました。』


「第三新東京市は?」


『依然、沈黙を保っています』


「まったく・・・ネルフの連中は何をやってるんだ。」



将校らしき男がぼやきながらタバコをもみ消す。


『使徒は依然進行中。』


「とにかくネルフの連中と連絡を取るんだ。」

「しかし・・・・・どうやって。」

「行くんだよ、直接。おい!ネルフまで使いをだせ!」







〜地下通路〜



「何時もなら二分で行けるのに・・・・・ここホントに通路なの?」

「あそこまで行けばきっとジオフロントに出られるわ。」

「さっきから三回も聞いたよその台詞。」

「違うぞシンジくん・・・・・四回目だ。」

「あんた達っほんっっっっとにうるさいわねぇ!黙って歩きなさいよ!」


前を歩いていたレイが立ち止まって口を開く。


「・・・・・黙って・・・・・」

「なによ、優等生!」

「・・・・・人の声よ・・・・」


そう聞いて全員が耳を澄ますと、遥か上のほうでライトの光と声が聞こえる。



『・・・・と・・・近中・・・繰り返す・・・使徒接近中!』




「「使徒接近!?」」

「使徒って何だ?」

「あんたバカァ!あたし達人類の敵でしょう!」

「人類の敵、ねぇ。」

「時間が惜しいわ、近道しましょう。」

「くっ、リーダーは私よ!勝手に仕切らないで、で、近道はどこ?」


レイの後に付いてしばらく歩くと道が左右に分かれる。


「うーん・・・・・右ね!」

「私は左だと思うわ。」

「うるさいわねー・・・・あんた達はどうなのよ。」

「えっ・・・・と、どっちかなぁ?」

「ふむ・・・・・分らないから任せる。」

「もぉ!私がリーダーなんだから黙って付いてくればいいのよ!」


そう言ってさっさと歩き出してしまう、仕方なくカズヤ達もそれに従う。


「やっぱり変だよ・・・・だってここ上り坂だよ。」

「やっぱりとは何よ、いちいちうるさい男ね。あ、ほらぁ今度こそ間違いないわ。」


歩いていると非常口が見えてきてアスカは自信満々にドアを蹴る。


「でぇ〜〜〜〜い」



ガスッ



ドアが開いて青空が見えるが、次の瞬間空から巨大な物体が落ちてくる。



ズガァァァァァァァァァァァァン



その衝撃でアスカは後ろに倒れる、そしてビルの隙間から大量の「目」らしき物の付いた巨大な物体が顔を見せる。


「ひぃっ!」


その光景にアスカは立ち上がって急いでドアを閉めてため息をつく。シンジ達はあきれた顔をしている、カズヤは落ち着いた様子で、


「あれが使徒か・・・・・デカイな。」


と言っていた。


「使途を肉眼で確認、これで急がなくちゃいけないのが分ったでしょ。」














来た道を戻り、左に進んでいくとまた分かれ道が現れる。


「・・・・・・まただ。」

「・・・こっちよ・・・・」


レイが先に行くとアスカが悔しそうに後に続く。


「あんた・・・・碇司令のお気に入りなんですってねぇ?」

「・・・・・・・・・・・」

「やっぱ、可愛がられてる優等生は違うわねー」

「・・・・・・・・・・・」


アスカは挑発するがまったく意に介さないレイにカッとなってつかみかかる。


「アンタ!ちょっとひいきにされてるからってなめないでよ!」

「こんなときにやめろよ!」

「ふーん・・・そういうこと・・・やってらんないわよ!サイテー!」


つかみかかった手をシンジが制するが、レイをかばうようなその行動にもイラつきその場から走り出す。


「やれやれ、なにを怒ってるんだかあのお嬢様は。」


心底やれやれと言った感じでカズヤがぼやきだす。


「俺が探しに行って来るから君達は先に行っててくれ。」

「すみません、カズヤさん・・・・・たまにあるんです、急に怒り出したり・・・・・」

「はぁ・・・・思春期ってやつかねぇ、ま、頭冷やして連れてくるから心配しないでくれ。」

「おねがいします・・・・行こう綾波。」


シンジ達が歩き出すのを見てから自分も歩き出す。


・・・おかしい・・・さっきまでは何も感じなかったが・・・・このおかしな違和感はなんだ?・・・・急いだ方が良いな・・・


カズヤの顔が険しくなり暗い廊下を走り出す。
















その頃アスカは走りつかれて座り込んでいた。

あからさまに道は違うのだがあんな事をしてしまったから戻るに戻れずただ座って愚痴を言っていた。


「なんなのよあいつら!まったくやってらんないわよ!リーダーは私なのよ!」


しばらく愚痴を言ってこれからどうしようかと考えているとき前方から光が見える。


「誰かしら?・・・・まぁいいわ、あいつに発令所に連れて行ってもらえばいいんだわ。」


アスカは大きな声で助けを呼ぶ。


「ね〜〜〜〜え〜〜〜〜、ちょっと〜〜〜〜〜。」


すると光源は動かなくなり声が返ってくる。


「・・・・なぜここに子供がいる・・・・・チルドレンか?・・・」

「そうよ、セカンドチルドレンの惣流・アスカ・ラングレーよ。」

「・・・・チルドレンを発見・・・・これより確保する・・・・」

「な、なに?なんなのよ?」


黒い戦闘服のような男二人がこっちに向かってくる。


・・・・こいつ等・・・・なんかおかしい・・・・・まさか侵入者!?


男達に怪しい気配にアスカは頭をフル回転させ逃げる方法を考える。


「おかしなことを考えるなよ、動けば撃つ。」


アスカの考えを読み取ったように男が喋る。

だが、男達の後ろから声が響く。


「・・・・・撃たれちゃ困るな、その子は俺の保護対象だからな。」


アスカに気を取られていた男達が一斉に後ろを向き銃を構えなおす。


「・・・・きさま・・・・何者だ・・・・」

「・・・・・話す義理は無いと思うが?」


アスカはカズヤを見て叫ぼうとする。ただでさえ相手は四人、それにカズヤは武器を持ってない。だが銃を突きつけられた自分は身体が震えて言う事を聞かな い。


「・・・・惣流・・・伏せてろ・・・」

「予定変更・・・・目撃所を消去・・・」


アスカがカズヤの声に従って身を低くするのと同時にリーダーらしき男が命令する。

戦闘員達はカズヤに向かって銃を撃とうとする。

カズヤは「ふぅ」と息を吹き出して走り出す。

隊員達もプロらしく慌てずにカズヤに向けて発砲する。

しかしカズヤは止まらずに銃弾をよけながら一人の隊員に殴りかかる。


「悪いな・・・・不審人物には容赦するなってことなんでな。」


カズヤの拳が男の鳩尾に叩き込まれると男は十メートルほど飛ばされピクリとも動かなくなる。

流石にその光景に唖然としている男達をよそにカズヤは二人目に狙いを定める。


「クソッ!来るなぁー!」


おびえた男は銃を乱射するが男の後ろに回りこんで蹴りを入れる。

続いて三人目、四人目に向かう、今度は最初の男達で銃は無意味と悟ったらしく大振りのナイフに持ち替えて走ってくる。


「シッ!!」


最初の攻撃でカズヤの胸に突き立てようとするナイフを少ないモーションでかわす。だがその動作も予測内らしく影から出てきた男がカズヤの首を薙ぎにかか る。とっさの攻撃に一瞬、回避が遅れ首の皮が浅く裂かれる。


「へぇ・・・・この身体が傷つくなんてな、いいナイフ使ってんな・・・・」


男達は答えることなく構え直し再びこちらに向かってくる。今度はカズヤを挟むようにして上段と中段ほぼ同時に切り裂きにかかってくる。カズヤは上段のナイ フを引き付けて腕を掴み男と身体の位置を入れ替えるように投げ飛ばす、中段を刺しかけていた男は勢いを殺す事ができず味方を貫いてしまう。間髪入れずにそ こにカズヤが回し蹴りを入れると男達は壁に激突して動かなくなる。


「惜しかったな・・・・・・人間だったら殺せたかもな。」














アスカは一向に鳴り止まない銃声に怯えていたが急にその銃声が止む。

恐る恐る顔を上げてみると男達は全員倒れており、カズヤが無傷で立っていた。


「もういいぞ・・・・・こっちこい。」


そういわれて立とうとするがまだ足がゆうことを聞かない、しばらく待ってカズヤのほうに歩いていく。そしてカズヤが話し始めた。


「だいじょぶだったか?・・・・・怖かったのか?」

「・・・・・え、怖くなんか無いわよ!・・・・」


と強がってみるものの、足の震えはまだ収まりそうに無い。


「まあいいや・・・・・・少し休んでくか?」


カズヤが座って一息ついているのを見て自分も座る。


「・・・・なんで、レイにあんな事を言ったんだ?」


とちょっと厳しい口調で問う。


「何をそんなに焦ってるんだ?」

「あっ焦ってないわよ!」


自分の動揺を隠すようにワザと大声で言う。


「そうかな?肩に力が入りすぎじゃないか?何でそんなにシンジ君やレイを意識するんだ。」

「私は・・・私はトップじゃなきゃ駄目なのよ・・・・」

「・・・・なんで?・・・・」

「エヴァのパイロットだから。」

「そんな理由でか?」

「そっそんな理由とはなによ!エヴァのパイロットってことはエリートなのよ!!」


後ろで男の身体がわずかに動くまるで身体を覆うように黒い砂がまとわり付き次第に人の形をとっていく。


「・・・・エヴァエヴァって・・・エヴァのために生きてるわけじゃ無いだろうに。」

「あんたに・・・・あんたに何が分るのよ!」

「さぁな、わからんな。・・・・だが、エヴァが無くなったらどうする気だ、気づいたときに自分ひとりしか居なかったっていうのは・・・・・悲しいぞ。」

「そ、それは・・・・」

「確かに人は一人で生きていけるかもしれない、だけどそれはつらくて苦しい道だぞ、わざわざ自分からそんな思いをしなくてもいいだろ?」

「・・・・・・・・・・・」

「まぁ、今答えを出す必要なんかないんだ、いろいろ考えてみるんだな・・・・・全てが終わった後で後悔しないようにな。・・・・・・・・・・ま、とりあえ ずは帰ってレイに謝れ、言い過ぎたんだしな。」

「・・・・・うん・・・・」


頭をポンポンと撫でるとアスカは素直に頷き下を向いて泣き出す。


「う、なぜ泣く・・・・せっかくいいこと言って締めたつもりなのに。」

「う、うるさぃ、何でそうやってすぐふざけるのよ・・・・ズズッ・・・・」

「ハハッ悪い悪い、なんか照れくさくてな・・・!!」


そう言いかけて勢いよくアスカを突き飛ばす。


「いったいわねぇ!何すん!!」


そう言ってアスカの動きが止まる。

カズヤの背中から赤黒く光る刃が突き出ている。それを見たアスカは慌てて近づこうとする。


「く、くるな!!隠れてろ惣流!!」










「こ、この野郎!!」


手でそいつの頭を思いっきり殴ろうとしたが男は人外の跳躍で後ろに下がる。

男の手がマスクに掛かり男の顔が次第に露になっていく。


「ひゃははは、久しぶりだなぁ人修羅よぉ。」

「て、てめぇ!サカハギ!なぜここに居る!!」

「さぁな、知ってても教える気はねえなぁ。」

「くっ・・・・・ガフッゴフッカハァッ」

「いたいかぁ悪魔専用の武器の味はどうよ。」


サカハギと呼ばれた男は赤い血の付いたナイフを振り回しながらカズヤに話しかける。


「返事がきこえねぇよっと!」


そう言って傷口を蹴り飛ばす。


「グハッ・・・・・・貴様。」

「いいねぇ、その目はぞくぞくするぜぇ、ヨヨギで腕をちぎってやった千晶とか言う小娘、あの女もいい目をしてやがったが所詮は人間、たいした事なかった な・・・・聞かせたかったぜぇあの声。」


その話を聞いていたカズヤはうつむいて動かなくなる。


「そういえばそこにも人間が居たんだったなぁ・・・さぞかしいい皮が手に入るだろうよ、今度はてめぇの目の前で引き裂いてやるよ、恨むんなら何もできねぇ 自分を恨むんだな。」

「・・・・・・・・・・・・・」

「あぁ!てめぇ聞いてんのか!おい!」


サカハギはカズヤの首をつかんで持ち上げるが、



ゴキィッ



という音と共に何かが下に落ちる。


「あ?・・・・・あ・ああ、俺のうでがぁぁぁアァァァッァ!!」


サカハギが叫びながら離れようとするが顔を鷲掴みされて持ち上げられる。


「ぐ・ぐぐが・・」

「貴様は、それ以上喋るな・・・・・・不愉快だ。」


そして逆の手に光が集まっていく。


「もう一度殺してやる・・・・・・消えろぉぉぉ!アギダイン!!」


サカハギを壁に投げつけその後に業火が向かっていく。


「ギヤァァaァァebaァァァowァzァァ!!」


声にならない叫び声を上げながらサカハギが崩れ落ちていく。

しばらくその様子を見ていたカズヤだったが、突然膝を付く。


「あ・・ヤベぇな・・・・またこんなんかよ・・・・」

そういいながら意識がだんだん無くなってくる。

わずかに視界に入ったアスカの無事な姿に安堵しながら意識はブラックアウトしていった。




感想

さて、今回はカズヤ君の初仕事、レイに希望を持たせて、アスカを助けるという行動がメインかな?

二人にきちんと話をしている所が凄いね、最後にメガテンの敵が出てきたけど。

そういえば、生身で使徒と戦えたりするんでしょうか?


流石に難しいんじゃないかな(汗) サイズが違いすぎるから、倒されなくても倒せないでしょう…普通には(爆)

でも、ある意味人で無いと言う意味 で使徒と同じ存在なのだとすると。エヴァでもっとも有名なやおいカプの人と同じ事が出来るんじゃないですか?

ははは(汗) その可能性は否定出来ないけど…

ではアスカさんと仲良くなっておく のはプラスかもしれませんね?

そうなるかどうかは分らないけどね。

まあ、どちらにしろ駄作家とは比べ 物にならないでしょうけどね。

はうぅ(汗) いつも、そんな閉めにせんでも…

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