「全部で二十四機、グレンラガンを含むキタン達、隊長機の分はなんとか用意できたわ」
ダイグレンの格納庫にはグレンラガンを始めとするカミナ達の主要ガンメンが一同に介していた。
そのどれもが、先日、ダイガンテンから奪った飛行機関トビダマ≠搭載している。
用意できたのは敵から奪った無傷の小型飛行機関が二十四基、ダイガンテンに搭載されていた大型の飛行機関の一基のみだった。
だが、こうしてグレンラガンを始めとする主力ガンメンと、ダイグレンが翼を手に入れたのは彼等にとっても大きな戦果と言える。
ユーチャリスやブラックサレナ、あとはチミルフ、アディーネなどの隊長機を除いて、まったく航空戦力がなかった大グレン団にとって、この戦力増強は非常に心強い知らせとなっていた。
「ヨーコ、あなたにもあるのよ」
「……へ?」
皆に、強化されたガンメンが紹介される中、ヨーコは大きなシートに包まれた機体の前に案内される。
そのシルエットからも、ヨーコにもそれが普通のガンメンでないことが、すぐにわかった。
「これは……?」
「あなたの相棒、名前はパドマよ。重力制御ユニットや、操作系にIFSを搭載した次世代ガンメン。
素材にはガンメンを使ってるとは言え、基本思想はブラックサレナをベースにしているから、ガンメンと言うより、ブラックサレナの姉妹機と言ったほうが正しいかもね」
ブラックサレナを無骨な男性の騎士とするなら、パドマは紅の女騎士と言った出で立ちだった。
ブラックサレナより細身の骨格に、まるで紅蓮の炎のような深い真紅の色で統一された外装。
腰の部分には二本のライフルが下げられており、肩から背にかけて近接用のナイフが備え付けられていた。
「……本当に、この機体をもらっていいの?」
どう見ても、今の大グレン団の懐事情からすれば破格の機体と言える。
敵から奪った補充パーツがあるとは言え、それも無尽蔵ではない。食料もそうだが、弾薬や修繕パーツなど、いつも数を確保する為にアキトやリーロンがどれだけ苦労しているか、ヨーコは知っていた。
そんな中、これだけのガンメンを製作するのは大変だったはずだ。
「バカね。IFS搭載って言ったでしょ? アキトにはサレナがあるし、ラピスにはユーチャリスがある。
乗れるのはあなたしかいないのよ?」
「でも、そんな……どうしてこんなに急に」
「急じゃないわよ。大グレン団が結成される前から、こっそりと開発は始めていたの。
ほら、あなたが大怪我した事があったでしょ? あの後に、アキトが私にこの話を持ちかけてきたのよ」
「……アキトが?」
「言っても聞かないだろうからな。ならば、少しでも生き残る可能性があるようにしてやりたい≠サう言ってね」
「…………」
リーロンの話を聞き、熱い想いが込み上げて来るのをヨーコは感じていた。
パドマにこめられた数々の想い。自分がどれだけアキトに、多くの人に支えられていたのかを気付かされる。
「これから、よろしくね。パドマ」
――だからこそ、私は
――その想いに応えないといけない。今度こそ……皆を、アキトを守る為に。
「だから、お願い。力を貸して」
――――。
パドマに意志などある筈がない。だが、確かにヨーコのその願いに答えたような、そんな気がした。
紅蓮華の名を冠し、真紅の騎士。その初陣の時が、近づいていた。
紅蓮と黒い王子 第30話「――兄妹合体っ!! キングキタ――ンDX!!」
193作
――テッペリン攻略作戦一日目。
それは、日の出とともに始まった。
異様な雰囲気を放ち、そびえ立つ王都テッペリン。
逆三角錐に、シモンのドリルのような溝が天に向かって掘られている。まさにそれは圧巻の一言に尽きた。
まさに、雲にまで届く勢いでそびえ立つその様は、大グレン団に巨大な影を落とし、絶対的な脅威として立ち塞がっていた。
かつて、これほど巨大な建造物を彼等は見たことがない。ダイガン級ですら、豆粒のように感じるその圧倒的な存在感に、誰もが息を飲む。
これから挑むべき敵の大きさを、その目に焼き付けながら――
「怯むなっ!! 敵とて、無尽蔵ではないっ!! 必ず活路があるはずだっ!!!」
チミルフは愛機のビャコウを駆り、部隊の先端を切り開いていく。
戦況は大グレン団が優勢な状況で始まった。
すでに敵は四天王を全て欠いており、残された指揮官も錬度は低い。
個人個人の実力で言えば、激戦を繰り広げてきた大グレン団の敵ではなかった。
だが、戦いが進むに連れ、状況は切迫し始めていた。敵の数が予想を上回り、余りに多すぎたのだ。
これは、アキトだけでなく、テッペリンの事情を知るチミルフにも全くの想定外だった。
ロージェノムはテッペリンに、螺旋の大地にいる全ての獣人とガンメンを集結させていたのだ。
その数はおよそ三十万。それに比べ、大グレン団の戦力は、寝返った獣人を入れても五千余りだった。
まさに、その兵力差は圧倒的だった。
テッペリンを中心に地上を埋め尽くすガンメンの山、そして空も見えないほど埋め尽くされた飛行ガンメンの群れ。
アキトの指示で部隊を下がらせ、細い渓谷に誘い込む事で、どうにか戦えている状態。
それが、どうあっても覆せない、今の状況だった。
「やはり……一筋縄ではいかないか……」
ここに来て、アキトにも焦りが見え始めていた。
まだ、部隊の損耗率は低い。だが、戦闘開始からすでに六時間以上、皆にも疲労の色が見えてきていた。
事実、最初の頃に比べて、受ける被害が増してきている。
いくら錬度が高いガンメン乗りが揃っているとは言っても、これほどの長時間の戦闘に耐えられるものではない。
だからと言って、彼等に交代要員を準備できるほどの余裕はなかった。
今も、全軍で当たっているからこそ、こうして凌げているのだ。
数を減らせば、残されたものの負担がそれだけ増えるだけでなく、そこから一気に崩れていく可能性がある。
「兄ちゃん、このままじゃ、ジリ貧だよ……」
「弱音を吐くなっ!! 今は何としても凌ぎきるしかねえ……いくぞ!!」
「あ〜、もう、わかったよっ!!」
「「――兄妹合体っ!! キングキタ――ンDX!!」」
この戦いの前、キタン達はリーロンから、キングキタンとキヤンルンガがグレンラガンのように合体出来ることを聞かされていた。
そのかけ声とともにキヤルンガは上下に分裂すると、片方は槍、もう片方は盾へと変形し、キングキタンに装備される。
盾で敵の銃弾を弾き、槍振り回し敵をなぎ払う、一騎当千の活躍を見せるキタンとキヤル。
グレンラガンだけでなく、自分達もまだまだやれる。
周囲にそうアピールし、先ほどまでの疲れを吹き飛ばすかのような勢いで戦線を盛り返していく。
「まったく、兄ちゃんもキヤルも無茶するんだから……」
「でも、お兄ちゃんも、キヤルもさすがです。二人が頑張ってくれたお陰で、持ち直しました」
ダイグレンで管制を担当するキヨウとキノンの二人。
二人とも、自分達ではガンメンに乗っても、皆の足手まといになることが分かっていた為、ダイグレンで管制をすることを希望した。
かつては兄と肩を並べて最前線で戦う事を誇りとしてきた二人だったが、その気持ちはここに来て変わってきていた。
キタンと旅をし、レジスタンスを結成し、大グレン団での戦いを経験した二人が出した答えは――
「「「「私(オレ)達、黒の兄妹はっ!! 生きる時も、死ぬ時も、魂はともにあるっ!!!」」」」
キングキタンDXの突撃が、瓦礫ごと周囲のガンメンを吹き飛ばす。
今日のキタンはノリに乗っていた。今日はいつもと違う。
キヨウが、キノンが、キヤルが、キタンを含め、黒の兄弟が揃って戦っているのだ。
自分達の後ろは、キヨウとキノンが守ってくれる。キヤルが力と勇気を奮い起こしてくれる。
それだけで、キタンは負ける気がしなかった。
グレン団に入るよりもずっと前から、アキトやカミナに出会う前からずっと四人で戦ってきたのだ。
その絆は誰よりも強い。
「オレ達の絆が、テメエラごときに破れると思うな――っ!!」
破壊の轟音を上げ、更に勢いを増すキングキタン。
その異常なまでの突撃力で、周囲の獣人達にも恐れを抱かせ、結果として進軍速度を鈍らせることに成功していた。
戦いは日が沈むとともに終わる。
一日目の戦いは激戦を極めたが、どうにか敵を退ける事に成功した。
獣人達が休息を必要とするように、全軍を投入して凌いでいたアキト達もまた、休息を必要としていた。
半日以上戦い続けていたこともあり、グレンラガンを始め、多くのガンメンが急ピッチで整備が必要となるほど、傷つき消耗していた事もある。これをチャンスとばかりに攻め込める余力も、彼等には残されていないのだ。
「アキトも少し休んだ方がいいんじゃない? また、明日になれば奴らは襲ってくるわよ?」
「オレは前線に戦いに出た訳じゃないからな。せめて、このくらいはさせてくれ」
整備班の手伝いをするアキトの身体を心配するヨーコ。
前線に出ていないといっても、ずっとユーチャリスで指揮を取っていたのだ。
疲れていないはずがないのだが、アキトはそれを言ったところで素直に聞くタイプでもない。
「じゃ、私も手伝うわ」
「いや、ヨーコこそ戦いに出て疲れてるだろう? 早く休んでおけ」
「二人でやった方が早いでしょ? 早く終われば、それだけ二人とも早く休める」
ヨーコもアキトに劣らず頑固だった。結局、ここにいる者達は少なからず似た者同士だったのかも知れない。
テッペリン攻略戦。それは予想以上に苛烈を極めるものだった。
単純な勝率を上げれば、このまま行けば絶望的と言ってもいい。
だが、ここにいる誰一人、そのことに絶望している者がいないというのだから不思議な物だ。
アキトもそうだが、彼等は諦めていなかった。まだまだ、戦えている。
戦える以上、どこかに望みがあるはずだと彼等は思う。それは願いや想いの問題だけではない。
ここに来るまでも、一歩一歩、確かに自分達の力で前に進んできていたのだ。
そこに奇跡などと言うものはない。
あるとすれば、それは――
「アキト、パドマのことありがとう。私、きっと皆を守って見せるから」
「……そうか」
彼等の絆、魂の力だと信じる。
数では確かに劣っているだろう。だが、彼等には敵にはない、大きな力があった。
「そこっ!!!」
パドマの放った一筋の閃光が、量産型の戦艦ガンメンの艦首を射抜く。
テッペリン攻略戦二日目になって、敵の攻撃は勢いを鎮めていた。
それでも、敵の数が多いことには違いない。だが、どうやっても疲労の色が隠せない彼等にとって、これはある意味助けとなっていた。
おそらく、敵も昨日の総攻撃で落とせなかったことを警戒しているのだろうと彼等は考えていた。
「だが、攻め込めるほどでにはいかないか……」
今は優勢に動いていると言っても、アキトも大局的に見れば戦況が思わしくないのは感じ取っていた。
皆が奮闘してくれているのは見てわかる。だが、それでも決定的とまではいかなかった。
テッペリンを中心に壁のように広がる敵のガンメン。
あれを崩し、中に入っていく事は相当に困難と言える。
ユーチャリスのグラビティブラスト連発できれば、一角を突き崩せないこともないだろうが、大気圏内では相転移エンジンの出力も上手く上がらないという現実もある。
結局のところ、正攻法で敵を圧倒する以外に、手段がなかった。
最悪、アキト自身も出撃して、一転突破を狙う以外に手段はないのかも知れない。
そうも考えるが、まさにそれは後がなくなった時の最後の手段とも言える。
そして、それを可能とするならば、出来るだけもっと多くの敵の情報を入手しておく必要があった。
最後の特攻作戦。もし、それを実行するのなら、それはまさに最後の戦いとなる。
「くそっ!! キリがねえ!!」
「兄貴、後ろっ!!」
「ちぃっ!!!」
グレンラガンの前身から放たれたドリルが、周囲のガンメンを吹き飛ばす。
圧倒的な力で敵を倒してはいるが、中にいる人間は別だった。
カミナとシモンにも疲れの色が見える。
『なんとか、耐えてくれ……必ず活路はある』
「わーってるよ!! 心配するなっ!! 大グレン団は、オレ様が守ってやるっ!!!」
陳腐な言葉ではあるが、それでも、今はカミナ達に頑張ってもらうしかない。
こうしている間にも、リーロンとラピスは敵の情報を出来るだけ多く掴む為に頑張ってくれている。
その為の時間をどうにかして稼ぐ必要があった。
だが、彼等に残されている時間が少ないように、螺旋王の軍団もまた焦りを感じていた。
自分達の方が数では圧倒的に勝っている筈なのに、いくら攻め込んでも、どれだけ兵を費やしても、全く大グレン団は崩れる様子を見せない。
その現実を前に、彼らもまた、眼前の敵がどれほど驚異的であるかを再認識させられていた。
「やはり、強いな……」
テッペリン最上階、謁見の間でロージェノムは映像に映し出された戦いを見て、思わず感嘆の声を上げる。
こうして目にするのは始めてであったが、グレンラガンを含め、そこにいる人間達は、獣人には決して出す事が出来ない、強い螺旋力を放っていた。
人間の戦士が、これほど多く覚醒し始めているということに、些か、脅威を感じざるえない。
「絶望的な状況が、奴らの眠っている力を呼び起こそうとしているのか?」
一際大きな螺旋力を放つグレンラガン。
そして、それに呼応するかのように人間達の士気が上がるにつれ、螺旋力が大きく増大しているのがわかる。
僅かずつではあるが、そのことが数の劣勢を覆してきている事をロージェノムは気付いていた。
おそらく、螺旋力の存在を理解していない彼等は気が付いていないだろうが、別に螺旋王の軍が一日目よりも注ぎ込む兵力を落としたわけでも、質を落としたわけでもない。
彼等が、一日目よりもその戦闘を楽に感じているのは、他ならぬ彼等の力が増してきているからなのだ。
危機的状況に陥れば陥るほど、驚異的なスピードで成長する種族。
それこそが人間であると、ロージェノムは知っていた。
「そうだ、もっと強くなれ。少なくとも全力の私と戦える程度には」
この男はそのことが分かっていて尚、全軍を差し向け、彼等を試しているのだ。
すでにどうあっても、獣人程度では彼等を止められない事はロージェノムには分かっていた。
だからこそ、自分の兵士を当て馬につかったのだ。より彼等を成長させる為に。
そこにどんな意味があるのかは、ロージェノム本人以外、知る由もない。
本来ならば、自分が不利になるかも知れない、この状況を好き好んで作り出そうとする者はまずいない。
だが、ロージェノムはこの状況を自身で作り出して、なお、笑っていたのだ。
そこには戦士としての狂気が宿っていた。
「おかしい……噂のあの男の姿が見えぬ」
アキトの姿が戦場にないことに違和感を覚えるロージェノム。
だが、アキトは戦場に出てこないのではなく、出ることが出来なかったのだ。
本人も自覚するほど早く、アキトの身体の限界は近づいていたからだ。
身体を蝕む発作の頻度は確実に上がっており、すでに戦闘に耐えられるレベルではなくなっていた。
それが分かっているだけに、アキトも出撃を控えていた。
最後に、この男との決着をつける為に――
「まあ、よい。今は高見の見物をさせてもらおう」
――そして、早く上がって来い。我が元に――
戦いは二日目、三日目と瞬く間に過ぎ去っていた。
全員、疲労困憊といったところだが、それでもここまで確実な手ごたえを感じてはいた。
別に、螺旋力などを理解しているわけではない。
ただ、自分達の底力がここにきて上がってきている事は、その身で体感していたからだ。
「――可能性はでてきたわね」
「うん、ここに来てカミナ、正確にはヒトのガンメン乗りの力が上がってきている」
リーロンとラピスがこれまで収集したデータを元に導き出された答えを伝えていく。
その内容はアキトだけでなく、そこにいたチミルフやアディーネをも驚愕させる内容だった。
ここ二日、敵の攻撃が緩やかに感じていたのは、別に敵が攻撃の手を緩めたからではないと分かったからだ。
むしろ、一日に撃破している数は、データ上では右肩上がりに上がっている。
そのことから導かれる答えは一つしかない。
「……まだ、強くなってるって言うのかい?」
グレン一機で自分と対等に戦って見せたカミナの実力はアディーネがよくわかっている。
そのカミナがここにきて、更に力をつけているという内容に驚きを隠せない。
「カミナだけじゃない。シモンやキタンを含めて、ガンメン乗り全体のポテンシャルが上がってきてる」
「火事場の底力と言う奴か? 追い込まれて眠っていた才能が一気に開花したとか?
だが、別段、ワシらはそんなことはないと思うが……」
チミルフの疑問ももっともだった。自分を含め、獣人の力はそれほど大きく上がっていない。
度重なる戦闘を通じ、技量という点では以前よりもずっと強くなっているとは思うが、それでもラピスやリーロンが言うほどとも思えない。
「当然よ。ここにきて、力を急速に増してるのは人間なんだから」
「どういうことだい? それは??」
「これを見て頂戴」
リーロンの提示した計測器のような物には、緑の波紋のような物が映し出されていた。
それを目を丸くして見詰めるアディーネとチミルフ。
「ラガンを研究してる時から、ずっと不思議に思ってたの。
なんでガンメンはパイロットの感情の機微に反応して、その出力を上下させるのかってね?
結論は簡単、ガンメンには人間が出す、あるエネルギーを増幅する力があるのよ」
「ある、エネルギー? なんだい、そりゃ?」
「……!? まさか」
チミルフの脳裏に浮かんだのある男の顔。
「私達はこれを人間、いえ正確には螺旋遺伝子を持つ者だけが持つ力――」
「――螺旋力」
「……サレナ?」
いつの間にか、ブリーフィングルームに現れたサレナに全員が振り返る。
「さすがですね。ラピスの力を借りたとは言え、ご自分だけでその結論に行き着くなんて」
「あなた、やっぱり知ってたのね?」
「すまない……オレも薄々だが、感じていた」
そう、サレナが融合したブラックサレナに乗っていた時から感じていた違和感。
それが何なのかは、アキトも感じていた。
グレンラガンほどではないにしろ、アキトの意志に応じてその出力を増す不思議な機構。
「じゃあ、やっぱり……ロージェノムは私達と同じ人間なのね?」
リーロンがここまでの情報で行き着いた答えはそれしかなかった。
ニアが螺旋王の娘と知った時から感じていた違和感。
パドマの開発に携わり、よりガンメンの機能を、螺旋力の存在を理解した時、そこに結論が行き着くのは当然の帰結だった。
「そりゃ、話せないわけよね……元を正せば人間同士の争いだったなんて」
獣人という明確な悪が相手だと思っていた異種族戦争の真相は、結局のところ人間同士の戦争だったと言うことに他ならない。
だとすれば、その人間によって生み出された獣人は、元を正せば人間に利用された被害者ということになる。
全てを理解したリーロンが思い悩むのは仕方なかったと言える。
だが、だからと言って、ここでこの戦いを終らせるわけにはいかない。
「でも、私達が負けられないことには変わりはないわ。
この戦いが終わったら、真実を全て打ち明けようとおもう。でも、今は――」
まだ、隠された本当の真実を、彼が知ることはない。
それでも、なお、自由を得るためにはこの戦いに勝利するしかなかった。
……TO BE CONTINUED
あとがき
193です。
リーロンはアキト達から話を聞く事無く、独自にその結論を導き出しました。
ここまでは前哨戦。本当の戦いはテッペリンがその真の姿を見せることで始まります。
次回は、遂にそのベールを脱ぐ、テッペリン。六日目の朝を向かえ、彼等はいよいよ最後の作戦へとその身を投じていく。
紅蓮と黒い王子は定期連載物です。毎週木曜日の夜定期配信です。
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