‐ミッドウェーでの勝利をきっかけに、地球連邦軍は対鉄人兵団の戦線を押し返し初めていた。6月20日に太平洋方面戦線最大の拠点「ハワイ オワフ島」攻略の足がかりとなる「ジョンストン島」を奪取。いよいよ反抗作戦の第一弾が開始されようとしていた。そんな時。驚きの情報が戦線の部隊に渡った。なんと、連邦軍のデータベースに無いガンダムが目撃されるようになったと言うのである。連邦軍に武器を納入しているアナハイム・エレクトロニクス社をして、「このようなガンダムをわが社は開発した覚えがない」と言わしめるものだった。太平洋方面軍の最大拠点「トラック諸島」では、戦線に介入してきたこのガンダムへの対応を協議するための会議が開かれていた。




「山南少将、どうなされますか?」

作戦室で参謀の問いに通常の連邦軍の軍服とは異なる、黒を基調とした軍服を着込んだ、一人の提督がいた。彼の名は山南修。かつて、宇宙戦艦ヤマトの初代艦長を努めた沖田十三、白色彗星帝国戦役時の連邦軍本星防衛艦隊総旗艦のアンドロメダ」座乗していた土方竜の士官学校時代の後輩であり、前大戦時は帝都の士官学校の校長を務めていた人材である。後方任務についていた彼が前線に駆り出されることになった理由は、前大戦時に本星艦隊に艦長として座乗していた佐官以上の人材の大半が未帰還となった事(移民船団には有能な人材が多数いるが、呼び戻すわけにはいかない)による措置である。




「うむ……現地に特殊MS師団を派遣する。あれの配備は済んでいるな?」

「万全です。ですがアレを使うのはいささか時期が速いかと」

特殊MS師団とは、連邦軍が組織した部隊の中でも特殊な機体を運用する部隊を指す。ガンダムタイプの派生型が主に配備されており、連邦軍の持つ最高レベルの`カード`である。山南の言うアレとは、連邦軍が開発したMSの中ではバケモノ級の火力を持つ「ダブルゼータガンダム」の派生型の一つで、拡大型の「SSMS−010ZZ」。全長は原型機の19mに対し、初代ゲッターロボ並の31m、無論、火力は強力で「移動要塞」と称されるほどの力を持つ。主にジオンなどの残党掃討に回されていたが、
兵団を押し返すために何機かが太平洋方面に回されたわけである。

「いや……万全を期す必要がある。ペガサス級は何隻動かせる?」

「ハッ、 6番艦と4番艦が太平洋方面に向かっております」


「よし。直ちに行動を開始するように連絡したまえ」


この時期、連邦軍の強襲揚陸艦は空母的な役割を果たしていたが、数は決して多くはなく、近代化改修されたペガサス級強襲揚陸艦が数隻のみであるが、未だ現役にあるという状況であった。現地に向かった部隊はそこでGの可能性の一つを目撃することになる。



――−ウェーキ島付近

ここでは母艦となるペガサス級より先に部隊が到着しており、ミッドウェー攻略に備えていた。襲撃者は連邦軍の都合など考えていないかのように、上空からレーダー網を掻い潜るように現れた。基地は慌てて迎撃体制に入ったが、警備についていたジムUとネモが一蹴される。基地の狼狽ぶりを見かねた第20特殊MS師団などは自分たちが持ち込んだ機体で敵を迎え撃った。

「馬鹿な…ガンダムだとぉ!?」

上空から降下してくる機体は赤いウィングからV2のような光の翼を展開し、腕に斬馬刀のような太刀を持つガンダムなど、どのデータの機体にも当てはまらない。一見するとGやWなどのガンダムのような印象を受けるが、どこか違う様な感じでもある。

「邪魔だぁぁぁっ!!」

そのガンダムのパイロットらしき声が通信回線から聞こえる。どうやらパイロットは歴代の例に漏れず、10代の少年のような声だった。

「ヤレヤレ……こういうのはお約束ってか?」

量産型Zのパイロットは悪態をつくと、ゼータが腕に持っている火器「スマートガン」を乱射する。命中したかに見えたが、爆炎に包まれたのにも関わらず、傷ひとつ無いどころか塗装が禿げた様子もない。どういう事かと目をこらすと、通常の装甲とは明らかに違う、特殊な金属が使われているとしか思えない様子が見えた。しかし基地守備隊のMSの放つ実体弾を事もなさげに受ける一方で、ビーム兵器に対しては明らかに防御や回避行動を取っているのだ。

「どういう事だ?」

パイロット達は一様に首をひね、火器の掃射を続けるが実弾兵器ではダメージを与えられている様子が全くない。射撃系のビーム兵器装備の機体はまだ整備中であるし、今から武装を取りに行く余裕はない。彼らは「切り札」の起動はまだかと待ち焦がれる。

「アレは……アレはまだか!?」

敵のガンダムは如何にも高威力のビーム砲を構えている。およそ高機動型MSには似合わない長砲身。設計者はいったい何を考えてあんなの持たせたんだと首を傾げたくなるが、意外にチャージは早かった。数秒後には青白い閃光が砲口に収束し始めている。それが臨界点に達しようとした瞬間だった。ピンク色の極太い光芒が未確認のガンダムをかすめ、バランスを崩させる。


そのガンダムのパイロット−「シン・アスカ」はモニターに大写しになっている一つの機影にその表情を強ばせた。モニター一杯に映る一機の巨大な機体−頭にビーム砲を内蔵し、 `連合軍`のGを思わせる顔―古の魔神が蘇って来たかのようなその威容に息を呑む。彼が元いた世界で遭遇した`殺戮`の名を持つ連合軍の大型機にも似た印象を受けるが、それより通常のMSをそのまま大型化させたと言った感じを受ける。



「これがこいつらの……?」



切り札的な兵器なのはすぐに分かった。このような大型機は大抵、戦局を優位に運ぶために投入されるからであり、彼の経験から言って、そうとしか思えなかった。一方、連邦軍のパイロット達は『それ』の登場に歓喜した。地響きを立てながら華麗に現れたその機体こそが彼らの最強兵器。その名も、ダブルゼータ大気圏内仕様。ジオン残党軍などからは不死身の英雄になぞらえて、ジークフリートと言われ、残党狩りの各戦線で恐れられた「移動要塞」がその威容を表したのだ。

「さあ、The Walkure's going on horseback(ワルキューレの騎行)と行くか」






ダブルゼータ巨大化モデルのパイロットは自身を北欧神話の戦乙女に例えるかのように笑みを浮かべ(律儀なことに基地の管制官が該当するクラシック音楽を大音量でかけていた。緊張感が無いお遊びとしか言いようの無い行為だが、それは彼らの余裕を示していた。)ダブルビームライフルとのバックパックのミサイルランチャーのトリガーを引き、 轟音とともに重火器が火を噴き、敵を爆炎に包みこんでしまう。かつてサイコガンダムなどが「悪魔」と言われ恐れられたが、それを彷彿とさせる。当然ながら、これはほんの軽いジャブである。これで倒れたら拍子抜けもいいところだ。

「フフフ……そうこないとな」

爆炎からほぼ無傷の敵が現れたのに関わらず、この余裕である。通信回線越しにこの薄ら笑いを聞いたのか、敵は怒り心頭。叫び声をあげながら斬馬刀のような太刀を構える。どうやら剣でこちらを叩き斬るつもりだろう。

「甘いな」

ダブルゼータは大型機とは思えない俊敏な動作でハイパービームサーベルを持ち、さらにシールドを構え、防御態勢を取る。ムーバブルフレームの柔軟性の賜物だ。それと突撃が敢行されるのはほぼ同時だった。光の翼を展開し、コックピットめがけて突撃してくる敵機。モニターにだんだんと大写しになる敵の刀の切っ先が迫ってくる。ダブルゼータの防御力が高いのは分かっているが、思わず目を閉じて祈りたくなる。ガンダリウム合金の多重空間装甲を貫く貫通力があの刀にあるかどうかだ。そして。金属音とともにシールドが刀とぶつかりあう。結果はガンダリウム合金製のシールド兼バインダーに亀裂が走り、一部が砕かれた。



「はぁ……はぁ…どうだ」

シンは愛機「デスティニー」の攻撃力が敵の防御をわずかでも上回った事に笑みを浮かべ、自分の母艦に増援を要請すると同時にさらなる行動に出る。

「よし………!」

その直後、不意に西の方角よりビームらしき光が飛来する。デスティニーの母艦からの援護射撃であることは容易に想像出来る。だが、待ってましたと言わんばかりにダブルゼータの瞳に光が走り、額の砲口に光が収束し始める。荒療治な方法だが、戦艦に匹敵するパワーを持つダブルゼータの真骨頂。

「こいつ……まさか!?」

シンは驚愕した。エネルギーにエネルギーをぶつけて相殺しようなどまともな奴の考える事ではない。チャージはデスティニーの持つそれ以上の速さで完了、頭部ハイメガキャノンが放たれる。そのビームとデスティニーの母艦であるミネルバの放った陽電子砲とがぶつかり合う。一見、戦艦の特装砲とMSの搭載武装とでは威力に差があるように思える。しかし大型機故に数機の大出力ミノフスキー熱核反応炉」が搭載されており、(俗に言う「核融合炉」)の織りなすパワーはオリジナルのダブルゼータガンダムすら凌駕し、ペガサス級などの高性能艦も沈められるほどの威力を誇る。(小型機のV2には次世代の動力「ミノフスキードライブ」が積まれた例があるが、生産コスト故か核融合炉を代換するまでには至っていない)それが陽電子砲とぶつかり合った。威力はわずかにハイメガキャノンが上回り、陽電子砲のエネルギーを飲み込むような形で押し返し、相殺したのだ。

「そんなバカな……こんな……」

目の前の光景に己が目を疑うシンだが、これ以上の単機行動は危険ここはひとまず母艦に戻り、援護に戻るべきと判断したのか、引きがけの駄賃にジムUを一刀両断してから引き上げていった。

「なんだったんだ?アレは」

「この近くに確認された未確認艦の搭載機と思われますが、詳細は不明です。他にも2機のガンダムが確認されています」

「よし。司令に報告だ。それとジェガンかジャベリンの配備を申請するように上申するように」

「了解しました」

この日、特殊MS師団が交戦した艦船とその搭載機に関する情報は直ちに上層部に伝えられた。即日で戦局に悪影響を及ぼしかねない要素は排除しなければならないと言う決定がなされ、各方面の基地守備隊の配備MSの近代化が急速に進められる事になった。
そして、全軍に未確認のガンダムに関する情報が伝えられ、特にデスティニーについてはこう称された。「侮りがたし」と。奇しくもシンが行ったこの行為がこれ以降の連邦軍の戦略に大いに影響を及ぼしたのである。後に歴史家の間で、「連邦軍はガンダム神話を盲信していることから、連邦に仇なす『G』の出現に恐れを抱いたのだろう」とまで言われる、戦略の転換点となったのである。連邦軍はその対策の一環として、先の大戦で試作段階にあった、ガンダムF91の正式量産を決定。麾下の組織の海軍戦略研究所、通称サナリィにF91の量産型への要求仕様を通達した。そして、ウェーク島の戦力増強の一環として、制式メタルアーマーであるドラグーンの装備部隊を硫黄島から進出させる事が決定された。















――こちらはなのは。



彼女は修理(と、言うよりは魔改造)を終えたレイジングハート・エクセリオンと共に空軍の招聘を受けて対人型兵器の空戦演習を受けていた。今日はMSが相手だ。相手はサブフライトシステムに載ったジェガンやジャベリン、Z系統の可変機。彼女は訛った空戦のカンを取り戻そうと必死だった。フェイトやヴィータに守られてばかりではダメだと意気込んでこの演習に臨んだ。モビルスーツの放つ模擬弾を避けつつチャンスを伺う。


「今だ!!ディバイィィン…バスターァァァッ!!」

得意の射程で、おなじみの砲撃魔法を放つ。遠距離の狙撃はレイジングハートが照準を補正してくれる。闇の書事件の際にヴィータを狙撃した時のようにディバインバスターの桜色の光は真っ直ぐにRGMー122 ジャベリンの編隊に向かって行く。

『甘くみるなよお嬢ちゃん。このジャベリンのパワーを』

ジャベリンを駆る兵士の声が外部スピーカーから響く。すると3機編隊のジャベリンは3つのビームシールドを連結させ、展開する。ディバインバスターの砲撃がビームシールドにぶつかり、ディバインバスターの砲撃はビームシールドを穿けずにかき消される。

「嘘ぉっ!?あ〜ん、ズルイですよぉ〜その光の盾!!」


「これがビームシールドだ。ガンダムF90以降の小型MSの標準装備で、普通のライフル程度なら防げるんだよ」

そう言われてなのはは改めてジャベリンを見てみる。配備が遅れている新鋭らしい小型機で、青を基調としたカラーリング、νガンダムなどと比べると随分小さく感じるボディなど、精悍さを思わせる。

「ザクとかゲルググなら届いたんだけどなぁ」

「それ十分怖いから!超硬スチールを撃ちぬく人間ってどんだけだよ……」

なのはの魔力による攻撃は完治後の計測の結果、一年戦争当時の第一世代MSならRXシリーズを除く連邦MSや大抵のジオン系MSをほぼ一撃で戦闘不能にできるという、恐るべきポテンシャルを見せた。しかし装甲が硬くなり、対ビームコーティングが進歩する第二世代以降のMSには貫通力不足であるとの事だ。彼女が目標として目指しているのは、νガンダムのビームライフルやZZのハイメガキャノンレベルの砲撃らしい。

「さて、今度はこっちの番だ」

ジャベリンの背中にある槍のようなものがせり出し、ドリルのように螺旋を描いて発射される。これがかつて、クロスボーン・バンガードが用いて連邦宇宙軍を震撼させたショットランサーである。レールガンの原理で打ち出されたランスがなのはを襲った。

「ふ、ふぇっ!?なんなのあれ!?」

「落ち着いてくださいマスター。あれは槍です。」

「や、槍!?槍って音速で飛んでくるものなの?」

レイジングハートの指摘で落ち着きを取り戻したなのははひとまず防御魔法のワイドエリアプロテクションを展開。ジャベリンのショットランサーを待ち受ける。その数秒後、ショットランサーとなのはの防御魔法がぶつかり合う。ドリルのごとく回転するショットランサーに思わず焦りを感じる。防御を削られるのだ。ガンダリウム合金レベルの装甲にも痛打を与えられる威力の武装を防いでいるだけでも賞賛に値するが。

ショットランサーの爆風から身を守ったなのははこの世界の科学力の高さ、そして兵器を使いこなす巧みさに舌を巻く。(後に彼女が魔導武装の開発に関わる時に注文をつけるようになるが、それは別の話)


「彼等は相当に戦いのセオリーを心得ています。……ですが、マスターの付け入る隙はあります」

「ありがとう、レイジングハート。私だって教導隊を目指してるんだもん……こんなことで負けられない!!」




―その様子を見ていたヴィータはなのはが自信を取り戻した事を嬉しく思っていた。

「良かった。これでまたあいつは戦える」

「嬉しそうだな」

「鉄也」

ヴィータのそばにはグレートマジンガーの操縦者の剣鉄也がいた。なのはとヴィータの引率で基地に来ており、劇画のような濃い顔立ちの割には気さくな兄貴分といった一面があるので、ヴィータも結構慕っていた。

「へえ……アイツ、結構いいセンスしてるじゃないか」

「ったりまえだ。なんてたってアイツは`無敵のエース`だかんな」

「グレートマジンガーに乗ってる身としては手合わせしてみたいぜ。おっ、今度はインメルマンターンしてる」

双眼鏡を覗きながら鉄也はなのはの空戦センスを褒め称える。戦闘のプロを自認する彼の目から見てもなのはの動きに非凡さを感じ取れるようだ。ヴィータはそれを聞いて誇らしげな顔を見せる。

「ちょっと手合わせしてくる」

なのはの姿に闘争心が疼いたのか、鉄也は双眼鏡をヴィータに渡して、格納庫に駆けていった。

「アイツ……大丈夫かな」




――剣鉄也は格納庫で整備が終わったグレートマジンガーを起動させて、演習に飛び入り参加した。なのははここで初めて`偉大な勇者`の勇姿を目の当たりにする。




『サンダーブレイク!!』


叫びと共に突然雷が走り、なのはは慌てて回避する。暗雲が晴れてその雷を放った主の姿がその姿を見せる。


「前方に巨大なエネルギー反応です」

「あ、あれは………!?」

その巨大な姿になのはは息を飲む。雷を操る黒鉄の巨体、手に持つ剣。どう見てもMSでは無かった。遥かに巨大だ。25m以上はある。雷鳴がその姿を照らす。

「これが……偉大な勇者『グレートマジンガー』…ッ!」

マジンガーZの跡を継ぐ、現時点で最新最強の黒鉄の魔神。この世界が誇る科学技術の結晶、スーパーロボット。なのははグレートマジンガーの巨体を仰ぎみて、思わずそう呟いていた。偉大な勇者と。この偉大な勇者を前に、思わず息を呑む。

『なのはちゃん、悪いが俺と手合わせしてもらおうか』

「ち、ちょっと待ってください!グレートマジンガーって反則ですよぉ!」

『実戦じゃそういう事は言えないぜ。あらうる状況に対応しないと生き残れん。敵がまたスーパーロボットで襲って来るかもしれないからな…。』

スーパーロボットはモビルスーツやメタルアーマー、可変戦闘機などより遥かに強力な力を持つ。それは自分自身が身を持って体験している。演習とはいえ、戦うとなると無事ではすまないだろう。

『グレートタイフーン!!」

グレートマジンガーの`口`のスリットから暴風が吹き荒れ、なのはをもにくちゃに吹き飛ばす。この暴風からなのはは必死に推力全開で態勢を立て直し、グレートマジンガーの攻撃から逃れる。

「ハァハァ、目が回った……。ただの風なのに、こんな威力があるなんて……」

『これは序の口だぜ。それ、次だ!!ネーブルミサイル!」

グレートマジンガーのへその部分からミサイルが発射される。6発程度だが、異なる方位からなのはを襲って来る。この程度は彼女の空間認識能力なら容易に迎撃できる。

「アクセルシューター、シュート!」

魔力による誘導弾を生成、巧みな誘導でネーブルミサイルを迎撃する(バルキリーのハイマニューバミサイルよりは容易とはいえ、威力は上らしく、凄まじい閃光と爆風が起る)。
(後にこの時の誘導の仕方を目撃した剣鉄也は『なのはちゃんはニュータイプの素養があるんじゃ?』といったそうな)

「今度はこっちの番なの!!一気に決める!」

グレートマジンガーの好きにされるのに業を煮やしたのか、レイジングハートにカートリッジをロードさせると一気に最大最強の砲撃を放つ態勢に入る。(グレートマジンガーの超合金ニューZの強度を考慮したらこうなった)

剣鉄也もなのはが全力を尽くすのを悟ったのか、グレートマジンガーの指を天に掲げ、耳から300万ボルトの高出力電流を放電し、雷を起こす。

「全力全開ッ!!スターライトォォォ…ブレイカーァァァァァッ!!」


『サンダーブレイクッ!!』

グレートマジンガーの電撃となのはのスターライトブレイカーがぶつかり合う。当たりに閃光を散らし、電流が迸る。




ヴィータはなのはがスーパーロボットたるグレートマジンガーと渡り合うのに嬉しさをみせる。
「……アイツ、強くなったな。だけどグレートマジンガーはその程度じゃないぜ?」

ヴィータの言うとおり、グレートマジンガーはまだ全力ではない。サンダーブレークに指一本しか使っていない。彼女はグレートマジンガーが両手を使えば、さらに威力が倍化した『ダブルサンダーブレーク」が撃てるのを知っているのだ。ただ指一本でいえば、全力である。なのはの砲撃のエネルギーを真っ向から相殺できる(逆に言えば不意打ちさえ受けなければ、なのはレベルの才能を持つ魔導師はスーパーロボットの攻撃にもある程度は対処できる事を示している)のは流石だ。閃光が収まり、両者の姿が煙から姿を表わす。


「そんな……スターライトブレイカーを指一本で相殺されるなんて……これがスーパーロボットの力なの……?」

なのはは全力の一撃がグレートマジンガーに届かない事に悔しさを見せつつ、グレートマジンガーの強大さを改めて認識する。そしてその力を存分に扱える技量を持つ剣鉄也の戦闘のプロぶりに関心する。

『大したもんだよ。このグレートと渡り合うとは』

鉄也もなのはの技量を認めたらしく、嬉しそうな声で素直に賞賛する。そんな鉄也に基地から通信が入る。

『鉄也さん、久しぶり』

『お前、ケーンか?いつの間に日本に来てたんだ?』

『ついさっきだよ。俺だけ先にきたんだけどさ、演習を見てたら面白そうだから俺も混ざるよ』

『そうか。あとは頼んだぜ』

「はいな♪」

ケーンとの通信を終えた鉄也はなのはにねぎらいの言葉を言って、戦いを切り上げて基地に帰還する。

ひとまず安堵するなのはだが、休む間もなく、次なる刺客(?)の襲撃を受ける。今度は……
「マスター、今度は西から高熱源反応です」

レイジングハートの新たな警告になのはは思わず`もうやだとため息混じりの声を出す。

「ふぇっ!?こ、今度はなんなの!?」

音速で近づいてくる敵の姿は一見するとモビルスーツのようにも見える。

「モビルスーツ……?」

「いえ、あれはモビルスーツではありません。バックパックの形状から言って、メタルアーマーです。それもドラグナーです」


「ド、ドラグナーって……まさか!?」

ドラグナーと言えば、白色彗星帝国やギガノス帝国との戦いで活躍した、連邦軍最強のメタルアーマー。それもアニメの主役機然とした洗練されたフォルムから言って、白兵戦用のD-1、それも後期のカスタム型。なのははそれを駆るパイロットが誰であるかを知っていた。今は軍人である以上、戦史の本に目を通す機会があった。その中で、前大戦での功労者の一人として顔写真付きで載っていたエースパイロット。その名は。

「ケーン・ワカバ中尉……!」

D−1カスタムは音速の壁を超えて演習に参加する。白銀の翼で空を切り裂きながら、空を駆ける。それが前大戦の英雄の一人の帰還を示すサインだった。

『ドラグナーだ!!当たると痛えぞぉ――ッ!!』
ケーンはそう叫び、愛機をなのはに向けて吶喊させた。何故、彼がここにいるかというと……。

物量に押される、厳しい戦況に業を煮やした連邦軍はかねてより進めている`作戦`の一環として、軍内で腕利きとされるパイロットを続々と日本に呼び寄せたが、いかんせん到着が遅れていた。敵の妨害にあったり、所属先の戦線の戦況が予断を許さないなどの理由により
日本に行けないパイロットが多いのだ。そんな中、一人のパイロットが日本に到着した。

彼の名はケーン・ワカバ。前大戦の折の戦役の一つ、ギガノス帝国戦役におけるエースパイロットであり、白色彗星帝国との戦いにも参加した腕利きだが、ギガノス戦の終盤でギガノスの元エースのマイヨ・プラートにおいしいところを持っていかれたという珍事を持つ10代後半の青年である。ちなみに階級は前大戦当時は准尉だったが、功績で中尉に特進した。

「よっ、ブライト艦長。久しぶり!」
「ケーン、よく来てくれた。……ん?タップとライトはどうした?姿が見えないが」

ブライトの問いにケーンは呆れたように答えた。よほど何か馬鹿をやらかしたらしい。
彼単独で来たのはどういうわけかを。

「実は来る前にタップの奴が悪いもん食っちまって……その場で倒れて寝こんだんだ。ライトも同じの食べたらしく、酷い下痢になってて、とても行ける状態じゃない」

要は食中毒と下痢によって足止めされている2人の相棒を尻目にたまたま無事だった彼だけが日本に向かい、到着した訳である。彼らの乗機「ドラグナー」は本来の予定通り、3機が輸送されていたので、軍は思わぬ敵により予定を狂わさせられたのである。

「そ、そうか」
「ほんじゃ俺は司令に挨拶してきますよ。アイツらのことも伝えないと」

ケーンは小走りで基地に入っていった。年齢が上がり、多少の落ち着きは身につけたらしく、一見すると真面目な軍人に見えそうだが、年相応のはちゃけた一面も持ち合わせる。
ブライトはまたまた頼りになるが、一癖も二癖もある人材が部隊に加わるのに安堵すると同時に、部隊の指揮官となった者の宿命である、神経性胃炎に悩む日々がまた始まるのである。「胃薬が手放せなくなるな」とぼやいた。その足で彼は基地の薬店で大量に胃薬を買い占めたためにパートのオバちゃんに「今度はどこに行くの?」と言われたそうな。そういう訳である。



ちなみにケーンは当初は民間人であったのでパイロットとしては未熟であったが、ギガノス帝国と戦う内にメキメキと腕を上げ、最終的にはギガノス最高のエース「蒼き鷹」と隊列を組んで共闘できるまでになっていた。その後は功績により、中尉へ昇進。今では軍の撃墜王の一人に数えられている。また、D-1カスタムの空戦機動性は高い。なのはにとってはこれまた強敵であると言えた。

「へえ……今度の新入りさんは魔法少女かぁ……こりゃ面白い」

ケーンはなのはへ先制攻撃をかけながら様子をみる。どんな攻撃が来るのかを見極めるのだ。

「おっ、オールレンジ攻撃か」

D‐1カスタムは機敏な動きでなのはのアクセルシューターを避ける。ケーンは第二次ネオ・ジオン戦争の際にファンネルの弾雨に挑んだ経験があるので、こういう時の手は2つある。
一つはジュドー・アーシタやカミーユ・ビダンのように見切って斬り落とす事。もう一つは弾幕をスピードで突っ切ること。多少の被弾は覚悟の上でだ。

「さて、俺も鉄也さんみたいにカッチョイイ所見せたるぜ!!」

スロットルを押しこみ、アクセルシューターの弾幕を突っ切る。なのはは工夫を重ねて、D-1カスタムに一、二撃命中させたもの、それを無視して突っ込んでくる様に思わず怯んでしまう。

「ふぇっ!?そんな……!!」


自身を持って繰り出した攻撃が効かない事に動揺するなのは。だが、そこに激が飛ぶ。

『何やってんの!そんな事くらいでびびるんじゃないわよっ!』

「その声は……智子中尉!?どうしてここに!?」

『今日から正式にロンド・ベル配属になったのよ。あなたの相棒から話は聞いてるわ、とにかく落ち着きなさい』

無線機を片手に、地上でなのはに激を飛ばす智子。ブライトへの着任の挨拶を終えたばかりであったが、演習の様子が気になったらしく、近くの兵士から無線機を借りて、なのはに激を飛ばしたのだ。



「いい?相手のの動きをよく見なさい。あなたに追えない相手じゃないわ」

「はいっ」

智子はなのはを落ち着かせ、アドバイスを送る。これにより、動きにいつものキレが戻る。演習は白熱を極めていた。双眼鏡にはD-1カスタムのハンドレールガンの火線(模擬弾)を避けるなのはの姿が見えた。扶桑海の巴御前の名を頂いた智子としてはどうしても血が騒いでしまうが、ひとまず今日はアドバイザーに徹する智子であったとか。(模擬戦は経験差により、ケーンに軍配が上がったとの事)





――1999年 野比家







「あらドラミちゃん。久しぶり」

「お久しぶりです」


来訪者はドラえもんの妹のドラミであった。黄色を基調としたカラーリングと特徴的なリボン状の耳を持つロボットである。彼女は兄たちに何かが起こった場合に鳴る「虫のしらせアラーム」が鳴り響き、何事かと駆けつけたのだが……。玉子と取り止めない会話をし終えた後、タイムテレビを取り出した。

「お兄ちゃんたちはいつ頃いなくなったんですか?」

「そうねぇ……2時間くらい前かしら」

兄たちがいなくなった時間を玉子から聞き出したドラミはタイムテレビを取り出し、
その時間の様子を確認する。タイムテレビには5人が意気往々とタイムマシンに乗り込む様子がその時の音声と共に映し出されていた。
会話から分るのは兄たちが向かった時代は2125年よりもさらに未来−22世紀も世紀末を迎えているであろう2199年である事が分かった。

「なんで未来に行ったのかしら?もう少し前を見てみないと」

タイムマシンに乗り込むまでに至るドラえもんやのび太達の会話が再生される。

『「原因はわからないの?ほら、前に西遊記の主役になって妖怪達と戦った時みたいにさ」

のび太が言っているのはおそらく、過去に一度、妖が人間を支配した歴史に改変されたのを元に修正した事だろう。しかし今回はそう単純ではない。

「あの時みたいに年代が特定できればいいんだけど、今回はどの年代でこうなったかまったくわからない。この時代に行けばわかると思うんだけど…」

「西暦2199年、とんでもない未来だけど…行けば何かがわかるかも知れない」

タイムマシンに乗り込んで向かった先―2199年に何があるのか。ドラミはさらに調べた。その課程で彼女は驚くべき光景を目にした。

それは2199年より数年前の時点の映像であった。彼女は知る由もないが、この時代は第2次ネオ・ジオン戦争の真っ只中であり、彼女はその内の5thルナ攻防戦を目にしたのである。巨大ロボットが繰り広げる宇宙戦争にドラミはしばし言葉を失った。


『なんでこんなものを地球に落とす!!これでは地球が寒くなって人が住めなくなる!核の冬が来るぞッ……』

『地球に残った者は自分たちの事しか考えていない!だから抹殺すると宣言したッ!』

2人の男性の言い合いのような会話が響く。どうやら巨大ロボットは有人型のようだが……自分たちの時代からはとても想像のつかない光景である。ロボットが軍事利用されているなど……それに自分たちのようではなく、純粋に兵器として扱われているとはどういう事だろうかと疑問が浮かぶ。やがてタイムテレビは2機のロボットの戦いを写し続ける。光の剣やビームを発射する銃を持ち、尚且つ巨体からは想像のつかないような俊敏さを発揮する。

『人が人に罰を与えるなどと……!』

『私、シャア・アズナブルが粛清しようと言うのだよ、アムロ!!』

『エゴだよそれは!』

『地球が持たん時が来ているのだ!』





ドラミはこれらの光景に息を呑む。あまりにも自分たちの時代とかけ離れている光景。ロボットを用いた大戦争が現実となっている。そして兄たちはそんな戦乱の時代に自ら向かった。ドラミは信じがたい気持ちでダイヤルを操作し、2199年の世界の様子を確かめる。そこで彼女はさらにとんでもない物を目にした。

「えぇぇぇぇっ!!」

彼女が目にしたのは生身の人間が雷級の電撃(美琴がちょうど超電磁砲を撃った瞬間)を放った場面。未来の世界はいったいどうなってしまったというのか。頭がどうにかなりそうになる。彼女もまた、未来世界のあまりの変わり様に驚いていた。一体何が原因でこのような未来が現出したのだろう。どこで歴史がどうなったのか。タイムテレビを見ながらドラミはしばし呆然としていたが、とりあえず、兄たちが帰るのを待つことにし、外に買い物に出かけた。









事情聴取を終えたドラえもん達は兵士の勧めもあって、兵団の動きが見えないのと、いつ動き出すか不明なために一旦元の世界に戻る(兵団が動いたら知らせるのを条件に承諾)事となった。(ただし美琴は元の時代には戻らず、野比家に寝泊りする)タイムマシンに6人乗りし、野比家に戻った。




「いったいどこに行ってたの?」

タイムマシンから降りて、4人を見送り、部屋でつくろいでいるとのび太のママ、本名野比玉子……がやってきた。最初に出発した時間から二時間余りが経過していたらしく、様子を見にやって来たのだろう。のび太は「うん、ちょっとね……」と軽く流す。慣れたものだ。流石に何度も冒険を繰り広げているだけあって、この手の言い訳はお手の物である。
玉子がいなくなると、のび太は美琴に何故、元の時代に戻らないのかと疑問を投げかける。

「美琴さんは何で元の時代に戻らないんですか?」

「まずは兵団をどうにかする方が先でしょう?それに、元の時代にはドラえもんがいる限りは何時でも戻れるしね」

……とは言うもの、美琴は元の時代に残してきた相棒の白井黒子を始めとする面々の事が気懸かりだった。あのツンツン頭の少年、上条当麻はまた美琴の為に無茶をやらかすだろうし、黒子は血眼になって自分を探しまわってるだろう。それを考えるとため息が出てしまう。ドラえもんが今、2010年代に美琴の安否を伝えに行っているが、ただで帰れるはずはないだろう。ドラえもんがどのような目に合うかは想像出来る。黒子ならドラえもんを問い詰めて首を絞めることくらいはするだろう。果たしてどうだろうか。その時だった。引き出しが空き、そこからドラえもんが出てきた。




「フヒー、まいったまいった…… 」

かなりボロボロになっている。行った先で黒子に何かされたのだろうか。まあ、大体想像は付くが。

「お・ね・え・さ・まぁ〜〜!!!」

その声を聞いた美琴の顔色が変わった。ドラえもんに続いて現れたのは彼女の相棒にして、寮のルームメイトのツインテールの髪型をした女子中学生……白井黒子(しらいくろこ)だった。美琴にとっては嬉しいような、嬉しくないような微妙なところな気持ちであったが、久方ぶりに見る黒子の顔に安堵していた。


「ご無事でしたのですね〜黒子は、黒子はとっても心配していましたの〜!」

黒子は引き出しから出るといきなり美琴に飛びつく。この余りにも突飛な事態にドラえもんとのび太は唖然としてしまう。黒子にとっては極当たり前な日常風景だが、ドラえもんとのび太にとっては口をポカーンと開けたまま固まってしまうようなビックリな光景である。さらに引き出しから間髪入れずにもう一人現れる。頭に花をかたどった髪飾りを大量にしている女子中学生……黒子の仕事の同僚にして、友人の初春飾利(ういはるかざり)である。


「あの……初春さん?説明してもらえるかしら……何がなにやらどうなってんの?」

美琴の問いに初春が答える。初春によれば、突然ドラえもんがやって来て事情を黒子に説明した。それで案の定、黒子が暴走。危うくドラえもんを締め上げそうになったが、何とかそれを制止。事情を知った黒子はドラえもんに無理やりくっついてタイムマシンに乗り、心配なので自分も乗ってこの時代に来たそうだ。

「なるほど……ってどうすんの、のび太君。この家ってまだ部屋あったっけ?」

「隣におばあちゃんが生前に使ってた部屋がありますから、そこを使ってください。一応ウチのママに話を通すんで、とりあえず一階の居間に来て下さい」

「あの……初春さん?説明してもらえるかしら……何がなにやらどうなってんの?」

美琴の問いに初春が答える。初春によれば、突然ドラえもんがやって来て事情を黒子に説明した。それで案の定、黒子が暴走。危うくドラえもんを締め上げそうになったが、何とかそれを制止。美琴の事情を知った黒子は
ドラえもんを脅す形で無理やりくっついてタイムマシンに乗り、心配なので自分も乗ってこの時代に来たそうだ。こうして出揃った一行はのび太に案内されて野比家の一階に赴いた。玉子は突然の来訪者達にど肝を抜かれたようで、口をアングリと開けて呆然としてしまう。

「の、のびちゃん……、この人達は……?」

玉子はのび太がいきなり3人の女子中学生を連れてきた事に唖然としているようだ。しかもいかにも名門女子校のお嬢様と言った感じの子女もいるのだから驚きであった。



「ええと、こちら学園都市から来た中学生の皆さん。ぼくの知り合いなんだけど……しばらくウチに泊まることになったから」

「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」


玉子はますます驚かされた。自分の息子が連れてきたのがあの学園都市の生徒だった。そのうちの二人は名門の常盤台中学の生徒ときているから尚更だった。あまりの出来事にこれ以上の言葉が出てこない。あまりの衝撃に彼女の頭は真っ白になってしまったのだ。学園都市とは人工的に超能力さえも作れ、科学力もズバ向けて優れている、日本でも日本でないとまで言われるまで権限を持つ超巨大都市であると玉子も理解していたので、驚きに拍車がかかったのだ。


「私は御坂美琴っていいます。のび太くんとはいろいろあって……。今回はお世話になります」

「わたくし、御坂美琴お姉さまのルームメイトで、白井黒子と申します。よろしくお願いいたします」

「ええと…、初春飾利って言います。どうもお世話になります」

「は、はあ……」


その後の話はのび太とドラえもんが進めた。玉子は刺激すればすぐに機嫌を損ねるほど気難しい性格であるため、話し合いは難航。野比家の収入で7人をどうやって養うのか、自分たちの常識とお嬢様達の常識は違うと力説する玉子。課長の役職にあるとはいえ、大企業ではない企業の中間管理職員に過ぎないのび助の収入では7人の食費など賄いきれるものではないとの事。ドラえもんがグルメテーブルかけという秘密兵器がある事を力説し、更に家事を手伝って貰うと熱弁を振るう。。




美琴たちを泊めるのを了承させたもの、条件として、美琴たちも家の手伝いをすることと、食事などは時々ドラえもんの道具を使うことが出された。のび太はその条件を飲み、3人に伝え、美琴たちも了承した。こうして野比家は新たな住民(?)を迎え、ドタバタぶりをエスカレートさせていく事になる。そして……

「あら、お兄ちゃん達が帰ってきたのかしら」

ドラミがメロンパンの買い物から帰ってきて、居間のふすまを開ける。

「!!??」

ドラミは我が目を疑った。兄たちが中学生くらいの女子を家に連れ込んでいる。何かの間違いではないだろうかと。


「ドラミ!?お、お前来てたのか!?じ、事情を説明するから入って。長いんだけど……」

ドラえもんも妹の前で醜態を晒してしまったことに狼狽え、説明できていない。のび太とスネ夫は「アチャー」と頭を抱える「こりゃ大変だ」と。




――それらとは関係なしにドラえもんと接触を試みようと、同地の住人として潜入した地球連邦政府の諜報部員はこの状況を本国へ報告した。

「“ケルディム”より本部へ。緊急報告」

「どうした、何があった」

「米軍が動いています。目的はドラえもんではなく、遊びに来ている`能力者`であると思われます」

「何?能力者だと?学園都市のか?」

「それもこの時代には生まれてるかさえ怪しいはずの人間です」


「何?それは誰だね?ドラえもんの友人ならドラえもんが学園都市から連れてきたのだろうが……」

「容貌などから推測するに……21世紀頃の人間のはずの常盤台の超電磁砲の御坂美琴だと思われます」

「超電磁砲だと……確か御坂美琴は21世紀序盤当時で14歳になるはずの人間だ。確かにこの時代にいるのはおかしい。彼は彼女と交友があるというのか……?」

「分かりません。とにかく注意して事に当たります」

「うむ」

この時、実は既に地球連邦軍の思惑に巻き込まれつつあるドラえもん達であるが、それは本人たちは知る由もなかった。























――この時空管理局は2199年の地球の調査に躍起になっていた。波動エンジン、フォールド機関を始めとする`次元を飛び越えられる超エネルギー動力源`の存在。そしてどんな不利な状況であってもひっくり返すほどの力を持つスーパーロボット。管理局の極右勢力はこの「スーパーロボット」に代表される、極限まで発達した科学力を恐れた。その力が自分達にとっての脅威になりかねない事を危惧するあまり、極右勢力や若手の提督らは管理外世界との融和路線を進める上層部を糾弾していた。



 しかし、魔法が一切存在しない、管理外世界に介入することは、下手をすれば現地の住人全てを敵にまわす危険性を秘めている。
極右勢力のやろうとするのは独善としか言いようのない愚行に過ぎないが、彼等がここまで動きを先鋭化させたのはある事件がきっかけだった。
それは`第115管理外世界に偵察任務に派遣された航行艦が現地に派遣した魔道士・執務官が惑星ごと消えて無くなった`という物で、突然地球型惑星が爆発した事例(そもそも爆発はその世界特有の事情によるもの。音声記録に『ガイヤー――!!」との叫び声が残っていた。後に第120管理外世界の艦隊が残骸をその空域から持ち帰り、調査した結果、`反陽子`が検出された)となった。この事件を気に時空管理局内の`海`の極右勢力は勢力を強め、`管理外世界への臨検`と称する、介入行動への動きを強めていく。





−時空管理局本局の一室で頭を抱える一人の青年がいた。彼の名は「クロノ・ハラオウン」。フェイトの義兄であり、管理局の執務官である。彼は今、これまで管理局が地球は「第97管理外世界」だけに存在するとの認識が覆された事に驚きを隠せなかった。それと彼のもとに舞い込んだのはある管理外世界の視察に訪れた部隊が惑星ごと消滅したとの情報がさらに彼を驚愕の渦に落としていた。

「しかし……この報告、信じがたいな……。」
「ええ。しかし自分には信じられません。…本当に惑星が消滅したのですか?」

「ああ、事実だ。…君には気の毒な事だが、上は管理外世界の調査を本格的に行う腹積もりらしい」
「なんですって?馬鹿な、管理外世界への介入は…っ!!」

クロノは両手を「提督」の机に荒々しく叩きつけて憤慨した。管理局は傘下でない世界のへむやみな介入は禁じているはずであり、ましてや今まで管理外世界と扱われていたのに、いきなりの`臨検`は無茶でしかなく、他の世界の反感を買うだけだ。



「クロノ君。これは一部のバカが行なっているにすぎんが、下手をすれば管理局の体制が崩れるかもしれんほどの危険な行為だ。
場合に拠っては右派に対し非合法的な手段を使うしかない」

‐非合法手段とはもちろん、政治的・軍事的・諜報などを含めた最後の手段である。
暗殺も視野に入れているのは間違いない。

「閣下、まさか……」
「ああ。やむを得ん……内部の悪い膿は出しきらんといかんのだ」

クロノは提督の策謀にうすら寒さを覚え、顔から血の気が引いていくのを自覚していた。
管理局内部で内ゲバを行うような粛清の嵐が吹き荒れる事を暗示していた。





−ミッドチルダには、`先祖が地球人`という、出自のルーツを地球にもつ住人が多く、詳しく調べてみると、かなりの数に登る。
しかし、全てがなのは達の世界出身ではない事は分かってきた。`地球`が複数存在する事には驚いたが、よくよく考えてみれば、地球という星は天文学的にはごくごくありふれた星だ。宇宙の中には第97管理外世界と同じ環境で、同じ進化を辿った惑星が複数存在しても可笑しくない。それ程に宇宙は広いのだ。第120管理外世界はそれらの中でも突出して技術が進化した`地球`であり、`太陽系`なのだろう。僕はそう認識し、この事を母さんに伝えた。ついでにユーノにも通信で伝えておくとするか……。
クロノは航海日誌にこう独白を書き記した。


第120管理外世界の詳細はフェイトからの通信で分かっている。恒星間航行を既に実用化し、`地球連邦政府`なる統一政府があるという点では他の`地球`より一歩抜きん出た世界だ。その気になれば、ミッドチルダを惑星ごと吹き飛ばせる軍事力を持つとフェイトは言っていたが、手紙に添えられていた写真を見て、思わず納得してしまった。

(フェイトが送ってきたメールには写真が添えられていたが、その写真は第120管理外世界の技術の結晶とも言える兵器達だった。まず、どことなく見覚えのあるカラーリングの戦闘機が写っている。フェイトによれば、VF―19 エクスカリバーという、飛行機・人型、鳥型に三段変形可能な代物らしい。驚いたことにそのすぐ横になのはの姿があった。どういう事だ?続いての二枚目はシンプルな人型兵器で、背中に放熱板らしき物を背負っている。`RX−93 νガンダム`という機体の名前も描かれている。3枚目は紅の翼を持ち、鉄兜のような頭部を持つ機体。これがフェイトが最も驚愕した兵器。その名はグレートマジンガー……。この3枚目に写っている兵器が上を恐怖させるという、スーパーロボットなのか?)


クロノは驚きを隠せぬままその情報を友人の一人で、今は特別捜査官となったなのはとフェイトの親友の八神はやてに提供。はやてはすぐに行動を開始。
`地球`がいくつ存在するかを調査する名目で、誕生して間もない`デバイス`リィンフォースUを伴って、第120管理外世界(近々、観測指定に分類替え予定)に程近い、
第105管理外世界「エデン」(正確にはグロームブリッジ星系の惑星`エデン`という。地球連邦が最初に太陽系外で移民に成功した惑星であり、今や連邦の要所となっている)に降り立った。





「嘘やろ……資料と全然ちがうやん〜!!地球人だらけや……」

はやてはエデンに着くなり、カルチャーショックを受けた如く、眼を点にして当たりの風景を凝視する。地球人らしき人間が多いのだ。資料ではほぼ`無人`とされていたが、現に人間が多数入植している。

「いったいどういう事なんですか、はやてちゃん」

リィンフォースUの問いにはやては困惑中だ。管理局の資料と異なる実情がそこにはあった。

「私にも分からへん……。ただこの世界……いや、惑星は地球のうちのどれかの住民が移民してたっつう事や。しかもかなり前や……」

エデンは地球からの移民が成功して既に何年も経過している。まだ開発途上の段階とは言え、都市もあり、軍事基地も存在するれっきとした`植民地`なのだ。はやてが驚くのも無理ない。

そこで彼女は調査を行う。(本来、こういう事は執務官の役割だが、管理局はなのはの件もあり、人材喪失を恐れるあまり、管理外世界に行ける執務官を割り当てなかった。
そこでクロノが根回しして、捜査官のはやてを行かせたわけである。かなり無茶ではあるが)`資料に描かれていることは古すぎてアテにならない`と愚痴るとエデンの大地を闊歩する。


「地球にそっくりや……移民したくなる気持ちも分かるで、これは……」

肌に触れる風、太陽の光……地球と変わりない。はやては不思議な気持ちでリィンフォースUとともに街を歩いていた。

`キィィィィン`とジェット戦闘機のエンジン音らしき音が響く。そしてはやてとリィンフォースUの頭上を一機の戦闘機が通りすぎていく。彼女らの知る由もないが、その機体は「VF-19A エクスカリバー」。連邦宇宙軍の最新主力戦闘機の初期生産型であり、特務用。
リィンフォースUはその姿に「うわぁ、カッコいいです〜!!」と目を輝せながらウットリと見つめる。

はやてはその姿に見覚えがあった。クロノに見せられた写真に写っていた`どう見てもなのはが乗っているとしか思えない`戦闘機の同型機。

「あれは……!でもどうしてなのはちゃんが……?」
疑問を募らせながらはやてはエクスカリバーの飛行機雲を見つめていた。
あの戦闘機の同型機に、何故なのはが乗っていたのか…?
それはまだ彼女には分からなかった。そして2人の頭上を飛んでいったその戦闘機のパイロットの名は`イサム・ダイソン`といった……。
これが最後の夜天の書の主`八神はやて`と異世界の可変戦闘機(バルキリー)との出会いだった。

はやてはその戦闘機が向かっていった方角に足を運ぶ。そこには一つの航空基地があった。
「ニューエドワーズ基地」(米国にあるエドワーズ基地に肖って名が付けられ、つい最近まで
「スーパーノヴァ計画」の舞台となっていた)。
広大な敷地の土地に点在する基地施設。その近くまで来たはやては思わずあるものに見入ってしまう。それは一機の戦闘機が飛行機に関してはど素人な彼女から見てもメチャクチャと分かる、とんでも無い機動をしながら飛行している光景だった。

「はやてちゃん、飛行機って……あんな凄い機動ができるんですか……?」
「私の知る限りじゃ、あんな動きはロシアのスホーイでも取れっこないで……。まるでマンガや……そう。`マクロス`みたいな……」

はやては自分が趣味で見ているSFアニメとの共通点がある事に驚愕する。
νガンダムの存在から、薄々と感づいてはいたが、あまりにも共通点が多すぎるのだ。
まるで、アニメをそのまま現実にしたような光景は、はやてにカルチャーショックを与えるのには十分に働いていた。目にも留まらぬ速さで飛ぶ戦闘機の姿に2人はただただ、茫然と見上げるだけであった。



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