−かつて、アドルフ・ヒトラーという男の造りだした狂気、「ナチス第3帝国」。彼らは滅んでなどいなかった。世界の影で暗躍し、
その再起を図っていたのだ。




勝利万歳(ジークハイル)!!」

南米のとある地で、かつてのナチスの軍服を着込んだ男達の前でナチス式敬礼を受ける、一人の眼鏡をかけた肥満体の男。
彼こそがこの過去より甦りし亡者達の統率者。「少佐」、「大隊指揮官」などの役職を持つ元ナチス武装親衛隊将校。

−彼らこそ、ナチス最後の敗残の戦闘団(カンプグルッペ)。―通称「最後の大隊」。
戦時中の「総統特秘666号」に基づいて作られ、今では少佐の思うがままに動く軍隊。

「総統代行殿に敬礼!」

彼はただ不気味に敬礼を返す。そして笑みを浮かべる。機は熟したのだ。自らの欲望を満たすために、そしてあの`最強のバケモノ`との因縁の再開を果たすために、そして大英帝国を戦火に焼くために。―アシカは陸へ上がる。かつて祖国が成し得なかった事の成就のために―


何時までも「祖国万歳」が響き渡った。そして今や禁忌となった旗「ハーケンクロイツ」が翻る……。

これぞWWU最後の置き土産。一人の独裁者の作り出した狂気の成れの果て。



「楽しそうですね代行」

一人の科学者らしき白衣を来た男が`彼`に話しかける。

「ああ楽しいとても楽しい闘争だよ 君考えても見たまえ きっと血みどろの闘争になるに違いない 素敵だろ?闘争 闘争だよ」


彼は嬉しそうに答えた。まるで闘争を心待ちにしているかのように。
この男の狂気は100年単位で熟成されてきた。闘争に自らの全てを捧げた一人の男と敗残兵達の狂想曲が奏でられようとしている。

「ミッドチルダ辺りから攻めよとの`中将`殿のご達しだ。あそこを拠点にし、同志達を募れとの事だ」
「ほう。あの中将は面白い御仁ですな」
「ご老人方の中にも私の理解者がいてくれて助かるよ。これで面倒事を避けられる」

彼−元・ナチス武装親衛隊少佐−は生前のアドルフ・ヒトラー直々の特務を実行している。
それに反発する上層部の人間を粛清する事も考えていたが、新しく合流してきた「元・中将」は自分の真意を汲み取り、
擁護してくれている。それ故、大手を振って自分の好きに行動出来るようになった。そのため上層部の粛清は行わない事にしたのだ。



―「最後の大隊」―ラスト・バタリオン―はゆっくりと`戦争の狂気`を蓄えながら静かにその胎動の時を待っていた。





―彼等とは別の地下室

祖国万歳(ジークハイル)!!」

この時代においてもナチスドイツの残党は南米で力を蓄えていた。その一端がかつて`ショッカー`と呼ばれた組織であり、それに続く組織。
`少佐`の一派が吸血鬼や人狼(ヴェアヴォルフ)を従えているのに対し、最大勢力のバダンは`サイボーグ`を突き進めたわけである。
その成果が改造人間であり、歴代の仮面ライダーなのだ。


「御苦労。少佐達の成果はどうだ?」
「順調のようですが、よろしいのですか大使?」
「良い。あの戦争狂は大いに使える。健闘を祈ろうではないか」

大使と呼ばれた軍服を着込んだ壮年の男は不気味な表情で言った。

「それと大使、‘虫けら‘共…仮面ライダーどもに対する対応はいかがなされるのですか?」
「奴らに造らせた‘無限の欲望‘の成果を回す。我らに比べれば未成熟だが、旧型の戦闘員よりは使える。連絡しろ」
「ハッ!」

男が去った部屋で大使は彼等の中で彼よりも上位に位置する地位の人物へ定時連絡を行った。

「首領」
「……大使か。首尾はどうだ」
「順調です」
「アレはまだなのか?」
「ハッ、時空破断システムですな。今しばらくお待ちを」
「そうか。してゴルゴムの世紀王―11人目の虫けらの行方は掴めたのか?」
「目下調査中です」
「`賢者の石`…か。我としても気になる物だが…計画は順調か」
「順調ですが…11人ライダーが動いています。」
「`虫けら`どもめ……準備出来次第、例の作戦を実行に移す」

彼はRXの存在を掴んでいる。そのため、RXを世紀王と言ったのだ。かつてZXを初めとする仮面ライダー達に滅ぼされたはずの
バダン帝国は未だ健在であることを示していた。そしてそれを統率する真の大首領の存在をも示していた。


では、ここでバダン帝国と「ナチス・ドイツ」の関係を紐解いていこう。


−アドルフ・ヒトラーは若き日は画家を志していた。それまで政治とは無関係であったこの男が何故、
壮年期以降に政治活動に手を出し、次第に凶行に染まっていったのか。それにはバダンの統率者たる「大首領」の影があった。

青年期に画家の夢から挫折し、「画家崩れ」となった後に第一次大戦に従軍していたアドルフ・ヒトラーが政界に進出した真の理由は不明であったが、
実は大首領がヒトラーを神託のような形で導き、傀儡化させ、彼にその道筋を示したからであった。大首領は彼を操りながら「国家力による世界征服」と、
「人類の発達」を目論見、ナチ党を育てた。だが、その目論見は血気に逸るヒトラーにより脆くも崩れ去った。

大首領は予定では「1945年」を目処に開戦を行うはずが、ヒトラーが6年も速い1939年に開戦させてしまった事で歯車が狂い、同時進行中であった日本での計画も
陸海軍にシンパを作り出した事が逆効果となってしまい、破綻してしまった。だが、彼は用意周到に「手駒」を持ち続ける手立てを実行した。
ヒトラーが自殺した後、彼はその存在をナチス高官らの前に知らしめ、指令を下した。そしてその指令に従ってナチス・ドイツ軍の残存部隊は各地に散らばり、
首領の私兵になる形で再起の時を待った。バダンはそれらの中での最大最強の勢力であり、そこから更に分かれた実行部隊がショッカーやデストロンなどの歴代組織である。

(一部組織は外宇宙から呼び出した兵力であったが)

バダン帝国はいわばナチス・ドイツの生き残りであるが、超常の存在の私兵でもあるのである。日本神話でスサノオノミコトとして伝えられし「神」の……。
それ故に彼らは「神に愛されし者」を自認する。そこにはかつて敗れし敗残兵達の執念があった。

                            −ドイツ鉤十字は未だ滅びず−


そのシンボルがどこかの地下で蠢く。かつてナチス・ドイツが第二帝政当時の栄光を求め、完成させることを夢見た海軍力「ドイツ大海艦隊」。そしてその中心には存在し得ないはずの
超弩級戦艦の姿があった。その名は「フリードリヒ・デア・グロッセ」、「グロースドイッチュラント」。そしてその艦橋に一人の男の姿があった。その男は何者であろう。



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