――地球連邦軍の反攻作戦は順調に進行していた。その作戦の途上、ハルトマン達はスイスへ侵入。ついに敵の牙城に近づいたのであった。
「サンダーブレイク!!」
敵の巨大ロボをグレートマジンガーがサンダーブレイクで蹴散らす。こういう派手な破壊活動にスーパーロボットはうってつけである。特に鉄人兵団は数が多い為、スーパーロボットで数を減らす方法が一番効果があるのである。
「これがこの世界で一番強いっていうスーパーロボット……こんなに凄いなんて」
ハルトマンは改めて目の当たりにするスーパーロボットの破壊力に息を呑む。ダブルゼータやF91でさえ戦術レベルで一騎当千の威力を見せていたが、グレートマジンガーの場合はそんな生易しいモノではない。空を裂き、雷をその手で操るというのは正に神と言っていい。
「アトミックパンチ!」
グレートマジンガーの右腕の肘から先が猛烈な回転と共に撃ちだされ、そのまま超高速回転を伴いながらザンダクロス型のロボを貫いていく。マジンガーZの発展機らしいところも見せるあたりはさすがだ。
『君等は中心部にある敵の基地へ侵入しろ!恐らくそこに爆弾がある!』
ハルトマンらは鉄也の言葉に応え、市街地を駆け抜ける。既に武器は渡されており、アサルトライフルなどのある程度の火器だ。もっとも扶桑出身である他の二人は日本刀を持参しているので、ハルトマン以外は白兵戦の心配はないが。
「ここを曲がれば侵入口だ!」
元来は航空兵である彼女らは元から陸戦ウィッチとして訓練を受けた者らに比べて陸戦は不慣れだ。そのため、敵兵士らの弾幕に押されてしまう。
「くそ!手榴弾の一つや二つもらっとくんだったぜ!」
西沢が火力不足を嘆く。敵は密集しているので手榴弾を投げ込めば決着つきそうだが、運悪く、鉄也は手榴弾を持ち合わせていなかった。なのでアサルトライフルでどうにかしたいが、魔力で威力強化を加えても中々倒れず、三人ともマガジンを一個撃ち尽くしてしまう。
「くそっ。弾切れだ!西沢さん、弾を!」
「ほらよっと!」
アサルトライフルの換えのマガジンを西沢から渡された雁淵はマガジンを取り替える。意外にも年齢は坂本と同じ西沢が一番上なので、西沢が仕切っていた。坂本が見たら“嘘だろ!?”と腰を抜かしていただろう。西沢がリーダーシップを発揮するなど。もっとも坂本の知らない所で西沢も苦労しているのだが。
――ドラえもんとのび太、御坂美琴はどこでもドアで先行してスイスに潜入し、そこでシャーリーとルッキーニ、仮面ライダーストロンガー=城茂と出会った。ストロンガーは圭子の要請により二人のお目付け役を引き受け、更にブリベンダーの要請でスイスへ赴いたのだ。
「お、まだいたのかビリビリ」
「誰がビリビリだってぇぇ〜!?アイツに続いてあんたまでぇ〜!」
「やめとけ。俺にお前の電気は効かねーよ」
すまし顔で美琴の電撃を素手で受け止める茂。茂は超電子人間なので電気エネルギーは効かないのだ。
「美琴さん。そこまでにしてくださいよ。話が進まない」
「そ、そうだよね……」
ドラえもんのドライな発言に美琴はしゅんと落ち込む。ドラえもんは見かけによらずキツイ面を持つが、ここで美琴も洗礼を受けたのだ。
「えぇと……改めまして、ぼくドラえもんです」
「野比のび太です」
「御坂美琴です」
「城茂だ。またの名は仮面ライダーストロンガー」
「あたしはシャーロット・E・イェーガー。シャーリーって呼んでくれ。こう見えてもリベリオン陸軍航空軍の大尉だ」
「あたしはフランチェスカ・ルッキーニ。よろしくね〜♪あ、これでも一応ロマーニャ空軍の少尉だかんね♪」
お互いに自己紹介しあう6人。互いに話していくうちに一番未来の生まれが美琴であり、その逆に一番過去の生まれがシャーリーである事などが明らかになった。
「なんだよそれじゃこの中で一番“ばーちゃん”なのあたしじゃねーかよぉぉぉ〜!」
生年月日の関係上、シャーリーはこの中で一番歳である事がわかると、シャーリーは自分が最も年寄りな事が地味にショックなようだ。
「しょうがないでしょう、大尉。んなこと言ったら僕達全員がこの時代だととっくのとうにおっ死んでるんですから」
「あ、俺除いてな。俺ぁ改造人間だし」
「そりゃそうだけどさぁ……」
「おっ、そうだ。ボウズ共、特にそこの青狸」
「うぬ!ぼくは猫です!……なんですか?」
お約束的展開で城茂に狸と言われ、憤慨するドラえもん。茂は既に一回会っているのだが、半分からかっている節がある。
(ってもありゃどう見ても狸だぜ。どこがどうして猫なんだよ)
(だよね。あたしもそう思う)
シャーリーとルッキーニも思わずドラえもんの風貌が完全に猫に見えない事を心のなかで突っ込む。ドラえもんが一発で猫認定された事は親友であるのび太の記憶にもない。動物の星であるアニマル惑星でさえ狸だと認定されていたので、10人中9人が狸と言っても過言ではない。
「そうだ。ミコトとか言ったな。さっきのあの電撃、ありゃ魔法か?」
「いえ。あたしのは魔法じゃなくって超能力の類です」
「超能力ぅ!?」
「ああ、その辺は俺が説明してやる。手っ取り早く言うとな……」
城茂がシャーリーとルッキーニに美琴の能力についてなんたらかんたらと説明する。超能力というと、なんとなく胡散臭いイメージを抱いていた二人も科学の力を自然にまで伸ばしていた学園都市の存在、そして人為的に超能力の類を人間に身につけさせられる力を有しているという事を。二人はウィッチとは完全に別ベクトルの力がこの世に存在すること、そして美琴の力は10億ボルトもの膨大なパワーを誇ることに驚愕する。
「じ、10億ボルトぉ!?10億ボルトったら……雷と同じパワーじゃねーか!」
「ええ。あたしなら雷を自分で起こすこともできますよ。学園都市の歴代の電気系能力者で最高らしいんで」
美琴は自嘲するかのようにいう。彼女は前に城茂と会っている。その時に色々と話を聞いておいたのだ。自分の時代の後の学園都市の行く末を。学園都市で生み出された歴代の“電気使い”(美琴以外にも、過去や未来を照らし合わせると、美琴以外にも、美琴と同種、あるいは美琴のクローンである“妹達”のような能力に目覚めた者は少なくとも時代ごとにいた。が、美琴のようにレベル4以上にまで到達できたものは少なく、美琴以前の世代ではレベル4が数人、未来では……)の中でも最強の発電量を持つという事が判明した。それでも一方通行の前では無力だった事がよほど堪えているのだろう。
「そうなるとあいつの立場ないなぁ。あんたら見てると」
「あいつ?」
「あたしらの同僚にいるんだよ。魔力を電気に変換して攻撃できる奴が」
「うん。ペリーヌじゃミコトのようなパワー出せないと思うな」
それはもちろんペリーヌ・クロステルマンの事だ。電気を攻撃に使うという点でシャーリーとルッキーニは彼女を思い出したのだろう。しかし、ペリーヌの「トネール」は仮面ライダーストロンガーのエレクトロファイヤー、先ほどの美琴の電撃に比べると非力そうに見えたのだろう。ペリーヌ当人が聞いたら憤慨する話だ。
「与太話はそこまでだ。これを見ろ。このあたりの地図だ」
「ん〜200年たってもあまり変わってないんだね」
「いや……一度、宇宙人の攻撃で地球自体が火星みたいになったからな。それはドラえもん。お前の時代にあった復元光線ってあったろ?」
「はい」
「それを解析して国を一個くらい範囲に含まれる光線を撃てる人工衛星を打ち上げて、残骸に当てたんだ。テラフォーミングを地球自体に行った後で。それも数年前に白色彗星帝国に破壊されたらしいが」
茂は風のうわさで聞いた地球の環境の立て直しを皆に告げる。ゼントラーディとガミラスの攻撃で地球が20世紀頃の火星のように赤くなってしまった事、そこをテラフォーミング技術を皮肉にも地球そのものに当てはめて言った事を。そして地球上の主要都市のいくつかはドラえもんの持っていた道具の不完全型(解析が進まず、小型化出来なかったらしい)でまるごと復元したが、それはごく少数のうちに白色彗星帝国との戦争でおじゃんになったと。
「地球が火星みたいになっちゃうなんて……」
「しかも数年でなおしちゃうなんて」
驚きを隠せないのび太達。宇宙人によって地球が一度滅びかけ、それを更に数年で立て直し、火星も地球化に成功しているなど……驚きの連続だ。
「まっ、今の地球もまだ完全じゃねーよ。ゼントラーディとかのせいで滅んじまったあらゆる動物の再生が進んでないからな」
運悪く衛星軌道上からビームで地表を焼き払われたり、海洋が蒸発した影響で、地下都市に逃れていた人間や一部の家畜を除く動物の殆どが死に絶えた影響で地球の生態系に大きな影響(ただし海底人・地底人は独自に難を逃れた。犬の王国は生き残ってるのかは不明)が出てしまった事を示唆する。のび太はこの時、バウワンコ王国の衰亡が頭をよぎったという。
「本当、宇宙人共のせいで地球はハチャメチャだぜ」
茂は宇宙人らがよってかかって地球を攻めるというSFまがいの状況が日常化してしまったこの時代に悪態をつきたくなったのか、ため息をつく。それは世界を悪の手から守ってきた彼としてはあっさり地球が自分の寝てる間に滅びかけたという悔恨も含まれているのかもしれない……。こうして出会った6人は鉄人兵団のスイス地下基地へ殴りこみをかけた。
「変んん身!ストロンガー!!」
変身し、カブトローに跨ったストロンガーを先頭に、自前のバイクのシャーリー&ルッキーニ、バギータイプの車に道具を用意し、ドラえもんがのび太と美琴を乗せて突っ走る。
――途中、立ち塞がる敵はのび太の天才的射撃、美琴&ストロンガーの電撃で蹴散らしていく。シャーリー達が驚いたのはまず、のび太の射撃センスだ。
「ドラえもん、いつものあれじゃ打撃力が足りない!ジャンボガン貸して」
「あいよ。今回のはコルト・パイソンタイプだから取り回しは気をつけてよ!」
「うん!」
ドラえもんからジャンボガンの使用許可をもらうと、のび太は小学生とは思えぬ迅速な装填を見せ、戦車をもぶっ飛ばす銃を撃つ。車からだと揺れるはずだが、のび太はそんな事を感じさせない射撃精度を見せる。この時ののび太は11歳。ルッキーニよりも年下である。それなのに軍人として正規の訓練を曲がりなりにも積んだ自分達以上の命中率を見せる。シャーリーとルッキーニはのび太の射撃センスに対抗心を抱いたとか。しかしのび太に平然と大型拳銃を渡すドラえもんも凄い。しかも運転しながら、である。そしてシャーリーらの度肝を抜いたのがこれ。
「悪いけど、道を開けてもらうわよ!」
美琴の腕に迸る紫電の光。コインを取り出し、チャリンと宙に舞う。それが指のある位置に達するとそれをマッハ3以上の速さで打ち出す。超電磁砲を使ったのだ。弾体がコインである都合上、コインが空気摩擦に耐えうる限界の50mが限界射程(弾を頑丈かつ大質量のものにすれば威力、射程は伸びる)。
「うへぇ……それがお前の能力の真髄かよ」
「そういうとこですね」
シャーリーは普通の観念を当てはめれば高校生くらいの年齢である。そのため美琴はシャーリーに敬語を使っていた。こうしている内にハルトマン達が戦っている場所にたどり着く。
「あれぇ〜!?ハルトマンじゃねーか!」
「シャーリー!それにルッキーニ!お前らもここに来てたのか〜!」
「知り合いか?」
「ああ、エーリカ・ハルトマン.同じ部隊の同僚っすよ」
ストロンガーにハルトマンを紹介するシャーリー。旧交を暖めたいところだが、今はそれどころではない。一気に突破すべく、ストロンガーは侵入口に閉められた隔壁をぶち破るべく、必殺技を使った。
「ドリルキィィ――ック!!」
超電子ダイナモを身につけてからストロンガーはドリルキック系の必殺技を身につけた。その内の通常時で撃てるドリルキックだ。7人ライダー中最強のパワーを持つため、隔壁をぶち破るなど容易い。そのまま一気に一同と共に突入した。
――さて、鉄人兵団はいよいよ追い詰められていた。ドイツを奪還され、ルクセンブルクにも攻撃が及ぶようになった報が本部に通達された。
――鉄人兵団地球攻撃軍本部
「閣下。ドイツが落ちました。もはや欧州方面は風前の灯火であります」
「これが地球人の底力だよ、君。上層部は甘い考えで戦争をおっ始めた。その結果がこれだよ」
彼、鉄人兵団地球攻撃軍司令、“ニコライ”は慌てふためく兵や将校らを尻目に冷静だった。ここ最近の本国の場当たり的使令に嫌気が指していたらしく、自分の敗戦の兆候が見え始めてもありのままに受け入れていた。
「しかし極東方面軍は未だ兵力を温存しております。増援を手配なされた方が……」
「奴は断ったよ。あいつは私のことを目の敵にしている。たとえこのまま我らが負けても徹底抗戦を選ぶだろう」
鉄人兵団も内部は穏健派と強硬派、右派と左派に分かれ、政治的抗争も多い。ニコライは穏健・中道派の首魁であるが、中国や朝鮮半島を勢力下に収める極東方面軍司令は彼と対立する派閥を率いている。そのため欧州方面への増援を断ったというのだ。
「なんと……」
「もうこの戦争は負けるよ。本国ではレジスタンスが首都に迫る勢いだというし、各戦線の補給線は絶たれつつある。どんな新兵器を持ってしても、だ。詰んだよ」
そう。古今東西、補給線を絶たれて退路も絶たれた軍隊に待ち受ける運命は死、あるのみ。鹵獲したゴーストの調整がすんだとの報告が上がったが、もはや時既に遅しの感は否めない。優勢時の歓声はもはや過去のものになり、報告されるのは各戦線部隊の崩壊と壊滅ばかりになった。
「我が戦線の各部隊の状況は?」
「既に全兵力の50%を喪失しております。一番マシな部隊でさえ54%にまで戦力が低下しており、ルクセンブルクさえ守れるかどうか」
「……我々は軍人だ。義理は果たさなくてはらならぬ。敗戦すれば支配層である我々は新たな政権によって“正義”の名のもとに一方的に裁かれるだろう。私は軍人として死にたいのだ」
彼は現政権転覆後の旧支配層らが受けるであろう市民からの報復を予期していた。それ故に地球連邦軍との戦いで死ぬ事を選んだのだ。軍人としての名誉ある戦死を。
「ゴーストを直ちに使用せよ!気休め程度だが、戦線を撹乱できるはずだ」
「了解しました」
彼らは連邦軍から鹵獲したゴースト無人戦闘機を鹵獲・改修していた。プログラムを鉄人兵団が用いる言語に置き換えるなどの作業が難航し、予定より遅れた。戦騎を逃した感は否めないが、兵団の寿命を延ばすには役に立つだろう。離陸させ、連邦軍の航空隊を襲わせた。
――ドイツ上空 連邦空軍航空隊
彼らは旧型のVF-11Cを装備する哨戒飛行隊。この日は制圧したドイツの上空偵察任務。のんびりと終わるはずだったが……。
――突然、レーダーに反応があったと思えば先頭の機体が火を吹いて堕ちていく。他の機体は何かとレーダーを目視で確認する。すると。
「あれは……嘘だろ!?ご、ゴースト!奴らに鹵獲されていたのか!」
誰かが悲鳴をあげる。AVF以降の高性能機でようやく落とせるレベルの無人戦闘機が敵に鹵獲され、運用される。これは重大な事件だ。
「おい、誰か本部に打電だ!どのうちこんなオンボロじゃゴーストから逃げられん!」
二番機が僚機に指示を飛ばす。ゴーストは無慈悲にも彼を直後に蜂の巣にした。三番機と四番機は必死に逃げた。それこそ熱核タービンがオーバーヒートする直前まで機体を加速させ、ゴーストでも機動が難しい市街地の低空を必死に飛行し、圧倒的に性能の勝るゴーストからなんとか逃げ惑う。そうしているうちに連絡が伝わったのか、AVF装備の戦闘飛行隊が救援にやって来て、ゴーストと空戦に入る。そして、VF-19Aの隊長機が数十分の激闘の末にガンボッドを熟練の技で当て、撤退させる事に成功。この日の兵団はゴースト運用テストに成功したというわけであるが、連邦軍には重大な戦局を混乱させる要素となりえる。VF-25の増産がなし崩しに決定され、A型30機、F型20機、S型15機、G型20機、RVF-25が20機づつ本国内の工廠に追加発注されることになる。
――時に西暦2200年。鉄人兵団の物語は終局を迎えようとしていた。追い詰められる鉄人兵団欧州軍。彼らの悲哀はついに破局へと進みつつあった。
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