――フェイトが歴代三人ライダーに救出されたことを一号からの通信で教えられたなのははフェイトの無事に安堵した。彼女は今、ジオン残党のMS隊と交戦していたが、サイズの差による攻撃の当たらなさと自身が磨き上げた空戦技能をフル活用したトリッキーな動きで起死回生を図っていた。

「ええいっ!」

ビルの外壁をジャンプ台代わりにし、そこから敵の予想を超えた機動で雑魚と言えるザク改へ肉薄する。そのままレイジングハートを構え、腕部を変形させた斧の刄で関節部から切断する。ザクを初め、ジオンの第一世代MSの装甲はガンダリウム合金が普及した第二世代機と違って、割合『破壊しやすい』。なのはほどの強力な魔導師であればこの程度は余裕である。


「いっけぇ〜〜!!」

推力最大でザクをそのまま腕部から頭部にかけて両断する。頭部から左腕部にかけての部分を失ったザクはバランスを崩し、そのまま倒れこむ。そして斬られた部分の損傷した電装系から火花が致命的なところへ入ったらしく、そのまま爆発した。当然ながらパイロットは機体と運命を共にしただろう。なのはは『人をその手で殺めた』という事実を再度噛み締める。これでハワイ沖海戦と併せて、2機から3機を撃墜した。『戦争だから』とこの世界の人々は言うが、長年の平和であった戦後日本の教育で育ち、優しい心を持つなのはにはまだ抵抗感が拭いきれないのだ。




「大丈夫ですか、マスター」

「ありがとうレイジングハート。あたしは大丈夫だよ……」

愛機にそう言いながらも顔を曇らせるなのは。彼女生来の優しさと相反する『命をやりとりする闘い』を受け入れなくては『血で血を洗う』この戦争に満ち溢れた世界で生き残ることは出来ない。あののび太でさえ、戦いの時は『割り切っている』。それは数多の大冒険の際に宇宙人との闘いなり、異人類(犬人類)との闘いを経験し、少なからず兵を手にかけた事や西武開発時代のアメリカ合衆国でならず者を銃で殺したことがある(ドラミからドリームガンを受け取る前に最終決戦時に実銃で3、4人は殺している)ことから来るのだろう。それでいて心優しい少年でい続ける強さを持つ。彼女はそんなのび太に対して憧れを抱くようになっていた。仮面ライダーBLACKRXらヒーローたちへの憧れとはまた別の。のび太らはどんな苦難も跳ね返す心を持つ。のび太曰く、『将来、大学には一浪して入る事になってる。しずかちゃんと同じところにね。子持ちになった頃の自分から聞くに、高校3年から大学の時期で苦労したらしいからね』との事だ。のび太はそんな未来が待っている事を知りながらも、たくましく生きている。両親や先生に毎日怒られてもめげず、不運にも負けずに。

(のび太くんはなんで戦えるんだろう……それも戦争を。やっぱり大冒険をくぐり抜けてきたせい?今は仮面ライダーさん達の一人や美琴さんといっしょに敵の基地に殴りこんだっていうけど……心配だなぁ)




なのははのび太とドラえもん、美琴の突撃ぶりにこの時は閉口していた。が、後々の青年期以降は自身が突撃大好きっ子となってしまう事など想像だにしないのだが。

「マスター、ドライセンが来ます!」

隊長機らしき機体が突っ込んでくる。ドライセンは他の機体より断然性能が良く、未だネオ・ジオンの主力の一角を担っている現行モデルだ。レイジングハートもこの頃には連邦系MSと敵勢力のMSの機種名や特徴を記憶したらしく、明瞭な警告だ。

「……一機だけ?」

「他は味方が撃破したようです」

「玉砕するつもり……!?ジオンの残党はなんでこう……!」

ジオン軍人はかつての大日本帝国陸海軍とドイツ国防軍を混ぜあわせたような気質を持つ。その一端が残党らの後がない時の玉砕。地球連邦軍はこれを『現在のバンザイ突撃』として、ある意味で恐れている。破れかぶれになったジオン軍はザンスカールやクロスボーンなどの後発勢力とは比べ物にならない気迫を見せる。時にはガンダムタイプでさえ退けるほどだと記録が残されている。

――その瞬間、どこかからか降り注いだエネルギーが彼女を緑色の光で包み込んだ。ゲッター線である。ゲッターエネルギーは瞬時になのはの意志を『支配』し、思うがままに動かした。闘争本能と怒りの感情を極限まで引き出した



「なんで……なんで…なんで!テメーらはこうも安々と命を投げ出せる!?大義や組織の目的に殉じて何になる!ざけんじゃねぇェッ!」

この時、なのはの心には『個を封じ、組織という集団に殉じる』というジオン軍人の行動に対する疑念と、ハワイ沖海戦以来募ってきた怒りが渦巻いていた。そこをゲッター線に利用される形となった。ゲッター線は単なるエネルギーではなく、明確な意志を持つ。それは『進化と闘争』。どんなに温厚な人間であろうが、心の何処かに闘争本能を秘めている。ゲッター線は闘争本能を増幅する作用があるのだ。怒りの感情を抱いていたなのははゲッター線にとっては良い材料だった。明らかに怒りを露わにした態度と普段の天真爛漫な振る舞いとはかけ離れたその言動はレイジングハートをも困惑させた。瞳にうっすらと浮かぶゲッター線に『当てられた』事を示す証である渦巻状の瞳。これはゲッター線によって一時的に人格が好戦的に変異した事を示す現象。深層心理で抱いていたあらゆる感情、想いがゲッター線の望む形で発露しているのだ。




「おおおおおおっ!」

この時のなのは当人には意識はない。ゲッター線に『取り込まれた』と言っても過言ではない闘いを見せた。その証拠に、彼女の魔導師としての本来の機動限界を超越した無茶な急激な旋回を行う。如何になのはら魔導師が空気抵抗とは無縁といっても、さすがに慣性の法則までは抜けだせない。それを超えた機動を行えば普通はどこかに無理が生じる。しかし今の彼女はゲッター線の作用で無茶な機動を行っても痛みも感じないし、恐怖も感じない。あるのはただ『破壊』。

「アハハハ……ハハハッ!」

レイジングハートのハルバードフォームを振るい、ドライセンを破壊していく。腕、頭部と。顔は完全に愉悦に浸っている時のそれで、正気を失っていた。刃でドライセンの各部を破壊し、むき出しになったコードやパイプ類を生身で引きちぎったりと、もはや狂気の域に達している。レイジングハートはもはや言葉もない。正気を失っているのがわかるからだ。ゲッター線の作用が表れている証拠に、顔にはゲッターロボの頭部と同様の模様がはっきりと表れている。高濃度のものを浴びてしまった故のこの現象だが、付近にゲッター線反応を感知したゲッターチームが確認のためにやってきた。



「なんだありゃ!」

「そうか、さっきの高濃度ゲッター線をモロに浴びてしまったんだ。俺達のように耐性がない連中はああなる。竜馬、お前も一回そうなりかけたことがあるぞ」

「そいやそうだったな。ドラゴンの対G機器の限界超えた機動やりやがるから俺たち死にかけたぞ」

「俺には記憶ねーんだが……」

竜馬は真ゲッターのコックピットで頭を抱える。その出来事とはゲッタードラゴンが完成した直後、百鬼帝国が行動を本格的に開始する少し前の時期に行われた試験の最中に起こった出来事。真ゲッター炉を開発していた研究ブロックから漏れた高濃度ゲッター線がゲッタードラゴンに降り注いだ。戦闘性能の限界値計測テストの最中だったのもあって、相手役のAI制御のプロトゲッターが襲い掛かってきた瞬間にそれは起こった。この時の竜馬はワイルドさはそんなにない、好青年的な性格であったが、それを一気に吹き飛ばす言動と化し、常軌を逸した行動でプロトゲッターを破壊し尽くした。この時、竜馬当人に自我は無かったと隼人と弁慶は証言している。この事がきっかけとなったのか、竜馬は少しづつ今のワイルドな性格となっていった。ただし隼人と弁慶に『Gで潰されそうになった』と延々と愚痴られる羽目になったが。

「早乙女博士の話だと、ゲッター線には生物の闘争本能を引き出す力がある。あの時のお前も、なのはもその状態になっている。しかしなのはには俺達のような耐性がない。あの状態が続けば『取り込まれる』ぞ!」




隼人はゲッター線が持つ一つの作用によって闘争本能が引き出された状態が続けばゲッター線の意志の操り人形と化してしまうと竜馬に警告する。竜馬は一計を案じた。外部スピーカーを最大音量にして、更に彼の最大声量で怒鳴ったのだ。

『バカヤロー!!何してやがる!』

あまりの音量で周りのビルの窓ガラスが全て割れてしまう。なのははその怒鳴り声で耳がキーンと痛くなった。その痛みで自我を取り戻し、正気に戻った。そして目の前の光景に絶句する。徹底的に破壊されて倒れ伏すドライセン。オイルまみれになった自らの手……。


「これを……あたしが……!?そんな……」



レイジングハートから肯定され、改めて自らの行為に恐怖する。ゲッターチームはそんな彼女をフォローする。

「仕方がない事だが、ゲッター線を耐性無しでいきなり高濃度で浴びちまうとさっきのお前のようになる。ゲッター線は進化を促すが、それは同時に闘争本能を目覚めさせることでもあるからな」

「闘争本能を目覚めさせたくらいでこんなになるっていうんですか、隼人さんっ!」

「そうだ。人間も生物である以上は闘争本能が誰にでもある。進化するという事は闘争して他を超えていく事でもあるからな」


隼人は生物学の観点から『ゲッター線の作用』を説明する。なのはは受け入れられるとは思えなかったが、目の前に広がる光景から受け入れざるを得なかった。



――この時から、彼女は自分が一族の中では唯一、持っていないと思っていた闘争本能があって、それが最悪の方向で表に出てしまったことを自覚。ゲッター線に飲まれないように、抑制していた闘争本能を敢えて表に出して生きていくのを選択。彼女の青年期以降の立ち振舞いを大きく変化させていく事になる。


























――ドラえもん一行は戦闘を継続していた。しかし、持ち合わせの弾薬が尽きたために全面的にドラえもんの道具で戦っていた。シャーリーは空気砲からジャンボガンへ武器を変え、銃撃戦を演じていた。

「おおっ……!なんつー反動の銃だよっ!12.7ミリの数倍あるんじゃないか!?つーか拳銃一発でなんで部屋まるごとぶっ飛ぶんだよ!?」

シャーロット・E・イェーガーはドラえもんから手渡されたジャンボガンの威力に驚愕する。ジャンボガンの大きさは拳銃ほどだが、その威力は対戦車ライフルをも超越する。手持ちの大砲と言っても過言ではない。ウィッチとしての能力を発動させてようやく相殺できる反動の銃など聞いたことないからだ。


「どんな戦車も一発で破壊できますから、これ。ただし手持ちの弾薬少ないんであんまり無駄遣いしないでくださいよ、大尉」

「わかったよ。でもお前、不思議な道具色々持ってんだなぁ」

「僕はネコ型ロボットですから」

「ねこ?狸じゃねーのかお前」

「ネコです!!」

ドラえもんはまたも自分がタヌキ認定された事に憤慨する。しかし事態はそれどころではない。


「何してんの!漫才してる暇があったら撃ちまくりなさい!」

美琴の叱咤にシャーリーが答える。

「お、おう!けどよ、お前のその能力はなんだよ!どこでそんな力を?」

「今はそんな事に答えてる場合じゃないでしょ?とにかく数を減らすことを考えなさい!」

美琴は雷撃の槍を投擲したり、電撃を放ったりして戦っているが、美琴の能力を以ってしてもハッキング不能(兵団は自我があるため、外部からのハッキングに極めて精強)な彼等は厄介な相手だ。美琴は年齢と戦闘経験値の差故に戦い方がパターン化してしまっている。おまけに兵団の地下基地には構造材に磁力で操れない彼等独自の金属が使われているため、行動に制限がかけられているのに等しい。



「……!?」

「美琴さん!……能力の使いすぎです、少し休んでいてください。僕達が支えます」

「ごめんね……。まさかこんなに早く…」

「なあに、『人生の後輩』を守るのは先達の役目ですから」

「先達か……そうだったわね」

美琴は連続で大技を使った疲労からか、ふらつきが生じる。スタミナ切れが訪れたのだ。こうなると美琴は休養が必要だ。介抱したドラえもんはふらついた美琴を休ませ、まだ体力のあるのび太にオートマチック銃を渡す。先達と言ったのは彼等の出身年代が1999年で、美琴の故郷の時代より10年以上前の年代であることに由来する。



「オートマ?リボルバーは品切れなの?」

「ゼータク言わないの!とにかくこの場の安全を確保するんだ!ストロンガーさんはともかく、他のみんなはスタミナ切れ起こったら戦うのが困難になる!僕達とストロンガーさんで支えるんだ」

「あいよ!全く、人使い荒いんだから」





のび太は手持ち武器をオートマチック銃に持ち変え、敵陣に突っ込んで銃を撃ちまくる。単なる撃ちまくりではない。アクション映画で見られるガン=カタである。のび太は銃を持った場合に限り、彼が発揮可能な最大ポテンシャルを発揮できる。その極地をこの場にいる一同に披露したのだ。


「オートマは装弾不良起こるから好きじゃないんだけどな」

愚痴りつつも、二挺拳銃を匠に操って近接戦闘を披露する。完全に小学生の域を超えている動きと同士討ちに持ち込む戦術眼……明らかにその道のプロでなければ不可能なものだ。超近距離で銃を撃ち、そこから敵を同士討ちに持ち込みつつ、撃ちまくって混乱させる。普段は運動神経0と揶揄されている少年と同一人物とは思えない獅子奮迅ぶりは他の一同を呆然とさせてしまうのに十分な効果をあげた。


「す、すごいよあれ……どうやったらあんなことできんの!?」



「のび太くんがここ最近何かトレーニングしてるのは知ってたけど……まさかガン=カタとはね。映画の中のものを実践するたぁ……驚いたな」

「ガン=カタ?」

「21世紀初めのハリウッド映画で使われてからちょくちょくオマージュされてるアクション技法だよ。やり方はあの通り。実際の戦闘に使えるかは未知数だとされてたんだけど……実際にやったののび太くんが初めてじゃないかな」

野比家の男子は代々、普段はダメダメでも意外な方面で才能を発揮する。のび太の場合は射撃。スポーツに疎い玉子からは『役に立たない特技』と馬鹿にされているが、実際は『オリンピックの射的競技に出れる』。これを玉子が知ったのは西暦2000年に行われたシドニーオリンピックであるとか。のび太は未来に行く都合上、ガン=カタの存在は知っており、『前回』の大冒険(南海の大冒険)の後、2000年代後半頃を見に行った時にガン=カタの存在を知り、のび太は密かにトレーニングを積み、この世界に来てからは実銃を使用してトレーニングを積んできた。その成果をここで発揮したわけである。ルッキーニの驚きも無理は無い。


「のび太くんでさえできるんだから、ルッキーニちゃんもできると思うよ。トレーニングさえすれば」


「あのさぁ〜何気にひどい事言ってない?」

「ぼかぁ口下手だからね」

ドラえもんは可愛らしい外見とは裏腹に毒舌家であり、現実主義者である。子守ロボットでありながら『戦争』や『防衛』に持論を持ち、イメージとの食い違いから周囲に戸惑いを与える場合が多い。なのはもその実像に戸惑ったが、今度はルッキーニであった。

「ドラえもんさぁ……口下手って言われないの?」


「よく言われるんだよねぇ。自覚もあるんだけど治んないんだよね」

(自覚あるのぉ!?いいのか子守用ロボット!ノビタはよく心折れないよねぇ)

ルッキーニは心の中でツッコミを入れる。ドラえもんはロボットというよりは『確固たる個を持つ生命』と言っても過言ではない一面がある。普段、自由奔放なルッキーニをして、思わずツッコませるほどのドラえもんの毒舌振りは語り草となったとか。








――さて、この地へ向かっている複数の陣営があった。一つはロンド・ベル隊ら地球連邦軍やプリベンター陣営。もう一つは仮面ライダー1号とジャッカー電撃隊行動隊長『ビッグワン』率いるスーパーヒーロー陣営。もう一つはドラえもんが色々な時代から呼び寄せた彼の親友ら『ザ・ドラえもんズ』。

「それにしても2200年とは……ドラえもんもずいぶんと未来にいるものであるな」

「ドラえもんの話だと随分文明も様変わりしたって話じゃねーか。どうやってやがる?」

「地球連邦が出来て久しいというこの時代、詳しくはドラえもんとキッドにきくしかないようですね」



彼等はドラえもんの親友のドラメッド三世、エル・マタドーラ、王ドラである。ドラニコフから『ドラリーニョは連れて行く』との連絡が入っており、この三人が先行して向かっていた。ドラえもんが呼んでから時間がかかっているが、これは主にエル・マタドーラがところ構わずシエスタをしたり、ドラメッド三世の道具が故障した、ドラリーニョが道に迷ったなどの理由で遅くなったのだ。


「ドラえもんの反応はどこにあるんだ?」

「スイスの地下のようです。そこで敵と戦っているのは確かです。キッドに今、確認しましたから」

「そいやドラえもん達に会うのも何年ぶりだ?」


「ここ数年は忙しくて会ってませんでしたからねぇ。のび太くん達、私達のこと覚えてるでしょうか」

「のび太とはよく連絡取り合うが、ジャイアン達とはたまに会うだけだからなぁ。王ドラ、てめー、しずかちゃんと会っただけでメロメロになんなよ?」

「わ、わかってます!」

彼等は滞在する地も時代も違うため、のび太たちと会う機会は多くない。そのためジャイアン達が自分たちを覚えているか不安なのだ。エル・マタドーラが王ドラをからかうのは、王ドラは女の子が苦手なので、しずかと話すだけでメロメロ状態に陥るからだ。だが、王ドラはこの時予想もしない。まさかドラえもんの元にあらゆるタイプの美少女が集まっている事など。



――彼等とは別に、1号の号令に従い、7人ライダーがドラえもんのもとへ向かっていた。フェイトもバルディッシュを欠く状態ながらも7人ライダーに同行する。途中、ビッグワン+太陽戦隊サンバルカンも合流し、ドラえもんのもとへ急行する。こうして、それぞれ集結しようとするザ・ドラえもんズ、栄光の7人ライダー+太陽戦隊サンバルカン+α。そしてロンド・ベルのスーパーロボット達。兵団との戦いは終局へ一直線に突き進んでいく。時に西暦2200年のことである……。



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