短編『スネ夫の無敵砲台VSドラえもん一行』
(ドラえもん×多重クロス)

パート4


――さて、無敵砲台に挑んだなのは・箒・ドラえもん・のび太。集結した彼等を待ち受けていたのは凄まじい対空砲火であった。


「反則レベルじゃないの…!弾幕系のシューティングゲームじゃ無いんだから……!」

なのはをミニ機関砲、高射砲、はたまたミサイルが狙う。その弾幕は戦争でさえ味わう事は滅多に無かったほどに凄まじく濃密なもの。高射砲の炸裂時の爆風でバランスを崩しそうになるところにミサイルが迫る。

「ディバインシューター!」

咄嗟にディバインシューターを撃ってミサイルを迎撃する。ただし一発のみ。当てれば誘爆で他のミサイル巻き込めるからだが、思ったよりも爆風が強い。

(不味い、こっちの空戦機動を読まれてる!スネ夫君のこと見直そう……敵に回すと手強い!)

なのはも箒と異口同音に、スネ夫を見直した。なのはも箒同様、スネ夫には基本的には肝が座っていない、マザコンなどのマイナスイメージからか、ドラえもん達5人の中ではもっとも軽んじていたらしい。本人が聞いたら心外だと怒るだろうが、間違ってはいないので反論のしようがないだろうが……。








――だが、スネ夫の真価は5人の中で最も現実的かつ客観的に状況を見れるところや技工系技能にある。それを悪用すればドラえもんをも翻弄できる。その通りにスネ夫は狡猾だった。なのはの退路を断つべく、多種のミサイルを放つ。どろんこミサイルやコショウミサイルだ。コショウミサイルが直撃すればおよそ半日はくしゃみが止まらず、戦闘不能に陥るし、どろんこミサイルを食らえば視界を一時的にも奪われてしまう。

「マニューバーで振り切れるか……!?」

なのはは自身の空戦機動を逆手にとってのマニューバーキルを行った。彼女は推力はあるが、小回りが効かないという飛行魔法上の特性がある。それはスネ夫もよくご存知だ。方法としては、ハイマニューバー仕様であろうが、ミサイルは自らの機動性を超えるモノには対応出来ないので、ミサイル同士をぶつけて爆発させるなどの手段を用いて、どうにか回避する。

「ちぃっ…弾幕が濃密すぎる……これじゃ近づけない!」

しかし、各種弾幕は濃密であり、なのはや箒さえ突撃を躊躇する。一発一発の威力が『人を黒焦げにできる』程度はある機関砲が、まるで第二次世界大戦中の後期米海軍艦のような濃密な弾幕を形成するのだ。これには手出しが容易ではない。スネ夫達は更に追い打ちをかける。地面が突然『パカッ』と開き、そこからなんとレールガンが放たれる。射線上にいた箒は反応できずに被弾してしまう。その時の弾丸の速度はなんとマッハ5.5。VF-19Aの大気圏内最高速度に相当する。これは美琴の超電磁砲をも上回る速度であった。



「うわあっ!」

レールガンは真上にいた箒の赤椿のシールドを突き破り、ウィング部にヒビを入れる。これで赤椿の最大速度は封じられた。

「シールドを破られた……っ!?クソ、左翼部にヒビがいっただとぉ!?バカな!?」

――これでは最高速度を出せんっ!……まさかこれが狙いか!?

箒の顔が青ざめる。さしもの赤椿と言えど、機体に、それも翼部にダメージが入った状態では最高速度は出せない。万が一、PICにもダメージが入っていた場合、ISの飛行関連の基本動作に支障をきたすだけでなく、穿千の反動を吸収しきれない可能性もあるからだ。

「大丈夫ですか!?」

「幸い、PICにはダメージは行っていないが……左翼部に中程度のダメージが入っている……これでは最高速度は出せない」

箒は赤椿の機体チェック用のモニターを展開し、ダメージチェックを行う。モニターには左翼部が黄色に染まっている。あと一、二撃もらえば動作に支障が出るレベルだ。隠しレールガンは赤椿に通じるほどの大出力だというのが確認された。なのはがすぐに発射口を特定し、攻撃を加えるが、なんとディバインバスターは開口部の装甲を貫けずに弾かれる。

「嘘っ!ディバインバスターが弾かれた!?」

―なのはは己が目を疑った。ディバインバスターの貫通力と破壊力には自信を持っていた。特に青年期以降には技術が熟達し、幼少期よりも破壊力や貫通力は増していたはず。それを容易く弾く装甲は未来世界の技術で造られた材料しかありえない。ではいったい何を……。

しかし、スネ夫達の攻撃は苛烈であった。当たりの地面から一斉にレールガンが打ち出される。それを避けるとおもちゃの兵隊達の対空砲火が取り囲む。まさに絶体絶命。

「みんな、あたしが砲撃を地面に撃って煙幕を張ります!そのうちにどこかに隠れましょう!」

「そうか!頼む!」

切羽詰まった案だが、一瞬でも隙ができればいい。それを重視したドラえもんは了承、なのはが派手な花火を上げる。この街では無敵砲台が炸裂しようが、スルーしてしまうという妙な耐性がついているので、その辺は心配ない。地面に向けて放った砲撃が炸裂し、派手な噴煙を挙げる。その隙を突いてなんとか逃げ延びる。だが、それでもその場しのぎに過ぎないことは誰もが分かっていた。すぐにおもちゃの兵隊の攻撃が襲ってくる。防御力に優れるなのはと箒が捌くが、それでも消耗を強いられ、赤椿のダメージは蓄積し、なのはも疲労を見せ始める。後から後から沸いて出てくる兵隊にうんざりし、思わずなのはは悪態を突く。


「後から後から……ゴキブリかつーの!!」

数百体ほど破壊したが、それでも追撃が緩む気配はない。ドラえもんは壁紙秘密基地を茂みの中にしき、そこに一同は隠れる。が、それもスネ吉にとっては計算の範囲内であった。























――実はこの仕込みレールガンの開口部装甲には旧式化して民生用に用途変更された超合金Zが使われていた。鍋などの転用だが、物理的強度、耐弾性はこの時代の如何な装甲材より上である。なのはの攻撃に耐えるには十分なほどだ。これはスネ夫が家へのおみやげに買っておいた超合金Z製鍋にフライパンのあまり品を設計紙から製造する段階で使ったからだ。

「ふふふ……超合金Zの装甲を破壊するにはそれを上回る超合金ニューZを持ってくるしかない。ぼくはその辺を読んだのさ」

地下司令室でスネ夫はほくそ笑む。超合金Zを破壊するには、それ以上の硬度を持つ超合金ニューZを持ってこなければ不可能である。そこの面を重視したのだ。


「ふふふ、外部の防御陣はこれだけではない。ゆっくりと楽しんでくれたまえ」

スネ吉はまるで悪の組織の首領の如きノリでこの戦いを楽しんでいた。この時代の学園都市の研究機関から試作型レールガンを貰い受け、実地試験も兼ねて投入した。データ収集をしつつ、のび太達を猛撃する。この手筈はまるでピアニストのように綿密であった。おもちゃの兵隊たちのコンピュータに細かな指令を発し、地下司令室のコンソールで管理し、運用する。これは古くから構想はされていたが、具現化してきたのは、コンピュータ技術が1980年代以降に急速に発達してからである。非公式には学園都市が50年代終わりに、バダンが1948年頃にそれを達成している。一般的な軍隊がそれを完全な形で成し遂げるのは2000年代以降のことだ。(不完全であれば60年代から始まっているが)それを高度なレベルで達成しうるあたり、スネ吉は軍事的才覚も高度なレベルで持っているのだろう。


「第二群、突撃せよ。これでおよそ数時間は抑えられる」

おもちゃの兵隊を巧みに動かし、のび太らを追い立てる。このような才覚を持ちえるあたり、骨川家の多趣味な一面が伺える。まるでチェスか将棋のように戦略を立てていく…。それはかつて、のび太のラジコンのモーターボートを沈めたばかりに、ラジコン原子力潜水艦でギャフンと言わせられ、公園の貸しボートを撃沈されて弁償させられた『ラジコン大海戦』の復讐戦かのようであった……。























――のび太達は消耗していた。赤椿は損傷し、なのはは伝家の宝刀たるディバインバスターを弾き返される。一同は焦りを隠さずにはいられなかった。

「まさかここまであいつらが強力な装備を持っているなんて……予想外だ」

「ドラえもん君、おもちゃの兵隊ってあんなに統制された動きって取れるの?」

「……いや、基本的には敵と判断したものを攻撃するプログラミングがされているが、あそこまで組織だった行動は出来ないはずだ……まさか兵隊をC4Iシステム化して動かして……」

「そんな……あのシステムが完全に普及するのは2000年代のはずじゃ」

「システム自体の理論は60年代頃に打ち立てられた古いものさ。時代ごとに進歩を重ね、2000年代に完全といえる形となった。学園都市では今頃には普及しているはずだから、そこから得たんだろう。スネ夫の一族は学園都市にも出資してるはずだしね」

「しかし、軍隊が打ち立てたシステムを一般人が知りえるのか?」

「自衛隊や学園都市の軍隊のプログラミングに関わったりすれば知りえるし、そうでなくともチェスや将棋を指していれば理論は構築できる。あとは簡単さ」

「……馬鹿な…!普通の大学生と小学生がそこまでの事を…」

「でも、箒さん。スネ吉さんは多趣味で有名だし、スネ夫君も実戦経験があります。普通の小学生じゃありませんって」

「う、うぅーむ……」


箒となのははスネ吉とスネ夫が予想以上に軍事的知識を備え、なおかつ高度に手駒をシステム化させていると予測するドラえもんの言葉に息を呑む。スネ夫はよくよく考えてみれば、幾多の冒険で実戦経験は豊富だし、スネ吉はチェスや将棋、囲碁は嗜んでいて当然だろう。二人が補完し合って難攻不落の要塞を構築している。これでは損害を被るだけだ。

「とりあえず壁紙秘密基地に隠れましょう。赤椿の修理も必要ですし」

「しかしこのままで引き下がれるか!」

「闇雲に突撃して勝てる相手じゃありません!今は屈辱に耐えるんんです」

「くそぉっ!」

箒は悔しさのあまり、思わず赤椿の腕越しに地面に拳を叩きつける。それは顔の表情にもハッキリと表れている。


――『カタログスペックでは他の追随を許さず、連邦製ISのベースにもなっている』赤椿の性能ならばこの騒動を収めることなど容易。そう思っていた。なのにこのザマはなんだ!これではあの人達の足元にも…!




箒は末期の参戦なため、機会は少ないながらも、メカトピア戦争に参加している。そんな中、どのような状況でも諦めず、道を切り開いていく歴代のスーパーヒーロー達の姿に憧れた。織斑一夏に言えば一笑に付されるかもしれない『正義のヒーロー』(一夏は家庭環境などか、正義のヒーローへ懐疑心を少なからず持っている)への羨望。約束されていた人生を棒に振り、下手すれば未来永劫にわたって戦い続けなくてはならない宿命を受け入れ、人々の希望たらんとする彼らの生き方に心打たれた箒は剣の修業に熱をますます入れ、太陽戦隊サンバルカンのバルイーグル=飛羽高之に師事を乞うなどしている。しかしそれでも現在の状況を打破できぬ事、助けに来たはずが、逆に足を引っ張っている事実に箒は打ちのめされていた。壁紙秘密基地に身を潜め、一時撤退を余儀なくされるほどの事態はドラえもんにとっても予想外だったからだ。



――数時間後


「赤椿は復元光線を当てて直しました。でもこれでスネ夫達の装備は強力なのは掴みました。下手をすればこちらが潰されます。本腰入れてかからないと」

「でも地面の隠しレールガンの開口部の装甲、あたしのディバインバスターを弾くほど強固だよ?スターライトブレイカーやエクセリオンバスターを撃たせてくれるほど甘くないだろうし」

「まさに前門の虎、後門の狼だね……隠れマント使ってもレーダー探知されたらジエンド。しかも赤椿の防御を破れる火力がデフォルトだよ?旧日本軍みたいにバンザイ突撃するのは愚の骨頂……」

「ではどうするというのだ!座して死を待てと!?」


「でも現状じゃ僕達に打つ手はない!闇雲に攻撃すれば各個撃破されますよ!!そんなことくらいわかってるでしょう!」

ドラえもんは苛立ちを隠さずに怒声を発する。可愛い外見とは裏腹の姿。ドラえもんの考えはいたいほどわかる。しかし強固な要塞の前には正直いって打つ手がない。武器は使用する前に無敵砲台に察知され、なのはの火力すら跳ね返す地面の仕込み砲台、高度にシステム化され、統制された兵隊たち……打開策がないのだ。




「せめてスターライトブレイカーさえ撃てれば……」

「ディバインバスターを弾く装甲持ちだよ?スターライトブレイカーやエクセリオンバスターぶつけても破壊できるかどうか……」

「やらないよりずっといいよ!このままじゃ街のみんなが無敵砲台の餌食になるんだよ!?」

「ダメだ、危険すぎる!」

「覚悟の上だよ!虎穴に入らずんば虎児を得ずっーじゃない!」

なのはの最大火力をぶつければ地面の砲台を一掃できるかもしれないが、無敵砲台はなのはをその前に叩くはずだ。無敵砲台の装填速度はなのはのスターライトブレイカーのチャージタイムより迅速。ドラえもんは博打は打てないとなのはを止める。しかしなのはは状況を打開するにはコレしかないと持論をぶつける。両者共に譲らず、議論は平行線をたどるかと思われたが……。



「あれ、何をしてるんだこんなところで」

「む、村雨さん!?どうしてここに!?」

「のび太の母さんから、この小山だと聞いてな。来てみたらどうなってるんだここは」

なんと、仮面ライダーZXこと村雨良がドラえもん達のもとにやって来たのだ。村雨曰く、学園都市の調査をすることになり、過去にライダー達が何人か向かったのだが、美琴の時代には城茂=ストロンガーが行き、この時代の担当が自分になり、やってきたとの事。ドラえもんから状況説明を受けると、騒動を収めるべく加勢する事を約束する。

「話は分かった。このままだと学園都市が気がついて、この街に干渉することもあり得る。その前にケリをつけるぞ」

「でもいくらあなたでも無敵砲台のレーダーに引っかかれば……」

「俺が忍者ライダーの異名持っているのを忘れてるな?虚像投影装置でレーダーは撹乱できる。バダンの技術が君の時代のレーダーに通じないと思うかい?」

「た、確かに……」

「俺が先陣を切る。俺なら十字砲火を突っ切れるからな」


そう。仮面ライダーZXは歴代ライダーのボディの最終発展型として生み出された『仮面ライダー型改造人間の究極』である。しかも歴代組織の元締めのバダン帝国がその粋を集めて作り上げた。その技術力はドラえもんの時代の日本をも上回る。それが無敵砲台に通じないはずはないのだ。胸を張る村雨の姿はなんとも言えない安心感がある。作戦会議を改めて行った上で、第二次攻撃の実行が決議された。斥候役がZX、前衛が箒、ドラえもん達は後衛だ。

「よし、行くぞ!」

ZXに変身し、ヘルダイバーにまたがった村雨の号令のもと、再度の攻勢に出るドラえもん一行。仮面ライダーZXという思わぬ強力無比な援軍に士気を回復させ、第二次攻勢に打って出た。




















――無敵砲台地下司令室

「ス、スネ吉兄さん!コレ見て!」

「!?」

「か、か、か……仮面ライダー!?」

さしもの二人もこれには凍りつく。なんと仮面ライダーが愛車を駆って突撃してくるのだ。しかもその仮面ライダーはRXを除けば、紛れも無く最強の能力を持つZX。二人は戦略の見直しを強いられる。仮面ライダーまでもドラえもんが呼び寄せるのは思わなかったからだ。ZXの存在の大きさが伺える。モニターに映し出される、ヘルダイバーを颯爽と駆って爆炎から姿を見せる仮面ライダーZXの姿は正しく、ドラえもんはたちにとっては救世主であった。



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