短編『地球連邦軍の次なる戦争準備』
(ドラえもん×多重クロス)



――地球連邦軍は一度は法律上は解体し、白色彗星帝国戦時に臨時で再編成され、その後に正式に再編された。これは白色彗星帝国との防衛戦争の過程で、退任前のリリーナが宇宙戦艦ヤマトのテレザートへの航海行為を認めた上で、最終的に白色彗星帝国との防衛戦を選んだが、やはり話し合いが通じず、直線的侵略に対抗する術は軍隊の温存しかなかったからだ。その為に博物館にあったもの含めて、現存していたあらゆる兵器が駆り出され、軍隊は事実上、復活した。戦後に人々の嘆願、治安維持の都合故、軍隊は正式に復活が採択された。その際に世論は割れたものの、白色彗星帝国のような破壊者がまた現れた場合、話し合いがXだったら、地球は終わりになるという現実が政府首脳の目の前に重くのしかかった故、抵抗の選択肢を狭めるべきではないと決断したからだ。そのため、地球連邦軍は一時と正反対に軍拡へひた走っていた。


――プリベンター本部

「本来は火消しの役割を担うはずとされた我々が、まさか軍部の補助も担うとはな。皮肉なものだ」

プリベンターは本来、軍隊亡き後の安全保障を一身に背負う諜報組織とされていた。それが白色彗星帝国戦役の結果、国民投票で軍部が正式に存続が決定したため、本当の設立目的を隠して公に公表された。ある構成員はこう、自らの存在意義を皮肉ったという。だが、元OZの高級将校らがそのまま地滑り的に移籍した事による独自の情報網は、軍部に重宝されていた。だが、やがて内戦の火種の排除という形で本来の想定任務は果たされていた。だが、彼らも手を焼いている存在がジオン軍残党である。

――ある日のプリベンター本部

「サリィ、各地のジオン軍の行動が活発化しつつある。どうやら何らかの作戦行動を起こす腹積もりだろう」

「ジオン軍の残党は、もう10年ほど経過したというのに、元気ねぇ」

「ジオン軍はジオン・ダイクンやギレン・ザビというカリスマで纏まっていた軍隊だ。キシリア・ザビがあれこれやろうとしても、ギレン派は反発した。それが戦争後期の内紛だったのだろう」

プリベンター本部で話しているのは、プリベンターの幹部であり、元地球連邦軍軍医少佐のサリィ・ポォと、アルトロンガンダムのパイロット『張五飛』だ。五飛はこの時代には珍しくなった、純粋種の漢民族(中国人)で、ガンダムのパイロットになる以前はインテリで、しかも既婚者だったという経歴を持つ。現在の性格は、亡くなった妻に多大な影響を受けたもので、愛機を『ナタク』と呼ぶのも、戦って死んだ妻への手向けに近い。現在は戦士として生きる事を選択し、そのような振る舞いをしているが、実はインテリ層であった過去を持つのだ。そのためか、トレーズ・クシュリナーダに『負けた』のを引きずるなどの脆さも持っている。

「ジオン軍はどうして、ここまで戦力を温存していたのかしら」

「一年戦争が終結した後、連邦軍は一度、大規模に軍縮をしている。その隙を突く形で、地下に潜伏した。後年にグリプス戦役でティターンズが敗れた時、怨嗟からジオン軍の部隊に転身した部隊も多い。それらも含めた戦力は現在の陸軍に匹敵し得るぞ」

五飛は冷静に、一年戦争直後の軍縮の影響が残る、連邦陸軍の旧態依然とした軍備では、百戦錬磨のジオン軍(ティターンズ残党も配下である)には対抗し得ないと分析する。何せ、地上軍で最新のMSはジェガンの初期型であり、しかもそれはシャイアン基地に4機しか無いという金欠振りを晒している。

「メカトピア戦争で投入された部隊の大半は宇宙軍の部隊だし、しかもそれも足りなくて、一年戦争の時の試作機も引っ張り出す有様だったもの」

サリィも連邦軍の財政状態の悪さを嘆く。現在の軍事予算の多くは宇宙戦艦の再建と新規建造で半分以上消えているし、MSの全軍更新などは遅れに遅れ、宇宙軍の最新鋭MS『ジェイブス』の作戦能力獲得もあと数ヶ月は先の話である。なので、前線部隊ではジェガンを未だに使い続ける部隊が続出し、独自に改造した例もあるという。ロンド・ベルは機材面で最も優遇されている部隊だが、それでもジェイブスへの全面置き換えは式典に間に合わず、当座を凌ぐために、ジェガンの規格で造られた『ジェスタ』が配備されるなどの苦しいやりくりを強いられている。

「あのロンド・ベルでさえ、ジェイブスを未だに中隊規模での装備はできていないのだから、連邦政府の財政状態は相当に悪いということだろう」

「そのロンド・ベルは今、アジアで残党掃討を行っているわ。彼らも苦労しているらしいわ」

サリィはため息を付きながら、ジオン残党に関してのレポートに目を通す。ロンド・ベルも苦労する、ジオン残党とは何者であろうか。







――ジオン残党軍の掃討任務に駆り出されたロンド・ベルは、ジオン残党の巧みな戦術の前に苦戦を強いられていた。真ゲッターロボの戦線離脱、マジンカイザーの封印などの措置が取られ、いささか戦力ダウンが否めない状態であるが、グレートマジンガーは残置しており、更にUFOロボグレンダイザーが参戦したため、相対的戦力は実質的にそれほど低下しなかった。だが、ジオン軍は百戦錬磨の練度と、ティターンズ残党が第二世代MSを提供した結果、本来あるべき戦力差を埋められたのである。


――シナノ 作戦室

「ティターンズ残党が第二世代機を提供したおかげで、地上のジオン残党は息を吹き返した。この方面の陸軍はひねられたと考えていいだろう」

「陸軍は未だにジェガンすらシャイアン基地にしかないという有様だし、高練度兵の多くは白色彗星帝国戦で死んだものな。ヌーベルジムVすら、今はダカールやニューヤークなどが中心で、あとは改修キットでジムVにしたものが大多数だ。これでは第二世代機には対抗できない」

アムロは嘆く。ジムVと言っても、アジア地域の田舎なこの地に配備されたモデルはジムUからの改修型であり、完全な第二世代機ではない。陸軍の低練度兵では、百戦錬磨のエースには対抗できないし、スペック差も埋められているからだ。



――ジムVには、大きく分けて二つのバリエーションがある。一つはジムUを改修キットで改修して仕立てたもの、もう一つは完全新規で製造されたヌーベルジムV。後者は製造コストがネモ並に高額であり、宇宙軍では数年で、より安価で高性能なジェガンに切り替えられたが、ある程度は普及した。前者はジムUの改修ということで、多数派を占める。だが、スペックが上回るティターンズ系MSが裏の兵器市場に出回った結果、完全に陳腐化してしまった嫌いがある。アムロの嘆きはそこにあった。



――シナノ ブリーディングルーム

「ジオン残党は何で、10年間も地下に潜っていられたのよ」

鈴が疑問を鉄也にぶつける。一年戦争終結からすでに10年が経過したというのに、未だに終戦を認めないのかと。鉄也は簡潔に答える。

「一年戦争後に政府は軍縮を進めたし、ジオン軍の人員的比率は地球攻撃軍が最も多かった。宇宙に脱出できなかった部隊もかなりに登る。そこが残党が生き永らえた要因だ。昔の日本軍も、一説によれば『ベトナム戦争』の頃まで残党がいたそうだし、驚くことではないさ」

「残党か……。戦争が終わったのを認めない連中って、どこにでもいるのね」


「特に、ジオンの連中はスペースノイドの一部には絶大な人気があるからな。シンパとかが結構いるんだ。今でも、残党は高地や海とかに潜んでるしな」

「なんかそれって、雪男じゃない」

「それくらい目撃されたり、噂されるってことさ。残党のMSの構成は覚えたのか?」

「だいたいね。一年戦争中のポンコツの他には、グリプス戦役の時のティターンズのMSを持ってるっていうけど、なんで持ってんの?」

「グリプス戦役が終わって、ティターンズが解体された後、ティターンズを切り捨てた政府への悪感情が爆発して、なりふり構わず、ジオンに拾われた部隊も相当数に登る。そのルートで流出した機体だよ」

鉄也の説明は簡潔だった。ティターンズ残党は組織の理念を捨て、ジオンに拾われた部隊も多く、平行時空で、あくまで組織の理念に生きる者達とは対照的な道を辿った者達が多数派である。ジオン軍の一部隊として生きる者、民間軍事会社に転職した者とに分かれる。鈴は賊軍と化した軍隊の末路に、思わず同情したくなった。











――同時刻 ゴビ砂漠

「ジオン軍の残党め……こんな砂漠にまで潜んでいたとは」

箒はロンド・ベルのZプラス隊と共に、空からジオン残党の一個連隊を探していた。ザク・デザートタイプとその現地改造型の『ディザート・ザク』、『ドワッジ』などで構成される部隊だが、砂漠戦に長けた部隊のようで、空中からのあらゆる探査からも逃れている。

「熱探知はどうだ、嬢ちゃん」

「駄目です、熱探知に反応なしです」

兵士からの通信に、箒は首を横に振る。ソナーも、熱探知も反応がないからだ。レーダーはミノフスキー粒子の影響で使いものにならず、それ以外の手段で散策しなければならないからだ。

「いったい、奴らはどこに潜んでいるんだ……」

箒の焦りも当然だ。だが、その瞬間。砂漠の中から『デザート・ザク』が現れ、3連装ミサイルポッドを一斉射撃する。不意を突かれたZプラス隊と箒は、慌てて散開する。

「ぐあっ!クソ、砂漠の中に隠れていたのか!?」

爆風で体勢を崩した箒だが、すぐに立て直し、雨月と空裂を抜き、レーザー発射機能で応戦する。が、デザートザクのシールドに焦げ目を付ける程度に終わる。

「火力が足りない……!なら!」

箒はサイズ差を利用し、懐に入り込んでの一撃を見舞う。シールドを斬り裂き、そのまま頭部のモノアイに刀を突き立てようとする。が、流石にそれは頭部バルカン砲に阻まれる。

「うぉっ!?…ザクがバルカン砲を積んでいるとは……。珍しいな。食らうとこだった」

箒はジオン系MSが頭部バルカンを持つ例は戦中には希少な事を思い出し、ため息を付く。そもそも、頭部バルカンという装備は連邦系MSではポピュラーだが、ジオン系MSでは装備例は希少である。一旦、距離を取る。

「ビームスマートガンで!」

この時期、赤椿には試験的に、射撃兵装が何種類か送られ、MS同様、機体にマウントを設け、追加武装を携行するようになっていた。前世代機と異なり、量子変換による保存機能がない故だ。箒はマウントからビームスマートガン(Sガンダムのそれのダウンサイジング。Zプラスのそれのエネルギー供給方式なので、取り回しはいい)を構える。手持ちメガ粒子砲と言えるそれはオリジナルと同等の威力を保持しており、デザートザクをシールドごと撃ちぬく。

「この私がまさか、セシリアのマネをするとはな……。だが、これで一機は倒した。他の奴らはどこだ……?」

息を殺して、砂漠に潜むジオン残党軍を探す箒。一機は沈黙させたが、他の機体はまだ潜んでいるのだ。あらゆるセンサーをフル稼働させ、敵を探す。

「クソ……こうも静かだと、ソナーでの捜索も難しい。レーダーはミノフスキー粒子が濃くて、役にも立たない……参ったな」

サマールセンサーでの捜索も行っているが、夏季のゴビ砂漠は最大で、50度を超える高温に達するため、あまり宛にできない。そして、センサーにザクよりも大きい熱源―ドワッジ―がかかる。箒はビームスマートガンを構え、撃つ。すると、砂を盾に使い、ダメージを軽減したドワッジが出現する。それも三機だ。上空に逃れていたZプラスが一機戻ってきて、MSに変形しながらビーム・サーベルで一機を沈黙させる。もう二機は箒が相手取る。

「人間より多少大きいだけの目標を、MSの照準器でそうそう狙えるものか!」

箒にしては珍しく、ドワッジの攻撃を毒突く。MSは基本、戦車や装甲車、戦闘機などまでは対応出来る照準機構を持つが、人間までは対応は困難である。そこを指したのだ。そして、赤椿の上昇力で、ドワッジの前から姿を消し、直上から必殺技を見舞う。今回は雷光斬ではなく、ある別のアニメの技だった。

「やれやれ。前にフェイトに付き合って、あの世界に行ったのが、良くも悪くも作用したな。……『アイオロス』さん、貴方の技を借ります!!……我が拳よ!!正義の矢となり、悪を討て!!アトミックサンダーボルトぉ!!」

この時期にはミッドチルダ動乱も休戦協定が結ばれ、フェイトの任務も再開されていた。この日から数週間前、聖闘士星矢の世界を探し当てる事に成功(?)してしまい、箒はフェイトの護衛についていたが、そこでひょんな事から、箒の肉体に、一時的に黄金聖闘士・獅子座のアイオリアの亡き実兄『射手座のアイオロス』の残留思念が宿り、彼の仮初の器になるという『事故』が発生し、その状態でアイオロスが生前同様の小宇宙を燃やして戦闘を行った結果、肉体にアイオロスの培った技、全ての感覚が深く記憶された。その副産物で、彼の生前の得意技『アトミックサンダーボルト』を放てるようになってしまったのだ。原理は小宇宙を燃やすだけなので、IS越しでも放てる。これが黄金聖闘士『射手座のアイオロス』が箒の肉体を依代に一時的に蘇り、一時でも彼女の肉体を乗っ取ってしまった事への詫びとして、彼女に授けた力であった。


――アトミックサンダーボルトは、光速を以て、二機のドワッジの装甲を粉砕し、頭部メインカメラを消滅させ、最後にバックパックを破壊する。箒も、まさか付け焼き刃の技が、ここまでの威力とは思わなかったらしく、しばし呆然とする。

「……これが、彼が私に残してくれた贈り物……。鍛えれば、インフィニティブレイクも撃てるということだよな……なんだが悪い気もするが、彼が見せたものの感覚は、この体に残っている。この力、守りたいモノのために使わせてもらいますよ……アイオロスさん」

――箒はドワッジを沈黙させた後、掲げた拳に誓う。生前、双子座のサガの悪人格に嵌められても、自らの信念のままに戦い、散った射手座のアイオロスという男の想いに応え、『本当に守るべきもののために、その命を賭ける』事こそが、彼への義になると。箒はこれ以後、力の鍛錬を続け、アイオロスが生前に習得した技を少しづつ、自分のモノにしていく。死ぬような厳しい鍛錬の結果、ここから一年半後には、完全なる第七感の境地に達したという……。






――残党軍は箒らの邀撃で出鼻を挫かれた形となったが、めげずに攻撃を続行した。箒らに破壊された三機をデコイに、本隊はシナノの攻撃を敢行。護衛艦の対空砲火や、直掩部隊のジェガンやジャベリンと激しい撃ち合いになった。

「おい、Eパック持ってこい、Eパック!」

ジェガン隊の隊長が部下にビームライフルのEパックを持ってくるように、外部スピーカーで怒鳴る。部下は慌てて、シールド裏に携行しているEパックを手渡す。ジェガン以降のジム系MSでは当たり前の光景だ。彼らはビームライフル、ハイパーバズーカでジャイアント・バズとマシンガンで撃ってくる残党軍に応戦する。ロンド・ベルでも、旧式化しつつあるジェガンが現役で稼働しているあたり、連邦軍の財政難が伺えた。


――この時代、MSのビームライフルの多くはライフル本体にエネルギーを充填する方式でなく、エネルギーを充填したマガジンを使用する方式に変わっていた。これは補給上の問題が大きかったためである。戦場でライフルのエネルギーを使いきっても、自力で再充電不可能であるのは痛手であり、大戦末期はそれで結構な数の戦死者が両軍共に出ている。それが問題になった戦後、デラーズ紛争時にGP01ゼフィランサスとフルバーニアンでEパックが実用化され、以後の標準装備となった。しかしながら連邦軍には『一年戦争中に作りまくったジム』の在庫整理という命題があり、ジム系でEパック式ビームライフルを装備するのは、ヌーベルジムVやジェガンの登場を待つ必要があった。そのため、ジオン軍でよく見られる『弾倉の交換』という行為は、連邦軍では優良装備部隊の証なのである。

「おし、一機撃破!」

名もないロンド・ベルの一般兵士らのジェガンが放ったビームライフルがドワッジに直撃する。同時に残党軍の攻撃も少しづつ衰える。数が減り始めたということだ。一機が跳躍し、シナノの艦橋を狙うが、それは母艦の援護に戻った箒の小宇宙を矢状に固定して放つ攻撃で撃破された。


「ふう……どうにか間に合ったか」

IS越しに、矢を番えて構えるポーズを取っている箒。その腕には、矢とその柄を象った閃光が走っている。箒は聖闘士星矢の世界から帰った後は、得た力を活かすために弓道を初めており、その成果が出たと言っていい。

――この後、残党軍の部隊は逃走し、ゴビ砂漠付近からは残党軍の脅威は取り払われた。プリベンター本部の作戦室のスクリーンの地図かには、『掃討完了』を示す印が追加されたという。この日から数ヶ月の後、ロンド・ベルに最新鋭MS『ジェイブス』が配備され、地球連邦軍全体の軍備更新が軌道に乗り始めたという。こうして、地球連邦軍は次なる戦争準備を進める。途中、グレートマジンカイザーと真ゲッターロボG(真ゲッタードラゴン)の誕生、機動戦艦ナデシコの後継艦の竣工を挟んで、暗黒星団帝国、正式名『デザリウム・ウラリア帝国』との戦いに雪崩れ込んでいくのであった。





(完)



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