短編『魔法少女達の奇妙な物語』
(ドラえもん×多重クロス)
――さて、平行世界の自分に加勢したなのは達はヴィヴィオ救出を『なのはB』に託し、スカリエッティを『殺すため』に行動を開始した。なのはAはディエチと交戦に入るも、懐に入り込み、技を見舞った。
「さて、ディエチ。お前にゃ悪いが、新技の試し撃ちの実験材になってもらう」
「なんで、あたしの名前を?」
「答える必要は無いな」
『スウッ』っと、なのはAが動く。消耗を避けるためにBJを解除し、着の身着で戦っており、まるで昔の僧兵のような出で立ちである。その為、映像越しに見るはやてBは度肝を抜かれた。
「う〜ん。その格好……まるで僧兵やんけ。驚きや」
「伊達や酔狂で、こんな格好してないってとこを見せるさ」
なのはAは『ニヤリ』と笑い、レイジングハートを変形させる。剣形態の派生である『小太刀』形態だ。それを構える。その構えは、なのはの実家の『御神流小太刀二刀流』とは根本的に異なるものである。ヴィヴィオを助けに行く最中のなのはBも映像越しに瞠目してしまう。
「なっ!こ、小太刀二刀流ぅ!?で、でも、あの構え、うちの流派と全然違う……?」
――そう。なのはは本来、実家の生業でもある御神流小太刀二刀流に興味がなかったので、青年期に護身術をかじった以外は武術に興味が無い。だが、『なのはA』は師の影響で武術を極めたために、格闘戦においても、フェイトに引けをとらない。それを披露したのだ。飛天御剣流の心得を得た事で得た俊足と『流れるような』な身のこなしで、攻撃を躱し、ディエチの頭上に飛びこみ、技を見舞った。
『御庭番式小太刀二刀流!陰陽交叉!』
一本目の小太刀で、彼女の固有武装である無反動砲『イノーメスカノン』に斬りつけ、更にその峰に、もう一つの小太刀を垂直に撃ち込んで両断する。
「!?なっ!?」
ディエチは目が点になるほど驚き、隙が生じる。そこを逃すような、なのはAではない。すぐに次の技に移る。
「5年くらいかけて、ようやく会得したばかりの技だが、お前を倒すにはちょうどいい。喰らえ!」
二本の小太刀を両手で持ち、戦闘機人でも見きれないほどの速さで動き、そこから大技を見舞う。要は高速回転中に、三度の斬撃を繰り出すのだ。これぞ、御庭番式小太刀二刀流の極意『回天剣舞』である。
「御庭番式小太刀二刀流『回天剣舞』!!」
ディエチはこの一撃を食らった瞬間に昏倒し、その場に倒れ伏す。なのはAの動きはなめらかそのもので、なのはBも、はやてB、更にアースラから観測しているロングアーチ要員も皆、呆然としてしまう。レイジングハートは『剣』としての自分に慣れたのか、主を諌める。
「マスター、回天剣舞はやり過ぎでは?」
「慣らしは必要さ。はやてちゃん、今の見た?決まってたでしょ」
「御庭番式って……ほな、反則や、反則!!士郎さんが知ったら泡吹くで」
「いやあ、おとーさんには17の頃にバレちゃってさ……お盆に、お兄ちゃんと手合わせしてたらさ。そこから泥縄的に……」
「そうやろなぁ。なんて言われたん?」
「こっちの『はやてちゃん』には話してあるけど、始めは怒られてね。でも、そこからおとーさんが『き、興味があったなら、俺が教えたのにぃ〜……なんで他流派を……』って落ち込んじゃって」
「う〜ん」
はやてBは、剣術にまるで興味がないと思っていた末娘が、実は他流派を会得していたという事実に打ちのめされたであろう、なのはの父『士郎』の姿を思い浮かべる。剣術の継承者である以上、これ以上にショッキングな事があろうか。
「でさ、その後に『お兄ちゃんやお姉ちゃんがやってるから、あたしは別にいいと思って』って言っちゃったんだ。そうしたらおとーさん、この世の終わりみたいに落ち込んじゃってさ」
「そりゃそうだ。士郎さん、末娘だから、なのはちゃんを可愛がってるんやで?そんな事言っちゃ可哀想や。帰ったら手合わせしてあげるんや」
「おとーさん、腕いいからね。お姉ちゃんには及ばないらしいけど」
「らしいって?」
「うちの剣術のことは、子供の頃から多少聞きかじった程度だったからねぇ。朧げにしか」
「なるほど。ヴィータの様子が分かったら、私も行くで」
「お〜い……はやてちゃん、自分の立場分かってんの?」
「あれ〜!?こりゃまた辛辣な」
「当たり前だって。はやてちゃんは指揮官なんだよ?かってに、現場ほっぽり出す奴があるかつーの!あの、アムロ少佐だってしてないぞ、そんなの」
「う〜、そこまで言われると、立つ瀬がないで」
なのはAは正規軍人である。ロンド・ベルは前線で指揮を取る人員が多いが、単騎駆けが多いアムロも、なんだかんだで現場はほっぽり出していない。はやてBと話していて、互いの職業の微妙な違いによる意識の差を感じるなのはAだった。
――黒江は持ち込んでいた連邦軍製IS「旋風」を駆って、自己の撃墜スコアを伸ばしつつ、グリフィスに指示を飛ばし、はやてが指揮を忘れている間も戦線の機能を維持させていた。
「ったく、はやての奴は何してやがる。こっちは大変だっつーの!」
「少佐(この時期は昇進前である)、左翼の魔導師隊が押されてます!」
「うろたえるな!すぐに部隊を予備兵力と交代させろ!体力と魔力を消耗した魔導師は手近な艦艇に降ろさせ、補給と休養をとらせろ!」
黒江は前線指揮に天賦の才能を持つ。そのため、それを見せることで、ロングアーチ要員の信用を勝ち得ていた。質量兵器を侮る者も多かった故、バスターライフルを撃ったりして度肝を抜いてやった。そして、今はビームトンファーを使ってドッグファイトを行っていた。指示を飛ばしながらである。グリフィスなどのロングアーチ隊員は指示を他部隊に伝える事に従事しつつ、黒江に指示を仰いでいた。
「中央の部隊を前進させて、対空火器代わりのガジェットを黙らせろ!敵艦前方の制空権は私がどうにかする!」
「り、了解!」
この時に駆りだされた武装隊空戦魔導師の平均レベルは、必然的に精鋭が生き残ったなのはAらのミッドチルダより大分落ちる。それを魔導師らの動きで理解した黒江は、航空機のそれと同様に、部隊単位で動かす事で『個人単位の戦闘レベルの低さ』をカバーさせた。元々、扶桑における編隊空戦の先駆者の一人に数えられていた故、それはお手の物だ。
「凄い、部隊を手足みたいに動かして、的確に敵の急所を突けるなんて」
「あそこまでの用兵、伝説の三提督にも劣らない……中々見ない才覚だ。あの人が別の世界の軍人でなければ、ウチにスカウトしたいくらいだよ」
グリフィスは黒江の巧みな用兵術に脱帽し、『スカウトしたい』という本音を覗かせた。管理局にはそこまでの大局的見地を見据えての用兵を心得た人材が、『伝説の三提督』の後の世代では、久しく輩出していない事の示唆でもあった。『ミッド動乱』が起こった場合は自然と実戦派指揮官が生き残るように『淘汰』されたおかげで、人員不足ながらも組織としての機動力は大きく増したが、そうでない場合は『海と陸の対立』は解消されていない表れだった。(海が国民らの非難で誹謗中傷を浴び、その後に連合軍や連邦軍により、組織を分割されたせいもある)
――この時に黒江が使用していたIS『旋風』は、赤椿をベースとしているが、展開装甲などがコピー出来なかった為、厳密に言えば『第3.5世代インフィニット・ストラトス』に相当する。姿は第二次改装時の赤椿に似通うが、違うのは『腕にビームサーベルがついていて、ビームトンファーとして使用可能』、『連邦軍製武装の多くのダウンサイジング版を当初より運用可能』という運用上の利点で、この時は、たまたまテスト中のMS的な『バスターライフル』、『ビームサーベル』の他には、連邦軍が主力兵器としている人型兵器の一種『メタルアーマー』の次期制式機用の実弾兵器のダウンサイジング版を携行していた。
「さて、コイツのテストと行くか」
かの有名な『D-1カスタム』用のハンドレールガンの後継型のダウンサイジング試作モデルを取り出し、構える。その火力は歩兵用にしてはいささかオーバーだが、パワードスーツが一般化しつつある23世紀地球の地球連邦軍の要求仕様には合致しており、高価な『コスモガン』を補う兵器になり得るとの評だ。
「落ちろ!」
小気味良い発砲音と共に、火線が走る。レールガンなので、薬莢の排出はされないケースレス弾を使用している。威力はガジェットU型程度は容易く撃ち落とせ、対地掃射にも使える水準である。その姿に、管理局局員の多くは嫉妬とも、侮蔑とも取れる視線を向ける。それもそうだが、質量兵器はミッドチルダにとっては本来、『忌むべき破滅の象徴』である。それ故に、『あからさまな質量兵器』を使う黒江に向ける局員達の視線は侮蔑を含めたものであった。
(やっぱり、この世界の『ミッド』は魔法至上主義気味だな。こりゃ痛い目に遭わねーと変化しないかもな。前に、はやてが真ゲッターやカイザーが極右勢力への抑止力になっているって言ってたな)
そう。ミッドチルダは自分を上回る力と出会った経験は『今の文明の確立後』は殆ど記録がない。『ミッド動乱』に至った場合のミッドチルダも、未来世界地球の超兵器である、真ゲッターロボやマジンカイザーを異常に恐れた。その理由に、『ボタン一つで惑星すら破壊でき、機械が自らの意志を持し、進化する』超常性に怯えていたからだと、はやてAが以前に話していた事を思い出す。
「『こいつら』に質量兵器の簡便性を思い知らせないとな。まぁ、うちらの知るミッドチルダ程とは行かなくとも、傾向を修正する程度はできるだろう。私にニュータイプって言えるだけの空間認識能力があれば、本式のサイコミュシステムを積んで、フィン・ファンネル撃てるんだが、そこは仕方ないな」
「チェストぉ!」
ビームトンファーを使い、ガジェットU型を斬り裂いたり、並の魔導師が出来ない空戦機動を見せつけ、ミサイル攻撃を効果的に回避する。空戦機動では、ISの空中での行動自由度はVFと同等に達する。その利点で『近接格闘型』でない砲撃型魔導師の多くが不可能な、『小回りの効きの良さ』を見せつける。
「ハッ!こんなミサイルじゃ、私にはかすりもしねーぞ!もっと撃ってきやがれ!」
敢えて挑発的な台詞を吐き、ゆりかごの中枢部でガジェットと統括しているであろう、ナンバーズの一人『クワットロ』の好奇心を煽ってみせる。この戦術的柔軟性は、彼女を軍人として優秀たらしめる才覚であり、同郷の竹井醇子や坂本美緒は新兵時代に憧れ、なのはAとフェイトAは教えを請いたのだ。
「よおし、戦国日本で最も戦闘的と謳われた、薩摩人の気概を見せてやるぜ!」
かつての島津氏もそうだが、薩摩の人間は戦闘となると、『狂戦士』のような様相を呈する。かの島津豊久は叔父の島津義弘を逃がすべく、『捨て肝』となり、壮絶な死を遂げたとされる(彼が正確にどうなったかは不明)他、薩摩人の武勇を示すエピソードは安土桃山時代までに数多い。黒江もかつての薩摩国に当たる地域の生まれであり、その遺伝子を持つ。黒江の不敵に笑いながら、多数の敵に単騎で突っ込んでいく様はまさに、『薩摩人の戦闘遺伝子の発露』であった。
――なお、黒江は戦闘機パイロットであり、空戦ウィッチである都合上、かなり高い水準の空間認識能力を持つが、現在のところ、アムロ・レイやカミーユ・ビダンなどのニュータイプと呼ばれている人々には一歩及ばない。加藤武子やマルセイユが初体験でサイコミュシステムを稼働させられたのは、固有魔法の三次元空間把握能力が何時しか空間認識能力と合わさり、未来世界で宇宙に出たりした結果、ニュータイプ能力へ昇華しつつあるからだ。アムロ曰く、黒江も『素養はある』との事だが、それが完全に開花するには、もっと時間が必要だろう。(後に小宇宙に目覚め、光速を視覚した後、おまけで覚醒したとの事。彼女のISにサイコミュシステムが追加されるのは、その後であった。)
――こちらはスカリエッティの手に落ちた『姉』のギンガと戦うことになったスバルA。『スバル・ナカジマ』という存在から見れば、確かに姉ではあるが、正確に言えば、『自分』にとってのギンガではないため、何となく気が引けるが、やるしかないとして応戦する。
――拳が空を切り、蹴りがコンクリートの地面を抉る。二人のパワーは一見して互角だが、反応速度、瞬間的パワーなどはは明らかにスバルAが上だ。すぐにスバルはギンガの拳を見切り、攻撃を当て始める。
「でぇい!」
スバルAの足刀が決まり、ギンガは思わず仰け反る。スバルAは赤心少林拳を極めたため、構えも沖一也と同様である。正確に言えば、その中の『玄海流』という分派に属する。防御を得意とする分派のため、二人の動きを第三者から見れば、一見して、圧倒しているように見えるギンガの攻撃は、スバルが全て捌いていると分かる。スバルの動きはギンガを明らかに超えるスピード、動体視力があると素人目にもはっきり分かる。
「とああっ!」
パンチが飛び、ギンガがド派手に吹き飛ぶ。スバルAは加減したつもりだったらしく、「あちゃー」と頭を抱えている。
「す、スバル……、あんた、その力……いったい……」
「凄く……ややこしいんだけど、あたしはもう戦闘機人とは言えない体なんだ。RXさんの先輩方に体を直してもらったんだけど、発見された時には、体に相当ガタがきてたらしくてね。全面的に地球の機械技術で体をリファインしたんだ。だから、今のあたしは厳密に言うと、『改造人間』なんだ。体の80%くらいを機械に置き換えた、ね。神経系はそのまま移植したけどね」
スバルAは『機械を受け入れられる生身の肉体』を持つ戦闘機人として生まれたが、未来世界への転移時に、その肉体が限界を迎えたため、仮面ライダー達によって、救命目的で地球の技術での再改造を施された。組織のオーバーテクノロジーを用いて。そのため、変身能力がない仮面ライダーと言っていいくらいのスペックを得たが、引き換えに『外見上の成長』が止まった。何にでもリスクは有るもので、スバルAの場合は『老い』を捨てざるを得なかったのだ。
「この事はあくまで『あたしの世界での事』だから、ここと全く関係ないけどね」
そう断りを入れつつ、起き上がってきたギンガは更に攻撃を強めるが、スバルAはそれを拳法の型を取りながら受け流す。
「赤心少林拳『梅花の型』。……ギン姉、そんな感情がない拳じゃ、あたしには届かないよ」
赤心少林拳『梅花』。それは沖一也を始めとする赤心少林拳『玄海流』の極意である。相手の攻撃を受け流して防御する。ギンガは経験値でスバルを上回っているはずだったが、そのアドバンケージはスバルAの前にはないも同然だった。
「くっ!」
攻撃を続けるギンガが苦しまぎれの回し蹴りを入れようとするが、スバルAはタイミングを合わせて足裏で受け、瞬時に踏み換えてギンガの引こうとした脚の側面から蹴り抜く。要は受けた足を下ろし、踏み込みながら下げてる最中のギンガの足を受けた足と反対の足で蹴り抜く戦法だ。その衝撃で、ギンガの脚のフレームに亀裂が走り、その激痛でうずくまる。無表情だった顔も、痛みに耐えかねたか、見る見るうちに激痛に顔をしかめ、涙目になる。スバルは内心で『やりすぎたー!でも、勝負に手抜きは失礼だ、全力で行こう!』と独白しつつ、次の技に入る。
『スーパーライダー水平線キィック!』
軸足を払うべく、真一文字にキックを繰り出し、軽く引っ掛けて払う。一端、双方間合いを取る。だが、スバルの改造マッハキャリバーは俊敏であり、よろけつつも立ち上がろうとするギンガの懐深く入り込む。
『赤心少林拳・諸手打!』
スバルはギンガの頭部を挟み込む様に、両側頭部に鋭い手刀を浴びせる。その瞬間、『パァン!!』と鋭い破裂音が響く。手刀があまりに速かったため、音が後から響くほどだった。崩れ落ちるギンガ。その瞬間、なんだかんだで見得を張るのを忘れていないあたりは、仮面ライダー達から仕込まれた故だ。
「ごめん、ギン姉……」
スバル生来の優しさを見せつつ、きちんとギンガを大して攻撃もさせずに沈黙させ、確保する。スバルAは『まいったな〜この世界のあたしに赤心少林拳を仕込むしかなくなったなぁ。どうしよう……』と呟き、意外な盲点に気づいた。ややこしい話になってしまうからで、頭をフル回転させて対策を考えるのであった。
――フェイトAはスカリエッティと対面していた。スカリエッティは全てを知るようで、笑みを見せる。
「これは実に興味深いな。平行時空の君がこうして自分自身を助けるために来るとはね」
「ほう……。ならば話は早い。貴様も多元宇宙論にたどり着いていたか」
「全ての物事には無限の可能性がある。君が分かるであろう事例を例にすれば、仮面ライダー1号……本郷猛にも、仮面ライダーにならず、1970年代から80年代の日本オートレース界を支えるレーサーとして大成した世界、ショッカー、あるいはゲルショッカーとの戦いで戦死し、後を2号に託した世界、彼の選択でV3が生まれずに3号として、風見志郎が改造される世界線もあり得るようにね」
この世界のスカリエッティは、飄々とした態度でフェイトAと対峙する。スカリエッティの実力は未知数だが、大抵の場合は本気を出したフェイトには及ばない。だが、この世界はスカリエッティの戦闘力が高い世界なようで、ズタボロにされたフェイトBが床に倒れ伏していることからも分かる。
「なるほどな。そこまで知っているか……。中には、私の『姉』のアリシアが私の立場に有る世界線、私が普通の生まれ方で『妹』になっている世界線もあるということか?」
「ご名答。君がこうして『武士道』にかぶれ、剣の道に入門する世界線があるのだ。そんな世界線など、探せばいくらでもあるだろう」
「そうか。それを聞いて安心したよ。思う存分に貴様をたたっ斬れるのだからな」
フェイトAは冷静に振る舞う。一見して、話に応じつつも、実際はスカリエッティを倒す算段を立てていた。飛天御剣流を極め、比古清十郎のもとを離れたあとは、独学で飛天御剣流奥義・天翔龍閃(あまかけるりゅうのきらめき)を目指している事もあり、戦闘については、フェイトBよりも頭の回転が速いと言えよう。
「そうかね。では見せてもらおう」
「!」
スカリエッティの手の鋼線状のデバイスによる攻撃が開始される。熟練されたその動きはフェイトAにある人物を想起させた。それは、今やミッド動乱で連合軍の指揮権の一角を担う、王立国境騎士団のインテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングの執事であり、自分らが敵わないと畏怖する戦闘力を誇る『ウォルター・C(クム)・ドルネーズ』である。
「お、おおおおおおお!?」
鋼線は大抵の金属を容易に切断する。これに耐えられるものは、再生能力がある人外か、超合金ニューZ以上の超合金か、進化した合成鋼Gくらいなものだ。フェイトBはこれで体を切り刻まれたのである。
「おおおおおおお!?」
フェイトAが念のために展開していたBJが薄紙のように切り裂かれ、体そのものにも傷が入る。インパルスフォームであったが、元々、防御力はそれほど重視していない事もあり、すぐに切り裂かれた。BJをすぐに諦め、着の身着の巫女装束と小具足姿になる。青年期フェイトAの端正かつ筋肉質気味なボディとの相乗効果で、妙な色っぽさがあるために、映像通信をしてきたエリオとキャロを困惑させた。
「フェイトさ……ん……!?」
エリオはフェイトAの服装に悩殺でもされたか、鼻血が出そうなのを堪えているらしき様子だった。キャロはそれを理解できないのか、困惑している。
(ハハ、なんだかんだで、エリオも健全な男子って奴だな)
苦笑気味のフェイトAだが、エリオ達と通信を交わす。エリオ達によると、外でキャロの召喚竜と敵の召喚獣が市街戦を繰り広げていたところに乱入者が現れ、事を収めたとのことだが、その乱入者とは……。
『やっほ〜、フェイト。迎えに来たわよ』
「け、ケイさん!どうしてここに!?」
『いつまでも帰ってこないから、武子が痺れを切らせたのよ。それでネーサーが送ってきた量産型ゲッタードラゴンのテストも兼ねて来たわけ。光太郎さんに頼んで、この世界の座標を特定してもらってから、次元転移したのよ』
「……お疲れ様です」
「ん?ゲッタードラゴンってことは、誰がライガーとポセイドンを?」
『詳しい事は後で話すわ。帰ったら、武子のお説教が待ってるって事も付け加えるけど。黒江ちゃんには話してあるわ』
「は、はいぃ〜……」
これにフェイトAはガクリと落ち込み、話を聞いていたスカリエッティは大笑いであった。シリアスな雰囲気がこれでぶち壊しになったのを感じたのか、スカリエッティはその様子を楽しんでいた。
――圭子らの操縦する量産型ゲッターロボG。それは新早乙女研究所が壊滅した後にゲッターロボの開発・保守点検の権利を引き継いだネーサーが鹵獲していた敵のドラゴン軍団の一体を元に、オリジナルのゲッターロボGの設計図で改修し、オリジナルに近い能力と操縦系を持たせて生産した上で、ネーサー基地の防衛用に配備予定の量産型ゲッターロボである。これはネオゲッターロボが有限のエネルギー源で駆動する都合、百鬼帝国やミケーネ帝国への決定打になり得ない故の特例措置として認められたものである。この量産型ゲッターロボGの開発と配備が、後に新早乙女研究所が神隼人の主導で再建された時のゲッターロボ軍団の礎を築く事になる……。
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