短編『異聞・扶桑海事変』
(ドラえもん×多重クロス)



――1938年、扶桑海事変の改変が大詰めを迎えるが、ここでそこに至るまでの間のエピソードをいくつか語ろう。



――ある日、竹井醇子は戦友との差を感じ、凹んでいたのを、智子と圭子の会話にショックを受けて、基地を飛び出したが、それは実は竹井を成長させるための予定調和であった。智子と圭子は『前回』の事もあり、この事を起こすのを凄く嫌がった。

「え〜!醇子に聞こえるように、わざとあの会話をやれって!?じ、冗談じゃないわよ!」

「あれで竹井にバツの悪い思いしたから、わざとやれって言われてもねぇ……」

「しゃーねーだろ。叩かれて強くなるのは刀と一緒だ、現実を知らなきゃ強くはなれないからな。お前らだって、心当たりあんだろ?」

と、三羽烏は竹井醇子の成長に必須なイベントを起こすために動き、二人が不本意ながらも、その会話を記憶を頼りに再現し、竹井がドアの向こうで聞いているのを確認してから、会話を始めた。会話の全ては覚えていなかったので、正確に言うと、その会話の途中からの再現になった。



『今の状況じゃ、あの子が居ない方が『安心して』飛べるかも』(うわぁ、わかって言うのって気が引けるわよ、圭子)

『あの竹井って子、全然、実戦に出せる練度じゃないしな』(あたしだって。でも、これも竹井のためよ、智子)

『それにあの子、海軍高官の子女なんでしょ?まさかそれで…』(う〜、なんか言ってて罪悪感が……)

『さあ。詳しいことは分からないわ』(あたしも〜〜。必要とわかっちゃいるけど、やっぱり罪悪感があるわねぇ。武子と黒江ちゃんのフォローに期待だわね…)

竹井が駆け出していく足音を聞きながら、必要な事と理解はしていても、やはり子供に真実を容赦なく叩きつけるのには罪悪感を感じる二人。この点が二人と黒江の間にある気質の違いかもしれない。圭子の方が体験が竹井に近いため、やはり罪悪感はあるものの、後でフォローをどうするか考えてたりする。それから数時間後。




――ウラジオストク 郊外


「珍しいわね、綾香。従卒にやらせないで、自分で運転なんて」

「な〜に。私も、鎮守府にいる、源田の親父さんや多聞丸のおっちゃんに用があったしな。偶には運転しねーと、腕が鈍るし」

当時の最新輸送車両である、九五式小型乗用車を運転する黒江。黒江自身、鎮守府で対策を考えている、山口多聞と源田実に用があったので、武子についてきた。竹井のこともあったため、その場に立ち会う目的も半分だった。国産初の四輪駆動車という、エポックメイキングな同車を運転した感覚としては、『ジープより落ちるけど、合格点だな』との事。

「あなた、軍務の他には釣りしかないって思ってたけど、乗り物の運転できたのね?」

「おいぃ〜、そりゃねーだろ。半分は本当だけど。『未来』で、ある人達から教わったんだよ、車とバイクの運転」

『ある人達』とは、仮面ライダー達の事だ。その時の様子を少し語ろう。


――西暦2201年の新春頃

「ふ、ふぉーー!なんだこれ!かっけ〜!」

と、自宅のTVにかじりついている黒江。この週は日本に駐屯したロンド・ベルのシフト交代の休暇で、彼女が圭子達と入れ違いで非番になり、自宅に帰って、TVをつけたところ。たまたま、戦争の影響で開催がされていなかったパリ・ダカールラリーの再開された記念の第一回大会が衛星放送のダイジェストが放映されていた。本来のスタート地点のパリが一年戦争で壊滅・水没したため、スタート地点はその周りの土地を再開発したヌーボ・パリに変更されている違いがある初の大会であった。オフロードバイク部門の様子がカッコ良かったため、それに感化され、その翌日、神奈川県でバイクショップを経営し、生計を立てている、『仮面ライダーストロンガー=城茂』のもとに押しかけた。


――城茂のバイクショップ

「何、バイクを始めるって?お前が?」

「うん」

「ハーン、さては昨日のパリ・ダカールラリーのダイジェスト見たな?」

「は、ハハ…っ」

「運転免許持ってたんだな、お前」

「持ってますよ!軍務で必要だし。数回しか乗ってなかったけど……」

「お、おう。それなら特訓だ」

「と、特訓?」

「そうだ。いくらなんでも、ドシロートに毛が生えた程度の奴にいきなり動かせってのは無茶だぜ。それにお前がほしーのは分かってる。カジバエレファントだろ?残念ながら、エレファントなんて入れてねーよ」

「そ、そんなぁ〜〜……」

「パリ・ダカールラリー仕様のバイクは重いから、お前にゃ無理だ。同じラリー仕様でも、ホンダのバハスペシャルが何台か有るから、そっから選べ。そっちのほうが軽いぞ」

茂は黒江にアドバイスしつつ、きちんと黒江の身の丈に合うバイクを薦める。なんだかんだで面倒見の良い側面があるため、後輩達から慕われているのだ。

「おし、確かレンタル用のモトクロッサーがあったな……おし、これからオフロードバイクのコースに行くぞー。車に乗れ」

「え、今からっすか?」

「たりめーだ。時間がないんだろ?今から特訓だ。きっちり仕込んでやるぜ」

ニヤリと笑う茂。この日からの6日間、彼からのレクチャーを受ける事になった黒江。途中、筑波洋=スカイライダーも加わっての特訓の成果により、最終日には、ホンダ・XRをきっちり乗りこなすまでに成長。茂から『お前の次の休暇までに納車しとくから待ってろ』との留守電があり、後日、三人が揃った日にそれは納車された。

「へぇ……これがオフロードバイク。どこが違うんです?オンロードと」

「専門用語になるが、これは正確に言えば、デュアルパーパスっていうのに分類される。デュアルパーパスっつーのは、オフロードタイプでありながら、公道も走れる仕様の奴を言うんだ。コイツが頼んだのはそれさ。ハンドガードつけといたぜ」


「へぇ。あたしもハーレーに乗ってるけど、側車つきのだからなぁ」

「お、何だ。お前はハーレーかよ?」

「軍隊で使ってるんですよ。備品だから、もれなく側車つき。だから、単車は乗ったことないんですよ」

「そうか。で、智子。お前はどうなんだ?」

「あたしは側車の乗る方専門で……ペーパードライバーだし」

智子は飛行機は動かせるが、逆にバイクはペーパードライバーであったのを告白する。軍の必要上、入隊後に運転免許は習得したが、どちらかと言うと二輪よりも、四輪のほうが得意だと話す。

「そうか、お前はペーパードライバーか。おし、今度はお前だな」

「……」

「よし。圭子、智子を借りとくぜ」

「た、助けてぇ〜!」

「いってらっしゃーい」

「薄情者ぉぉぉ〜〜!」

茂の次のターゲットは決まったらしい眼光に、智子は本能的に危険を察知し、逃げようとするが、仮面ライダーである彼から逃げられるはずはなく、その場で連行されていった。圭子はそれを手助けする態度を見せ、黒江に突っ込まれる。

「おい、ヒガシ。今のってわざとだろ」

「偶には、智子も荒療治が必要よ。部隊でいつも四輪使えるわけじゃないし」

圭子は智子のバイク免許のペーパードライバーぶりを治したいと思っていたらしく、茂を手助けした事を告げる。原隊でくろがね四起がいつも使えるわけではない故、バイクの運転技能を持つ必要があるからだ。

――これが事の真相だ――








――話は戻って。

「綾香、停めて」

「おう」

車を止め、外に出てみると、竹井がいた。当時は11歳。後年であれば、まだ小学校に通っている年齢だ。後年の『自信に満ち溢れ、実年齢よりも大人びている』姿からは想像だにできないほどの自信のなさと幼さに、黒江は元の『時間』が、如何にこの『時間』から歳月が流れたかを、改めて実感した。

「どうしたの、こんなところで」

「そんな格好でこんなとこにいちゃ、風邪引くぜ?フジ、車に乗せていこう。北郷さんも心配してんだろうし」

基地に戻り、武子の個室に三人はいた。

「はい。温まるわよ。綾香は?」

「私はカフェオレにしてくれ。ブラックは苦くてな」

「お子ちゃまねぇ。あれがコーヒーの王道よ」

「うるへー」

「……すいません。私もコーヒーは苦手で……」

「あら。あなたも苦いのは苦手?あなたのには砂糖とミルクを多めに入れたから、平気なはずよ。飲んでみなさい」


武子の優しさに、竹井は安心したのか、事の全てを話す。才能が開花しつつある坂本や若本との差に、一種の強迫観念に苛まれている事、親の七光りで自分はこの場にいるのではないかという後ろめたさなど……。

(あのメンツじゃしょうがないか……。あなたの話だと、あの子たちは『次代を担う撃墜王』になるんでしょ?綾香)

(ああ、そうだ。坂本は北郷さんの後継者としての地位に落ち着いて『サムライ』、若本の奴は扶桑最強になり、『虎徹』って渾名で通る撃墜王になる。あいつらは早熟型だが、竹井は晩成型だよ。こいつも十分、エースになる『器』だ)

竹井に眠る才能を買っている黒江。そして、彼女自身が言いだしっぺをする形で、竹井に助言する。

「いいか、竹井。確かに撃墜王ってのは、みんなのあこがれに値する地位で、そこを目指すのは皆、同じだ。だが、ニュース映画や新聞を賑わす事だけが私達のすべき事じゃないぜ」

「そうよ。例えば、基地の直掩部隊、地上部隊、整備兵、炊事班も。どんなに優秀であっても、一人にできることは限られているわ。だから、『みんなで支え合う』。エースの戦果がみんなの励ましになるのなら、心の支えになるのなら、エースを支える人達も同じくらい立派って言えるんじゃないかしら?」

「そうだ。機体の整備兵には、特に気ぃ使っとけよ?あいつらのおかげで、私達は戦えるんだからよ」


「ほら、コーヒーが飲めないなら、カフェオレにして割ったり、砂糖入れればいい。単純だけど、個人の技量や戦果なんてのはその程度の事よ。大切なのは方法じゃなくて、どんな『結果』を残すか……よ」

武子はさり気なく、持論を織り交ぜながら竹井を優しく諭す。部隊運営で苦労している故の持論だが、個人戦果よりも部隊全体のコンビネーションや戦果を誇った後々の姿を思い出し、ちょっと懐かしく思う黒江だった。

「でも、ちょっとずるいです……そんなの」

「そんなことないわ。部隊運営なんて、戦うよりも大変なのよ?予算請求に、書類仕事や上層部との折衝とか……智子や圭子は戦線で突っ込むし……」

「私が上に掛けあって、予算多めにしてもらってるから、予算が火の車にならないですんでるけど、あいつらは私より突撃大好きだしな〜」

と、さり気なく自分の苦労も混ぜる黒江。三羽烏は全員が部隊運営術に長けているが、その中でも一番、冷静に振る舞えると自負する(スィッチが入れば、一番恐ろしいが)分、折衝で苦労していると教える。

「私に……できるでしょうか?」

「それは貴方(お前)次第ね(だな)」

と、武子と黒江は言い、竹井を脱皮させるきっかけを作った。竹井は以後、二人を姉のごとく慕うようになる。青年期以降には二人を『悪くいう者は『上官であろうと、容赦なく制裁する激しさ』を身につけ、青年期坂本と若本、西沢曰く、『普段温厚な奴が本気で怒ったら、死の恐怖を味わう事になる』と、本気で恐れる事になるので、どこでどうなるかわからないと、後に北郷は語る。



――実際、ウィッチとしての戦闘の才能に特化している坂本や若本と違い、部隊運用や運営にも才覚があるため、『つぶしがきく』。坂本が後年に上層部から嫌われる要因は、『戦闘に勝つことしか考えられない』点であり、若本はそれを自覚し、最前線に立ち続けたが、坂本は北郷に憧れ、彼女のようになりたいと願った結果、『気質的に、裏方に向いてないのに、裏方に上がり後の進路を選んでしまった』。それが黒江も読めない、坂本の後半生の悲劇につながっていく。その根はこの時期に既に芽生えていた。



――またある日。

「でぃぃや!」

智子がこの日の任務で、対地掃射で被弾したストライカーを投棄し、『飛び込み蹴りで間合いに入り、拳の乱打の後に膝蹴りで打ち上げ、腕に持つ刀で両断する』という、智子が未来世界でプレイしている、『ロボット物のシミュレーションRPGの』登場ロボの必殺技を再現した動きを見せた。武子は、その荒い戦法に頭を抱え、黒江は大笑い。しかも、殴る際に、魔法繊維で自作したナックルガードを使ったため、方法論として、スバルのリボルバーナックルに着想したと分かる。それを見ていた坂本は『格闘こそ最強なんだ……!巴戦の技量を鍛えないと』と考えるようになっていた。


(格闘戦を鍛えないと……招来、あの人達に追いつくために)

と、独白する。このように、坂本は三羽烏の強さを表面上で判断して曲解してしまい、編隊指揮よりも、『個人の強さ』を重要視してしまう考えに青年期には完全に至った。それは若本と別れた後も、西沢義子という『天才』を得て、細かい事を指示しなくても『自分の動きを読んで、応じてくれる』熟練の僚機と組んでいた期間が長期に渡った事、坂本が青年期を迎える頃の海軍新鋭機が巴戦重視の零戦であったこと、また、自分がそうであったように、『ウィッチはじっくり育てるもの』と認識していたのも、ウィッチ生活の後半以後において、立場をいたずらに悪化させてしまう事になる。戦時下の1944年以後に持ち上がる、新人育成の大量速成カリキュラムに反対してしまった事も上層部からの不況を買ってしまい、ウィッチ最大の後援者である源田実でさえ、『坂本は頑固なところあるから、手元においておくには面倒で、扱いにくい奴だ』と評を下すに至る。軍生活後半、坂本は『戦時下では有能だが、平時に生きるには、あまりにも我を通しすぎる』というレッテルを貼られて過ごし、戦時における華々しい活躍と裏腹の質素な退役式典が、皮肉にも、その証明となってしまった。




――基地に帰ると、当時の豊田貞次郎航空本部長が訪れていた。北郷や三羽烏と話があるようで、三羽烏は北郷に同伴し、会談に立ち会った。



「艦政本部が新型空母二隻を起工させた。三羽烏の諸君は、それがいかなる空母か理解しているだろう」

「翔鶴型航空母艦ですね。257.5m、30000トンの『大型正規空母』の」

「うむ。当初は2隻のみだったが、同盟国のイラストリアス級航空母艦の登場を鑑み、我が国も三番艦の計画を装甲空母に切り替えた」

――この出自を持つ空母は『悲運の新鋭空母』と名高い大鳳であった。同級は翔鶴型航空母艦が母体であり、当初は二隻の起工予定が、戦況の悪化で単艦で完成した。用兵側は『装甲した翔鶴型航空母艦』と扱い、同級三番艦と見られていた。扶桑海軍は計画を早め、1943年までの竣工を見込んでいた。ところが、そう問屋がおろさない。搭載機の策定が次世代機に変わってしまった事、エンジン取り付け中の火災、完成しても、肝心の次世代機が出揃わないなどの不幸により、実働はやはり1944年にずれ込む。しかしながら未来情報を得て、ジェット機搭載になってからが本番であるが、それは未来の話。

(装甲空母……ああ、大鳳か。ジェット機搭載になるから、あれが装甲空母って忘れてたぜ)

「大鳳型ですね?改翔鶴型航空母艦の」(用兵側はそう認識してるから、嘘じゃないな)

「それなのだが、艦載機を現在の新鋭機基準にするか、次の世代を待つか、揉めておるらしくてな。艦政本部の要請で、『儂が聞いてくる』事になったのだ」

(なるほど。私達を『試してる』な?)「なるほど。そういうわけですか。次の次の世代は全幅が10.7m、全長は16.61mになりますので、それを入れる寸法にしたほうがいいのでは」

「なぜ、そんなに大型になるのだ?」

「閣下はカールスラントで研究中の『噴流推進機関』をご存知で?」

「いや……?」

「レシプロに取って代わる新世代の機関です。音の壁を破るのも容易にできる推進力を叩き出します。ただし、空母に積むには20mの長さと、30トンまでの重さが限界ですがね」

そう。コスモタイガーやVFもその辺りが基準になっている。F-14世代の大きさがその後の空母艦載機の基準になったためだ。

「なるほど。その世代は『いつから出始める』?」

「45年には、カールスラントで部隊配備された奴がバンバン飛んでます。うちも44年から研究し、46年までには国産化できますよ。ただし、空母の格納庫の高さ5mは必須です」

「あいわかった。しかし、その世代がそれ以前を駆逐するのかね?」

「戦闘目的のはそれらが席巻します。それ以外でならプロペラ機はありますし。偵察機は電探装備が将来的に望ましいです」

「電探?なんだねそれは」

(あ!そうか、電探が注目されるの、バトル・オブ・ブリテンの時だよ、ちくしょう!……ん?あれ、確か20年代にはアンテナの論文出てたぞ?この人が無知なのか、海軍が技術音痴なのか?)

陸軍では既に研究段階の電探だが、海軍は目にもくれなかったが、バトル・オブ・ブリテンを目の当たりにしたことがきっかけで研究を始めたにすぎない。

(思い出した。海軍にゃ『闇夜の提灯だ!』とか言って疎んじた夜戦バカがいたんだ!誰だ、あんなの言ったの。おかげで恥を後世に残したんだぜ、あれ)

黒江はレーダーを知らないか、無関心な海軍に呆れた。しかしながら説明しないと話が進まないため、簡単に説明する。加えて、陸軍の研究所はもう、その試験が間近いと教える。

「うぬ、陸軍の分際で生意気な」

(来た!この時代の海軍高官にありがちな反応!自分たちが開明的だと思ってるクチ。と言っても、うちらも似たようなクチで、どっちもどっちなんだよな。この体質。……もううんざりするぜ。エアバッグといい、この国はどこの時空も、『自国が凄い発明してる』って発想がないのか?)

日本は、軍隊に限らず、役所もだが、自分の国が発明した技術が他国で有効性を証明された途端に、慌てて採用する例は少なからずある。車のエアバッグも実は日本がその原理を発明した。黒江は、日本の『他国で実用化された技術の改良なら一流だが、すごいアイデアが自国から出るとは思っていない』体質にうんざりした(ただし、人型機動兵器のアイデアは日本人技術者らのアイデアであり、バトルフィーバーロボが1979年に完成している)。

「とにかく、近い将来にそれが世界を席巻します。そちらの姿勢いかんでは、ロマーニャにも遅れ取りかねませんよ?」

「うっ!あのパスタ野郎どもにさえかね!?」

「そうです(ロマーニャをバカにしすぎ。ルッキーニが聞いたら怒るぞ〜今の。フェラーリを見ろ、フェラーリを!あんなかっけーもん作れるんだぞ)。」

「今日はありがとう。いいことを聞かせてもらったよ」

と、豊田提督が部屋を発ったあと、三羽烏の内、政治に明るい黒江の独壇場だったので、北郷も感心した。

「凄いな。豊田提督と渡り合うとは……。感心するよ」

「いやあ〜未来の事を話しただけっすよ。本当に。元の時代だと、苦労してますから」

黒江は北郷に褒められ、ちょっと誇らしげだった。最近は年長者として振る舞う事が多くなっり、自分よりも年長者に関心される機会が減っていたため、こういう事を偶には味わいたいのだろう。(最も、元から外見的にあまり年長者には見えず、童顔なのだが)この時代における年齢を考えれば自然とも言え、三羽烏で最年長である、圭子はそんな黒江がちょっぴり羨ましいようだった。









――この時に話題に出た『大鳳』ほど、未来情報によって運命が転換した空母もないだろう。この時の会談で予め、寸法は史実より幾分、大型化していたが、期待の装甲空母でありながら、『魚雷一発で帝国の運命共々、あえなく轟沈した』史実に怯える川滝重工業関係者の親心、連邦の技術により、ジェット機空母に徹底改造された。元々、後世の空母に割合近い姿であったため、ジェット対応化後は、ジェット機の大きさで、時期によるが、搭載機数が概ね、40機前後にまで減ったものの、外見上はレーダー装備と近代武装、カタパルト装備以外は、原型にアングルドデッキをつけただけに見えるだけのものであったが、性能向上は確かであり、太平洋戦争の武功艦に名が上がるほどの活躍を見せ、2000年代に建造される第三世代スーパーキャリアに名が受け継がれたとの記録が残されたという。なお、大鳳が被るはずの運命は等価交換というべきか、リベリオン本国軍の『ユナイテッド・ステーツ』が被り、彼らを顔面蒼白にさせたという。


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