短編『ジェノサイド・ソウ・ヘブン』
(ドラえもん×多重クロス)



――大和型戦艦。その最後の艦にして、建造計画当時は最強を謳われた『ラ號』。23世紀には波動エンジンを主機関する形で強化改造が施されており、波動砲がない以外はヤマト型宇宙戦艦と同型艦と言って良い。そのため、次元転移能力も持ち、シンフォギア世界にGカイザーを運び込んだ艦でもあった。ラ號は同型艦の中で最も原型の大和型戦艦の面影を残すため、その威容が驚かれた。しかもオリンポス十二神の一柱の御召艦の名誉に預かっていたのだから――




――魔法少女事変直後――

「あれがばーちゃんの仲間の船かよ……昔の戦艦そのまんまじゃねぇか」

「空飛んでる以外は戦艦大和ですよ、あれ!」

「と、言うことは、あれは日本海軍の!?」

「正確に言えば、日本海軍の遺産を拾った地球連邦軍が改造して使ってる艦だ。計画は紛れもなく日本海軍で、発見したのが数百年後の世界の人間なだけだよ」

「つまり、終戦時の秘密兵器をそのまま秘匿してたの?」

「建造途中でな。2000年までの長い年月で完成させていたのを、更に宇宙戦艦に大改造したのがあれだ。改造しまくったから、当時の原型は見かけしか残ってないぞ」

ラ號は見かけは建造当初と殆ど変わっていないが、元々の大和型戦艦より遥かに巨大であり、船体にチェーンソーとドリルを持つ特殊な形状なので、シンフォギア世界の港で降りられそうなところは無く、ラ號がニミッツ級空母よりも巨大であったため、メガフロートをラ號が自前で建造し、そこで臨時に停泊することとなった。シンフォギア世界の日本はドリル戦艦、しかも第二次世界大戦の大和型戦艦が空を飛んで現れたのは、予想外も予想外だったので、厳重な報道管制が引かれた。『超常災害対策機動タスクフォース『S.O.N.G』(日本の特異災害対策機動部の後身で、日本政府から国連に管理権が移った)と、連邦軍代表者のラ號艦長の神宮寺十郎(かつての神宮寺八郎大佐直系の末裔)大佐、黒江と智子が仕えているオリンポス十二神はアテナこと、城戸沙織との会談も停泊しているラ號で行われた。会談は風鳴弦十郎と、その兄で翼の父親『風鳴八紘』がシンフォギア世界を代表する形で行われており、その事は黒江のシンフォギア世界での使命が終わりを告げた事でもあった。


――食堂――

「貴方の迎えが来たわけだけど、調の姿で戻るつもりなの?」

「いや、調の消息を私の弟子に探させている。その結果待ちだな。元の姿を取り戻さんといかんしな。それに、アテナの推測が正しければ、調は私の姿を使わざるを得ない状況になってるはずだしな」

実際、調は黒江の容姿で古代ベルカ時代で十年の歳月を過ごしており、幼少期のオリヴィエ・ゼーゲブレヒトに拾われ、彼女の側近となり、古代ベルカの戦争の終結と彼女の悲劇を目の当たりにしていた。その十年の内に、元来の内向的な性格は黒江の成り代わりの際の共鳴と、十年の生活で改善されている。そのため、姿が黒江の本来の姿とほぼ同一にまで成長しており、違うのは背丈くらいなものだった。

「調がどうなっているかは予測ができないの?」

「別の世界に飛ばされて、その世界で何年過ごしたかにもよる。10年から20年なら御の字だ」

「御の字って……」

「30年以上いてみろ、日本語、いや、地球の言語忘れてる可能性も出てくる。そうなっていても、この艦の技術力なら、肉体年齢は容易に調整できるからな」

「なっ!?」

「時間のズレだったら、リカバリできるしな。時間操作も可能なんだよ、この艦を宇宙戦艦にした時間軸だと」

マリアに言う。黒江の予測は当たっており、調が過ごした時間は10年ほどであり、フェイトが探し当てた時には、22歳当時の黒江と同一の容姿になっていた。古代ベルカが戦後にオリヴィエの死でミッドチルダに飲み込まれて解体し、素浪人のような生活を送っていたところを発見されたのだ。(ミッドチルダは古代ベルカの解体がロストロギアの暴走で決定的になったところにつけ込む形で強国化したと判明した)そのため、漁夫の利を得た形のミッドチルダのことを好いてはいないが、オリヴィエの年月を経た忘れ形見とも言えるヴィヴィオの存在を知った事、ヴィヴィオに在りし日の主の面影を見た事から、ミッドチルダが再編した世界を受け入れた。調が黒江の弟子になるのを選択した理由は、恩義と亡き主への忠義であり、古代ベルカの騎士道を貫いている証であった。

「ん、タブレットにメールだ。……古代ベルカに飛ばされていたか。そこで10年、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトに仕えていた……。……マリア。私の予測は当たったんだが、なんと言おうか……騎士になってたみたいだぞ」

「なッ!?」

「姿は私本来のものだが、その世界で騎士になってたらしくて、こんな姿になってるそうだ。弟子が送ってきた写真なんだが」

「これが貴方本来の容姿……?」

「ああ。22ん時の私と同一だ、これは」

「あなたは本来、この姿なのね……」

「今となっては、あまり容姿は意味がないがな」

黒江は当時、既に能力で容姿を変えられるようになっていたので、容姿に意味はあまりないと明言する。実際、調を帰還させた後、老師・童虎に身元引き受けを頼んだ時には箒の姿を取っていた。シンフォギア世界で調の役目を代行する役目があったからこそ、調の容姿で固定されていたのだ。

「こいつと出逢えば、私達はお互いに本来の姿に戻る。が、一つだけ違うことがある。こいつは経験と私との共鳴で、以前と性格が変化してる公算が強い。私譲りの性格になっている可能性がな」

「魂の共鳴が起こったというの?」

「それと互いの同調だ。恐らく、こいつは少なからずは私の戦闘テクニックや負けん気を引き継いでいるだろうし、シンフォギアの同調率もグンと上がるはずだ。やってみないと分からんが、恐らく、リンカーの服用は必要無くなるはずだ」

「それが小宇宙の奇跡……。それと、あの子が貴方の戦闘テクニックを?」

「ああ。技能が受け継がれていれば、見かけによらず、戦闘能力は侮れなくなるぞ?この私の戦闘能力を引き継ぐんだからな」


黒江のその言葉は的中し、調は黒江から戦闘能力を引き継ぎ、マリアや翼と同等の戦力的安定性を持った。だが、デザリアム戦役直前の段階では、その全ては完全にはモノに出来ておらず、その点では修行し始めの切歌と同様の状況にあった。だが、黒江の必殺技の一部は確実に身につけていた。アークインパルスと雷光斬、双炎斬である。これは黒江の闘技の中では比較的難易度が低いため、調の今の技能レベルでも再現が可能であった。




――ドラえもん世界(未来世界)の西暦2000年 6月某日――

「学園都市って、2000年の時点でパワードスーツ作ってたの!?」

調のシンフォギアは当然のことながら、学園都市の興味を引き、暗部部隊の標的となった。予測はしていたが、ススキヶ原の外縁部に位置する学校の裏山近くで暗部部隊の襲撃を受けた。パワードスーツの型式は2010年代のそれより一世代前のものだが、物理的防護は凄まじく、シュルシャガナの鋸を正面から跳ね返すほどに強力であった。

「嘘ッ!?シュルシャガナの鋸を弾く!?だったらッ!!」

黒江から引き継いだ能力の一つ『空中元素固定』で、ショルザースライサーを形成する。アームドギアが通じない場合の非常手段だが、魔術的防護も警戒して、先手必勝で発動させた。この辺りが黒江の思考がかなり入っている点だ。剣での斬撃に戦法を切り替えた。ヨーヨーではなく、剣を選ぶのは古代ベルカでの経験と、黒江の記憶が相互に作用した結果である。これについては、ギアの機能を介さない能力なので、熟練度に関係なく好みの武器を銃器だろうが、刀剣であろうが、自由に形成できる。言うならば、キュー○ィーハニーの空中元素固定装置を能力として得たと同じ事である。構造の理解力、分子組成レベルで構造が頭の中に思い浮かぶほどに覚えておけば、超合金Z系の超合金製の武器も容易に作れる。黒江の超合金ニューZαへの理解力の高さがその記憶を引用した調へプラスに働き、ショルザースライサーを作れたのだ。

『ショルザースライサー!!』

二刀流で形成し、それを振るう。剣筋は黒江のそれと古代ベルカのそれの複合で、学園都市のパワードスーツへ情け容赦なく浴びせる。学園都市暗部の非合法部隊は、御坂美琴に言わせれば『人間の皮を被ったトカゲ』なので、全く手加減の必要もない。殺しても当然の下衆共の集まりである。事件にしないため、死体も機体も完全に消滅させる必要もあるが、とりあえず、行動不能者の数を増やすために剣戟を見舞う。

「はああっ!」

この時に役に立ったのは、黒江の飛天御剣流と示現流の記憶である。特に一対多の状況では、飛天御剣流が役に立った。シンフォギアを展開していた事も幸いし、飛天御剣流を難なく放てた。黒江からフィードバックされた『逃げることすら許さん』という軍人の思考もあり、パワードスーツごと切り裂かれる者が続出する。学園都市がセールストークに使う、『硬い装甲で全面を覆い、内部には電力駆動の機械装置が備えられ、非常に高い防護性能と運動性能を有している』という謳い文句も、聖遺物由来の力であるシンフォギア、超合金ニューZαという、全宇宙で2番目に硬い合金で構成される刃には無意味であった。彼らはシュルシャガナの鋸を弾いたものの、ショルザースライサーには全くの無力であり、機体ごと中の人間が龍槌閃で『開き』にされて倒れる者、土龍閃で岩をぶつけられて気を失う、龍巻閃でまっ二つになる者と、阿鼻叫喚であった。

(これが飛天御剣流……。陸の黒船って恐れられた一対多の実戦本位の殺人剣……。師匠、覚えるのかなり苦労したんだな)

元来、シュルシャガナのギアの脚部は高速戦闘前提のローラー内蔵の構造なため、踏ん張りが効かない円柱状の形状だが、それを小宇宙などの併用で補っている。がに股でどうにかする手もあるが、そこは15歳の乙女。黒江と違い、年相応の羞恥心があるらしい。(黒江は転生もしたので、羞恥心はとっくの昔にかなぐり捨てている。その点が違いだ)


「飛天御剣流……『龍巣閃』ッ!!」

相手の隊長格をパワードスーツごと斬り刻む。バラバラに斬り刻み、スプラッター映画さながらの場面を出現させる。

(蹲踞が安定するって言うけど、相撲取りじゃないし……どうするかなぁ)

蹲踞は相撲取りが行う姿勢のイメージが強いらしいが、実際は剣道などでも作法として用いられている。事が終わったら剣道経験者の箒に、死体処理と併せて、相談してみようと考えるのだった。

「貴方達にかける慈悲はないの。だから、あの世に行ってくれるかな?」

黒江の影響か、かなり腹黒い笑顔を浮かべる。黒いオーラがムンムンに出ており、黒江が持つ、敵へはドSなところが表に出たのだ。一見して、あどけなさの残る無垢な笑顔だが、言うことはドSそのものであるため、凄まじいギャップである。

(アチャー……。ついドSな事を。これも師匠の影響かな、これ)

『はぁ!』

ショルザースライサーを連結させ、そこから隊長機を始末するための奥義を発動する。練度的に奥義の天翔龍閃はまだ打てないので、その代替も兼ねた一撃を放った。

『そぉぉぉえぇぇんざぁぁぁんっ!!』

炎の波動をツインブレードで放ち、炎で敵を焼き尽くす。更に向かってきた者には。

『アーク・インパルスッ!!』

そのままの勢いで、別の相手にツインブレードを突き刺し、そこからX文字に相手を斬り裂いて極めた。双炎斬からアークインパルスへ繋げる連続技である。これは黒江が小宇宙習得後も用いる通常技の一つであり、その中で『決め技に分類される』ものだ。また、戦うことに神経を集中していたため、シンフォギアのポテンシャルは出し切ってはいないのだが、小宇宙への覚醒の影響により、この時点で、以前のLINKER使用時と同等のポテンシャルを発揮していた。それでいて、時間経過による適合率低下と、ギアの解除の心配はないのが現時点での『進歩』と言える。

「シンフォギアのポテンシャルを出さないで、転移前の全力と同じ力を出せる……。強くなってるんだ……私」

相手を皆殺しにした事に、まったく後ろめたさを感じなくなっているのは、古代ベルカでの血で血を洗う戦争体験で、『ただ殺されるなんてごめん被りたい』という考えを抱いたのが由来だろう。敵の死体処理よりも、自分が強くなった事が先に立つのもそのためだ。

「あっ、死体処理どうしよう……。箒さんに聞いてみよう」

久しぶりにシンフォギアの通信機能を用いて、箒に連結を取った。箒もちょうど、アガートラームでの訓練中だったため、すぐに応答があった。

「学園都市の暗部連中が襲ってきたか……死体はのび太に言って、太陽にでも向けてロケットで処分させるしかないな。パワードスーツの破片は連邦から回収の依頼があるから、一体分は確保する必要があるが」

「依頼?」

「ISの製造などに応用できるんだそうだ。学園都市の技術の多くはロストテクノロジーになってるそうだからな」

「のび太は……この時間だと、まだ給食だな。幸い、他の学年の児童が裏山に行くことはないから、私が行くまで、10分は待っててくれ」

「分かりました」

箒は訓練を切り上げ、アガートラームを展開したまま、町内の裏路地を猛スピードで走り抜け、10分で裏山にやってきた。

「箒さん、走ってきたんですか!?」

「馬鹿者、飛ぶと目立つだろう。ある意味ではISよりよほど目立つからな。さて、死体を早急に集めるぞ。今は梅雨時だ。死体の腐敗が進むと、腐臭を出すからな。一箇所に集めておくぞ」

「どうしてそんなに急ぐんですか?」

「昭和の最末期に起こった飛行機事故、聞いたことくらいあるだろう?」

「は、はい。昭和の終わる数年前くらいに、最悪レベルの事故が起こったっていうのは」

「のび太の両親が話してたんだが、語るのも憚られるほどに凄惨な現場だったらしく、冷凍の魚が焼き魚になっていた、死体の中に別の死体がめり込んでいた、腕だけしかない死体、足しかなかった、歯しか見つからなかった死体の山だったらしい。8月に起こったから腐敗が進んで、遺体置き場の体育館は別の場所に建て直したほどだった」

「……古代ベルカで死体は見慣れちゃってるつもりなんですけど、それは来ます…」

「訓練された自衛官でも、精神的にやられて、傷病除隊が出るほどだったというからな……。幸いにも、死体は纏まった場所にあるし、機体ごと開きになっていなければ、スーツの機能で腐敗は遅くなる。一箇所に纏めて安置するのがいいだろう」

「でも、今はまだ12時半ですよ?のび太くん、午後の授業があるんじゃ」

「大丈夫だ。今日は水曜日、四時間授業で、午後の授業はない。お前や私がいる21世紀とはカリキュラムが違うからな」

「そうだったんですか?」

「ああ。この時期はまだ土曜が三回くらい授業があるから、ややこしいのだ」

「意外に新しいんですね、土曜日が休みになるのって」

「そういう事だ。私らは平成の生まれだから、のび太とは本当は数世代は離れている。ジェネレーションギャップがな…」

「確かに。のび太くん、昭和生まれですからね」

二人は敵の死体を回収しながら、のび太達とのジェネレーションギャップを話す。のび太は1988年度生まれであり、調がいる2015年では、27歳を迎えている計算であり、その頃には既に家庭を築いている。二人に取って、のび太の子供時代は古いが、却って新鮮ですらある。特に、ススキヶ原は昭和の面影が残っている事もあり、本来ならばこの裏山も遊び場として使われるのが当然であるが、のび太達以外は裏山に登ることは滅多にしないので、その心配はない。

「ドラえもんに聞いてみたんですけど、箒さんとマリアは同じ魂から生まれた存在かもしれないって仮説を言ってました」

「それはあるな。マリアと私は、ガッキーの声にデジャヴを感じた。偶然とは思えん」

マグネロボガ・キーンの化身である『ガッキー』。その声に、箒とマリア・カデンツァヴナ・イヴはデジャヴを感じたのを肯定した。出木杉が調に言った『二人の過去生』がここで真実味を帯びた。後でそれを聞いた黒江が、ガッキーに「デコ出せ、カチューシャしてみろ〜」とネタも兼ねて迫り、二人の過去生が誰であったかを特定したようだった。黒江の分析は『魂が分かれて、そいつの激しいところが箒のやつに、優しいところがマリアに行ったんだな。ガッキー、お前。ドラム初めてみろよ』というもので、大笑いだった。マリアは『そうなると、大和にギターやらせないと』と返し、二人で盛り上がったという。智子は『はーん、箒とマリア、もしかして……』と微笑み、出木杉の仮説が正しいことが暗示される。ガッキーの声色、マリアと箒の歌唱力である程度予測はついていたらしく、智子は大和に『ギター、初めてみたら?』と肩を叩き、大和は『つ、ツインテールにしないといけませんか!?』と赤面したという。黒江はその際。

『妹の属性取るなって』

『いいじゃないですか、武蔵はロリっ子になれるんですよ!?』

『そこかよ!?』

大和は変身しても、大して変化がないのを気にしているらしく、黒江の頭の上に閑古鳥を鳴かせたという。


「恐らく、その仮説は合っている。マリアと私は他人の様な気がせんし、奇しくも、同じアガートラームを纏っている。いくら私が黄金聖闘士になったとは言え、綾香さんが狙い打ちしてアガートラームを寄越すわけがない」

「師匠は狙ったと?」

「恐らくな。フェイトのもとに天羽々斬を送ったろ?よく考えてみろ、フェイトは誰に声が似ている?」

「あ、あ―――ッ!つ、翼先輩だ!」

「綾香さん、義理の娘さんに名前つけるくらい、翼の事知ってるからな。翼の名誉のために黙ってておいた方がいいな」

「ツヴァイウイング時代の……」

「ああ。色々と後輩らには知られたくないところもあるだろうしな」

「師匠は知ってた……って、なのはさんの世界には!」

「ああ。お前らはアニメとして存在していて、フェイトはハマってたんだよ。最も、最近はクロスアン○ュ入ってきてるが、アイツ」

「それで私の事を……どのみち、私が恥ずかしいですよぉ……」

調は、なのはとフェイトが『自分を知っていた本当の理由』に思い当たり、自分が茹でダコになる。フェイトがハマって見ていたということは、自分の転移前の切歌との関係も知っている事になるからだ。

「大丈夫、フェイトとなのはも夫婦みたいなものだしな」

「そ、そういう問題じゃなくて!」

「私だって、似た事を甲児と経験済みだし、まぁ、平行世界に来てる以上は慣れろとしか」

「うぅ……。堪えますよぉ、それ」

「お互いにな…」

互いに同じような出来事を経験している二人。死体の集積を終え、千年杉の下で休みながら、二人はシンフォギア装者/聖闘士の他にも共有点を見つけ、以後はペアを組むことが増えたという。

「今、何時です?」

「12時50分。ホームルーム終わったろうから、のび太に連絡入れる」

箒はのび太が連絡を取る。のび太は『ジャイアンに野球誘われちゃって』と返し、『私からの頼みと言って、ジャイアン達にも手伝せろ!野球なら、私と調が助っ人してやる』と返した。

「野球するんですか、ギアで」

「勢いで言ってしまった……」

「こうなったらボコンボコンに相手を叩き潰しましょう」

「それしかないな…」

――箒の場の勢いにより、二人はシンフォギアで野球参戦という思わぬ局面を招来してしまった。箒は『やってもうたー!』と言わんばかりに冷や汗タラタラで、調は悟りを開きそうな事になっていた。箒のアガートラームはそんな局面を象徴するかのように、『SILENT SURVIVOR』を奏でる。二人は覚悟を決め、SILENT SURVIVORを口ずさんでいた――

「で、なんで『SILENT SURVIVOR』なんですか、メロディ」

「『TOUGH BOY』という気分でもないだろ。あれは打席に立つときだろ」

「やけくそですね」

「仕方がない。聖闘士に二言はない、コールドゲームにでもしてやろう」

聖闘士の性分的に、一度言ったことは引っ込めないという事情もある箒。それに巻き込まれる事を覚悟の調。箒はその場の勢いで大言を言ってしまうという、のび太と似たところがある。その事を知り、ため息をつきつつ、箒とともにジャイアンズの援軍になることを覚悟したのだった。なんともしょうもない使用法であるが、ある意味では平和的運用法とも言える二人の行為は、後に他の装者に知られた際に喧々諤々の議論を巻き起こしたという。生真面目である翼が特に猛抗議してきたが、『慣れるための訓練だから!』と、なんとか逃げ切ったという。(その代わり、後の交流の際に、翼は天羽々斬を展開した姿でススキヶ原に来訪したとも)



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