短編『ジェノサイド・ソウ・ヘブン』
(ドラえもん×多重クロス)
――未来世界でデザリアム戦役のドサクサに紛れて蜂起するジオン残党。デザリアム戦役直前の段階では地上に残存していた者達が傭兵化したティターンズ崩れを雇い入れて増強したり、ティターンズが部隊ごとジオンに転じるなどして、ジオン残党化するケースは後を絶たず、調も野比家来訪までの一定期間、修行の一環を兼ねて、ジオン残党狩りに参戦していた。そのため、後のデザリアム戦役でもスムーズに対応できたというわけだ。その調は、この日ものび太の寝床に気づかぬままに潜り込んでいて、恥ずかしさのあまりにパニック状態になり、無我夢中でα式・百輪廻を打ちまくり、部屋を荒らしてしまった。その片付けはドラえもん、ドラミ、キッドが行った。
「やれやれ、とんだとばっちりだぜ」
「最後のトドメの引き鉄引いたのあなたでしょう?!」
「俺のせいか?」
「このとーへんぼく……」
「タイムふろしきでも復元光線でも、使って良いから、ちゃっちゃと片付けろー。親御さんを誤魔化すのも大変なんだぞ。キッド、ストレートに言い過ぎだ、バカモノ」
「つーか、外見に合わせてきたな、トゥーハンド」
「あれくらいの年頃は扱いに気をつけろよ?智子もそうだったが、色気づき始めるからなー」
レヴィとして振る舞っている圭子は、本当の姿での包容力の片鱗は覗かせているが、殆ど鳴りを潜めている。扶桑海事変から向こう、プロパガンダされてきた人物像に飽き飽きしているためか、『レヴィ』に自然となりきっていた。むしろ転生後はこの姿での振る舞いこそが地であるかもしれない。
「アンタ、その振る舞いは演技なのか?それとも地なのか?」
「転生してからは有名人になったからなー。プライベートじゃこの姿で通すようになった。綾香と智子はイメージが素と近いから、壊さない程度に振る舞ってるけど、あたしは違うから、全力で投げ捨ててるだけだ」
圭子は自分についたイメージを全力で投げ捨てたようで、ガンクレイジーかつ大酒飲みに振る舞っている。グランウィッチでもなければ、『レヴィ』が圭子の別名義かつ、変身と分からないだろう。今や、圭子が元の容姿を見せるのは、戦友と家族に対してだけだ。
「なるほどな〜。有名人になると、それはそれで大変なわけだ」
「苦労してるぞ、二人も。だから、最近は綾香も変身してる機会が多くなってる」
「智子は変身しないのか?」
「あいつは演技力無いから、滅多にしねぇよ。綾香とあたしは俳優になれるくらいにあるが、あいつはねぇから」
口調もレヴィらしい荒いものになっているので、智子が演技力皆無である事をキッドにズバッと言う。圭子は黒江より自然体で演じるため、ミスが無い。黒江は意識して演じるためか、凡ミスすることが多い。
「だってあいつ、軍人モードと乙女モードしかないし」
そのまま笑い転げる。演技しようとして、なんだか妙な感じに成ってるところを思い出しての思い出し大笑いだ、智子の性格を熟知しているためでもある。智子は容貌と裏腹に、プロパガンダ映画以外の主演作が1946年時点でそれほどないが、演技力が無いのが原因だった。圭子と黒江は演技力が評価され、統合幕僚会議準備室広報課の依頼もあり、女優業を平時は兼任するようになっている。その関係で40年代当時、扶桑のトップ女優だった原節子のサインを、二人してもらっていたりする。彼女が銀幕の世界に登場した当時、二人は既に国家の英雄であったが、二人は史実の功績を知っているため、好意的に接していた。ミーハーと言えばそれまでだが、二人は本業の女優ではないので、女優の才能あふれる彼女に敬意を払っている。そのサインのうち、、圭子に送られたものは、圭子の実家の母の手で額縁に入れられて飾られているが、これを知るのは、家族以外では、グランウィッチと二代目レイブンズだけだ。(黒江は長兄がデビュー時からのファンなので、長兄にプレゼントとして送り、長兄から『でかした!!』と喜ばれたとか)
「そうかー。で、あの子は?」
「罰として、町内一周を命じた。それと学校がやってる時間帯は帰ってくるなとも言ってある。4時には戻るだろう」
――調は罰として、レヴィ(圭子)から『ローラー無しで町内一周』を言いつけられ、家を出てから20分ほどで駅前商店街の入り口に来ていた。のび太が学校に行っている時間になっていた。のび太の学校が完全に終わる4時までは戻れないので、喫茶店で朝の軽食を取ることにした。空中元素固定で小銭(500円玉)を作り、それで勘定を済ませるつもりだ。犯罪ではあるが、小銭で、実在する年のものであれば問題はない。が、やはり倫理的には不味いので、一端、外でギアを解除し、小銭を探したら、偶然にも、1988年度のものが4枚、ポケットに入っていた――
(よ、良かったぁ。小銭あって。さて、展開し直してっと。2000円分だから、カフェオレとケーキで600円くらいに収めておこ。今度から、ポーチか財布を持っていこう。これじゃシャレにならないし)
思わぬ難点である。ギアを展開していると、財布の携帯が問題となる。ポーチを首から下げるか、財布を入れたカバンを持っていくか、トートバッグでも買うか。
(レヴィさんにいって、メッセンジャーバックでも買ってもらうかな?確か、この頃に流行りだしてたはずだし)
実際に流行りだしたのは90年代であり、ファッション的な趣向を凝らしたものが出始めたのが00年代である。調はこの年に生誕するはずであり、10歳の頃でも2010年に達している世代なため、『一昔前の流行り』には疎かった。それは仕方がない事だ。時代ごとの流行りを無視できるのは、師であるレイブンズくらいなものだ。
「すみません、カフェオレとケーキをお願いします」
「かしこまりました」
注文し終えると、色々と考えてみる。
(信じられないよね。小宇宙に目覚めれば、ギアを纏うのに制限が無くなる。こんな簡単な事に気づかなかったなんて。……切ちゃん、私を想っていてくれていたのは嬉しいけど、あんな形でなんて、私は望んでないよ……)
記憶で垣間見た一つの光景。恩人である黒江に、躊躇なくイガリマの刃を向けた光景は狂気そのものであり、愛ゆえと言われても納得できない。それが切歌とのすれ違いになっていた。黒江と同じく、エクスカリバーを継承した身になったためもあり、フロンティア事変中の切歌の狂気は許せるものではない。黒江からのフィードバックの強い影響により、このような思考が出来ていた。『切ちゃんをもう一度、仲間として受け入れるには、再会した時、互いに全力で拳をぶつけ合うしかない』。と。これが数日間、悩んだ末の結論だった。これは切歌にとっては、高いハードルでもある。片や、黒江から全ての闘技を受け継ぎ、『聖剣』もアテナから与えられた調。自分の『罪』と向き合い、調にもう一度、笑ってほしいために聖闘士候補生に志願した切歌。黒江が成り代わっていたことを、誰よりも調の身近にいながら見抜けなかった事実で精神バランスが崩れかかっていた後遺症で、精神バランスが崩れるとナーバスになりやすく、鳳凰幻魔拳などの幻惑系に弱いのが、切歌の最大の弱点である。二人の戦闘技能はこの時点ではかなり差ができてしまっている。調はこの時点で白銀聖闘士への叙任が取りざたされており、黒江から記憶と技能を受け継いでるため、招来の黄金候補とも目されている。一方、切歌はこの時点では、魔鈴にシゴカれる一候補生にすぎない。聖闘士世界のギリシアで日々、修行している。マリアは箒との同調が日々高まっており、その関係で小宇宙に自然と覚醒した。その他には、箒がマリアが口癖としている『マイターン!』を言うようになり、マリアも箒のような言動を見せ始めていた。
――カフェオレとケーキを食べ終わり、勘定を済まし、外へ出る、玩具屋に行くと、ザクのプラモが目についた。未来で実際に兵器として造られる機体が、この時代にはアニメの中の存在であるという奇妙さ。これは21世紀半ば以降の時空融合現象の成せる業である。最も、未来で実際に戦った個体の多くはF2型で、しかも経年で他機種とのニコイチになっていたりしたのが多い。仕方がないが、デザリアム戦役の時代になると、地上に篭もるジオン残党の主力は整備しやすいドム系統に移行している。ザク系統は一年戦争後期当時には既にその性能限界により、地上での生存率が低くなっている。年月を経て、ザク系統は地上に行き渡った最後の機種であるF2型が常態化している。意外ではあるが、アニメで登場する初期の『F型』は未来では殆ど見ていない――
(ザクだ。F型は見ないな、そういえば。未来だと、一年戦争から年月経ってるから、残党もF型は殆ど持ってないんだっけ)
ジオンの代名詞のザクだが、それ以降の機体に押される形で戦後は残党からも姿を消し初め、デザリアム戦役寸前の段階では、ジオン残党も横流しされたハイザックを使い始めていたし、アクシズ製のザクVはネオ・ジオンが独占しているため、ジオン残党は全体としてみると、ザクUJ型とD型も余裕で現役であるので、はっきり言って、懐具合は良くない。ハイザックも今や旧式の機体であり、連邦で現在、最も古いジムVよりも古い機種となっている。連邦は既に小型MSから中程度のサイズのMSに主力を移行し始めているため、ジオン残党はかつての売りであった『技術力』で水を開けられている。(連邦も予算の関係上、新世代機を大量製造は難しくなっているが)その関係もあり、残党でもザクUを第一線で用いる機会は以前よりは減っている。
(私が見たのは、マーキングとかがもっと精密だったな。実機とプラモの違いって言えば、それまでだけど、今でも現実って思えないところあるんだよね)
MSが当たり前に闊歩する時代の戦争は、この時代の戦争とは様相を変えている。通常兵器は航空兵器でもなければ、その価値を減じている。シンフォギアでは戦いにくい相手と言っていい。黒江達は生身でも破壊出来るが、シンフォギア装者の場合、現在兵器(21世紀初頭時点の学園都市製以外)には無敵だが、23世紀の兵器相手では勝手が違う。素でアームドギアを防ぐ強度の装甲がいくらでもあり、シンフォギアであろうと、通常形態では防ぎきれない火力のツインバスターライフルやバスターランチャーという『戦略級火器』が存在する。それは連邦が持つ他勢力への優位である。人が携行できるサイズにダウンサイジングがなされており、シンフォギアの出力であれば、ドライブは充分に可能である。調はダイ・アナザー・デイ作戦の折、クリスを差し置く形で、箒が召喚したISサイズのバスターランチャーを撃っている。その際に、クリスが『なんで、射手を任せられるのがあたしじゃねーんだよ!』と、箒にぶーたれているが、その理由は、バスターランチャーの扱いを『知っていた』からである。
(そして、あの戦いで私は、小宇宙を完全にモノにした。奇跡は祈るものでも、願うものでもない。『起こすもの』。それを知ったから、私は戦えるんだよ、切ちゃん)
ダイ・アナザー・デイ作戦の際、辺り一面の地面を覆うほどのバダンの怪人軍団相手に臆した切歌。それを尻目に、響が『この力は……綾香さん達が見せた……!?』と驚くほど、調は自然と小宇宙を高ぶらせ、怪人軍団に立ち向かった。黒江の記憶が自然とそうさせたのかも知れない。
(あの時は、転移前の私なら言わない台詞を自然に連発してた。『だったら、奇跡を起こすまで!!』、『うおぉぉあああああ――ッ!』とか。師匠との共有意識がそうさせたのかも知れない。師匠は前史で数百年の月日を生きて、戦い続けた。私がベルカに跳ばされた時に願った事が、師匠を巻き込んでしまったのなら、私はその恩に報いる。師匠は自分の世界ではない世界のために戦ってくれた。なら、私も……)
黒江の成り代わりの一因が、ベルカに跳ばされた後での自分の『願い』である事に気づいていた調は、黒江に『シンフォギア世界の守護』の役目を一時的にも担わせた事に負い目を感じ、同時にそれを迷わずに実行してくれた事へ多大な恩義を感じていた。それが黒江に献身的に仕える理由だった。見も知らぬ世界を守った黒江は、ベルカの騎士として国を守護出来なかった自分にとっては、眩しい存在であるという自覚から、単純な恩義以外にも憧れを抱いていた。本来、自分が辿る流れを逸脱した以上、本来の世界での『本来の歴史の自分』にこだわる意義も消え失せている。それが調の現在の行動原理である。そのため、黒江への憧れから、本来の自分自身から敢えて大きく逸脱した選択をし、黒江に似た『何でもあり』のファイトスタイルを選んでいる。
(裏山で2時間くらい演舞でもしていこう。レヴィさんもああ見えて、オーラパワーの使い手だし、負けたくない……って響さんみたいな事になってるなぁ、私)
気がつけば、響の領分であったはずの徒手空拳の格闘に手を出していることに思わず苦笑する。が、聖闘士になる以上は必須の技能である。仮面ライダースーパー1=沖一也のように、改造された身で気を操るような者もいる。彼女は裏山で、その沖一也と出会った。
――裏山――
裏山で一人、道着姿で鍛錬する青年がいた。仮面ライダースーパー1こと、沖一也である。彼はZXと交代で、20世紀末の日本の守備についており、この週は彼の担当だった。演舞を行っているところで、調と出会った。
「おや?君は確か、綾ちゃんが連れてた子達の……」
「つ、月詠調です。ダイ・アナザー・デイ作戦の時はお世話になりました」
挨拶して、ペコリと一礼する。沖一也、即ちスーパー1とはダイ・アナザー・デイ作戦の折に共に戦った経験がある。その時は一也はスーパー1としての姿であったので、『沖一也』としては今回が初めての出会いであった。彼は赤心少林拳の使い手であり、玄海老師存命の頃は実際に師範でもあった。彼の用いる『赤心少林拳・玄海流』は梅花の型という型があり、黒江も心得があったので、中国拳法を使う響に対して使用している。
「俺は沖一也。スーパー1としては会ってるね」
「一也さん、ここで何を?」
「何、修行さ。改造人間だからって、自分の能力に胡座をかいてると、死あるのみだしね」
一也は幼少より赤心少林拳の修行を行い、鍛え上げられた肉体を元から持っている。その点でスーパー1の素体にピッタリであり、志願がすんなりと認められた理由である。
「確か、元から拳法家だったとか」
「城先輩から話は聞いているようだね。俺は改造された時点で27歳だからね。他のライダーより年上の外見なのはそのせいだ。実際は一号の本郷さん達と、それほど離れていないけど。あ、言うけど、本業は航空宇宙工学と惑星科学者だよ」
一也は改造された時点の年齢が歴代最年長級であるので、外見上は本郷や一文字より上に見えるが、実際は風見志郎から城茂の数年後輩である。拳法家の側面が有名だが、本業は科学者である。もし、改造した研究所が健在なら、木星型惑星の探査にも赴かせる予定であったという。
「そうなんですか?」
「ああ。俺は村雨や城先輩達と違って、平和目的で生まれた仮面ライダーなんだ。唯一ね」
惑星開発用として、平和目的で改造された唯一の仮面ライダーがスーパー1である。他の仮面ライダーの多くが戦闘用に改造されたのに対し、本来は惑星開発用改造人間であり、二代目おやっさんの谷源次郎から仮面ライダーの称号を送られたのが仮面ライダーを名乗るきっかけである。そのため、戦闘用に改造され、自己治癒能力を持つ歴代と違い、彼は惑星開発用であるので、本来は戦闘に不向きである。が、元々、木星型惑星の高圧に耐えるための構造であるのが幸いし、戦闘に充分に耐える。排熱に気を使っている設計だが、長引き過ぎると、内部機構が熱暴走を起こす可能性があるので、その点が強いて言うなら弱点である。
「惑星開発用……」
「ハイスペックだけど、弱点もある。それが俺の体の弱ささ。だが、それはいくらでもカバー出来る。どうだい、俺の修行に付き合ってみるかい?」
「は、はい。私も修行するつもりで来ましたから」
こうして、沖一也と一緒に修行する事になった調。赤心少林拳の心得がある彼と出会った事で、気の扱い方を覚えていく。
「一也さんはどうして、戦い続けていられるんですか?それになんで、その力をみんなのために?」
「俺は拳法家である前に、『サイボーグS-1』として、人の夢の為に生まれた。この拳、この命はその為のものだ」
沖一也は本来、人の夢のために設計された体に改造されている。23世紀の宇宙大航海時代に本来、必要とされる人材だ。サイボーグ化されたという点が冷戦終結後の世界の倫理観に忌み嫌われた理由であるが、人の夢のために改造された。実のところ、資料散逸もあり、NASA管轄下のサイボーグ計画は彼が最後となっている。
「実は、人が夢をつかむのを、俺はまだ見ていない。悪の組織と戦うほうを優先してたから、23世紀の大航海時代が始まったところで起きたから」
「波動エンジンやフォールド機関であれだけ移民していってる時代になってから、コールドスリープが解除?」
「ああ。俺たち仮面ライダーの意思決定権は本郷さんと一文字さんが持ってるんだ。縦社会だから、9番目の俺は下から数えた方が早い序列なんだ」
「それじゃ、茂さんも本郷さんの言うことは?」
「聞くよ。本郷さんは威厳あるからね。俺、下手したら結城さんの下位互換の扱いだから」
「ライダーマンの?」
「ああ。あの人は俺たちのメンテナンスのため、小刻みに起きててね。ドラえもんの道具の技術力が消え失せた理由も知ってる。2130年代、ドラえもん達が姿を消した理由も」
「な、何かあったんですか!?」
「俺も結城さんに後から聞いたんだが、その頃、俺たちはオーストラリアでコールドスリープについていた。結城さんは腕が改造箇所でね、長期のコールドスリープの影響が心配だったから、時々起きてたんだ。その時にそれがあったんだ。ドラえもんズは統合戦争が起きた当時、統合戦争を引き起こした黒幕がバダンであるのを突き止めて、奴等と戦っていたんだ。結城さんはドラえもんズに協力していてね、ドラえもんのことはそれで知っていたんだ。だが、バダンは時空破断システムを使って、オーストラリアを虱潰しに攻撃し始めた。狙いは俺たちが眠っていた施設だ」
「じ、じゃあ、ドラえもん君達は……!?」
「彼らは親友テレカを使って、時空破断を止めたが、その重い代償を支払い、時空の裂け目に飲み込まれた。結城さんに後事を託してね。その時にBLACKが未来で生まれることを結城さんに告げている」
「そんな……!?それじゃ、それじゃ……!?」
「ああ。のび太くんと別れて五年か六年くらいした後で、未来デパートの工場ごと亜空間へ消えていった。光太郎のことを教えてくれた上でね。それが彼らが姿を消した理由だよ。君が出会ったのは、2125年時点のドラえもんズ。つまり消える前の彼らだよ」
「こんな事って……、残酷すぎるよぉ……バダンの計画を命がけで……」
「希望はある。ドラえもんが結城さんに言った言葉だ。『僕たちは必ず帰って来ます。超人機メタルダーに出来た事が、僕たちに出来ないことはありませんよ』と。現地も時空境界線も安定してきている。そう遠くない内に戻れるだろう」
「よ、良かったぁ……」
「亜空間では時の流れがないから、彼らには一瞬に思えるだろうが、外では70年以上が経っている。それは残酷な事実を思い知らせるだろう」
「そ、そうだ。セワシくんが!」
「存命はしているが、老人になっているからな。デザリアム戦役の頃には。それと、息子の一人がシドニーにいてね……」
「まさか、ブリティッシュ作戦で!?」
「一家ごと亡くなったんだ。次男一家が。のび太くんも落ち込んでいたよ」
野比家も戦争の惨禍には無縁でなく、のび太の子孫の一人であるセワシの次男がブリティッシュ作戦の犠牲になり、セワシはそれ以降ふさぎ込んでしまい、一気に年老いた。のび太もデザリアム戦役時点の年老いたセワシとの面会を避けている。セワシの更に孫から聞いた話では『老いが一気に出て、髪は白髪になり、気力も急激に萎えていった』との事で、かなり悲惨な事になっている事が明示されている。
「あの戦争でコロニーを落とした事で、ジオンに大義は消えた。ティターンズが出来たのも自業自得に近い。いくら政府の怠慢があったからと言っても、同胞を何億も殺していいはずがない。ジオンはそれを読み誤ったから、負けるんだ」
一也は、スペースコロニーを弾頭としてオーストラリアに落とし、億単位の人々を虐殺したジオンを嫌っているらしき節を覗かせた。
「ジオニズムは正直言って、俺たちやのび太くん達からすれば、カルトにしか思えない。俺たちが人間だった頃は地球連邦政府こそが人々の夢とされていたし、のび太くん達もそう教育されているからな」
仮面ライダー達は20世紀に生きた人間として、地球連邦政府が『願われて生まれた存在である』ことをよく知っている。ジオンの行為はやってはいけないボーダーラインを完全に超えている。ましてや同じ宇宙移民を間引きするような感覚で殺すなど、バダンと同じ穴の狢としか思えない節がある。それがジオンの誤算でもある。コロニー落としなどの一週間戦争を知れば、仮面ライダーらが連邦政府の擁護者になるのも自明の理だ。調も、慕うのび太の子孫の一人の築いた一家が悲劇的な最期を遂げたのを知った事により、以後、ジオンへ戦意を滾らせてゆくのだった。
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