短編『プリキュア、スーパーロボット大決戦3』
(ドラえもん×多重クロス)
――プリキュア達は図らずしも、スーパーロボットとミケーネ/百鬼帝国の連合軍との戦闘に巻き込まれ、プリキュア本来の主敵たる『ボトム』そっちのけの戦いと化していた。だが、ボトムは倒さなくてはならない敵であるため、黒江と智子はそれぞれ、ドリームとピーチの姿を借りていたが、それを承知の上で、シャインスパークの準備に入った。
「分かってるな?」
「ええ、感情を込めて、力を引き出す!!」
「私達の力を合わせましょう!!」
フェリーチェも加わり、三人にゲッターエネルギーが集束していく。周囲から吸い込むかのように三人は白いエネルギー光に包まれ、眩い光を発する。ゲッターシャインである。その場にいた『オールスターズ』(時間軸的に本来いないはずのプリキュアを除く)はその行為に驚く。
「な、なんなの!?」
「あの三人にエネルギーが集まってるわ!それも、空間を揺るがすくらいの…!」
「そんなエネルギー、あの三人の体が耐えられるの!?」
『ゲッタァァァァ・シャイィィン!!』
ブラックとホワイトの反応からして、驚愕するほどの行為であるのが分かる。シャインスパークはゲッターロボG以降のゲッターロボ最終兵器。それを発動したので、空間が揺らいでいるのだ。真ゲッタードラゴンのそれにはエネルギーの絶対量で劣るものの、ゲッター真ドラゴンに匹敵するだけのパワーを引き出していた。
『シャイン!!』
『スパァアアアク!!』
眩い光を放つ三人はボトムに突撃する。一つの巨大な閃光として。もはやプリキュアの趣旨から離れているが、黒江と智子は力を借りている状態にあたるためと、フェリーチェは攻撃技を元々持っていない兼ね合いで行った。また、フェリーチェからは、ZEROの因果律操作により、以前のような『神通力』が失われたため、それを補うためにゲッターエネルギーと光子力エネルギーを制御する特訓を行い、20年の月日をかけて自家薬籠中の物にした。その賜物でもある。三人は眩い光とともに突撃し、大爆発を引き起こす。凄まじい衝撃波が走り、キュアレインボー状態のプリキュア達をも吹き飛ばさんばかりである。ボトムはシャインスパークのエネルギーを浴びせられ、断末魔もなく消滅する。爆発で生じた衝撃波が伝わり、プリキュア達は吹き飛ばされそうになるが、三大スーパーロボットが盾になって衝撃波から守った。
「ふー。危なかったー!でも、なんて爆発……。ありえないっつーの!」
「ま、すごいエネルギーを溜めて撃ったしな、あれ。ブラックはみんなの面倒を見てくれ」
この場で戦闘要員と見做されるプリキュアは『本来はその時間軸にいないはず』のプリキュアを除けば、ブラックを筆頭に、人数が限られてくる。メロディは現役時代と異なり、ブラックに対し、年長者として振る舞う。
「ボトムは消えた。後はこいつらをなんとかしないとな。お前ら、続け!」
「おう!」
戦闘力が強化された後発のプリキュア達は百鬼帝国の百鬼メカ相手にも怯まずに戦えるが、それ以外の大半は基本世界同様の力しかなく、スーパーロボットと戦えるメカ相手には流石に苦戦を強いられる。
「ラブリーはブロッサム達をカバーしろ!ハートはあたしに続け!」
「YES!!」
メロディが矢継ぎ早に号令を発し、それに従う他のプリキュア達。比較的に善戦しているのが経験値が高い初期のプリキュア達であるあたり、戦闘経験値は重要なのが表されている。
『フィン・ファンネル!』
キュアフェリーチェはかつてのような神通力を失った代わりに、空中元素固定能力を習得。その応用でフィン・ファンネルを生成。なぜ、フィン・ファンネルを扱えるのか?神としての権能はニュータイプ能力に近い形の能力に変化したため、サイコミュ兵器を扱えるのだ。武器はνガンダム系のそれをダウンサイジング化したビーム・ライフルになっている。伊達にロンド・ベル隊に鍛えられてはいない。戦法はオールレンジ攻撃に頼らないアムロのそれを真似したものだが、彼の戦法は洗練されているため、フェリーチェが再現するだけで、敵機は次々と落ちていく。
「フェリーチェ、雑魚にあまり時間をかけるなよ!」
「はいっ!」
黒江はドリームの姿ながら、こちらはF9シリーズの武装を形成して使用する。いずれも威力は本物と遜色ないため、百鬼帝国のメカを充分に撃破可能である。接近戦が得意である黒江はビーム・ザンバーを使った。形状はフルーレと大差ないが、刀身がビームで構成され、粒子加速されている事、刀身がカットラスのように湾曲して形成されているため、スターライトフルーレと別の武器と容易に識別できる。
「あらよっと!」
その切れ味は歴代ガンダムのサーベルでは、ZZのハイパービームサーベルに次ぐ。熟練の剣士である黒江の腕を以てすれば、百鬼帝国のメカを容易に一刀両断せしめる。黒江は大胆にも接近し、大上段から全長が40mから50mのマシンを、である。素がズブの素人であるはずののぞみとは雲泥の差であるため、その行為が『事の詳細』を他のプリキュア達に悟らせる要因であった。
「スクリュー・ウェッブ!」
ドリル状の先端を高速回転させる事で貫通能力を強化した鞭を奮う。いつの間にか『A.B.C.マント』も羽織っていたので、正体がバレる事は承知の上なのが分かる。
「ザンバスター!!」
ザンバスターを使うなど、クロスボーンガンダムX1の戦法を用いる黒江。シャイニングドリームの姿と力を借りているものの、やっていることはクロスボーンガンダムそのものであった。
「武器を次々とっかえひっかえでロボットを倒して言ってる……。やっぱり、あのドリームは…」
「ええ。ウチのピーチ共々、他人と入れ替わったのは事実みたいね…。どうするの、アクア」
「とはいえ…味方な事は確かみたいだし…。仕事の上司とは言ってたけど、あれはほとんどチートとしか」
「言えてる…」
ベリーとアクアは互いに頷く。黒江と智子がやっている事は殆ど『ズルして無敵モード』と言われそうなことであるのは誰が見ても明らかである。智子はというと、黒江に合わせて、ムラマサ・ブラスターを持ち、フルクロスを纏っていた。
「この瞬間を待っていたんだーっ!」
智子もノリノリでムラマサブラスターのビーム・サーベルモードを起動させて振り回す。エンジェルピーチの柔和なイメージをぶち壊す勢いの突撃ぶりだ。二人共、姿を借りている事を忘れているのかといいたいくらいの阿修羅ぶりであった。
「今日のあたしは……阿修羅をも凌駕する存在よ!!」
と、普段のノリの台詞回しをしてしまう智子。メロディ、ハート、ラブリーは苦笑いである。
「仕方ありません、援護します、二人共!」
フェリーチェも意を決し、今度はハイパーメガバズーカランチャーを形成する。周りにフィン・ファンネルを滞空させつつ、明らかにSFのメカニックを思わせる火器を空中で形作ったため、ブラックは完全に言葉を失った。
「な、何よあれ!?なんかどっかのアニメで見るような武器を空中から呼び出し…!?」
「この状況でツッコミ入れる気力がよくありますね、ルージュ…」
キュアルージュのみがツッコミを入れ、レモネードが合いの手を入れる。ハイパーメガバズーカランチャーは凄まじいインパクトがあるのが分かる。ハイニューガンダムと同様のそれはハイメガキャノン以上の出力のメガ粒子砲という形で火を吹き、射線軸にいた百鬼メカを容赦なく溶解、撃破せしめる。
「二人とも、敵の陣形に穴を開けました!奥にいる要塞鬼を!」
「了解だ!いくぞ!」
「よっしゃあ!」
黒江と智子は百鬼メカ群の母艦へ突撃していく。あっという間の事であり、他のプリキュア達は声をかける暇もなかった。
「あ、まっ…嘘、もう見えなくなってる……」
ブラックはどうにもいいところなしであり、コメディリリーフの役回りを演ずる羽目になっていた。初代プリキュアなので、本来なら後輩らにリーダーシップを発揮すべきだが、なぎさ生来のおっちょこちょいさや大雑把さもあり、言葉ではリーダーシップを取れない。それはのぞみが証言している。オールスターズの戦いの最盛期、のぞみが総合的にリーダーシップを取っていたのは、なぎさは行動で以て意思を表すタイプであって、仮面ライダー一号/本郷猛のような強いリーダーシップは持っていないからだ。
「ブラック、あの、さっきからコメディリリーフになってません…?」
「うわ〜ん!好きでしてるんじゃないよぉ〜!こういうコメディリリーフはルージュの役だよぉ〜!?」
「あたし、やっぱそういう認識されてるー?」
「おいおい、そういう会話してる場合かよ、お二人さん。」
「貴方、メロディって言ったわね…。言わずにはいられないじゃないー!」
「ったく、自動ツッコミマシーンだな、お前」
「好きでツッコミ入れてるんじゃないわよー!あんた、あたしを知ってるでしょ、だったら」
「パニクってる場合か!のぞみに言うぞ、お前が男運無かったの…」
「へ…ぇ…!?あ、あ、あんた、なんでそれを!?」
「すまないけど、あたしは別の時間軸でプリキュアになってから、結構知れ渡ってる」
「嘘でしょ――っ!?」
愕然とし、思わず落ち込むルージュ。
「後でのぞみのことが聞きたいから、終わったらいいか?」
「え、なんで?」
「仕事で同僚なんだけど、同室に…」
「あー…なんとなく分かったわ…」
「だろ…?」
メロディ(シャーリー)は黒江の命で同室になったため、色々と気苦労が絶えない。ダイ・アナザー・デイが終わると、のぞみの面倒もりんと共同で見る事で落ち着いたが、りんが勉強で多忙なため、ダイ・アナザー・デイ直後の時点ではシャーリーが主に面倒を見ていた。同室になった後は現役時代と違い、互いを呼び捨てにする間柄だが、血気盛んなのぞみの諌め役になっているため、『りんの苦労がやっと分かったぜ…』とはシャーリーの本心だ。
「あんたも大変ねぇ…」
「お前の苦労が分かった気がするぜ…」
「ところで、あなたっていつのプリキュアなの?」
ブラックが聞いてくる。
「んー、この一年後にはデビューしてるプリキュアだよ。スイートプリキュアってプリキュアのピンクだから、あたし」
「あ、頭がこんがらがってきた…」
「ほんと、ブラックってギャグ要員だよな」
「ブラックは戦闘以外はこんな感じだから…。貴方達は本当に未来のプリキュアなのね」
「そうなんだよ、ホワイト。ブルームとイーグレットから話を聞いたのか?」
「ええ。だいぶややこしい話みたいね、メロディ」
「難しい事は置いておいて、本物かどうかは感じてくれれば良いさ。あたし達は助けに来た身だしな。それと、ブルームとイーグレットへの礼もしたかったしな」
「話は聞いたけど、そこはよく分かんないんだ、ホワイト」
「貴方達、あのロボット達とはどういう関係なの?」
イーグレットも問いかける。
「どこから話せばいいのやら。SFじみてるし、その辺」
『それなら、俺が話そう。一応、博士号持ちだしな』
「甲児」
『もっとも、こいつらをギタギタにしてからだけどな』
『論より証拠、と言いたいところだが、今は俺達の背中を見てくれてばいい。君達と共に悪を討つ。俺たちはそのためにやってきた』
「貴方達はどうして、そんな強力なロボットを…?」
『のぞみちゃんから話は聞いている。君がキュアイーグレット、美翔舞か。全ては事が片付いたら、だ』
甲児と鉄也が相手をする。荒くれ者な竜馬と冷徹な隼人よりは第一印象が良いからだろう。
「は、はい」
『超必殺!!サンダーボルトブレーカー!』
次の瞬間、マジンエンペラーGの必殺技『サンダーボルトブレーカー』が奔る。雷を圧縮し、ビーム状にまで凝縮して放つ超必殺攻撃であり、黒江が用いた際には戦艦紀伊の上部構造物を跡形もなく消し飛ばし、船体を帯磁させてしまうほどの威力を発揮した。その本家大本の攻撃が炸裂する。マジンガーZEROですら恐れる『Z神の権能の象徴・雷』。グレートマジンガーの系譜は『Zを超えるための魔神』がそもそもの存在意義である。その象徴が雷を操ることだ。
「雷をビームにして……」
「信じらんない……。そんな事できるものなの…?」
「そうですよ、あんなエネルギー、今の科学で制御できるわけがないですよ!」
「それを可能とするのが、鋼の魔神の魔神たる所以なのです、みなさん」
レモネードがもっともな事を言うが、フェリーチェはそう返す。マジンエンペラーもゴッドマジンガーも、『王の中の王』と讃えられる事も多い最強のマジンガー。雷槌を任意で打ち出すことなど、朝飯前だ。もっとも、電撃に指向性を持たせる事は1950年代の時点で充分に可能なので、マジンガーのそれはその技術が果てしなく容量を拡大した末の産物と言える。
『フェリーチェのいう通り、俺たちの相棒は神を超え、悪魔も倒すために作られた。それくらいは朝飯前だぜ!光のエネルギーを炎に変えることもな!!』
「え!?」
『素粒子一つ残さず燃えつきろ!ゴッドブラスタ――ッ!!」
ファイヤーブラスターを更に凌ぐ光子力の炎『ゴッドブラスター』。インフェルノブラスターがリミッター解除されると、神の炎と化する。その威力はZEROのブレストファイヤーをも超えるもので、射線軸に直接触れていないはずの機体が余熱で溶けるほどだ。ゴッドマジンガーが最強を謳われる理由。それは武器の威力がマジンカイザーをも凌駕するからでもある。
「嘘、あの龍のバケモノ以外のロボットが溶けて海に落ちていく…」
「しかも海が熱せられて、湯気を…!」
ゴッドブラスターが恐れられる理由は掠っただけでも海を熱湯に一時的に変えるほどの熱量を発揮するほどの膨大な熱エネルギーを叩き出すからで、ZEROも海を枯らすには、ブレストファイヤーの長時間の照射を必要とする事から、如何に危ない兵器であるのかが分かる。
「これが兜十蔵が構想したという『黒鉄の神』の実力というのか、兜甲児!?」
『へへ、さっきまでの御託はどーしたよ、あしゅら。しょんべんでもたれたかよ』
『人間どもがあのようなものを作り上げたとは……。侮れぬということか』
『ガラダブラ、流石のお前さんもこのゴッドマジンガーに腰抜かしたようだな、えぇ?』
ガラダブラは唯一、ゴッドブラスターに耐えたらしい。そして、彼がついに動く。
『兜甲児、剣鉄也よ。我が主、闇の帝王様に貴様らの首を献上するため、たとえここが別次元であろうと、俺と戦ってもらうぞ。小うるさい小娘共がコバエのようにうろついてるようだが』
『へ、そこがテメーの傲慢だっての!ゴッドブレード!!』
ゴッドマジンガーにブレードを二刀流で持たせ、勇者ガラダブラを迎え撃たんとする甲児。コバエ扱いに憤慨するプリキュア達。それを諌める鉄也とゲッターチーム。体躯はガラダブラのほうが大きく、その異形の姿もあり、プリキュア達に強い印象を与える。それが人語を流暢に喋るものだから、言葉も出ない。ゴッドマジンガーはグレンダイザーと同格の30mほどだが、勇者ガラダブラは38m以上はありそうな体躯であり、首も三つはある。それがお互いにウイングで音速を超えて戦うので、プリキュア達は圧倒される。
「小娘共、まとめてかかってくるのだな。面妖な力を持っていおうと、俺にとっては羽虫も同然…」
「何をぉ!」
「どんな巨城も蟻の巣から崩れるのよ!!」
「窮鼠猫を噛むってことわざを身を以て思い知れ!!」
ブルームとイーグレットがとっさに言い返し、空中戦に慣れている分、先頭に立って、ゴッドマジンガーに加勢していく。またしても、おいしい場面を持ってかれたブラックは落ち込んでしまう。
「あ〜〜〜!今度は咲ちゃんと舞ちゃんにおいしい場面を持ってかれたー!今度こそ、いつものあれを決めようとしたのにぃ〜!」
『コラコラ、ヤケになるな!勝負は勝てる算段立ててからやるもんだぜ』
「で、でも〜…」
『のぞみちゃんから聞いた通り、君は戦闘以外はギャグ担当だな』
鉄也に励まされるブラック。全員がキュアレインボー形態なので、自前で空は飛べるが、激しい機動を繰り返すと、体力の消耗が激しいため、黒江達が10分の一サイズのサブフライトシステムを作ってやる。
「みんな、これを使え!」
「何それ、小さい飛行機?」
「とある世界で自前で飛べないロボットが空中戦をするために使うサポートメカの縮小版だ。お前らの脳波で動かせるようにしといた。激しい機動を繰り返すと体力が消耗する。長期戦になるからな」
ブルームの質問に黒江が答える。ドダイ改が大半だが、黒江と智子はメガライダーだったりする。
「要は飛行機でスケボかスノーボードをするような感覚だ、頭を使えよ!」
「あ、待って!ブラック、アイススポーツとか苦手で…」
「なぬぅ!?ホワイト、ブラックを後ろに乗せてくれ」
「分かったわ」
「ん〜!」
「渋い顔しとる場合か、とにかく乗れ!少々荒っぽいが…」
「ち、ちょっとー!?」
ブラックはこうして、オートレースに出場経験がある上、バンキッシュレースの選手にもなった黒江の荒っぽい運転の実験材料となってしまう。メガライダーは複数人が乗れる構造なため、黒江はブラックを後ろに乗せた状態でバイク状の乗り物による空中戦を否応なしに体験させられる。ブルームとイーグレットがドダイ改を使うのとは対照的だが、なぎさにスケボなどの素質があるかどうか、ほのかですらもわからない(ひかりはほのかに同乗した)ため、仕方がないところがあった。なお、キュアアクアには乗馬経験があったために、一同の中ではブルーム達に次いで、サブフライトシステムのコツを飲み込み、黒江達の判断で、ブルームとイーグレットに次いで、次席の立場になったとのこと。
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