短編『プリキュア、スーパーロボット大決戦4』
(ドラえもん×多重クロス)



――さて、プリキュア達と百鬼帝国の戦いは黒江達の本格介入で好転したかに見えたのだが、ここで援軍が敵に到来する。

「やっぱ、そうきたか!」

「来たって、何が!?」

「あれを見ろ!」

メガライダーを操縦する黒江も、思わずそう漏らす。赤、青、黄色の三色に塗られた三種の戦闘機の大編隊が飛来する。そして一斉に合体していく。

「な、何あれ!?」

「ゲッターロボG!!やっぱ、量産型を投入してきたな!」

量産型ゲッターロボG。オリジナルのゲッターロボGとは別の存在であり、オリジナルと比べるとかなりの簡略化が施されている。メロディも唸るが、大群である。21世紀水準の科学を超越した科学の結晶たるゲッターチェンジ。それを大編隊で同時に敢行したのである。

「ドラゴン、ライガー、ポセイドン…!まだこれだけの数を!」

ゲッタードラゴン、ゲッターライガー、ゲッターポセイドン。量産型だが、ゲッターロボである事には変わりはない。フェリーチェも驚く。ゲッター真ドラゴンに合体してなお、部隊を組める数があったのかと。

『ゲッターGをまだこんなに用意してやがったのか、ブライ大帝!』

『ハハハ、ゲッター真ドラゴンの体内からいくらでも生み出せるのでな!』

量産型ゲッターロボGはポセイドン以外は簡略化された塗装がなされている。無人である事を示す無機質で統制された動き。真ゲッタードラゴンに大挙して襲いかかるが、本家大本のゲッターロボGが進化を遂げた『真ゲッタードラゴン』に勝てるはずはなく、レザーの一薙ぎだけでライガー(ライガーは三形態でもっとも柔であるが)を数体まとめて両断する。

『ハ、本家大元のゲッタードラゴンが生まれ変わったこいつに、廉価版(マスプロ)のゲッターGで勝てるかよ!』

プリキュア達から見れば、大怪獣同士のぶつかり合いにも等しい巨大ロボ同士の死闘。しかも同じゲッターロボ同士の死闘なのだ。ド迫力というべき武器の乱舞である。

「みんな、乱戦になるぞ。相棒との連携を忘れるな!空中戦じゃ、孤立すれば終わりだぞ!」

黒江の軍人としての本能が疼き、ドリームの姿を借りていながらも、本来の統率力を垣間見せる。ドリームは本来、行動で周りを引っ張るタイプであるので、黒江が言葉で指示をした事で、漠然と『目の前のドリームはのぞみではない』と悟るプリキュア達。それは漠然としている上、正体を知らされた者たちも、それを言える環境にないことで噤んでいるため、キュアブラックであろうとも、それは口に出せなかったのである。ただし、ドリームとピーチが『別人』とする推測は既にブラックもしていたが、確証がなく、ブラックも口に出せる空気ではないことはわかっている。

「皆が違和感を感じるのは承知しているけど、今、此処に立つ私たちはプリキュアとして立っている、信じてついてきなさい!」

「ど、どうするの!」

狼狽えるブラックをよそに、檄を飛ばす智子(姿はキュアピーチ)。

「生半端な技は連中には効かねぇから、少々荒っぽくなるぞ!ブラック、手を離すなよ!」

「う、うわっ!?」

メガライダーを急加速させた黒江はハンドルから一瞬、手を離し、その一瞬でアトミックサンダーボルトを叩き込む。量産型ゲッタードラゴンもこれには耐えられず、頭部が消し飛んだと思えば、糸の切れた人形のように倒れ伏す。これはモビルファイター同様に制御中枢が頭部にあるからで、ゲッターロボは基本的に頭部に大ダメージがいくと、操縦が困難になる構造なのだ。

「あのポセイドンはあたしに任せなさいっ!」

智子はサブフライトシステムから跳躍し、ピーチロッドをぶん投げ、サイコキネシスで空中に留め、ライドルスティックの要領で空中での姿勢変更用の回転軸として使い、遠心力を加えての飛び蹴りを放つ。

『プリキュア!Xキィィッ――ック!!』

律儀に手足を広げたX字の体勢を取ってから飛び蹴りの態勢に入るあたりはXライダーへのリスペクトである。足にX文字状のエネルギーが集約され、キックする足を輝かす。次の瞬間、ゲッターポセイドンの最厚装甲部である胸部がX文字に貫かれ、着地した智子がXライダーよろしくのフィニッシュポーズを決めている。

「野郎、Xライダーをリスペクトしてるな。おっ!キュアハート、何をするつもりだ?」

「あたしはこれで!」

空中でZXをリスペクトしたポーズを取ったキュアハートは『ZXイナズマキック』を再現した。キュアハートは現役時代、時勢的に浄化技が主だったので、破壊力を持つ技は他ヒーローからアイデアを拝借する事を選んだらしい。

「プリキュア!イナズマキィィィ――ック!」

キュアハートの場合は桃色の閃光を発しながらのキックだが、ダイ・アナザー・デイで鍛えられたため、威力はZXに引けを取らなかった。ゲッターライガーを二体まとめて貫き、爆破する。元々、仮面ライダーシリーズを見ていたと言っているので、その本物と交流を持った以上、彼らへのリスペクトは当然というのが相田マナのポリシーである。

「なら、あたしはこれで!ラブリーライジングソード!」

キュアラブリーが続く。こちらは自前の技である。ラブリーは第二期最後のピンクにして、武闘派であるので、エネルギーの剣を日本刀の形で形成し、そのまま、ドラゴンを一刀両断する。

「わたしもいきます!サァァイキック・ウェーブ!」

こちらは破邪大星ダンガイオーのリスペクトである。フェリーチェは攻撃手段が徒手空拳しか無いので、これも真面目に特訓して習得した技である。増幅された念動力を掌から撃ち出すこの技。ダンガイオーのように、手のひらに紋章は浮かばないが、手は発光しており、地面に魔法陣は出ている。それ以外はダンガイオーの取る手順を再現している。

「はっ!」

腕に『破邪の剣』を瞬時に召喚し、跳躍。大上段から拘束した敵を力場ごと一刀両断する。三体まとめて。

「サァァイキック・ざぁ――んっ!」

叫びもロール・クランの叫び方をリスペクトしているが、一応は本人たちの許可を取っているとの事。ゲッター軍団は三大スーパーロボットのみならず、黒江たちの反撃に出鼻を挫かれる。他のプリキュア達はプリキュアらしくない技の連続に言葉もない。

「おーし、それなら!オートデリンガー!!」

キュアメロディも完全に羽目を外し、機動刑事ジバンの装備を呼び出し、ワイヤーフレーム状の光が武器の形状を形作ったと同時に実体化する。

「オートデリンガー、サブマシンガンモード!」

オートデリンガー。かつての日本警察のワンマンアーミーと謳われ、表向きは『ロボットポリス』とされた(死者をサイボーグ化で蘇生させた経緯から、厳密にはサイボーグだが)機動刑事ジバンの最強形態『パーフェクトジバン』での最強兵装である。レスキューポリスに至るまでの組織とシステムが廃止された際、公安委員会などの意向で警察から防衛当局に管理が移され、死蔵されていた。ビッグワンがそれを回収し、近代化改修の後に64Fに供与したので、使用できるのだ。

「昔、悪の軍団を倒すために、日本警察がロボットポリス用に作った代物だ!食らいやがれ!!」

オートデリンガーは高密度のプラズマ光弾を撃ち出す『ファイナルキャノン』が切り札だが、反動が大きいため、空中戦では使用できない。だが、サブマシンガンモードでも、ギガストリーマーに匹敵する破壊力という『オカシイ破壊力』を誇るので、ツッコミどころ満載だ。重機関銃以下のサイズなのに、そんな破壊力(ギガストリーマー級)が出るあたり、超人機メタルダーの遺したオーバーテクノロジーが使用されている事を窺える。

「ねぇ、ドリーム。言っていい……?」

「あのなー、オウムじゃねーんだから、いい加減に飽きたんだけど」

「ひどーい!あれ、わたしのトレードマークなんだけどー!」

「バーゲンセールみてぇに連発すんなよなー。いくら口癖でも、しつけーぞ」

キュアブラックは口癖の『ありえな〜い!』を連発しすぎた結果、黒江にツッコまれた。ブラックは涙目になるが…。

「あ!前、前!」

「任せろ!……俺の怒りは爆発寸前!」

黒江はメガライダーに跨った状態でツインブレードを召喚し、そのままお得意の『アークインパルス』を決める。オートバイの運転に慣れている黒江は前々から、時空戦士スピルバンの極め技をリスペクトしている。手放し運転をしても、メガライダーは安定している事を知っているため、アークインパルスのX字斬りを再現する。

『アークイン・パルス!!』

「嘘!?」

あまりにも一瞬の出来事に、同乗するキュアブラックは固まっている。話を聞いているキュアブルームとイーグレットはこれで黒江達の話が真実である事を確信し、5とフレッシュを構成するプリキュア達も同じ思いであるが、場の空気的に口には出さない。だが、わかるのは一つだけある。自分達単独では、この危機をおそらくは乗り越えられないであろう事だ。敵が巨大ロボくらいでは怯まないが、積まれている武器の破壊力が想像を超えている上、力の元々の根源を奪われ、力が弱まったのをミラクルライトで補った自分達がどこまで戦えるか。それは正真正銘の未知数である。

「あなた……」

「事が済んだら、全部話す。まだまだ敵は出てくるからな」

黒江たちはこの時、思い切り目立っている。ちなみに、青年期からは裏方を中心に動くことで、自分らをサポートしているのび太をわざわざ前線に呼んで、積極的に関わらせる事は避けている。ダイ・アナザー・デイ当時の誹謗中傷にあった『この戦に野比のび太の価値はなし。全ての戦に価値もない。Gウィッチやヒーロー共に全てを明け渡したらどうだ。所詮、秘密道具がなければ無力の男、転生者と比べれば朧や虚が似合いだ』という一文に怒りを抱いていた。既に家庭を持ち、共働きであるが故、息子のノビスケを寂しがらせないようにとする彼女たちの配慮で、のび太はこの事態では、基本的に裏方で支援しているが、本格的に関わったわけではない。だが、ゲッターチームとダブルマジンガーのパイロット達に事を知らせたのはのび太であるので、その行動に価値がないわけではない。だが、子供時代の平時の怠惰ぶりがあまりに著名である、ダイ・アナザー・デイで積極的に戦った(そもそも、青年のび太は途中参加である)わけではない事を『のび太はテメーらの戯れに付き合う必要もなければ暇もないんだ!』と、Gウィッチ批判に無理矢理繋げる論調ばかりがクローズアップされる状況に怒り心頭の黒江と智子。体の良いゴシップ記事の類だが、存在に触れる事そのものがタブーな(ゴルゴは報道関係にも情け容赦はせず、自分を調べようとした記者の大半を消している)ゴルゴと違い、平時はあくまでも若手の一官僚であり、2020年オリンピックの射撃競技の代表に内定済みと、ゴルゴと違い、表世界でも一定の地位があるのび太に『その手の』ゴシップのターゲットを絞るのは、当然の流れだった。だが、のび太は実際は怠惰性がなおも残っており、矢面に立たずに人選とマネジメントに徹しているというのが、20代後半以降の特徴である。汚れ仕事も自分がやらなきゃ無理って状況以外は伝手とコネで相手を嵌め落とすのがやり口であり、30代以降は顕著に表れていく。加齢とともに嵌め落とすほうにやりくりを移行させるため、のび太はある種の頭脳性を手に入れたと言えた。自分で戦いに出ていたのは30を迎えるまで、つまり、ノビスケの幼少期までであり、以降は嵌め落とす方法を取ることで、家庭にいる時間を作っていたのである。

『ダブルマジンガートルネード!!』

ルストタイフーンとルストストリームの合わせ技が吹き荒れ、合成鋼G製の量産型ゲッターGを腐食させ、塵に還す。

『プラズマドリルタイフーン!!』

ライガーモードの真ドラゴンの技も組み合わせられ、天変地異級の暴風が敵を吹き飛ばし、粉砕し、腐らしていく。大軍団相手に一歩も退かない三機。プリキュア達は天変地異級の破壊力を見せる彼らの戦いぶりに驚異を感じる。戦場はすっかり彼らのものだ。

「わたし達、すっかり霞んでますね…」

「あんなんじゃ、出る幕がないわよ〜…」

出番がないどころか、『防護対象』扱いなため、まともに戦闘させて貰えないハートキャッチプリキュア。仕方ないが、当時はキュアサンシャインの覚醒前に相当し、キュアムーンライトも力を喪失していた時期に当たる上、ブロッサムとマリンも覚醒してから日が浅い頃である。この中で一番の未熟者であるのもあり、防護対象とされている。これは今の形態が彼女たち本来の『スーパーシルエット』ではない(ハートキャッチプリキュアはスーパーシルエットという、彼女たち本来のパワーアップを持つが、この時間軸では発現していない)からだ。

「ムゥン!!」

キュアマリンがため息をつくのを尻目に、智子がさらなる技を放つ。

『闇を切り裂け、ダブルサンダーブレーク!!』

プリキュアの姿でありながら、やっていることはスーパーロボットとヒーロー達へのリスペクトである。それでいて、実物と遜色ない破壊力を出せるのだから、凄いものである。

「数は流石に多いわね」

「だが、ジャンジャン行こうぜ。そうでなきゃ、俺達の名折れだ」

「確かに」

「さあて、空中はメロディとフェリーチェに任せてっと」

「着陸するの?」

「そうじゃないと、こいつを扱えないからな」

「な、何それぇ!?」

黒江はメガライダーを着陸させると、右腕にマックスキャリバーを、左腕にギガストリーマーを召喚する。プリキュアとの関連性ゼロな重装備である。ギガストリーマーはマックスキャリバーと合体させた運用が本来の姿であるので、マックスキャリバーをギガストリーマー本体との接続部にジョイントさせた上で起動させる(なお、ギガストリーマーに描かれているマーキングはソルブレイン時代のものである)。

「マックスキャリバー、ジョイント!!ギガストリーマー、マキシムモード!!」

ウインスペクター時代の正規運用形態を見せるギガストリーマー。プリキュアが持っていい類の武器ではないが、黒江はお構いなしに使用した。M1戦車を数秒で消し飛ばす威力なので、ゲッタードラゴンと言えども、量産型程度では、サイズ差をものともせずに蜂の巣である。わずか10秒ほどの射撃で量産型ゲッタードラゴン軍団の一群が蜂の巣になり、残骸に成り果てた。

「ヒュ〜、ゴキゲンだぜ。さすがにウインスペクター最強のツール」

「……へ、あ、あ、ありえな〜い!!」

ブラックは言わずにはいられない。後輩(?)がいきなり、見るからに重火器とわかる武器を使ったのだ。驚きも当然であった。上空では、フェリーチェがヴェスバーを使っての高機動戦闘に移り、キュアアクアらを驚愕させている。

「まだまだ、敵は手札を切ってくるだろうから、みんな。油断するなよ」

「これで終わりじゃないの?」

「ああ。あの龍やゲッターG軍団以外にも兵力を持ってるからな、連中は。こっちも次のカードを切る」

「次のカードって?」

「手は打ってある」

黒江は微笑む。ブラックはなんとなく不思議な感覚に襲われる。すると、上空で戦うプリキュア達の中央付近に一隻の超弩級戦艦がワープで現れる。それこそは。

「え!?戦艦……大和!?」

ドリルの艦首と船体に収納式のチェーンソーがある以外は戦艦大和に酷似した外見の戦艦が颯爽と陣取っている。ご丁寧に日本の軍艦旗もはためいている。

「みんな、その戦艦大和は味方だ!主砲の射線を開けろ!ブラスト圧で吹き飛ぶぞ!」

「ど、どういう事!?」

「早くしろ!艦砲射撃が始まるぞ!」

「事情を説明して〜!」

「そんな暇、あるか!!」

そのラ級戦艦こそ、ダイ・アナザー・デイには間に合わなかったが、ニューレインボープランの一環で建造されたプロトタイプ『豊葦原』、俗名は『轟天号』である。ラ號の二番艦として日本海軍が計画していた軍艦を扶桑が未来技術で完成させたのだが、極秘に運用テストを行う都合、大型航空機の名目で64に回された艦である。ラ號と違い、設計通りに51cm三連装砲を当初から兵装としているのが違いである。黒江がプリキュア達を退避させると、艦砲射撃が開始される。戦艦の艦砲射撃の凄まじさは爆煙が辺りを覆い隠すほどであり、プリキュア達は思わず息を呑む。

「そうだ、ドリームとピーチ、ブラックは…?」

地上のプリキュアの事が気がかりなキュアアクアが爆煙が晴れた後の地上の様子を確認すると…。

「え!?」

「どうしたの、アク…え!?」

「ま、また…新しいプリキュア!?」

アクアたちはまたも、驚天動地の事態に放り込まれる。ドリームとピーチがなんだかよくわからない重火器を持って、それっぽい決めポーズを決めているのに加え、二人の間に挟まる形で、またも『新たなプリキュア』がいたのだ。

『澄み渡る海のプリンセス、キュアマーメイド!!お覚悟はよろしくて?』

『深紅の炎のプリンセス、キュアスカーレット!!お覚悟、決めなさい!』


プリンセスプリキュアの登場だが、アクア達は時間軸の都合などで、そんなプリキュアがいる事などまったく知らないので、カッコよく決めた二人をよそに、空中で大パニックに陥る。

「キュアマーメイド…、キュアスカーレット!?」

「また、未来のプリキュアなの!?」

「はい。あの二人はわたしの属している『魔法つかいプリキュア』の一年先輩の『GO!プリンセスプリキュア』のメンバーです」

「い…、い…、いったい!何がどうなってるのぉぉーっ!?」

キュアアクアは水無月かれんとしての素が出てしまうほど驚き、普段は見られないコミカルさが出る。フォローしようとする相方のキュアミントも、あまりの衝撃にフォローできておらず、茫然自失の状態である。フェリーチェがさらりとプリンセスプリキュアを自分のチームの一期先輩であると明言したため、衝撃度は凄まじかった。ブラックも『新しい後輩』の登場の衝撃で真っ白になるほどであった。カッコいい場面だが、ブラックとアクアがコミカルさ全開なため、コミカルさが出てしまっている一幕であった。














――ここでこのプリキュアオールスターズ戦の時間軸について説明する。1946年。ダイ・アナザー・デイ作戦の終了後にあたる。501統合戦闘航空軍は作戦任務の完了後に名目上、『休眠状態』にされたが、実際は希望者全員が64Fの隊員という形で太平洋に集結していた。これは『せっかく集めたんだし、そのまま太平洋戦線に参加させる』という決定によるものであった。ただし、外国軍の軍人は魔弾隊に属していない場合、着任の大義名分は各々でひねり出す必要があったため、エイラ・イルマタル・ユーティライネンに至っては駐在武官という形で太平洋に着任した。カールスラント三羽烏は表向き、『東京五輪と教導のため』である。統合後の501の要員は政治、本人達の怪我などの理由で離脱した赤ズボン隊の主要メンバーを除く外国軍出身者の全員が太平洋戦線に集結し、結果として太平洋戦争に義勇兵扱いで従軍した。ただし、リネット・ビショップは正式に美遊・エーデルフェルトとして生きる事を選択し、表向き『諜報機関に属した』という事にしたので、リネット・ビショップとしては参加していない。サーニャ・V・リトヴャクも『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』として活動中であるし、フランチェスカ・ルッキーニも『クロエ・フォン・アインツベルン』として参加しているため、連合軍の主要構成国を網羅しているわけではない。美遊としては、リネットの時と違い、ブリタニアの『爵位』がある家の人間(リネットの家は大商人の家柄だが、身分は平民である)であるためか、ブリタニア空軍上層部からの扱いが『変わった』事を痛烈に皮肉っている。(中枢部のみが同一人物である事を知っているので、気性の激しい実母かつ、一次大戦の英雄であるミニー・ビショップをどう納得させるのかに心を砕く将官が多い)その関係もあり、南洋に自宅を構え、平時はそこを住まいにする者は隊の全員に及んだ。黒江達も南洋に邸宅を構えており、平時になると、そこで暮らすようになっている。ダイ・アナザー・デイの最中には購入しており、基地近くに造成された住宅街に64F主要メンバーは住むようになっている。64F用基地は46年にはまだ工事中の区間が存在するが、だいたいは稼働しており、地下部を含めての大要塞であった――







――世界情勢としては、ダイ・アナザー・デイが終了した後、カールスラントはわずか一年の内にすっかり弱体化してしまった。軍隊も一部の教導部隊と国際貢献用に温存された良質な部隊以外にまともな練度の部隊は存在せず、ドイツへの抵抗としての『雇用対策』的側面が丸わかりの惨状に落ち、有名無実化に等しい有様であった。国内には大量にリストラされた軍人で溢れかえり、年金支給すら危うく、軍事クーデターすら囁かれるほどに情勢は不安定化。ドイツ連邦軍が交流名目で駐屯していたり、アメリカ軍も『体制の安全の保障』を名目に基地を貸し切っている有様である。これにドイツ側は重い腰を上げ、『再就職支援』という名目で『ドイツ連邦軍への入隊』を始めとする失業軍人への福利厚生施策を矢継ぎ早に実行。ノイエ・カールスラントの治安回復に務めた。ただし、結果的に一年の内に『西ドイツ出身者』を優先して温存した事で、失業軍人や官僚が多い東ドイツ出身者との間に軋轢が生まれてしまい、結局、史実と違った形での東西の対立を生み出すという皮肉極まりない光景を出現させた点で、ドイツ連邦は失態を犯したと言える。皮肉にも、東西ドイツ統合後の失敗を鑑み、扶桑の軍組織の人的整理をしなかった日本連邦が旭日を味わっている最中に、ドイツ領邦連邦は軍事面での致命的失策で、カールスラント側の国家としての衰退を起こし、その後のウィッチ世界でのカールスラントの存在感を薄れさせ、G機関の『元帥』達とその血縁者達が軍隊を掌握し、コントロールすることで辛うじて、連合軍の列強枠の末席を維持する有様に貶してしまう。国家の『ナチ化』を恐れ、軍部を大幅に削減しようとしたが、結局、プロイセン軍の名残を残すカールスラント軍の衰退と、テロリストと化したナチス残党の強大化を促進させた。ナチス残党の成れの果てであるバダンの存在は日本には知られていたため、ドイツへの批判はこの時期、大手を振って行われていた。ドイツも流石に、第一次世界大戦以前のカイザーを中心にしたプロイセンの体制が存続している世界に『ナチス・ドイツが存在していること』を前提にした一方的な裁きを行う事の無意味さ、史実の残虐行為をする前に社会的地位を奪い、社会的責任を負わせ、制裁するという大義名分も『自慰的な自己満足にすぎない』と批判されるだけである事をようやく自覚したのか、軍人と官僚のリストラを慌てて緩和し、福利厚生の充実という言い訳で、失業軍人や官僚の再就職を支援したり、恩給を支給し始めた。だが、それは現地の財政の都合で上手くいかず、カールスラントの衰退期入りを決定づけることとなった。この致命的失策を補うため、連合軍は国力が温存されていた日本連邦の超大国化を促進させる。主に日本向けの圧力であったが、日本は『内圧には強くても、外圧には弱い』気質であるため、それに屈する形で、扶桑の『国土強靭化』を押し進める。その大義名分に、扶桑の夏と冬の五輪と万国博覧会を使ったのである。扶桑内地は史実三大都市圏と安土が大都市として栄え、織田家関係の遺産は保存されているが、それ以外は維持費の問題で消える事が多く、奇跡的に保存されていた仙台城も軍が買い上げ、司令部を置こうとしていた。これに激怒した日本側が軍部を押さえつけて叱責し、計画を撤回させたが、伊達公爵家は見込んでいた収入が消えた事に困惑。日本は爵位の降格を示唆することで伊達侯爵家を脅したのだが、建設業社への補償金も含め、あまりに莫大な金額になるため、伊達家の財産の限度を超えていた。Y委員会はこの事態に、司令部の地下施設としての建設、仙台城の史跡としての保存でなんとか鉾を収め、伊達家は表立っての処罰は免れたが、家中では騒動になり、伊達騒動が継続する。結局、華族の周辺が落ち着くのは、更に翌年の1947年まで待たねばならない。扶桑は概ね、文化的混乱もはらみつつ、1948年の東京・札幌五輪と万国博覧会に向けて、その国力を費やし、各地を開発している。それは事実だが、一面にすぎない。インフラ整備と再開発の真の目的は太平洋戦争のためであり、太平洋戦争で国民を危険にさらさないための地下都市建設に扶桑は情熱を燃やしている。黒江たちは厚木基地近くの区域、後の大和市に相当する地域の旅館で休暇を取っている時に、この事態が起こったのである。兼ねてから心の準備はしてきた戦。黒江たちはのぞみとラブの姿を借り、百鬼帝国と戦っていく――



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