短編『プリキュア、スーパーロボット大決戦6』
(ドラえもん×多重クロス)
――のび太は結婚当初からかかあ天下である。おっとりで、のんびりとしているのび太と、気が強く、ハキハキとしたしずかのカップルは大学在学中に『雪山のロマンス』を経て婚約を交わし、大学卒業後に結婚、その翌年に息子のノビスケを儲けた。しずかの気の強さは厳格な母親から開放されると表に出始め、二人が28歳の頃には『かかあ天下』と近所でも有名であった。その勝気な性格は息子の腕白さとして受け継がれ、ダイ・アナザー・デイ後の小学校入学時にはジャイアンの息子のヤサシ、スネ夫の二人の息子を子分にするなど、ノビスケは先祖代々の野比家と両家の関係を始めてひっくり返した。これは原始時代からの三家の関係を始めて逆転させた辞令であった。
――2020年の春――
疫病が流行り、ノビスケの幼稚園の卒園式が吹き飛び、小学校の入学式も雲ゆきが怪しいこの頃、ダイ・アナザー・デイを戦い抜いた功績で扶桑の伯爵位を叙爵する事になったのび太。同時に日本連邦軍の依頼で人材マネジメントなどの事業(裏)を開業する事になった。これはしずかに『30代になるんだし、息子のためにも落ち着いてほしい』と言われたからで、のび太の人生では第二の転換期であった。のび太はその人材マネジメント会社を表向きは妻を代表取締役にする形で設立し、全うな警察や自衛隊の転職などの斡旋を行う会社である。だが、裏ではヒーローユニオンという歴代のスーパーヒーロー達のネットワークとの仲介業を行い、それが会社の真の顔であった。のび太も30代を迎える頃にはノビスケが学齢期を迎えるからだ。その初仕事が『プリキュアオールスターズの世界に飛ばされた黒江と智子の救援』であるのは何かの因果であった。
――黒江はキュアドリームの姿を借りていたが、別人である事を暗示するかのように、示現流とタイ捨流を混ぜ合わせた独特の構えを取り、狂奔のスイッチを入れた――
「何がどうなってるの……?」
キュアブラックはあまりの衝撃に固まる。突撃したドリームの表情が見たことがないほど『戦闘に愉悦を感じ、高揚していた』からだ。しかも薄ら笑いさえ浮かべている。キュアブラックは怯えてしまう。
「あの子のいつものクセが出たな。まぁ、緊急時だ。止める必要はないか」
救援にやってきたRXとZOも苦笑いである。
「あなたたちは知ってるんですか、今、ドリームに『なってる』子の事を」
「それが…」
「俺たちもどこから説明すればいいのかわからん。だが、あの子は強い。それだけは言える」
RX/光太郎をして、この一言である。キュアブライトとキュアウィンディはこの時にRXから話を聞いた事で、黒江の話が本当であると確信に至った。そして、救援にやってきた次世代のプリキュアの一人であるキュアエースも動く。
「この戦いはもはや、あなた方の手を離れています。ここでブロッサムとマリンがやられれば、プリキュアの未来と因果に悪影響が生ずるは必定。二人を下がらせてくださいな、ブライト、ウィンディ」
キュアエースは現役時代初期は五分間の変身時間制限があったが、パワーアップを重ね、転生もした後であるので、現在は変身時間に制限はない。転生先はなのはの親友『アリサ・バニングス』であった。もちろん、なのはと同年齢なので成人済みだが、子供に若返っての変身でキュアエースとなるなど、こだわりを持つ。また、彼女の魂魄にある『別個体の記憶』の中に『どこぞの炎髪灼眼の討ち手』の記憶があったためか、この時点ではその記憶を生かした戦闘に切り替えている。現役時代と違い、備前長船と思われる刀をメインウェポンにしていたり、炎の翼を展開可能だったり、転生の影響か、現役時代より炎髪灼眼の色合いが濃くなっていたりする。
「彼らはこの世に存在してはならない存在ですわ。彼らを討滅するために、私達はこの戦いに介入したのです」
エースは精神面が成人になっていたり、別個体の記憶を見た影響か、現役時代より苛烈な物言いをしている。また、刀に炎を纏わせているなど、『赤のプリキュア』の正統な後継者である事も示している。
「その通りよ。悪いけど、手加減はしていられないのよね」
キュアビートもここで思いっきり物騒な代物を構えていた。人間が扱えるサイズにまでダウンサイジングした、フルアーマードサンダーボルト専用の大型ガンポッドである。元が対艦用の代物であるため、通常の人間には扱えないが、転生先がメルトランディであり、更にプリキュア化のブーストがかかっている状態ならば扱えると、黒川エレンは持ち出したのだ。
「ち、ちょ、ビート!お前、なんつーあぶねー代物持ち出しやがった!?そのガンポッド、ダウンサイジング試作したはいいけど、普通の人間には…」
狼狽えるキュアメロディ。彼女をして狼狽えるほどに危ない代物なのがよく分かる。ややあって、そのガンポッドが甲高い作動音と発砲音を響かせながら、百鬼帝国の兵士たちへ放たれた。人に撃つにはオーバーな代物である。
「わひゃあ!?何あれ!?」
「はーい。子供には刺激が強いから、見ないようにねー」
ハニーが主に黄のプリキュアなどに発砲の様子を見ないように促しつつ、刺激に特に弱いと思われるシャイニールミナスに見せないよう目隠しをしてやった。子供には見せられないスプラッタな光景だからだ。
「こりゃ、ガキ共は肉が当分は食えねーだろうなぁ…」
メロディも絶句するスプラッタな光景だった。人体を軽く粉砕可能な重火器、それもギガストリーマーやパイルトルネードも凌ぐ威力の『対艦用ガンポッド』を撃ったのだから、結果は推して知るべしである。
「すごいですね、あのガンポッド…」
「試作はされたが、パワードスーツ着ても扱い切れないってんで、お蔵入りしてた代物だ。ビートのヤツ、今はメルトランディだからって、アレを持ち出す事ねーだろ…」
思い切り引いているキュアメロディ。フェリーチェも冷や汗をかいている。それほどに物騒な代物を持ち出したかがよく分かるというものだ。
「どうします?」
「あいつがアレなら、あたしもアレを使う。…隊長、あたしだけど、紅蓮をエンジンかけた状態で打ち出してくれ。空中で飛び乗る!」
と、通信をかける。ややあって、ラ級戦艦『轟天』からダイ・アナザー・デイで使った『紅蓮聖天八極式改』(仮称)が打ち出され、メロディは空中で飛び乗る。可翔式以前の型でなく、紅蓮系最終型の特式でもなく、聖天八極式を改良したのは性能と燃費の両立の観点からだ。MSやモビルアーマーに対抗できるだけの輻射波動の出力があり、なおかつスピードもあるからで、そこも熱核反応炉搭載の機動兵器が普遍的な世界においての紅蓮シリーズの運用上の理由であった。
「さあて、今までのお返しと行こうじゃないか」
コクピットで微笑い、紅蓮系特有の操縦系(バイク型のインターフェースを持つ)で本領発揮と言わんばかりのキュアメロディ。キュアブラック達の目の前でエナジーウイングを展開し、その勇姿を誇示する。これにキュアブラック達はというと……
「へ……ぇ…!?そんなのありぃ!?」
この戦いでは置いてけぼりなブラック。この戦いにおいては驚き役になってしまった感は否めず、コメントがそればかりになっている。
「あ、あの……どうなってるんですか、これ……」
「あとで教えるわ、レモネード。色々ややこしい話だから」
「それで済ましていいんですか…、えーと…」
「キュアマーメイドよ。説明が長くなりそうなのよ、この事は」
キュアレモネードが辛うじて、キュアマーメイドに質問を投げかけるが、マーメイドもそうとしか答えられない。そして、轟天でまた動きがあった。
――轟天 格納庫――
「出るわ。F91の調整は済んでいるわね?與子、後を頼む」
「ハッ、いってらっしゃい、お姉様」
武子は副官であり、かつての従卒であった檜少佐に艦の指揮を任せ、自身もガンダムF91で出撃した。量産型ではなく、ワンオフであるオリジナル機の同型機のアップデート型であった。カラーリングは武子のこだわりか、旧日本陸軍防空飛行隊のカラーリングで、肩に64Fの矢印を意匠化したデザインのエンブレムが描かれている。F91は試作機の段階で数機が製造されており、その内の一機が近代化改修の後に武子が配備を要請し、地球連邦軍の手でダイ・アナザー・デイ後に配備されたものだ。なお、量産型でなく、オリジナルの機体なのは、量産機はダイ・アナザー・デイ以後は個人に合わせてのチューンナップが流行り、ダイ・アナザー・デイから間もない時期には、64Fに回す余裕がなかったのだ。部材単位のアップデートがなされているため、機体性能はシーブック機とシルエットガンダム改を上回る。なお、黒江が用いたツインヴェスバーパックが装着されており、ネオガンダム並の瞬間火力を誇る。武子は三次元空間把握能力を有した初期のウィッチであったが、それがニュータイプ能力へ昇華しており、F91のフルポテンシャルを発揮可能である。
「F91、出る!!」
武子は発進してなり、ビーム・サーベルでメカ一角鬼を横薙ぎで両断してみせる。F9シリーズのサーベルはνガンダム以上の出力を持つため、切断速度は早い。胸のVマークは無いため、保管されていた機体のレストア機であることがわかる。
『お、お武ちゃんが出たか。さて、こちらも本気を出すか。ダブルエンペラーブレード!』
それに気づいたマジンエンペラーGと鉄也も本気を出し、30m級のマシンながら、目にも留まらぬ剣技を見せた。甲児とゴッドも続く。
『ゴッドサンダー!!』
サンダーブレークの系統だが、雷を発生させ、広域放射で焼き払う範囲攻撃である『ゴッドサンダー』。サンダーブレーク以上の威力と高精度誘導を広域放射で実現するには、高性能管制装置が必要であり、グレートマジンガーの開発段階では不可能とされ、妥協された機能である。構想自体はマジンガーZの強化を念頭においたグレートマジンガーの基礎設計段階で存在し、存命中の十蔵も搭載を所望した武器であった。サンダーブレークは技術的には『紫外線レーザーによるイオン化した空気を媒質にして電撃を誘導する』もので、グレートマジンガーの指先にはそのレーザー発振器が内蔵されている。妥協の産物だが、スペースサンダーに匹敵しうる威力はあった。その改良発展武装という形で日の目を見たのがゴッドサンダーだ。ゴッドサンダーは面制圧用武装であり、『手を広げて振り下ろすと、五本の指先から雷がほぼ面で流れ出す』もので、また、Z神が神話で用いた『サンダースピア』、『サンダーブレード』を面制圧の形で実現したものであり、Z神の力の再現という意味では到達点と言える。
「あの魔神はどんな力を持つっていうの!?」
「あれは人の手で造られた機械仕掛けの神と言いましたよ、パッション」
「わかってるわよ、それは!だけど、あんなもの、普通に世界を滅ぼせるじゃない!?」
「世界は無理ですね、惑星一つ完全破壊して原子のチリにするくらいかしら?」
「ま、単体じゃな。だが、それが最高位のスーパーロボットたる所以だ。だが、敵は底なしの物量だ。ちっとは楽にしてあげんと」
黒江が言う。隠す意味がなくなったため、口調は普段のものに戻していた。ドリームの姿と声で言うので、ギャップがあるが、説得力はあった。
「そうだな。兜甲児と剣鉄也の援護は俺が引き受ける。お前達はゲッターチームにお守りを頼んである」
「サンキュー、デビルマン」
「いいってことよ」
デビルマンはそれだけ言って戦闘を開始する。姿と能力は『TVアニメ』のそれ寄りだが、デーモン族の勇者アモンを不動明が融合し、意識を乗っ取った形であるため、実質は『デーモン族としての知識を得た不動明』といえる。アモンは地獄の野獣と怖れられた獰猛なデーモンだが、自分より上位の力がある者には、途端に卑屈になる臆病な一面があり、上役で同族の『妖獣ゴッド』に物笑いの種にされていたという。とはいうものの、アモンはデーモン族の長『悪魔王ゼノン』の親衛隊に選抜されていたほどの強さは備えていたため、元から高位のデーモンであるのは確かだ。
「RXさん、ZOさん、ガキどものお守り頼んます!」
「任せろ!」
「行け!後ろは気にするな!」
と、黒江が突撃をかけようとしたが、そこでブライ大帝がウザーラから哄笑しつつ言い放った。
『威勢のいいことだ。だが、君たちの存在そのものがこの物語を壊している。そう思わんかね?』
ブライ大帝はこの『物語』が『プリキュアオールスターズDX2 希望の光☆レインボージュエルを守れ!』であったが、それを黒江達が壊している事を哄笑しながら指摘する。ある意味では図星であった。だが、ある意味、自分達が関わった事で世界線は派生を生み出している。
「その言葉、そっくりそのまま返させてもらう」
『貴様、門矢士!!この世界に来ていたのか!』
「ブライ大帝、お前のやり口は気に入らん。それに物語を壊すというなら、いっその事、全てを破壊して、その上で新しい物語を紡げばいいだけだ」
「士、お前……」
「子供たちの前だ。お前の事は黙っててやる」
「あ、あの…あなたは……」
キュアパイン、キュアホワイトが代表して、士にそう問いかける。士は珍しく微笑い返し、こう言った。
『通りすがりの仮面ライダーだ。よく覚えておけ。……変身ッ!!』
変身する士。パワーアップしたか、ディケイドライバーがマゼンダ色になっており、フェリーチェを助ける際の鎧武との共闘でパワーアップしたらしき事を窺わせた。
「ブライ大帝、貴方には下準備が足りない、段取りが足りない、何よりも情熱が全く足りない!そんな貴方の計画が思い通りに進むとは思わない事ね!」
キュアビートがここでどこかで聞いたようなニュアンスの啖呵を切る。ラブギターロッドを打ち鳴らしながら。メルトランディとして転生を遂げた影響か、好戦性が生前より強い。
「おい、ビート。珍しいな、お前が啖呵きるたぁ…」
「いいじゃない。たまには。いつもメロディたちにやられてるし、今回はね」
『ハハハ…小娘共、いくらRX、ZO、ディケイドを味方につけても、この大軍団を前にして戦い抜けるかな!!』
「何!?どういうことだ、あしゅら男爵!!」
『見よ!!』
空からは機械獣、戦闘獣、百鬼メカ、それと有翼のデーモン族が、陸にはショッカー、ゲルショッカー、ネオショッカーの三代の『ショッカー怪人』全員の軍団が現れた。そして、それを率いるは。
『フハハ……見たかプリキュアとライダー共、バダンの技術陣が作り出した改造人間三世部隊だ!』
「テメーはマシーン大元帥!」
改造人間三世部隊。再生怪人はスペックをすべてライダーに把握されているため、一撃で倒される事も珍しくない。それを物量で補うという方向でネオショッカー時代に存在した『改造人間二世部隊』。その後継にあたるため、『三世部隊』なのだ。
「如何に貴様らとて、子供らを守りながら、大軍団を相手に戦い抜けるかな」
「死神博士!貴様も黄泉帰っていたのか!」
「かの方が私を必要としたのだよ、キュアドリーム。フフフ…」
軍団を率いて現れたマシーン大元帥と死神博士。変に気が利くあたり、死神博士の倒錯した人間性が窺える。元来は愛する妹の蘇生を願ったはずが、ショッカーの大幹部にまで身を落とした日露混血の男の悲哀といえる。
「如何にお前らと言えど、たった三人で子供は守りきれまい!」
「そいつはどうかな?」
「何…?」
「お前らがそう出る事は予想していた。だから、こちらも切り札を切らせてもらう」
ディケイドは自身の『次元の境界を開く能力』を発動させ、自分達からある程度離れた空間に開く。その次の瞬間、ディケイドが武子らに轟天の『グラビティブラスト』と『波動砲』の使用を控えさせてまで用意した一手の証明が姿を現した。空にはジャガーバルカン、ゴーグルシーザー、マシンバッファロー、ターボランジャー、電子聖獣ドル、グランナスカ、バビロスの姿が、ディケイドらのもとには残りの昭和十大仮面ライダー達が愛車の爆音高く、颯爽登場した。一号からZXまでの全員が隊列を組んで愛車で駆けつけたのである。
「ヌゥ……ディケイド、貴様……」
「言っただろう、切り札を切ると」
新サイクロンからヘルダイバーまでの十大ライダーマシンが陸上を駆け、怪人軍団とプリキュア達のちょうど中間点に陣取る。
『本郷猛、貴様、ディケイドの誘いに……!』
「生憎だったな、死神。確かに俺たち昭和ライダーと平成ライダーの間には相容れない点もあるが、人類の自由のために戦う心は同じだ!!」
「世界に邪な者が栄えた試しはない!観念しろ、死神!」
「おのれ、一文字隼人……またしても、私の計画を邪魔立てするか!」
「イエース!昔に言ったはずだぜ、死神。俺たちは貴様ら『歪んだ機械文明の破壊者だ』とな!」
二号の秀逸かつ、かつての戦いでの一幕に絡めた返し。隊列の先頭にスカイライダーのスカイターボが立ち、代表する形で『ライダーブレイク』を時速1200キロの高速で仕掛けた。要はスタイリッシュなひき逃げであるが。
『ライダァァブレーーク!』
スカイターボの車線上に立っていたショッカーの初期怪人の24体ほどが音速突撃に耐えられず、高周波振動による破砕効果の餌食になる。ヤモゲラス、サラセニアンが胴体まっ二つ、こうもり男はヤモゲラスの上半身が弾丸となり、激突して死亡するなど、悲惨極まりない光景が出現した。
『サイクローンアタック!!』
『ハリケーンラストダァッシュ!!』
『クルーザーアタァック!!』
他のライダーも最低でも250キロオーバーの高速でアタックする。ブースターでブーストを瞬間的にかけたライダーもおり、なんとも手段を選ばない攻撃で数十のショッカー怪人が粉砕、死亡していく。
「うわーお。すごいエグい攻撃すんなぁ」
「先輩たちも手段を選んではいられないということだよ」
「一発でショッカー怪人が20くらい死にましたよ」
「筑波先輩のマシンはライドロン並に速いからなぁ」
RXもこの一言である。ちなみに光太郎のマシンはライドロンを除くとロードセクターがもっとも速いが、オンロード仕様であるため、オフロード戦には向かない。
「え、スカイターボ、ロードセクターより上でした?」
「アクロバッターやロードセクターより上だよ、先輩のスカイターボは」
「速度はVジェットと双璧であの域になると地面蹴って走ってないからな」
「ZOさん」
「俺のZブリンガーも1000キロ代は出ると思うが、試したことがなくてな」
「エンジンは余裕ありますからね、あれ」
隊列を崩された怪人軍団は12人の仮面ライダーめがけ、一気に突撃を敢行する。長時間の戦闘で疲弊したプリキュアオールスターズ(DX2当時)は意思は旺盛なれど、体がついて行かない状態に陥り、スーパー化がミラクルライトの時間切れで次々と解けていく。
「そんな、こんなとこで時間切れ!?」
悲鳴をあげるプリキュア達。反動が体を一気に襲い、キュアブラックとキュアホワイトでさえ、身動きが取れなくなってしまう。
「ミラクルライトの代償なの、これは……体が言うことを聞かない……!?」
その場に倒れ込み、起き上がろうとするが、全身に力が入らないキュアアクア。他のプリキュアもほぼ例外なくスーパー化が解け、身動きがとれない状態に陥る。やはり、パワーの供給を一時でも絶たれたところをミラクルライトで補った代償は体力の喪失だったのである。
「あの人たちや未来の後輩達に頼るなんて嫌だよ……あたしは……!」
「あたしたちだって…誰かの願いを背負ってるんだよ……こんなところで……」
ブラックとブライトは立ちあがろうとする。それはプリキュアとしての矜持もあるが、自分たちの想いの強さがそうさせていた。だが、ZOだけで複数のプリキュアをカバーはしきれない。そこを怪人軍団は突こうと動く。
「やめろ!今の君たちには戦う力は残ってはいない!」
止めようとするZO。だが、ブラックとブライトに触発され、他のプリキュアも次々と立ち上がろうとする。
『誰がなんて言っても、あたしたちは絶対に諦めない!!諦めるもんかぁ!!』
ブラックの思いの丈をぶつける叫びに応えたか、仮面ライダーに続く戦士がその勇姿を現した。
『その意気や良し!』
「そ、その声は!」
「マシーン大元帥、死神博士、この星を守っているのは仮面ライダーだけではないぞ!」
「貴様は!」
『太陽戦隊サンバルカン、バルイーグル!!』
威風堂々と名乗りをあげるバルイーグル。名乗りの際のポーズのクセから、二代目バルイーグルであることがわかる。(初代と二代目バルイーグルは名乗りのポーズに違いがある)これまた、これ以上なくカッコいい登場の仕方であった。
『大戦隊ゴーグルファイブ、ゴーグルレッド!』
『超獣戦隊ライブマン、レッドファルコン!!』
『光戦隊マスクマン、レッドマスク!!』
そして。それらレッドを束ねるのは…。
『ハハハ……お二人さん。私を忘れてもらっちゃ困るね』
『貴様、番場壮吉!!馬鹿な、貴様は磁石団長らが足止めしていたはずだ!?』
『あいにく、それは新命君だよ、マシーン大元帥。こんな事もあろうかと、思案を重ねたが……大成功のようだ』
『おのれ、この儂を図りおったな!』
熱り立つ大元帥。それを尻目に番場は変身し、ジャッカー電撃隊行動隊長としての真の姿を披露する。
『ジャッカー電撃隊行動隊長、ビッグワン!!』
「おお!!すげぇ……豪華だ、豪華すぎるぜ……!」
12人ライダーのみならず、スーパー戦隊も選抜されたレッド達をビッグワンが率い、戦場に駆けつけたのである。これには黒江も興奮気味である。更に。
「プリキュアの諸君!諸君の心意気は受け取った!後は我々に任せろ!!」
「ぬぅ…、貴様らもか!?」
『宇宙刑事ギャバン!』
『宇宙刑事シャイダー!!』
『時空戦士スピルバン!!』
三大メタルヒーローも参陣した。これで日本の誇る等身大スーパーヒーローの三大ジャンルを網羅した事になる。一言で言えば、ヒーロー史上空前の豪華な陣容である。ヒーロー史上に刻まれる豪華な陣容の援軍であった。プリキュア達は『世界を守るのは自分達だけでは無い』という嬉しさもあったが、ミラクルライトの代償ともいうべき体力の消耗で、ほぼ全員が戦闘不能状態となる予定外の状況はプリキュア達には痛手である。
「もう、あたしたちには戦う力はないの……!?」
「悔しいよ…。こんなたくさんの人達が助けに来てくれたのは嬉しいけど、この戦いはあたしたちの戦いなのに……」
自力でケリをつけられないという悔しさをブラックを筆頭に、二代のピンクが悔しさを顕にするが、実際問題、彼らの助け無しには、もはやどうにもならない事を悟っている者もいる。
「私達も戦わせてください!このまま、皆さんの足手まといのままでいたくないんです!未来の後輩にまで迷惑をかけるなんて、わたし…!」
「助けられるのは、恥でもなんでもねぇぞ、助けられるってのも、お前の力なんだからな、ブロッサム。いや、花咲つぼみ。それとマリン、来海えりか?」
「わたしの名前を知ってるんですか、ドリーム…?」
「え、あたしの名前をいつの間に!?」
「話は後だ。それに迷惑かけたのは、奴らをこんな所まで来させちまった俺らの方だ、気にすんな!」
黒江はここで荒っぽい素を垣間見せ、サムズアップする。プリキュア5の他のメンバーはこれで半信半疑であったことがが確信となった。だが、空気的にツッコミを入れるのは『野暮』であるので、ミルキィローズ含め、沈黙を守る。
「そうだよ、つぼみちゃん」
「あなたは…?」
「あたしは相田マナ。キュアハートだよ。つぼみちゃんの二期か三期くらい後輩だよ」
「え、に、二年か三年……後輩!?」
キュアハートがフォローに入る。歴代のピンクのプリキュア唯一無二の完璧超人と言えるのが相田マナである。歴代ピンク唯一の生徒会長経験者であり、スーパープリキュアとしても五指に入るレベルの戦闘力を持ち、生徒会長というアイデンティティを持つ点で、歴代の異端児扱いとされる唯一のピンクが彼女だ。スーパープリキュアとしては、薄いピンクのコスチューム、マント状のパーツの装着や翼の拡大など、思いっきり目立つ。その派手さは伊達ではなく、シャイニングドリームをも上回るスペックを持つ『第二期プリキュア最強のプリキュア』である。
「つぼみちゃん、あたし達を信じて。この時期はまだ、ミラクルライトを振る側の立場だったけど、あたしもプリキュアになった。だから、強くなれるよ、どこまでも」
「お前がプリキュアならな」
ハートとドリームの微笑みに感銘を受け、曇った表情を捨てるキュアブロッサム。
「だって貴女は可能性の『つぼみ』でしょ?」
「ピーチ……」
「それに、つぼみちゃんとえりかちゃんを敵にやらせたら、あの二人に会わせる顔がないしね」
キュアラブリーも同意する。
「お、おい、ラブリー。いいのか、それは…」
ブロッサムは決戦開始から抱いていた想いをドリーム(黒江)にぶつけたという。自分の未来の後輩というキュアラブリー、キュアハートがドリームの護衛として立派に戦い、更に二人が歴代ピンクで指折りの武闘派であったため、歴代のピンクでも秀でた能力がほとんどない上、先代であった自分の祖母は最高レベルのプリキュアで鳴らしていた事も知っていたためか、ドリーム(黒江)に劣等感を抱いたのだろう。
「ミラクルライトふってた中に混じってましたよ、あの二人」
「嘘ぉ!?」
「マジィ!?」
その報に流石に腰を抜かす黒江と智子。
「あのぉ、それって誰の…」
「そうだね、直に分かると思うよ、えりかちゃん」
とびっきりの笑顔を見せるラブリー。フォローも怠らない。そこで黒江もブラックとブライトに言う。
「ブラック、ブライト。素直になれよ。お前らは普段助ける側だろうから分からんだろうが、時には『助けられる』事も勇気のいることだぜ?」
「ドリーム、どういう事、それ!?それに……どうして、あなたとピーチだけが動けるの!?」
「ブラック、全て話すさ。野郎どもを地獄に送ったら、な」
黒江達はミラクルライトを介してのパワーアップではないため、皆に合わせて通常フォームに戻しても、戦闘能力の差は生じない。また、この時代に生まれていないはずのプリキュア達はパワーアップの依代が別であったり、本来はまだプリキュアとしては存在しないはずの時間軸にいるため、パワーダウンの対象外である。
「景気よく、一発ぶち込みまっせ!」
ドリームの姿は借りていても、戦闘で全力は出す黒江は、御坂美琴の同位体の記憶を得て覚醒したグンドュラ・ラルと同じように、光子力研究所から横流しされた『鉄をジャパニウムでコーティングした記念コイン』をどこからか取り出し、『超電磁砲』を撃ち、それを反撃の狼煙とする。(本来は新光子力研究所完成の暁に配布予定だったもの。だが、ジャパニウムの大規模採掘に富士山を掘る必要が生じたため、住民投票で新研究所の建設はキャンセルされ、コインだけが宙に浮いてしまった。また、光子力を原子力の代替エネルギーにする計画もマジンガーZERO対策の一環で最終的にキャンセルされたため、光子力の平和研究が下火になりつつあった)戦場に一筋の閃光が奔ったわけだが。
「景気づけだ!」
それと同時に、この世界のプリキュア達は知らない楽曲である『final phase』(美琴達を題材にしたTVアニメのOP主題歌)をこの時点での地声で歌い始める。これで流石にブラックも本格的に疑問を抱いた。(のぞみはエアギターができるとの事なので、音感そのものはあるが、歌は下手である。一方の黒江は英才教育もあって、プロで食べていける歌唱力を持つ。)調と入れ替わっていた時期、シンフォギアで普通に高ポテンシャルを出せた理由もそこにあった。
――一方、黒江達を助けるため、なんだかんだでのび太も現地へ赴いた。結局は血が騒いだのだ。前回にも述べたが、のび太はダイ・アナザー・デイの後の時間軸では、彼の年齢がそろそろ30代に達する事から、なるべく『フィクサー』として動くように、妻のしずかから強く言われ、かかあ天下気味といおうか、妻に激甘ののび太はノビスケの育児問題もあり、やむなく従った。本来は彼自身が真っ先に助けに行くべきであり、のび太も乗り気であったが、息子のノビスケの幼稚園の卒園式の予定と被ってしまい、やむなく断念した。一旦は。だが、なんだかんだで動く事になったわけだ。黒江と肉体を入れ変わっていたのぞみは戦いのビジョンを夢という形で見たことで不安になり、のび太に相談。のび太とドラえもんはのぞみに、それは裏も取れている正夢であると伝えた。バダンが動いた事が伝えられたことから、動揺し、取り乱すのぞみ。自分の姿を黒江が使っている事はあまり気にしていないが、むしろ、戦友達の事を心配し、狼狽した。
「大丈夫、綾香さんのことだ。上手くやるって」
取り乱したのぞみをそうやって宥めつつ、のび太は今の自身にできる事として、ヒーロー達のネットワーク『ヒーローユニオン』に情報を伝達。応対した仮面ライダー一号/本郷猛にのぞみの願いを伝えた。のぞみは涙ながらに訴えた。
『組織の改造人間に対抗する力を持たない友達を守ってください!!いくら先輩たちやのび太くんでも、組織全体が動いたら……!お願いします……。あなた達が頼みの綱なんです……本郷さん…!』
「……わかった。各地に散っている昭和ライダー達に緊急呼集をかける。俺たちの全力を以て、君の想いに応えよう。」
「あ、ありがとうございます!!」
……というわけで、昭和ライダーはこれで戦闘態勢に入り、門矢士に連絡を取って、手引きをさせ、次元を越えたわけだ。ヒーローユニオン全体にこの救援要請が伝わったのは、それからまもなくの事であった。
「ドラえもんくん、本郷さん達は大丈夫かな…」
「彼らを信じなって。彼らは『仮面ライダー』なんだよ?」
「それはそうだけど…」
黒江達のことは、自分を凌ぐ実力の観点から心配はしていないのぞみ。だが、基本世界に比較的近い場合のプリキュアオールスターズでは怪人軍団に太刀打ちできないことから、仮面ライダー達を信じるしかない。ちなみに、黒江がこの頃の自身の肉体の普段の容姿をダイ・アナザー・デイの途中からだが、『サクラ大戦3』のメインヒロインであった『エリカ・フォンティーヌ』のものに変えていたため、のぞみは入れかえロープを使った影響で、その姿で吉報を待つ事になった。
――新・野比家のリビングでドラえもんと共に吉報を待つのぞみ。保護者然とした落ち着きを見せるドラえもんと、紅茶カップを持つ腕がガタガタ震え、見るからに取り乱しているのぞみの姿は、受験の結果を待つ受験生の親子さながらである――
「栄光の12ライダーが負けるもんか。それと君の友達を信じてあげなよ。甲児さんたちも戦ってるし、のび太くんも現地へ向かったんだ、待とうよ」
「うん……」
ドラえもんは12人ライダーを『栄光の12ライダー』と称し、のぞみを落ち着かせようとする。のぞみは前世の経緯から、ひどく弱気になってしまったところがある。この時はその弱気になってしまった面が表れたと言える。だが、ドラえもんの子守ロボならばの『温もり』(ただし毒舌家だが…)は言葉で表す事のできない安心感をのぞみに与えている。そんな最中、ドラえもんのタブレットにヒーローユニオンの事務部署から連絡が入る
「やった!ヒーローユニオンからだよ、他のヒーローも戦闘態勢に入るって!!」
「そ、それじゃ!」
「日本の誇る三大等身大ヒーローの勢力が一堂に会することになるよ。良かったじゃないか!」
「う、うん……!」
感極まり、思わす涙するのぞみ。ドラえもんと手を繋いで、小躍りして喜び合う。のぞみの必死の思いと言葉が歴代の英雄達を動かしたのだ。この時、のぞみは始めて『助けられる側の立場』を理解し、同時に自分の拙い言葉を信じ、それに全力で応えてくれた本郷猛へ感謝し、同時に絶大な信頼と、本郷への尊敬を抱くようになるのであった。
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