短編『プリキュア、スーパーロボット大決戦5』
(ドラえもん×多重クロス)
――歴代の仮面ライダー達の主敵『バダン』はそのネットワークでプリキュアの存在を把握し、デーモン族と手を組み、『プリキュアオールスターズの世界』のプリキュアたちを急襲。のび太と仮面ライダーディケイド/門矢士の手引でその救援にいち早く駆けつけたのは……――
「やれやれ、こういう事になるとはね」
「お!ハニー、来たのか!」
「さて、『妹』の前だし、ちょっとはいいところ見せておくとしますか」
如月ハニーはプリキュアオールスターズの前に『秋元まどか』の姿で現れた。ライダースーツに身を包んで、こまちを大学生ほどに成長させたと思わせる容姿だが、違うのは、ハニーの証である空中元素固定装置のスイッチを兼ねるチョーカーがあることだ。
「いいのか、ハニー?お前の前世での妹を含めたガキの前だぞ」
「可愛い『妹』の前だからこそ、よ。たまには良い格好したいのよ、姉らしくね」
ハニーはまどかの姿で微笑う。ドリーム(黒江)の事はのび太達から予め知らされているらしい。
「え!?お、お姉ちゃん!?ど、どうしてここに!?」
キュアミントがその姿に気づき、地上に降りてきた。
「や、こまち」
「どうして、こんなところにいるの!?こんなところにいたら……それより、今日は家でお菓子を作ってるって」
「ま、色々あってね。それと、あたし、あなた達がプリキュアだって事は分かってたわ」
「そ、そうなの……?」
「干渉するつもりなかったから、あたしもお父さん達に言わなかったのよ、こまち。それと、地球の危機に黙ってちゃ、元祖変身スーパーヒロインの看板がすたるから」
「……へ……?」
「色々とややこしいけど、あたしも今は変身ヒロインしてるのよ。その証拠を見せてあげる」
キュアミントは次の瞬間、完全に固まる事になる。実の姉が自分と同じように変身したのだから。
『ある時は秋元まどか、またある時は如月ハニー、そしてその実体は!!愛のため、乙女は変わる!ハニーフラァ――ッシュ!!』
この時は通常形態のキューティーハニーでなく、最強のハイパーハニーに直接変身したわけだ。
『愛の戦士、キューティーハニーさ!!貴方の人生、変わるわよ★』
ウインクも決めて、決めポーズも決める。ハイパーハニーに直接変身を行うなど、ノリがいいらしいハニー。サービス精神旺盛である。ただし、通常形態よりコスチュームがかなり際どいので、どこかの団体から抗議が来そうとぼやいているが。
「嘘!?ど、どうしてお姉ちゃんが変身できるの!?しかも、キューティーハニーって!?」
「ま、その辺はおいおい、ね」
白を基調にしたそのコスチュームは通常のキューティーハニーとは異彩を放っている。胸元の隙間も大きくなり、胸元の谷間を強調しているため、2020年代に入る頃なら、確実に文句が入るデザインである。これについては説明がややこしい事請け合いな経緯なので、ドリーム(黒江)も苦笑いである。
「加勢するわ。そのために来たのよ、私は。それと、あなたの後輩の子らを引き連れてきたわ。」
「それじゃ、あの子達は…本当に?」
「他にもいるわよ?」
「いるの!?」
颯爽登場したキュアマーメイド、キュアスカーレット。そして。
『愛の切り札、キュアエース!!』
『英知の光!キュアダイヤモンド!!』
『爪弾くは魂の調べ!キュアビート!!』
『爪弾くは女神のしらべ!キュアミューズ!』
『銀河に光る虹色のスペクトル!キュアコスモ!』
この時代においては『新世代』に分類される7人のプリキュアが更に戦線に参加する。合計で7人の追加だ。
「お前ら、のび太の差し金か?」
「そうだよ。仕事も早く終わって、休暇取ったし、それでね。ずいぶんと面白いことしてるね?」
「ま、息抜きしたら、こうなっちまったのさ。見ろ、お前らが来たから、ブラックが完全にフリーズしたぞ」
「なぎささんには気の毒な事になったけど、仕方ないわ。ブロッサムとマリンがやられたら、後輩である私たちの存在が危うくなるもの」
次々と起こる事柄についていけず、キュアブラックは頭がショートしてしまい、フリーズしてしまったらしく、ホワイトが首根っこ掴んで揺さぶっているが、オーバーヒートしてしまったようだ。頭から煙が出る始末で、完全にオーバーフロー状態だ。
「かーっ、それでも元祖プリキュアかよ…援軍は轟天とお前らか?」
「いや、まだいるよ、彼が」
「何?」
『デェービィーィィル!』
空から雄叫びが聞こえ、デビルウイングを展開し、颯爽と飛翔するデビルマン/不動明の姿が見えた。
「デビルマンか!……こうなってくると、完全にスーパーヒーロー大戦の様相を呈してるじゃねぇか、この戦い」
アークインパルスなどで正体を悟られているため、黒江は地を出し始めた。声や姿はドリームのそれだが、態度は完全にいつもの黒江に戻っている。
「さて、そろそろ、俺も本気出すかな……っと」
黒江は自分本来の得物の一つ『エクスカリバー』を構える。基本機能はアルトリアの持つ宝具と同様のものだが、それとは別に、女神『アテナ』が代々の山羊座の黄金聖闘士に与えし剣の霊格を実体化させたものである。ただし、アルトリアが風属性を持つのに対し、黒江はより攻撃的な属性である雷である。風王結界を解いた刀身は紫電の光を纏っている。それが黒江固有の特徴である。(ちなみに、弟子の調は炎を纏う)
「黄金の剣……!?あなた、それをいったいどこで…!その剣はまさか、伝説の…!」
「説明は後だ、ミント。全ては事が終わった後だ」
キュアミントはドリーム(黒江)の持つ剣の姿にそれが何であるか気づいた。そして、エクスカリバーを持った立ち姿が『のぞみがキュアフルーレを持った際の姿』と違い、『訓練を受けた剣士の構え』であることから、それまで半信半疑であったことが確信に変わった。
「さぁて、いっちょやりますか」
キュアピーチ(智子)も、既に自分自身の得物である備前長船兼光を構えている。刀身に蒼い炎を纏わせ、自身も蒼いオーラを発している。
「あなた方、説明がややこしくなる事をおやりになられて……。仕方ありません、付き合いますわ」
キュアエースも、どこからか太刀を取り出す。本当はどこぞの炎髪灼眼の討ち手よろしく、大太刀を使うつもりだったのだが、大太刀は大きすぎて取り回しが難しいという指摘を受け、通常の太刀で我慢した。こちらはイメージカラー同様に赤い炎を纏わせている。(青の色の炎のほうが実は温度が高いのであるが)
「援護しますわ、あなた方は遠慮なく突っ込んでくださいな!」
「スカーレット、エース。お前ら、キャラかぶりすぎだぞ」
「それ、今……いいますの?」
「事実だろー」
苦笑いのスカーレットとエース。いずれもルージュの属性である赤のプリキュアの継承者の一人であるが、言葉づかいなどがスカーレットとエースはかぶっており、黒江たちからは大いに愚痴られていた。令和の時代になる頃になれば、プリキュアオールスターズは60人以上もいるので、誰かどうかはキャラかぶりが発生するのだ。
(どうするんです?あなた方の正体、みんななんとなく悟りましたよ?)
(竹井、仕方ないだろ?のぞみとラブのポジションを空白にするわけにはいかんだろうが。ブラックやブロッサムにはわりぃが、こうなっちまった以上、俺たちで始末つけんぞ)
テレパシーでマーメイドとやり取りを交わすと、ドリーム(黒江)はエクスカリバーを撃つ前に、ピーチ(智子)と示し合わせ、ある攻撃を行う。それは。
『原子一つ残さず燃え尽きろぉ!!』
『光子力を炎と変える!!』
智子は両腕を使って光子力の火球を作り、黒江はプリキュア5のコスチューム(第二期時点)の胸の蝶形リボンを放熱板代わりにする形で光子力エネルギーを集束、制御し、二つの『魔神皇帝』の炎をその場で放った。
『ファイヤーブラスターッ!!』
『グレェェェト!!ブラスタァァアッ!!』
『二人共、私もやります!!インフェルノギガブラスタァァアッ!』
フェリーチェも加わり、ブレストファイヤー系の最高峰と言える『ブラスター』の名を持つ技の三つを一つに束ねて放った。黒江、智子、ことはの三人の鍛え上げた力もあり、その威力は本家大本の魔神皇帝に何ら劣らず、百鬼兵、バダンの再生怪人&コンバットロイド、デーモン族の連合軍の隊列に大穴を穿つ。
『嘘ぉ!?』
他のプリキュア達の多くはこの攻撃に度肝を抜かれた。三人は雲霞のように押し寄せてきた敵の軍団の隊列に大穴を穿つほどの『炎』を放った。射線軸上の地面があまりの高熱でガラス化を引き起こしているほどのパワーで。今の自分達には逆立ちしてもできない超絶的な光景である。
「ね、ねぇ……な、何あれ!?何なの!?ドリームとピーチに何があったのぉ!?ありえなーーーい!!」
「あ、ブラックが元に戻った」
「嘘でしょ、あの力……完全に私達の全力を超えている…!?」
キュアアクアは三人のパワーが完全に自分達の最大ポテンシャルを超えている事を理解し、息を呑む。それにキュアベリー(ダージリンへ転生した彼女ではない)、キュアパッションが続く。
「ええ……。ブラック達の手前、言えないけれど……あれが『あの人』達の力だというの……超絶チートじゃない!?」
「安心して、ベリー。たぶん……この場にいる殆どはブラック達に配慮して言わないだけで、おそらく気づいてると思うわ」
そんな三人をよそに、黒江達は畳み掛ける。
『こいつもおまけよ!ターボスマッシャーパーンチ!!』
『グレートスマッシャーパァンチ!!』
『スクリュークラッシャーパーンチ!!』
三人は新生トリプルマジンガーのロケットパンチと同じ効果を持つ籠手を形成、同時に撃ち出す。いずれも回転と何らかの突起や刃を加えて通常のロケットパンチより威力を強化されたものであるため、ほぼ無防備に喰らえば、抉り取られるか、体に大穴が開けられる。しかも撃ち出す速度は大気圏での限界速度であるマッハ5.5。たとえデーモン族であろうと、無事では済まない。やっている事は完全にプリキュアでなく、人間マジンガーである。それらを戻した後は援軍組を率い、三人は吶喊していく。プリキュアオールスターズは通常はブラックとホワイトが先頭に立つものだが、キューティーハニーなどの援軍もあり、黒江達がリーダーシップを取るに至った。そして、本来の供給源を断たれ、パワーダウンした状態をミラクルライトで補っているため、パワーの長時間の維持は未知数であるプリキュアオールスターズ(ミラクルライトはあくまで『体力回復とパワー回復の呼び水を想いの力で起こす』アイテムである。なお、本来は『まだ、プリキュアとして生まれていない』はずの後代のプリキュア達については、パワーダウンの対象外なので、万全の状態で戦えている)。
「つーか、なんで、あんたらが仕切ってんのよ!?ここはあたした…」
「るせぇ!マリン、ギャーギャー喚く暇があったら、自分の身を心配しろ!!」
「そ、そんなー!あの人、なんか怖いー!」
黒江は姿と声は必要上、シャイニングドリームのそれを維持しているが、正体がバレているのを前提に行動するようになったため、本来の態度に戻している。それに従い、エクスカリバーで脳天からの一刀両断や横薙ぎを躊躇なく行うようため、姿的意味で『剣を持つプリキュア』の極致を地でいくものだ。(ある意味、後世に現れるキュアエールとは対極的である。のぞみが前世で苦しんだ要因の一つも、青年期以降の戦いで『敵を倒すこと』について、のぞみは野乃はなと意見が対立し、それがやがて、世代間対立の様相を呈してしまったからとの事)
「いいか、こいつらに慈悲は必要ねぇ。生かして帰すなよ!!」
黒江は堰を切ったように、戦に関しては日本一恐ろしいとされた薩摩人の本性を見せ、修羅となる。
――こい(これ)は合戦ぞ。首の掻き合いに道理などあらんぞ。使える手ぇば何でん叩っ込まねば、相手に申し訳ばなかど――
かの島津家の武将たちは先祖代々、そのような修羅な生き方を教え込まれていたが、関東暮らしのほうが長いが、生まれは九州の黒江にもその遺伝子が受け継がれている。スイッチが入ると、直接戦闘では敵味方ともに震えあがる存在になる。(ちなみに、調にもその気質が受け継がれてしまったとか)
『貴様らの首はいらん!命だけ置いてけ!!』
必要上、プリキュアの姿を取っているが、今している事は完全に『妖怪首おいてけ』である。タイ捨流、飛天御剣流、示現流などの術を組み合わせた動きで戦場を疾駆する。目は完全に『イッている』と分かる見開いた瞳をしており、甲冑組討など織り交ぜ、相手を捻じ伏せる。
「……嘘……」
歴戦の勇士であるキュアブラックもとうとう、『ありえない』すら言えないほどの衝撃であった。
「ねぇ、あれ、なんて言えばいいの…?」
「何かの本で見た島津家の武将みたいです……。なんだか恐ろしいです…」
「ドリーム、どうしてそんな事をするの!?」
「コイツらは脳みそまで改造されて、人間が残ってない戦闘生物機械だ!死んでるのに死に切れて無い哀れな魍魎よ、引導をキッチリ渡してやらなきゃうかばれねぇ。せめての慈悲だ、一撃で成仏させたほうが幸せだ、ブルーム、ブラック、ブロッサム」
キュアブロッサム(後に、アリシア・テスタロッサに転生する彼女ではない)は狂奔モードになったが故に完全に『妖怪首おいてけ』になったドリーム(黒江)の修羅と化した剣技とその戦いぶりに身震いする。デーモン族も百鬼兵、再生怪人も一気呵成に薙ぎ倒すからだ。もちろん、のぞみ本人とはファイトスタイルなどがまったく別であったり、のぞみ本来の能力からはかけ離れた攻撃的な思考、荒い言動から、当時のブルーチームのメンバーの多くは黒江達の簡単な説明だけで事のあらましを悟っていたし、それ以外のチームのメンバーでも、のぞみやラブと近しい者は合点がいっていた。事変経験者をして『戦場を蹂躙していた』と言わしめるほどの凄まじきものを出現させた黒江の修羅ぶりの勢いは凄まじかった。だが…。
「ふふふ……そこまでだ、小娘」
「テメーは……ブラック将軍!!生き返っていたのか!ダブルライダーに倒されたって聞いたが?」
「改造人間は死なん!破損箇所を直せば、生き返れるのだよ」
「バダンお得意の時空魔方陣で生き返ったかと思ったが、レストアか。元・ロシア帝国の将軍で侯爵だったお前さんにしてはセコいな?」
プリキュアオールスターズ+αの前に現れたのは、かつてのゲルショッカー大幹部『ブラック将軍/ヒルカメレオン』だった。生前はロマノフ朝時代のロシア陸軍将軍であった男である。
「大事に使ってると言って欲しいものだな。私は地獄大使などという、おっちょこちょいの成り上がりとはわけが違うのだよ、私は代々、将軍を輩出してきた家柄だったのからな」
地獄大使をおっちょこちょいと小馬鹿にするという意外な面を見せたブラック将軍。地獄大使は従兄弟の暗闇大使と共に元は若くしてアルカトラズ刑務所に収監されていた囚人かつ孤児の出で、東南アジア圏でゲリラ軍の指揮官として名を挙げた成り上がりであるため、構成メンバーに元・軍人が多いバダンでは第二次世界大戦の経験者でもないために苦労人であった。その最古参のブラック将軍は軍人出身者でも経験が豊富であるほうであるので、地獄大使を見下していたのである。
「一文字さんから聞いたぞ。テメェはヒルの改造人間だそうだな?怪人を再生させるために、いったい何人の血を吸い取った!?」
「ふふ、フハハ…。愚問だな。そのようなことなど些細なものだ。かの方の欲しられるものに比べればな」
ブラック将軍は再生怪人を蘇すため、この地に来ていた人間達を手にかけた事を示唆する。
「まさか、遊園地に来てた人達を!?」
「そうだ。理性なき怪人なら、いくらでも生み出せるのでな。獣性を使えば、立派に使えるのだよ」
神経質な彼らしく、口の端を引きつらせつつも不敵に振る舞うブラック将軍。キュアブロッサムはお馴染みのキメ台詞で返そうとするが、またも乱入者が現れ、その機会を逸した。
「なっ!?あ、あれは!?」
ドリーム(黒江)、ピーチ(智子)も驚きの乱入者とは。
「貴様は……!」
「ブフォ!?」
オートバイを走らせ、怪人軍団に突進する一人の青年。黒江は思わず吹き出す。その青年こそ、昭和ライダーの系譜を継ぐ12番目(13番目とも)の改造戦士。その名も。
「貴様は……麻生勝!!『仮面ライダーZO』!?馬鹿な、どうやってこの世界に!」
ブラック将軍も驚きのその人物は麻生勝。RX/光太郎にできた後輩の一人である。当然、黒江たちとも面識がある。彼はオートバイに跨ったままでZOへ変身し、その勇姿を現す。
『仮面ライダー……ZO!!』
Zブリンガーを華麗にストップさせ、仮面ライダーおなじみの名乗りを上げるZO。RX以前の仮面ライダーよりも更に生物的な姿であり、仮面ライダーBLACKに通ずるものがある。これは彼を改造した『望月博士』はゴルゴムの残党であるからだ。ゴルゴム時代に得ていた仮面ライダーブラック(ブラックサン)のデータをもとにしてZOを設計したためで、彼はRX/南光太郎と意外なところで繋がりがあると言える。
「ZOさん、どうしてここに!?」
「ディケイドから連絡を受けたんだ。まずは俺が送り込まれたわけだ。俺は新参者なんでね」
「へ…、知り合い!?」
「説明は後!ZOさん、どういうことですか?」
「すぐに分かるよ」
「え?」
ピーチ(智子)が首を傾げると、ZOに続いて、一人の青年がやってきた。今度は二人にはお馴染みの人物である。
「光太郎さんっ!」
「すまない。マシンの整備に手間取ってね」
南光太郎である。ピーチが名前呼びで破顔したため、薄々と『分かっていて』も、かなりの衝撃的な光景なフレッシュプリキュアチーム。
「ムゥ…南光太郎!貴様もか!!」
「ブラック将軍、貴様の事は先輩達から聞いている!この世界を闇に包もうなど、この俺が許さん!!」
小気味いい啖呵を切り、光太郎はおなじみの変身ポーズを決め、RXへ変身する。まさに理想的なスーパーヒーローの登場そのものであった。
『俺は太陽の子!!仮面ライダーBLACK RX!!ブラック将軍、人々の心に光がある限り、希望は必ず蘇る!!貴様らのような邪な者を倒すために!!』
バシッと決め、ZOと共にプリキュアオールスターズを守護するかのように立ち塞がる。まさに日本が世界に誇るスーパーヒーローの登場であった。
「ええい、野比のび太とディケイドの差し金か!!」
「そうだ!ある一人の少女の願いが彼らを動かし、俺たちに情報が伝えられた!この子らをこれ以上傷つける事は俺たちが許さん!!」
RXの小気味いいくらいの啖呵はブラック将軍を思いっきり悔しがらせた。これ以上ない頼もしい味方の劇的な登場に大喜びの黒江と智子。ブラック将軍はこの劇的な援軍にのび太が関わっている事を明確に口にし、大いに悔しがったが、その理由を説明しよう。
――のび太はダイ・アナザー・デイの後からは年齢が30代に達する事からなるべく『フィクサー』として動くように、妻のしずかから強く言われ、かかあ天下気味ののび太はノビスケの育児問題もあり、やむなく従った。本来は彼自身が行くべきであり、のび太も乗り気であったが、ノビスケの幼稚園の卒園式と被ってしまい、やむなく断念した。休暇中の黒江と肉体を入れ変わっていたのぞみは戦いのビジョンを夢という形で見たことで不安になり、のび太に相談。のび太とドラえもんがのぞみにそれが正夢であると伝えた。バダンが動いた事が伝えられたことから、動揺し、取り乱したのぞみを宥めつつ、のび太は今の自身にできる事として、ヒーロー達のネットワークに情報を伝達し、応対した仮面ライダー一号/本郷猛にのぞみの願いを伝えた。のぞみは涙ながらに『改造人間に対抗する力を持たないかつての友達を守って欲しい』と本郷に縋った。本郷はその願いを聞き入れ、取り乱すのぞみを宥めつつ、プリキュアオールスターズの救援を有言実行したわけだ。その先遣隊がZOとRXである。だが、のび太も気になって結局は出かけたため、野比家にはドラえもんとのぞみが残された。――
「ドラえもんくん、本郷さん達は大丈夫かな…」
「彼らを信じなって。彼らは『仮面ライダー』なんだよ?」
「それはそうだけど…」
黒江達のことは自分を凌ぐ実力の観点から心配はしていないのぞみだが、基本世界に比較的近い場合のプリキュアオールスターズでは怪人軍団に太刀打ちできないことから、仮面ライダー達を信じるしかない。(なお、黒江が自身の肉体の容姿をダイ・アナザー・デイの途中から『エリカ・フォンティーヌ』のものに変えていたため、のぞみは入れかえロープを使った影響で、その姿である)新・野比家のリビングでドラえもんと共に吉報を待つ。保護者然とした落ち着きを見せるドラえもんと、まったく取り乱し、紅茶カップを持つ腕がガタガタ震えるのぞみの姿はまるで受験の結果を待つ親子のようであった。
「栄光の12ライダーが負けるもんか。それと君の友達を信じてあげなよ。甲児さんたちも戦ってるし、のび太くんも現地へ向かったんだ、…待とうよ」
「うん……」
ドラえもんは12人ライダーを『栄光の12ライダー』と称し、のぞみを落ち着かせようとする。のぞみは前世の経緯から、ひどく弱気になってしまったところがあるが、今回はその側面が表れたと言える。ドラえもんの子守ロボならばの『温もり』(ただし毒舌家だが…)は言葉で表す事のできない安心感をのぞみに与える。のぞみが不幸な前世の後半生の影を振り切るのには、この時点では今しばらくの時間を必要としたが、ドラえもんやのび太と触れ合うことで、前世の後半生に失い、プリキュアであり続けてでも求めていた『誰かが自分を愛してる』という安心感、『誰かがそばにいてくれる』事で感じられる温もりを思い出し、少しづつであるが、のび太がのぞみに与えた助言のように『転んでもだるまのようにくじけないで起き上がる』大切さを思い出し、全盛期に持っていた『ひたむきさ』を次第に取り戻していき、徐々にチームの現役時代の姿に戻っていくのである…。
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