――さて、黄金聖闘士としてのフェイトの力は、神も屠るに相応しい程の強大なもので、その獅子ぶりを発揮していた。
――ある世界に、南光太郎、加東圭子、黒江綾香と訪れた時の事。その頃、黒江も黄金聖闘士として覚醒し始めていた時期であり、ちょうど、ミッド動乱が激動期に入りだした時期で、未来世界はデザリウム戦役勃発前の時期であった。
「――あの子は、俺が知っているあの子の?」
「そうです。アリカは、あなたがかつて出会った、我が主『アリッサ・シアーズ』の末裔です」
南光太郎が偶然により、再会に成功したアンドロイド『ミウ』。かつて、光太郎が出会った『深優・グリーア』と同一の存在であり、光太郎達がたどり着いた時点では、数百年ほどの歳月を『生きている』。『主』であった少女『アリッサ・シアーズ』の血統を陰ながら守り、光太郎が再会した時点では、かつてとは、大きく立ち位置を変えていた。
「そうか……この星は、地球なのか?」
「地球という名がいつしか忘れ去られ、移民星『エアル』という名で呼ばれるようになった姿です」
――光太郎が、以前にたどり着いた世界は、その後、何かかしらの要因で文明が滅び、そこから『偽りの歴史』を再構成する事で再興した世界であり、そこに存在する光太郎が知る少女達の面影を持つ者達は、かつての少女達に酷似する外見を持つが、直接関係はないとも語られる。
「なるほど……俺達は調査に来たんだが、どうやら、平行宇宙は直接の関係を持たない限りは、時間軸が安定しないということか」
「多元宇宙論はあなたとの出会いが証明しましたが、今の世界は、それを証明する術を持ちえません。隆盛を極めた時代の科学は櫛の歯が欠けたように失われ、高度な科学は今や限られた国や組織しか保有しません。その一端が、アリカの持つ力――『乙式高次物質化能力』――です。、あれは、かつての高度物質化能力を持った者達の力を分析し、生み出されたモノであり、この星の人類の絶頂期に生み出されたモノです」
彼女がそれを知るのは、彼女が『21世紀初頭』の時点から存在する事、主がその技術で造られた最初の例であったため(皮肉なことだが、その主の血統が生み出した者達が、世界の運命を左右することになった)だ。
「乙式、か。それは、かつての高度物質化能力とは似て非なるものだな」
「似てはいますが、純粋な高度物質化能力保有者には、最高のオトメであろうと敵わない、力の差が歴然とあります。オトメは『制約をつける』ことで、人の手で制御を可能にした存在ですから」
――そう。この時代の高度物質化能力者は『乙式高度物質化能力』者を指す(唯一の例外除き)。そのため、軍事的にも重要な位置を占めるなど、IS学園世界に似た特徴があった。だが、そんな世界の混乱に乗じて、星矢達への復讐を目論む『ハーデス』は、冥界に眠っていた聖域の先々々代教皇(シオンの二代前)『天秤座のイティア』に絶頂期の肉体を与え、次元世界の混乱を図っていた。
――『なるほど。結局、人類はどこの世界でも、あいも変わらず闘争をやめんわけか……』――
彼は前々聖戦の際の教皇であるため、生年月日は1300年代の頃である。そこから250年を生きたものの、内心で人類に絶望しており、生前の内にハーデス軍に寝返った。その際に、次代の教皇となる者に倒されたとされるが、人類のあいも変わらぬ様に絶望するだけの魂として、ハーデスが倒された後も存在し続けた。ハーデスの怨念はそれに目をつけ、彼に天秤座の冥衣を与えた上で蘇生させ、尖兵として用いるようになった。250年を生きた上、教皇にまで登りつめた男であるため、物理的にオトメ達を屠る事は容易だった。
――彼は、戦場に、漆黒の鎧を纏う形で介入した。第三勢力として。その姿は冥衣である以外は、往時の『天秤座の黄金聖闘士』そのものだった――。
――光が走る。その瞬間、不幸なオトメが戦闘装備『ローブ』を体ごと瞬く間に斬り裂かれ、消滅していく。それは争っていた陣営を問わず、彼女達には災厄を告げる存在だった。天秤座の武器はオリジナルではないが、その威力はオリジナルと同等であるため、星をも砕く。それが証明された形だ。陣営を問わず、彼に武器を持って立ち向かう者が続出するが、彼は小宇宙を燃焼させた上で振るう武器と拳で、全てを葬っていく。
「愚かな事だ。この私に刃向かうなどと」
オトメ達は戦闘を躊躇う素振りを見せる。彼女らのダメージはマスターにもフィードバックされてしまうという点がある。(かつての高度物質化能力の依代が『想い人』であった事の名残りでもある)そのため、自身の死は主の死に直結するからだ。イティアはそんな事はお構いなしと言わんばかりに、全てに襲いかかる。それを阻止せんと、光太郎達の話題に出た『アリカ・ユメミヤ』が立ち向かう。彼女は未熟なオトメだが、そのGEMは最高レベルのものである蒼天の青玉(オトメは、体内に埋め込まれたナノマシンの制御を行う為の石をピアスの形で持つそれをGEMという。わかりやすくいうと、RXのキングストーンのようなものだが、上位のモノは生成が不可能になっているため、現存のものが代々に受け継がれる形になっている。それの根幹であるナノマシンは脆弱な構造である。女性の体にしか定着しないが、失われやすい。例えば、男子と濃密なキスなど、強い性的接触がなされると男子の染色体がナノマシンを分解してしまう性質があり、更に当然のことだが、それで抗体ができ、再定着は不可能になる)を持ち、そのローブと、武器(エレメントと呼ばれる高次物質化武装)を構え、立ち向かう。だが、彼を相手にするには、彼女のローブが強力であろうと実力差がありすぎた。
イティアは、蒼天の青玉本来のローブを纏い、そのエレメントを持って突進してきたアリカを、腕一本で受け止めた。しかもアリカのローブの推進力は全力であったのにも関わらずだ。
「……なっ!?」
アリカはそれしか言えなかった。周りも一様に驚愕する。現存する全てのGEMで最も強力なものの一つである『蒼天の青玉』を依代にして構成されたローブを纏う者の攻撃を片腕で受け止め、平然としている事、しかも全速で突っ込んだ彼女のエレメントにヒビが入ったなどの光景に、である。
「その程度の力で、私に向かってきた事は褒めてやろう。だが……そんなものではな!」
イティアは、アリカのエレメントをそのまま掴み、そのままアリカごと振り回し、ぶん投げる。これに驚愕したすべての者が一斉に襲いかかるが、その場で、彼の動きを捉えられる者は、誰一人とていない。彼は『光速を超えていた』からだ。悲鳴とてあげられないで倒れるほどの攻撃が一瞬でなされる様は、『蹂躙』とさえ形容できるほどであった。
「クソ、あいつ一人のために、こうもいいようにされるだと……」
その場にいた勢力の内、オトメの主な所属先の組織『ガルデローベ』学園の学園長『ナツキ・クルーガー』(その容姿は、かつて、南光太郎が出会った『玖我なつき』と瓜二つであり、性格の特徴も酷似している)は思わず呻く。自身を含めたすべてのオトメの攻撃が通用しない『男』の出現。その場にいたすべての者を敵とみなす、その姿。そして、如何なる攻撃でもヒビ一つ入らない鎧、そして、一撃で全てを砕く武器。まさに『この場にいてはならない』者だ。
「ぬるい……。小娘どもでは、所詮、これが限界か」
「貴様、どういうつもりだ!何故、このような事を!?」
「小娘よ、やめておけ。そんな砲では、この私の髪の毛一つもそよがせもせん」
「やってみなければわからん!」
ナツキはエレメントであるブラスターカノンを構えるが、イティアの持つ『王』のごとき威圧感に圧される。
「やってみろ」
「ロード、シルバーカートリッジ!……てぇっ!!」
ブラスターカノンから氷結エネルギーが放たれるが、彼はそのエネルギーを腕を突き出すだけで防御し、跳ね返す。
「シルバーカートリッジを……弾き返しただと……!?」
「その程度の凍気で、私に攻撃を加えようとは愚かなことよ。凍気とはこういう事を言うのだ」
彼は両手を組み、頭上に掲げる。すると、彼の全身からオーラが迸ると同時に、凍気が集まる。彼は、生前、彼から見て、更に先輩に当たる『水瓶座のクレスト』と戦友であったのと、教皇の地位にあったため、撃てるのだ。
「借り物の技ではあるが――」
その瞬間、周囲の全てが凍りつくかのようなビジョンを幻視するナツキ。そして彼の腕が振り下ろされる。
「――オーロラエクスキューション!!」
オーロラエクスキューション。『借り物』と形容するように、これは彼本来の星座である、『天秤座』の技ではない。だが、威力は本物。撃ちだされた凍気は、全てを凍らせん勢いで迫る。ナツキは離脱のタイミングを逸してしまう。
――だが。
「お前は……?」
ナツキの前に、いつの間にかフェイトが立っていた。しかも獅子座の黄金聖衣を纏った状態であり、(マント付き)オーロラエクスキューションをライトニングクラウン応用の手刀で逸らす。その姿は『場違い』なほど、黄金聖闘士としての風格に溢れていた。
「ほう、黄金(ゴールド)か。どうやら、女神の考える事は、いつの世も同じのようだな」
「その冥衣……貴様、元・天秤の黄金聖闘士か?」
「そうだ、とだけ言っておこう」
「愚かな……、ハーデスの誘惑に屈したか」
「私は数百年の月日を生きた。だが、それでも人は争いを続けた。人が変らぬのなら、私がそのように世界を矯正する!」
「捩じ曲がったか……!だからと言って、我らと無関係の平行宇宙まで巻き込む権利はないだろう!」
「もはやそんな事など、何ら意味はなさん!」
「詭弁を!」
と、イティアとやり取りを交わす。周りは何が何だか分からず、呆然としてしまう。
「お前、いったい何がどうなっている!?説明しろ!」
「死にたくなかったら、黙ってろ。今、説明する暇はない」
「わ、分かった……」
説明を迫るナツキを、鋭い眼光で黙らせるフェイト。そして、彼女は新たな動きを見せる。
「聞け、獅子の咆哮を!!――ライトニングプラズマ――!!」
ライトニングプラズマが放たれる。空中にいるイティアめがけ放たれたそれは、光の軌跡となって、彼を襲う。一秒間に億単位の拳を光速で見舞う、この技。当然ながら、その他大勢の全ての者には『光の軌跡が走る』ようにしか視認できない。だが、軌跡が走った箇所にいた高次物質化兵器は破壊されていく。それはオトメ達から見ても、圧倒的な光景だった。
「ち、ちょっとアンタ!何者なわけ!?オトメでも無いのに、何よ今の攻撃!」
オトメの一人であり、その場の戦力の中核の一人『ハルカ・アーミテージ』(かつてのHIME達の時間軸における珠洲城遥と酷似した姿を持つ。彼女はHIMEでは無かったので、それを考えると不思議な巡り合わせである)がフェイトに声をかける。
(お!?シャマル先生かと、一瞬思ったぞ。脅かすな!)
と、ハルカ・アーミテージの声色がシャマルに似ている(ハルカのほうが荒っぽい&若々しいが)のに心の中で驚くフェイト。
「説明する暇はないと言った。来るぞ」
「!」
ハルカは近接戦闘に特化したオトメであるため、イティアの牽制を回避する事に成功する。
「コラァ!!あんたらいったい何者なわけぇ!?それになんなのよ、さっきから聖闘士とか、黄金とか、わけわからない単語並べ立てちゃって!」
「だから、説明する暇はないと言ったろう!ライトニングファング!」
腕から強力な電撃を放つフェイト。それは周囲を全て破壊する『雷爪』とも言うべきものだ。それは大爆発を起こす。科学の力で電撃を起こす武器が失われた、この世界においては強力である。
「と・に・か・く!アンタは味方……でいいのね?」
「そうだ。死にたくなければ下がってろ」
「ハァ!?アイツに好きにされて、下がってろなんて……」
「下がってろと言ったろう?」
「なっ……あんた……何を……」
「なあに、加減はしといた。しばらくは動けんようにしただけだ。身柄保護のためだ」
加減を加えたライトニングボルトをハルカに加え、動けなくした上で、イティアを迎え撃つフェイト。ハルカはフェイトが突然消え、一瞬で上空に出現した事に驚愕する。
「あいつ、本当に光の速さを…!?」
「大丈夫か!?」
「っ、つぅ……なんとか。でも、いったい何が起こってるっていうのよ……」
「わからん……だが、私達の理解を超えた何かが起こっている。それだけは分かる」
『ライトニングプラズマ!!』
『フン!!』
ライトニングプラズマを迎え撃つイティア。代々の継承技であるので、当然ながら、彼は知っている。そのため、プラズマの軌跡を読み、躱す。
「やはりこれは躱すか!ならば!!」
「!」
『ケイロンズライトインパルス!!』
フェイトもライトニングプラズマを躱されるのを承知であり。そこで、射手座の技であるケイロンズライトインパルスを使った。アッパーカットで黄金の暴風を起こす。フェイトは未来において、主に射手座、獅子座、牡羊座、蠍座の訓練を受け、実際に獅子座、牡羊座、蠍座を歴任している。更に箒や星矢との交流で、技を習ったりしているため、ライトインパルスが撃てるのだ。
『この体だと、ぶっつけ本番だが――受けろ!真紅の衝撃!!スカーレットニードル!!』
フェイトはスカーレットニードルを打つ。黄金聖闘士としての精神はともかく、覚醒し初めの頃の過去の体で放つ事には、結構負担がかかるが、黄金聖闘士級の力を持つ者には出し惜しみはできない。追撃で放ち、一発目が命中する。
「フッ、スカーレットニードルは効くだろう?」
「貴様、獅子座の聖衣を纏いながら、蠍座(スコーピオン)の技を用いるとはな」
「天秤座でありながら、オーロラエクスキューションを使う貴様が言うことでもなかろう?」
「確かにな。だが、スカーレットニードルを私が知らないとでも?……ムゥン!」
彼は、『筋肉の伸び縮みで弾丸を排出する』かのように、スカーレットニードルのダメージを体から拔く。
「何っ!?」
「受けろ!最後の正義(テロス・ジ・ケオシニ)!!」
「!!」
イティアは全ての武器を射出する。その威力は地球に降り注ぐ隕石級で、当たった箇所はもれなく、クレーターとなる。だが、同時に武器を打ち出すということは、無事に生き残れば、武器を分捕れる事を意味する。フェイトはそれを生き延び、ソードを分捕る。
「これもコピーされるとはな。使えるな」
フェイトはソードを分捕り、手に取る。元は剣技で鳴らしたため、お手のものだ。
「いつつ……あれ?あなたは……」
「お前は……確か、アリカ・ユメミヤ、だったな?」
「は、はい」
「詳しい事情を説明する暇はない。これを使え」
「え、あの、その、気持ちは嬉しいんですけど、自分で……」
「お前の武器は、奴には通用せん。これの方が使えるぞ」
「は、はぁ」
なんとか態勢を立て直し、舞い戻ってきた(衛星軌道上までぶっ飛んだ)アリカは言われるままに、フェイトからスピアを受け取る。これは、槍が手っ取り早かったのと、アリカは元々、槍がエレメントなためであった。二人は協力してイティアに当たるが、彼が実力の片鱗を出した事もあり、二人がかりで、ようやく抑えられる程度だった。
「ぐわっ!」
フェイトの脇腹に一撃が入る。光速のアッパーだ。アリカが槍で突くが、実力差により、攻撃を見切られ、当たらない。
――二人がイティアを抑えるのに必死になる裏で、この世界の最終兵器『ハルモニウム』が起動される。だが、それすらも彼の計算の内で、その場所には彼の配下の元・聖闘士が送り込まれていた。
――ヴィントブルーム城地下
「こんなモノがあるとはな。だが、もはや関係のない事だが」
「何者!?」
「我が名はゲートガード。小娘共、そこをどけ」
「待つのじゃ!お主は、これがなんだか分かっておるのか!?」
「話は聞かせてもらった。が、問答無用。そこの小娘諸共、吹き飛ばすのみだ」
――アリカの主、『マシロ・ブラン・ド・ヴィントブルーム』の前に現れたその男、ゲートガード。彼は1500年代頃の牡羊座の黄金聖闘士であり、イティアの配下であった男だ。彼にとって、自分を救い、見出したイティアが全てであるため、死後もイティアに従う意思を見せ、行動していた。そのため、この世界が滅びようが、かまいはしない。
「待ちなさい!あなた、何を!」
状況が飲み込めない、事の元凶であり、主に利用される形でハルモニウムを起動させたオトメ『ニナ・ウォン』がゲートガードの前に立ち塞がるが、ゲートガードに取って、ニナは有象無象の一つに過ぎなかった。
「フォースソア!!」
「!!」
その時、ゲートガードの両腕から、生命力の如き小宇宙が撃ちだされる。これは彼の頃の牡羊座の技であり、シオンの一代前のアヴニールの頃には失伝した技である(ゲートガードが反乱で死亡し、年齢的に弟子もいなかったため)。その瞬間、人間が起こしたとは思えない、爆発エネルギーが辺りを覆い――。
――大爆発が起こった方角に、オトメ達は固まる。ヴィントブルーム城付近での爆発ということは、アリカの主のマシロ、敵対する立場のニナがいるからだ。
「あの爆発は!?」
「ヴィントブルーム城よ!」
「不味いぞ、マシロ陛下が!」
と、顔面蒼白になるが、アリカが戦っている事から、マシロは生きている事は理解できた(マスターが死ぬと、オトメも死亡するため)。状況を理解できず、立ち尽くすオトメ達を尻目に、城の地下では。
「なっ……。あなたは……」
「やれやれ。別行動を取ってみたら、とんふだ場面に出くわしたな」
「ほう。貴様、『山羊座』か」
「そうだ。山羊座のアヤカ、とでも名乗っておこうか?牡羊座さんよ」
ニナを救う形で現れた黒江。この時も、またも未来の自分に『乗っ取られている』ので、山羊座の黄金聖衣を纏っている。
「子供相手に、小宇宙を使った闘技は反則だぜ?特にてめえほどの奴なら、な。アテナの名のもとに、成敗してくれよう」
手刀の風圧で、炎をかき消す。黄金の輝きの甲冑と、滾る小宇宙、そして手刀で炎をかき消すという、美味しい場面を見せる。
「おい、お前。ここからは『大人の時間』だ。下がっていろ」
「なっ……それって……どういう!?」
『全てを斬り裂く、勝利を約定せし聖剣!!エクスカリバー!』
いきなりエクスカリバーを放つ。城地下内部は、これで盛大に破壊され、青空が見える穴が空く。
「なんじゃ!?あ奴が腕を振るっただけで、衝撃波が走りおったぞ!?あやつはオトメなのか!?」
「いえ、オトメに必須であるGEMがありません!まさか、オトメの基になったという……!?」
「いや、それはないはずじゃ。HIMEは、この世にたった一人しか……」
ニナも、マシロも立場を忘れて、呆然となる。黒江のエクスカリバーは、それほどの光景だからだ。
「お主、いったい……?」
マシロが絞り出すような声で、黒江に問う。
「私は、地球の神に使える闘士の一人さ。」
「地球じゃと……!?それではお主は、地球から!?」
「今は、『そうだ』とだけ言っとく。これは私達が処理する事案になったんでな」
マシロに告げ、黒江は、右腕で剣を拔く動作をし、エクスカリバーの構えを取る。
「あいつは、お前たちの手に余る。さて、冥衣(紛い物)の力、見せて貰おうか?」
「いいだろう。最も女神への忠義に篤いと言われる、山羊座の実力を見せてもらおう」
『フォースソア!!』
『エクスカリバー!!』
――ゲートガードは生前の絶頂期の実力を持つためか、山羊座の黄金聖衣を纏う黒江相手にも余裕を見せる。そして。オトメ達そっちのけで、拳と剣をぶつけあい、かってに『熱き戦い』を始める二人。最終兵器が発動されたというのに、どことなく場違い感すら感じる、ニナとマシロだった――
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