――かくして、箒は射手座の黄金聖衣を誰かの援助により送られ、そのまま纏うことになった。その過程で、フェイトの体に獅子座のアイオリアが宿ってしまった事がなのはに伝えられ、当然ながら、『なんでなんでぇ!?』と涙目になったのは言うまでもなく、箒はなだめるのに四苦八苦したのは言うまでもなかった。




――医務室

仮面ライダー三号に重傷を負わされた黒江は、医務室の個室のベットに横たわっていた。事情を箒に聞くと、改めて自らの微力さを痛感していた。


(クソッ!また……私は微力だった!いくら相手が仮面ライダーったって、あそこまでボコボコにやられるものか!?)

悔しさを顕にする黒江。包帯が全身に巻かれ、骨折箇所が複数なので、トイレにいくこともままならない自分の無力さを噛み締め、力を求める。そこで箒が椅子に置いたパンドラボックスに気づいた。

「ん?箒、お前……それ、聖闘士星矢に出てくる、聖衣入れる箱じゃねーか?!」

「あ、気づいたんですね。そうです、これは聖衣を入れるボックスです。中に入ってるのは、ずばり射手座の聖衣です」

「サ、サジタリアス!?お前、どうしてそんな代物を!?」

「実はこの間、その世界に行った時の事故がきっかけで……」

箒は事の発端を説明する。聖闘士星矢の世界で射手座のアイオロスの残留思念が自分の身体に宿ってしまい、その置き土産で自分は射手座の聖衣を纏えるようになり、聖域から相応の代価は求められたものの、正式な借用許可は取ったと。だが、世界を飛び越えてまで飛来できる能力は黄金聖衣と言えども持ち合わせていないので、オリンポス十二神、あるいは彼らに匹敵する力を持つ誰かが送り込んでくれたとしか思えないと注釈する。

「しかし、射手座の聖衣たぁ……随分とヒロイックな聖衣に選ばれたもんだな。その時点で空位の聖衣はいくつもあるんだぞ?しかも、ヘタしたら蟹座だって事もあるのに」

「聖衣に選ばれるには、素養の他に、仁・知・勇の三拍子に優れてなければならないですから、私は仁で選ばれたと思います」

「お前、自分が優しいって自覚あるのか?織斑一夏くんにけっこうアレしてるって話だぞ?」

「そ、それはそれです!でも……あいつの前に出ると素直になれないんです。幼いころからずっと一緒で、何年も会えなくて……やっと会えて……」

箒はここで師に初めて、自身の恋心を吐露した。箒は一夏を守りたい一心で恥を忍んで、姉に赤椿を作ってもらったし、専用機を『一夏と一緒に居られるアドバンテージ』としか思っていなかったこともあると。ロンド・ベルの面々や、兜甲児やデューク・フリードと共に轡を並べて戦ううちに、自分は『戦士である』という自覚が生まれ、そして、聖闘士星矢の世界で射手座のアイオロスの『アテナに殉じた黄金聖闘士としての生涯』に触れた事で、真に勇気と優しさに目覚めた事で、射アイオロスの残留思念が消えた後も射手座の聖衣を纏わせてくれているのだと解釈していると。

「そうか。なら、お前は射手座のアイオロスや、その後継者になる天馬星座の星矢の見せた思いや生き様に恥じないように生きろよ。そうでないと、お前に小宇宙をくれたアイオロスに顔向けできんぞ」

「ええ……彼らの生き様に負けないように、私も強くなって見せます。私の心に横たわっている姉さんへの怒りや恐怖、鈴への嫉妬を乗り越えて、私は本当の『篠ノ之箒』になってみせます」

箒は自らの心に巣食う闇をそう例えた。思春期入りたての頃に、一夏と共にいた鈴に嫉妬していた事、一夏との絆を引き裂く格好になった姉への怒りから、殺意すら抱いた事、そして、姉が人智を超えたマッドサイエンティストに近い狂気を垣間見せた時には恐怖も抱いたと。それら『過去の自分』を乗り越えるためにも、小宇宙を完全に自家薬籠のモノにし、射手座の聖衣を纏うに相応しい人間になってみせると示唆する。箒は姉や鈴へ抱いていた負の感情を、小宇宙に目覚めることで乗り越えていくのだった。










――それから、箒は怪我により、当分はベットから動けない師の分も戦うため、技を磨いた。

―トレーニングルール


「燃え上がれ、私の小宇宙ぉ!」

そう叫び、ある一定のオーラを発現させると、チタン合金セラミック複合材で出来た厚さ10cmの板へ拳を見舞う。すると、破壊音と共に板をパンチが貫通する。音が後から響いたので、速度の感覚的には音速を超えた辺り、つまり音速拳だ。並のガンダムファイターや青銅聖闘士なら誰でも撃つ事ができる程度の難易度である。

「今のは……音速程度だな。この程度では青銅二軍だって撃てるし、ガンダムファイターなら雑魚でも撃てる。まだまだだな」

――音速の拳はこの世界では、超人の粋に入りつつある者であれば容易い行為である。聖闘士で言うなら、入り口だ。聖闘士の真髄を極めた黄金聖闘士なら、聖衣を纏わない状態でも光速の必殺技を放つのが可能である。星矢達も死闘の果てに辿り着いた境地だ。聖衣を纏わなくては光速に行かない自分の未熟さを痛感しつつつ、トレーニングを重ねた。ある日は仮面ライダー2号=一文字隼人や仮面ライダーV3=風見志郎に変身後の姿で組手をしてもらったり、Xライダー=神敬介のライドルホイップ捌きに日本刀で対抗してみたり、聖衣を纏った状態で、全力の仮面ライダーストロンガー=城茂のエレクトロファイヤーやエレクトロウォーターフォールを見きれるかやってみたり、光速に素で対抗できる最強の一角である仮面ライダーZXやBLACKRXと光速で組手したり、というヒーローたちの協力、馳せ参じたドモン・カッシュに教えを受けるなどして、箒は次第に小宇宙を自家薬籠のモノへしていった。






――そして、トレーニングを初めて数週間が経過し、厚木基地攻略作戦が間近へ迫ったある日、宇宙戦艦ヤマトに乗り込んだフェイト(精神は獅子座のアイオリアとなっている)と連絡を取った。

「ふむ……君も荒療治な修行をするものだな。だが、俺たち黄金聖闘士にもなれば、光速の拳は当たり前になる。それをどう応用するかは当人の守護星座にも左右される」

「聖闘士の守護星座?」

「そうだ。守護星座によって、代々継承される固定技というのがある。双子座ならばギャラクシアンエクスプロージョンとアナザーディメンション、牡牛座ならグレートホーン、俺の獅子座ならばライトニングプラズマとボルトのようにな」

「すると、あなた独自の技があると?」

「そうだ。そこが、俺が先代と違う点だ」

「どういう技なのです?」

「光子の応用だ。それで俺は若いころに神を倒した経験がある」

アイオリアは生前、星矢の後見人も務めていたため、面倒見がいい。黄金聖闘士なので、俗世に交わる機会も多かったためか、機器の操作に問題はないようだった。更にフェイトの肉体の記憶の補助もあり、特に苦労はないようだが、生活面での苦労が多いのは暗黙の了解である。同時に、自身が黄金聖闘士に任命されて間もない時期に戦いがあり、そこで神を打ち倒した経験があると。最も、死亡時に20代だったので、彼の言う『若いころ』は10代前半時のことを指す。

「最後の戦いの時には使わなかったがな。あれを使うと神を滅ぼせるが、体力を消耗し切る。だから敢えて使わなかったのだ」

「なるほど」

――アイオリアはハーデスとの聖戦の際に使わなかった技『光子破裂(フォトンバースト)』に言及した。威力面では神を滅ぼせるほどであるが、発動に時間が掛かるデメリットなどから使わなかったのだと。

「我が兄アイオロスが生前に使った技はアトミックサンダーボルトとインフィニティ・ブレイクだが、兄の先代がどのような独自の技を持っていたかはもはや誰も知らん。それを知るであろう老師も亡くなったからな」

アイオリアのいうことは確かである。アイオロスの先代の射手座の黄金聖闘士が、どのような自分独自に編み出した技を持っていたかはもはや闇の中である。一説ではケイロンズライトインパルスという技を使っていたともされるが、それはあくまで『一つの可能性』でしかない。その真相を知る童虎が死亡したため、真相は闇の中である。

「小宇宙をどのように応用するかは個人の裁量も大きい。ムウやその先代のシオンはサイコキネシスなどと組み合わせた技、アルデバランは衝撃波だった。君がどのようにするかは自由だ」

アイオリアは小宇宙の応用をどのようにするかは箒の裁量次第だと告げ、箒にある程度の裁量権を委ねた。箒がどのような方法性を取るのかはまだわからない。別の機会に語る事にしよう……。












――その更に数日後


『完成、フラッシュキング!!』

地響きを立てながら、颯爽と登場する超新星フラッシュマンの一号ロボ『フラッシュキング』。全長51m、重量675tの巨体が合体で姿を現した事に暗黒星団帝国は驚いたのか、進軍に鈍りを見せる。

『行くぞ!』

フラッシュキングは早速、動きを見せる。腹部のキングミサイルで戦闘爆撃機を撃ち落とすと同時に、意外に軽快な動きを見せ、立ち回りを見せる。

「意外に軽快に動くな……戦隊ロボというと、動きに重量感があるイメージなんだが」

箒はそう感想を漏らすと、戦闘爆撃機相手に立ち向かう。この時は赤椿を纏っているので、当然ながら同機の武装を用いている。だが、やはり暗黒星団帝国の戦闘機は射界が広く、一撃離脱をかけた箒に射撃を僚機と共に見舞う。

「何っ!!うわぁっ!」

背部を狙い打たれ、バリアを突破しての打撃を受ける。翼とスラスターが一部破損し、失速する。なんとか不時着するも、その際に脚部を一部破損する損害を受けた。各機能に支障を来した機体では不利なので、ISを解除してサジタリアスの聖衣を召喚する。

『サジタリアス!!私に力を貸してくれぇ!』

叫びとともに、箒はサジタリアスの黄金聖衣を身にまとう。こうなれば、暗黒星団帝国の兵士など物の数ではない。その様子を艦から確認したシャルは腰を抜かすほど驚く。ラウラに付き合う形で、聖闘士星矢を見ていたためだ。

「サ、サ、サ……サジタリアスの黄金聖衣ぅぅぅぅ!?うそぉ!?なんであれを箒が!?」

「シャルさん、腰抜かしすぎですよ」

彼女かしらぬ素っ頓狂な驚きかたをたまらずドラえもんが突っ込む。出撃前らしく、ドラえもんはスタークラッシュゲームでも着た宇宙服姿だ。

「だ、だ、だ、だってドラえもん!サジタリアスの黄金聖衣だよ、黄金聖衣!!アレって聖闘士じゃないと……」

「いや、箒さんは事実上、聖闘士になったようなもんですよ。アテナに忠誠誓ってるし、正規の借用許可頂いてます。それにこの間、箒さん見せてたじゃないですか」

「その時はグレンダイザーの出迎えに行ってたから、いなかったの!ど、ど、どういうこと!?」

「あとで説明します。出撃なんで。シャルさんもそうでしょう?」

「そ、そうだった!」

格納庫に行き、シャルはISを纏う。ドラえもんは自作した『Xウイング』に乗り込む。ドラえもんの自作したXウイングは『スターウ◯ーズ』に登場した宇宙戦闘機を模したものだが、ランディング・ギアは地球式の車輪式へ改められている。そして、先にドラえもんが僚機のスネ夫と共にカタパルトで射出される。次はシャルの番である。

『シャルロット・デュノア、ラファール・リヴァイブ、行きます!!』

と、すっかりこの世界の様式に慣れたシャル。ドラえもんやスネ夫と隊列を組んで、戦闘空域に向かった。











――箒は小宇宙の力を活用し、兵士を薙ぎ払っていった。

『アトミックサンダーボルトぉぉ!』

アトミックサンダーボルトでひとまず、道を切り開く。この技は小宇宙の雷の光弾を発射する、あるいは光速拳を見舞う技で、性質的にはペガサス流星拳に似通っている。わざとしては乱打系の技であるため、一対多向きではない。インフィニティ・ブレイクは一対対に使えるが、消耗する技なので、乱打は不可能だ。ここで箒はとある技を試すことにした。

「思いつきだが……あれならば消耗は少ない。やってみるか!!」

箒は光速の強烈な拳と共に拳圧を飛ばし、強烈な風圧で周囲の物を吹き飛ばす。その名も。

『ケイロンズライトインパルスゥ!!』

この技は聖闘士星矢の正史には記録されてない技で、前聖戦のある一つの可能性の世界における射手座の黄金聖闘士『射手座のシジフォス』が使用した技である。その威力は高く、周囲の古いビルごと、兵器と兵士問わず吹き飛ばす。正史では影も形もない技であるが、とっさにやった付け焼き刃以上の威力を見せる。そこにシャルが降りてくる。箒を見つけたのだ。

「箒!」

「シャルか」

「本当に射手座の黄金聖衣なんだね……どうやって手に入れたの?」

「ま、まあ、色々とややこしい話でな。取り敢えず後ろに下がっていろ。吹っ飛ぶぞ」

「え?」

「こういう事だからだ!『ケイロンズスィエラ!』」

聖衣背部の翼を可動させ、突風を起こす。これも同じ出典の技で、比較的消耗が少ない技である。シャルは呆気にとられ、目を白黒させている。

「そ、その技はたしか外伝漫画の……!」

「そうだ。思いつきで使ってみた付け焼き刃だかな……。消耗が少ないから使いやすい」

「アトミックサンダーボルトとかは?」

「撃てるが、今の私では、そう乱打できるものではない。使いどころは見極めんと。……ん?なんだお前、読んでいたのか?」

「ラウラの部下さんがラウラ宛に送ってきた漫画の中に入っててね。それで」

「なるほどな。援護頼むぞ」

「分かった」

箒はシャルに援護を頼み、そのまま突撃を敢行する。その動きはシャルのラファール・リヴァイブよりも迅速で、黄金聖衣の威力を実感する。


「ケイロンズスィエラ!」

羽根部分を活用し、突風が吹き荒れる。消耗が少ない技で道を切り開く辺り、戦いでの才覚を目覚めさせつつあるのがわかる。シャルは箒の顔に自信が漲っているのを実感する。

(箒……見たこともないくらいに自信満々だ。多分、お姉さんに対抗できる力を得た事で、恐怖心を振り切ったんだな)

箒は束へ、怒りと恐怖とが交錯した複雑な感情を抱いていた。これは姉との覆せない実力差、行動力の差、マッドサイエンティスト紛いとも取れる倫理観の差が箒に恐怖心を埋め付け、更に一夏との絆を引き裂いた事への怒りが箒に姉との距離を遠ざける結果となっていた。だが、箒が小宇宙に目覚め、人間を超える事で、ようやく並び立てる領域に達したのである。逆に言えば、束は素で聖闘士クラスの力を備えている(千冬も)証明でもある。シャルはそれを悟ると、援護射撃で箒の進路を切り開いていった。







――出撃したドラえもんとスネ夫はスクラッチしたXウイングの性能テストも兼ねて、戦闘機との空戦に入る。

「スネ夫、高度計に気を配れよ。落ちたらシャレにならないよ」

「わかってるって。ぼかぁ、ラジコンの天才だぜ?ジャイアンじゃないんだから、ヘマしないって」

「気をつけてよ」

「はいよ」

暗黒星団帝国の戦闘機群は箒やフラッシュキングの頭を抑えようとするが、ドラえもんとスネ夫は逆タカ戦法さながらの急上昇しながらのパルスレーザー射撃で敵の出鼻を挫く。幾度かの冒険での経験で得た『空戦のカン』である。

「まずは!」

ドラえもんはロボットである都合上、マシンポテンシャルをフルに発揮可能である。インメルマンターンで宙返りの頂点の姿勢からロールし水平飛行に移行し、そこから横合いに突っ込んで射撃する。ドラえもんの本来の製造目的からはかけ離れた行為だが、並のパイロットよりよほど鋭い空戦機動を駆使するあたり、実戦慣れを感じさせる。

「さあて、念のためだ。小型反陽子ミサイルのセーフティも解除しておくか」

ドラえもんはなんとXウイングに反陽子ミサイルを積み込んでいた。Xウイングは作中でプロトン爆弾を積んでいたが、そこをも忠実に再現していたのだ。威力は原水爆の大半を凌ぐほどで、地球連邦軍も資源の希少性が高いフォールド爆弾よりも容易に調達できると研究している『次世代の反応兵器』である。地上で使うつもりはないが、衛星軌道上の艦隊を吹き飛ばすためにも使えると、念のためにセーフティを解除する。その時は思いのほか早く訪れた。

「ん、衛星軌道上に艦隊がいる。スネ夫君、僕は衛星軌道上の艦隊を掃除してくる。例のミサイルを使えそうだ。」

「爆発範囲内に艦隊入れるように気をつけろよ、弾はそんなにないぜ」

「OK」

ドラえもんはXウイングを対艦攻撃モードへ移行させ、衛星軌道上へ進出する。衛星軌道上では中間補給基地からの増援の艦隊が受け入れ準備のために待機しており、ドラえもんはそれを奇襲したのだ。

「旗艦の真下からぶっこんでやる……くらえ!」

ドラえもんは愛機をすぐに安全地帯まで退避させる。暗黒星団帝国の増援艦隊旗艦の巨大宙母はドラえもんがぶち込んだ反陽子ミサイルの爆発により、チリひとつ残さず、僚艦共々消滅する。

「こちらドラえもん!『トラ・トラ・トラ』!!」

トラ・トラ・トラ。第二次世界大戦で日本軍が真珠湾攻撃の時に使った攻撃成功の暗号で、『古典的』暗号である。パルチザンはその古典性から、暗黒星団帝国が暗号解読に苦戦するようにという思惑のもとに使用しており、地球のことを熱心に情報収集していた暗黒星団帝国も、流石に大昔の戦争で使われた暗号までカバーしていなかったので、この作戦は大成功であった。ドラえもんのこの日のスコアは戦闘機3、空母7と大戦果で、機体にどら焼きのマークを描いていた事もあり、ドラえもんは『パルチザンの対艦エース』として暗黒星団帝国を恐れさせる事になる。



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