――剣鉄也はグレートマジンガーが進化した『グレートマジンカイザー』のテストを続けていた。全体的にマジンカイザー然とした姿で、その姿はなのはが故郷の世界での漫画に出てきた同名の機体に似通っていたが、細部がよりマジンカイザー的な形状であり、塗装がカイザーに近い色なのが違いだった。ゴッドマジンガーの存在がいまいち霞み気味となったのは、グレートマジンガーもカイザーとなった事で、性能面の優位が目立たなくなったためであった。

「このグレートカイザー、性能面では文句はない。おそらく、ゴッドに引けをとらないだろう。装甲もニューZαだしな。問題は武器の名前がほとんど無い事だが」

――マジンガーの武装はだいたい名前があるが、進化間もない同機の武装の多くは名が不明であった。ギガントミサイルやグレートトルネードなどの分かりやすいパワーアップ武器はあるが、ブレストバーンやサンダーブレイクなどのパワーアップ後の武装名は正式には未定で、便宜的に『ブレストブラスター』、『ゴッドサンダー』の名で鉄也は呼んでいる。アトミックパンチは『アトミック・スマッシャーパンチ』、マジンガーブレードは『カイザーブレード』と、マジンカイザーと同名を与えられた武器もある。『ゴッドの砦』でグレートカイザーの調整を続けていた彼、パルチザンに合流する意志を見せていたが、どちらかしか持ち出せないのを兜剣造から知らされ、鉄也はグレートカイザーを選び、発進させた。その速度は真ゲッターロボやマジンカイザーをも超えるもので、瞬く間にパルチザンと超新星フラッシュマンの戦う戦場に到着した。



『ゴッドサンダー!!』

雷鳴が暗黒星団帝国の戦闘機を纏めて消滅させる。その声に聞き覚えがあった箒は、思わず叫んだ。

「その声、鉄也さんですか!?」

『ああ。コイツを持ち出すか、ゴッドを持ち出すか迷ってな。結局、グレートカイザーにしたよ。これから戦線に参加する!』

全長28mの巨体を見せるグレートカイザー。マジンカイザーと同程度にまで背丈が伸び、全体的にマッシブな体躯、カイザー同様のデザインになったボディなど、カイザー化したのを誇示するかのような勇姿を見せるグレート。鉄也の不敵な笑いとともに、新たな動きを見せる。

『グレートトルネード!』

グレートタイフーンのパワーアップ版『グレートトルネード』が口のスリットから打ち出される。その威力は『強酸がないルストトルネード』で、風圧で吹き飛ばし、その渦で粉砕する。更に追い打ちをかける。 

『ギガントミサイル!!』

マジンカイザーがミサイルパンチの進化した機構であるのに対し、ゲッター線度数がより強い状況で進化したグレートマジンカイザーは、ミサイルを特大サイズで生成し、そのまま放つ方式である。その威力はサイズの都合上、マジンカイザーのそれよりも強力で、命中すると、きのこ雲が発生した。それに箒とシャルは唖然とするが、シャルは『サジタリアスの聖衣着てる箒も同じことできるじゃない』と言い、箒をがっくりとさせる。

「お前なぁ……確かに可能だけど、それ言うか?」

「ま、まあ落ち込まない、落ち込まない。敵来るよ」

「ああ、もう!こうなればヤケだ!!アトミックサンダーボルト!!」

箒は何気にスーパーロボット級の破壊力があると言われた事にがっくりきたが、ヤケクソでアトミックサンダーボルトを放つ辺りは恐ろしい。光速なので、傍らにいるシャルのラファールリヴァイブのセンサーは反応を示さない。いや、そもそも感知できないのだ。宇宙作業用に開発されたと言っても、恒星間宇宙での作業までは想定していなかったのと、そもそものセンサー類の技術的限界に起因するからだ。

「光速の拳かぁ。ISのハイパーセンサーの感知が追いつかないくらいなんて、すごい速さだよ」

「科学的にはあり得ん事だが、小宇宙を燃やせば可能だ。最も、これはセブンセンシズに目覚めていないと不可能だがな」

「第七感ねぇ。第六感を超えた境地がある事自体が半信半疑なんだけど」

「もっと上の境地だってあるが、そこまで行っているのは聖闘士でも数える程度だ。エイトセンシズにもなると、阿頼耶識云々になるしな」

箒はアイオロスの小宇宙を引き継ぎ、自家薬籠のものとしたため、セブンセンシズに目覚めたが、更に上のエイトセンシズの境地には届いていない。星矢達は最終的にエイトセンシズに目覚めたので、そこが彼等との差であった。

「生きたまま冥界いけるんだったね。でもさ、そこまでしてどーするのって話だけどさ」

「うむ。聖戦には必要な境地だが、翌々考えてみると、普段の生活には殆ど役に立たんな。せいぜい、亡くなった身内に会うとか」

「セシリアが聞いたら欲しがるだろうけどね」

「確かアイツはご両親を亡くしていたな?」

「うん。小さいころに。僕も母親亡くしてるから、会いたいって気持ちはあるけどね」

「私だって、まさかアイオロスさんの技能を受け継ぐなんて思いもしなかったさ。今なら、ISは素手で壊せるからな」

――必殺技は生身でも放てるため、その気になれば、生身でISを破壊することも容易だ。超人の粋に達した自らをこう評する。そして、技が炸裂する際の衝撃波がここからでも感じ取れる。グレートマジンカイザーの技が炸裂しているのだろう。グレートマジンガーは元からマジンガーZよりも強力なマジンガーだったが、それがカイザー化したのだから、その威力は推して知るべしであろう。

「ここからでも感じ取れるとはな。さすがはグレートカイザー……凄まじい破壊力だな」

「グレートカイザーかぁ。グレートマジンガーがカイザーになった姿なんでしょ?なんでまたカイザー化を?」

「兜博士がデビルマジンガーを危険視していてな。その対応策として生み出されたと言っていい。実際、グレートマジンガーの性能では抗しきれない敵もチラホラ出始めてるし、何よりも量産型グレートが横流しされたのが契機になったんだ」

「量産型グレートか。漫画で見たあれが実現してるってのも恐ろしいなぁ。マジンガーを量産するなんて」

「Zより強力で、尚且つ扱い易い機体だからというのが大きいようだ。ゲッターロボだって、ゲッターロボGがメディアによっては量産されてるだろう?二代目スーパーロボットは量産型が造られる傾向があるんだ」

「二代目になると、兵器としてや運用ノウハウが出来上がってるしね。それに量産型だと、試作品より安定性も高いしなぁ」

――スーパーロボットも兵器の一種である都合上、量産型も検討されている。その内の実現した例が量産型グレートであり、別世界の量産型ゲッターロボGである。量産型グレートの存在はグレートマジンガーのオリジナルをカイザー化させる要因の一つとなったが、シャルはスーパーロボットの量産型に『二代目』が選ばれる理由を妙実に説明する。箒も同意し、頷く。グレートマジンガーはその優秀性故に、自身の量産型が敵に回ったせいでカイザー化を余儀なくされるという皮肉が顕現した。量産型の登場はスーパーロボットの更なる性能向上を起こすというのは、兵器としての運命はスーパーロボットにも共通であるという事実の証明だと言えた。





『ゴッドサンダー・ブレード!!』

ゴッドサンダー。ゴッドマジンガーにも搭載されたサンダーブレイクの発展形である。基本的には、雷槌を直接敵に叩きつける技だが、グレートカイザーの場合は原型機同様に『サンダーブレード』としての使用も可能で、むしろトールハンマーブレイカーに近い特性を持つ。雷槌をブレードに纏わせ、そのままエネルギーとして活用する。カイザーブレードの柄のデザインはZのエンブレムが刻まれたマジンカイザーと違い、形状はマジンカイザーと共通だが、総じて無骨なデザインである。鉄也は二刀流で用い、掃討三脚戦車を斜め下から斬り上げる。甲児が肉弾戦を好む傾向にあるのとは対照的に、鉄也は名は体を表すとばかりに剣戟を好む。グレートカイザーを操り、見事な剣戟を見せるあたりは面目躍如であった。

「凄い……。あれって、操縦桿やレバーをガチャガチャ動かしたりしてるんでしょ?よくできるなぁ」

「操縦桿でだいたいはできるさ。フットペダルはスラスターの操作とかに使うのさ。制御中枢も私達の知る兵器のそれよりも高度なものが使用されている。音声入力だから、こっ恥ずかしいくらいに武器の名前叫ばないといかんらしいが」

「あれって、ちゃんと意味あったんだね……」

「元は、甲児が偶然、叫びながら武器撃ったのが始まりで、グレートからのスーパーロボットは音声入力が慣例になったらしいが、実際のところ、スーパー戦隊の時代の名残りかもしれんが」

「どういう事?」

「フラッシュキングの方を見てみろ」

「うん?」

シャルは箒に言われて、フラッシュキングが戦っている方に視線を向けると、スターコンドルから大剣が射出され、それをジャンプして受け取るフラッシュキングの姿が見えた。そこから回転しながら剣にエネルギーが注入され、必殺技を放つ。その名も。

『スーパーコズモフラッシュ!』

回転しながら袈裟懸けに相手を斬り裂く。これが効かなかったのは一回きりであるが、むしろその一回は『相手が強すぎた』とも言えるほどの超新星フラッシュマンの必殺技である。相手は一刀のもとに倒れ伏し、フラッシュキングはその勇姿を誇示するかのように、佇む。その様子を見たシャルは『あ、ああ〜」と納得した。

「さて、と。こちらも片付けるぞ。鉄也さんやフラッシュマン達に遅れを取るな!」

「箒、以前よりなんかこう……意気揚々っていうか……変わったね」

「……幼き頃から抱いていた姉さんへの劣等感が消えたからかも知れん。小宇宙に目覚めて、セブンセンシズをモノにした時、超人だった姉さんに並び立てたという嬉しさと、同時に常人からかけ離れるという恐怖が湧いた。だが、姉さんを止められる力を、一夏を守れる力を求めていた私には、これ以上ない僥倖だった。姉さんを止めるためなら、オリンポス十二神だろうがなんだろうが、忠誠を誓うさ」

――箒はこの時点で城戸沙織(アテナ)に忠誠を誓っていることをシャルへ示唆した。それは彼女なりのアイオロスへの恩返しでもあり、聖域へ導き、自分らを信じてくれた老師・童虎への義かもしれなかった。










――グレートマジンカイザーはとどめに移る。カイザーブレードを天に翳し、雷槌を集束させ、剣を光らせる。

『さて、とどめを刺しておくか!ゴッドスパーク・バスター!』

ゴッドマジンガーのゴッドスパークはグレートカイザーにも搭載されている。その応用で、カイザーブレードからゴッドサンダーの電撃を放射状に放つ。鉄也はこれを『ゴッドスパーク・バスター』という名で呼称した。その威力は凄まじいの一言。轟音とともに暗黒星団帝国の部隊は一掃され、戦場を一気に収める。フラッシュマンもフラッシュキングを分離させ、母艦に戻して変身を解除した上で、パルチザンのもとに姿を見せる。それを着陸したXウイングから降りたドラえもんが出迎える。

「あなたがたが超新星フラッシュマンの皆さんですね?噂には聞いていました。ぼくたちパルチザンは百万の味方を得た思いです」

「俺はレッドフラッシュ。名はジン。元は地球人だったが、今は事実上のフラッシュ星人さ。俺たち超新星フラッシュマンはスーパー戦隊の一員として、君達と共に戦う事を誓う」

「ありがとうございます」

レッドフラッシュ=ジンが代表して握手を交わす。フラッシュマン達にとっては久しい地球。かつて反フラッシュ現象によって離れざるを得なかった生まれ故郷。それだけに地球への思いは歴代戦隊の中でも強く、重みを感じる一言だった。フラッシュマンは他の戦隊への顔合わせもあるらしく、ドラえもんへ別れを言うと、スターコンドルに戻り、そのままスーパーバルカンベースの方角へ帰っていった。鉄也の方も移動本部にグレートカイザーを収容し、武子や沖田十三などに挨拶を済ますと、医務室の黒江の様子を見に来た。





――医務室内の個室

「おう、剣」

「敵の仮面ライダーにやられたそうだな。その割には元気そうだな」

「肋骨とか何本もイッたから、トイレにも自力でいけねーよ。お前、何できた?」

「グレートカイザーだ。ゴッドは甲児君用に調整したからな」

「大丈夫かよ」

「なあに、元はグレートマジンガーだ。扱いには慣れてるさ」

鉄也は笑ってみせる。ニヒルで近寄りがたい雰囲気を持つ鉄也だが、気心の知れた相手には意外と気さくに接する。その側面がよく出ている一幕と言えた。

「その怪我じゃ厚木基地奪還には間に合わんな。リハビリはいつからだ?」

「明後日から本格的にやるそうだ。身体がなまってるからカンを取り戻すにゃ、しばらく時間がいる。お前も実戦のカンはどうなんだ?」

「俺は戦闘のプロだぜ?テスト中も訓練を続けてきたから、カンは鈍っちゃいないぜ。それと差し入れだ」

「ふぉぉ、お、オメー、これ……お高い釣り竿じゃねーか」

「うちの所長からのお見舞い品だ。治ったら釣りやるんだろ?」

「お、おう。さ、サンキュー!これ欲しかったんだ〜!」

と、兜剣造からのお見舞い品を渡され、子供のように大喜びする黒江。普段の振る舞いとは打って変わって、無邪気に喜ぶ様は彼女の生来持つ優しさに由来する。そのため、彼女を慕う者が後輩に多いという。(その後、彼女はお返しに、兜剣造へ高級麻雀牌を送ったとか)

「それと、シャーリーちゃんに連絡を取っておいた。こっちへ来るそうだ。ルッキーニちゃんと一緒らしくて」

「そうか、アイツらが来るのか。他には?」

「都合がついた面々は、ケイちゃんがマルセイユちゃんを呼び寄せたし、智子ちゃんは戦友を呼んだとか。後はシャーリーちゃんや那佳ちゃんのよしみで、亡命リベリオン出身のウィッチーズが来るそうだ」

「ミッドチルダ動乱やロマーニャの動乱が落ち着いてよかったよ。これが危ない時期だったら、アイクのおっちゃんやロンメルのおっちゃん達がウンと言わないところだ」

「ティターンズは俺がグレートマジンガーでのしておいたから、当分はおとなしくなるさ。だからこっちの要請が通ったんだろう」

「他のカールスラント組は?」

「ミーナちゃんから、当面は無理だと返事が来た。エーリカちゃんは行きたがってたらしいが」

「ハルトマンの奴、お前に気があるからな」

「そいつには気づいてるさ。俺にはジュンがいるってのは、向こうもわかってるだろうけど、ややこしいぜ」

――鉄也はハルトマンの好意に気づいてるが、炎ジュンという幼馴染兼恋人がいるため、その好意には応えられない。一方のハルトマンもそれは分かっていると思われるが、恋する乙女を思わせる行動を取るようになっており、ミーナとバルクホルン、それとマルセイユを大いに狼狽させていたりする。

「それと、スオムスとオラーシャ組も合流するつもりらしいが、サーニャちゃんの派遣を軍部が渋っているらしくてな」

「サーニャはオラーシャの最高戦力の一人だからな。ニパやエイラはすぐ出たのか?」

「らしい。戦況が宇宙維持シャイダーとシャリバンのおかげで好転したらしくて。申請がすぐ通ったって。遅れるって連絡してきた。その代わりにエイラちゃんの姉貴が先に来るらしい」

「何、アウロラが?」

「ああ。『妹一人に任せておけるかぁ〜!』とか言って酔っぱらいながら通信に出た」

「ハ、ハハ……あいつらしいや」

――黒江はこの頃には、エイラの姉に当たるアウロラ・E・ユーティライネンと飲み友達になっており、その縁でアウロラは未来世界へ赴く事となった。(入隊年度の都合上、ウィッチとして先輩後輩関係でもあった故、アウロラは黒江へ敬語を使っている)黒江は酔っぱらいながら通信に出たというアウロラに苦笑気味である。

「おっと、セイヤさんにグレートカイザーの整備マニュアル渡すの忘れてた。行ってくる」

「おう。セイヤさんがぶーたれるだろうから、早くいってやれ」

ウリバタケの性格を把握している黒江はウリバタケが格納庫で悲鳴を上げる光景を想像し、鉄也に行くように促す。グレートカイザーはマジンカイザー同様、自己修復機能も持つので、整備班が手を焼く機体であるからだ。鉄也の背中を見送りつつ、自身は眠りにつく。一刻も早く怪我を治し、戦線へ復帰するために。




――グレートカイザーの存在は暗黒星団帝国も多大な警戒心を露わにし、アルフォン少尉の提言通りに小型戦車の開発を急ぐ。だが、この日より一週間後、宇宙戦艦ヤマトを旗艦とする連邦宇宙軍艦隊が中間補給基地を兵力ごと撃滅した事によって、暗黒星団帝国地球占領軍は兵站拠点を喪う。それを契機に、地球連邦は逆転のきっかけを掴み、第一の大規模攻防戦「厚木基地争奪戦」へ繋がる事になる。



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