――パルチザンは主に、地球奪還を意図して行動する地上部隊(ロンド・ベル中心)と、母星遠征が主目的である宇宙艦隊(宇宙戦艦ヤマトが旗艦)に大別されていた。ここで、艦歴もその半ばに入りつつあった、当時の宇宙戦艦ヤマトの艦容に少し触れよう。

――宇宙戦艦ヤマト(デザリウム戦役当時)

全長、竣工当時からはおよそ1.5倍にストレッチされる。全幅、多少拡大。艦載機数、スペース増大のため、総数は50機台に増加(水雷艇、哨戒機など含む)。武装、上下部ショックカノン砲塔を一基ずつ増設、波動カートリッジ弾を砲塔基部に備蓄、砲塔上部にパルスレーザー増設、開発中の波動爆雷の弾薬庫及び、VLSを増設。格納庫設備を新型機へ対応などの大強化がなされた。なお、艦載機格納能力の強化のため、収納翼は可変翼から、ウイング状バルジに変更され、外観が変化している。(ちなみに、未来戦艦であるアルカディア号の記録にあるヤマトはこの姿である)


――総じて、新鋭艦に伍する性能が与えられたヤマトだが、乗員は初期からの乗員は幹部に限定されるようになり、概ね世代交代が進んだ。その中には、艦載機隊隊長であった加藤三郎の実弟「加藤四郎」、同じく副隊長であり、教導隊に転出した山本明の従妹「山本玲」も含まれていた。彼らの世代は概ね、白色彗星帝国戦後に志願した所謂、『戦後組』である。彼らは小惑星イカロスで訓練を受けでいたため、暗黒星団帝国の襲来から難を逃れることに成功していた。


――暗黒星団帝国の襲来より少し前

小惑星イカロスには士官学校があり、新世代乗員の若手はそこの出身であった。主に恒星間航行艦の航空科訓練の学校であった都合上、訓練機材も比較的新しく、白色彗星帝国戦役時の初期型コスモタイガーが配備されていた。当時のヤマトの機材はここを経由して、更新されていた。編成はコスモファルコンの試験運用を経て、概ね前年度のそれに戻されていたが、旧型コスモタイガーの残置していた二個中隊は試作型コスモパルサーに置き換えられているなどの混成編成となっていた。

「コスモファルコンの運用データはアナハイム・ハービックとゼネラル・ギャラクシーに送った。これで開発が進むだろう。実体弾機銃六門と機首パルスレーザーの二門というのは、意欲的な装備だが、追加弾倉積むとウェポンベイが埋まるから、任務によって装備変更を推奨するようにレポート送っておいた」

「ご苦労様です、真田さん」

「ギャラクシーにしては、堅実な機体ですね、あれ。ブラックタイガーのブラッシュアップとは」

「彼らは制式採用競争に負けてきたからな。おまけにVF-171はバジュラ戦役で大不評を被ったと来ている。VF-22は好評とは言え、金がかかる。そこで、ブラックタイガーのブラッシュアップという堅実な手段を取ることで、高コストなコスモパルサーの隙間を埋める機体、昔のハイアンドロー方式を狙ったのだ」

ゼネラル・ギャラクシーは野心的な設計で名を馳せて来たが、最近は制式採用競争に負け続け、更にはバジュラ戦役でギャラクシー船団が連邦に仇なした事で、軍上層部の堪忍袋の尾は切れ、正式にVF-171の調達停止の政治的懲罰を科した事で、VF-22の再生産と残置するブラックタイガーの保守点検だけでは利益を得られなくなった。そこで、起死回生をかけて、コスモファルコンを共同開発したのだ。元々、名機であったブラックタイガーを発展させた、ギャラクシーにしては異例なほどの堅実な手段を取った事が功を奏し、宇宙軍と空軍が次期軽量戦闘機として採用したのだ。これはコスモタイガーを愛用する事で知られる、ヤマト所属航空隊から良好な運用データを得た事や、隊員が大気圏内での機動性をを評価し、概ね、使い勝手良しと判定した事も多分に影響した。こうして、コスモファルコンは、当初よりも高コストになったコスモパルサーの隙間を埋める機体(かつてのF16戦闘機のような)として制式採用されたのであった。

「量産はいつになります?」

「本来なら来年だったが、多分、この分だと数年は遅延するな。暗黒星団帝国が攻め込んできているから、パルサーの熟成も急がれているが……今度の戦には間に合わんだろう」

真田の予測は悲観的とも取れるが、彼ら暗黒星団帝国のの意図を前の戦いで見抜いていた彼としては当然、予測の範囲内だった。ワープ空間を駆使されては、波動爆雷が開発途中の地球連邦軍に為す術はない。真田は地球本土の制圧を予期しており、大統領にヤマトの秘匿を具申し、ミッドチルダ動乱参戦後は表向き『練習艦改装のための準備』と称し、軍籍から一端、離脱させておいたのはそのためだ。

「加藤、お前の腕なら次期隊長は確実だが、それには古代に認められるほどの戦果を挙げる必要がある。坂本もそうして信頼を得た。古代は戦闘機乗り出身だから、隊長職を託すと判断するには、自分が出るまでないと認めなくてはならん」

「兄が生前に言ってましたが、艦長代理は前線に進んで出るそうですね?」

「あいつの本来の職は戦闘班長だ。沖田艦長から艦長職を託されて、少しは落ち着いたが、本質は戦闘機乗りだからな」

――真田は古代守から、幼少期の古代進の性格を聞かされていたため、現在の直情的で、戦闘機乗りらしい熱血漢の性格になったのはいつごろかと、前年に聞いたことがある。その時の会話は以下の通り。

――参謀になった古代守の執務室

「進があの性格になったのは、たぶん、親父とお袋が亡くなった時じゃないか?ガミラスが攻め込んで来て間もない時期だから、あいつは中学生になったか、ならないかだったな」

「そうか、ちょうどお前が沖田さんの指揮する船に着任した時だったな。お前たちの親父さんとお袋さんが流星爆弾で亡くなったのは」

「ああ。進は中学が休みで出かけてて、俺は軍務だったから、流星爆弾から難を逃れたが、親父達は直撃を受けて町ごと消滅した。それを目撃してしまった進は復讐を誓った。そして、それを達成した。今のデスラーの好意を見ると、進はわだかまりを捨てたようで何よりだよ」

そう。ガミラス本国はデスラーの本土決戦という愚策と、古代の奇策により、灰燼に帰した。古代進とデスラーは今は友人だが、互いに憎しみ合っていた過去もある。そのため、デスラーと進の友情に安堵していた。デスラーと進の間には、二度の対決での対峙、雪の存在がデスラーに妻子(実は元々は妻子持ちだった)と、まだ父の時勢で、総統に付く前の若かりし頃にスターシャへ抱いていた恋心を思い出させ、暴虐と思われたデスラーに人間
性を思い出させたという功績が、古代と雪にはある。守がデスラーが地球への敵愾心を捨てたのにとても安心していたのを思い出し、進も大人になったと感慨深い真田だった。




――その数日後。

「四郎、古いコスモタイガーでどうするの?」

「暗黒星団帝国の偵察機が確認されてるから、ちょっと哨戒に出てくる。玲、お前も行くか?」

「そりゃ行くけど、ちょっと待って。機体がないか、真田さんに聞いてみるわ」

加藤四郎と山本玲は士官学校で同期であると同時に、兄達が互いに戦友であった都合上、気の知れた仲であった。加藤四郎が古いコスモタイガーで出るというので、玲はそれを心配し、真田に相談してみる。すると、古代機用に旧型コスモ・ゼロの代わりに配備されている新コスモタイガーの試作型『新コスモゼロ』の予備機を使わして貰える事になった。



――この頃になると、コスモタイガーの生産ラインは全て新コスモタイガーへ切り替えられており、旧型機は使い潰すという形で使用が継続されていた。加藤の乗った旧型コスモタイガーはレーダー装備がブラックタイガーのそれのアップデート版で、今となっては旧型に分類される電子装備である。機首が短めという外観の違いが旧型であることを示している。(新コスモタイガーはレーダー装備の新型への換装で機首が延長されている)。エンジンはほぼ同じはずだが、新コスモタイガーはマイナーチェンジで推力が向上し、更に機首延長の副産物でショックコーンとしての能力が向上したため、最高速度が上がっている。塗装は新制式塗装だ。加藤と玲は哨戒に発進し、そこで暗黒星団帝国の戦闘機を発見する。円盤型戦闘機が2機ほどで、偵察任務に出ていると思われた。

「仕掛けるぞ、連絡を取られる前に落とす」

「了解」

暗黒星団帝国の戦闘機は概ね、コスモタイガーシリーズに抗し得ない事が判明しているので、この時の二人は楽観的だった。だが、意外にも二機のコスモタイガーから逃れようと、可変戦闘機並の機動力を見せる。円盤型戦闘機から武装を取り外し、推進ノズルを改良したモデルのようだ。

「奴らのマイナーチェンジ型の偵察機か?早いぞ!」

「分かってる!だけど、直線スピードはこっちが上よ!このまま追い詰める!」

加藤と玲は、偵察機を追いかけ回す。敵偵察機はイスカンダル遠征でこっぴどくやられたのがトラウマになったのか、機動力を徹底強化したようだが、それでもコスモタイガーシリーズには総合的には及ばないのと、天才的なセンスがある二人に追いかけ回わされたのが運の尽き。機銃に捕捉され、二機は粉砕される。だが、その間際に援護を叫んだらしく、敵の20機ほどの捜索隊を補足する。

「お、偵察機め。援護呼んだな?どうする、玲」

「イカロスの位置を知られるわけにはいかない。全機を落とすわよ。あわよくば母艦も」

「まあ、『空母一隻の行方不明』なんてよくある事だからな。行くぞ!」

二機は敵捜索隊の横合いから突撃した。宇宙空間で上下は関係ないはずだが、暗黒星団帝国やガミラス、白色彗星帝国などには宇宙空間に『上下』があるという概念があり、その週間は地球にも及び、いつしか爆撃仕様コスモタイガーは「急降下爆撃機」にカテゴライズされている。(宇宙で急降下とはこれ如何に?という突っ込みがある)。敵から見て、斜め上からの一撃離脱による攻撃はコスモタイガーの重戦闘機的な性格とマッチしており、その火力で円盤型戦闘機、イモムシ型戦闘機を反転しての反復攻撃で叩き落とす。如何に暗黒星団帝国の戦闘機が超磁性体関節ギアを備える機種に更新されつつあったと言っても、空戦を数百年に渡って繰り広げ、空戦機動を数多考えだしている地球の敵ではない。暗黒星団帝国戦闘機隊は熟練者が応戦に入る以外は、まともな回避運動すら取れず、パルスレーザーの餌食になるだけであった。

「ルーチンワークでこうも落とせるとは思わんだ。やはり奴らは空戦機動を知らんな」

「地球みたいに、しょっちゅう内戦してるわけじゃないからな。あまりそっち方面が発達してないんだろう。残りを落とすわよ」

拍子抜けするほどのあっさりさに、二人は肩透かしを食らった。暗黒星団帝国は一部の熟練者以外、地球連邦軍航空戦力の敵ではないと実感したからだ。白色彗星帝国の航空戦力が強敵であったのとは偉い差だが、白色彗星帝国のように、しょっちゅう戦っていない故のノウハウ不足であると結論付ける。数分で全ての敵機を落とし、彼らが発していた電波を辿って母艦を補足。巨大宙母と分類される空母で、地球連邦軍で言うところのグァンタナモ級宇宙空母に相当する規模の空母だ。しかしながら戦艦としての機能がある『航空戦艦』の模様で、砲塔を撃ってくる。オレンジ色の光線が狙うが、容易く避ける。

「対空砲火もない。あそこの滑走路さえ破壊すりゃいい。パルスレーザーをしこたま撃ちこめ!」

空母にあるまじき脆弱性を予定した巨大宙母の滑走路はパルスレーザーに穴ぼこにされる。縁日の射的並の楽さである。ガミラスや白色彗星帝国の空母のような猛烈な対空砲火が有るわけでなく、砲塔とミサイルの攻撃が有るだけである。第一次世界大戦中の戦艦と同じかそれ以下の無防備は、暗黒星団帝国の艦艇の脆さ(砲撃重視のあまりに艦載機攻撃に脆弱)を露呈してしまうきっかけとなった。

「トドメだ!」

砲塔直上から二機が撃ち込んだ対艦ミサイルは白色彗星帝国の重装甲艦艇を想定している新型であった。この時は気づかれていないが、暗黒星団帝国の金属がタキオン粒子に脆い事もあって、三発のミサイルが当たっただけで、空母は内部から自壊するような最期を遂げる。

「よし、帰るぞ」

「しかし、お前のコスモタイガー、途中でパルスレーザーが何門か壊れなかったか?」

「古い機体だし、エネルギー伝達系の回路が一部イカれたんだろう。まあ、近いうちにバラす予定だったっていうから、これが最後のご奉公だな」


――意気揚々と帰還し、真田に報告すると、前年度の波動カートリッジ弾で感じたものが確信に変わったようで、「レポートを書きあげんと」というと、自室にこもった。惜しくも、そのレポートを書き上げた時には地球本土は戦闘状態に入ってしまっていたが、現地でタキオン粒子の有効性が確認されたため、結果としては成功であった。ヤマトが発進するのは、その数日後であった。







ヤマトが目覚めるのと時を同じくして、地球は日本の何処かで、一隻の超弩級宇宙戦艦が胎動する。


「まほろば、発進!」

ヤマト型に分類されるが、原型の大和型戦艦の姿を色濃く残す、ヤマトよりも大型の宇宙戦艦。その名も「超時空戦艦まほろば」。波動エンジンを持ち、地球連邦軍に一応は属するものの、独自行動を許されている宇宙戦艦である。ヤマトの影武者である宿命を背負う『大和型の末妹』。

――『大和は國のまほろば』――

日本書紀の景行天皇の望郷歌に名の由来を持つ『大日本帝国海軍の正真正銘最後の忘れ形見』の戦艦は静かに浮上し、戦場に向かう。パルチザンに合流し、ヤマトを助けるために。そして、彼らは『知っている』。ヤマトを守護するために来訪した『偉大な男の駆る海賊戦艦』の存在を。その 海賊戦艦が同志である事を。海上から発進するまほろば。宇宙でヤマトを陰ながら守護するアルカディア号。それらイレギュラーと言える宇宙戦艦は、暗黒星団帝国の戦略に多大な齟齬を来す事になる。

――こうして、ヤマトが発進準備を終え、小惑星イカロスから発進する。未来の記録によれば、ヤマトの航海が後半部に入るのを示す一幕だ。地上からの人員は古代たちに同乗した者達が乗り組んでいる。しかし、思わぬ事態に直面している者が一名いる。フェイトだ。彼女の肉体は現在、黄金聖闘士『獅子座のアイオリア』の残留思念が動かしている状態である。これは佐渡酒造を通して、古代や真田に知らされたが、科学的に説明がつかない事例であるため、さすがの真田(デスラーから宇宙三大頭脳と賞賛されたとのこと)も首を傾げる事態となっていた。

「う〜む。科学的に説明はほぼできんな。他人の魂が取り付いたり、つきまとうと言うのであれば記録があるんだが、今回のように『ある人物の肉体を亡くなっている別の人物の魂が操る』というのは前代未聞だ」

真田をして、こう言わしめたアイオリア。『彼』も他人の肉体を自分の仮初の器にするのはバツが悪いらしい。

「俺もこの子の肉体を乗っ取る形になっているのは、バツが悪いな……。生前の技能は再現できているが、それはこの子の肉体ポテンシャルが高いからなのですか?」

「そうだ。フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官の肉体は既に常人の粋を超えた領域の鍛えられ方をしていた。だから、君の小宇宙を用いた動きに対応出来たのだろう。もし、君が常人に宿っていたなら、肉体がついていかなかっただろう」

真田がアイオリアに『別の肉体で生前の聖闘士としての技能を発揮できた』理由を説明する。フェイトの肉体が既に超人の粋にまで鍛えられていたおかげで、彼が要求するスピード・パワーに追従出来たのだと。これにはアイオリアも納得である。

「君の扱いだが、当面は白兵戦要員として行動することになる。いくらフェイト執務官の記憶を持っていても、戦闘機を動かすのは門外漢だろう?」

「ええ、それで構いません。そのほうが俺の性に会っています」

古代はアイオリアの経歴から、白兵戦要員として配置することにした。半分は光速拳を宛にしてのものだったが、アイオリア自身も、肉体にフェイトの記憶があるとはいえ、戦闘機などを動かせるとは毛頭、思っていなかった事から同意した。因みに『彼』の服装はシャツとGパンで、フェイトの身体が女性であるのを意識したとは言え、動きやすいラフな服装である。

「君の経歴だが、詳しく話して貰えるか?オリンポス十二神の一角を担う女神に仕えていたのなら、神話と差異があってもおかしくはないからだ」

「俺の立場で知り得る事だけになりますが、いいでしょう」

古代の質問に応える形で、アイオリアは自身の生前の経緯を話す。彼は黄金聖闘士とは言え、天秤座の童虎ほどの地位では無かった(黄金聖闘士の切り込み隊長的な役目であったため)故に、多くは語れない。だが、並行時空とは言え、ギリシャ神話、北欧神話、中国神話などが実際にあった事は衝撃であり、既に、この世界において『日本神話』がバダン大首領によって実証されていた(大首領が自身はスサノオであると示唆したり、大首領に敵対していた同族が『ツクヨミ』と称していた等が仮面ライダー達から通達された)大首領事もあり、各地の神話はあながち嘘ではない事は実証された。


――いずれにしろ、人類は神々との戦いを経験する(むしろしている)――

その事が宇宙怪獣の存在意義やバダン大首領の目的、並行時空におけるオリンポス十二神やオーディーン、ティタン神族などの神々の存在によって実証されたとし、人の闘争本能の存在意義としての論文として発表されるのは、この戦いが終結する後の話である。しかしながら、この論文は地球圏に多大なセンセーショナルを巻き起こし、いきすぎた平和主義者や極左派、生き残っていた各宗教の原理主義者などが猛抗議とテロを行う事態になり、その事が次なる災害と戦争においての地球の各州間の火種になったのは言うまでもなかった。



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