――パルチザンの兵器は雑多とは言え、総じて性能バランスに優れている兵器が主力を占めていたので、暗黒星団帝国の如何な兵器にも負けなかった。
「よし、戦車群を沈黙させろ!頼んだぞVA-3!」
「おっしゃ!任せておけ!」
パルチザンに持ち込まれた可変攻撃機『VA-3』。ペットネームをインベーダーとされるこの機体は、軍縮の過程で退役を余儀なくされた旧式の機体である。かつての名機『A-6』の血統に属する(同機設計チームの子孫がいたため)機体だ。製造年代は一年戦争から数年後の頃。ガミラス戦役などで活躍したが、軍縮が推し進められた頃にVB-171で代替とされて退役させられていた。だが、白色彗星帝国戦以後の軍再建の過程で『東西冷戦の遺物であるA-10を酷使するのはどうか?』という意見が生じた宇宙軍と空軍の現場から『再製造要請』が出され、議会で決議されたものの、今次大戦に間に合わなかった。そのため、博物館で動態保存されていた機体を持ちだしたのだ。
「くらえ、暗黒星団帝国の野郎共!このガンポッドから生き残れるか!?」
VA-3はかつての米軍『A-6』を可変戦闘機にリファインしたような丸っこい外見を有する。先祖と違うのは、A-10のような近接航空支援能力を有する点で、コスモタイガーやVF-19、22、25が制空権を確保した空域の制圧を行っていく。
「母艦はブラックゲッターが守護している!安心して制圧しろ!」
「あいよ!!」
ガンポッドが炸裂し、兵士、戦車、対空砲座を問わず蜂の巣にしていく。実弾式独特の作動音と発砲音が辺りに響き、VB-6が降り立つ地を『整地』していく。その姿は東西冷戦下で想定された『A-10』の任務を想起させた。
「おし、A空域は片付けた!VB隊、降りれるぞ!」
「了解!」
整地された場所にVB-6編隊が降り立つ。VB-6は一年戦争後に製造されていた『デストロイド・モンスター』の子孫である。デストロイドがあまり普及せずに淘汰されていく流れの過程で、可変戦闘機の系譜と交わる事で生き長らえた機種である。原型機のモンスターの火力を有しながら飛躍的に小型化されており、その火力はスーパーロボットを除けば、最高を誇る。変形し、一機辺り四門のレールキャノンを数機が一斉射撃する。その光景は圧巻で、上空護衛についている鈴が『凄い……大昔の列車砲みたいなバケモノじゃない…!』と漏らすほどで、暗黒星団帝国が増設中の自動工場を区間ごと吹き飛ばす。
「見たか、お嬢ちゃん!このモンスターの火力を!」
「あの馬鹿火力、反則よ反則!戦艦の艦砲を地上で撃つようなもんじゃない!?」
「そのためのモンスターだ。こいつで倒せないのはスーパーロボットくらいなもんだ」
「嘘ぉ!?」
鈴は兵士との通信で、ケーニッヒモンスターの猛攻撃でケロリとしていられるのは、スーパーロボットだけだと言われ、驚愕する。鈴はグレートマジンカイザーやグレンダイザーらの装甲はどーいう強度だと呆然となるのであった。
――制空権確保後の空域で地上制圧に従事するVA-3のガンポッドは実弾式だが、AVFや25よりも大口径を有し、第二次大戦後期の中戦車の主砲に匹敵する大きさを誇る。無論、近接航空支援はA-10より高効果なのだが、可変機としては珍しい一芸特化と言う面がコストパフォマンスを重視する議会に嫌われたのは否めない。だが、パルチザンはその有効性を高く評価しており、博物館から持ちだした部隊を諸手を挙げて歓迎した。機体の保守整備は新星インダストリー社が行うと通達したのも大きく、VA-3は以後、新星から近代化改修済みの機体がパルチザンに納入された事もあり、彼らの主力可変攻撃機の座にのし上がるのであった。
――MS隊はバージムとジェガンなどの数が多い機種を中心にした隊列で基地敷地内の在来工場(地球連邦軍の使用していた工場)の制圧を行っていた。
「ハイパーバズーカを持ってる者はいるか!?あの掃討三脚戦車を黙らせろ!」
この時、バージムの数機がビームライフルを弾かれ、(偏向フィールドを張れる指揮官仕様車)上部から背部バックパックや頭部メインモニターを狙い打たれて沈黙、擱座に追い込まれており、撃破に実弾兵器を必要としていた。幸いにも、これに対応できる者がいた。
「あいよ!母艦でスタークジェガンにしてきたぜ!」
ジェガン隊の誰かが愛機をスタークジェガン(換装キット適応型)に換装していたようで、颯爽登場する。装備はご丁寧にハイパーバズーカを担いでいる。地上では宇宙空間ほどの機動性は発揮できないはずだが、『フルアーマージェガン』とも言える風体や、高性能ガンダムタイプが行ってきた対艦任務などを量産機で行えるようにするという意図から、追加装備は地上でも使用可能である。これは小型機がいささか物理強度(ガンダリウム合金ではあるが)に劣るというサイズ上の限界によるもので、実戦経験豊富なエースパイロットは素体は旧型であるものの、スタークジェガンを乗機に選んでいたりする。
「甘いぜ!」
スタークジェガンは掃討三脚戦車の十字砲火を空中でのバレルロールで躱すと、ハイパーバズーカと対艦ミサイルを至近距離で放って掃討三脚戦車のコックピットを破壊する。最後は爆風をバックに、体操選手張りの新月面で着地する。
「お前、カッコつけてる場合かよ」
「俺がこなけりゃ返り討ちにされてたろーが」
「よし、ここはクリアだ。お喋りしてないで次に進むぞ!」
パルチザンのMS隊は練度が高いため、このような芸当も可能ゆえの光景だった。ブラックゲッターが艦隊相手に奮戦し、母艦の安全が確保されているのもあって、Eパックとグレネードを使い果たした者は補給がてら、スタークジェガンに野戦換装して再出撃する例がこの攻略戦中はあちらこちらで見られた。スタークジェガンはジェガンに追加装備を与えただけの機体だが、素体が採用時のD型から制式最終型のR型やそのマイナーチェンジ機にパワーアップしていた事、追加スラスターの推力もパーツ単位の部材更新で地味に上がっている事もあり、ジム系に慣れたパイロット達に好評であった。そのため、陸戦隊の第二小隊は少ない犠牲で進行する事に成功しており、こちらは至って順調だった。が、最も守りが堅い場所に突撃した第一小隊は第二次大戦さながらの銃の撃ち合いとなっていた。
――基地司令塔付近
「M240、持ってきたか?!」
「今、設置してます!」
野戦になった第一小隊(幹部指揮)は第二大戦の欧州戦線さながらの睨み合いとなり、膠着状態であった。誰かが機関銃を設置しろといい、幹部も同意したので、それでの射撃を行う事になり、三脚を着けたM240機関銃での制圧射撃を行う。
「幾多の戦争で兵士の血を吸った機関銃だ、暗黒星団帝国め、火薬式の実体弾をなめるなよ!」
20世紀後半以後、幾多のゲリラや兵士の血を吸ったM240機関銃。それが急いで数丁設置され、一斉に火を噴く。暗黒星団帝国は歩兵用火器に至るまで、レーザーを使用する火器で固めており、実体弾は『大昔に絶えた』技術である故、防御ノウハウが失われていた。パルチザンが事を優位に運べているのは、『相手にとって、実体弾が大昔にノウハウごと失伝した』原始的な武器であるという利点と、暗黒星団帝国の金属はタキオン粒子に脆弱である事がからみ合って生じた『奇跡』であった。
「よし、司令部前の兵隊は制圧した!突入するぞ!」
パルチザン第一小隊は一気に司令部に雪崩れ込む。しかしながら、入ってみると司令塔はもぬけの殻であった。
「基地を放棄したのか?」
「いえ、通信兵をとっ捕まえて尋問しましたところ、この方面の司令官らはこれを見込み、司令部機能を早期に先ほど現れた艦隊の旗艦に移し、指揮を取っているようです。」
「裏をかかれたようだな、沖田くん」
「ええ。敵に切れ者がいたようです。と、なると、この基地にいる全ての兵器を破壊するまで抵抗は止みません。暗黒星団帝国は敢闘精神旺盛だと聞いていますから」
「仕方がない、殲滅戦に移行する。移動本部に打電!」
藤堂は殲滅戦への移行を宣言し、残敵の掃討を通達した。暗黒星団帝国側はもはや基地を守るつもりはなく、『如何にして、パルチザンへ出血を強いるか』へ戦略を移行したと悟った故だった。暗黒星団帝国は一見して、防衛に躍起になっているが、それは転進をカモフラージュするための手段に過ぎなかった。これはミヨーズ大佐の策であった。パルチザンの兵力を見極めるために、厚木基地を実験場にしたのだ。
――暗黒星団帝国第二艦隊旗艦
「まさか貴様の策が思いのほか『ハマる』とはな」
「我が軍の陸戦兵力は所詮、暴徒鎮圧しか想定しておません。内戦で強力な機動部隊を持つに至った地球軍とぶつかるのは愚の骨頂。兵力を見極め次第、こちらも体制を整えるのが最善でしょう」
と、もっともらしい台詞を言い、基地司令を安心させるミヨーズ。半分は本当だが、半分は嘘だ。彼は自国の陸戦兵力が地球軍に遠く及ばないレベルのモノと見ぬいており、早期に新兵器を開発すべきと考えており、新進気鋭の技術士官『アルフォン』の後援を行うなどの先見性を有する。だが、アルフォンも地球連邦軍の機動兵器のレベルの高さに舌を巻いており、現在は場当たり的対応に終始するだろうとの進言も受けている。
(艦隊戦であれば互角に渡り合えるだろうが、地球はあのガトランティスを打ち破った国家だ。下手をすれば……)
ミヨーズは母国の敗北の可能性をこの時から悟っていた。地球には自分達が持ち得ない『強さ』があり、侵略には死兵となってでも抗う精神を持つ事を知っており、母国の身勝手な『侵攻の真の目的』を知れば、地球人は許しはしないとも考えており、この戦争の行末は『敗北』の二文字が踊るであろうと思い至っていた。
(ヤマトにはどんな兵器を用いても無駄だろう。少なくとも、あの真田志郎という宇宙三大頭脳の一角がいるかぎりは……)
この頃には、『ヤマトの無敵伝説の裏に真田志郎の影あり』と宇宙文明に知れ渡っており、宇宙三大頭脳と謳われる名声を本人の知らぬところで得ていた。暗黒星団帝国が異常にヤマトを恐れているのは、真田志郎の万能と言える能力が『如何な新兵器であろうと、すぐに対抗手段を作らせる』と恐れられたからでもあった。
――こちらはブラックゲッター。その武装で暗黒星団帝国艦隊を次々に落としていた。
『ゲッタービーム!!』
ブラックゲッターの額から大口径ゲッタービームが放たれ、暗黒星団帝国の駆逐艦は回避不可能で撃沈され、射線にいた巡洋艦も大破していく。継ぎ接ぎながらも、ゲッタードラゴン以上のハイパワーを有する面目躍如であった。
『さて、空母が奥にいるんだったな。あれをやるか!』
竜馬はブラックゲッターの最大級の奥義を発動した。橘博士が設計している新ゲッター『ゲッターロボ斬』の花乱舞と同系統の乱舞系の『暗黒乱舞』である。
『暗黒乱舞ぅ!!』
ブラックゲッターが舞う。マッハ4を超える速度で艦隊の奥に隠れていた空母へ接近し、拳とドリル、蹴りなどを入れた乱舞を空母に見舞い、装甲ごと武器と発進用のカタパルトを潰していく。最後に対艦のバリエーションで、ドリルロックバスターを見舞うバリエーションを披露し、空母を撃沈する。
「凄い……。これがスーパーロボットの力なの……?独壇場じゃないの」
楯無(刀奈)はブラックゲッターの独壇場と言える戦場に呆然となる。阿修羅とも言えるゲッターロボの強さは、彼女にスーパーロボットの強さを実感させると同時に、ISにも絶対という文字は存在しない事を改めて認識させるのに、十分な効果を出したのであった。
――ドラえもん達はXウイングで果敢に空中戦に挑み、すでにエースの条件を満たす撃墜数をマークしていた。これは彼らの操縦技術がすでに連邦軍の平均的な若手パイロットを凌駕するものである証であった。
「のび太、後ろだ!」
「おっと!」
のび太は割合、背後を取られる事が多く、被弾率は低いが、Xウイングが背後視界が悪いのを差し引いても『後方警戒が甘い』と言わざるを得なかった。
「のび太、後ろに気をつけろよな」
「そりゃ、いつも先生やママに気がつかないけどさ」
ジャイアンからの注意に、のび太はぶーたれる。のび太は普段の生活からして、注意力散漫なところがあるからだ。ジャイアンがいるのに気づかないで、悪口を言い続けるのも日常茶飯事だ。大長編になれば改善されるが、基本的に注意力散漫な性格なのだ。
「おっしゃ、そのまま工場の制空権をもらうぜ、しっかりついてこいよ」
「うん!」
ジャイアンは大長編モードになれば、いつもの暴虐非道なガキ大将の姿は消え失せ、任侠じみた男気あふれる所を見せる。ジャイアンは時代的に所謂、『ツンデレ』の先駆けかもしれないとは、なのはの談だ。
――移動本部
「敵は厚木の防衛よりも、こちらを消耗させる作戦に切り替えていたか……」
「沖田提督や藤堂総長は殲滅戦に切り替えたわ。今はおおよそ、半分を制圧したようよ」
「兵を捨て駒にするなんて……なんとなく後味悪いわね」
「戦争なんて、そんなものよ。古今東西、敵兵に消耗を強いるために殿を置くなんてのは常套手段だし」
「理屈はそうだけど、なんかこう……」
「お前は情に厚いタイプだからな。だけど、よく見ておけよ。軍人は時として、苦渋の選択を強いられるって事を」
移動本部で、武子は艦長席で憂いの表情を見せる。彼女は本質的に優しいため、本来であれば軍人向きではないとも言えるが、それが武子の人間的魅力でもあった。
「ブラックゲッターが敵艦隊の半数を撃沈!敵艦隊、反転していきます!」
「よし、これで安全は確保されたわ。本艦も支援砲撃に参加する。メガ粒子砲の砲門、開け!」
移動本部になっているペガサス級強襲揚陸艦は内惑星巡航用艦艇なので、攻防速共に敵艦隊の駆逐艦以上、巡洋艦以下という微妙な立ち位置である。指揮能力で選ばれたので仕方がない事だ。なので、臨時で艦長を拝命した武子は運用法を『部隊指揮と支援砲撃』に徹しさせる形に絞っていた。
「サマになってきたな、武子」
「本当、私が『海軍』(宇宙軍は海軍の位置付けなので)の船を操艦するなんて思わなかったわよ。私は空軍の人間だし」
「人手不足もあったし、佐官が不足してるからしょうがないって奴よ。尉官は多いけど、ちゃんとした高級将校の教育受けた佐官は少ないんだから」
パルチザンは佐官の比率が少なかった。尉官以下と比べると、八対二ほどの比率であり、アムロ、黒江、圭子、武子などの人員を除くと、20人いればいいほうだった。各地の連邦軍への呼びかけは続けられているが、最近は目立った返答はない。
「厚木を奪還したらどうする?」
「兵站体制を整えたら、機材補充とネオ・ジオンの動向調査も兼ねて、宇宙へ上がるわ。ロンド・ベルの第二群が苦戦してるみたいなのよ」
「ネオ・ジオンかぁ。一年戦争から懲りもせずに、毎回毎回蜂起しまくってるわねぇ」
「今のネオ・ジオンはザビ家のジオンと言うよりは、ダイクン派が担ぎ上げてるから、従来の残党より支持率高いっていうし、政府も手を焼いてるみたい。アムロ少佐曰く、『地球が人類の星間国家の主導権を握ってるのを嫌うスペースノイドは山ほどいる』そうよ。」
「はぁ!?まったく、地球人って概念が怪しくなった時代だと、地球に対してなんの感情も抱かなくなるのね……なんか嫌だな、それ」
――地球人は23世紀では、植民惑星出身の者も多くなってきており、地球を『人類発祥の星』としか思わなくなっている者も多い。なので、ギャラクシー船団のように、自らが支配者になろうとする悪どい者も出てきた。そこが連邦政府の頭痛の種であった。特に、まだ地球が地域国家の時代である世界の人間である武子や圭子には、連邦政府への不満分子の言い分は腹に据えかねるようだった。
「ネオ・ジオンは新型のガンダムを目の敵にしてるって言うけど、どんなガンダムなの?」
「RX-0『ユニコーン』。ユニコーンガンダムって俗称がある。昔のエクザムやハデスシステムに似たシステムを積んだって噂がある。ニュータイプはジオン・ダイクンが提唱した概念だから、守旧派はニュータイプ駆逐を目的に開発し始めたみたい」
「連邦政府って、派閥抗争強いのね?」
「連邦政府自体が日英が主体になって作った組織だしな。統合戦争で落ちぶれた列強の多くは復権しようと、あれこれ動いてるみたいだし、リリーナ外務次官も呆れてたわよ」
「やれやれ。懲りないわね、旧列強は」
――ユニコーンは地球連邦軍内の『クロマニヨン人に駆逐されたネアンデルタール人のように、ニュータイプにオールドタイプが駆逐されてしまう』という理論を信仰する派閥がアナハイム・エレクトロニクスに命じて作り始めたガンダムだった。だが、実際に完成した機体は当初の計画と真逆の奇跡を起こす機体となったという記録が後世において残されている。また、連邦政府内の改革派と守旧派の派閥抗争に振り回された計画での産物ともされる。そして、そのスピンオフがHI-νガンダムやZガンダム、ZZガンダム、Sガンダム、F91などの既存のガンダムにも取り入れられたという記録が残されている。
――この頃の連邦政府の派閥抗争は主に落ちぶれた旧列強が守旧派、体制を担う日英が改革派を担うといった面白い政治的状況であった。日本は旧国連時代に苦労しているからか、体制を柔軟に変える事を積極的に推進するようになり、それに反対する旧列強各国と激しい争いになっている。英が大英帝国としての再興を果たした後は、日本の味方であるのを快く思わない露・米・仏などは日本が造り出したヤマトを超えんと、アンドロメダを計画し、英が間接的に協力する形で完成した。が、アンドロメダは真田志郎に戦闘マシーンと称された通りの最期を遂げ、ヤマトに取って代わる事は出来なかった。アンドロメダは旧列強諸国が『超ヤマト』として生み出したが、過度の自動化が悲劇となった。このデザリウム戦役でその流れを組むしゅんらんらが活躍したのが、せめての慰めであった。
――厚木で炸裂するケーニッヒモンスターのレールキャノン。それの直撃で吹き飛ぶ敵兵。そんな光景があちらこちらで5分分続いた後、敵兵から降伏が通達された。モンスターの火力で敗北を悟ったのだ。厚木基地は概ね、少ない損害で制圧に成功したパルチザンだが、横須賀との兵站確保の任務があるため、当面の間は残敵掃討に労力を割かなくてはならないだろう。同時に、VA-3の調達とコスモタイガーの増勢などの要請を新星インダストリー社へ出し、軍備管理会議は纏められた。
――終結後
「ふう。終わった終わった〜」
「ご苦労様。のび太くんは何機落とした?」
「7機くらいさ。なのはちゃんのほうはどうだった?」
「司令部がもぬけの殻だったから、肩透かし食らったよ。だけど、M240って案外撃ちやすいね。M60とは偉い違いだよ」
「ありゃ欠陥品に近いからね。ベトナム戦争の映画見た?」
「ランボー見たよ。訓練であれみたいに給弾ベルト引っ張って撃った事あるんだ。だから楽だったよ」
なのはは前の戦争での訓練期間中(当時は子供だったが)にM60機関銃の実射経験があり、給弾ベルトを引っ張って撃った事があると告白する。
「なるほどね。いやあ、Xウイングはドロイドが後方警戒してたからか、後ろ取られまくったよ」
「あれ、後ろ見難いからね。コスモタイガー使ってみたら?」
「今度、そうしてみるよ」
厚木基地のエプロンで会話を楽しむ二人。のび太が大して外見が変わってないので、傍から見ると、ちょっとアンバランスである。
「のび太さん。今回は頑張ったわね」
「あ、しずかちゃん」
「私は13機。ピリカ星で鳴らしたから朝飯前よ」
「さすが」
「だけど、のび太さん。後方警戒がなってないわよ?いつも、たけしさんが後ろにいるのにも気づかないし」
「うぅ。それ言われるとなあ」
「実戦だと強いのに、いつもはそうなんですね」
「ええ。いつだったか……」
「あ〜ん。それ言わないでよしずかちゃん!」
「あははっ」
と、しずかに普段の間の抜けた所を言われ、半泣きになるのび太。それを微笑ましい表情で見ているなのは。なんだかんだ言っても、のび太はのび太なのだ。
(思い出した。そいや、高校の学祭、今年はいつだったかな?後輩連中に新作見せたいし)
なのははこれで一息つける事に気づいた後、卒業した高校の学祭について思い出す。後輩には『先輩って幽霊部員だと思ってました』と言われた事もあるが、概ね尊敬されており、プラモ部では部長ではないが、エースと見做されていた。対外的には防衛大学校に進学し、在籍中になっているので、大学校卒後は航空自衛隊の幹部学校へ進学する。まさか大学校の連中も、その合間に生きた実戦を経験してるとは思うまいと考える。
(自衛隊で連邦軍の階級が使えないのは面倒だよぉ。バレたらスパイ容疑もんだけど、国交ができたら有耶無耶になってるだろうな。連邦での階級も少佐になっていてもいいはずだけど、実務経験しないと軍令部がうるさいとかで、まだ中尉だしなぁ。藤堂総長は昇進させると言ってるから、それ待ちだね)
――連邦と管理局はメカトピア戦中に国交が出来たので、階級は高い方の階級で統一されるはずが、双方での正式な手続きのすり合わせなどに時間がかかったのと、軍令部が『何年かの実務経験がないと、昇進させられない』と通達した事や、管理局への復帰の際の手続きなどの都合で一尉としての階級が正式に認められるのに時間がかかった事などで、階級のすり合わせは当面凍結された。そしてこの年に、なのはの少佐昇進(階級のすり合わせ)は内定していたが、暗黒星団帝国による政府の制圧で有耶無耶になってしまった。なので、現在の連邦での階級は中尉に留まっていた。(ただし、藤堂総長から勝利の暁には管理局とのすり合わせを再開させ、昇進させるとは言われている)
(ティアナとのわだかまりは解消できたから、心が晴れた感じだけどね)
ティアナとのわだかまりはミッド動乱の折に解消出来たのが、そこはなのはの長年の懸案が消えた証であった。
(帰ったらヴィヴィオの面倒は見ないといけないし、体がいくつあってもたりない〜!)
と、ミッド動乱の折に引き取った『ヴィヴィオ』という子供(古代ベルカの『聖王オリヴィエ』のクローン。なのはが救出し、養子にした)のこともあり、生活の多忙ぶりにため息が出るなのはだった。
――その頃、宇宙では。
「ふむ。ガンダムチームが援軍に来たか。私が出なければならんだろう」
「よろしいのですか、大佐」
「いくらマリーダ中尉でも、ガンダムチームの百式改やZPlusなどは荷が重い。私が出るしかないだろう」
ジュドーたちとの合流を急ぐネェル・アーガマ。ロンド・ベル第二郡の援軍要請に応じ、ユニコーンガンダムとネオ・ジオンのエース機でクイン・マンサの後継機『クシャトリヤ』との戦闘に介入。第一次ネオ・ジオン戦争をくぐり抜けたガンダムチームの熟練技に、クシャトリヤを駆る『プルツーの生き残った妹』に当る『マリーダ・クルス』は経験の差もあり、苦戦していた。その撃退が可能なのは自分だけだと、シャアはレウルーラの戦闘艦橋で腰を上げる。
「ナイチンゲールの調整はどうか?」
「完了しています」
「よし、出るぞ」
赤い彗星は遂にロンド・ベルの前に姿を現そうとしていた。格納庫に鎮座する赤い機体、サザビーの直接発展型ながら、MAを思わせる寸胴型の胴体を持ち、サザビーよりもモビルアーマー然とした風体も重なり、うずくまった鳥のようなシルエットを持つ機体は、シャア・アズナブルの乗機にしては珍しい、滑らかな印象を与えている。
「シャア・アズナブル、ナイチンゲール、出るぞ!」
漆黒の闇へ発進する赤い機体。シャアが予てよりνガンダム打倒のために用意させていた新型機「ナイチンゲール」。νガンダムの上位機種のHI-νに対抗する手段としても使うつもりの機体だが、実戦での慣らしを兼ねて、シャアはナイチンゲールを駆り、戦場へ向かった。クシャトリヤの救援を名目にした慣らし運転。シャアはアムロへ対抗するべく、パイロットとしては高齢に差し掛かる自身の体に鞭打ちながら、かつてのカンをとりもどそうとしていた。
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