――地球連邦軍がパルチザン化している事を察知したネオ・ジオンであったが、それよりも連邦政府初代首相が残した『ラプラスの箱』を追うことに執念を燃やし、アナハイム・エレクトロニクスの所領コロニー『インダストリアル7』を襲撃、そこで連邦軍が『UC計画』で予てから試作していた新型ガンダム『ユニコーンガンダム』と交戦に入った。連邦軍のロンド・ベル第二群は中央からの指示を仰げずに大損害を被ったが、結果的にはイーブンとなった。エゥーゴ時代のガンダムチームが当時の機体の発展型なり後継機を引っさげて参戦したからだ。

「フルアーマーガンダムMK-V、ZU、フルアーマー百式改、Zプルトニウスだと……!?」

ネオ・ジオンのエース機『クシャトリヤ』のパイロットであり、ギュネイ・ガス亡き後、ネオ・ジオン側に残された唯一の強化人間であり、エルピー・プルの『末の妹』であり、固有名を与えられたマリーダ・クルスは他の姉妹より成長した外見相応の冷静さを備えていたが、ロンド・ベルに加勢したガンダムチームの機体には動揺を隠せず、実戦経験の差、ガンダムチーム全員が『姉の動き』を知る事もあり、クシャトリヤを以ってしてさえ、押されてしまう。

「おりゃあ!」

クシャトリヤへ、フルアーマー百式改が左腕の炸裂ボルトを叩き込む。積年の改良で出力が段違いに向上した事もあり、電流がコックピットにも伝わり、クシャトリヤはメリケンサックをつけたボディブローを食らったように、脇腹を抑えてのけ反る。

「貴様……!」

頭がクラクラしながらも、マリーダは反撃しようとするが、百式改は蹴りを入れ、距離を取る。次いで、フルアーマーガンダムmk-Vが肩からビームサーベルを引き抜き、襲いかかる。ネオ・ジオン側のデータバンクにあるスペック値よりも数段高い推力値を叩き出し、近代化改修が高度に行われたのが分かる。クシャトリヤの胸部メガ粒子砲を回避し、ビームサーベルと斬り結ぶ。だが、ここでマリーダはショックを受ける。ビームサーベルの出力が負けているのだ。機体出力そのものはクシャトリヤが優っているはずだが、武装の破壊力が劣っているというのは、ネオ・ジオンにとっては『あってはならない』のだ。

「サーベルが力負けをしている!?うっ……!」

あろうことか、サーベルを払われ、装甲に一撃食らわせられる。

「ならば……ファンネル!」

反撃にファンネルを射出しようとするが、今度はファンネルが機能を停止し、射出されない。いくら念じても、だ。マリーダは事態をつかめず、動揺する。

「どうした、ファンネル!?私が分からないのか!?」

念じても、ファンネルはうんともすんとも動かない。冷静なマリーダも、ファンネルが使用不可という状況は初めてのようで、大いに狼狽える。

そのクシャトリヤの様子を発進したばかりのナイチンゲールのコックピットから観測したシャアは珍しく、驚きを見せた。

「これは……まさか、AFS(アンチ・ファンネル・システム)か!ロンド・ベルめ、ハマーンの遺産を手に入れていたか!」


アンチファンネルシステム。これはサイコミュ兵器の働きを阻害するシステムで、元はハマーンのネオ・ジオンの残党で開発がされていたシステムであったため、ダイクン派を母体とするシャアのネオ・ジオンにはデータが渡っていなかった。だが、アクシズにいた当時に開発プロジェクトの存在は知っていたが、その後の自分の蜂起の際には敢えて使わなかったシステムだ。シャアは結果として、自分に不利な状況を作ってしまったハマーン派の動きと、この時初めて、旧突撃機動軍、旧宇宙攻撃軍、旧ハマーン派、旧ダイクン派の派閥抗争の絶えない自軍を嘆いたのだった。



――地上では、日本各地に出没するジオン残党をモグラ叩きの要領で駆逐するパルチザンの姿があった。

「フィン・ファンネル!」

Hi-νガンダムを得たアムロは、水を得た魚のようにジオン残党軍の如何なMS、MAをもねじ伏せていた。ファンネルミサイルの技術を用いる事で、地上での運用が可能となったフィン・ファンネルの巧みな使い方もあり、ジオン残党軍は手球に取られていた。

「地上でオールレンジの端末を使えるだと!?馬鹿な、連邦軍はそこまでの技術を!?」

ジオン残党軍は雑多なMSの編成であった。中には、元は連邦を出自に持つティターンズ敗残兵も混じっていたが、アムロとHi-νガンダムの前には有象無象にすぎない。あっという間に叩きのめし、制圧する。

「凄いわね、アムロ少佐は。数分で制圧するなんて」

「少佐とHi-νと対等に戦えるのは、彼のライバルだったジオンの『赤い彗星』だけよ。技量込みで、あのガンダムが今の時点の最強のアナハイム・ガンダムよ」

「ガンダムねぇ。突出した戦闘力を持つ者が軍事的に強いなんて、まるで騎士や武士の時代ね」

「核爆弾をそれこそパチンコ感覚で撃ちかねなかった冷戦時代よりは、よっぽどこのほうが健全的よ。貴方から見れば納得出来ないだろうけど、突出した個人がいるのは。個人単位のスコアを二の次にしてたしね、貴方は」

武子は部隊単位での強さを重視するため、アムロのように『個人単位』で突出した人材がいると、部隊運営が難しくなるとぼやく。ロンド・ベルは連邦軍最強を誇ったためもあるが、今のところ、パルチザンでアムロに追従可能な技能を持つ者は、今のところはコウ・ウラキとエルピー・プルのみである(ジュドーは宇宙へ行ったため)。

「ええ。だけど、貴方が送られた部隊の練度はどうなってたのよ?少佐といい、プルといい……」

「あー……。ウチは『連邦軍中枢部を一隊で三時間以内に制圧する』くらいの超練度で鳴らしてたから。古参は激戦帰り、若手でも有望株揃い。だから政治家には嫌われ者だったけど。腕は良いけど、曲者揃いだから、貴方じゃ扱いに苦労するわよ?」

「綾香はよく、そんな中で馴染んだわね?」

「扶桑海の後半見たって分かるだろう?あの子は人懐っこいし、面倒見もいいし、周囲へ気配りも欠かさない。それでいて、自らの鍛錬を怠らない。努力家なのよ、根本的に。64F時代、子供たちには貴方より好かれてたでしょ?黒江ちゃん」

「確かに、子供たちと一緒になって遊んでたものね。私だってやろうと思えば……」

「弾丸ライナーだったしな、あれ。まぁ、その後の顛末もケッサクだったけど」

「どういう事?」

「数年前だったか?今の状態になってしばらくして、芳佳の家に黒江ちゃんがホームステイしてる時、ある日の新聞記事にそれが載ってて、流石に真っ青だったらしいわ。赤バットの登場が2年も早まった上に、自分が遊び半分でやったのが歴史に影響を与えちゃね」

「今更って感じじゃないの。事変の様相を変えておいて」

「でしょう?大笑いしたわ、流石に」

「なるほどね。確かに大笑いね」

今更ながらも、年齢的に、扶桑海の当時にちょっと背伸びしていた自分が部下からどう見られていたかを思い出し、黒江を羨ましそうに思う武子。精神年齢が20代だったはずの扶桑海事変の後半時、若本などに混じってレクレーションで野球をし、ノリノリでプレイしていたのを思い出したのだ。あの時期に野手に転向し、1945年前後の時代にはキャリアの最盛期を迎えている赤バット・弾丸ライナーの『川上鉄治』(我々の世界の彼とは名前の文字が違うとの事)が1944年より使用し始めた『赤バット』を冗談めかして使い、当時は12歳だった角丸美佐(後のワイト島分遣隊長)の速球を弾丸ライナーで打ち砕いた。これを見ていたウィッチの一人が彼の親類で、赤バットのことを伝えたらしく、川○氏が赤バットを使い始める時期が二年は早まり、黒江当人も『マジかよ!?』と驚愕し、芳佳の邸宅にホームステイ中、芳佳を連れだして、その確認のため、巨○軍の試合を見に行ったとの事。その新聞記事を発見した時は、さすがの黒江も顔面蒼白で、しばし上の空になってしまったと、芳佳は圭子に証言した。その時の黒江は『嘘だろ……』と目が点になって顔面蒼白に陥っており、さすがにショックが大きかったらしく、絞り出すように『マジかよ!?』としか言えなかったとの事。(名前のところの漢字が違うが、名の読みは同じため、黒江には彼と察しがついた)これは今更な感じがするため、事変経験者の二人は可笑しかったのだ。


「そうだ、空母航空団の指揮は誰に?」

「ロイ・フォッカー大佐にお願いしたわ。経験的にあの人しか出来ないし。私らはそもそもは空軍だしね。私も勉強はしたんだけどね、部隊柄」

「空母航空団、か。リベリオン式の編成が普及したのね?」

「ええ。第二次大戦後は、アメリカしか大規模空母機動部隊を持てなくなった時代が長かったし、アメリカがその栄えていた時代に残した軍事的遺産は大きかったわけ」

この日までにパルチザンにはロイ・フォッカーが加わったのだが、武子と圭子は空母航空団の指揮をフォッカーに委託した。フォッカーは空母航空団を率いていたキャリアが長いことから依頼したのだ。フォッカーは引き受けたが、冗談めかして『めっきり出撃の機会が減ったがな』と言っている。圭子の言う通り、21世紀初頭同様、空母機動部隊の艦載機部隊は空母航空団と呼称され、米軍式の編成となっている。アメリカが残した軍事的遺産の一つだ。空母航空団のパイロットはトップガンの教官任務につかないかぎりは陸へ上がることはない。これは日本帝国海軍航空隊が基地航空隊を大拡充したら、却って制海権を取れなくなった結果に終わった事で得た戦訓で、扶桑海軍でも1946年までに、そのような通達が出されたという(空軍が設立されたため、海軍航空隊は空母航空団と陸上への連絡機しか保有しなくなったため。だが、陸で戦うのも任務と考えていた古参を中心に反対運動が起こり、一悶着があったという)。

「なるほど。それで、か」

「?」

「いや、ウチの海軍でも空軍設立後に出されたじゃない?空母航空団のパイロットは教官任務でないかぎりは陸に上がらないって通達」

「あれなー。史実でミッドウェーで負けた後はジリ貧で、い号作戦やろ号作戦が大失敗に終わって、マリアナ沖海戦で空母機動部隊が崩壊した日本軍の戦訓を知った上が、大慌てで策定した急ごしらえの通達だから、空軍が設立する寸前までに陸に上がっちゃった海軍ウィッチも多くて、パニックになったのよねー。ウィッチ至上主義者共が騒いだけど、現実に空軍ができたんだし、海軍には海上の事に専念してもらわんとなぁ」

「あの人達はウィッチの力を変に過信していたもの。自分達が主役と曲解していた。だから、ティターンズとの戦争で没落していったのよ」

扶桑空軍の設立時、海軍の基地航空隊と陸軍航空部隊が一つに統合されたため、その前に海軍の基地航空隊に転属するつもりで陸へ上がったウィッチが空軍設立で宙に浮いてしまい、管轄が変わったため、基地に所属することも出来ず、泣く泣く空母へ戻る事になった事例があちらこちらで発生し、ウィッチ閥から文句が出たのだ。しかしながらウィッチ閥は、実地部隊がティターンズの攻勢へ無力を露呈し、扶桑海の功労者である『三羽烏』もウィッチ至上主義と別の領域にいるため、以前のような(1939年から1943年までの)権勢を振るえなくなり、政治的に通達を曲げれなくなった。ティターンズは結果として、その軍事力で、ウィッチ世界で蔓延りつつあった『ウィッチ至上主義』の傾向を是正したのである。

「Hi-ν、着艦します」

「アムロ少佐に、報告に上がるように伝えて」

「ハッ」

兵士からの報告に、自然に次の言葉が出るようになった武子。すっかり『艦長』が板につき始めたようだ。数分後、アムロが艦橋に上がって来て、報告をする。

「今日の残党にはティターンズの敗残兵も混じっていたよ」

「本当ですか?」

「ああ。第一次ネオ・ジオン戦争前後の頃、ティターンズの敗残兵は『金で買収された』、『連邦がエゥーゴの手に渡ったから、行き場がない』と思い込んだ、『連邦がティターンズをトカゲの尻尾にした』事への怒りなどで、ネオ・ジオンに行った部隊も多いんだ。第二次が終わった後に、『捕虜を尋問したら、根っからのジオン兵ではなく、過去に連邦に属していた』、『連邦の暗部に絶望したティターンズの敗残兵だった』なんて話もよくあったが、今回も恐らくはそれだろう。ネオ・ジオンには、かなり人が流れたからな。ここ7年の政治的混乱でね」

「ああ、それで左派政権が退陣したとか、なんとか」

「そういうことだ」

ネオ・ジオンが急速に復興した原因はそこにあった。ネオ・ジオン戦争時に『行き場を失ったティターンズ兵』を、白色彗星戦役前後に『ピースクラフト政権下当時に、正規軍解体で職を失うのを恐れた連邦兵』らが傭兵として多数、ネオ・ジオンに入隊した。これがかつてのピースクラフト政権に取って、大きな痛手となったのである。それは有名な事だ。(当時のリリーナが構想していた『地球防衛軍』への将来的なビジョンが陽の目を見ぬままに頓挫した原因は、運悪く、マスコミのセンセーショナルな報道で、軍人にそのような動きが巻き起こり、それを止めることが出来なかった事、権限移管予定の移民星軍も人員不足を理由に、地球圏の防衛に難色を示した事で、移管作業が事実上、頓挫した事、その間に白色彗星の侵攻が現実味を帯び、軍備の一時的な解体と再編を行っている場合では無くなったなどがある)

「それを上手く突いて、シャアは軍備をジオン公国時代に劣らぬ規模にまで拡大した。同じく、存在意義を失ったクロスボーンやザンスカールの生き残りも糾合したからな。だから、中枢部だけだよ、生え抜きのジオン軍出身は。それも内部で旧軍、ハマーン派、ダイクン派の派閥抗争だ。シャアには同情するよ」

ネオ・ジオンは内部のジオン系組織だけでも、一枚岩でないのに、そこにティターンズ、クロスボーン・バンガード、ザンスカール帝国の残党も加えたため、数は増えたが、組織の統制が難しくなっている。これはネオ・ジオンそのものが霧散寸前まで落ちぶれていたがためでもあり、主力をジオン系で固めているのがせめての意地であり、連邦では中型機にも装備が始まったビームシールドを装備した機体が少ない(ジオン軍はビームシールドを信頼しない古参兵も多いためと、高価なビームシールドを量産機に与えるよりも、エース級にIフィールドそのものを持たせたほうが割に合うためでもある)理由でもある。

「ジオンにはなんでビームシールドを持つのが少ないんですか?技術的には可能なのでは?」

「ジオンは高価なビームシールドを一般量産機に回せるほどの金は持っていない。あれは意外に維持費がかかるし、運用上の難点もある。Iフィールドそのものをエース級に持たせたほうが、ジオンにとっては割に合う。しかし、全てを防げるわけじゃない。その点を重視したから、シャアの機体でさえも実体式シールドなのさ。俺達も笑える状況ではないけどね」

「なるほど」

そう。潤沢な資金を持てた連邦軍でさえ、普及率は高くないビームシールドを、財政的に苦しいネオ・ジオンが普及できる道理はない。クロスボーン・バンガードやザンスカールが普及させていたのは、ブッホ・コンツェルンなり、当時としては有数に裕福だったサイド2の持つ莫大な富を背景にしての事だ。

「この間に拾ったMSの割り当てはどうする?」

「ブリーフィングルームで決めましょう」

「よし、ウラキ中尉、キース大尉も呼んでくれ。それで決めよう」

コウはデラーズ紛争の中心にいたため、その後の出世が親友のチャック・キースに比べて遅らされたのが分かる。ただし、キースは同僚のモーラ・バシットと籍を入れた後、尻に引かれる生活で、刑事コ◯ンボよろしく、『うちのカミサンが…』とぼやく生活だそうな。(グリプス戦役前後に、二人の子宝にも恵まれたそうな)

数分後 ブリーフィングルーム

「機体の割り当てだが、ウラキ中尉には、当面の間はNT-1改に搭乗してもらう。これはニナさんがGP03Sを送ったそうだから、それまでの措置だ」

「了解です」

「キース大尉はジェスタ・キャノンに」

「了解」

「クリスチーナ大尉には当面の間はシューフィッターをやってもらおう。彼女の本業はそちらだからな」

コウ・ウラキの部隊には、一年戦争後は軍からアナハイム・エレクトロニクスに出向する形でテストパイロットを続けていた、元はアレックスのテストパイロットだったクリスチーナ・マッケンジーが在籍していた。アレックスの一件の後は『ガンダムをオジャンにした』事も遭って、軍の出世コースから外れ、また、ガンダムに関わったため、戦後に軍を退役出来ず、アナハイム・エレクトロニクスに出向させられ、そのまま10年近くが経過したのが、彼女の現状であった。学生時代はエンジニア志望でもあった彼女、『シューフィッター』としての腕は良く、Z三号機の性能アップデートの際に対面したことがあるアムロも太鼓判を押すほどに優秀である。彼女は今、回収され、修理と簡易的な改修が施されたRX-78-7の稼働テストを行っているとの事。

「なのは中尉はどうします?」

「ミッドから彼女用の強化型ZZを回すように手配したが、まだ時間がかかる。当面はガンダム7号機で我慢してもらう」

「三菱から持ち出したマドロックの魔改造機はどうします?」

「動かしてみたが、セッティングが過激だからな……。実戦に出せるか見極めんと。それと、君達にくっついてきた、あの『少年』だが、データベースを照会してみて分かった。彼は『別世界の出身』で、元は『ザフトに在籍していた事が分かった」

「本当ですか?」

「間違いない。先の戦争中に捕虜になって、釈放後に市民権を得て、北米に在住しているという記録があった。彼がその時に使っていた機体の行方も調査させたが、コンペイトウに調査のために置かれているのが分かった」

それはシン・アスカの事だった。シンはカミーユとの対面後、カミーユの誘いで北米に定住し、土木作業員として生計を立てていた。オーガスタ基地の工事の作業員として出入りしていたところに、今回の動乱となり、自分がMSの操縦経験者と名乗り出て、同行してきたのである。(その時に久々にザフトの軍服に袖を通した)また、彼の愛機『デスティニー』はメカトピア戦の後に、宇宙でのテストのため、コンペイトウに搬入されているとの情報を掴んだのだ。

「あの全部乗せラーメンのような薄味の機体ですか?実戦で使えるのですか?」

「コンセプト的には、我々のガンダムと同じ万能機を目指しているというから、使えないことはないだろう。だが、武装のコンセプトが機体と矛盾しているところがあるのは否めないが」


「確か、同時に鹵獲した機体との性能比較が行われていたから、今はそっちの機体の頭部が臨時に付けられたとか」

コウもアムロもこの頃には、デスティニーの解析に携わったという、ニナ・パープルトンの話を聞いており、ニナがデスティニーを酷評していたのを思い出す。これはプラントの国情がジオン以上に少ない人的資源をフル活用しなければならないほどの窮状も大いに関係しているのだが、高エネルギー長射程ビーム砲が高機動型の機体に相応しくないほどに異常に大型(折りたたみ式であるにしても)である事、通常のビームサーベルを持たず、大ぶりなビームソードと、ビームブーメランしか斬撃武装がなく、対艦戦はともかくも、対MS戦でのハンデは否めないと、アナハイム・エレクトロニクスのエンジニア、連邦軍の技師は見ており、デスティニーを『完全な万能機』とは言えず、どちらかと言うと『対MA、対艦用のMS』と判断を下したという。

「へえ」

「彼には、入手できればそれを与える。だが、多分、操縦系はいじられてるだろうから、全天周囲モニターとリニアシートに慣れてもらうための訓練は始めさせた」

アムロの言から、シンにこの世界におけるMSの操縦を覚えさせるため、シミュレータでの訓練を課し始めたとわかる。これはたとえ、デスティニーを手に入れたとしても、テストや予備の部品などの都合上、コックピットは間違いなく、既製の全天周囲モニターとリニアシートに換装されているからだ。

「後は、可変機や新型量産機は優先的に高練度の連中に、武子くん。君はアナハイムが送ってきたリ・ガズィ・カスタムに慣熟してくれ。圭子くんは試作のZプロンプトと、Zプルトニウスのテストを。戦車道の子らには任務に応じて、ガンタンクUなり、局地制圧型を戦車と使い分けさせる方向で行こう。キース大尉は支援型MSの使い方を若い連中にレクチャーしてくれ。最近の若い連中は支援型MSをあまり知らんからな。VFの割り当てなどは、フォッカー大佐に相談しよう」

「了解」

アムロによって決議された、その指針は上奏され、上級幹部らも承認し、次の日から実行された。アナハイム・エレクトロニクスからの援助物資第一弾に含まれている、試作の次世代Zシリーズのテストは圭子が、リ・ガズィの代わりに送られてきたカスタム型は武子が受領した。なのはは専用ZZの到着までの措置として、ガンダム7号機が割り当てられた。他には、可変MS隊も再編され、RGZ及びMSZ系と、RAS-96『アンクシャ』はそれぞれ別編成に割り当てられ、ヒロイックなデザインのMSZ系に乗りたがるパイロットは多く、アンクシャよりも『Z系を!』と嘆く声が多かったとか。戦闘機乗りらはフォッカーの管轄となり、彼もまた、ドラえもんらの割り当てに苦労したという。



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