――パルチザンでグレートマジンカイザーのテスト相手にされたプロトZはある日、突如として意志に目覚め、パルチザンの追撃部隊を血祭りに上げた後に、自己進化を起こし始めた。それはマジンガーZの原型を逸脱するほどの変態だった。

「な、何ぃ!?」

追撃部隊でほぼ唯一、攻撃を生き延びた神保はプロトZがマジンガーZとしての原型を超える様を目撃した。それは体躯がゲッターロボGを超えるほどにまで巨大化し、口部が開閉可能な構造となる。ボディの形状がマッシブになっていき、マジンカイザーのような筋肉質な体型になる。そして、そのマジンガーはまるで悪の化身となるかの威容となる。腕部が巨大化し、アイアンカッターを更に鋭利にしたものがついている。それはある次元で猛威を奮った『神と見まごう力を持つマジンガー』と瓜二つの姿形であったが、それと内面的に違う点があった。それはそのマジンガーを無敵足らしめた『因果律操作』能力を持たないという点だ。パワーやスピードなどは同等であるが、その能力を持たないという点で、ある意味では『不完全体』である。だが、攻防速ともにマジンカイザーレベルに達しており、グレートマジンガーまでを寄せ付けないレベルの能力に飛躍している。

『ヒトヨ……キケ……我は唯一無二のスーパーロボット……マジンガーZERO……!』

そのマジンガーは自らの意思を、空中に文字として浮かべる事で意思表示した。変貌を遂げた自らを『唯一無二のスーパーロボット』と宣言し、背後に0の文字の後光を創りだす。

「マジンガーZEROだと……!?貴様はマジンガーを悪の手先にするつもりか!?」

『マガイモノタチヲ始末スルタメには、荒療治ガ必要ナノダ。ソウ、我以外ノスーパーロボットヲ破壊スルニハナ……』

ZEROは他のスーパーロボットを自らのマガイモノと断じ、その為には人類をも滅ぼすと宣言する。それではスーパーロボットの存在意義の否定ではないのかと、神保は指摘する。

「スーパーロボットトハ、ジンルイヲ守ルタメニ存在スルワケデハナイ……それを教エテクレヨウ。ブレストファイヤー!!」

ZEROは軽いジャブのブレストファイヤーを放つが、それはブレストファイヤーと呼べる、生易しいものでは到底無かった。もはやファイヤーブラスター級の『地面を抉る程の高熱』となり、付近の市街地を蒸発させ、地殻が一部露出するほどの威力だった。

「なん……だと……!?」

「我ガ動ケバ、コノ星ヲ破壊スル事ナドは容易ニデキル。覚エテオケ。兜甲児に伝エロ。我コソ、オマエに相応シイマジンガーデアルトナ……」

ZEROは甲児への執着を示唆し、何もない空間から0を象ったスクランダーを形成しながら、その場を去っていく。神保は絞るように、一言だけ呟く。『マジンガー……ZERO……』と。無残に破壊された追撃部隊の残骸を背景に立ち尽くす神保。黒江が姉のように慕うウィッチである彼女をして、そうまでさせたZERO。この事は、彼女の帰還後、すぐに甲児に伝えられた。

「なんだって、そのマジンガーがそんな事を?」

「ああ。よほどお前に執着があるように感じたぞ」

「うーん……そいつはおじいちゃんの言葉の意味を悪の側面から解釈したかもしれない。おじいちゃんは『神にも悪魔にもなれる』と言い残したんだけど、マジンガーを人類の結束の象徴として考えてた節があるから、悪となるのも間違ってはないが、そいつはただ、破壊を振り撒く災厄でしかない。倒すしかない。それがじいちゃんからZとカイザーを託された、俺の責任だ」

甲児は決意するが、ZEROは全てを無にするために生まれし魔神であり、マジンカイザーでは相性が悪いだろうという推測が出され、そのため、パルチザンは第二分隊を更に派遣し、ゴッドマジンガーを奪還する作戦を練らればならなくなった。だが、町田方面を奪還している最中であるため、少数精鋭で第二分隊は編成され、武子自らも加わった他、扶桑海軍代表で赤松貞子が加わり、砲撃戦の手段として温存されていたなのはは、そちらに加わった。


――強行着陸になるため、パルチザンはとある基地から回収していた、『Gファイター強襲揚陸型』を使用し、光子力研究所からほど近い地点に建築された研究所兼基地の『ゴッドの砦』に向かった。元々、RX-78を空輸するために造られた面があるGファイター、原型機は一年戦争後期に完成したが、ホワイトベース隊も使用はしたが、ジャブロー攻略戦の折に破損し、出港前にコアブースターに交換され、その後は主に、他のRX-78保有部隊で使用された。フォルムがおもちゃじみていた事もあり、『軍用兵器とは思えない』という評もあったが、コンテナ部がRX-78を運べるほどに余裕があったのを活用し、改設計を施し、主に空挺部隊用として運用した。それが『Gファイター強襲揚陸型』(空挺輸送用とも)である。他にも『宇宙用』『爆撃型』も造られたが、より優れたVFやコスモタイガーの就役で退役している。

「大佐、ゴッドの砦に接近、敵の陣地が築かれているようなので、バンカーバスターをぶち込んで、敵陣地を黙らせます?」

「その必要はないわ。このままのコースで強行着陸して。ゴッドマジンガーに何かあると大変だから」

「了解」

パイロットからの通信に武子は答える。皆は思い思いの銃を持ち、待機している。強行着陸の後に撹乱するというのは、沖縄戦で例があるので、あながち無謀ではない。

「スモーク弾、発射!!」

スモーク弾を大量に投下し、煙幕を展開した上で強行着陸を行う。ラフな動作で着陸し、一同は外に出たと同時に武器を乱射しまくる。赤松に至ってはフリーガーハマーに、M16、デザートイーグル、手榴弾、刀と一番の重装備だ。機体横から前方向に動き、離陸のブラストで流れるスモークに紛れる。一目散にゴッドの砦の入り口に行き、見張りを打ち倒し、ドアを開ける。

「存外楽に入れたわね」

「いや、問題はここからだ。防御システムがあるんだよ、防御システムが。伏せろ!」

なんといきなり、光子力ビームが浴びせられたのだ。対人の出力だが、充分にウィッチのシールドを貫通する。それを黙らせるには、内部のシステムをハッキングするか、それ以上の火力で破壊するかだ。この時は前者の方法が取られ、Gファイターから持ちだした端末機器でハッキングを行う。

「ええい、こんな時、ルリちゃんとオモイカネがいりゃ楽に制圧出来んだが……武子ちゃん、やってみてくれ」

「わ、私が!?ハッキングなんて初めてよ!?それよりパワー回路切断してのハードキルのほうが速いし、確実だわ。この研究所の制御室はどこ?」

「ここから二ブロック行って、そこから階段で一二階下がったところにある。ただ、そこまでには『第七格納庫』を通らなくてはならないよ」

「第七格納庫?」

「ゴッドを作る過程で創りだされた100機以上の試作機の墓場さ。グレートマジンガーはその過程で造られた中で最も性能が高く、安定した個体が基になったんだ。暴走してなきゃいいが」

第七格納庫は、光子力研究所から引き継がれた属性がある。それは『マジンガーの墓場』という属性だ。第七格納庫には、ゴッドマジンガーという完成形を生み出すまでに失敗に終わった個体が収容されていた。概ね外見はグレートマジンガーを基にしているが、細部の形状が異なったり、頭部の形状が鋭角的ながら、独特の形状になっているものが多い。10分ほどで第七格納庫にたどり着く。


「う、こ、これは……」

「マジンガーに『なり損ねた』連中だよ。起動実験に失敗して、上半身だけで放棄された奴、出力が安定せずじまいだった奴、性能が歪になった奴……」

ゴッドという成功の裏には、数多の失敗作の功労がある。グレートマジンガーを基に、より完成されたマジンガーを目指す過程では、多くの失敗があった。翼をスクランダーのような外装式を志向する弓教授、スクランブルダッシュのような内蔵式を志向する兜剣造の間で議論が起き、二人の先輩(青年期に大学の先輩後輩の間柄)である宇門博士がそれを仲裁したという逸話もある。結果、スクランブルダッシュのほうがスクランダーの整備時間を省けるという結論に達したものの、スクランブルダッシュの収納に問題があると指摘はされているため、宇門博士がネイサーからナノマテリアルによるウイング形成技術を提供させる(橘博士と知己であったのが幸いした)事で収めた。そこまでに達するまでにも数機のテスト機を挟んでおり、完成に時間を要したのもわかる。

「お父さん達は、ゴッドを完成させるまでに、試作機を3桁造ったが、テストにも使えないものも多いから、実質は20機くらいしか機構テストに回せなかった。しかもテストの度に故障起こすことも多かったから、テストのためのテストになってた時期もあるんだ」

そう。ゴッドマジンガーを作る過程では様々な方策が取られ、平行時空のスーパーロボット『ゴッドマーズ』のエネルギー制御技術さえも陽子エネルギーの安定制御に使ったので、なりふり構っていられない状況であったのが分かる。

「マジンガーZEROという奴が、マジンガーZとおじいちゃんの心の中の『Zは無敵であってほしい』って願いを歪んだ形で解釈したのなら、『本質が変化した』カイザーでは勝てないだろう。だからこそ、姿は変わっても、Zの魂を持つゴッドマジンガーが必要なんだ。ここからはこいつで行く必要がある」

「こ、これはバイク?」

「アイアンZの操縦ユニットのマシンパイルダー。原初のパイルダーだよ。こいつが重要区間へ通じる鍵なんだ。バイクの運転の経験は?」

「私も、赤松さんも陸王を動かした事が数回ある程度よ。こんなバイク……」

「なあに、オートバイの基本は、いつの時代も同じだ。転がせば自然と覚えるさ。綾香さんなんてさ、ガンガン乗り回してたよ」

「あの子は特別よ!仮面ライダー仕込な上に、レースにも出てるのよ!?私はほとんどペーパードライバーなんだから!赤松さんも……」

「加藤さん、アンタは弱気なんだよ。そんなんじゃ、あいつらに笑われまっせ」

赤松は、実は無許可外出時にバイクには乗っているため、なんと手慣れた動きを見せ、バイクにまたがる。武子は対抗心から、意を決して、パイルダーにまたがる。


「よし、行くぞ!マジーンゴー!」

甲児を先頭に、全身を3Dスキャンされ、それがキーとなり、ロックが解除された通路が出現する。そこを猛スピードで駆け抜ける。そのため、この『ゴッドの砦』で働く所員の募集要項に書かれている採用条件には『オートバイ運転経験必要』となっていた。武子は一応は運転可能であるが、ほとんどペーパードライバーであったので、二人の動きについていくので精一杯である。ほとんどプロと言える腕前の甲児についていける赤松も、扶桑海軍最強に恥じない技量である。防犯上の都合、蛇のように回りくねり、上り坂、下り坂、S字カーブ、ヘアピンカーブありの難コースとなっており、そこらのオートレース場顔負けのコースだった。それが終わると、甲児は叫ぶ。

『ゴッドファルコン!!』

そう叫ぶと、甲児のマシンパイルダーが変形し、そのまま駐機するゴッドファルコンが出現し、その操縦席になる。

『パイルダーイン!』

機体の下側ハッチから入り、その時に、はみ出たタイヤが折り畳まれて収納後にハッチが閉まる。ゴッドファルコンはそれを合図に起動する。

『ゴッドファルコン、発進!!』

これは、テスト時はブレーンコンドル式であった操縦席を、更に甲児向けに改装して生まれた産物である。そのため、ジェットパイルダーに近い感覚で操縦ができる。そのため、グレートマジンガー式、マジンガーZ式の双方の間の子となった事が分かる。ゴッドファルコンは、通路を抜け、上昇する。そして湖の辺りまで飛行すると、おなじみの台詞を言う。

ここで、テスト時から変更されたコードを発する。

『ブレーース・オーン!!』

ゴッドとドッキングし、更に翼を展開する。テストの際はスクランブルダッシュ式であったが、完成後はゲッターのナノマテリアル技術で再構築された『ディバインウイング』と言う名の翼となっている。そのため、印象としてはカイザースクランダーに近い形状であるが、かつて、兜甲児が出会ったというヒーローである『デビルマン=不動明』のデビルウイングも連想させる有機的なモノだ。(ノズル部も改良で、基部はMSのバックパックのように、胴体と一体式となり、そこから翼を展開する形だ)そのため、ゴッドマジンガーの印象をまた違ったモノにする。反陽子エネルギーの安定性も高まり、安定して「マジンカイザーのZモード」に倍する高出力を出せる。マジンカイザーと異なり、搭乗者に負担を強いる事がないので、ゴッドこそ、『究極のマジンガー』であると言える。

『さて、回りの雑魚を片付けるか!ルストストリーム!!』

ルストストリームを使い、回りのデザリウム兵らを屠る。ゴッドマジンガーの破壊力はマジンカイザーの平常時の倍であるため、巻き起こる破壊もカイザーを上回る。神の名を冠するのは伊達でないのだ。(諢名も鉄の神)武子と赤松は、基地の制御室に雪崩こみ、基地の制御を掌握し、奪還に成功する。そして、起動したゴッドの前に、マジンガーZEROが姿を現す。


「テメーがZEROか」

「ソウダ、兜甲児。我ハマジンガーZERO。唯一無二ノスーパーロボットデアリ、オマエト祖父ノ兜十蔵ノ願イヲカナエラレル唯一無二ノ存在ダ!」

ZEROは光子の文字を空中に浮かべる形で、甲児と会話を行う。ZEROは言うなれば、『マジンガーZは無敵である』という甲児の思い、祖父の兜十蔵の言葉を行動原理とし、Zでなくなった他のマジンガーを否定し、葬るのを究極の目的とする。体躯はゴッドと同程度に成長しているが、ご多分にマジンカイザーを意識でもしているのか、胸部の形状はマジンカイザーと似たようなものとなっていた。

「へっ、テメーの言うことは、自分の思い通りにならないからって、癇癪起こしたガキと同じだぜ!確かに、おじいちゃんは俺に『神にも悪魔にもなれる』って言ったけど、それは人類と共に歩み、その上で力の象徴になるように願ったんだ!」

『ヌカセ!!』

ゴッドマジンガーとZEROがぶつかり合う。ZEROのパワーはすでにグレートマジンガーやグレンダイザーを超越しており、アイアンカッターの切れ味も、宇宙合金グレンをも切り裂けるレベルだ。だが、ゴッドはそれを『受け流す』。装甲強度は互角であるが、ZEROはゴッドの攻撃を受け止めてみせ、吸収するが、ZEROはゴッドと戦う内に、片膝をついて不調に陥る。

『ナ、ナンダト……!?ドウイウコトダ……』

ZEROは、ゴッドのゴッドサンダーを受け止めた直後、傷はついていないが、ふらつき、立てなくなる。ZEROはすぐにマジンパワーで内部機構を修復するが、それでも立てないのだ。これはどういうことかと、甲児も訝しげだ。

『トルネードクラッシャーパーンチ!!』

ゴッドは追撃をかける。ZEROはトルネードクラッシャーをアイアンカッターで押し返そうとするが、ロケットパンチが発射されず、そのまま顎に食らって倒れる。

「ナニィ!コレシキノ攻撃デワレヲ倒セルモノカ!!」

ZEROは不調に陥りながらも、ゴッドに立ち向かう。

「我ガ、負ケルナド、アリ得ン!!」

「Zは負けを乗り越えて強くなるんだ!」

「Zは空を飛ぶ敵に負け、戦闘獣に負け、それでも再び立ち上がって強く成ってきたんだ!みんなに支えられ、力を借り、共に歩む事でな!ゴッドになったのも、デビルを倒すために立ち上がるためだ!」

『フザケルナ!!』

「喰らえ!ゴッドスパーク!!」

完成後のゴッドスパークは、武器属性が変化した。ゴッドサンダーの応用だが、トールハンマーブレイカーと同じように、雷槌を剣媒介で食らわせる。違うのは、トールハンマーブレイカーが一点集中型であるのに対し、ゴッドスパークは放射型だ。ゴッドスパークの雷撃を、ZEROは吸収せんとするが、その力が発動せずにダメージとなる。

「ブレストファイヤー………ナニ!?」

ブレストファイヤーの放熱版は発光を繰り返すが、熱線を放射できずに、ただ放熱版が温まるだけに終わる。そこで、ZEROは『見た』。ゴッドの背後に、ゴッドの原初の姿である『マジンガーZ』、そして、神に至ったZである『Z神』の幻影を。

『Zヨ、貴様ハ我ヲ否定すると言ウノカ!?我ハ魔神の『異物』だと言うノカ!否、否、否ァァ!!』

『ZEROよ、認めるのだ。自ら以外の可能性を。『勇者』を、『王者』を、『皇帝』を。そして、我らと異なる可能性を持つスーパーロボット達を』

Z神の幻影は、『グレートマジンガー以後のマジンガーを認め、他のスーパーロボットを受け入れろ』と語りかける。

『認メン!認メン!認メン!!断ジテ否、否、否!!』

駄々っ子のような様相すら呈するZERO。『彼』はZ以外を否定することこそが存在意義でもあるため、Z神の言葉は受け入れられるものではない。その為、ヨレヨレな体で、0スクランダーを作り、それに立つ形で、ゴッドのもとを去っていく。15分ほどの戦闘であるが、ZEROは『アンチ・グレートマジンガー、アンチ・グレンダイザー、アンチ・マジンカイザー』であるが、ゴッドの前ではフルポテンシャルを出せないし、ゴッドの前には跪くしかないと判明した。さしものZEROも、自らの半身であるZの生まれ変わりであるゴッドは傷つけられないのだという事を証明した。その為、ZEROは行方を晦ますものの、自身が何故、ゴッドの前では『力を出せない』のかという疑問が浮かぶ。ZEROは破壊の権化であり、人類の守護神であるゴッド(Z)とは相容れないし、疑問が解消されることはないのだ。

『甲児、どうしてZEROはゴッドの前だと、あんな醜態を?』

『たぶん、俺の意思がZEROの思考の切っ掛けでもあるけど、ゴッド側にいるから、それを疑問に思い踏み込んでいけないって感じなんだろうな。カイザーやグレート相手にうさを晴らしても、それはZの意思を体現することじゃないしな」

ゴッドに乗る甲児は、ZEROに対して複雑なようだった。ZEROのことはすぐにゴッドの砦から、移動本部に伝えられる。

「マジンガーZERO、か。マジンカイザーでも正面切って戦えんマジンガーがいるとはな」

ZEROという敵の出現は、パルチザンに波紋を呼んだ。あの無敵のマジンカイザーでも、まるで勝てないようなロボットがこの世にいたという衝撃だ。また、ゲッター同様にマジンガーにも意思がある事が判明した。

「甲児、グレートマジンガーにもあるのかしら?意思が」

武子の問いに頷く。

「あるだろう。Zやカイザーにあるんだ、グレートマジンガーにないってのはないさ。ただ、グレートはZと違って、Zにあり得ただろう、『悪』の道に走る世界線はないだろうから、『善性』が先に立つマジンガーなんだろうな。Zあってのグレートなんだし」

「そうね……グレート以降のマジンガーは、あくまでマジンガーZありきの存在だものね」

「さて、二人共。戻るよ。移動本部には連絡しといたから、警備が派遣されてくるよ」

「了解。赤松さん、いきますよ」

「おう」

ゴッドマジンガーの奪還に成功した三人。その裏では……。


――町田

「V3きりもみ反転キィィィ――クッ!!」

町田駅付近で、パルチザン主力が依然として戦闘を行っていた。仮面ライダーV3の必殺技が唸りを上げ、デザリウムの歩兵部隊を蹴散らす。パトロール戦車をド派手に吹き飛ばし、決めポーズを決めるV3。V3は性格上、キザな一面を持っている。決めたいときは無駄に格好良く決めるので、後輩らからは『風見先輩は派手だから』と言われている。この面は扶桑軍三羽烏に良くも悪くも影響を与えており、黒江が『真打ち登場』な場面を好むようになったり、智子が写真撮影の時に『カッコよく撮りなさいよね』と注文をつけたり、圭子が派手に暴れるのを好むようになるなどの変化と、V3達を見習い、どんな苦境でも諦めないというポジティブさを身につけた。そのポジティブさが、黒江を聖闘士の領域に導き、智子を覚醒に至らせたと言える。

「V3さんは、本当に派手なの好きだよなぁ」

「あの人、キザだからなぁ。私達も影響うけてないとは言えないけどね」

「確かに」

町田駅でひと暴れのV3。その状況に、圭子と若本も、上空のアリカもちょっと羨ましそうだった。

「あの人、凄いなぁ……この場でいちばーん目立ってる」

そう。風見志郎は、改造人間になった哀しみをV3となった後は、割と割り切っており、いざ仮面ライダーとなった後は、先輩ヒーローとして後輩をサポートするという面もあるが、基本的には目立ちたがり屋である。スカイライダーの現役の時代には、ダブルライダーを差し置いて、特訓の中心に立ったことさえある。

「あの人、目立ちたがり屋なのよ。本質的に」

「ティアナさん、そういう事言う時、あたしの知り合いの人にすごく似てますよ」

「そう?その人って、どんな人なの?」

「あたしの通ってた学校のOGで、大昔の日本みたいな国の出身の人なんです。前に一緒に戦った事もあって……」

「その人の名前は?」

「鴇羽舞衣さんって言います」

ティアナは、最近は時空管理局との折衝が主になっていたため、前線は久しぶりだった。ティアナの声や態度がアリカの知るマイスターオトメ『鴇羽舞衣』ととてもよく似ていたため、アリカはそれに言及したのだ。最も、その舞衣は、容姿がアリカの世界の数百年ほど前にいた、完全な高次物質化能力者の同名の少女と瓜二つであり、その少女の直接の子孫なのかは不明である。ティアナは不思議な縁を感じた。

「ふぅん……。会ってみたいわね。それはそれとして、あんたの力、凄いわね。何もないところから武器を呼べるなんて」

「あたしの能力は、なんて言おうか、まだフルポテンシャルじゃないんですよ。あたしの耳にしてるピアスみたいなものの、この青いGEMはお母さんから受け継いだんですけど、まだまだです」

「へぇ。ウチじゃ、召喚そのものがレアスキルで、あんたより小さい子をスカウトしてたのよ。ちなみにあたしの元・同僚なんだけどね」

「へぇ」

元同僚である、キャロ・ル・ルシエに言及するティアナ。なのはとフェイトの意思により、ミッド動乱には関わらせていないので、最近は前線から離れたところで療養させている。フリード、ヴォルテールの双方が傷を置い、自身も心に傷を負ったからで、エリオ共々、現在の機動六課からは離れさせている。そのため、連邦軍からパイロットを招いて、欠員を補充している。ティアナのことについては、ヴィータの強い要請と、直談判(グラーフアイゼンを持って、武子に殴りこみかけた)をし、認めさせた。ただし、殴りこみそのものは戦技無双を謳われた武子に返り討ちにされたそうだ。


(そういえば、ヴィータさん、ウチの隊長に直談判に行ったとか。無茶すんなぁ。うちの隊長、無双神殿流免許皆伝で、居合いに関しては智子さんに匹敵するってのに)

そう。武子は居合いの達人で、その速さでは黒江を凌ぐ。(黒江はパワー型であるので)ヴィータといえど、流石に切っ先をいきなり突きつけられては、グラーフアイゼンをしまった。実力差を感じ取ったからだ。その後はヴィータを諭し、万事解決であったが、シグナムは、ヴィータを一発で大人しくさせた武子の剣技に感心を持ち、後に自ら勝負を挑む事になる。武子は自らを隼に擬するほど、隼に傾倒しており、超獣戦隊ライブマンのレッドファルコン=天宮勇介の妹分を自負している。そのため、シグナムが隼の名を持つ技を持つと知ると、途端に対抗心を燃やし、智子も思わず引くほどの熱血ぶりを見せたとの事。

「そういえば、思い出した。武子さん、隼が好きなんですか?執務室に隼の剥製とか、飛行機の模型とか置いてありましたよ?」

「あー、ウチの隊長、若い時から隼に傾倒してんのよ。この前なんて、ライブマンのジェットファルコンに乗せてもらって、子供みたいにはしゃいでたり、綾香さんに頼んで、自衛隊のF-2の訓練受けたり……とにかく、重度のマニアよ」

――ティアナにマニアと言われているのに、幸か不幸か、武子はそれを露知らず、帰り道にプラモ屋を見つけ、F-16戦闘機のプラモデルを金を置いた上で、持ってきたりしている。甲児からは『どうするんだよ、それ。綾香さんいないから、頼めないよ?』というが、武子は『なのはにやらせるから問題無いわ』と言い、何気になのはをこき使う気満々である。この日、町田市中心市街の制圧と、ゴッドの砦の奪還に成功したパルチザンであるが、武子の思わぬ指令に面食らったなのはは、『あの〜、武子さん。金属パーツ使うんで、ボーナスをください』と、パーツ代を請求したとか。その時は武子を前にして、『コクピット、レジンの使っても良いですか?最高で一万超えですけど』と言い、武子は二つ返事で了承。そのため、なのははプラモ部在籍経験者としての腕前をフル活用、飛行状態のものと、駐機状態のディスプレイを用意、大喜びの武子から特別ボーナスをもらったという。黒江への定時通信の際には、『お、お前なぁ。なのはに何やらせてんだよ……』と呆れられつつも、黒江もそんな武子を想い、『帰ったら、F-2を用意してやんよ』と約束をする。これは実際に太平洋戦争にて実現し、退役してからの晩年の15年近くは、自家用機代わりに当時の愛機を貰い受け、飛ばすのが日課であったという。当人の死去後は孫娘の美奈子が財産分与で受け継ぎ、祖母の遺産で腕を磨いたという。






――なお、余談だが、2210年以後の連邦の記録によれば、美奈子は当初、武子の娘である実母の勧めで、自衛隊への志願を考えていたが、祖母の死を看取ったのを期に軍に入隊したという動機を語ったという。彼女と、黒江の大姪『翼』の証言によれば、祖父母世代と子供世代には、従軍意識の差もあって、世代間対立もあった。その中で、坂本の娘『土方美優』は、偉大な母親と比較視されるのを忌み嫌い、軍入隊を義務と責任と考える両親に反発し、ウィッチとして覚醒しながらも、家を飛び出して弁護士になり、その後に北郷家の人間と入籍、子をもうける。それが坂本の孫『百合香』であり、その顛末がいい見本と語った。百合香が軍に入隊したのもあって、子世代と親世代の対立のいい見本とされてしまった美優は、自身の仕事を誇りとしつつ、親の言うことを、自身の子に反抗された事で、ようやく理解したものの、その頃には、親である坂本と断絶状態であり、その間を縁戚になった北郷章香が取り持つという状況に陥っていた。老いて病気しがちになった坂本の失意の慰めは、孫の存在であった。坂本はベトナム戦争後期の40代半ばまでは、往年の容姿を概ね保っていたが、娘が家を飛び出した後は、自らの老いを諦めたのか、気力が萎え、急激に老いを見せた。70年代後半、自伝の完全版を三羽烏が出版にこぎ着けた際のパーティに、北郷の勧めで出席したのを最後に、世間から姿を消し、次の消息は、百合香が訃報を伝える西暦2000年まで途切れる。その顛末を、2000年当時に高校生だった翼が克明に記憶しており、翼は2210年での共同戦線時に、ロンド・ベルの皆にそれを伝えたという。彼女はその時に『大叔母も一人の人間である』と理解し、大泣きし、憔悴する黒江の姿に、坂本との絆を実感した。それが翼が大叔母と同じ道を歩む決心をするきっかけであり、軍に骨を埋め、更には聖闘士にもなり、名実共に後継者となった。新三羽烏が大叔母と同じ道を歩む選択を取ったのは、運命もあったが、彼女ら自身の選択でもあった。新三羽烏の知恵袋である、智子の大姪『穴拭麗子』がそう語るのである。


――ウィッチ世界の2006年 黒江家

「お前ら、本当についてくるんだな」

「はい、叔母さん」

「お前らを連れていくのには、正直言って、不安もある。お前らはせいぜい、数年前のスエズ運河での経験しか実務経験がないからな」

「あそこは中々手ごわかったですし、綾香叔母さん達には及ばなくても、戦えます」

「翼、お前の言うことは分かるが、兄貴……おじいちゃんには言ったのか?」

「おじいちゃんには断ってきてます。そうでなかったら、こんな格好してませんよ」

「麗子、あんたもそうよ。あんたは止めなくていいの?」

「智子叔母さん、私だって、もう立派な軍人です。こんな貴重な機会を逃すと思いますか?」

ツインテールの髪型の少女が智子に意見する。大姪の麗子だ。智子からは高校卒業後も子供扱いされており、それに憤慨しているらしい。

「しかしだ。お前らを未来の実戦に出せるかは……」

「スクランブルは年に数百回こなしてますし、定期演習も欠かしてませんよ」

「叔母さん達こそ、年寄りの冷や水は止したほうが」

「ほう?澪、お前。いい度胸だな。あ〜ん?」

圭子の大姪『澪』の言葉にカチンときた黒江は、どす黒いオーラを纏う。歳は取ったが、それは戸籍上の事であり、肉体そのものは若いままなのだ。最も、戸籍上では2006年前後の時点では後期高齢者であるため、軍の後輩から年寄り扱いされることがある。ここ10年はそれが常態化しており、『年寄り扱い』されるのを嫌がっている。

「しょーがないか、人前では言わないのよ?」

智子が笑顔で言うが、完全に目が笑っていない。切れかかっている証であるが、同時に大姪達に失言しないように圧力をかけている。その迫力に、澪は圧される。

「は、はい。智子おばさん」

「よろしい。貴方たちは、全員でないにしろ、64Fの旧メンバーと一緒に戦う事になるわ。武子がこの場にいれば喜んだだろうけど、あの子は早くに逝った。だから、美奈子。貴方はお祖母様に恥じない振る舞いをしてちょうだいな」

「は、はい」

この場にいる中では、唯一、当人の直系の子孫である加藤美奈子は容姿、声、能力共に、10代の頃の祖母の生き写しである。智子も大変可愛がっており、武子の死後は彼女の後見人を務めるほどである。美奈子も母親よりも祖母を尊敬しており、武子の生前はよく遊んでもらった思い出を持つ。奇しくも、軍内で祖母と同じ立場にいるため、在りし日の祖母を意識している。愛刀も祖母である武子の形見であり、娘でなく、孫に受け継がせたあたり、武子も坂本と同じように、子との相剋があったのが窺える。逆に、宮藤芳佳は、才能が二人の子に分割して受け継がれ、更に意思も受け継がれた好例で、長女の秋佳が医療ウィッチとしての立場を、次女の剴子が戦闘ウィッチとしての立場を受け継ぎ、2006年時点では、剴子の子である『冬佳』がそろそろ志願する年齢との事。剴子も少女期のベトナム戦争時代に64Fに属していたが、2006年時点では統合参謀本部のウィッチを管轄する部署の高官であり、立場上、戦線への参戦は困難であり、困った彼女、なんと隠居していた芳佳を引っ張ってきたのである。芳佳は穏やかな老後を過ごしていたが、可愛い娘の頼みと、剴子の後継者である孫が、まだ学生である都合、往年の姿へ若返っての参戦を果たしたのだ。

「黒江さ〜ん。こっちは準備できました〜」

「おう。ご苦労さん、宮藤」

「え!?宮藤って、あの宮藤芳佳大佐!?」

「そっか、私、大佐だったんだっけ。この姿だと、中尉って言いそうになるなぁ」

ドアを開けて入ってきた芳佳。完全に昔年の容姿へ戻ったため、言葉使いも若き日のそれへ戻っている。軍人としての最終階級は軍医大佐であるため、何気に現役組より偉かったりする。

「黒江さん、この子達がウチの部隊の今の現役メンバーですか?」

「そうだ。私達の姪っ子もいるから、向こう行ったら揉んでやれ」

「わかりました。でも、私が行くより、剴子が行けばよかったんじゃ?ややこしいことになったのぅ」

「しゃーねーだろ?あいつはまだ現役だけど、統合参謀本部の参謀なんだし。立場上、ほいほい戦線に出られないんだしよ。それにまだ学生の剴子の娘、つまりオメーの孫を引っ張ってくるわけにもいかんし」

「冬佳はまだ16ですしねぇ。私がいくっちゃないか。久しぶりに飛びたかったし、まっ、いいか」

「お前、何年飛んでない?」

「そうですね、退役してからはリーネちゃんやハルトマンさんの家で私物のレシプロで飛んでた程度なんで、最後に飛んだの、5年前ですね。ほら坂本さんの葬式の時の……」

「あの時か……。まっ、久しぶりにジェットで飛ぶから、向こうついたら訓練だぞ―」

「了解です」

そう言って、部屋を出て行く芳佳。完全に往年の空気に戻っている二人だった。

「そうか、お前らは宮藤の現役時を知らない世代なんだっけ」

「そうですよ。私達が長じる頃には、初代501の皆さんも鬼籍に入りだしてましたし」

そう。新三羽烏が長じ、軍へ入った時代には、ミーナ、バルクホルン、坂本、ペリーヌといった創設時からのメンバーは、ハルトマン以外は鬼籍に入っていた。また、創設時のメンバーの名簿は、トレヴァー・マロニーによって廃棄されていた事が、近年明らかになったため、ミーナ、バルクホルン、坂本といった幹部陣が全員鬼籍に入ったのもあり、初期に誰がいたのかについては謎である。ただ、断片的にリーネと仲が良かった者が数人いたとは判明しているのだが……。この時代となると、ハルトマンしか創設期を知る者がいないこともあって、501の全記録を知ることはできなくなっていた。最も伝統と伝説に彩られた『無敵部隊』とされながら、全ての記録が現存しているとは限らないのは極めて異例で、三代目501が結成された際、国際連合が必死になって捜索したが、マロニーの幕僚であった一人の元将校の証言で『破棄された』とわかり、マロニーの評価は更に落ちた。そのため、便宜上、芳佳加入を『501の始まり』と扱っている。ミーナも生前、芳佳加入を以て、501の始まりとしていたためだ。

「そうだよな。今となっちゃ、宮藤が入る以前の記録は闇に葬られたし、ラウラ・トートも亡くなってるからなぁ。私らもその辺は知らんしなぁ」

「叔母さん達がいた頃が最盛期じゃないですか。だから、取り上げられるのもその辺だし」

「そうだな。私達が在籍した頃が最盛期って言っていいくらいだし、501は。私達が在籍経験者ってのは、ガキでも知ってるしな」

そう。現役時代の三羽烏は、長らく『空軍の顔』であり続けた。そのため、後世から見て、1945年当時の501が無敵の部隊であるという印象を強めている。実際、二代目が実績を上げられぬままにベトナム戦争後に解散に追いやられた事、三代目がスエズ運河で活躍したのを考慮しても、異常な陣容だったからだ。

「私達の時代の陣容は、戦時が長く続いたからこそ出来た陣容だ。今の国連にあそこまでの陣容を実現させるのは無理だ。利権も絡んできてるから。だからこそ、『伝説』なんだよ」

――そう。連邦軍もそうだが、無敵神話は戦時だからこそ存在するものだ。黒江自身、ロンド・ベルと501の双方に在籍経験があるため、齢を経て自覚したことだ。

「時代は違うが、お前らは扶桑最高クラスの人材が集められた部隊だ。それに、ウチは源田司令直属だった事もある『由緒ある』部隊だ。そのことを忘れるな。未来人に『扶桑軍の質が落ちた』なんて言わせるなよ」

「はいっ!」

そう。連邦で5年の歳月、扶桑で数十年の歳月が流れての再会は、黒江達の年齢を『老人』とするのに充分であった。だが、戦いの宿命は、彼女らを若き日のままの状態で留め置き、再度の戦いの場に引き戻す。後継者らを率いて。その後継者らが参考として、見ているのが、武子が生前に書き溜めた回想録である。武子自身の死の5年前に出版されたものだ。その内のデザリウム戦役のページを読んでいる者がいた。かの、黒田那佳の孫で、黒田公爵家の当代当主に当たる『黒田涼佳』だ。これまた、隔世遺伝で祖母によく似た性格と属性を持ち、黒田の生き写しと評判である。ただし、祖母と違う点がある。金にあまり執着がなく、趣味人である点だ。これは祖母の時代は貴族院議員を自動的に兼任する羽目になっていたが、20世紀後半(90年代)にそれが義務で無くなったため、彼女は母親(黒田の娘)にそれを任せ、悠々自適な生活を楽しんでいた。これはケチな祖母が色々稼ぎまくったおかげであり、この時代には本家筋の後継がすっかり絶えているため、分家筋の黒田の家が事実上の当主家となっていた。そのため、公爵家当主には那佳の子孫が自動的になるようになっていた。生涯現役というわけではなく、那佳は堅苦しいのが嫌いなので、70年代頃に娘に当主の座を譲り、その娘も割と早くに涼佳に当主の座を譲っていたため、10代でありながら、公爵の地位である。

「何してる?涼佳」

「黒江のおばさん。これですよ、これ」

「なんだ、フジの奴の回想録か。おお、デザリウムの時のところか。あん時は大変だったぞ。そうそう……」

――黒江は懐かしそうに話しだす。回想録には、パルチザンの二代目移動本部となった改アンドロメダ級『ガイア』の艦長席に座り、扶桑空軍の制帽を珍しく被って、指揮を取っている、在りし日の加藤武子の写真が載せられていたからだ。武子自身、『人生で一番に奇妙な体験だった』と、晩年に述懐している、デザリウム戦役。その思い出を後継者達に語る――

「フジの奴が生前に言ってたんだが、あいつらが一番苦労したのが、あの零に還す魔神の相手だったそうだ――」



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